以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
<熱膨張性シート10>
図1に、実施形態1に係る造形物を造形するための熱膨張性シート10の断面構成を示す。熱膨張性シート10は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートに垂直な方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
図1に示すように、熱膨張性シート10は、基材11と、熱膨張層12と、インク受容層13とを、この順に備えている。なお、図1は、造形物が造形される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート10の断面を示している。
基材11は、熱膨張性シート10の元となるシート状の媒体である。基材11は、熱膨張層12とインク受容層13とを支持する支持体であって、熱膨張性シート10の強度を保持する役割を担う。基材11として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材11の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層12は、基材11の上側に積層されており、規定の温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層12は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5〜50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層12は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層13は、熱膨張層12の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層13は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層13は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層13の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている汎用的な材料を用いることができる。
図2(a),(b)に、熱膨張性シート10の裏面を示す。熱膨張性シート10の裏面は、熱膨張性シート10の基材11側の面であって、基材11の裏面に相当する。図2(a)は、シートのサイズが第1のサイズである熱膨張性シート10の裏面を示しており、図2(b)は、シートのサイズが第2のサイズである熱膨張性シート10の裏面を示している。一例として、第1のサイズはA3サイズであり、第2のサイズはA4サイズ、すなわち第1のサイズの半分のサイズである。
図2(a),(b)に示すように、熱膨張性シート10の裏面には、その周縁部に沿って複数のバーコードBが付されている。より詳細には、バーコードBは、図2(a)に示す第1のサイズの熱膨張性シート10では、長手方向における一方側の端部に設けられており、図2(b)に示す第2のサイズの熱膨張性シート10では、短手方向における一方側の端部に設けられている。バーコードBは、熱膨張性シート10を識別するための識別子であって、熱膨張性シート10が造形物を造形するための専用のシートであることを示す識別子である。バーコードBは、膨張装置50によって読み取られ、膨張装置50において熱膨張性シート10の使用の可否を判定するために用いられる。また、バーコードBは、熱膨張性シート10のサイズが第1のサイズであるか第2のサイズであるかというサイズ情報、熱膨張性シート10の厚み、基材11の種類等の情報を含んでいても良い。
造形システム1は、このようなサイズが異なる複数種類の熱膨張性シート10に造形物を造形することができる。熱膨張性シート10の表面又は裏面のうちの膨張させたい部分には、カーボン分子が印刷される。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート10において、カーボン分子が印刷された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層12が膨張して隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層12の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート10に造形物が造形される。
熱膨張性シート10における膨張させる箇所及び高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を得ることができる。また、造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
<造形システム1>
次に、図3を参照して、熱膨張性シート10に造形物を造形する造形システム1について説明する。図3に示すように、造形システム1は、端末装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
端末装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であって、印刷装置40及び膨張装置50を制御する制御ユニットである。図4に示すように、端末装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、端末装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム又はデータ、及び、印刷装置40によって印刷されるカラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを記憶する。
操作部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部33を操作することによって、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データ編集する操作、印刷装置40又は膨張装置50に対する操作等を入力することができる。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。例えば、表示部34は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを表示する。また、表示部34は、必要に応じて、印刷装置40又は膨張装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを、可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。端末装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40及び膨張装置50と通信する。
<印刷装置40>
印刷装置40は、熱膨張性シート10の表面又は裏面に画像を印刷する印刷ユニットである。印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。
図5に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図5に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート10が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に狭持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート10の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート10の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート10を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して端末装置30と接続されている。端末装置30は、フレキシブル通信ケーブル46を介して、印刷ヘッド42、モータ45m、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御する。具体的に説明すると、端末装置30は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート10を搬送させる。また、端末装置30は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。
印刷装置40は、端末装置30から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷装置40は、画像データとして、カラー画像データと表面発泡データと裏面発泡データとを取得する。カラー画像データは、熱膨張性シート10の表面に印刷するカラー画像を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、カラー画像を印刷する。
表面発泡データは、熱膨張性シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。また、裏面発泡データは、熱膨張性シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、カーボンブラックを含むブラックKの黒色インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、黒色による濃淡画像(濃淡パターン)を印刷する。カーボンブラックを含む黒色インクは、電磁波を熱に変換する材料の一例である。
<膨張装置50>
膨張装置50は、熱膨張性シート10の表面又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張性シート10の表面又は裏面に印刷された濃淡画像を発熱させて、熱膨張性シート10のうちの濃淡画像が印刷された部分を膨張させる膨張ユニットである。
図6に、膨張装置50の構成を模式的に示す。図6において、X方向は、膨張装置50の幅方向に相当し、Y方向は、膨張装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。
膨張装置50は、照射部60を移動させながら、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に向けて照射部60に電磁波を照射させることにより、熱膨張性シート10を膨張させる。照射部60は、第1の位置P1と第2の位置P2との間で往復移動する。第1の位置P1は、照射部60の初期位置(ホームポジション)である。照射部60は、膨張装置50が動作していない時には第1の位置P1で待機している。
膨張装置50は、箱型の筐体51を備える。筐体51の内部は、上側筐体51aと下側筐体51bとの2室に仕切られている。これは、照射部60からの電磁波の照射により上側筐体51a内の温度が上昇した際に、下側筐体51b内の基板等に与える影響を抑制するものである。膨張装置50は、上側筐体51aの内部に、換気部54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、トレイ(シート保持機構)100と、を備える。また、膨張装置50は、下側筐体51bの内部に、電源部69と、制御部70と、を備える。
トレイ100は、熱膨張性シート10を筐体51内の適正な位置に設置するための機構であって、熱膨張性シート10を安定して保持するためのシート保持機構である。図7に、トレイ100の詳細な構成を示す。図7に示すように、トレイ100は、載置部110と、押圧部材120と、補助部材130と、を備える。
載置部110は、その上面に熱膨張性シート10が載置される平面状の部材である。載置部110には、ユーザによって開閉される押圧部材120が取り付けられており、載置部110は、押圧部材120との間で熱膨張性シート10を挟み込んで保持する。
図8に、載置部110から押圧部材120が開かれた状態のトレイ100を示す。図8に示すように、載置部110は、熱膨張性シート10を安定して保持できるように、トレイ100に載置可能な熱膨張性シート10の最大サイズよりも大きなサイズの長方形状をしている。トレイ100に載置可能な熱膨張性シート10の最大サイズは、例えばA3サイズである。載置部110は、ユーザがトレイ100を筐体51から引き出すための手掛け部111を備える。
載置部110の中央部分における熱膨張性シート10が載置される領域には、矩形状の凹部112が設けられている。より詳細には、凹部112は、載置部110における、熱膨張性シート10のうちの膨張する部分が載置される領域に設けられている。ここで、熱膨張性シート10のうちの膨張する部分とは、濃淡画像が印刷されて膨張可能な部分であって、周縁部以外の部分に相当する。周縁部とは、熱膨張性シート10の4辺の外周(境界)に接する部分であって、いわゆる余白領域に相当する。
凹部112は、裏面発泡の際、すなわち熱膨張性シート10がその裏面を上側に向けて載置部110に載置された場合に、熱膨張性シート10の熱膨張層12が下側に向けて膨張できるようにするために設けられている。凹部112が設けられていることにより、載置部110に載置された熱膨張性シート10のうちの中央の膨張可能な部分は載置部110に接しない。言い換えると、熱膨張性シート10は、その周縁部が凹部112を囲む外周部分によって支持されることにより、載置部110に保持される。
凹部112の底面には、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の下側の面の一部が露出するように、開口113が設けられている。開口113が設けられていることにより、熱膨張性シート10が膨張する際に発生する熱を外部に逃がすことができ、熱膨張性シート10の温度が上昇しすぎることを回避することができる。
凹部112には、補助部材130が嵌め込まれて取り付けられる。凹部112には、補助部材130の取り付け位置を決めるための2対の位置決め部材114,115が設けられている。また、凹部112を囲む外周部分、すなわち熱膨張性シート10の周縁部が載置される部分には、磁石116が設けられている。磁石116は、細長い板状をしており、凹部112の外周部分のうちの、補助部材130が取り付けられる1辺を除く3辺のそれぞれに沿って設けられている。磁石116は、押圧部材120が閉じられた際に押圧部材120に設けられた金属板125を吸引(吸着)することで、熱膨張性シート10を固定する役割を果たす。
押圧部材120及び補助部材130は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の周縁部を押圧することにより、熱膨張性シート10を載置部110に固定する部材である。熱膨張性シート10は、膨張時に内部で応力が働くことにより、例えば周縁部が鉛直方向(Z方向)に弓なりに曲がって反る等、平面状から変形することがある。このように熱膨張性シート10が変形すると、膨張の高さが変わる等のように膨張の精度に影響を及ぼし、造形される造形物の品質が悪化するおそれがある。このような熱膨張性シート10の変形を抑制するため、熱膨張性シート10は、押圧部材120及び補助部材130により周縁部が押圧されることで、トレイ100に固定される。このように熱膨張性シート10がトレイ100に安定して固定された状態で、膨張処理が実行される。
押圧部材120は、熱膨張性シート10の周縁部のうちの、補助部材130よりも広い範囲を押圧する主押圧部材である。これに対して、補助部材130は、熱膨張性シート10の周縁部を補助的に押圧する補助押圧部材である。具体的に説明すると、補助部材130は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の第2の周縁部を押圧し、押圧部材120は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の、少なくとも第2の周縁部とは異なる第1の周縁部を押圧する。第2の周縁部とは、具体的には載置部110に載置された熱膨張性シート10の1辺の周縁部である。これに対して、第1の周縁部とは、載置部110に載置された熱膨張性シート10の、補助部材130によって押圧される1辺の周縁部以外の3辺の周縁部である。
図8に示すように、押圧部材120は、載置部110に接する1辺を軸に回転することで開閉される。押圧部材120は、額縁状(枠状又はフレーム状)に形成されている。言い換えると、押圧部材120は、熱膨張性シート10のうちの電磁波が照射される部分が露出するように、また表面発泡の際に熱膨張性シート10が上側に向けて膨張可能なように、中央部分が大きく開口している。押圧部材120は、載置部110に熱膨張性シート10が載置された状態で閉じられると、額縁の枠部分によって、載置部110に載置された熱膨張性シート10の少なくとも3辺の周縁部を押圧して、載置部110との間で熱膨張性シート10の少なくとも3辺の周縁部を挟持する。押圧部材120は、載置部110との間で熱膨張性シート10を押圧する第1押圧部材として機能する。
より詳細に説明すると、載置部110に載置された熱膨張性シート10のサイズが、図2(a)に示した第1のサイズである場合には、押圧部材120は、熱膨張性シート10の4辺の周縁部を押圧する。第1のサイズとは、載置部110に載置可能な熱膨張性シート10の最大サイズ(具体的にはA3サイズ)である。押圧部材120は、そのサイズが載置部110に載置可能な熱膨張性シート10の最大サイズに合致するように設けられている。そのため、載置部110に最大サイズの熱膨張性シート10が載置された場合、押圧部材120の4辺の枠が熱膨張性シート10の4辺の周縁部に被せられることで、4辺の周縁部が押圧される。
これに対して、載置部110に載置された熱膨張性シート10のサイズが、図2(b)に示した第2のサイズである場合には、押圧部材120は、熱膨張性シート10の3辺の周縁部を押圧する。第2のサイズとは、載置部110に載置可能な熱膨張性シート10の最大サイズよりも小さいサイズであって、具体的にはA4サイズである。最大サイズよりも小さいサイズの熱膨張性シート10が載置部110に載置された場合、押圧部材120の4辺の枠は、熱膨張性シート10の4辺の周縁部に合致しない。そのため、載置部110に第2のサイズの熱膨張性シート10が載置された場合、押圧部材120の4辺の枠のうちの一部が熱膨張性シート10の3辺の周縁部に被せられることで、3辺の周縁部が押圧される。この3辺の周縁部以外の残りの1辺の周縁部は、補助部材130によって押圧される。
押圧部材120は、その下側の面、すなわち載置部110に載置された熱膨張性シート10に接する側の面に、金属板125を備える。金属板125は、鉄等の磁性を有する金属の板であり、押圧部材120の4辺の枠に沿って設けられている。金属板125は、押圧部材120が閉じられた際に、載置部110に設けられた磁石116に吸引される。このような磁石116と金属板125との間の吸引力により、押圧部材120は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の周縁部を押圧して固定する。
補助部材130は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の1辺の周縁部を押圧する。図9及び図10に、補助部材130の詳細な構成を示す。図9に示すように、補助部材130は、基部131と、開閉部132と、を備える。
基部131は、補助部材130の土台となる棒状の部材であって、載置部110に載置された熱膨張性シート10の1辺の周縁部を支持する。開閉部132は、基部131に接する1辺を軸として回転することで開閉する部材であって、熱膨張性シート10が載置部110に載置される際に開閉する。補助部材130は、基部131と開閉部132との間で熱膨張性シート10の1辺の周縁部をクリップのように挟持する。
図10に、開閉部132が開いた状態の補助部材130を示す。図10に示すように、基部131は、開閉部132が被せられる面に、板状の磁石136を備える。また、開閉部132は、その下面に金属板135を備える。金属板135は、鉄等の磁性を有する金属の板であって、開閉部132が閉じられた際に、基部131に設けられた磁石136に吸引される。このような磁石136と金属板135との間の吸引力により、補助部材130は、基部131と開閉部132との間に熱膨張性シート10の1辺の周縁部を挟んで押圧する。補助部材130の開閉部132は、基部131との間で熱膨張性シート10の周縁部を押圧する第2押圧部材として機能する。
補助部材130は、載置部110から着脱可能であって、載置部110に載置された熱膨張性シート10のサイズに応じて、凹部112内の異なる位置に嵌め込まれる。補助部材130は、凹部112内に取り付け可能なように、その長手方向の長さが凹部112のX方向の幅に合致するように構成されている。また、基部131には、補助部材130を載置部110に取り付けるためのスライド部133及び突出部134が設けられている。
スライド部133は、ユーザの操作に応じて補助部材130の長手方向(図9に示した矢印の方向)にスライドする。スライド部133の一部は基部131の側面から突出しており、ユーザによってレバーのように操作される。ユーザは、スライド部133の突出部分を指で引っ掛けて動かすことで、スライド部133をスライドさせることができる。
突出部134は、基部131の一方の端部から突出している。突出部134は、補助部材130が載置部110の凹部112に取り付けられた際、載置部110の凹部112の側面に設けられた凹状の係合部と係合する。これにより、補助部材130は凹部112内に固定される。
突出部134は、基部131内でスライド部133と接続しており、基部131の端部からの突出部134の突出の度合いは、スライド部133のスライドに連動して変化する。具体的に説明すると、補助部材130が載置部110から着脱される際に、ユーザがスライド部133をスライドさせると、突出部134が基部131の他方の端部の側に移動することで、突出部134の突出の度合いが小さくなる。これにより、補助部材130を載置部110から取り外す際には、突出部134と凹部112に設けられた係合部との係合が解除され、補助部材130を載置部110に取り付ける際には、突出部134を係合部に係合させることが可能になる。
ユーザがスライド部133から指を離すと、スライド部133はバネ等の弾性体の弾性力によって元の位置に戻り、突出部134は基部131の端部から再び突出する。このような構成により、ユーザは、スライド部133を指でスライドさせるというワンタッチ式の簡単な操作で、補助部材130を載置部110に着脱させることができる。
図11、図12及び図13を参照して、補助部材130が載置部110上の異なる位置に取り付けられて熱膨張性シート10が載置される様子を説明する。図11に示すように、補助部材130は、載置部110に載置される熱膨張性シート10のサイズに応じて、凹部112内の2つの位置に取り付け可能である。具体的に説明すると、ユーザは、載置部110にA3サイズの熱膨張性シート10を載置する場合、補助部材130を、凹部112の端である第1の取り付け位置(図11に示す位置A1)に取り付ける。より詳細には、第1の取り付け位置A1は、第2の位置P2の側、すなわち照射部60のホームポジション(第1の位置P1)とは反対側の端の位置である。
図12に、補助部材130が第1の位置に取り付けられ、且つ、A3サイズの熱膨張性シート10が載置された状態の載置部110を示す。なお、図12は、押圧部材120が載置部110に閉じられていない状態を示している。図12に示すように、A3サイズの熱膨張性シート10が載置部110に載置された場合、熱膨張性シート10によって凹部112の大部分が覆われる。
この状態で押圧部材120が閉じられると、押圧部材120の額縁状の枠が熱膨張性シート10の4辺の周縁部の上に被せられる。その結果、熱膨張性シート10の4辺の周縁部が押圧部材120によって上から押さえつけられる。なお、補助部材130に押圧されている1辺の周縁部は、押圧部材120によって補助部材130の開閉部132上から押さえつけられる。言い換えると、補助部材130に挟持される熱膨張性シート10の1辺の周縁部は、補助部材130によって挟持されることで押圧され、さらに押圧部材120によって補助部材130の上から押圧される。このとき、押圧部材120に設けられた金属板125が、載置部110に設けられた磁石116及び補助部材130に設けられた磁石136に吸引されることにより、熱膨張性シート10は、載置部110と押圧部材120との間で固定される。
これに対して、ユーザは、載置部110にA4サイズの熱膨張性シート10を載置する場合、補助部材130を、凹部112のY方向におけるほぼ中間である第2の取り付け位置(図11に示す位置A2)に取り付ける。第2の取り付け位置A2は、第1の取り付け位置A1よりも照射部60のホームポジション(第1の位置P1)の側の位置である。言い換えると、載置部110に載置される熱膨張性シート10のサイズが最大サイズよりも小さくなると、補助部材130が取り付けられる位置は、ホームポジションにより近い位置に変更される。
図7及び図8に示したように、凹部112の中間部分には、補助部材130を第2の取り付け位置A2に固定するための2対の位置決め部材114,115が設けられている。1対の位置決め部材114は、もう1対の位置決め部材115に対して開口113を挟んで対向する位置に設けられている。そして、補助部材130の一方の端部は、1対の位置決め部材114に挟まれることで固定され、補助部材130の他方の端部は、もう1対の位置決め部材115に挟まれることで固定される。これにより、補助部材130が載置部110の第2の取り付け位置A2に取り付けられる。
熱膨張性シート10を載置すると、ユーザは、補助部材130の開閉部132を閉じ、熱膨張性シート10の1辺を補助部材130により挟持させる。これにより、図13に示すように、熱膨張性シート10の1辺が補助部材130によって挟持された状態で、熱膨張性シート10の残りの3辺の周縁部が載置部110の3辺の枠部によって支持される。このように、A4サイズの熱膨張性シート10が載置部110に載置された場合、熱膨張性シート10によって凹部112の約半分が覆われる。
この状態で押圧部材120が閉じられると、押圧部材120の額縁状の枠の一部が熱膨張性シート10の3辺の周縁部の上に被せられる。その結果、熱膨張性シート10の3辺の周縁部が押圧部材120によって上から押さえつけられる。なお、熱膨張性シート10の残りの1辺の周縁部は、補助部材130によって挟持されることで押圧される。このとき、押圧部材120に設けられた金属板125が、載置部110に設けられた磁石116に吸引されることにより、熱膨張性シート10は、載置部110と押圧部材120との間で固定される。
このように、載置部110上における補助部材130の位置は、載置部110に載置された熱膨張性シート10のサイズに応じて、載置部110に載置された熱膨張性シート10の1辺の周縁部に直交する方向、すなわち照射部60の移動方向に変更される。これにより、載置部110に載置される熱膨張性シート10のサイズが変更されても、熱膨張性シート10の4辺の周縁部が、押圧部材120と補助部材130とのうちの少なくとも一方によって押圧される。その結果、熱膨張性シート10が膨張する際における反り、歪み等の不要な変形を抑制することができる。
以上のように構成されるトレイ100は、筐体51内に設けられた1対のスライドレールに取り付けられており、スライドレールに沿ってX方向にスライドする。図14及び図15に、筐体51からトレイ100を取り出した状態を示す。
図14に示すように、ユーザは、熱膨張性シート10を膨張装置50に搬入する際、手掛け部111に手を掛けて、トレイ100を−X方向にスライドさせて筐体51から引き出す。そして、ユーザは、押圧部材120を開き、膨張させる対象となる熱膨張性シート10を、その表面又は裏面を上に向けて載置部110に載置する。なお、図14は、A3サイズの熱膨張性シート10が載置部110に載置された場合の例を示している。
このとき、ユーザは、載置部110の凹部112に取り付けられた補助部材130の開閉部132を開閉させて、熱膨張性シート10の1辺の周縁部を補助部材130に挟持させる。また、ユーザは、熱膨張性シート10におけるバーコードBが設けられた側とは反対側の1辺が補助部材130に挟持されるように、向きを調整して熱膨張性シート10を載置部110に載置する。熱膨張性シート10を載置部110に載置すると、ユーザは、押圧部材120を閉じる。押圧部材120が閉じられると、図15に示すように、載置部110に載置された熱膨張性シート10は、押圧部材120によってその周縁部が押圧されることにより、固定される。
このようにして熱膨張性シート10をトレイ100に載置すると、ユーザは、トレイ100を+X方向にスライドさせて、筐体51内に送り込む。これにより、熱膨張性シート10は、照射部60によって電磁波を照射可能な位置に配置される。その後、熱膨張性シート10の膨張処理が終了すると、ユーザは、再びトレイ100を−X方向に引き出して、トレイ100から熱膨張性シート10を取り出す。
図6に示した膨張装置50の説明に戻る。照射部60は、トレイ100に配置された熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する機構である。図6に示すように、照射部60は、箱型のカバーの内部に、ランプヒータ61と、反射板62と、温度センサ63と、冷却部64と、を備える。
ランプヒータ61は、例えば照射源としてハロゲンランプを備えており、電磁波として、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。照射部60及びランプヒータ61は、このような波長域の光を照射することにより、熱膨張性シート10にエネルギーを照射する照射手段として機能する。
カーボンブラックを含む黒色インクによる濃淡画像が印刷された熱膨張性シート10に光(エネルギー)を照射すると、濃淡画像が印刷された部分では、濃淡画像が印刷されていない部分に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート10のうちの濃淡画像が印刷された部分が主に加熱され、熱膨張剤が膨張を開始する温度に達すると膨張する。照射部60は、搬送モータ55によって搬送されながら光(エネルギー)を照射することにより、熱膨張性シート10を熱膨張させる熱膨張手段として機能する。なお、ランプヒータ61によって照射される光は、電磁波であれば良く、上記波長域の光であることに限らない。
反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から照射された光を熱膨張性シート10に向けて反射する機構である。温度センサ63は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板62の温度を測定する測定手段として機能する。冷却部64は、照射部60に給気するための少なくとも1つのファンを備え、外気を吸入し、吸入した外気を反射板62に送って冷却する。反射板62に送られた外気は、更に下方に流れることで、照射部60及び筐体51の内部が冷却される。
換気部54は、膨張装置50における奥側の端部に設けられており、膨張装置50の内部を換気する。換気部54は、少なくとも1つのファンを備えており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。
搬送モータ55は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータであって、照射部60をトレイ100に載置された熱膨張性シート10に沿って移動させる。筐体51の内部には、Y方向に、すなわちトレイ100に載置された熱膨張性シート10の表面又は裏面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。搬送モータ55は、制御部70からの指令に基づいて、軸方向から見て時計回り又は反時計回りに回転数を制御されて回転する。このような搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、照射部60は、熱膨張性シート10との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。搬送モータ55は、熱膨張性シート10に沿って照射部60を移動させる移動部(移動手段)として機能する。
電源部69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、膨張装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気部54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却部64は、電源部69から電力を得て動作する。
制御部70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられている。制御部70は、CPU等のプロセッサと、ROM、RAM等のメモリと、を備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して膨張装置50の各部と接続されている。また、制御部70は、いずれも図示しないが、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリと、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスと、端末装置30と通信するための通信インタフェースと、を備える。
制御部70において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、膨張装置50全体の動作を制御する。具体的に説明すると、制御部70は、搬送モータ55を制御して、照射部60を指定された向きに指定された移動速度で移動させる。また、制御部70は、照射部60による電磁波を照射のオンとオフとを切り替え、バーコードリーダ65にバーコードBを読み取らせる。
バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の周縁部に設けられたバーコードBを読み取る読取部(読取手段)として機能する。バーコードリーダ65は、光を発する光源と光を検知する光学センサとを備え、レーザー方式等の周知の方式でバーコードBを光学的に読み取る。バーコードリーダ65は、照射部60のカバーの外側に取り付けられており、照射部60と共に、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に沿って移動しながら、バーコードBを光学的に読み取る。バーコードリーダ65とトレイ100とを合わせて、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に設けられた識別子であるバーコードBを読み取る識別子読取機構と称する。
上述したように、バーコードBは、熱膨張性シート10の1辺の周縁部に設けられている。一方で、熱膨張性シート10がトレイ100に載置されて押圧部材120が閉じられると、押圧部材120は、バーコードBが設けられた1辺の周縁部を含む少なくとも3辺の周縁部に被さり、少なくとも3辺の周縁部を上から押圧する。このような押圧部材120によってバーコードBが隠されて読めなくなることを回避するため、載置部110及び押圧部材120には、バーコードリーダ65がバーコードBを押圧部材120越しに光学的に読み取り可能とするための開口が設けられている。
図16に、トレイ100に最大サイズ(具体的にはA3サイズ)の熱膨張性シート10が載置された場合における、押圧部材120を上から見た状態を示す。図16において、太い破線は、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の範囲を示している。また、細い点線は、熱膨張性シート10におけるバーコードBが設けられている場所を示している。図16に示すように、押圧部材120のうちのホームポジション側の1辺の枠部分、言い換えると、熱膨張性シートにおけるバーコードBが設けられた1辺の周縁部を押圧する部分には、2つの開口127,128が設けられている。
第1の開口127は、熱膨張性シート10におけるバーコードBが設けられた位置を押圧する部分に設けられた貫通孔である。第1の開口127は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の上側(すなわち押圧部材120側)の面にバーコードBが設けられている場合に、バーコードリーダ65が熱膨張性シート10の上側からバーコードBを読み取るために形成されている。熱膨張性シート10の上側の面にバーコードBが設けられている場合とは、裏面発泡の場合、すなわち熱膨張性シート10をその裏面を上側に向けてトレイ100に載置した場合に相当する。
第2の開口128は、第1の開口127よりも外側の位置に設けられた貫通孔である。第2の開口128は、載置部110に載置された熱膨張性シート10の下側(すなわち載置部110側)の面にバーコードBが設けられている場合に、バーコードリーダ65が熱膨張性シート10の下側からバーコードBを読み取るために形成されている。熱膨張性シート10の下側の面にバーコードBが設けられている場合とは、表面発泡の場合、すなわち熱膨張性シート10をその表面を上側に向けてトレイ100に載置した場合に相当する。
第1の開口127は、図16において破線で示す載置部110に載置されている熱膨張性シート10を覆う領域内における、第1の位置P1(ホームポジション)側の端部に設けられている。第1の開口127がこのような位置に設けられていることにより、バーコードBが設けられた面(裏面)を上側に向けて熱膨張性シート10が載置され、且つ、押圧部材120が載置部110に閉じられた場合に、少なくとも1つのバーコードBが第1の開口127を通して露出する。これに対して、第2の開口128は、第1の開口127よりも外側であって、載置部110に載置されている熱膨張性シート10を覆う領域からは外れた第2の領域に設けられている。このように、第1の開口127と第2の開口128とは、押圧部材120が載置部110に載置された熱膨張性シート10を押圧する際に第1の開口127と第2の開口128との間の領域に熱膨張性シート10のエッジが位置するように設けられている。
なお、第1の開口127及び第2の開口128のX方向における幅は、熱膨張性シート10の周縁部に設けられた複数のバーコードBのうちの少なくとも1つのバーコードBをバーコードリーダ65が適正に読み取ることができるように、各バーコードBのX方向における幅よりも大きく設けられている。
図17及び図18を参照して、バーコードリーダ65がバーコードBを読み取る様子を説明する。図17及び図18は、図16に示したC−C線によるトレイ100の断面を示している。
図17及び図18に示すように、載置部110には、それぞれ押圧部材120に設けられた第1の開口127及び第2の開口128に対応する位置に、第3の開口117及び第4の開口118が設けられている。これら2つの開口117,118は、バーコードリーダ65がバーコードBを熱膨張性シート10の下側から読み取ることができるようにするために設けられている。具体的には、第3の開口117は、押圧部材120が載置部110に閉じられた場合にZ方向から見て第1の開口127と少なくとも一部が重なるように、第1の開口127の直下に設けられており、第4の開口118は、同じ場合に第2の開口128と少なくとも一部が重なるように、第2の開口128の直下に設けられている。2つの開口117,118は、載置部110の内部で繋がっており、載置部110の下部では1つの開口として貫通している。
また、膨張装置50は、載置部110に熱膨張性シート10が載置された場合におけるバーコードBが設けられた周縁部の下側の位置に、光を反射する反射部105を備える。反射部105は、バーコードリーダ65がバーコードBを熱膨張性シート10の下側から読み取ることができるようにするための鏡であって、バーコードBが下側を向くように熱膨張性シート10が載置部110に載置された場合に、第3の開口117を介したバーコードBの像を第4の開口118及び第2の開口128に向けて映す鏡である。反射部105は、バーコードリーダ65から発せられたレーザーが、熱膨張性シート10の下側の面に設けられたバーコードBに照射されるように、その反射面を上側に向けて配置されている。
図17に示すように、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の上側の面にバーコードBが設けられている場合、バーコードリーダ65は、第1の開口127を介してバーコードBを読み取る。具体的に説明すると、照射部60が第1の読み取り位置にある時に、バーコードリーダ65は、レーザーを照射する。第1の読み取り位置は、バーコードリーダ65から照射されたレーザーが第1の開口127を介して熱膨張性シート10の上側の面に通る位置である。
図17においてバーコードリーダ65から照射されたレーザーは、第1の開口127を通って熱膨張性シート10の上側の面におけるバーコードBが設けられた部分に照射される。そして、レーザーは、熱膨張性シート10によって反射され、再び第1の開口127を通ってバーコードリーダ65に受光される。このようにして、バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の上側の面に設けられたバーコードBを読み取る。
これに対して、図18に示すように、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の下側の面にバーコードBが設けられている場合、バーコードリーダ65は、第2の開口128、第4の開口118、反射部105及び第3の開口117を介して、バーコードBを読み取る。具体的に説明すると、照射部60が第2の読み取り位置にある時に、レーザーを照射する。第2の読み取り位置は、バーコードリーダ65から照射されたレーザーが、第2の開口128、第4の開口118、反射部105及び第3の開口117を介して熱膨張性シート10の下側の面に通る位置である。
図18においてバーコードリーダ65から照射されたレーザーは、第2の開口128と第4の開口118とを通り、反射部105で反射し、更に第3の開口117を通って、熱膨張性シート10の下側の面におけるバーコードBが設けられた部分に照射される。そして、レーザーは、熱膨張性シート10で反射され、往路と同じ経路を逆順に辿ってバーコードリーダ65に受光される。このようにして、バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の下側の面に設けられたバーコードBを読み取る。
バーコードリーダ65によるレーザーの照射方向は、反射部105を介して熱膨張性シート10の下側からバーコードBを的確に読み取ることができるように、鉛直下向きよりも、第2の開口128から第1の開口127への向きに傾斜している。この傾斜の角度は、具体的には10度等である。また、バーコードリーダ65の視線の傾きに合わせて、第1の開口127及び第2の開口128も、側面(X方向)から見ると傾斜している。
また、Y方向、すなわち照射部60の移動方向における第2の開口128の幅W2は、Y方向における第1の開口127の幅W1よりも大きく設けられている。これは、第2の開口128を通してバーコードBを読み取る場合には、第1の開口127を通してバーコードBを読み取る場合よりも、反射部105を介する分だけレーザーの伝搬経路が長いため、トレイ100に熱膨張性シート10が載置された際のずれ等により、バーコードBの読み取りを失敗し易いからである。第1の開口127の幅W1よりも第2の開口128の幅W2に余裕を持たせることで、第2の開口128を通してバーコードBを読み取る際の読み取り失敗を抑制することができる。
制御部70は、バーコードリーダ65を制御して、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の上側又は下側の面に設けられたバーコードBの読み取り処理を実行する。以下、図19を参照して、制御部70によって実行されるバーコードBの読み取り処理の流れについて説明する。
制御部70は、搬送モータ55を駆動させて照射部60をホームポジションから移動させる。照射部60が図18に示した第2の読み取り位置に到達すると、制御部70は、バーコードリーダ65にレーザーを照射させて、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の下側からのバーコードBの読み取りを実行する。その結果、制御部70は、熱膨張性シート10の下側からバーコードBを読み取ったか否かを判定する(ステップS11)。熱膨張性シート10の下側からバーコードBが読み取られた場合(ステップS11;YES)、制御部70は、表面発泡と判定する(ステップS12)。
これに対して、熱膨張性シート10の下側からバーコードBが読み取られなかった場合(ステップS11;NO)、制御部70は、搬送モータ55により照射部60を更に移動させる。そして、照射部60が図17に示した第1の読み取り位置に到達すると、制御部70は、バーコードリーダ65にレーザーを照射させて、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の上側からのバーコードBの読み取りを実行する。その結果、制御部70は、熱膨張性シート10の上側からバーコードBを読み取ったか否かを判定する(ステップS13)。熱膨張性シート10の上側からバーコードBが読み取られた場合(ステップS13;YES)、制御部70は、裏面発泡と判定する(ステップS14)。
熱膨張性シート10の下側からバーコードBが読み取られなかった場合(ステップS13;NO)、すなわち、熱膨張性シート10の上側からも下側からもバーコードBが読み取られなかった場合には、制御部70は、熱膨張性シート10がトレイ100に正常に載置されていないと判定し、異常終了する。この場合、制御部70は、搬送モータ55による照射部60の搬送を止め、膨張処理を実行しない。そして、制御部70は、例えば警告を発することで、熱膨張性シート10をトレイ100に正しく載置するようにユーザに要求する。
一方で、バーコードリーダ65によりバーコードBが読み取られた場合、すなわちステップS12において表面発泡であると判定した場合、又は、ステップS14において裏面発泡であると判定した場合には、制御部70は、バーコードBの読み取り処理を正常終了する。この場合、搬送モータ55は、制御部70による制御のもと、照射部60に電磁波を照射させた状態で、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に沿って照射部60を移動させることにより、熱膨張性シート10を膨張させる。以下、膨張処理について説明する。
<膨張処理>
制御部70は、印刷装置40によって濃淡画像が印刷された熱膨張性シート10に電磁波を照射することにより、熱膨張性シート10を膨張させる。
図20に、膨張装置50が膨張処理を実行する様子を示す。制御部70は、バーコードリーダ65によってトレイ100に載置された熱膨張性シート10に設けられたバーコードBが読み取られた場合、照射部60に電源電圧を供給してランプヒータ61を点灯させる。そして、制御部70は、照射部60に電磁波を照射させている状態で搬送モータ55を駆動させる。これにより、制御部70は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けた方向(第1の方向)に、規定の距離だけ移動させる。第1の方向とは、具体的にはトレイ100に載置された熱膨張性シート10の4辺のうちの、バーコードBが設けられた1辺(すなわち図20における右側の1辺)からこの1辺に対向する辺(すなわち図20における左側の1辺)への方向に相当する。このように、制御部70は、照射部60を熱膨張性シート10の端から端まで移動させることで、熱膨張性シート10の表面又は裏面に広く電磁波を照射させる。
規定の距離は、熱膨張性シート10のサイズに応じて異なる。例えば、熱膨張性シート10のサイズがA3サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの距離である。これに対して、熱膨張性シート10のサイズがA4サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの半分の距離である。一例として、熱膨張性シート10のサイズ情報がバーコードBに含まれており、制御部70は、バーコードリーダ65によるバーコードBの読み取り結果に応じて、規定の距離を設定しても良い。或いは、熱膨張性シート10の厚み、基材11の種類等の情報がバーコードBに含まれており、制御部70は、バーコードリーダ65によるバーコードBの読み取り結果に応じて、照射部60を移動させる速度を変更しても良い。
照射部60によって電磁波が照射されると、熱膨張性シート10のうちの、カーボンブラックを含む黒色インクで濃淡画像が印刷された部分は発熱し、規定の温度にまで加熱されると膨張する。
規定の温度は、熱膨張層12に含まれる熱膨張剤が膨張を開始する温度であって、例えば80℃から120℃程度の温度である。制御部70は、所定の強度で電磁波を照射している照射部60を所定の速度で移動させることによって、熱膨張性シート10のうちの濃淡画像が印刷された部分を規定の温度以上に加熱する。所定の強度及び所定の速度は、熱膨張性シート10を規定の温度以上に加熱できるように予め設定されている。なお、所定の温度及び所定の速度は、熱膨張性シート10の上側からバーコードBが読み取られた場合(裏面発泡)と、熱膨張性シート10の下側からバーコードBが読み取られた場合(表面発泡)とで、異なる値に設定されていても良い。
このように、制御部70は、搬送モータ55によって照射部60を第1の方向に移動させながら、照射部60に電磁波を照射させることによって、熱膨張性シート10を膨張させる。熱膨張性シート10のうちの濃淡画像が印刷された部分は、濃淡画像における黒色の濃さに応じた高さに膨張する。これによって、熱膨張性シート10に所望の造形物が造形される。
このような膨張処理によって、照射部60は、熱膨張性シート10の第2の位置P2側の端部に到達する。膨張処理を実行した後、制御部70は、図示しないが、照射部60を第2の位置P2から第1の位置P1への方向(第2の方向)に移動させながら、すなわち照射部60をホームポジションに戻しながら、必要に応じて、換気部54による換気処理、又は冷却部64による冷却処理を実行する。具体的に説明すると、制御部70は、換気部54を駆動させて、膨張処理によって加熱された筐体51内の空気を外部に排出する。また、制御部70は、冷却部64を駆動させて、膨張処理によって加熱された照射部60及び熱膨張性シート10を冷却する。
<造形物の製造処理>
次に、図21に示すフローチャート及び図22(a)〜(e)に示す熱膨張性シート10の断面図を参照して、印刷装置40及び膨張装置50において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート10を準備し、端末装置30を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面に熱変換層(表側変換層81)を印刷する(ステップS1)。表側変換層81は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート10の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図22(a)に示すように、インク受容層13上に表側変換層81が形成される。なお、理解を容易とするため、インク受容層13上に表側変換層81が形成されているように図示しているが、より正確には黒色インクはインク受容層13中に受容されているため、インク受容層13中に表側変換層81が形成されている。
第2に、ユーザは、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10へ表面から電磁波を照射する(ステップS2)。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の表面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の表面に印刷された表側変換層81に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、表側変換層81が発熱し、図22(b)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
第3に、熱膨張層12の一部が膨張した熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面にカラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS3)。具体的には、印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図22(c)に示すように、インク受容層13上にカラーインク層82が形成される。なお、インク受容層13上にカラーインク層82が形成されているように図示しているが、より正確にはカラーインクはインク受容層13中に受容されている。
第4に、カラーインク層82の形成後、カラーインク層82を乾燥させる(ステップS4)。例えば、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入し、膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10を裏面から加熱し、熱膨張性シート10の表面に形成されたカラーインク層82を乾燥させる。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させ、カラーインク層82を加熱し、カラーインク層82中に含まれる溶媒を揮発させる。なお、ステップS4は省略することも可能である。
第5に、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に熱変換層(裏側変換層83)を印刷する(ステップS5)。裏側変換層83は、熱膨張性シート10の表面に印刷された表側変換層81と同様に、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図22(d)に示すように、基材11の裏面に裏側変換層83が形成される。
第6に、ユーザは、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS6)。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させる。熱膨張性シート10の裏面に印刷された裏側変換層83は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図22(e)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうち、裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
以上のような手順によって、熱膨張性シート10の表面上に造形物が形成される。
なお、熱変換層は表側のみ又は裏側のみに形成されてもよい。表側変換層81のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうちステップS1〜S4を実施する。一方、裏側変換層83のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうち、ステップS3〜S6を実施する。
また、ステップS5,S6における裏面発泡の処理を、ステップS1,S2における表面発泡の処理よりも前に実施しても良いし、ステップS3,S4におけるカラーインク層82の印刷及び乾燥処理を、ステップS1,S2における表面発泡の処理よりも前に実施しても良い。或いは、ステップS1における表側変換層81の印刷と、ステップS3におけるカラーインク層82の印刷を実施した後で、ステップS2における表面発泡の処理を実施しても良い。このように、上記ステップS1〜S6の処理の順番は、様々に入れ替えて実施しても良い。
以上説明したように、本実施形態に係る膨張装置50は、電磁波を照射する照射部60を熱膨張性シート10に沿って移動させることで熱膨張性シート10を膨張させる方式の装置において、膨張時に熱膨張性シート10が反る、歪む等の不要な変形をすることを抑制するために、押圧部材120と補助部材130とによって熱膨張性シート10の周縁部を押圧した状態で、熱膨張性シート10を膨張させる。押圧部材120には、バーコードリーダ65が熱膨張性シート10に設けられたバーコードBを読み取るための第1の開口127及び第2の開口128が設けられており、バーコードリーダ65は、第1の開口127又は第2の開口128を介して、押圧部材120によって周縁部が押圧された状態の熱膨張性シート10から、バーコードBを読み取る。これにより、押圧部材120によって周縁部が押圧されていても、バーコードBが押圧部材120によって隠されることを防止できるため、バーコードリーダ65がバーコードBを適正に読み取ることができる。言い換えると、バーコードBの読み取りによる熱膨張性シート10の識別と、熱膨張性シート10の周縁部の押圧と、を両立させることができる。その結果、バーコードBが設けられた熱膨張性シート10を精度良く膨張させることができ、安定した品質の造形物を得ることができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、押圧部材120は、額縁状をしており、載置部110に最大サイズ(具体的にはA3サイズ)の熱膨張性シート10が載置された場合に、熱膨張性シート10の4辺の周縁部を押圧した。しかしながら、本発明において、押圧部材120の形状は、額縁状に限らない。例えば、載置部110に載置された熱膨張性シート10の、補助部材130によって押圧される1辺以外の3辺の周縁部を最低限押圧できるように、押圧部材120は、U字状をしていても良い。
また、上記実施形態では、載置部110に載置された熱膨張性シート10の周縁部のうち、補助部材130が1辺を押圧し、押圧部材120が、少なくとも補助部材130によって押圧される1辺以外の3辺を押圧した。しかしながら、本発明において、押圧部材120によって押圧される第1の周縁部、及び、補助部材130によって押圧される第2の周縁部は、これに限らない。また、熱膨張性シート10の膨張時における不要な変形を抑制することができる程度に周縁部を押圧しさえすれば、押圧部材120と補助部材130とで合わせて熱膨張性シート10の4辺の周縁部の全てを押圧しなくても良い。言い換えると、第1の周縁部と第2の周縁部とで合わせて熱膨張性シート10の4辺の周縁部の全てをカバーしていなくても良い。
上記実施形態では、載置部110に磁石116が設けられ、押圧部材120に金属板125が設けられていた。また、補助部材130において、基部131に磁石136が設けられ、開閉部132に金属板135が設けられていた。しかしながら、本発明において、磁石116と金属板125とが逆に設けられていても良いし、磁石136と金属板135とが逆に設けられていても良い。言い換えると、載置部110に磁石116と金属板125とのうちの一方が設けられ、押圧部材120に磁石116と金属板125とのうちの他方が設けられていれば良い。また、基部131に磁石136と金属板135とのうちの一方が設けられ、開閉部132に磁石136と金属板135とのうちの他方が設けられていれば良い。なお、磁石116,136及び金属板125,135の形状は、上記実施形態の例に限らない。
また、トレイ100に載置される熱膨張性シート10のサイズはA3及びA4サイズに限らず、本発明は、様々なサイズの熱膨張性シート10がトレイ100に載置された場合に適用することができる。例えば、トレイ100に載置される熱膨張性シート10の最大サイズはA3に限らない。また、補助部材130を、載置部110上のより多くの箇所に取り付けられるように構成することで、より多くのサイズの熱膨張性シート10に対して、膨張時に周縁部を押圧することで不要に変形することを抑制することができる。
上記実施形態では、補助部材130は、載置部110から着脱可能であり、載置部110に載置された熱膨張性シート10のサイズに応じて凹部112内の異なる位置に嵌め込まれて使用された。しかしながら、本発明において、補助部材130は、載置部110上における位置が熱膨張性シート10のサイズに応じて変更可能なものであれば、載置部110から取り外せなくても良く、例えば載置部110に取り付けられた状態で位置を変更可能なものであっても良い。また、補助部材130は、載置部110の凹部112に嵌め込まれるものでなくても良い。
上記実施形態では、押圧部材120には、バーコードリーダ65がバーコードBを読み取るための2つの開口127,128が設けられていた。しかしながら、本発明において、押圧部材120には、バーコードリーダ65がバーコードBを読み取るための開口は、1つであっても良い。例えば、押圧部材120のサイズが上記実施形態よりも小さい場合のように、第2の開口128が設けられていなくても、バーコードリーダ65がトレイ100に載置された熱膨張性シート10の下側からバーコードBを読み取ることが可能であれば、第2の開口128は設けられていなくても良い。
また、上記実施形態では、載置部110には、2つの開口117,118が設けられていた。しかしながら、本発明において、バーコードリーダ65がトレイ100に載置された熱膨張性シート10の下側からバーコードBを読み取ることが可能なように光路が確保されていれば、2つの開口117,118の少なくとも一方が設けられていなくても良い。言い換えると、載置部110には、第4の開口118は設けられておらず、第3の開口117が、上記実施形態における2つの開口117,118を合わせた機能を有していても良い。
上記実施形態では、識別子としてバーコードBが熱膨張性シート10に設けられていた。しかしながら、本発明において、識別子は、バーコードBに限らず、読取部によって読み取り可能な情報であれば、文字、記号、図形等であっても良い。また、読取部は、バーコードリーダ65のようにレーザー方式でバーコードBを読み取るものに限らず、どのような方式で識別子を読み取っても良い。
上記実施形態では、第2の開口128の外側に押圧部材120のエッジが設けられている、すなわち、第2の開口128が閉じた形状の開口であるとして説明した。しかしながら、本発明において、第2の開口128は、外側に開いた形状の開口である、すなわち、いわゆる切り欠き形状の開口であっても良い。一例として図23に、閉じた形状をしている第2の開口128に代えて、切り欠き形状をしている第2の開口128aが設けられた押圧部材120aを示す。このように、熱膨張性シート10を載置部110に安定して固定することができ、且つ、バーコードリーダ65がバーコードBを読み取り可能なように光路を確保することができるものであれば、第2の開口128aのように開口の外側に押圧部材120のエッジが設けられていなくても良い。
上記実施形態では、トレイ(シート保持機構)100は、造形物を製造するための熱膨張性シート10を保持するものであり、トレイ100とバーコードリーダ65とによって構成される識別子読取機構は、熱膨張性シート10に設けられたバーコードBを読み取るものであった。しかしながら、本発明に係る識別子読取機構によって識別子が読み取られるシートは、熱膨張性シート10に限らず、一般的なシートであっても良い。本発明に係る識別子読取機構は、熱膨張性シート10以外のシートがシート保持機構において載置部110と押圧部材120とにより挟持された状態で保持されている場合であっても、開口127,128等を介してシートに設けられた識別子を適切に読み取ることができる。
上記実施形態では、熱膨張性シート10は、基材11と熱膨張層12とインク受容層13とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート10の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート10は、インク受容層13を備えなくても良いし、表面又は裏面に剥離可能な剥離層を備えていても良い。或いは、熱膨張性シート10は、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態では、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
シートが載置される載置部と、
前記載置部に載置されているシートを当該シート上から押圧して、前記載置部との間で前記シートを挟持する押圧部材と、
前記載置部と前記押圧部材とにより挟持された前記シートの所定の位置に所定の識別子が設けられている場合に、前記識別子を光学的に読み取る読取部と、
を備え、
前記押圧部材には、前記読取部が前記識別子を前記押圧部材越しに読み取り可能とするための開口が設けられていることを特徴とする識別子読取機構。
(付記2)
前記押圧部材には、前記開口として、前記載置部に載置されているシートを覆う領域に設けられた第1の開口と前記載置部に載置されているシートを覆う領域からは外れた第2領域に設けられた第2の開口とが設けられ、
前記載置部には、前記第1の開口と少なくとも一部が重なる位置に第3の開口が設けられ、
前記読取部は、前記識別子が前記押圧部材側を向くように前記シートが前記載置部に載置された場合には前記第1の開口を介して前記識別子を読み取り、前記識別子が前記載置部側を向くように前記シートが前記載置部に載置された場合には前記第2の開口及び前記第3の開口を介して前記識別子を読み取ることを特徴とする付記1に記載の識別子読取機構。
(付記3)
前記識別子が前記載置部側を向くように前記シートが前記載置部に載置された場合に、前記第3の開口を介した前記識別子の像を前記第2の開口に向けて映す鏡を備え、
前記読取部は、前記識別子が前記載置部側を向くように前記シートが前記載置部に載置された場合には、前記鏡に映っている前記識別子の像を前記第2の開口を介して読み取ることを特徴とする付記2に記載の識別子読取機構。
(付記4)
前記押圧部材が前記載置部に載置された前記シートを押圧する際に前記第1の開口と前記第2の開口との間の領域に前記シートのエッジが位置するように、前記第1の開口と前記第2の開口とが設けられていることを特徴とする付記2又は3に記載の識別子読取機構。
(付記5)
前記読取部は、前記載置部に載置された前記シートに沿って移動しながら、前記識別子を光学的に読み取り、
前記読取部の移動方向における前記第2の開口の幅は、前記移動方向における前記第1の開口の幅よりも大きい、
ことを特徴とする付記2から4のいずれか1つに記載の識別子読取機構。
(付記6)
前記載置部には、それぞれ前記第1の開口及び前記第2の開口に対応する位置に、前記第3の開口及び第4の開口が設けられ、
前記読取部は、前記載置部に載置された前記シートの下側の面に前記識別子が設けられている場合、前記第2の開口、前記第4の開口及び前記第3の開口を介して前記識別子を読み取る、
ことを特徴とする付記2から5のいずれか1つに記載の識別子読取機構。
(付記7)
前記識別子は、前記シートの1辺の周縁部に設けられ、
前記押圧部材は、額縁状に開口しており、前記載置部に載置された前記シートの、前記1辺の周縁部を含む少なくとも3辺の周縁部を押圧する、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の識別子読取機構。