JP7140124B2 - 光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明によれば、以下の〔1〕~〔7〕が提供される。
少なくとも一方の面において、最大高さRzが150nm以上3000nm以下であり、かつ、算術平均粗さRaが30nm以上1000nm以下である、光学フィルム。
〔2〕 内部ヘイズが5%以下である、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕 前記脂環式構造含有重合体は、ブロック共重合体水素化物[E]であり、
前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、
前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]とからなるか、又は前記重合体ブロック[A]と重合体ブロック[C]とからなり、
前記重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕 面内方向の位相差Reが3nm以下、厚み方向の位相差Rthの絶対値が3nm以下である、〔3〕に記載の光学フィルム。
〔5〕 前記脂環式構造含有重合体が結晶性であり、結晶化度が1%以上である、〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルム。
〔6〕 偏光子保護フィルムである、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学フィルム。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
脂環式構造含有重合体を含むフィルムを延伸する工程、及び前記フィルムを熱硬化する工程のうちの少なくとも一方を含む処理工程と、
前記処理工程を経た後のフィルムの、少なくとも一方の面を粗化する工程と、を有する、光学フィルムの製造方法。
本発明の光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含むフィルムの少なくとも一方の面を粗化処理してなる。
脂環式構造含有重合体を含むフィルムは通常、脂環式構造含有重合体を含有する樹脂からなるものとしうる。脂環式構造含有重合体の例としては、結晶性の脂環式構造含有重合体、非結晶性の脂環式構造含有重合体及び特定のブロック共重合体水素化物である脂環式構造含有重合体が挙げられる。
結晶性の重合体(結晶性を有する重合体)とは、融点を有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕重合体をいう。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体試料の13C-NMR測定を行う。この13C-NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン-d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
非結晶性の脂環式構造含有重合体とは、上に述べた脂環式構造含有重合体のうち、結晶性を有しないものである。非結晶性の脂環式構造含有重合体を構成する単量体の例としては、上に述べた、結晶性の脂環式構造含有重合体を構成する単量体の例と同様のものが挙げられる。非結晶性の脂環式構造含有重合体は、上に述べた単量体を、既知の重合法により重合し、シンジオタクチック立体規則性の度合いが低い重合体、通常のアタクチックな重合体又はアイソタクチックな重合体とすることにより製造しうる。重合の態様は、開環重合及び付加重合のいずれであってもよい。
非結晶性の脂環式構造含有重合体が、後述のブロック共重合体水素化物以外のもの、具体的には、ノルボルネン系重合体の場合は、例えば、上記ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体、及びそれらの水素化物;ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体との付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が特に好ましい。
上記のノルボルネン系重合体は、例えば特開2002-321302号公報に開示されている重合体から選択され得る。
本発明における脂環式構造含有重合体の一例であるブロック共重合体水素化物は、結晶性のものであっても非結晶性のものであってもよいが、通常は非結晶性である。
ある化合物由来の繰り返し単位とは、当該化合物の重合により得られる構造を有する繰り返し単位をいう。ある重合体の水素化物とは、当該重合体の水素化により得られる構造を有する物質をいう。ただし、当該繰り返し単位及び水素化物は、その製造方法によっては限定されない。
本発明の光学フィルムが脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる場合、当該樹脂における、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体の割合を当該範囲内とすることにより、高い機械的強度及び良好な光学的特性等の、脂環式構造含有重合体の利点を得ることができる。
光学フィルムを構成する樹脂は、脂環式構造含有重合体以外に、任意の成分を含有しうる。
任意の成分の例としては、架橋助剤が挙げられる。
架橋助剤の例としては、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレート若しくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物類;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類等が挙げられる。架橋助剤としては、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。得られる延伸フィルムの電気特性、耐熱性、耐溶剤性等の特性を向上させる観点からはアリル化合物類が好ましく、特に熱安定性の観点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が最も好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、脂環式構造含有重合体を含むフィルムを延伸する工程、及び前記フィルムを熱硬化する工程のうちの少なくとも一方を含む処理工程と、処理工程を経た後のフィルムの、少なくとも一方の面を粗化する工程と、を有する。以下の説明において、処理工程を経る前の脂環式構造含有重合体を含むフィルムを、処理工程を経た後のフィルムと区別する都合上、「原反フィルム」ということがある。また、処理工程を経た後のフィルムのうち、粗化する工程を経る前のフィルムを「粗化前フィルム」、粗化する工程を経た後のフィルムを「粗化フィルム」ということがある。
処理工程は、脂環式構造含有重合体を含むフィルムを延伸する工程(延伸工程)及び、脂環式構造含有重合体を含むフィルムを熱硬化する工程(熱硬化工程)のうちのいずれか一方の工程、または双方の工程を含む。熱硬化工程と延伸工程をともに含む場合、どちらの工程を先に行ってもよい。
延伸工程においては、一軸延伸、二軸延伸等の任意の態様としうる。また、延伸工程前のフィルムが長尺状のフィルムである場合、延伸の方向は、縦方向(長尺状のフィルムの長手方向に平行な方向)、横方向(長尺状のフィルムの幅方向に平行な方向)、及び斜め方向(縦方向でも横方向でも無い方向)のいずれであってもよい。
熱硬化工程は、例えば、フィルムが、脂環式構造含有重合体として結晶性の脂環式構造含有重合体を含む場合に、フィルムに含まれる結晶性の脂環式構造含有重合体を結晶化させて結晶化樹脂を含むフィルムを得る工程である。熱硬化工程では、結晶性の脂環式構造含有重合体を結晶化させて、例えば、結晶化度が1%以上の結晶化樹脂を主成分とするフィルムを得る。熱硬化工程は、脂環式構造含有重合体を含むフィルムの、少なくとも二の端辺を保持して緊張させた状態で所定の温度範囲にすることにより行いうる。以下、熱硬化工程に供する脂環式構造含有重合体を含むフィルムを、「硬化対象フィルム」ともいう。
粗化工程は、処理工程を経た後の原反フィルム(粗化前フィルム)の、少なくとも一方の面を粗化する工程である。粗化工程では、粗化後のフィルム(粗化フィルム)の少なくとも一方の面における、表面の最大高さRzが150nm以上3000nm以下で、かつ、算術平均粗さRaが30nm以上1000nm以下となるように粗化を行う。
[3.1.フィルム表面のRzおよびRa]
本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面において、最大高さRzが150nm以上3000nm以下で、かつ、算術平均粗さRaが30nm以上1000nm以下である。最大高さRzは好ましくは200nm以上、より好ましくは300nm以上であり、好ましくは2000nm以下である。算術平均粗さRaは、好ましくは40nm以上、より好ましくは45nm以上であり、好ましくは700nm以下である。
例えば、延伸等によりフィルムに含まれる脂環式構造含有重合体が強配向することで凝集破壊部分が生じた場合であっても、RzおよびRaが上記範囲内となるように、フィルムの表面を粗化することにより当該凝集破壊部分が剥がされうるので、剥離強度を高めることができる。本発明において、光学フィルムは、一方の面または双方の面の表面粗さ(Ra、Rz)が、上述の範囲となるように粗化されていればよい。
本発明の光学フィルムの内部ヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。内部ヘイズを前記上限値以下とすることにより、透明性が高くなり、偏光子保護フィルム等の光学フィルムの用途に適したものとなる。
内部ヘイズは、例えば、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH5000」)を用いて測定することができる。
本発明の光学フィルムは、面内方向の位相差Reが、好ましくは3nm以下、より好ましくは2.5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。また、本発明の光学フィルムは、厚み方向の位相差Rthの絶対値が、好ましくは3nm以下、より好ましくは2.5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。本発明の光学フィルムのうち、脂環式構造含有重合体としてブロック共重合体水素化物を含むものにおいて、面内方向の位相差Reおよび厚み方向のRthの絶対値を上記範囲とすることが好ましい。
本発明の光学フィルムの寸法は、製品としての所望の寸法となるよう適宜設定しうる。製造の効率上、本発明の光学フィルムは長尺状のフィルムとして製造しうる。本発明の光学フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは200μm以下、より好ましくは170μm以下である。
本発明の光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含むことによる高い機械的強度及び良好な光学的特性を有する。加えて、本発明の光学フィルムは、被着体との剥離強度が高い。したがって、本発明の光学フィルムは、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置において、他の層を保護する保護フィルムとして好適に用いうる。特に、本発明の光学フィルムは、偏光板において偏光子を保護する偏光子保護フィルムとして特に良好に機能することができる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法〕
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差操作熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tg及び融点Tmを求めた。
また、Tgが2つ以上あるブロック共重合体水素化物の場合は、試料をプレス成形して、長さ50mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を作製し、JIS-K7244-4法に基づき、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、ARES)を使用して、-100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定し、これから2つ以上のTgを求めた。例えばTgが2つの場合、損失正接tanδの低温側のピークトップ温度から、ソフトセグメントに由来するガラス転移温度Tg1、高温側のピークトップ温度から、ハードセグメントに由来するガラス転移温度Tg2を求めた。
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、145℃で、1H-NMR測定により測定した。
フィルムに含まれる重合体の結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(RINT 2000、株式会社リガク製)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
被着体として、ノルボルネン系重合体を含む樹脂のフィルム(ゼオノアフィルム、ガラス転移温度160℃、厚み100μm、日本ゼオン社製、延伸処理は特にされていないもの)を用意した。測定対象フィルム(実施例および比較例のフィルム)の片面及び被着体の片面に、コロナ処理を施した。測定対象フィルムのコロナ処理を施した面、及び被着体のコロナ処理した面の両方に接着剤を付着させ、接着剤を付着させた面同士を貼り合わせた。この際、接着剤としてはUV接着剤CRBシリーズ(トーヨーケム社製)を用いた。その後、無電極UV照射装置(ヘレウス社製)を用い、ランプとしてDバルブを使用し、ピーク照度100mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件でUV照射を行い、接着剤を硬化させた。これにより、測定対象フィルム及び被着体を備えるサンプルフィルムを得た。
上に述べた測定方法による剥離強度の測定が、被着体が偏光子である場合の剥離強度の評価を反映したものであると言えるか否かを評価する実験を行った。
特開2005-70140号公報の実施例1に記載される方法と同様の方法により、偏光フィルム及び接着剤を用意した。また、測定対象フィルムとして、本願実施例1で得られた処理前延伸フィルム及び電子線照射延伸フィルムを用意した。測定対象フィルムの片面にコロナ処理を施し、この面を、偏光フィルムの片方の表面に、接着剤を介して貼合した。偏光フィルムのもう片方の表面には、トリアセチルセルロースフィルムを、接着剤を介して貼合した。その後、80℃で7分間乾燥させて接着剤を硬化させて、サンプルフィルムを得た。得られたサンプルフィルムについて、上に述べた〔剥離強度の測定方法〕におけるものと同様の90度剥離試験を行った。その結果、本願実施例1で得られた値と同様のFa及びFbの値が得られた。このことから、上に述べた測定方法による剥離強度の測定が、被着体が偏光子である場合の剥離強度の評価を反映したものであると言える。
フィルムの内部ヘイズは以下のようにして測定した。
まず、フィルムから、50mm×50mmのサイズに切り出して、試験片を得た。続いて、試験片の両表面に、厚み50μmの透明光学粘着フィルム(3M社製「8146-2」)を介して、シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、厚み40μm)を貼合して、シクロオレフィンフィルム/透明光学粘着フィルム/試験片/透明光学粘着フィルム/シクロオレフィンフィルムの層構成を有する試料複層体を得た。次いで、この試料複層体のヘイズを、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH5000」)を用いて測定した。
実施例および比較例のフィルムを、波長590nmで位相差測定装置(Axometric社製 製品名「Axoscan」)を用いて測定することにより、各例のフィルムの面内方向の位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの絶対値を求めた。
光学フィルムの表面の算術平均粗さRa及び最大高さRzは、カラー3Dレーザー顕微鏡((株)キーエンス製 VK-9700)を用いて、JIS B 0601-2001に準拠して測定した。
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
(1-1.樹脂の調製)
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
(1-1)で得た樹脂を、内径3mmのダイ穴を4つ備えた二軸押出機に投入した。前記の二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、樹脂のペレットを得た。前記の二軸押出機の運転条件を、以下に示す。
・バレル設定温度:270℃~280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
・バレル温度設定:280℃~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
その後、原反フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断し、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、延伸温度110℃、延伸倍率1.3倍で連続的に固定端一軸延伸を実施し、粗化前フィルムを得た。この時の粗化前フィルムにおける重合体の結晶化度は4%であった。得られた粗化前フィルムの一部を試料として、表面粗さを測定したところ、Ra(nm)=8、Rz(nm)=30であった。剥離強度Faを測定したところ、0.1N/mであった。
表面粗化装置として、1000番の番手を備えたバフロールを使用し、粗化前フィルムの一方の面を粗化処理し、表面粗さがRa(nm)=200、Rz(nm)=800の粗化フィルムを得た。この粗化フィルムの剥離強度Fbを測定したところ、1.5N/mであった。
(2-1.粗化前フィルムの製造)
(1-2.粗化前フィルムの製造)にて得られた100mm×100mmのサイズに裁断した原反フィルムを、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、温度145℃にて熱硬化処理を実施し、粗化前フィルムを得た。得られた粗化前フィルムの一部を試料として、表面粗さを測定したところ、Ra(nm)=3、Rz(nm)=12であった。剥離強度Faを測定したところ0.1N/mであった。
表面粗化装置として、1000番の番手を備えたバフロールを使用し、粗化前フィルムの一方の面を粗化処理し、表面粗さが、Ra(nm)=220、Rz(nm)=860の粗化フィルムを得た。この粗化フィルムの剥離強度Fbを測定しFbを求めたところ、1.5N/mであった。
(3-1.粗化前フィルムの製造)
シクロオレフィン系重合体を含む樹脂(ガラス転移温度126℃のノルボルネン重合体の樹脂、日本ゼオン社製)のペレットを100℃で5時間乾燥した。その後、乾燥した樹脂のペレットを、単軸の押出し機に供給した。樹脂は押出し機内で溶融された後、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押出されて、冷却された。これにより、厚み50μm、幅500mmの原反フィルムを得た。原反フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断し、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、延伸温度145℃、延伸倍率1.3倍で連続的に固定端一軸延伸を実施し、粗化前フィルムを得た。得られた粗化前フィルムの一部を試料として、表面粗さを測定したところ、Ra(nm)=4、Rz(nm)=10であった。剥離強度Faを測定したところ0.1N/mであった。
表面粗化装置として、1000番の番手を備えたバフロールを使用し、粗化前フィルムの一方の面を粗化処理し、表面粗さが、Ra(nm)=300、Rz(nm)=900の粗化フィルムを得た。この粗化フィルムの剥離強度Fbを測定しFbを求めたところ、1.1N/mであった。
(4-1.ブロック共重合体[D])
十分に乾燥し窒素置換した、攪拌装置を備えたステンレス鋼製反応器に、脱水シクロヘキサン256部、脱水スチレン25.0部、及びn-ジブチルエーテル0.65部を仕込み、60℃で攪拌しながらn-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.35部を添加して重合反応を開始した。さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(ガスクロマトグラフィーにより測定、以下にて同じ。)。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、ブロック共重合体[C]を含む重合反応溶液を得た。得られたブロック共重合体[D]の重量平均分子量(Mw)は44,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
(4-1)で得た重合反応溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ-アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
(4-2)で得られたブロック共重合体水素化物[E]100部と、架橋助剤(タイク(日本化成株式会社製))5部とを混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
(1-1)で得た樹脂に代えて、(4-3)で得た樹脂を用いた他は、実施例1の(1-2)と同様にして、粗化前フィルムを得た。得られた粗化前フィルムの一部を試料として、表面粗さを測定したところ、Ra(nm)=7、Rz(nm)=20であった。剥離強度Faを測定したところ0.1N/mであった。
実施例1の(1-3)と同様にして、表面粗さが、Ra(nm)=500、Rz(nm)=1600の実施例3の粗化フィルムを得た。この粗化フィルムの剥離強度Fbを測定したところ、2.1N/mであった。
実施例1の(1-2)で得られた粗化前フィルムを比較例1のフィルムとし、実施例3の(3-1)で得られた粗化前フィルムを比較例2のフィルムとし、実施例4の(4-4)で得られた粗化前フィルムを比較例3のフィルムとし、各実施例品と同様に評価を行った。
Claims (6)
- 脂環式構造含有重合体を含むフィルムの、少なくとも一方の面を粗化してなる光学フィルムであって、
少なくとも一方の面において、最大高さRzが150nm以上3000nm以下であり、かつ、算術平均粗さRaが30nm以上1000nm以下であり、
前記脂環式構造含有重合体が結晶性であり、結晶化度が1%以上である、光学フィルム。 - 内部ヘイズが5%以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記脂環式構造含有重合体は、ブロック共重合体水素化物[E]であり、
前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、
前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]とからなるか、又は前記重合体ブロック[A]と重合体ブロック[C]とからなり、
前記重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、請求項1または2に記載の光学フィルム。 - 面内方向の位相差Reが3nm以下、厚み方向の位相差Rthの絶対値が3nm以下である、請求項3に記載の光学フィルム。
- 偏光子保護フィルムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
脂環式構造含有重合体を含むフィルムを延伸する工程、及び前記フィルムを熱硬化する工程のうちの少なくとも一方を含む処理工程と、
前記処理工程を経た後のフィルムの、少なくとも一方の面を粗化する工程と、を有する、光学フィルムの製造方法。
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