以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
<熱膨張性シート100>
図1に、実施形態1に係る造形物を造形するための熱膨張性シート100の断面構成を示す。熱膨張性シート100は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートに垂直な方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
図1に示すように、熱膨張性シート100は、基材101と、熱膨張層102と、インク受容層103とを、この順に備えている。なお、図1は、造形物が造形される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート100の断面を示している。
基材101は、熱膨張性シート100の元となるシート状の媒体である。基材101は、熱膨張層102とインク受容層103とを支持する支持体であって、熱膨張性シート100の強度を保持する役割を担う。基材101として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材101の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層102は、基材101の上側に積層されており、規定の温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層102は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5〜50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層102は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層103は、熱膨張層102の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層103は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層103は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層103の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている汎用的な材料を用いることができる。
造形システム1は、このような熱膨張性シート100に造形物を造形することができる。熱膨張性シート100の表面又は裏面のうちの膨張させたい部分には、カーボン分子が印刷される。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート100において、カーボン分子が印刷された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層102が膨張して隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層102の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート100に造形物が造形される。
図2に、一例として、建物の外壁材として用いられるレンガを模した造形物10が熱膨張性シート100に造形された場合を示す。このように、熱膨張性シート100における膨張させる箇所及び高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を造形することができる。造形は、造型とも呼ぶ。また、造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
<造形システム1>
次に、図3を参照して、熱膨張性シート100に造形物10を造形する造形システム1について説明する。図3に示すように、造形システム1は、画像処理装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
画像処理装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置(端末装置)であって、印刷装置40及び膨張装置50を制御する制御ユニットである。図4に示すように、画像処理装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、画像処理装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。また、図4に示すように、記憶部32は、造形データ321と、吸収率データ322と、を記憶している。
造形データ321は、熱膨張性シート100に造形物を造形するために必要となるデータである。造形データ321は、印刷装置40によって熱膨張性シート100に印刷される画像のデータ、具体的には、造形物の立体形状を造形するための画像である濃淡画像(造形用画像)のデータと、造形物に着色するための画像であるカラー画像(着色用画像)のデータと、を含んでいる。
図5に、濃淡画像200の一例を示す。濃淡画像200は、熱膨張性シート100における膨張させる部分と膨張の度合いとを白黒の濃淡によって示す画像である。濃淡画像200において、色が濃い部分は、熱膨張性シート100における膨張させる部分を示している。図5は、理解を容易にするために、濃度が高い領域が一様な濃度で且つ単純な方形状をしている濃淡画像200を示しているが、濃淡画像200において、色が濃い(濃度が高い及び輝度が低い)ほど膨張の度合いが大きく、色が薄い(濃度が低い及び輝度が高い)ほど膨張の度合いが小さいことを示している。このように、濃淡画像200では、造形すべき造形物の立体形状を熱膨張性シート100上に形成することができるように、熱膨張性シート100のうちのより大きく膨張させる部分により高い濃度で濃淡のパターンが描かれている。
なお、記憶部32は、濃淡画像200のデータとして、熱膨張性シート100の表面(インク受容層103側の面)に印刷される画像データ(表面発泡データ)と、熱膨張性シート100の裏面(基材101側の面)に印刷される画像データ(裏面発泡データ)と、を記憶している。
図6に、カラー画像210の一例を示す。カラー画像210は、濃淡画像200によって造形された造形物に着色するための色彩を示す画像である。図6に示すカラー画像210は、2つの円形の領域を異なる色彩で着色する例を示している。カラー画像210は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等のカラーインクのうちの少なくとも1色以上のインクで、熱膨張性シート100の表面に印刷される。
記憶部32は、図5に示した濃淡画像200及び図6に示したカラー画像210を含む、様々な造形物を造形するための濃淡画像200及びカラー画像210のデータを記憶している。このような濃淡画像200及びカラー画像210のデータは、記録媒体駆動部35によって記録媒体から読み取られて、又は、通信部36を介して外部の機器から取得されて、予め記憶部32に記憶される。或いは、濃淡画像200及びカラー画像210は、操作部33を介してユーザによって生成又は編集されることもできる。
図4に戻って、記憶部32に記憶された吸収率データ322は、カラー画像210を印刷する際に使用されるカラーインクによる電磁波の吸収の度合いを示すデータである。造形システム1は、熱膨張性シート100を膨張させるために、カーボン分子を含む黒色インク(ブラックKのインク)を用いて濃淡画像200を印刷する。カーボン分子を含む黒色インク(以下、単に「黒色インク」と呼ぶ。)は、発熱インク、熱変換インク等とも呼び、上述したように、電磁波を熱に変換する発熱剤としての性質を有する。一方で、カラー画像210の印刷に使用されるカラーインクも、濃淡画像200の印刷に使用される熱変換インクほどでは無いが、ある程度は電磁波を吸収して発熱する性質を有する。
図7(a)〜(c)に、シアン、マゼンタ及びイエロー(CMY)のカラーインクによる電磁波の透過率を示す。図7(a)に示すように、シアン(C)のインクは、青及び緑の波長域の電磁波を透過し易く、それ以外の波長域の電磁波を吸収し易い、との性質を有する。図7(b)に示すように、マゼンタ(M)のインクは、主に赤の波長域の電磁波を透過し易く、それ以外の波長域の電磁波を吸収し易い、との性質を有する。図7(c)に示すように、イエロー(Y)のインクは、緑及び赤の波長域の電磁波を透過し易く、それ以外の波長域の電磁波を吸収し易い、との性質を有する。
このように、カラーインクの色によって、電磁波を透過し易い波長域と電磁波を吸収し易い波長域とが異なる。カラーインクは、電磁波を吸収すると、電磁波によってカラーインクに含まれる分子が振動又は回転して発熱する。そのため、同じ照射源から電磁波を照射された場合における発熱の度合いも、インクの色によって異なる。
また、電磁波の照射源によっても、カラーインクの発熱の度合いは異なる。例えば図8に、ハロゲンランプ(破線)、キセノンランプ(実線)及び太陽光(点線)の放射スペクトルを示す。図8に示すように、照射源がハロゲンランプ、キセノンランプ、或いはそれ以外のランプであるかによって、照射される電磁波のスペクトルが異なるため、カラーインクに強く照射される波長域も異なる。そのため、吸収率データ322は、印刷装置40においてカラー画像210を印刷する際に使用されるカラーインクのそれぞれについて、膨張装置50に搭載された照射源によって電磁波が照射された場合における吸収率の情報を格納している。なお、図7及び図8に示すグラフは一例であって、実際のものとは異なっていても良い。
具体的には図9に示すように、吸収率データ322は、膨張装置50においてCMYの各カラーインクに電磁波が照射された場合における電磁波の吸収率Ac,Am,Ayを格納している。ここで、吸収率Ac,Am,Ayは、ある条件での黒色インクによる電磁波の吸収率Akを100%とした場合における、同じ条件でのシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクによる電磁波の吸収率を表す。具体的には図9に示すように、印刷装置40で使用されるCMYのカラーインクは、同じ量の黒色インクによる電磁波の吸収率に対して、それぞれ17%、5%及び1%の吸収率で電磁波を吸収する。このような吸収率Ac,Am,Ayの値は、予め実験によって測定され、画像処理装置30の記憶部32に吸収率データ322として記憶される。
なお、図7(a)〜(c)に示したようにカラーインクによる電磁波の吸収率は波長によって異なるが、吸収率データ322における吸収率Ak、Ac,Am,Ayは、全波長域に亘る平均値である。
図4に戻って、操作部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部33を操作することによって、造形データ321を生成又は編集する操作を入力し、また造形物10の造形処理を開始する指令を入力することができる。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。例えば、表示部34は、造形データ321を表示する。また、表示部34は、必要に応じて、印刷装置40又は膨張装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、造形データ321を可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。画像処理装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40、膨張装置50、及びその他の外部の機器と通信する。
図4に示すように、制御部31は、機能的に、受付手段として機能する受付部311と、取得手段として機能する取得部312と、補正手段として機能する補正部313と、出力手段(印刷制御手段)として機能する出力部314と、を備える。制御部31において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
受付部311は、造形対象となる造形物の指定をユーザから受け付ける。具体的に説明すると、ユーザは、操作部33を操作して、造形データ321として画像データが用意された複数の造形物のうちから、造形すべき所望の造形物を指定することができる。例えば図2に示した外壁材を模した造形物10を造形する場合、ユーザは、造形対象として外壁材を指定する。受付部311は、このようにしてユーザから入力された造形物の指定を受け付ける。受付部311は、制御部31が操作部33と協働することによって実現される。
取得部312は、印刷装置40によってカラー画像210が印刷された熱膨張性シート100に、膨張装置50によって電磁波が照射された場合における、カラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得する。具体的に説明すると、受付部311によって造形物の指定を受け付けると、取得部312は、造形データ321として用意された画像データの中から、指定された造形物を造形するための濃淡画像200のデータと、その造形物に着色するためのカラー画像210のデータと、を選択する。そして、取得部312は、選択した濃淡画像200とカラー画像210とが少なくとも一部の領域において重ねて印刷される場合に、印刷されたカラー画像210が、膨張装置50において照射される電磁波をどの程度吸収するかを、吸収率データ322を参照して見積もる。取得部312は、制御部31が記憶部32と協働することによって実現される。
例えば図10に示すように、図5に示した濃淡画像200と図6に示したカラー画像210とが、熱膨張性シート100に印刷された場合、熱膨張性シート100上で濃淡画像200とカラー画像210とが一部で重なって印刷される。ここで、濃淡画像200とカラー画像210とが重なって印刷される重複領域220(図10において破線で囲った領域)では、濃淡画像200に使用される黒色インクだけでなく、カラー画像210に使用されるカラーインクも多少なりとも電磁波を吸収することで発熱する。このような重複領域220におけるカラーインクによる発熱の度合いを見積もるため、取得部312は、カラー画像210が熱膨張性シート100に印刷された場合における電磁波の吸収の度合いを取得する。
具体的に説明すると、取得部312は、カラー画像210を印刷する際に使用されるシアン(C)のインクの量Lc、マゼンタ(M)のインクの量Lm、及び、イエロー(Y)のインクの量Lyを見積もる。このCMYのカラーインクの量Lc,Lm,Lyは、印刷対象となるカラー画像210によって異なり、またカラー画像210内の領域によっても異なる。例えば、図6に示したカラー画像210は、左右の2つの円形の領域として、互いに異なる色で着色される領域を有する。取得部312は、カラー画像210のうちの、濃淡画像200と重ねて印刷される重複領域220において、印刷時に使用されるCMYのカラーインクの量Lc,Lm,Lyを、熱膨張性シート100に単位面積当たりに塗布されるインクの量の単位で計算する。
より詳細に説明すると、取得部312は、このようなカラーインクの量Lc,Lm,Lyを、重複領域220に含まれる複数の部分のそれぞれについて計算する。複数の部分とは、互いに色彩が異なる、すなわち使用するカラーインクの量Lc,Lm,Lyが異なる部分である。例えば図10に示した重複領域220のように、色彩が異なる複数の部分が位置的に離れている場合には、取得部312は、これら複数の部分のそれぞれについてカラーインクの量Lc,Lm,Lyを計算する。或いは、図示しないが、1つの重複領域220内に色彩が異なる複数の部分が存在する場合には、取得部312は、これら複数の部分のそれぞれについてカラーインクの量Lc,Lm,Lyを計算する。
カラー画像210の各部分についてCMYのカラーインクの量Lc,Lm,Lyを見積もると、取得部312は、見積もった量のカラーインクによる電磁波の吸収の度合いを取得する。具体的に説明すると、取得部312は、カラーインクによる電磁波の吸収の度合いを示す指標として、見積もった量のカラーインクと同じ程度の電磁波を吸収する黒色インクの量である補正量ΔLを計算する。
この黒色インクの補正量ΔLは、下記(1)式によって定められる。取得部312は、見積もったカラーインクの量Lc,Lm,Lyと、吸収率データ322に格納された吸収率Ac,Am,Ayとを、下記(1)式に適用して、見積もったカラーインクの量Lc,Lm,Lyに対応する黒色インクの補正量ΔLを計算する。
ΔL=Ac×Lc+Am×Lm+Ay×Ly…(1)
図4に戻って、補正部313は、指定された造形物を造形するための濃淡画像200が、その造形物に着色するためのカラー画像210と重ねて印刷される場合、濃淡画像200を補正する。上述したように、濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷される重複領域220では、カラーインクが電磁波を吸収して発熱する。このようなカラーインクの発熱によって、熱膨張性シート100が所望の高さよりも膨張され過ぎることを抑制するため、補正部313は、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を、重複領域220におけるカラー画像210の色彩に応じて補正する。補正部313は、制御部31が記憶部32と協働することによって実現される。
補正部313は、取得部312によって取得されたカラー画像210による電磁波の吸収の度合いに基づいて、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を低下させる。具体的に説明すると、補正部313は、濃淡画像200を印刷する際に使用される黒色インクの量Lkを見積もる。より詳細には、補正部313は、濃淡画像200のうちの、カラー画像210と重ねて印刷される重複領域220において、印刷時に使用される黒色インクの量Lkを、熱膨張性シート100に単位面積当たりに塗布されるインクの量の単位で計算する。
黒色インクの量Lkを見積もると、補正部313は、下記(2)式に従って、補正後の黒色インクの量Lk’を計算する。具体的に説明すると、補正部313は、見積もった黒色インクの量Lkから、取得部312によって取得された黒色インクの補正量ΔLを減じることにより、補正後の黒色インクの量Lk’を計算する。そして、補正部313は、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を、当初の黒色インクの量Lkに相当する濃度から、計算した黒色インクの量Lk’に相当する濃度に低下させる。なお、濃度を低下させるとは、濃度を薄くする、すなわち輝度値(画素値又は濃度値とも呼ぶ。)を高めることに相当する。
Lk’=Lk−ΔL
=Lk−(Ac×Lc+Am×Lm+Ay×Ly)…(2)
このように、補正部313は、取得部312によって取得された電磁波の吸収の度合いがより大きい場合、重複領域220の濃度をより低下させる。言い換えると、取得部312によって取得された電磁波の吸収の度合いが大きい場合には、カラー画像210による発熱が大きいことが見込まれる。そのため、補正部313は、その分、重複領域220の濃度を低下させることで、濃淡画像200とカラー画像210とで合わせて所望の発熱量が得られるように調整する。
図11に、図5に示した濃淡画像200が、図6に示したカラー画像210によって補正された画像である補正画像250を示す。図11に示すように、補正部313は、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を、重複領域220におけるカラー画像210に基づいて低下させる。これに対して、補正部313は、濃淡画像200のうちの、重複領域220以外の領域、すなわちカラー画像210と重ならない領域については、濃度を変更しない。このようにして、補正部313は、濃淡画像200を補正画像250に補正する。
このとき、補正部313は、重複領域220に含まれる複数の部分のうちの、取得部312によって取得された電磁波の吸収の度合いがより大きい部分の濃度をより低下させる。例えば図11に示すように、重複領域220に色彩が異なる複数の部分が含まれる場合には、補正部313は、この複数の部分のそれぞれについて、取得部312によって取得された黒色インクの補正量ΔLから補正後の黒色インクの量Lk’を計算する。そして、補正部313は、複数の部分の濃度を異なる濃度に補正する。このように、補正部313は、カラー画像210による発熱が大きいことが見込まれる部分ほど重複領域220の濃度を低下させることで、熱膨張性シート100が膨張しすぎることを抑制する。
なお、記憶部32は、濃淡画像200のデータとして、熱膨張性シート100の表面に印刷される画像のデータ(表面発泡データ)と、熱膨張性シート100の裏面に印刷される画像のデータ(裏面発泡データ)と、を記憶している。補正部313は、上述した濃淡画像200を補正する処理を、カラー画像210と重ねて印刷される濃淡画像200について実行する。すなわち、カラー画像210が熱膨張性シート100の表面にのみ印刷される場合には、補正部313は、熱膨張性シート100の表面に印刷される濃淡画像200についてのみ補正処理を実行する。
図4に戻って、出力部314は、補正部313によって濃度が補正された濃淡画像200(すなわち補正画像250)と、カラー画像210とを、印刷装置40に出力し、印刷装置40に印刷させる。具体的に説明すると、出力部314は、通信部36を介して印刷装置40と通信し、補正画像250のデータとカラー画像210のデータとを含む印刷データを印刷装置40に出力する。このとき、出力部314は、印刷データと共に、この印刷データに従って印刷を実行する指令と印刷時の設定情報とを含む印刷制御データを印刷装置40に出力する。これにより、出力部314は、印刷装置40に、補正画像250とカラー画像210とを熱膨張性シート100に印刷させる印刷制御手段として機能する。出力部314は、制御部31が通信部36と協働することによって実現される。
<印刷装置40>
図3に示した造形システム1の説明に戻る。印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に画像を印刷する印刷ユニットである。印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷装置40は、印刷手段として機能する。
図12に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図12に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート100が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に狭持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート100の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート100の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート100を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、いずれも図示しないが、CPU等の制御部と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶部と、を備えている。制御部において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、印刷装置40の動作を制御する。また、印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して画像処理装置30と接続されている。印刷装置40は、制御部の制御のもと、フレキシブル通信ケーブル46を介して画像処理装置30から印刷データ及び印刷制御データを取得する。そして、印刷装置40は、取得した印刷データ及び印刷制御データに従って、熱膨張性シート100に印刷を実行する。
具体的に説明すると、印刷装置40は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート100を搬送させる。また、印刷装置40は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。そして、印刷装置40は、印刷ヘッド42に、搬送される熱膨張性シート100に向けてインクを噴射させて、印刷対象となる画像を印刷する。
より詳細に説明すると、印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面に、画像処理装置30から出力された補正画像250を、カーボンブラックを含む黒色インクで印刷し、補正画像250と共に画像処理装置30から出力されたカラー画像210を、少なくとも1色以上のカラーインクで印刷する。また、印刷装置40は、熱膨張性シート100の裏面に、画像処理装置30から出力された裏面用の濃淡画像200を、カーボンブラックを含む黒色インクで印刷する。
<膨張装置50>
膨張装置50は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張性シート100の表面又は裏面に印刷された濃淡画像200(補正された濃淡画像200である補正画像250を含む)を発熱させて、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像200が印刷された部分を膨張させる膨張ユニットである。膨張装置50は、膨張手段として機能する。
図13に、膨張装置50の構成を模式的に示す。図13において、X方向は、膨張装置50の幅方向に相当し、Y方向は、膨張装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。図13に示すように、膨張装置50は、筐体51と、挿入部52と、トレイ53と、換気部54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、電源部69と、制御部70と、を備える。
挿入部52は、開閉式の扉を備えており、熱膨張性シート100を筐体51の内部に挿入するための機構である。ユーザは、挿入部52を開き、トレイ53をスライドさせて手前側に引き出した後、熱膨張性シート100をその表面又は裏面を上に向けてトレイ53の上に設置する。そして、熱膨張性シート100が設置されたトレイ53を筐体51の内部に戻し、挿入部52を閉めると、熱膨張性シート100は、照射部60によって電磁波を照射可能な位置に配置される。
トレイ53は、熱膨張性シート100を筐体51内の適正な位置に設置するための機構である。トレイ53は、熱膨張性シート100を検出するセンサを備えており、熱膨張性シート100が設置されたか否か、及び、熱膨張性シート100が設置された場合にその熱膨張性シート100のサイズを検出する。
換気部54は、膨張装置50における奥側の端部に設けられており、膨張装置50の内部を換気する。換気部54は、少なくとも1つのファンを備えており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。
搬送モータ55は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータであって、照射部60を熱膨張性シート100の表面又は裏面に沿って移動させる。筐体51の内部には、Y方向に、すなわち熱膨張性シート100の表面又は裏面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。照射部60は、搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、熱膨張性シート100との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。搬送モータ55は、熱膨張性シート100と照射部60とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
具体的に説明すると、照射部60は、熱膨張性シート100の奥側の端部に対応する第1の位置P1と、熱膨張性シート100の手前側の端部に対応する第2の位置P2と、の間で往復移動する。搬送モータ55は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向かう第1の方向、及び、第2の位置P2から第1の位置P1に向かう第2の方向に移動させる。第1の位置P1は、照射部60の初期位置(ホームポジション)である。照射部60は、膨張装置50が動作していない時には第1の位置P1で待機している。
照射部60は、電磁波を照射する機構であって、トレイ53の上に配置された熱膨張性シート100に電磁波を照射する。図13に示すように、照射部60は、ランプヒータ61と、反射板62と、温度センサ63と、冷却部64と、バーコードリーダ65と、を備える。
ランプヒータ61は、例えば照射源としてハロゲンランプを備えており、電磁波として、熱膨張性シート100に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。照射部60及びランプヒータ61は、このような波長域の光を照射することにより、熱膨張性シート100にエネルギーを照射する照射手段として機能する。
カーボンブラックを含む黒色インクによる濃淡画像が印刷された熱膨張性シート100に光(エネルギー)を照射すると、濃淡画像が印刷された部分では、濃淡画像が印刷されていない部分に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像が印刷された部分が主に加熱され、熱膨張剤が膨張を開始する温度に達すると膨張する。照射部60は、搬送モータ55によって搬送されながら光(エネルギー)を照射することにより、熱膨張性シート100を熱膨張させる熱膨張手段として機能する。なお、ランプヒータ61によって照射される光は、電磁波であれば良く、上記波長域の光であることに限らない。
反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から照射された光を熱膨張性シート100に向けて反射する機構である。温度センサ63は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板62の温度を測定する測定手段として機能する。冷却部64は、少なくとも1つのファンを備えており、照射部60に送風することによって、照射部60及び筐体51の内部を冷却する。
バーコードリーダ65は、熱膨張性シート100の裏面に設けられているバーコードを読み取る読取手段として機能する。バーコードは、熱膨張性シート100を識別するための識別子であって、熱膨張性シート100が造形物を造形するための専用のシートであることを示す識別子である。熱膨張性シート100の裏面には、図示しないが、その縁部に沿って複数のバーコードが付されている。バーコードリーダ65は、光源及び光学センサを備え、周知の方式でバーコードを光学的に読み取る。バーコードリーダ65は、照射部60に取り付けられており、照射部60と共に移動する。
電源部69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、膨張装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気部54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却部64は、電源部69から電力を得て動作する。
制御部70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられている。制御部70は、CPU、ROM及びRAMを備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して膨張装置50の各部と接続されている。制御部70において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、膨張装置50全体の動作を制御する。
また、制御部70は、いずれも図示しないが、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリと、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスと、画像処理装置30と通信するための通信インタフェースと、を備える。
<膨張処理>
制御部70は、印刷装置40によって補正画像250及びカラー画像210が印刷された熱膨張性シート100に電磁波を照射することにより、熱膨張性シート100を膨張させる。
図14に、膨張装置50が膨張処理を実行する様子を示す。膨張処理において、制御部70は、照射部60に電源電圧を供給してランプヒータ61を点灯させる。そして、制御部70は、照射部60に電磁波を照射させている状態で搬送モータ55を駆動させる。これにより、制御部70は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けて、すなわち第1の方向に、規定の距離だけ移動させる。このように、制御部70は、照射部60を熱膨張性シート100の端から端まで移動させることで、熱膨張性シート100の表面又は裏面の全体に亘って電磁波を照射させる。
規定の距離は、熱膨張性シート100のサイズに応じて異なる。例えば、熱膨張性シート100のサイズがA3サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの距離である。或いは、熱膨張性シート100のサイズがA4サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの半分の距離である。
照射部60によって電磁波が照射されると、熱膨張性シート100のうちの、カーボンブラックを含む黒色インクで濃淡画像200が印刷された部分は発熱し、規定の温度にまで加熱されると膨張する。
規定の温度は、熱膨張層102に含まれる熱膨張剤が膨張を開始する温度であって、例えば80℃から120℃程度の温度である。制御部70は、所定の強度で電磁波を照射している照射部60を所定の速度で移動させることによって、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像200が印刷された部分を規定の温度以上に加熱する。所定の強度及び所定の速度は、熱膨張性シート100を規定の温度以上に加熱できるように予め設定されている。
このように、制御部70は、搬送モータ55によって照射部60を第1の方向に移動させながら、照射部60に電磁波を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。熱膨張性シート100のうちの濃淡画像200が印刷された部分は、濃淡画像200における黒色の濃さに応じた高さに膨張する。このとき、画像処理装置30において、濃淡画像200のうち、カラー画像210と重ねて印刷された重複領域220の濃度は、カラー画像210が電磁波を吸収する度合いに基づいて補正されている。そのため、熱膨張性シート100は、重複領域220では、補正された濃淡画像200による発熱とカラー画像210による発熱とによって膨張する。これによって、熱膨張性シート100に所望の造形物が造形される。
このような膨張処理によって、照射部60は第2の位置P2に到達する。膨張処理を実行した後、制御部70は、図示しないが、照射部60を第2の位置P2から第1の位置P1に向けて移動させながら、すなわち照射部60を初期位置に戻しながら、必要に応じて、換気部54による換気処理、又は冷却部64による冷却処理を実行する。具体的に説明すると、制御部70は、換気部54を駆動させて、膨張処理によって加熱された筐体51内の空気を外部に排出する。また、制御部70は、冷却部64を駆動させて、膨張処理によって加熱された照射部60及び熱膨張性シート100を冷却する。
<造形システム1の処理フロー>
以上のように構成された造形システム1において実行される処理の流れについて、フローチャートを参照して説明する。
まず、図15を参照して、画像処理装置30において実行される濃淡画像補正処理の流れについて説明する。図15に示す濃淡画像補正処理において、制御部31は、受付部311として機能し、造形システム1によって造形すべき造形物の指定を受け付ける(ステップS1)。ユーザは、操作部33を操作して、造形システム1が造形可能な複数の造形物のうちから、所望の造形物を指定することができる。
造形物の指定を受け付けると、制御部31は、濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷されるか否かを判定する(ステップS2)。具体的に説明すると、制御部31は、指定された造形物を造形するための濃淡画像200と、その造形物に着色するためのカラー画像210とが、例えば図10に示したように、熱膨張性シート100に印刷された際に少なくとも一部で重複するか否かを判定する。
濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷されると判定した場合(ステップS2;YES)、制御部31は、取得部312として機能し、カラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部31は、カラー画像210を印刷する際に使用されるカラーインクの量Lc,Lm,Lyと、吸収率データ322に格納された吸収率Ac,Am,Ayとによって、カラーインクの量Lc,Lm,Lyと同じ程度の電磁波を吸収する黒色インクの補正量ΔLを計算する。
カラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得すると、制御部31は、補正部313として機能し、濃淡画像200を補正する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部31は、濃淡画像200のうちの、カラー画像210と重複して印刷される領域の濃度を、ステップS2で計算した黒色インクの補正量ΔLに相当する分だけ低下させる。これにより、制御部31は、例えば図5に示した濃淡画像200を、図11に示した補正画像250に補正する。
一方で、ステップS2において、濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷されないと判定した場合(ステップS2;NO)、濃淡画像200を補正する必要が無いため、制御部31は、ステップS3,S4の処理をスキップする。
ステップS4において濃淡画像200を補正すると、或いはステップS3,S4の処理をスキップすると、制御部31は、出力部314として機能し、印刷データを印刷装置40に出力する(ステップS5)。具体的に説明すると、制御部31は、濃淡画像200を補正した場合には、補正した後の濃淡画像200のデータと対応するカラー画像210のデータとを印刷装置40に出力する。一方で、濃淡画像200を補正していない場合には、制御部31は、補正していない濃淡画像200のデータと対応するカラー画像210のデータとを印刷装置40に出力する。これにより、制御部31は、濃淡画像200とカラー画像210とを印刷装置40に印刷させる。以上によって、図15に示した濃淡画像補正処理は終了する。
次に、図16に示すフローチャート及び図17(a)〜(d)に示す熱膨張性シート100の断面図を参照して、印刷装置40及び膨張装置50において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
第1に、ユーザは、造形物が造形される前の熱膨張性シート100を準備する。そして、ユーザは、熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の表面に変換層104及びカラーインク層105を印刷する(ステップS100)。変換層104は、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちの、熱膨張性シート100の表面に印刷すべき補正画像250(濃度が補正された濃淡画像200)のデータ(表面発泡データ)に従って、熱膨張性シート100の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。また、印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちのカラー画像210のデータに従って、熱膨張性シート100の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローYのうちの少なくとも1色以上のインクを吐出する。その結果、図17(a)に示すように、インク受容層103上に変換層104とカラーインク層105とが形成される。
なお、図17(a)では、理解を容易にするため、変換層104及びカラーインク層105は、インク受容層103の上に形成されているように示されている。しかしながら、より正確には、カラーインク及び黒色インクはインク受容層103の内部に吸収されるため、変換層104及びカラーインク層105は、インク受容層103の中に形成される。図17(b)〜(d)でも同様である。
なお、印刷装置40は、カラーインク層105において黒又はグレーの色の画像を印刷する場合には、シアンC、マゼンタM及びイエローYの3色のインクを混色して形成するか、或いはカーボンブラックを含まない黒色のインクを更に使用することによって形成する。
第2に、ユーザは、変換層104とカラーインク層105とが印刷された熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の表面に照射部60によって電磁波を照射する(ステップS200)。熱膨張性シート100の表面に印刷された変換層104は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。このとき、カラーインク層105も、僅かではあるが電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図17(b)に示すように、熱膨張性シート100のうちの主に変換層104が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
第3に、ユーザは、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に変換層106を印刷する(ステップS300)。変換層106は、熱膨張性シート100の表面に印刷された変換層104と同様に、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちの、熱膨張性シート100の裏面に印刷すべき濃淡画像200のデータ(裏面発泡データ)に従って、熱膨張性シート100の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図17(c)に示すように、基材101の裏面に変換層106が形成される。
第4に、ユーザは、変換層106が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に、照射部60によって電磁波を照射する(ステップS400)。熱膨張性シート100の裏面に印刷された変換層106は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図17(d)に示すように、熱膨張性シート100のうちの変換層106が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
以上のように、熱膨張性シート100のうちの変換層104,106が形成された部分が膨張することによって、熱膨張性シート100にカラーの造形物が造形される。変換層104,106は、その濃度が濃い部分ほど大きく加熱されるため、より大きく膨張する。そのため、目標となる高さに応じて変換層104,106の濃淡を調整することで、様々な形状の造形物を得ることができる。
なお、熱膨張性シート100を裏面から加熱する処理を省略しても良い。この場合、図16におけるステップS300,S400は省略される。また、ステップS100において、変換層104とカラーインク層105とを印刷する順番は、どちらが先であっても良いし、同時でも良い。或いは、カラーインク層105を印刷した後、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100の表面に剥離可能な剥離層を貼り、剥離層の上から変換層104を印刷しても良い。ステップS200において熱膨張性シート100を膨張させた後、ユーザが剥離層を剥離することで、変換層104を除去することができる。これにより、造形物から変換層104による黒色を除去することができるため、鮮やかな色彩を有する造形物を製造し易くなる。
以上説明したように、実施形態1に係る造形システム1において、画像処理装置30は、濃淡画像200とカラー画像210とが熱膨張性シート100に重ねて印刷される場合、濃淡画像200のうちの、カラー画像210と重ねて印刷される重複領域220の濃度を補正する。そして、画像処理装置30は、印刷装置40に、補正した濃淡画像200(補正画像250)とカラー画像210とを熱膨張性シート100に印刷させる。このように濃淡画像200の濃度を補正することによって、カラーインクが電磁波を吸収して発熱することで熱膨張性シート100が過度に膨張されることを抑制することができる。その結果、所望の色彩を有する造形物を精度良く製造することができる。
特に、濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷される重複領域220では、濃淡画像200による黒色によって、カラー画像210による色彩がくすみ易い、すなわち黒みがかり易くなる。これに対して、実施形態1に係る画像処理装置30は、濃淡画像200の濃度を低下させるため、濃淡画像200として使用する黒色インクの量を減らすことができる。その結果、インクの使用量を節約することができると共に、黒色インクによる色のくすみを軽減でき、カラー画像210による色彩をより鮮明に表現することができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2において、実施形態1と同様の構成については説明を省略する。
図18に、実施形態2に係る造形システム1aの構成を示す。上記実施形態1に係る造形システム1は、1つの印刷装置40を備えており、1つの印刷装置40において、濃淡画像200とカラー画像210とを熱膨張性シート100に印刷した。これに対して、実施形態2に係る造形システム1aは、図18に示すように、画像処理装置30と、複数の印刷装置40a,40b,…と、膨張装置50と、を備える。
複数の印刷装置40a,40b,…のそれぞれは、図12に示したものと同等又は同様の構成を備えており、熱膨張性シート100に濃淡画像200及びカラー画像210を印刷する印刷手段として機能する。造形システム1aにおいて、ユーザは、複数の印刷装置40a,40b,…のうちから1つの印刷装置40を選択して使用することができる。
実施形態2に係る画像処理装置30において、記憶部32は、複数の印刷装置40a,40b,…に対応した吸収率データ322aを記憶している。吸収率データ322aは、図19に示すように、造形システム1aで使用可能な複数の印刷装置40a,40b,…のそれぞれにおいて使用されるCMYの各カラーインクによる電磁波の吸収率Ac,Am,Ayの情報を格納したデータである。
上述したように、カラーインクは、その色によって電磁波を透過し易い波長域と電磁波を吸収し易い波長域とが異なるが、同じ色のインクでも、インクの種類、印刷装置40の機種、印刷装置40の製造業者等によっても、電磁波の透過率及び吸収率は異なる。具体的に、製造業者が異なる印刷装置A,B,Cについて、同じ条件のもとでのCMYのカラーインクによる電磁波の吸収率Ac,Am,Ayは、図19に示すように互いに異なる値になる。このような吸収率Ac,Am,Ayの値は、造形システム1aで使用可能な複数の印刷装置40a,40b,…(印刷装置A,B,C,…)のそれぞれについて、予め実験によって測定され、画像処理装置30の記憶部32に吸収率データ322aとして記憶される。
画像処理装置30において、受付部311は、複数の印刷装置40a,40b,…のうちから、濃淡画像200とカラー画像210とを印刷する印刷装置40の選択を受け付ける。具体的に説明すると、受付部311は、例えば図20に示すような印刷装置40の選択画面を表示部34に表示する。ユーザは、図20に示す選択画面を見ながら、操作部33を操作して、利用可能な少なくとも1つの印刷装置40a,40b,…のうちから所望の印刷装置40を選択する。受付部311は、このようにしてユーザから入力された印刷装置40の選択を受け付ける。
取得部312は、受付部311によって選択が受け付けられた印刷装置40によってカラー画像210が印刷された熱膨張性シート100に、膨張装置50によって電磁波が照射された場合における、カラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得する。具体的に説明すると、取得部312は、吸収率データ322aに格納された複数の印刷装置40a,40b,…のデータのうちの、ユーザによって選択された印刷装置40で使用されるカラーインクによる電磁波の吸収率Ac,Am,Ayを参照する。そして、取得部312は、参照した吸収率Ac,Am,Ayと、指定された造形物に着色するためのカラー画像210を印刷する際に使用されるCMYのカラーインクの量Lc,Lm,Lyと、を上記(1)式に適用する。これにより、取得部312は、カラーインクによる電磁波の吸収の度合いを示す指標として、見積もった量のカラーインクと同じ程度の電磁波を吸収する黒色インクの補正量ΔLを計算する。ここで、吸収率Ac,Am,Ayの値は、複数の印刷装置40a,40b,…のそれぞれによって異なるため、計算される黒色インクの補正量ΔLは、選択された印刷装置40に応じて異なる量になる。
補正部313は、取得部312によって取得されたカラー画像210による電磁波の吸収の度合いに基づいて、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を補正する。出力部314は、補正部313によって濃度が補正された濃淡画像200と、カラー画像210とを、受付部311によって選択が受け付けられた印刷装置40に出力する。そして、出力部314は、この印刷装置40に、出力した濃淡画像200とカラー画像210とを、熱膨張性シート100に印刷させる。補正部313及び出力部314の機能については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
以上説明したように、実施形態2に係る造形システム1aは、複数の印刷装置40a,40b,…のそれぞれで使用されるカラーインクによって電磁波の吸収の度合いが異なることを考慮して、濃淡画像200を補正する。これにより、複数の印刷装置40a,40b,…で濃淡画像200とカラー画像210とを印刷可能な状況において、これらのうちのどの印刷装置40がユーザによって選択された場合であっても、選択された印刷装置40に応じて適切に補正された濃淡画像200を熱膨張性シート100に印刷することができる。その結果、複数の印刷装置40a,40b,…間で使用されるカラーインクの違いにかかわらず、所望の色彩を有する造形物を精度良く製造することができる。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3において、実施形態1と同様の構成については説明を省略する。
上記実施形態1,2に係る画像処理装置30は、濃淡画像200とカラー画像210とが重ねて印刷される場合に、カラー画像210による電磁波の吸収の度合いに基づいて、濃淡画像200の濃度を補正した。これに対して、実施形態3では、画像処理装置30は、濃淡画像200だけでなく、更にカラー画像210を補正する。
より詳細に説明すると、カラー画像210による色彩だけでなく、濃淡画像200による濃淡によっても、造形物の色彩を表現する場合がある。このような場合、補正によって濃淡画像200の濃度が低下すると、造形物の色彩が変わるため、所望の色彩を有する造形物が得られなくなる。このような状況を回避するため、実施形態3に係る造形システム1は、濃淡画像200の濃度を低下させた分、カラー画像210の色彩を補正することにより、所望の色彩を表現する。
補正部313は、実施形態1,2と同様に、濃淡画像200が熱膨張性シート100にカラー画像210と重ねて印刷される場合、濃淡画像200のうちの重複領域220の濃度を、重複領域220におけるカラー画像210の色彩に応じて補正する。具体的には図11に示したように、補正部313は、取得部312によって取得されたカラー画像210による電磁波の吸収の度合いに基づいて、重複領域220の濃度を低下させる。
更に、実施形態3では、補正部313は、重複領域220におけるカラー画像210の色彩を、重複領域220の濃度を補正した度合いに応じて補正する。具体的に説明すると、重複領域220では、濃淡画像200の濃度が低下した分だけ黒色が薄くなっている。このような薄くなった黒色を補うため、補正部313は、重複領域220の濃度の低下の度合いに応じて、カラー画像210のうちの、濃淡画像200と重ねて印刷される領域の色彩に黒みを増やす。
ここで、カラー画像210における黒色は、CMYの3色のインクを混色することによって、カーボンブラックを含まない黒色として生成することができる。そのため、補正部313は、重複領域220におけるカラー画像210の色彩の濃度、すなわちCMYの各カラーインクの濃度を上昇させる。これにより、補正部313は、濃淡画像200における黒色インクの補正量ΔLに対応する量の黒色をカラーインクによって生成し、重複領域220におけるカラー画像210の色彩を、黒色に近づける。
出力部314は、印刷装置40に、補正部313によって濃度が補正された濃淡画像200を、カーボンブラックを含む黒色インクで熱膨張性シート100に印刷させ、補正部313によって色彩が補正されたカラー画像210を、少なくとも1色以上のインクで熱膨張性シート100に印刷させる。その後、膨張装置50は、濃度が補正された濃淡画像200と色彩が補正されたカラー画像210とが印刷された熱膨張性シート100に対して電磁波を照射することにより、熱膨張性シート100を膨張させる。これにより、造形物が製造される。
以上説明したように、実施形態3に係る造形システム1は、濃淡画像200の濃度をカラー画像210の色彩に応じて補正すると共に、カラー画像210の色彩を濃淡画像200の濃度の低下を埋め合わせるように補正する。これにより、熱膨張性シート100を精度良く膨張させることができると共に、濃淡画像200の濃度が補正されることによる色彩の劣化を抑制することができる。その結果、所望の色彩を有する造形物を精度良く製造することができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、吸収率データ322,322aは、画像処理装置30の記憶部32に記憶されていた。しかしながら、本発明において、吸収率データ322,322aは、画像処理装置30の外部の装置に記憶されていても良い。外部の装置は、例えばクラウドコンピューティングのリソースを提供するサーバ等である。この場合、画像処理装置30は、インターネット等の広域ネットワークを介して外部の装置と接続して吸収率データ322,322aを参照し、カラーインクによる電磁波の吸収の度合いを取得する。或いは、外部の装置が、吸収率データ322,322aに基づいてカラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得する取得部312の機能を備えていても良い。
上記実施形態では、取得部312は、濃淡画像200における黒色インクの補正量ΔLを上記(1)式によって計算することにより、カラー画像210による電磁波の吸収の度合いを取得した。しかしながら、本発明において、カラー画像210の色彩(CMYの各カラーインクの量)と電磁波の吸収の度合い(補正量ΔL)との対応関係が予め定められており、取得部312は、この対応関係に基づいて、カラー画像210の色彩から電磁波の吸収の度合いを取得しても良い。
上記実施形態では、印刷装置40は、カラー画像210を、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラーインクを用いて印刷するとして説明した。しかしながら、本発明において、カラー画像210は、造形物を所望の色彩に着色することができるものであれば、多色のインクを用いることに限らず、少なくとも1色以上のインクを用いるものであれば良い。また、カラー画像210における色彩は、CMYKによる表現法に限らず、他の表現法で表現されるものであっても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート100は、基材101と熱膨張層102とインク受容層103とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート100の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート100は、インク受容層103を備えなくても良いし、表面又は裏面に剥離可能な剥離層を備えていても良い。或いは、熱膨張性シート100は、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態では、画像処理装置30と印刷装置40と膨張装置50とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、画像処理装置30と印刷装置40と膨張装置50とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
上記実施形態では、膨張装置50は、照射部60を移動させる移動手段として搬送モータ55を備えており、位置が固定された熱膨張性シート100に対して、照射部60を移動させながら電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート100を膨張させた。しかしながら、膨張装置50は、熱膨張性シート100を搬送する搬送機構を備えており、搬送される熱膨張性シート100に対して、位置が固定された照射部60から電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート100を膨張させても良い。このように、膨張装置50は、熱膨張性シート100と照射部60とを相対的に移動させることができれば、どのような方式で熱膨張性シート100を膨張させても良い。
印刷装置40の印刷方式は、インクジェット方式に限らない。例えば、印刷装置40は、レーザー方式のプリンタであって、トナーと現像剤とによって画像を印刷しても良い。また、変換層104,106は、電磁波を熱に変換しやすい材料であれば、カーボンブラックを含む黒インク以外の材料によって形成されても良い。この場合、変換層104,106は、印刷装置40以外の手段によって形成されるものであっても良い。
上記実施形態において、画像処理装置30の制御部31は、CPUを備えており、CPUの機能によって、受付部311、取得部312、補正部313及び出力部314として機能した。しかし、本発明に係る画像処理装置30において、制御部31は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、受付部311、取得部312、補正部313及び出力部314として機能しても良い。この場合、各処理を個別のハードウェアで実行しても良いし、各処理をまとめて単一のハードウェアで実行しても良い。また、各処理のうち、一部を専用のハードウェアによって実行し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実行しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた画像処理装置30として提供できることはもとより、プログラムの適用により、画像処理装置30を制御するコンピュータに、上記実施形態で例示した画像処理装置30による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した画像処理装置30による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像が、前記熱膨張性シートにカラー画像と重ねて印刷される場合、前記濃淡画像のうちの、前記カラー画像と重ねて印刷される重複領域の濃度を、前記重複領域における前記カラー画像の色彩に応じて補正する補正手段と、
前記補正手段によって前記濃度が補正された前記濃淡画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷し、前記カラー画像を、少なくとも1色以上のインクで前記熱膨張性シートに印刷する印刷手段と、
前記印刷手段によって前記濃淡画像と前記カラー画像とが印刷された前記熱膨張性シートに電磁波を照射することにより、前記熱膨張性シートを膨張させる膨張手段と、
を備えることを特徴とする造形システム。
(付記2)
前記印刷手段によって前記カラー画像が印刷された前記熱膨張性シートに、前記膨張手段によって電磁波が照射された場合における、前記カラー画像による電磁波の吸収の度合いを取得する取得手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記取得手段によって取得された前記吸収の度合いに基づいて、前記重複領域の濃度を補正する、
ことを特徴とする付記1に記載の造形システム。
(付記3)
前記補正手段は、前記取得手段によって取得された前記吸収の度合いがより大きい場合、前記重複領域の濃度をより低下させる、
ことを特徴とする付記2に記載の造形システム。
(付記4)
前記取得手段は、前記吸収の度合いを、前記重複領域に含まれる複数の部分のそれぞれについて取得し、
前記補正手段は、前記複数の部分のうちの、前記取得手段によって取得された前記吸収の度合いがより大きい部分の濃度をより低下させる、
ことを特徴とする付記2又は3に記載の造形システム。
(付記5)
前記複数の印刷手段のうちから、前記熱膨張性シートに前記濃淡画像と前記カラー画像とを印刷する印刷手段の選択を受け付ける受付手段、
を更に備え、
前記取得手段は、前記受付手段によって前記選択が受け付けられた前記印刷手段によって前記カラー画像が印刷された前記熱膨張性シートに、前記膨張手段によって電磁波が照射された場合における、前記カラー画像による電磁波の吸収の度合いを取得する、
ことを特徴とする付記2から4のいずれか1つに記載の造形システム。
(付記6)
前記補正手段は、前記濃淡画像が前記熱膨張性シートに前記カラー画像と重ねて印刷される場合、前記濃淡画像のうちの前記重複領域の濃度を、前記重複領域における前記カラー画像の色彩に応じて補正し、且つ、前記重複領域における前記カラー画像の色彩を、前記重複領域の濃度を補正した度合いに応じて補正し、
前記印刷手段は、前記補正手段によって前記濃度が補正された前記濃淡画像を、前記材料で前記熱膨張性シートに印刷し、前記補正手段によって前記色彩が補正された前記カラー画像を、前記少なくとも1色以上のインクで前記熱膨張性シートに印刷する、
ことを特徴とする付記1から5のいずれか1つに記載の造形システム。
(付記7)
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像が、前記熱膨張性シートにカラー画像と重ねて印刷される場合、前記濃淡画像のうちの、前記カラー画像と重ねて印刷される重複領域の濃度を、前記重複領域における前記カラー画像の色彩に応じて補正する補正手段と、
印刷装置に、前記補正手段によって前記濃度が補正された前記濃淡画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷させ、前記印刷装置に、前記カラー画像を、少なくとも1色以上のインクで前記熱膨張性シートに印刷させる印刷制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
(付記8)
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像が、前記熱膨張性シートにカラー画像と重ねて印刷される場合、前記濃淡画像のうちの、前記カラー画像と重ねて印刷される重複領域の濃度を、前記重複領域における前記カラー画像の色彩に応じて補正する補正ステップと、
前記補正ステップで前記濃度が補正された前記濃淡画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷し、前記カラー画像を、少なくとも1色以上のインクで前記熱膨張性シートに印刷する印刷ステップと、
前記印刷ステップで前記濃淡画像と前記カラー画像とが印刷された前記熱膨張性シートに電磁波を照射することにより、前記熱膨張性シートを膨張させて造形物を製造する膨張ステップと、
を含むことを特徴とする造形物の製造方法。
(付記9)
コンピュータを、
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像が、前記熱膨張性シートにカラー画像と重ねて印刷される場合、前記濃淡画像のうちの、前記カラー画像と重ねて印刷される重複領域の濃度を、前記重複領域における前記カラー画像の色彩に応じて補正する補正手段、
印刷装置に、前記補正手段によって前記濃度が補正された前記濃淡画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷させ、前記印刷装置に、前記カラー画像を、少なくとも1色以上のインクで前記熱膨張性シートに印刷させる印刷制御手段、
として機能させるためのプログラム。