以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
<熱膨張性シート10>
図1に、造形物を造形するための熱膨張性シート10の断面構成を示す。熱膨張性シート10は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートに垂直な方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
図1に示すように、熱膨張性シート10は、基材11と、熱膨張層12と、インク受容層13とを、この順に備えている。なお、図1は、造形物が造形される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート10の断面を示している。
基材11は、熱膨張性シート10の元となるシート状の媒体である。基材11は、熱膨張層12とインク受容層13とを支持する支持体であって、熱膨張性シート10の強度を保持する役割を担う。基材11として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材11の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層12は、基材11の上側に積層されており、規定の温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層12は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5~50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層12は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層13は、熱膨張層12の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層13は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層13は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層13の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている汎用的な材料を用いることができる。
図2(a),(b)に、熱膨張性シート10の裏面を示す。熱膨張性シート10の裏面は、熱膨張性シート10の基材11側の面であって、基材11の裏面に相当する。図2(a)は、シートのサイズが第1のサイズである熱膨張性シート10の裏面を示しており、図2(b)は、シートのサイズが第2のサイズである熱膨張性シート10の裏面を示している。一例として、第1のサイズはA3サイズであり、第2のサイズはA4サイズである。すなわち、図2(b)に示す熱膨張性シート10のサイズは、図2(a)に示す熱膨張性シート10のサイズの半分である。
図2(a),(b)に示すように、熱膨張性シート10の裏面には、その周縁部に沿って複数のバーコードBが付されている。より詳細には、バーコードBは、図2(a)に示す第1のサイズの熱膨張性シート10では、長手方向における一方側の端部に設けられており、図2(b)に示す第2のサイズの熱膨張性シート10では、短手方向における一方側の端部に設けられている。バーコードBは、熱膨張性シート10を識別するための識別子であって、熱膨張性シート10が造形物を造形するための専用のシートであることを示す識別子である。バーコードBは、照射装置50によって読み取られ、照射装置50において熱膨張性シート10の使用の可否を判定するために用いられる。また、バーコードBは、熱膨張性シート10のサイズが第1のサイズであるか第2のサイズであるかというサイズ情報、熱膨張性シート10の厚み、基材11の種類等の情報を含んでいる。
造形システム1は、このようなサイズが異なる複数種類の熱膨張性シート10に造形物を製造することができる。熱膨張性シート10の表面又は裏面のうちの膨張させたい部分には、カーボン分子が印刷される。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート10において、カーボン分子が印刷された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層12が膨張して隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層12の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート10に造形物が製造される。
熱膨張性シート10における膨張させる箇所及び高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を得ることができる。また、造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
<造形システム1>
次に、図3(a)~(c)を参照して、熱膨張性シート10に造形物を製造するための造形システム1について説明する。
図3(a)は、造形システム1の斜視図である。図3(b)は、造形システム1の正面図である。図3(c)は、天板22を開いた状態における造形システム1の平面図である。図3(a)~(c)において、X方向は、印刷装置40と照射装置50とが並ぶ方向に相当し、Y方向は、印刷装置40及び照射装置50における熱膨張性シート10の搬送方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。
図3(a)~(c)に示すように、造形システム1は、制御ユニット30と、表示ユニット35と、印刷装置(印刷ユニット)40と、照射装置(照射ユニット)50と、を備える。制御ユニット30、印刷装置40及び照射装置50は、フレーム21内に載置される。フレーム21は、略矩形状の一対の側面板21aと、一対の側面板21aの間に設けられた連結部21bとを備え、側面板21aの上方に天板22が渡されている。また、連結部21bの上に印刷装置40及び照射装置50がX方向に並んで設置され、連結部21bの下に制御ユニット30が設置されている。表示ユニット35は、天板22内に、天板22の上面と高さが一致するように埋設されている。
<制御ユニット30>
制御ユニット30は、印刷装置40、照射装置50及び表示ユニット35を制御する。また、制御ユニット30は、印刷装置40、照射装置50、及び表示ユニット35に電源を供給する。制御ユニット30は、図4に示すように、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、記録媒体駆動部34と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。制御部31では、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、造形システム1全体の動作を制御する。なお、制御部31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の制御回路であっても良い。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等であって、制御部31によって実行されるプログラム又はデータを記憶している。例えば、記憶部32は、印刷装置40によって印刷されるカラー画像データ、表発泡データ及び裏発泡データを記憶している。
通信部33は、印刷装置40、照射装置50及び表示ユニット35を含む外部の装置と通信するためのインタフェースである。
記録媒体駆動部34は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部34は、印刷装置40によって印刷されるカラー画像データ、表発泡データ及び裏発泡データを、可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
<表示ユニット35>
表示ユニット35は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。表示ユニット35は、印刷装置40によって熱膨張性シート10に印刷される画像を表示する。また、表示ユニット35は、必要に応じて、印刷装置40及び照射装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
なお、図示していないが、造形システム1は、ユーザによって操作される操作ユニットを備えていても良い。操作ユニットは、ボタン、スイッチ、ダイヤル等を備え、印刷装置40又は照射装置50に対する操作を受け付ける。或いは、表示ユニット35は、表示装置と操作装置とが重ねられたタッチパネル又はタッチスクリーンを備えていてもよい。
<印刷装置40>
印刷装置40は、熱膨張性シート10の表面又は裏面に印刷を行う印刷ユニットである。一例として、印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷装置40では、例えば水性インク、溶剤インク、紫外線硬化インク等、任意のインクを使用することができる。
図3(c)に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部40aと、熱膨張性シート10を搬出するための搬出部40bと、を備える。印刷装置40は、搬入部40aから搬入された熱膨張性シート10の表面又は裏面に指示された画像を印刷し、画像が印刷された熱膨張性シート10を搬出部40bから搬出する。
図5に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図5に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート10が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に挟持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート10の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート10の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート10を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して制御ユニット30と接続されている。制御ユニット30は、フレキシブル通信ケーブル46を介して、印刷ヘッド42、モータ45m、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御する。具体的に説明すると、制御ユニット30は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート10を搬送させる。また、制御ユニット30は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。
印刷装置40は、制御ユニット30から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷装置40は、画像データとして、カラー画像データと表発泡データと裏発泡データとを取得する。カラー画像データは、熱膨張性シート10の表面に印刷するカラー画像を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、カラー画像を印刷する。
これに対して、表発泡データは、熱膨張性シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。また、裏発泡データは、熱膨張性シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、カーボンブラックを含むブラックKの黒色インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、黒色による濃淡画像(濃淡パターン)を印刷する。これにより、熱膨張性シート10の表面又は裏面に、電磁波を熱に変換する変換層が形成される。カーボンブラックを含む黒色インクは、電磁波を熱に変換する材料の一例である。
<照射装置50>
照射装置50は、熱膨張性シート10に対して電磁波を照射することにより、熱膨張性シート10を加熱して膨張させる照射ユニットである。照射装置50は、加熱装置、膨張装置等とも呼ばれる。
図3(c)に示したように、照射装置50は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部50aと、熱膨張性シート10を搬出するための搬出部50bと、を備える。また、図6及び図7に示すように、照射装置50は、筐体51と、搬送ローラ対52a~52cと、搬送ガイド53a~53cと、照射部60と、を備える。照射装置50は、図示しないケーブルを介して制御ユニット30と接続されており、制御ユニット30の制御のもとで、搬送ローラ対52a~52cを駆動させて熱膨張性シート10を搬送させながら、照射部60によって熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する。以下、図6及び図7を参照して、照射装置50の構成について説明する。
搬送ローラ対52a~52cは、搬入部50aから搬入された熱膨張性シート10を搬送する搬送手段として機能する。具体的に説明すると、搬送ローラ対52aは、搬入部50aに設置されており、搬入部50aに載置された熱膨張性シート10を筐体51の内部に搬入する。搬送ローラ対52bは、照射部60よりも搬入部50a側に設置されており、搬入部50aから搬入された熱膨張性シート10を照射部60により電磁波が照射される位置に搬送する。搬送ローラ対52cは、照射部60よりも搬出部50b側に設置されており、照射部60により電磁波が照射された後の熱膨張性シート10を搬出部50bに搬送する。
搬送ローラ対52a~52cは、それぞれ一対のローラを備えており、一対のローラによって熱膨張性シート10を挟持する。一対のローラは、図示しない搬送モータと接続されており、搬送モータの回転に伴う駆動力を動力源として回転する。搬送モータは、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータである。このような構成により、搬送ローラ対52a~52cは、熱膨張性シート10を、その表面又は裏面を照射部60に向けながら搬送する。
搬送ガイド53a~53cは、搬送ローラ対52a~52cにより搬送される熱膨張性シート10を、搬入部50aから照射部60により電磁波が照射される位置を通って搬出部50bに導く。具体的に説明すると、搬送ガイド53aは、搬入部50aに設置されており、搬入部50aに載置された熱膨張性シート10を筐体51の内部に搬入するためのガイドである。搬送ガイド53bは、搬入部50aと照射部60との間に設置されており、搬入部50aから搬入された熱膨張性シート10を照射部60により電磁波が照射される位置に搬送するためのガイドである。搬送ガイド53cは、照射部60と搬出部50bとの間に設置されており、照射部60により電磁波が照射された後の熱膨張性シート10を搬出部50bに搬送するためのガイドである。
搬送ガイド53a~53cは、それぞれ上側部と下側部とを備えており、熱膨張性シート10は上側部と下側部との間を搬送される。言い換えると、搬送ガイド53a~53cは、その上側部と下側部とで熱膨張性シート10の搬送経路を形成している。搬送ガイド53b,53cの上側部と下側部とのそれぞれには、図7に示すように、通気性を高めるため、多数の円形の開口が設けられている。
搬送ガイド53a~53cは、例えば鉄、ステンレス等の金属製である。金属製をしていることにより、搬送ガイド53a~53cは、照射部60から照射される電磁波に対して反射性を有する。そのため、搬送ガイド53a~53cは、照射部60により電磁波を照射されても熱膨張性シート10と同様には加熱されずに低温のまま保たれる。
搬送ガイド53bの経路の途中には、入口センサ54が設置されている。入口センサ54は、熱膨張性シート10が搬送ガイド53bを搬送されているか否かを検知する。入口センサ54は、一例として、搬送ガイド53bにより熱膨張性シート10が搬送される経路を挟むように発光部と受光部とを備える。そして、入口センサ54は、発光部から発せられた光が熱膨張性シート10によって遮られずに受光部により受光されたか否かによって、搬送ガイド53bを搬送される熱膨張性シート10の有無を検知する。
搬送ガイド53cの経路の途中には、出口センサ55が設置されている。出口センサ55は、熱膨張性シート10が搬送ガイド53cを搬送されているか否かを検知する。出口センサ55は、一例として、搬送ガイド53cにより熱膨張性シート10が搬送される経路を挟むように発光部と受光部とを備える。そして、出口センサ55は、発光部から発せられた光が熱膨張性シート10によって遮られずに受光部により受光されたか否かによって、搬送ガイド53cを搬送される熱膨張性シート10の有無を検知する。
照射部60は、電磁波を照射する機構であって、搬送ローラ対52a~52cにより搬送される熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する照射手段として機能する。図6に示すように、照射部60は、ランプヒータ61と、反射板62と、を備える。
ランプヒータ61は、例えばハロゲンランプであって、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750~1400nm)、可視光領域(波長380~750nm)、又は、中赤外領域(波長1400~4000nm)の電磁波を照射する。カーボンブラックを含む黒色インクが印刷された熱膨張性シート10に電磁波を照射すると、黒色インクが印刷された部分では、黒色インクが印刷されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱に変換される。そのため、熱膨張層12のうちの、黒色インクが印刷された部分が主に加熱されて、その結果、熱膨張層12は、黒色インクが印刷された部分が膨張する。
反射板62は、照射部60から照射された電磁波を受ける被照射体であって、ランプヒータ61から照射された電磁波を熱膨張性シート10に向けて反射する機構である。反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から上側に向けて照射された電磁波を下側に向けて反射する。反射板62によって、ランプヒータ61から照射された電磁波を効率良く熱膨張性シート10に照射することができる。
反射板62の上側には、複数の冷却ファン63が設けられている。冷却ファン63は、照射装置50の外部から空気を吸い込んで反射板62に空気を送る。これにより、冷却ファン63は、ランプヒータ61が点灯することによって加熱された反射板62を冷却する。また、照射装置50の下側の端部には、排気ファン64が設けられている。排気ファン64は、筐体51の内部の空気を外部に排出することで、筐体51の内部を換気する。
更に図6に示すように、搬送ガイド53cの下側部には、搬送ガイド53cを乾燥させるための乾燥ファン67が設けられている。乾燥ファン67は、搬送ローラ対52a~52cにより熱膨張性シート10が搬送されている際に、搬送ガイド53cに向けて送風する。これにより、乾燥ファン67は、搬送ガイド53c、及び搬送ガイド53cに導かれて搬送される熱膨張性シート10を乾燥させる。
図8(a)及び図8(b)に、搬送ガイド53cの下側部に設けられた乾燥ファン67を、それぞれ斜め上側及び斜め下側から見た様子を示す。図8(a),(b)に示すように、乾燥ファン67は、搬送ガイド53cの下側の位置に上側を向けて設置されており、搬送ガイド53cの下側から搬送ガイド53cに向けて送風する。言い換えると、乾燥ファン67は、搬送ガイド53cに対して、照射部60が設けられた側とは反対側に設けられており、熱膨張性シート10における照射部60によって電磁波が照射された面とは反対側の面に向けて送風する。このようにして、乾燥ファン67は、搬送ガイド53cを介して、搬送ガイド53c上を搬送されている熱膨張性シート10の下方から熱膨張性シート10に送風する。図8(a),(b)に示すように、搬送ガイド53cには多数の開口が形成されているため、乾燥ファン67によって、搬送ガイド53cの下側部だけでなく、搬送ガイド53cを搬送中の熱膨張性シート10に対しても直接的に送風を当てて乾燥させることができる。
このように乾燥ファン67によって搬送ガイド53cを乾燥させるのは、搬送ガイド53cは、照射部60によって電磁波を照射された後の熱膨張性シート10から生じた水分が付着し易いからである。具体的に説明すると、(1)熱膨張性シート10の表側から電磁波を照射させて熱膨張性シート10を膨張させる表発泡工程と、(2)熱膨張性シート10の表面に印刷されたカラーインクを乾燥させる乾燥工程と、のそれぞれで、熱膨張性シート10の内部に含まれる水分が搬送ガイド53cに付着する。
第1に、図9に、表発泡工程において搬送される熱膨張性シート10に電磁波が照射される様子を示す。表発泡工程では、図9に示すように、熱膨張性シート10は、その表面に電磁波を熱に変換する変換層14が印刷された状態で、表面を照射部60に向けて、すなわち基材11の面を下側に向けて、搬送ローラ対52a~52cにより搬送される。この状態で照射部60により電磁波が照射されると、熱膨張性シート10の表面に印刷された変換層14が加熱され、その結果として熱膨張層12のうちの変換層14が印刷された部分が膨張する。
基材11は、その種類にもよっても変わるが、熱膨張性シート10が保管されている間に空気中の水分を吸収して湿る性質がある。そのため、変換層14が電磁波を照射されて加熱すると、基材11に含まれる水分が水蒸気に蒸発する。蒸発した水蒸気が加熱された熱膨張性シート10に比べて低温な搬送ガイド53cの表面に水滴となって付着することで、搬送ガイド53cの表面が結露する。
このように搬送ガイド53cの結露によって生じた水滴が、搬送ガイド53cを搬送される熱膨張性シート10に付着すると、熱膨張性シート10を汚す、損傷させる等のように、熱膨張性シート10を損ねる結果につながる。その結果として、熱膨張性シート10に所望の造形物を安定して製造することが難しくなる。
第2に、図10に、乾燥工程において搬送される熱膨張性シート10に電磁波が照射される様子を示す。なお、図10では、理解を容易にするため、表発泡工程において使用された変換層14の図示は省略されている。乾燥工程では、図10に示すように、熱膨張性シート10は、その表面に少なくとも一色のインクでカラーインク層15が印刷された状態で、表面を照射部60とは反対側に向けて、すなわち基材11の面を上側に向けて、搬送ローラ対52a~52cにより搬送される。この状態で照射部60により電磁波が照射されると、熱膨張性シート10の表面に印刷されたカラーインク層15のインクが蒸発する。これにより、カラーインク層15が印刷された熱膨張性シート10の表面が乾燥する。
カラーインク層15のインクが蒸発すると、搬送ガイド53cの表面にインクが蒸発した際の水滴が付着する。搬送ガイド53cの表面に付着した水滴が、搬送ガイド53cを搬送される熱膨張性シート10に付着すると、熱膨張性シート10を汚す、損傷させる等のように、熱膨張性シート10を損ねる結果につながる。その結果として、熱膨張性シート10に所望の造形物を安定して製造することが難しくなる。
このように、搬送ガイド53cは、照射部60によって電磁波が照射された後の熱膨張性シート10が搬送されるため、その下側部に水分が付着し易い。そのため、乾燥ファン67は、表発泡工程及び乾燥工程において、照射部60によって電磁波が照射された熱膨張性シート10が搬送ガイド53cに導かれて搬送されている際に、搬送ガイド53cに向けて送風して、搬送ガイド53c及び熱膨張性シート10から水分を蒸発させる、又は水滴を吹き飛ばす。これにより、乾燥ファン67は、搬送ガイド53c及び熱膨張性シート10を乾燥させて、熱膨張性シート10が損なわれることを抑制する。
また、照射装置50は、搬入部50aにおいて、バーコードリーダ65と、リフレクタ66と、を備える。バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の裏面に付されたバーコードBを読み取る読み取り手段として機能する。リフレクタ66は、光を反射するミラーであって、バーコードリーダ65に対して熱膨張性シート10の搬送路を挟んで反対側に設置されている。
バーコードリーダ65は、搬入部50aにセットされた熱膨張性シート10の前端部がバーコードリーダ65の位置に達すると、そこに付されたバーコードBを読み取る。具体的に説明すると、表面が上側を向いて熱膨張性シート10が照射装置50に挿入された場合、バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の裏面に付されたバーコードBを、リフレクタ66を介さずに読み取る。これに対して、裏面が上側を向いて熱膨張性シート10が照射装置50に挿入された場合、バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の裏面に付されたバーコードBを、リフレクタ66を介して読み取る。
照射装置50は、バーコードリーダ65によってバーコードBを読み取ることができたか否かに応じて、搬入部50aにセットされた媒体が、熱膨張性シート10であるか否か(照射装置50で使用可能か否か)を識別する。これは、造形物を製造するための専用のシートではない媒体が照射装置50に搬入されると、照射装置50が正常に動作しない可能性があるためである。
また、バーコードBは、熱膨張性シート10のサイズが第1のサイズであるか第2のサイズであるかというサイズ情報、熱膨張性シート10の厚み、基材11の種類等の情報を含んでいる。照射装置50は、バーコードリーダ65によってバーコードBを読み取ることにより、熱膨張性シート10のサイズ、厚み及び種類を識別する。
<造形物の製造処理>
次に、図11に示すフローチャート及び図12(a)~(e)に示す熱膨張性シート10の断面図を参照して、造形システム1において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート10を準備し、操作ユニットを介して、カラー画像データ、表発泡データ及び裏発泡データを指定する。そして、ユーザは、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面に変換層14を印刷する(ステップS1)。変換層14は、電磁波を熱に変換する材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された表発泡データに従って、熱膨張性シート10の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図12(a)に示すように、インク受容層13上に変換層14が形成される。
第2に、ユーザは、変換層14が印刷された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて照射装置50に挿入する。照射装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して表発泡工程を実施する(ステップS2)。具体的に説明すると、照射装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の表面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の表面に印刷された変換層14に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、変換層14が発熱し、図12(b)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうちの変換層14が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
第3に、熱膨張層12の一部が膨張した熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面にカラーインク層15を印刷する(ステップS3)。具体的には、印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図12(c)に示すように、インク受容層13上にカラーインク層15が形成される。
第4に、ユーザは、カラーインク層15が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて照射装置50に挿入する。照射装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して乾燥工程を実施する(ステップS4)。具体的に説明すると、照射装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10を裏面に電磁波を照射する。これにより、熱膨張性シート10の表面に印刷されたカラーインク層15中に含まれる溶媒を揮発させ、カラーインク層15を乾燥させる。
第5に、ユーザは、カラーインク層15が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に変換層16を印刷する(ステップS5)。変換層16は、熱膨張性シート10の表面に印刷された変換層14と同様に、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された裏発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図12(d)に示すように、基材11の裏面に変換層16が形成される。
第6に、ユーザは、変換層16が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて照射装置50に挿入する。照射装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して裏発泡工程を実施する(ステップS6)。具体的に説明すると、照射装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の裏面に印刷された変換層16は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図12(e)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうち、変換層16が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
以上のような手順によって、熱膨張性シート10の表面上に造形物が形成される。
なお、図12(a)~(e)では、理解を容易とするため、インク受容層13上に変換層14が形成されているように図示しているが、より正確にはインクはインク受容層13中に受容されているため、インク受容層13中に変換層14が形成される。カラーインク層15及び裏側の変換層16についても同様である。
変換層14,16は表側のみ又は裏側のみに形成されてもよい。表側の変換層14のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうちステップS1~S4を実施する。一方、裏側の変換層16のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうち、ステップS3~S6を実施する。また、ステップS5,S6における裏発泡工程を、ステップS1,S2における表発泡工程よりも前に実施しても良いし、ステップS3,S4におけるカラーインク層15の印刷及び乾燥工程を、ステップS1,S2における表発泡工程よりも前に実施しても良い。或いは、ステップS1における表側の変換層14の印刷と、ステップS3におけるカラーインク層15の印刷を実施した後で、ステップS2における表発泡工程を実施しても良い。このように、上記ステップS1~S6の順番を様々に入れ替えて実施しても良い。
次に、ステップS2における表発泡工程、及び、ステップS4における乾燥工程について、それぞれ図13及び図14を参照して説明する。
まず、図13を参照して、ステップS2における表発泡工程について説明する。図13に示す表発泡工程は、熱膨張性シート10がその表面に変換層14が印刷された状態で表面を上に向けて照射装置50の搬入部50aにセットされると、開始する。
表発泡工程を開始すると、制御部31は、バーコードBを読み取る(ステップS201)。具体的に説明すると、制御部31は、バーコードリーダ65を介して、セットされた熱膨張性シート10の裏面の端部に設けられたバーコードBを読み取る。これにより、制御部31は、セットされた熱膨張性シート10が適正なシートであるか否かを判別する。また、制御部31は、バーコードBを読み取ることにより、セットされた熱膨張性シート10のサイズ、厚み及び種類の情報を取得する。
バーコードBを読み取ると、制御部31は、熱膨張性シート10の搬送を開始する(ステップS202)。具体的に説明すると、制御部31は、搬送ローラ対52a~52cを駆動させて、搬入部50aにセットされた熱膨張性シート10を筐体51の内部に搬送し始める。
熱膨張性シート10の搬送を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達したか否かを判定する(ステップS203)。具体的に説明すると、制御部31は、搬送される熱膨張性シート10の前端を、搬送ガイド53bに設置された入口センサ54によって検知したか否かを判定する。熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達していない場合(ステップS203;NO)、制御部31は、ステップS203において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達すると(ステップS203;YES)、制御部31は、更に熱膨張性シート10を搬送する。そして、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達してから距離L1搬送後に、照射部60による電磁波の照射を開始する(ステップS204)。ここで、距離L1は、入口センサ54が設置された位置から照射部60によって電磁波が照射される位置までの距離に相当する。制御部31は、入口センサ54によって熱膨張性シート10の前端を検知した後、当該前端が照射部60によって電磁波が照射される位置に到達したタイミングでランプヒータ61を点灯させて、熱膨張性シート10の表面に向けて電磁波の照射を開始させる。
電磁波の照射を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達したか否かを判定する(ステップS205)。具体的に説明すると、制御部31は、搬送される熱膨張性シート10の前端を、搬送ガイド53cに設置された出口センサ55によって検知したか否かを判定する。熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達していない場合(ステップS205;NO)、制御部31は、ステップS205において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達すると(ステップS205;YES)、制御部31は、続いて、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達したか否かを判定する(ステップS206)。熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達していない場合(ステップS206;NO)、制御部31は、ステップS206において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達すると(ステップS206;YES)、制御部31は、更に熱膨張性シート10を搬送する。そして、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達してから距離L2搬送後に、乾燥ファン67の駆動を開始する(ステップS207)。具体的に説明すると、制御部31は、照射部60が搬送ローラ対52a~52cにより搬送される熱膨張性シート10に電磁波の照射を開始した後、当該電磁波の照射を停止する前に、乾燥ファン67を駆動させて送風を開始させる。
乾燥ファン67による送風を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達してから距離L1搬送後に、照射部60による電磁波の照射を停止する(ステップS208)。具体的に説明すると、制御部31は、入口センサ54によって熱膨張性シート10の後端を検知した後、当該後端が照射部60によって電磁波が照射される位置を通過したタイミングでランプヒータ61を消灯させて、電磁波の照射を停止させる。
ここで、距離L2は、距離L1よりも規定距離だけ短い距離として設定されている。言い換えると、制御部31は、照射部60が電磁波の照射を停止するタイミングよりも、搬送ローラ対52a~52cにより熱膨張性シート10が規定距離を搬送されるのに要する時間前に、乾燥ファン67に送風を開始させる。規定距離は、具体的には、熱膨張性シート10の余白に相当する距離である。表発泡工程では、照射部60によって熱膨張性シート10に電磁波が照射されている最中に乾燥ファン67によって送風すると、熱膨張性シート10の加熱を弱めるため、熱膨張性シート10の膨張の度合いに影響を及ぼす。そのため、制御部31は、照射部60が電磁波を照射している間はなるべく乾燥ファン67を駆動させずに、照射部60が電磁波の照射を停止するタイミングよりも少し前のタイミングで、乾燥ファン67による送風を開始する。規定距離が余白に相当する距離に設定されていることで、熱膨張性シート10の余白以外の部分に電磁波を照射し終えてから、乾燥ファン67による送風を開始することができる。そのため、乾燥ファン67による送風が熱膨張性シート10の膨張に与える影響を少なくすることができる。
電磁波の照射を停止すると、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達したか否かを判定する(ステップS209)。熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達していない場合(ステップS209;NO)、制御部31は、ステップS209において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達すると(ステップS209;YES)、制御部31は、乾燥ファン67の駆動及び熱膨張性シート10の搬送を停止する(ステップS210)。具体的に説明すると、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55を通過して搬出部50bに搬出されると、乾燥ファン67及び搬送ローラ対52aから52cの駆動を停止させて、搬送ガイド53cへの送風及び熱膨張性シート10の搬送を停止させる。以上によって、図13に示した表発泡工程は終了する。
このように、表発泡工程では、制御部31は、照射部60によって電磁波を照射された熱膨張性シート10が搬送ガイド53cを搬送されている際に、乾燥ファン67を駆動させて搬送ガイド53cに向けて送風させる。これにより、制御部31は、熱膨張性シート10が加熱されることで搬送ガイド53cが結露し、それによって生じた水分が熱膨張性シート10に付着して熱膨張性シート10が損なわれることを抑制する。
なお、ステップS6における裏発泡工程は、基本的には図13に示した表発泡工程と同様である。但し、裏発泡工程は、表発泡工程において基材11に含まれる水分が既に乾燥され、更に乾燥工程においてカラーインク層15が既に乾燥された後に実施されるため、裏発泡工程では、乾燥ファン67を駆動させない。そのため、裏発泡工程では、図13に示した表発泡工程に比べて、ステップS207における乾燥ファン67の駆動を開始する処理と、ステップS210における乾燥ファン67の駆動を停止する処理と、が省略される。裏発泡工程におけるそれ以外の処理は、表発泡工程と同様である。
続いて図14を参照して、ステップS4におけるカラーインク層15の乾燥工程について説明する。図14に示す乾燥工程は、熱膨張性シート10がその表面にカラーインク層15が印刷された状態で裏面を上に向けて照射装置50の搬入部50aにセットされると、開始する。
乾燥工程を開始すると、制御部31は、バーコードBを読み取る(ステップS401)。具体的に説明すると、制御部31は、バーコードリーダ65及びリフレクタ66を介して、セットされた熱膨張性シート10の裏面の端部に設けられたバーコードBを読み取る。これにより、制御部31は、セットされた熱膨張性シート10が適正なシートであるか否かを判別する。また、制御部31は、バーコードBを読み取ることにより、セットされた熱膨張性シート10のサイズ、厚み及び種類の情報を取得する。
バーコードBを読み取ると、制御部31は、熱膨張性シート10の搬送を開始する(ステップS402)。具体的に説明すると、制御部31は、搬送ローラ対52a~52cを駆動させて、搬入部50aにセットされた熱膨張性シート10を筐体51の内部に搬送し始める。
熱膨張性シート10の搬送を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達したか否かを判定する(ステップS403)。熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達していない場合(ステップS403;NO)、制御部31は、ステップS403において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達すると(ステップS403;YES)、制御部31は、乾燥ファン67の駆動を開始する(ステップS404)。具体的に説明すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達したタイミングで乾燥ファン67を駆動させて、搬送ガイド53cに向けて送風を開始する。
ここで、乾燥工程では、照射部60が電磁波を照射している間に乾燥ファン67を駆動させても、表発泡工程のように熱膨張性シート10の膨張の度合いに影響を及ぼさない。そのため、乾燥工程では、制御部31は、照射部60が電磁波の照射を開始するよりも前から乾燥ファン67を駆動させて、搬送ガイド53cを乾燥させる。
乾燥ファン67の駆動を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が入口センサ54に到達してから距離L1搬送後に、照射部60による電磁波の照射を開始する(ステップS405)。具体的に説明すると、制御部31は、入口センサ54によって熱膨張性シート10の前端を検知した後、当該前端が照射部60によって電磁波が照射される位置に到達したタイミングでランプヒータ61を点灯させて、熱膨張性シート10の表面に向けて電磁波の照射を開始させる。
電磁波の照射を開始すると、制御部31は、熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達したか否かを判定する(ステップS406)。熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達していない場合(ステップS406;NO)、制御部31は、ステップS406において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
熱膨張性シート10の前端が出口センサ55に到達すると(ステップS406;YES)、制御部31は、続いて、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達したか否かを判定する(ステップS407)。熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達していない場合(ステップS407;NO)、制御部31は、ステップS407において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達すると(ステップS407;YES)、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が入口センサ54に到達してから距離L1搬送後に、照射部60による電磁波の照射を停止する(ステップS408)。具体的に説明すると、制御部31は、入口センサ54によって熱膨張性シート10の後端を検知した後、当該後端が照射部60によって電磁波が照射される位置を通過したタイミングでランプヒータ61を消灯させて、電磁波の照射を停止させる。
電磁波の照射を停止すると、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達したか否かを判定する(ステップS409)。熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達していない場合(ステップS409;NO)、制御部31は、ステップS409において、引き続き熱膨張性シート10を搬送する。
その後、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55に到達すると(ステップS409;YES)、制御部31は、乾燥ファン67の駆動及び熱膨張性シート10の搬送を停止する(ステップS410)。具体的に説明すると、制御部31は、熱膨張性シート10の後端が出口センサ55を通過して搬出部50bに搬出されると、乾燥ファン67及び搬送ローラ対52aから52cの駆動を停止させて、搬送ガイド53cへの送風及び熱膨張性シート10の搬送を停止させる。以上によって、図14に示した乾燥工程は終了する。
このように、乾燥工程では、照射部60が熱膨張性シート10に電磁波の照射を開始してから電磁波の照射を停止するまでの間、乾燥ファン67を駆動させて搬送ガイド53cに向けて送風させる。これにより、制御部31は、カラーインク層15のインクが搬送ガイド53c及び熱膨張性シート10に付着して熱膨張性シート10が損なわれることを抑制する。
以上説明したように、本実施形態に係る照射装置50は、搬送ローラ対52a~52cにより搬送される熱膨張性シート10に電磁波を照射する装置であって、電磁波が照射された熱膨張性シート10が搬送ガイド53cを搬送されている際に、搬送ガイド53cの下側に設けられた乾燥ファン67によって、搬送ガイド53cに向けて送風する。これにより、表発泡工程において搬送ガイド53cの結露によって生じた水分が熱膨張性シート10に付着すること、及び、乾燥工程においてインクの水分が熱膨張性シート10に付着することによって、熱膨張性シート10が損なわれることを抑制することができる。その結果、照射装置50において、熱膨張性シート10を精度良く膨張させて所望の造形物を安定して得ることにつながる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、1つの乾燥ファン67が搬送ガイド53cの下側に設置されていた。しかしながら、本発明において、乾燥ファン67は、照射部60によって電磁波が照射された後の熱膨張性シート10が搬送される搬送ガイド53cに送風することができれば、どの位置に設置されていても良い。例えば、乾燥ファン67は、搬送ガイド53cとは離れた位置に設置されており、ダクトを介して搬送ガイド53cに送風しても良い。また、乾燥ファン67として、2つ以上のファンが設置されていても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート10は、基材11と熱膨張層12とインク受容層13とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート10の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート10は、インク受容層13を備えなくても良い。或いは、熱膨張性シート10は、基材11と熱膨張層12との間、熱膨張層12とインク受容層13との間、インク受容層13の表面、又は基材11の裏面に、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態では、印刷装置40と照射装置50とは、一体となって1つの造形システム1を構成しており、それぞれ共通の制御ユニット30によって制御されて動作した。しかしながら、本発明に係る造形システム1において、印刷装置40と照射装置50とは、それぞれ独立した装置であっても良い。印刷装置40と照射装置50とが独立した装置である場合、印刷装置40と照射装置50とは、制御ユニット30及び表示ユニット35に相当する機能をそれぞれ個別に備えていても良い。例えば、照射装置50は、搬送ローラ対52a~52c、照射部60、乾燥ファン67等を制御して照射装置50の動作を制御する制御部の機能を、独自に備えていても良い。
印刷装置40の印刷方式は、インクジェット方式に限らず、任意の印刷方式であっても良い。変換層14,16は、電磁波を熱に変換しやすい材料であれば、カーボンブラックを含む黒インク以外の材料によって形成されても良い。この場合、変換層14,16は、印刷装置40以外の手段によって形成されるものであっても良い。
上記実施形態では、照射装置50は、加熱により膨張する熱膨張性シート10に対して電磁波を照射することで、発泡及び乾燥工程を実施した。しかしながら、本発明において、照射装置50において電磁波が照射されるシートは、熱膨張性シート10に限らず、任意の種類のシートであっても良い。言い換えると、照射装置50は、任意の種類のシートに対して電磁波を照射することにより、シートに含まれる水分を乾燥させても良い。
上記実施形態において、制御ユニット30は、CPUを備えており、CPUの機能によって、印刷装置40及び照射装置50を制御した。しかし、本発明において、制御ユニット30は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備えていても良い。この場合、各処理を個別のハードウェアで実行しても良いし、各処理をまとめて単一のハードウェアで実行しても良い。また、各処理のうち、一部を専用のハードウェアによって実行し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実行しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた照射装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、照射装置を制御するコンピュータに、上記実施形態で例示した照射装置50による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した照射装置50による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
シートに電磁波を照射する照射部と、
前記シートを搬出部に導く金属製の搬送ガイドと、
前記電磁波の照射により発生する前記シートからの水分が、前記搬送ガイドに結露として付着することを送風により抑制する制御部と、
を備える特徴とする照射装置。
(付記2)
シートに電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波に対して反射性を有し、前記シートを搬出部に導く搬送ガイドと、
前記電磁波の照射により発生する前記シートからの水分が、前記搬送ガイドに結露として付着することを送風により抑制する制御部と、
を備える特徴とする照射装置。
(付記3)
搬送ローラ対により搬送されるシートに電磁波を照射する照射部と、
前記照射部により電磁波が照射された前記シートを搬出部に導く搬送ガイドと、
前記搬送ガイドに向けて送風するファンと、を備え、
前記ファンは、前記搬送ガイドを介して前記シートに送風する、
ことを特徴とする照射装置。
(付記4)
前記ファンは、前記搬送ガイド上を搬送されている前記シートの下方から送風することを特徴とする付記3に記載の照射装置。
(付記5)
搬送ローラ対により搬送されるシートに電磁波を照射する照射部と、
前記照射部により電磁波が照射された前記シートを搬出部に導く搬送ガイドと、
前記搬送ローラ対により前記シートが前記搬送ガイド上を搬送されている際に、前記搬送ガイドに向けて送風するファンと、
を備えることを特徴とする照射装置。
(付記6)
前記ファンは、前記搬送ガイドに対して、前記照射部が設けられた側とは反対側に設けられている、
ことを特徴とする付記5に記載の照射装置。
(付記7)
前記シートは、加熱により膨張する熱膨張性シートであり、
前記シートの表面に電磁波を熱に変換する変換層が印刷された状態で、前記シートが前記表面を前記照射部に向けて前記搬送ローラ対により搬送されている場合、前記照射部は、前記シートに電磁波を照射することにより前記シートを膨張させる、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の照射装置。
(付記8)
前記ファンは、前記照射部が前記搬送ローラ対により搬送される前記シートに電磁波の照射を開始した後、当該電磁波の照射を停止する前に、前記搬送ガイドに向けて送風を開始する、
ことを特徴とする付記7に記載の照射装置。
(付記9)
前記ファンは、前記照射部が前記電磁波の照射を停止するタイミングよりも、前記搬送ローラ対により前記熱膨張性シートが規定距離を搬送されるのに要する時間前に、前記搬送ガイドに向けて送風を開始する、
ことを特徴とする付記8に記載の照射装置。
(付記10)
前記シートの表面に少なくとも1色のインクでカラーインク層が印刷された状態で、前記シートが前記表面を前記照射部とは反対側に向けて前記搬送ローラ対により搬送されている場合、前記照射部は、前記シートに電磁波を照射することにより前記カラーインク層を乾燥させる、
ことを特徴とする付記5から9のいずれか1つに記載の照射装置。
(付記11)
前記ファンは、前記照射部が前記搬送ローラ対により搬送される前記シートに電磁波の照射を開始してから当該電磁波の照射を停止するまでの間、前記搬送ガイドに向けて送風する、
ことを特徴とする付記10に記載の照射装置。
(付記12)
付記5から11のいずれか1つに記載の照射装置と、印刷装置と、を備える造形システムであって、
前記シートは、加熱により膨張する熱膨張性シートであり、
前記印刷装置は、電磁波を熱に変換する変換層を前記シートに印刷し、
前記照射装置において、
前記搬送ローラ対は、前記変換層が印刷された前記シートを搬送し、
前記照射部は、前記搬送ローラ対により搬送される前記シートに電磁波を照射することにより、前記シートを膨張させる、
ことを特徴とする造形システム。