以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
<熱膨張性シート100>
図1に、本実施形態に係る立体画像形成システム1によって立体画像を形成するための熱膨張性シート100の構成を示す。熱膨張性シート100は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって立体画像が形成される媒体である。立体画像とは、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートに垂直な方向に膨張することによって形成される3次元状の画像である。
図1に示すように、熱膨張性シート100は、基材101と、熱膨張層102と、インク受容層103とを、この順に備えている。なお、図1は、立体画像が形成される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート100の断面を示している。
基材101は、熱膨張性シート100の元となるシート状の媒体である。基材101は、熱膨張層102とインク受容層103とを支持する支持体であって、熱膨張性シート100の強度を保持する役割を担う。基材101として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材101の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層102は、基材101の上側に積層されており、規定の膨張温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層102は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5~50μmの熱膨張性のマイクロカプセルである。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層102は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層103は、熱膨張層102の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層103は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層103は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層103の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている汎用的な材料を用いることができる。
図2に、熱膨張性シート100の裏面を示す。熱膨張性シート100の裏面とは、熱膨張性シート100の基材101側の面であって、基材101の裏面に相当する。これに対して、熱膨張性シート100の表面とは、熱膨張性シート100のインク受容層103側の面であって、インク受容層103の表面に相当する。
図2に示すように、熱膨張性シート100の裏面には、その縁部に沿って複数のバーコードBが付されている。バーコードBは、熱膨張性シート100を識別するための識別子であって、熱膨張性シート100が立体画像を形成するための専用のシートであることを示す情報である。バーコードBは、後述する立体画像形成システム1の膨張装置50によって読み取られ、膨張装置50において熱膨張性シート100の使用の可否を判定するための識別子である。
<立体画像形成システム1>
次に、図3を参照して、熱膨張性シート100に立体画像を形成するための立体画像形成システム1について説明する。図3に示すように、立体画像形成システム1は、端末装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
端末装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であって、印刷装置40及び膨張装置50を制御する制御ユニットである。図4に示すように、端末装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、端末装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム又はデータ、及び、印刷装置40によって印刷されるカラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを記憶する。
操作部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部33を操作することによって、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを編集する操作、印刷装置40又は膨張装置50に対する操作等を入力することができる。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。例えば、表示部34は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを表示する。また、表示部34は、必要に応じて、印刷装置40又は膨張装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを、可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。端末装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40及び膨張装置50と通信する。
<印刷装置40>
印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に画像を印刷する印刷ユニットである。印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。
図5に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図5に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート100が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に挟持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート100の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート100の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート100を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して端末装置30と接続されている。端末装置30は、フレキシブル通信ケーブル46を介して、印刷ヘッド42、モータ45m、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御する。具体的に説明すると、端末装置30は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート100を搬送させる。また、端末装置30は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。
印刷装置40は、端末装置30から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷装置40は、画像データとして、カラー画像データと表面発泡データと裏面発泡データとを取得する。カラー画像データは、熱膨張性シート100の表面に印刷するカラー画像を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを熱膨張性シート100に向けて噴射させて、カラー画像を印刷する。
これに対して、表面発泡データは、熱膨張性シート100の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。また、裏面発泡データは、熱膨張性シート100の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、カーボンブラックを含むブラックKの黒色インクを熱膨張性シート100に向けて噴射させて、黒色による濃淡画像(濃淡パターン)を印刷する。カーボンブラックを含む黒色インクは、光を熱に変換する材料の一例である。
<膨張装置50>
膨張装置50は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に光を照射し、熱膨張性シート100の表面又は裏面に印刷された濃淡画像を発熱させて、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像が印刷された部分を膨張させる膨張ユニットである。
図6に、膨張装置50の構成を模式的に示す。図6において、X方向は、膨張装置50の幅方向に相当し、Y方向は、膨張装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。図6に示すように、膨張装置50は、筐体51と、挿入部52と、トレイ53と、換気部54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、電源基板69と、制御基板70と、を備える。
挿入部52は、開閉式の扉を備えており、立体画像を形成する対象となる熱膨張性シート100を筐体51の内部に挿入するための機構である。ユーザは、挿入部52を開き、トレイ53をスライドさせて手前側に引き出した後、熱膨張性シート100をその表面又は裏面を上に向けてトレイ53の上に設置する。このとき、ユーザは、熱膨張性シート100のバーコードBが付された端部が奥側に位置するように、熱膨張性シート100をトレイ53の上に設置する。そして、熱膨張性シート100が設置されたトレイ53を筐体51の内部に戻し、挿入部52を閉めると、熱膨張性シート100は、照射部60によって光を照射可能な位置に配置される。
トレイ53は、熱膨張性シート100を筐体51内の適正な位置に設置するための機構である。トレイ53は、設置された熱膨張性シート100の4辺の縁部を上から抑えることで固定する。トレイ53は、熱膨張性シート100を検出するセンサを備えており、熱膨張性シート100が設置されたか否か、及び、熱膨張性シート100が設置された場合にその熱膨張性シート100のサイズを検出する。
換気部54は、膨張装置50における奥側の端部に設けられており、膨張装置50の内部を換気する換気手段として機能する。換気部54は、少なくとも1つの排気ファンを備えており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。筐体51内の空気は、冷却部64によって外部から供給されて、換気部54によって外部に排出される。換気部54は、冷却部64によって外部から供給された空気を外部に排出することによって、筐体51の内部の空気を循環させる。
搬送モータ55は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータであって、照射部60を熱膨張性シート100の表面又は裏面に沿って移動させる。筐体51の内部には、Y方向に、すなわち熱膨張性シート100の表面又は裏面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。照射部60は、搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、熱膨張性シート100との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。搬送モータ55は、熱膨張性シート100と照射部60とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
具体的に説明すると、照射部60は、熱膨張性シート100の奥側の端部に対応する第1の位置P1と、熱膨張性シート100の手前側の端部に対応する第2の位置P2と、の間で往復移動する。第1の位置P1は、照射部60の初期位置(ホームポジション)である。照射部60は、膨張装置50が動作していない時には第1の位置P1で待機している。
第1の位置P1は、筐体51内の挿入部52が設けられた側とは反対側の位置であり、第2の位置P2は、筐体51内の挿入部52が設けられた側の位置である。言い換えると、第1の位置P1は、第2の位置P2よりも、膨張装置50において熱膨張性シート100が挿入される側の端部から離れた位置である。このように照射部60の初期位置が筐体51内における挿入部52とは反対側に設けられていることで、熱膨張性シート100を筐体51内に挿入する際にユーザが照射部60に触れないようにできる。そのため、ユーザは、熱膨張性シート100を円滑に設置することができる。
照射部60は、光を照射する機構であって、トレイ53の上に配置された熱膨張性シート100に光を照射する照射手段として機能する。図6に示すように、照射部60は、ランプヒータ61と、反射板62と、温度センサ63と、冷却部64と、バーコードリーダ65と、を備える。
ランプヒータ61は、例えばハロゲンランプを備えており、熱膨張性シート100に対して、近赤外領域(波長750~1400nm)、可視光領域(波長380~750nm)、又は、中赤外領域(波長1400~4000nm)の光を照射する。カーボンブラックを含む黒色インクによる濃淡画像が印刷された熱膨張性シート100に光を照射すると、濃淡画像が印刷された部分では、濃淡画像が印刷されていない部分に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像が印刷された部分が主に加熱され、熱膨張剤が膨張を開始する温度に達すると膨張する。
反射板62は、照射部60から照射された光を受ける被照射体であって、ランプヒータ61から照射された光を熱膨張性シート100に向けて反射する機構である。反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から上側に向けて照射された光を下側に向けて反射する。反射板62によって、ランプヒータ61から照射された光を効率良く熱膨張性シート100に照射することができる。
温度センサ63は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板62の温度を測定する測定手段として機能する。温度センサ63は、ランプヒータ61が光を照射している際に、反射板62の温度を測定する。反射板62はランプヒータ61から照射される光を受けるため、ランプヒータ61が照射している光の強さ、すなわち光エネルギーの大きさに応じて変化する。そのため、反射板62の温度は、ランプヒータ61が照射している光の強さの指標として用いることができる。
冷却部64は、反射板62の上側に設けられており、膨張装置50の内部を冷却する冷却手段として機能する。冷却部64は、少なくとも1つの給気ファンを備えており、膨張装置50の外部から照射部60に空気を送ることによって、照射部60を冷却する。具体的に説明すると、冷却部64は、冷却部64の上部に設けられた給気口から膨張装置50の外部の空気を吸い込んで、吸い込んだ空気を照射部60に送る。冷却部64によって吸い込まれた空気は、反射板62に供給され、反射板62が空気冷却される。また、冷却部64によって吸い込まれた空気は、照射部60を通って膨張装置50の内部に供給され、トレイ53に設置された熱膨張性シート100を含む筐体51内の各部が冷却される。
バーコードリーダ65は、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを読み取る読み取り手段として機能する。バーコードリーダ65は、熱膨張性シート100が表面を上側に向けて膨張装置50に挿入された場合、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを、図示しないリフレクタを介して読み取る。リフレクタは、トレイ53の奥側の端部に設置されており、バーコードリーダ65がバーコードBを逆側から読み取ることができるようにするための反射鏡である。これに対して、熱膨張性シート100が裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入された場合、バーコードリーダ65は、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを、リフレクタを介さずに直接読み取る。
膨張装置50は、バーコードリーダ65によってバーコードBを読み取ることができたか否かに応じて、トレイ53に設置された媒体が膨張装置50で使用可能か否かを判別する。立体画像を形成するための専用のシートではない媒体が膨張装置50に挿入されると、膨張装置50が正常に動作しない可能性がある。そのため、膨張装置50は、バーコードリーダ65によってバーコードBを読み取れなかった場合には、照射部60による光照射処理を開始しない。これにより、膨張装置50の誤動作を抑制する。
電源基板69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、膨張装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気部54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却部64は、電源基板69から電力を得て動作する。
制御基板70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられており、膨張装置50の各部の動作を制御する。図7に示すように、制御基板70は、制御部71と、記憶部72と、計時部73と、通信部74と、を備える。
制御部71は、CPU、ROM及びRAMを備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して膨張装置50の各部と接続されている。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部71において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、膨張装置50全体の動作を制御する。
記憶部72は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部72は、制御部71によって実行されるプログラム又はデータ、及び、制御部71が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。計時部73は、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスを備えており、膨張装置50の電源がオフの間も計時を継続する。
通信部74は、端末装置30と通信するためのインタフェースを備える。通信部74は、制御部71の制御の下、端末装置30と有線又は無線で通信する。例えば、通信部74は、端末装置30においてユーザから入力された光照射処理を開始する指示を、端末装置30から取得する。また、通信部74は、膨張装置50の現在の状態を示す情報を端末装置30に送信する。
図7に示すように、制御部71は、機能的に、膨張処理手段として機能する膨張処理部81と、速度決定手段として機能する速度決定部82と、を備える。制御部71において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
膨張処理部81は、熱膨張性シート100を膨張させる膨張処理を実行する。具体的に説明すると、膨張処理部81は、搬送モータ55によって照射部60を移動させながら、照射部60に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。
図8に、膨張装置50が膨張処理を実行する様子を示す。膨張処理において、膨張処理部81は、照射部60に電源電圧を供給してランプヒータ61を点灯させる。そして、膨張処理部81は、照射部60に光を照射させている状態で搬送モータ55を駆動させることによって、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けて移動させる。このように、膨張処理部81は、照射部60を熱膨張性シート100の端から端まで移動させることで、熱膨張性シート100の表面又は裏面の全体に亘って光を照射させる。
照射部60によって光が照射されると、熱膨張性シート100のうちのカーボンブラックを含む濃淡画像が印刷された部分は発熱し、規定の膨張温度にまで加熱されると膨張する。規定の膨張温度は、熱膨張層102に含まれる熱膨張剤が膨張を開始する温度であって、例えば80℃から120℃程度の温度である。熱膨張性シート100のうちの濃淡画像が印刷された部分が膨張すると、熱膨張性シート100に立体画像が形成される。
このような熱膨張性シート100の膨張処理において、照射部60から照射される光の強さは、照射部60に供給される電源電圧によって変化する。具体的に説明すると、ランプヒータ61から照射される光エネルギーは、照射部60に供給される電源電圧の変動率の約3.2乗倍程度、変化する。そのため、電源電圧が変動すると、照射部60から照射される光の強さは大きく変化し、これに伴って熱膨張性シート100の膨張の度合いも変化する。
図9に、照射部60に供給される電源電圧と、熱膨張性シート100の発泡高さと、の関係を示す。図9において、縦軸と横軸とは、それぞれ発泡高さと電源電圧とを変動率で示している。熱膨張性シート100の発泡高さとは、熱膨張性シート100が加熱されて膨張した際にその表面又は裏面から盛り上がった高さを意味する。なお、図9における数値は理解を容易にするための一例である。図10及び図11も同様である。
図9に示すように、照射部60に供給される電源電圧が変動すると、熱膨張性シート100の発泡高さは、電源電圧の変動率に応じて変動する。具体的には、熱膨張性シート100の発泡高さは、電源電圧の変動率の2乗倍から3乗倍と大きく変動する。更には、照射部60から照射される光の強さは、電源電圧の変動だけではなく、ランプヒータ61の個体差、ランプヒータ61の性能の劣化等によっても変動する。このように発泡高さが変動すると、熱膨張性シート100を所望の高さに膨張させ難くなるため、熱膨張性シート100に精度の良い立体画像を形成することが難しくなる。
このような熱膨張性シート100の発泡高さの変動を抑えるため、膨張装置50は、膨張処理部81が膨張処理を実行する前の予熱処理(プレヒート)の際に、搬送モータ55による照射部60の移動速度を調整する。そのために、速度決定部82は、温度センサ63によって測定された反射板62の温度に基づいて、搬送モータ55による照射部60の移動速度を決定する。
反射板62はランプヒータ61から照射される光を受けるため、反射板62の温度は、ランプヒータ61が点灯する(オンになる)と上昇し、ランプヒータ61が消灯する(オフになる)と低下する。そして、ランプヒータ61が点灯している際における反射板62の温度の上昇の度合いは、ランプヒータ61から照射される光の強さに応じて変化するため、照射部60に供給される電源電圧の変動によって変化する。
図10に、照射部60に供給される電源電圧と、反射板62の温度上昇速度と、の関係を示す。図10に示すように、反射板62の温度上昇速度は、照射部60に供給される電源電圧と相関する。具体的に説明すると、電源電圧が大きくなると、照射部60から照射される光エネルギーが大きくなるため、反射板62の温度上昇速度は上がり、電源電圧が小さくなると、照射部60から照射される光エネルギーが小さくなるため、反射板62の温度上昇速度は下がる。このように、反射板62の温度上昇速度は、照射部60に供給される電源電圧、及び照射部60から照射される光の強さの指標として用いることができる。
速度決定部82は、照射部60が熱膨張性シート100に光を照射するのに先立って予備的に光を照射している際に、照射部60から照射される光に基づいて、反射板62の温度の上昇速度を取得する取得手段として機能する。具体的に説明すると、速度決定部82は、反射板62の温度の上昇速度として、温度センサ63によって測定された温度の、規定時間の間における上昇値、すなわち規定時間の間における上昇温度を取得する。規定時間は、任意の長さの時間である。そして、速度決定部82は、上昇温度に応じて反射板62の温度の上昇速度を取得し、上昇速度に基づいて、照射部60の移動速度を設定する。速度決定部82は、照射部60の移動速度を設定する設定手段として機能する。
照射部60の移動速度は、熱膨張性シート100を膨張させる際に、照射部60を第1の位置P1から第2の位置P2に向けて移動させる速度である。照射部60の移動速度が変化すると、照射部60が第1の位置P1から第2の位置P2まで移動する移動時間、すなわち照射部60による照射時間が変化するため、熱膨張性シート100の各部分に照射される光の量も変化する。そのため、熱膨張性シート100の発泡高さは、照射部60の移動速度に応じて変化する。
図11に、照射部60の移動速度と、その移動速度で移動する照射部60によって一定の強さの光が照射された場合における熱膨張性シート100の発泡高さと、の関係を示す。図11において、縦軸と横軸とは、それぞれ発泡高さと移動速度とを変化率で示している。図11に示すように、照射部60の移動速度が高くなるほど照射時間が短くなるため、熱膨張性シート100の発泡高さは低くなる。これに対して、照射部60の移動速度が低くなるほど照射時間が長くなるため、熱膨張性シート100の発泡高さは高くなる。このように、照射部60の移動速度を変更することによって、熱膨張性シート100の発泡高さを調整することができる。
速度決定部82は、図9から図11に示した各パラメータの関係に基づいて、照射部60に供給される電源電圧の変動を打ち消すように、照射部60の移動速度を変更する。具体的に説明すると、速度決定部82は、温度センサ63によって測定された温度の、規定時間の間における上昇値が第1の値である場合よりも、上昇値が第1の値より大きい第2の値である場合の方が、照射部60の移動速度を高い速度に決定する。言い換えると、速度決定部82は、反射板62の温度の上昇速度がより大きい場合に、照射部60の移動速度をより高い速度に設定する。
具体的に説明すると、温度センサ63によって測定された温度の上昇値が相対的に小さい第1の値である場合、すなわち反射板62の温度上昇速度が相対的に低い場合には、ランプヒータ61から照射される光の強さは相対的に小さい。そのため、速度決定部82は、照射部60の移動速度を相対的に低く設定することで、照射時間を長くする。これに対して、温度センサ63によって測定された温度の上昇値が相対的に大きい第2の値である場合、すなわち反射板62の温度上昇速度が相対的に高い場合には、ランプヒータ61から照射される光の強さは相対的に大きい。そのため、速度決定部82は、照射部60の移動速度を相対的に高く設定することで、照射時間を短くする。
温度の上昇値から移動速度に変換するための情報は、変換テーブル又は変換式として記憶部72に予め記憶されている。速度決定部82は、記憶部72に記憶された変換テーブルを参照して、或いは変換式を適用して、温度センサ63によって測定された温度の上昇値に対応する移動速度を、照射部60の移動速度として決定する。
膨張処理部81は、このようにして速度決定部82によって決定された移動速度で照射部60を移動させながら、照射部60に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。上述したように、照射部60の移動速度は、照射部60に供給される電源電圧の変動を打ち消すように調整されている。そのため、電源電圧が変動したとしても、熱膨張性シート100を所望の高さに膨張させることができ、熱膨張性シート100に立体画像を精度良く形成することができる。
このような膨張処理によって、照射部60は第2の位置P2に到達する。膨張処理部81は、照射部60を第2の位置P2から第1の位置P1に向けて移動させながら、すなわち照射部60を初期位置に戻しながら、必要に応じて、換気部54による換気処理、又は冷却部64による冷却処理を実行する。具体的に説明すると、膨張処理部81は、換気部54を駆動させて、膨張処理によって加熱された筐体51内の空気を外部に排出する。また、膨張処理部81は、冷却部64を駆動させて、膨張処理によって加熱された照射部60及び熱膨張性シート100を冷却する。
<立体画像形成処理>
以上のように構成された立体画像形成システム1において実行される立体画像形成処理の流れについて、図12に示すフローチャート及び図13(a)~(e)に示す熱膨張性シート100の断面図を参照して説明する。
第1に、ユーザは、立体画像が形成される前の熱膨張性シート100を準備し、端末装置30の操作部33を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の表面に光熱変換層104を印刷する(ステップS1)。光熱変換層104は、光を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート100の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図13(a)に示すように、インク受容層103上に光熱変換層104が形成される。
第2に、ユーザは、光熱変換層104が印刷された熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の表面に照射部60によって光を照射する(ステップS2)。熱膨張性シート100の表面に印刷された光熱変換層104は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図13(b)に示すように、熱膨張性シート100のうちの光熱変換層104が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
第3に、ユーザは、表面が加熱されて膨張した熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の表面にカラーインク層105を印刷する(ステップS3)。具体的に説明すると、印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート100の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図13(c)に示すように、インク受容層103及び光熱変換層104の上にカラーインク層105が形成される。
なお、印刷装置40は、カラーインク層105において黒又はグレーの色の画像を印刷する場合には、シアンC、マゼンタM及びイエローYの3色のインクを混色して形成するか、或いはカーボンブラックを含まない黒色のインクを更に使用することによって形成する。これによって、カラーインク層105が形成された部分が膨張装置50において加熱されることを回避する。
第4に、ユーザは、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100を裏返して、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に照射部60によって光を照射し、熱膨張性シート100を裏面から加熱する。これにより、膨張装置50は、カラーインク層105中に含まれる溶媒を揮発させて、カラーインク層105を乾燥させる(ステップS4)。カラーインク層105を乾燥させることによって、後の工程で熱膨張性シート100を膨張させ易くする。
第5に、ユーザは、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に光熱変換層106を印刷する(ステップS5)。光熱変換層106は、熱膨張性シート100の表面に印刷された光熱変換層104と同様に、光を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート100の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図13(d)に示すように、基材101の裏面に光熱変換層106が形成される。
第6に、ユーザは、光熱変換層106が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に、照射部60によって光を照射する(ステップS6)。熱膨張性シート100の裏面に印刷された光熱変換層106は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図13(e)に示すように、熱膨張性シート100のうちの光熱変換層106が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
なお、図13(a)~(e)では、理解を容易にするため、光熱変換層104及びカラーインク層105は、インク受容層103の上に形成されているように示されている。しかしながら、より正確には、カラーインク及び黒色インクは、インク受容層103の内部に吸収されるため、インク受容層103の中に形成される。
以上のように、熱膨張性シート100のうちの光熱変換層104,106が形成された部分が膨張することによって、熱膨張性シート100にカラーの立体画像が形成される。光熱変換層104,106は、その濃度が濃い部分ほど大きく加熱されるため、より大きく膨張する。そのため、目標となる高さに応じて光熱変換層104,106の濃淡を調整することで、様々な形状の立体画像を得ることができる。
なお、熱膨張性シート100を表面から加熱する処理と裏面から加熱する処理とのうちのどちらか一方を省略しても良い。例えば、熱膨張性シート100の表面のみを加熱して膨張させる場合には、図12におけるステップS5,S6は省略される。これに対して、熱膨張性シート100の裏面のみを加熱して膨張させる場合には、図12におけるステップS1,S2は省略される。また、ステップS3におけるカラー画像の印刷は、ステップS6における熱膨張性シート100を裏面から加熱する処理の後で実行されても良い。
また、モノクロの立体画像を形成する場合には、印刷装置40は、ステップS3において、カラー画像の代わりにモノクロ画像を印刷しても良い。この場合、インク受容層103及び光熱変換層104の上には、カラーインク層105の代わりに黒インクによる層が形成される。
次に、図14に示すフローチャートを参照して、ステップS2,S6において、膨張装置50によって実行される処理の詳細について説明する。
ステップS2において、ユーザは、熱膨張性シート100をその表面を上側に向けてトレイ53に設置して、膨張装置50に挿入する。また、ステップS6において、ユーザは、熱膨張性シート100をその裏面を上側に向けてトレイ53に設置して、膨張装置50に挿入する。その後、ユーザは、端末装置30の操作部33を操作して、熱膨張性シート100を膨張させる指示を入力する。膨張装置50の制御部71は、このようにしてユーザから入力された指示を端末装置30から受信すると、図14に示す処理を開始する。
処理を開始すると、制御部71は、熱膨張性シート100が正しく設置されているか否かを判定する(ステップS11)。具体的に説明すると、制御部71は、トレイ53に設けられたセンサを介して、トレイ53上の適正な位置に熱膨張性シート100が設置されているか否かを判定する。
熱膨張性シート100が正しく設置されていない場合(ステップS11;NO)、制御部71は、処理をステップS11に留める。このとき、制御部71は、警告を発することで、熱膨張性シート100が正しく設置されていない旨をユーザに報知し、熱膨張性シート100を正しく設置するようにユーザに要求する。
熱膨張性シート100が正しく設置されている場合(ステップS11;YES)、制御部71は、バーコードリーダ65を介して熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを読み取れたか否かを判定する(ステップS12)。バーコードBは、熱膨張性シート100の使用の可否を判定するための識別子であって、トレイ53に設置された熱膨張性シート100の奥側の端部に設けられている。
熱膨張性シート100に付されたバーコードBを読み取ることがでなかった場合(ステップS12;NO)、制御部71は、処理をステップS11に戻す。このとき、制御部71は、熱膨張性シート100が使用できない旨をユーザに報知して、熱膨張性シート100を適正なものに交換するようにユーザに要求する。
バーコードBを読み取ることができた場合(ステップS12;YES)、制御部71は、予熱処理(プレヒート)を実行する(ステップS13)。予熱処理は、膨張装置50が主要動作である膨張処理を開始する前に、照射部60及び熱膨張性シート100を予備的に加熱する処理である。膨張処理部81は、熱膨張性シート100を膨張させる前に、照射部60に光を照射させて予熱する予熱処理を実行する。予熱処理の詳細については、図15に示すフローチャートを参照して説明する。
図15に示す予熱処理を開始すると、制御部71は、ランプヒータ61を点灯する(ステップS21)。具体的に説明すると、制御部71は、円滑に膨張処理を実行できるように、ランプヒータ61を点灯して照射部60を予め加熱して温めておく。このとき、制御部71は、必要に応じて搬送モータ55を駆動し、照射部60を第1の位置P1と第2の位置P2との間で往復移動させて、熱膨張性シート100の全体を満遍なく温める。これにより、膨張処理において熱膨張性シート100が局所的に加熱されることを抑制する。
ランプヒータ61を点灯すると、ランプヒータ61から光が照射される反射板62の温度は上昇し始める。このとき、制御部71は、反射板62の温度の上昇速度を測定する(ステップS22)。具体的に説明すると、温度センサ63は、予熱処理の際に、反射板62の温度を測定する。制御部71は、温度センサ63によって測定された温度を参照して、ランプヒータ61の点灯を開始した後の規定時間の間における反射板62の温度の上昇値を取得する。ステップS22は、測定ステップの一例である。
反射板62の温度上昇速度を測定すると、制御部71は、反射板62の温度が所定温度まで上昇したか否かを判定する(ステップS23)。所定温度は、予熱処理における上限温度であって、予熱処理において熱膨張性シート100が膨張を開始しないように、規定の膨張温度未満の温度(例えば70℃)に設定される。反射板62の温度が所定温度まで上昇していない場合(ステップS23;NO)、制御部71は、ステップS23に留まり、反射板62の温度が所定温度まで上昇するまで待機する。
最終的に、反射板62の温度が所定温度まで上昇すると(ステップS23;YES)、制御部71は、ランプヒータ61を消灯する(ステップS24)。その後、制御部71は、必要に応じて、冷却部64を駆動させて照射部60を冷却し、反射板62の温度を例えば40℃に低下させる。
ランプヒータ61を消灯すると、制御部71は、ステップS22において測定した反射板62の温度上昇速度に応じて、照射部60の移動速度を決定する(ステップS25)。具体的に説明すると、制御部71は、反射板62の温度上昇速度が相対的に高い場合には、ランプヒータ61から照射される光エネルギーが相対的に大きいことが推定されるため、照射部60の移動速度を相対的に高い速度に決定して、照射時間を短くする。これに対して、制御部71は、反射板62の温度上昇速度が相対的に低い場合には、ランプヒータ61から照射される光エネルギーが相対的に小さいことが推定されるため、照射部60の移動速度を相対的に低い速度に決定して、照射時間を長くする。ステップS25において、制御部71は、速度決定部82として機能する。ステップS25は、速度決定ステップの一例である。以上によって、図15に示した予熱処理は終了する。
なお、制御部71は、図15に示した予熱処理を、膨張装置50が膨張処理を実行する度に実行しても良いし、膨張装置50に電源が投入された直後、又は、膨張装置50が予め定められた時間以上に亘って膨張処理を実行していない場合にのみ実行しても良い。
図14に示すフローチャートに戻る。予熱処理を実行した後、制御部71は、膨張処理を実行する(ステップS14)。具体的に説明すると、制御部71は、ランプヒータ61を点灯させて、照射部60に光を照射させる。そして、制御部71は、図8に示したように、搬送モータ55を駆動させることによって、光を照射している照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けて移動させる。このとき、制御部71は、照射部60を、ステップS25において決定した移動速度で移動させる。これにより、制御部71は、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像が印刷された部分を規定の温度以上に加熱して、熱膨張性シート100を膨張させる。ステップS14において、制御部71は、膨張処理部81として機能する。ステップS14は、膨張ステップの一例である。
以上説明したように、実施形態1に係る膨張装置50は、反射板62の温度上昇速度に応じて照射部60の移動速度を決定し、決定した移動速度で照射部60を移動させながら照射部60に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。反射板62の温度上昇速度を用いることで、照射部60から照射される光の強さを精度良く推定することができるため、照射部60から照射される光の強さの変動を打ち消すように、照射部60の移動速度を調整することができる。そのため、例えば照射部60に供給される電源電圧の変動によって、照射部60から照射される光の強さが変動したとしても、熱膨張性シート100を精度良く膨張させることができる。
一般的に、電源電圧を安定させる方法として、安定化電源を介在させる方法と、電源電圧の変動を検知して照射部60への供給電力を制御する方法と、が知られている。しかしながら、安定化電源を介在させる方法として知られているスライダック方式、タップ切替方式、位相制御方式等による方法は、いずれも装置の大型化とコストの増加につながる。また、電源電圧の変動を検知するためには、低電圧への変換及びA/D(Analog/Digital)変換による検知精度の問題があり、更にノイズ除去等の対策が必要となるため、装置の大型化とコストの増加につながる。
また、照射部60に供給される電源電圧を安定させたとしても、ランプヒータ61の個体差、ランプヒータ61の性能の劣化等の要因によっても、照射部60から照射される光の強さは変動する。このような要因による変動は、検知して解消することがそもそも難しい。
実施形態1に係る膨張装置50によれば、反射板62の温度を測定するという簡単な構成と、照射部60の移動速度を調整するという簡単な方法とによって、電源電圧の変動、ランプヒータ61の個体差、ランプヒータ61の性能の劣化等を加味した熱膨張性シート100の膨張処理を実行することができる。特に、反射板62の温度を測定することは、照射部60が通常の照射動作を実行するために元々必要である。そのため、実施形態1に係る膨張装置50は、構成を追加すること無く、簡単な構成で熱膨張性シート100を精度良く膨張させることができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2において、実施形態1と同様の構成については説明を省略する。
実施形態1に係る膨張装置50は、トレイ53に固定された熱膨張性シート100の表面又は裏面に沿って照射部60を移動させながら、照射部60に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させた。これに対して、実施形態2に係る膨張装置150は、熱膨張性シート100を移動させながら、特定の位置に固定された照射部60に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。
図16に、実施形態2に係る膨張装置150の構成を示す。図16に示すように、膨張装置150は、筐体151と、搬入部152と、排出部153と、搬送ローラ対156,157と、搬送ガイド158,159と、照射部160と、バーコードリーダ165と、リフレクタ166と、制御基板170と、を備える。
搬入部152は、熱膨張性シート100を搬入するための機構である。ユーザは、熱膨張性シート100の表面に光を照射して膨張させる場合には、熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて搬入部152にセットする。また、ユーザは、熱膨張性シート100の裏面に光を照射して膨張させる場合には、熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて搬入部152にセットする。搬入部152に設置された熱膨張性シート100は、搬送ガイド158,159によってガイドされながら、搬送ローラ対156,157によって筐体151の内部に搬送される。
バーコードリーダ165は、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを読み取る読み取り手段として機能する。リフレクタ166は、光を反射するミラーであって、バーコードリーダ165に対して熱膨張性シート100の搬送路を挟んで反対側に設置されている。バーコードリーダ165は、熱膨張性シート100が表面を上側に向けて搬入部152にセットされた場合、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを、リフレクタ166を介して読み取る。これに対して、熱膨張性シート100が裏面を上側に向けて搬入部152にセットされた場合、バーコードリーダ165は、熱膨張性シート100の裏面に付されたバーコードBを、リフレクタ166を介さずに直接読み取る。
膨張装置150は、バーコードリーダ165によってバーコードBを読み取ることができたか否かに応じて、搬入部152にセットされた媒体が膨張装置150で使用可能か否かを判別する。膨張装置150は、熱膨張性シート100に付されたバーコードBをバーコードリーダ165によって読み取ることができた場合、熱膨張性シート100を筐体151の内部に搬入する。これに対して、膨張装置150は、熱膨張性シート100に付されたバーコードBをバーコードリーダ165によって読み取ることがでなかった場合、熱膨張性シート100を筐体151の内部に搬入しない。これにより、膨張装置150の誤動作を抑制する。
搬送ローラ対156,157は、搬入部152によって搬入された熱膨張性シート100を挟持して、搬送ガイド158,159に沿って搬送する。搬送ローラ対156,157は、図17に示すように、搬送モータ155と少なくとも1個のローラ歯車を介して接続されている。搬送モータ155は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータである。搬送ローラ対156,157は、搬送モータ155の回転に伴う駆動力を動力源として回転し、熱膨張性シート100を、その表面又は裏面を照射部160に向けながら搬送する。
熱膨張性シート100は、搬送ローラ対156,157によって搬送されながら、照射部160によって照射される光を受ける。その結果、熱膨張性シート100のうちの光熱変換層104,106が印刷された部分が過熱されて膨張する。このように加熱されて膨張した熱膨張性シート100は、排出部153から排出される。搬送ローラ対156,157は、搬送モータ155と協働することによって、熱膨張性シート100と照射部160とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
照射部160は、光を照射する機構であって、搬送ローラ対156,157によって搬送される熱膨張性シート100に光を照射する照射手段として機能する。図17に示すように、照射部160は、ランプヒータ161と、反射板162と、温度センサ163と、冷却部164と、を備える。これらは、それぞれ実施形態1におけるランプヒータ61、反射板62、温度センサ63及び冷却部64と同様であるため、説明を省略する。言い換えると、照射部160は、実施形態1における照射部60と同様の構成及び機能を備える。但し、照射部160は、特定の位置に固定されており、実施形態1における照射部60のように移動しない。
制御基板170は、実施形態1における制御基板70と同様に、制御部71と、記憶部72と、計時部73と、通信部74と、を備える。制御部71は、CPU、ROM、RAM等を備えており、膨張処理部81及び速度決定部82のそれぞれとして機能する。
膨張処理部81は、搬送ローラ対156,157によって熱膨張性シート100を移動させながら、照射部160に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。具体的に説明すると、膨張処理部81は、搬入部152から熱膨張性シート100が搬入されたことに応答して、照射部160に電源電圧を供給してランプヒータ161を点灯させる。そして、膨張処理部81は、照射部160に光を照射させている状態で、搬送モータ155を駆動させることによって、搬送ローラ対156,157に熱膨張性シート100を搬送させる。これにより、熱膨張性シート100の表面又は裏面の全体に亘って光が照射される。
速度決定部82は、温度センサ163によって測定された反射板162の温度に基づいて、搬送ローラ対156,157によって搬送される熱膨張性シート100の移動速度(搬送速度)を決定する。速度決定部82が熱膨張性シート100の移動速度を決定する方法は、実施形態1において照射部60の移動速度を決定する方法と同様である。
具体的に説明すると、熱膨張性シート100の移動速度が高くなるほど、照射部160による照射時間が短くなるため、熱膨張性シート100の各部分に照射される光の量は減少する。これに対して、熱膨張性シート100の移動速度が低くなるほど、照射時間が長くなるため、熱膨張性シート100の各部分に照射される光の量は増加する。このような関係に基づいて、速度決定部82は、照射部160から照射される光の強さの変動を打ち消すように、熱膨張性シート100の移動速度を決定する。
速度決定部82は、予熱処理の際における反射板162の温度上昇速度として、温度センサ163によって測定された温度の、規定時間の間における上昇値を取得する。そして、速度決定部82は、取得した上昇値に応じて、熱膨張性シート100の移動速度を決定する。具体的に説明すると、速度決定部82は、反射板162の温度の上昇値が第1の値である場合よりも、上昇値が第1の値より大きい第2の値である場合の方が、熱膨張性シート100の移動速度を高い速度に決定する。
膨張処理部81は、速度決定部82によって決定された移動速度で、搬送ローラ対156,157によって熱膨張性シート100を移動させながら、照射部160に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。上述したように、熱膨張性シート100の移動速度は、照射部160から照射される光の強さの変動を打ち消すように調整されている。そのため、電源電圧が変動したとしても、熱膨張性シート100を所望の高さに膨張させることができ、熱膨張性シート100に立体画像を精度良く形成することができる。
以上説明したように、実施形態2に係る膨張装置150は、反射板162の温度上昇速度に応じて熱膨張性シート100の移動速度を決定し、決定した移動速度で熱膨張性シート100を移動させながら照射部160に光を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。反射板162の温度上昇速度を用いることで、照射部160から照射される光の強さを精度良く推定することができるため、照射部160から照射される光の強さの変動を打ち消すように、熱膨張性シート100の移動速度を調整することができる。そのため、例えば照射部160に供給される電源電圧の変動によって、照射部160から照射される光の強さが変動したとしても、熱膨張性シート100を精度良く膨張させることができる。
このように、熱膨張性シート100と照射部60,160とを相対的に移動させることができれば、実施形態2のように熱膨張性シート100を移動させる方式の膨張装置150においても、実施形態1と同様に、熱膨張性シート100を精度良く膨張させることができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、速度決定部82は、温度センサ63によって測定された温度の上昇速度に応じて、熱膨張性シート100と照射部60との相対的な移動速度を決定した。しかしながら、本発明において、速度決定部82は、温度センサ63によって測定された温度が規定温度分上昇するのに要した上昇時間に応じて、移動速度を決定しても良い。
温度センサ63によって測定された温度の上昇時間に応じて照射部60の移動速度を決定する場合、速度決定部82は、予熱処理の際に、計時部73の機能によって、反射板62の温度が第1の温度(例えば40℃)から第2の温度(例えば70℃)まで上昇するのに要した上昇時間を測定する。そして、速度決定部82は、上昇時間に応じて、反射板62の温度の上昇速度を取得する。この上昇時間は、温度の上昇速度とは逆に、照射部60から照射される光エネルギーが相対的に大きくなると、短くなり、照射部60から照射される光エネルギーが相対的に小さくなると、長くなる。そのため、速度決定部82は、上昇時間が第1の時間である場合よりも、上昇時間が第1の時間より長い第2の時間である場合の方が、移動速度を低い速度に決定する。言い換えると、速度決定部82は、上昇時間がより長い場合に、移動速度をより低い速度に決定する。その他の構成については、上昇速度を用いる場合と同様である。
また、上記実施形態では、温度センサ63は、照射部60から照射された光を受ける被照射体として、反射板62の温度を測定した。しかしながら、照射部60から照射された光を受ける被照射体であれば、反射板62では無くとも、その温度を測定することによって、照射部60から照射されている光の強さを推定することができる。そのため、本発明において、温度センサ63は、反射板62以外の対象の温度を測定しても良い。また、温度センサ63は、被照射体に限らず、膨張装置50内の所定位置の温度を測定しても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート100は、基材101と熱膨張層102とインク受容層103とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート100の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート100は、インク受容層103を備えなくても良い。或いは、熱膨張性シート100は、基材101と熱膨張層102との間、又は、熱膨張層102とインク受容層103との間に、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態では、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50,150とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50,150とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
印刷装置40の印刷方式は、インクジェット方式に限らない。例えば、印刷装置40は、レーザー方式のプリンタであって、トナーと現像剤とによって画像を印刷しても良い。また、光熱変換層104,106は、光を熱に変換しやすい材料であれば、カーボンブラックを含む黒インク以外の材料によって形成されても良い。この場合、光熱変換層104,106は、印刷装置40以外の手段によって形成されるものであっても良い。
上記実施形態において、膨張装置50,150の制御部71は、CPUを備えており、CPUの機能によって、膨張処理部81及び速度決定部82のそれぞれとして機能した。しかし、本発明に係る膨張装置50,150において、制御部71は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、膨張処理部81及び速度決定部82のそれぞれとして機能しても良い。この場合、各処理を個別のハードウェアで実行しても良いし、各処理をまとめて単一のハードウェアで実行しても良い。また、各処理のうち、一部を専用のハードウェアによって実行し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実行しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた膨張装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、膨張装置を制御するコンピュータに、上記実施形態で例示した膨張装置50,150による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した膨張装置50,150による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
熱膨張性シートに光を照射する照射手段と、
前記熱膨張性シートと前記照射手段とを相対的に移動させる移動手段と、
前記照射手段が前記熱膨張性シートに光を照射するのに先立って予備的に光を照射している際に、前記照射手段から照射される光に基づいて、所定位置の温度の上昇速度を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された温度の前記上昇速度に基づいて、前記移動手段による前記熱膨張性シートと前記照射手段との相対的な移動速度を設定する設定手段と、
前記設定手段によって設定された前記移動速度で、前記移動手段によって前記熱膨張性シートと前記照射手段とを相対的に移動させながら、前記照射手段に光を照射させる制御手段と、
を備えることを特徴とする膨張装置。
(付記2)
前記取得手段は、前記所定位置の規定時間の間における上昇温度に応じて、前記所定位置の温度の前記上昇速度を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載の膨張装置。
(付記3)
前記取得手段は、前記所定位置で規定温度分上昇するのに要した上昇時間に応じて、前記所定位置の温度の前記上昇速度を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載の膨張装置。
(付記4)
前記設定手段は、前記取得手段によって取得された温度の前記上昇速度がより大きい場合に、前記移動速度をより高い速度に設定する、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の膨張装置。
(付記5)
前記移動手段は、前記照射手段を、前記熱膨張性シートの表面又は裏面に沿って移動させ、
前記設定手段は、前記取得手段によって取得された温度の前記上昇速度に基づいて、前記移動手段による前記照射手段の移動速度を設定し、
前記制御手段は、前記設定手段によって設定された前記移動速度で、前記移動手段によって前記照射手段を移動させながら、前記照射手段に光を照射させる、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の膨張装置。
(付記6)
前記移動手段は、前記熱膨張性シートを移動させ、
前記設定手段は、前記取得手段によって取得された温度の前記上昇速度に基づいて、前記移動手段による前記熱膨張性シートの移動速度を設定し、
前記制御手段は、前記設定手段によって設定された前記移動速度で、前記移動手段によって前記熱膨張性シートを移動させながら、前記照射手段に光を照射させる、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の膨張装置。
(付記7)
前記制御手段は、前記熱膨張性シートを膨張させる前に、前記照射手段を予熱する予熱処理を実行し、
前記取得手段は、前記予熱処理の際に、前記所定位置の温度の前記上昇速度を取得する、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の膨張装置。
(付記8)
前記照射手段から照射される光を受ける被照射体を備え、
前記取得手段は、
前記被照射体の温度の前記上昇速度を取得する、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の膨張装置。
(付記9)
前記被照射体は、前記照射手段から照射される光を前記熱膨張性シートに向けて反射する反射板である、
ことを特徴とする付記8に記載の膨張装置。
(付記10)
付記1から9のいずれか1つに記載の膨張装置と、
前記熱膨張性シートの表面又は裏面に、前記照射手段から照射される光を熱に変換する光熱変換層を印刷する印刷装置と、を備え、
前記制御手段は、前記印刷装置によって前記光熱変換層が印刷された前記熱膨張性シートと前記照射手段とを相対的に移動させながら、前記照射手段に光を照射させることによって、前記熱膨張性シートのうちの前記光熱変換層が印刷された部分を膨張させる、
ことを特徴とする立体画像形成システム。
(付記11)
膨張装置が実行する熱膨張性シートの膨張方法であって、
照射部が前記熱膨張性シートに光を照射するのに先立って予備的に光を照射している際に、前記照射部から照射される光に基づいて、所定位置の温度の上昇速度を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された温度の前記上昇速度に基づいて、前記熱膨張性シートと前記照射部との相対的な移動速度を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された前記移動速度で、前記熱膨張性シートと前記照射部とを相対的に移動させながら、前記照射部に光を照射させる制御ステップと、
を含むことを特徴とする熱膨張性シートの膨張方法。
(付記12)
コンピュータを、
熱膨張性シートと光を照射する照射部とを相対的に移動させる移動手段、
前記照射部が前記熱膨張性シートに光を照射するのに先立って予備的に光を照射している際に、前記照射部から照射される光に基づいて、所定位置の温度の上昇速度を取得する取得手段、
前記取得手段によって取得された温度の前記上昇速度に基づいて、前記移動手段による前記熱膨張性シートと前記照射部との相対的な移動速度を設定する設定手段、
前記設定手段によって設定された前記移動速度で、前記移動手段によって前記熱膨張性シートと前記照射部とを相対的に移動させながら、前記照射部に光を照射させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。