JP7139890B2 - 車両の自動制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の自動制動装置に関する。
特許文献1には、「自動ブレーキ制御時の車両の姿勢安定性の向上を目的に、自動ブレーキ制御を行うブレーキ装置1であって、左右前輪FL、FRの各ホイールシリンダ61、62に液圧を伝達する第1及び第2のブレーキ液圧回路11、12と、各ホイールシリンダ61、62に供給される液圧を個別に調節可能なブレーキアクチュエータ2と、ブレーキアクチュエータ2を制御するブレーキ制御部3と、車両のヨー方向の挙動を検出する挙動検出センサ4を備え、ブレーキアクチュエータ2は、自動ブレーキ制御時に各ブレーキ液圧回路11、12の液圧を加圧するポンプP1、P2と、各ブレーキ液圧回路11、12の液圧を個別に調節する調圧弁21、22を有し、ブレーキ制御部3は、自動ブレーキ制御時に、ヨー方向の挙動に基づいて、制動力が低い方のホイールシリンダ61、62に供給される液圧を増圧するように調圧弁21、22を制御する」ことが記載されている。
通常、自動ブレーキ制御(自動制動制御)では、車両前方の物体を検出する物体検出センサの検出結果(例えば、自車両と物体との距離)に基づいて、車両の目標減速度が決定され、目標液圧が決定される。そして、この目標液圧に基づいて、調圧弁が制御され、自動制動制御が実行される。
特許文献1の装置では、自動制動制御時に、ヨー方向の挙動に基づいて、制動力が低い方のホイールシリンダに供給される液圧が増圧されるように調圧弁が制御される。このため、制動力が低い側の制動力が増加され、実際の車両減速度は、目標減速度よりも大きくなる。また、自動制動制御では、液圧上昇において、応答性が高いことが求められる。このため、制動力が低い方のホイールシリンダに供給される液圧を増加しようとしても、液圧ユニットの応答性の制限(動力源の出力、制御の遅れ、等)から、十分に増圧されない場合も生じ得る。
更に、車両の偏向は、制動力の左右差だけではなく、車両の重心位置の偏りによっても発生する。例えば、トラック等では、車両に積載された積荷が片荷である場合に、自動制動制御の実行中に、車両偏向が生じ得る。ここで、「片荷」とは、車両に積載された積荷が車幅方向に偏っている状態である。
特開2017-149378号
本発明の目的は、自動制動制御を実行する車両の自動制動装置において、車両偏向が抑制されるとともに、車両の目標減速度が適切に達成され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の自動制動装置は、2つの制動系統としてダイアゴナル方式を採用する車両に備えられ、前記車両の前方の物体と前記車両との距離に応じた要求減速度に基づいて、ホイールシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧から増加する車両の自動制動装置であって、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、前記車両の操舵角を検出する操舵角センサと、前記2つの制動系統のうちで右前輪ホイールシリンダに接続された第1制動系統の液圧である第1液圧実際値を調整する第1調圧弁と、前記2つの制動系統のうちで左前輪ホイールシリンダに接続された第2制動系統の液圧である第2液圧実際値を調整する第2調圧弁と、前記要求減速度に基づいて、前記第1液圧実際値に対応する第1液圧目標値と前記第2液圧実際値に対応する第2液圧目標値とを同じに演算し、前記第1、第2液圧実際値が前記第1、第2液圧目標値に一致するよう、前記第1、第2調圧弁を制御するコントローラと、を備える。
本発明に係る車両の自動制動装置では、前記コントローラは、前記操舵角に応じた規範旋回量、及び、前記ヨーレイトに応じた実旋回量に基づいて旋回量偏差を演算し、前記旋回量偏差が所定量以上の場合には、前記ヨーレイトに基づいて、前記車両の偏向方向を判定し、前記偏向方向が左方向である場合には、前記第1液圧目標値を増加するよう修正するとともに、前記第2液圧目標値を減少するよう修正し、前記偏向方向が右方向である場合には、前記第1液圧目標値を減少するよう修正するとともに、前記第2液圧目標値を増加するよう修正する。
上記構成によれば、ダイアゴナル型の制動系統を有する車両において、規範旋回量と実旋回量との偏差(旋回量偏差)、及び、車両の偏向方向に基づいて、車両の偏向を抑制するよう、一方側の制動系統の液圧目標値が増加修正され、他方側の制動系統の液圧目標値が減少修正される。2つの制動系統において、一方側系統が増圧され、他方側系統が減圧されるため、車両全体に作用する制動力は一定に維持される。このため、車両の減速度が変化することなく、確実に要求減速度が達成されるとともに、2つの調圧弁のバラツキに起因する車両偏向のみならず、片荷等に起因する車両偏向に対しても効果が発揮され得る。
本発明に係る車両の自動制動装置JSの実施形態を説明するための全体構成図である。 運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理を説明するための機能ブロック図である。 自動制動制御の演算処理を説明するためのフロー図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」~「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」~「l」は省略され得る。添字「i」~「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
各種記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、第2マスタシリンダ流体路HM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「HM」は、各制動系統のマスタシリンダ流体路を表す。
各種記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、車両の前後方向において、それが何れに関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪、「r」は後輪を示す。例えば、車輪において、前輪WHf、及び、後輪WHrと表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、その総称を表す。例えば、「WH」は、4つの各車輪を表す。
<本発明に係る車両の自動制動装置の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る車両の自動制動装置JSの実施形態について説明する。マスタシリンダCMは、マスタシリンダ流体路HM、及び、ホイールシリンダ流体路HWを介して、ホイールシリンダCWに接続されている。流体路は、自動制動装置JSの作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。流体路の内部には、制動液BFが満たされている。流体路において、リザーバRVに近い側が、「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側が、「下部」と称呼される。また、制動液BFの還流において、流体ポンプQLに近い側が「上流」、遠い側が「下流」と称呼される。
車両には、2系統の流体路(即ち、2つの制動系統)が採用される。2つの制動系統のうちの第1系統(第1マスタシリンダ室Rm1に係る系統)は、右前輪、左後輪ホイールシリンダCWi、CWlに接続される。また、2つの制動系統のうちの第2系統(第2マスタシリンダ室Rm2に係る系統)は、左前輪、右後輪ホイールシリンダCWj、CWkに接続される。車両の2つの制動系統として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。
自動制動装置JSを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、マスタリザーバRV、マスタシリンダCM、及び、ブレーキブースタBBが備えられる。制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwが調整され、車輪WHの制動トルクTqが調整され、車輪WHに制動力が発生される。
車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられ、その内部の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクTqが発生される。制動トルクTqによって、車輪WHに減速スリップSwが発生され、その結果、制動力が生じる。
マスタリザーバ(大気圧リザーバであり、単に、「リザーバ」ともいう)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド、クレビス(U字リンク)等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCMは、タンデム型であり、マスタピストンPL1、PL2によって、その内部が、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2に分けられている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMのマスタシリンダ室Rm1、Rm2とリザーバRVとは連通状態にある。マスタシリンダCMには、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2(「第1、第2制動系統」の一部に相当)が接続されている。制動操作部材BPが操作されると、マスタピストンPL1、PL2が前進し、マスタシリンダ室Rm1、Rm2は、リザーバRVから遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、制動液BFは、マスタシリンダCMから、マスタシリンダ流体路HM1、HM2を介して、ホイールシリンダCWに向けて圧送される。
ブレーキブースタ(単に、「ブースタ」ともいう)BBによって、運転者による制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。ブースタBBとして、負圧式のものが採用される。負圧は、エンジン、又は、電動負圧ポンプにて形成される。ブースタBBとして、電気モータを駆動源とするものが採用されてもよい(例えば、電動ブースタ、アキュムレータ式ハイドロリックブースタ)。
更に、車両には、車輪速度センサVW、操舵角センサSA、ヨーレイトセンサYR、前後加速度センサGX、横加速度センサGY、制動操作量センサBA、操作スイッチST、及び、距離センサOBが備えられる。車両の各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向(即ち、過大な減速スリップ)を抑制するアンチスキッド制御(アンチロックブレーキ制御)等の各輪独立制御に利用される。
操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)には、操舵角Saを検出するように操舵角センサSAが備えられる。車両の車体には、ヨーレイト(ヨー角速度)Yrを検出するよう、ヨーレイトセンサYRが備えられる。また、車両の前後方向(進行方向)の加速度(前後加速度)Gx、及び、横方向(進行方向に直角な方向)の加速度(横加速度)Gyを検出するよう、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYが設けられる。これらの信号は、過大なオーバステア挙動、アンダステア挙動を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)等の車両運動制御に用いられる。
運転者による制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作量Baを検出するよう、制動操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するマスタシリンダ液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダ液圧Pm、操作変位Sp、及び、操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
制動操作部材BPには、操作スイッチSTが設けられる。操作スイッチSTによって、運転者による制動操作部材BPの操作の有無が検出される。制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)には、制動操作スイッチSTによって、操作信号Stとしてオフ信号が出力される。一方、制動操作部材BPが操作されている場合(即ち、制動時)には、操作信号Stとしてオン信号が出力される。
各センサ(VW等)によって検出された車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度(減速度)Gx、横加速度Gy、制動操作量Ba、及び、制動操作信号Stは、制動コントローラECUに入力される。制動コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
車両には、障害物との衝突を回避、又は、衝突時の被害を軽減するよう、運転支援システムが備えられる。運転支援システムは、距離センサOB、及び、運転支援コントローラECJを含んで構成される。距離センサOBによって、自車両の前方に存在する物体(他車両、固定物、人、自転車、等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obが検出される。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が採用される。距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。運転支援コントローラECJでは、相対距離Obに基づいて、要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。
≪電子制御ユニットECU≫
自動制動装置JSは、制動コントローラECU、及び、流体ユニットHUにて構成される。制動コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUは、車載の通信バスBSを介して、信号(検出値、演算値等)を共有するよう、他のコントローラとネットワーク接続されている。例えば、制動コントローラECUは、運転支援コントローラECJと、通信バスBSを通して接続される。制動コントローラECUから、運転支援コントローラECJには、車体速度Vxが送信される。一方、運転支援コントローラECJから、制動コントローラECUには、障害物との衝突を回避するよう(又は、衝突時の被害を軽減するよう)、自動制動制御を実行するための要求減速度Gs(目標値)が送信される。
コントローラECU(電子制御ユニット)によって、流体ユニットHUの電気モータML、及び、3種類の異なる電磁弁UP、VI、VOが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁UP、VI、VOを制御するための駆動信号Up、Vi、Voが演算される。同様に、電気モータMLを制御するための駆動信号Mlが演算される。
コントローラECUには、電磁弁UP、VI、VO、及び、電気モータMLを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMLを駆動するよう、スイッチング素子(MOS-FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mlに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMLの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁UP、VI、VOを駆動するよう、駆動信号Up、Vi、Voに基づいて、スイッチング素子によって、それらの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。なお、駆動回路DRには、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOの実際の通電量を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOへの供給電流が検出される。
制動コントローラECUには、制動操作量Ba(Pm、Sp、Fp)、制動操作信号St、車輪速度Vw、ヨーレイトYr、操舵角Sa、前後加速度(減速度)Gx、横加速度Gy、等が入力される。また、運転支援コントローラECJから、要求減速度Gsが、通信バスBSを介して入力される。制動コントローラECUでは、要求減速度Gsに基づいて、障害物との衝突を回避、又は、衝突の際の被害を低減するよう、自動制動制御が実行される。
≪流体ユニットHU≫
第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2(「第1、第2制動系統」の一部)に、流体ユニットHUが接続される。流体ユニットHU内の部位Bt1、Bt2にて、2つのマスタシリンダ流体路HM1、HM2は、4つのホイールシリンダ流体路HWi~HWl(「第1、第2制動系統」の一部)に分岐され、4つのホイールシリンダCWi~CWlに接続される。具体的には、第1マスタシリンダ流体路HM1は、第1分岐部Bt1にて、右前輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWlに分岐される。右前輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWlには、右前輪、左後輪ホイールシリンダCWi、CWlが接続されている。同様に、第2マスタシリンダ流体路HM2は、第2分岐部Bt2にて、左前輪、右後輪ホイールシリンダ流体路HWj、HWkに分岐される。左前輪、右後輪ホイールシリンダ流体路HWj、HWkには、左前輪、右後輪ホイールシリンダCWj、CWkが接続されている。従って、2つの制動系統として、ダイアゴナル型(X型)のものが採用されている。
流体ユニットHUは、電動ポンプDL、低圧リザーバRL、調圧弁UP、マスタシリンダ液圧センサPM、下流側液圧センサPP、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
電動ポンプDLは、1つの電気モータML、及び、2つの流体ポンプQL1、QL2にて構成される。電気モータMLは、コントローラECUによって、駆動信号Mlに基づいて制御される。電気モータMLによって、第1、第2流体ポンプQL1、QL2が一体となって回転され、駆動される。第1、第2流体ポンプQL1、QL2によって、第1、第2調圧弁UP1、UP2の上流側に位置する、第1、第2吸込部Bs1、Bs2から制動液BFが汲み上げられる。汲み上げられた制動液BFは、第1、第2調圧弁UP1、UP2の下流側に位置する、第1、第2吐出部Bt1、Bt2に吐出される。ここで、電動ポンプDLは、一方向に限って回転される。第1、第2流体ポンプQL1、QL2の吸込み側には、第1、第2低圧リザーバRL1、RL2が設けられる。
第1、第2調圧弁UP1、UP2が、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に設けられる。調圧弁UP(第1、第2調圧弁UP1、UP2の総称)として、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)が採用される。調圧弁UPは、コントローラECUによって、駆動信号Up(第1、第2駆動信号Up1、Up2の総称)に基づいて制御される。ここで、第1、第2調圧弁UP1、UP2として、常開型の電磁弁が採用される。
コントローラECUにて、車両安定化制御、自動制動制御等の演算結果(例えば、ホイールシリンダCWの目標液圧)に基づいて、調圧弁UPの目標通電量が決定される。該目標通電量に基づいて駆動信号Upが決定される。そして、駆動信号Upに応じて、調圧弁UPへの通電量(電流)が調整され、調圧弁UPの開弁量が調整される。
流体ポンプQLが駆動されると、「Bs→RL→QL→Bt→UP→Bs」の還流(循環する制動液BFの流れ)が形成される。調圧弁UPへの通電が行われず、常開型の調圧弁UPが全開状態である場合には、調圧弁UPの上流側の液圧(即ち、マスタシリンダ液圧Pm)と、調圧弁UPの下流側の液圧Pp(即ち、電磁弁VI、VOの非駆動時の制動液圧Pw)とは、略一致する。
常開型調圧弁UPへの通電量が増加され、調圧弁UPの開弁量が減少される。調圧弁UPによって、制動液BFの還流が絞られ、オリフィス効果によって、下流側液圧Pp(=Pw)は、上流側液圧Pm(マスタシリンダ液圧)から増加される。つまり、電動ポンプDL、及び、調圧弁UPによって、上流部液圧Pmと下流部液圧Ppとの間の差圧(Pp>Pm)が調整される。電動ポンプDL、及び、調圧弁UPが制御されることによって、制動操作部材BPの操作に応じたマスタシリンダ液圧Pmよりも、下流側液圧Pp(即ち、制動液圧Pw)が増加される。例えば、制動操作部材BPが操作されていない場合には、「Pm=0」であるが、制動液圧Pwが、「0」よりも大きい値に上昇される。
調圧弁UPの上部(上流側)には、第1、第2マスタシリンダ液圧Pm1、Pm2を検出するよう、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。なお、基本的には、「Pm1=Pm2」であるため、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2のうちの一方は、省略可能である。
第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2は、第1、第2調圧弁UP1、UP2の下部(第1、第2分岐部)Bt1、Bt2にて、各輪ホイールシリンダ流体路HWi~HWlに分岐(分流)され、各ホイールシリンダCWi~CWlに接続される。換言すれば、第1、第2分岐部Bt1、Bt2は、第1、第2制動系統において、ホイールシリンダCWi~CWlに向けて分岐される部位である。る。各ホイールシリンダ流体路HWi~HWlには、インレット弁VIi~VIlが設けられる。
「第1制動系統」は、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、右前輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWlにて構成され、第1マスタシリンダ室Rm1と右前輪、左後輪ホイールシリンダCWi、CWlとを接続する。そして、右前輪、左後輪インレット弁VIi、VIlは、右前輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWlに設けられる。つまり、右前輪、左後輪インレット弁VIi、VIlは、第1制動系統において、その分岐部Bt1と右前輪、左後輪ホイールシリンダCWi、CWlとの間に設けられる。
同様に、「第2制動系統」は、第2マスタシリンダ流体路HM2、及び、左前輪、右後輪ホイールシリンダ流体路HWj、HWkにて構成され、第2マスタシリンダ室Rm2と左前輪、右後輪ホイールシリンダCWj、CWkとを接続する。そして、左前輪、右後輪インレット弁VIj、VIkは、左前輪、右後輪ホイールシリンダ流体路HWj、HWkに設けられる。つまり、左前輪、右後輪インレット弁VIj、VIkは、第2制動系統において、その分岐部Bt2と左前輪、右後輪ホイールシリンダCWj、CWkとの間に設けられる。
各ホイールシリンダ流体路HWは、インレット弁VIの下部(インレット弁VIとホイールシリンダCWとの間)にて、常閉型のアウトレット弁VOを介して、低圧リザーバRLに接続される。なお、ホイールシリンダ流体路HWと低圧リザーバRLとを接続する流体路が、「リザーバ流体路HR」と称呼される。従って、アウトレット弁VOは、リザーバ流体路HRに設けられる。
インレット弁VIとして、常開型のオン・オフ電磁弁が採用される。また、アウトレット弁VOとして、常閉型のオン・オフ電磁弁が採用される。ここで、オン・オフ電磁弁は、開位置と閉位置の2つの位置を有する、2ポート2位置切替型の電磁弁である。つまり、常開型のインレット弁VIでは、開位置と閉位置とが選択的に実現される。従って、インレット弁VIは、非通電時には全開状態が達成され、通電されることによって、全閉状態が達成される。また、常閉型のアウトレット弁VOでも、開位置と閉位置とが選択的に実現される。アウトレット弁VOは、非通電時には全閉状態が達成され、通電されることによって、全開状態が達成される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにおいて、各車輪WHに係る構成は同じである。電磁弁VI、VOは、コントローラECUによって、駆動信号Vi、Voに基づいて制御される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOによって各輪の制動液圧Pwが独立して制御され得る。なお、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOのうちの少なくとも1つとして、オン・オフ電磁弁に代えて、リニア電磁弁が採用されてもよい。
ホイールシリンダCW内の液圧Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、低圧リザーバRLに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するため、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの低圧リザーバRLへの流出が阻止され、調圧弁UPによって調節された下流側液圧Ppが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。更に、ホイールシリンダCW内の液圧Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが、共に閉位置にされる。
制動液圧Pwの増減によって、車輪WHの制動トルクTqが増減(調整)される。制動液圧Pwが増加されると、摩擦材が回転部材KTに押圧される力が増加され、制動トルクTqが増加される。結果、車輪WHの制動力が増加される。一方、制動液圧Pwが減少されると、摩擦材の回転部材KTに対する押圧力が減少され、制動トルクTqが減少される。結果、車輪WHの制動力が減少される。
<運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理>
図2の機能ブロック図を参照して、運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理について説明する。運転支援コントローラECJによって、自動制動制御での要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。制動コントローラECUによって、要求減速度Gsに基づいて、車輪WHの制動トルクTqを調整するよう、流体ユニットHU(ML、UP等)が制御される。
車両には、自車両が走行している先に存在する物体(他の車両、固定物、自転車、人、動物等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obを検出するよう、距離センサOBが設けられる。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が利用される。また、固定物が地図情報に記憶されている場合には、距離センサOBとして、ナビゲーションシステムが利用され得る。検出された相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。運転支援コントローラECJには、衝突余裕時間演算ブロックTC、車頭時間演算ブロックTW、及び、要求減速度演算ブロックGSが含まれる。
衝突余裕時間演算ブロックTCにて、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obに基づいて、衝突余裕時間Tcが演算される。衝突余裕時間Tcは、自車両と物体とが衝突に至るまでの時間である。具体的には、衝突余裕時間Tcは、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obが、障害物と自車両との速度差(即ち、相対速度)によって除算されることによって決定される。ここで、相対速度は、相対距離Obが時間微分されて演算される。
車頭時間演算ブロックTWにて、相対距離Ob、及び、車体速度Vxに基づいて、車頭時間Twが演算される。車頭時間Twは、前方の物体の現在位置に自車両が到達するまでの時間である。具体的には、車頭時間Twは、相対距離Obが、車体速度Vxにて除算されて演算される。なお、自車両前方の物体が静止している場合には、衝突余裕時間Tcと車頭時間Twとは一致する。車体速度Vxは、コントローラECUの車体速度演算ブロックVXから、通信バスBSを介して取得される。
要求減速度演算ブロックGSにて、衝突余裕時間Tc、及び、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、自車両と前方物体との衝突を回避するための自車両の減速度の目標値である。要求減速度Gsは、演算マップZgsに従って、衝突余裕時間Tcが大きいほど、小さくなるよう(又は、衝突余裕時間Tcが小さいほど、大きくなるよう)、演算される。また、要求減速度Gsは、車頭時間Twに基づいて調整され得る。車頭時間Twが大きいほど、要求減速度Gsが小さくなるよう(又は、車頭時間Twが小さいほど、要求減速度Gsが大きくなるよう)、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Gsが調整される。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに入力される。
車両の各車輪WHには、車輪WHの回転速度(車輪速度)Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが設けられる。検出された車輪速度Vwは、制動コントローラECUに入力される。制動コントローラECUには、車体速度演算ブロックVX、実減速度演算ブロックGA、自動制動制御ブロックJC、及び、駆動回路DRが含まれる。
車体速度演算ブロックVXにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。例えば、車両の加速時を含む非制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も遅いもの(最遅の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。また、制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も速いもの(最速の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。更に、車体速度Vxの演算において、その時間変化量において制限が設けられ得る。即ち、車体速度Vxの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。演算された車体速度Vxは、通信バスBSを介して、運転支援コントローラECJの車頭時間演算ブロックTWに送信される。
実減速度演算ブロックGAにて、車体速度Vxに基づいて、実減速度Gaが演算される。実減速度Gaは、実際に発生している車両の前後方向(進行方向)の減速度(負の加速度)である。具体的には、車体速度Vxが時間微分されて、実減速度Gaが演算される。また、実減速度Gaの演算に、前後加速度(前後減速度)Gxが採用される。この場合、実減速度Gaとして、前後加速度Gx(検出値)が、そのまま決定される。前後加速度Gxは、前後加速度センサGXによって検出されるが、前後加速度Gxには、走行路面の勾配が含まれる。このため、実減速度Gaの演算には、前後加速度Gxよりも、車体速度Vxの微分値の方が好ましい。また、ロバスト性を向上するよう、車体速度Vxの微分値(演算値)、及び、前後加速度Gx(検出値)に基づいて、実際の車両減速度Gaが演算されてもよい。
自動制動制御ブロックJCにて、要求減速度Gs、及び、実減速度Gaに基づいて、自動制動制御が実行される。先ず、自動制動制御ブロックJCでは、自動制動の要否が判定される。運転者が既に制動操作部材BPを操作しており、実減速度Gaが要求減速度Gsよりも大きい場合には、自動制動制御は不要である。一方、実減速度Gaが要求減速度Gsよりも小さい場合に、実減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、車両の減速度に基づくフィードバック制御(自動制動制御)が実行される。自動制動制御ブロックJCには、目標液圧演算ブロックPT、旋回量偏差演算ブロックHY、偏向方向判定ブロックHN、修正液圧演算ブロックPS、及び、駆動信号演算ブロックDSを含んで構成される。
目標液圧演算ブロックPTにて、要求減速度Gs、及び、予め設定された演算マップに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2(=Pt)が演算される。第1目標液圧Pt1(「第1液圧目標値」に相当)は、右前輪ホイールシリンダCWiに接続された第1制動系統HM1の実液圧Pp1(「第1液圧実際値」に相当)の目標値である。また、第2目標液圧Pt2(「第2液圧目標値」に相当)は、左前輪ホイールシリンダCWjに接続された第2制動系統HM2の実液圧Pp2(「第2液圧実際値」に相当)の目標値である。ここで、第1目標液圧Pt1と第2目標液圧Pt2とは等しく演算される(即ち、「Pt1=Pt2」)。車両諸元(質量、重心高等)、及び、制動装置の諸元(回転部材KTの制動有効半径、摩擦材の摩擦係数、ホイールシリンダCWの受圧面積等)は、既知であるため、上記演算マップでは、これらの諸元を利用し、要求減速度Gsが大きいほど、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が大きくなるように決定される。
旋回量偏差ブロックHYにて、旋回量偏差hYが演算される。旋回量偏差ブロックHYでは、先ず、操舵角Saに応じた規範旋回量Ys、及び、ヨーレイトYrに応じた実旋回量Yaが演算される。そして、規範旋回量Ys、及び、実旋回量Yaに基づいて、旋回量偏差hYが演算される。旋回量偏差hYは、操舵角Saによって指示された車両の進行方向と、実際の車両進行方向との偏差を表す状態量である。従って、旋回量偏差hYによって車両の偏向状態が表現される。
旋回量偏差hYは、車両の旋回方向が考慮されて、以下の式(1)にて演算される。
hY=sgn(Yr)・(Ya-Ys) …式(1)
ここで、関数「sgn」は、符号関数(「シグナム関数」ともいう)であり、引数の符号に応じて、「1」、「-1」、「0」のいずれかを返す関数である。例えば、左旋回方向を正符号(+)、右旋回方向を負符号(-)とすると、左旋回の場合には「sgn(Yr)=1」が演算され、右旋回の場合には「sgn(Yr)=-1」が演算される。従って、車両が直進走行している状態(即ち、「Sa=Ys=0」)で左方向に偏向する場合には、「sgn(Yr)」は正符号(+)、且つ、「Ya-Ys」は正符号(+)になるため、「hY」は正符号(+)になる。逆に、右方向に偏向する場合には、「sgn(Yr)」は負符号(-)、且つ、「Ya-Ys」は負符号(-)になるため、「hY」は正符号(+)になる。
例えば、旋回量偏差hY(ヨーレイト偏差)は、物理量として、ヨーレイトYrが採用されて、演算される。この場合、規範旋回量Ysは、操舵角Sa、及び、車体速度Vxに基づいて、車両のホイールベースを「L」、スタビリティファクタを「Kh」としたときに、以下の式(2)にて計算される。
Ys=(Vx^2×Sa)/{L×(1+Kh・Vx^2)} …式(2)
また、実旋回量Yaは、ヨーレイトセンサYRにて検出されたヨーレイトYrが、そのまま、用いられる。ここで、規範旋回量Ysは、車輪WHのグリップ状態が適切で、且つ、第1、第2実液圧Pp1、Pp2において差が生じていない場合(車両偏向が生じていない状態)に対応する。
式(2)で示すように、車輪WHがグリップしている状態では、操舵角SaとヨーレイトYrとは、所定の関係にある。このため、旋回量偏差hY(操舵角偏差)は、物理量として、操舵角Saの次元で演算され得る。この場合、規範旋回量Ysとして、操舵角Saが、そのまま、決定される。そして、実旋回量Yaは、以下の式(3)にて演算される。
Ya={L×(1+Kh・Vx^2)}×Yr/(Vx^2) …式(3)
何れにしても、旋回量偏差hYは、操舵角Saに応じた規範旋回量Ysと、ヨーレイトYrに応じた実旋回量Yaとの差として演算される。
偏向方向判定ブロックHNでは、旋回量偏差hYが所定量hx以上の場合に、ヨーレイトYrに基づいて、車両が偏向する方向(旋回方向)Hnが判定される。ここで、所定量hxは、予め設定された定数であり、第1、第2実液圧Pp1、Pp2の差、片荷、摩擦材の摩擦係数差、路面の車幅方向の傾斜等によって、「車両偏向が生じているか、否か」を判定するための予め設定された定数(判定しきい値)である。具体的には、偏向方向Hnの判定(識別)は、車両が直進走行している場合(詳細には、操舵角Saが略中立位置にあって、所定角saの範囲内である場合)に、ヨーレイトYrの符号に基づき行われる。上述した様に、ヨーレイトYrの正符号(+)である場合には、偏向方向Hnが左方向であることが判定され、ヨーレイトYrの負符号(-)である場合には、偏向方向Hnが右方向であることが判定される。偏向方向Hnは、「Ya-Ys(実旋回量から規範旋回量を減算した状態量)」の符号に応じて識別されてもよい。いずれにしても、車両の偏向はヨーレイトYrの変化に現れるため、偏向方向Hnは、ヨーレイトYrに基づいて識別される。
修正液圧演算ブロックPSにて、旋回量偏差hY、及び、偏向方向Hnに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が修正され、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2(「第1、第2液圧目標値」に相当)が演算される。修正液圧演算ブロックPSでは、旋回量偏差hYが所定量hx未満の場合には、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2は修正されず、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2として、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2がそのまま演算される(即ち、「Ps1=Ps2=Pt1=Pt2」)。従って、「hY<hx」の場合には、車両は偏向しておらず、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2の修正は行われない。従って、「Ps1=Ps2」として決定され、第1、第2実液圧Pp1、Pp2が、第1、第2修正液圧(第1、第2目標液圧)Ps1、Ps2に一致するように制御される。
修正液圧演算ブロックPSでは、旋回量偏差hYが所定量hx以上の場合に、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2(第1、第2液圧目標値)が修正されて、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2(修正後の第1、第2液圧目標値)が演算される。修正液圧演算ブロックPSでは、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2を修正するよう、旋回量偏差hYに基づいて、液圧修正量Pz、Pgが演算される。液圧修正量Pzは、目標液圧Ptを増加調整するための状態量(「増加修正量」という)であり、液圧修正量Pgは、目標液圧Ptを減少調整するための状態量(「減少修正量」という)である。液圧修正量Pz、Pgは、旋回量偏差hYが大きいほど、大きくなるように演算される。そして、増加修正量Pzは減少修正量Pgより大きく設定され、減少修正量Pgは増加修正量Pzより小さく設定される(即ち、「Pz>Pg」)。これは、実際の液圧Ppは、減少され易いが、増加され難いという特性に基づく。「Pz>Pg」として、修正後の第1、第2目標液圧Ps1、Ps2が決定されることにより、実液圧Ppの調整が迅速に(応答性良く)実行され、結果、車両の偏向が好適に抑制され得る。
前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに同一の液圧が付与された場合、制動装置の諸元(ホイールシリンダCWの受圧面積、回転部材KTの有効制動半径、摩擦材の摩擦係数等)に応じて、前輪制動力が後輪制動力よりも大きくなるように設定されている。つまり、制動力の発生において、前輪WHfの制動力が車両挙動(Yr等)に対しては支配的である。
従って、車両の偏向方向Hnが左方向である場合には、「Pp1<Pp2」である可能性が高いため、右前輪ホイールシリンダCWiの液圧Pwiが増加され、左前輪ホイールシリンダCWjの液圧Pwjが減少される。つまり、第1目標液圧Pt1が、増加修正量Pzだけ増加修正されて、第1修正液圧Ps1が演算され、第2目標液圧Pt2が、減少修正量Pgだけ減少修正されて、第2修正液圧Ps2が演算される(即ち、「Ps1=Pt1+Pz、Ps2=Pt2-Pg」)。一方、偏向方向Hnが右方向である場合には、「Pp1>Pp2」である可能性が高いため、右前輪制動液圧Pwiが減少され、左前輪制動液圧Pwjが増加される。つまり、第1目標液圧Pt1が、減少修正量Pgだけ減少修正されて、第1修正液圧Ps1が演算され、第2目標液圧Pt2が、増加修正量Pzだけ増加修正されて、第2修正液圧Ps2が演算される(即ち、「Ps1=Pt1-Pg、Ps2=Pt2+Pz」)。
駆動信号演算ブロックDSにて、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2に基づいて、調圧弁駆動信号Up、及び、モータ駆動信号Mlが演算される。具体的には、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2の大きい方に基づいて、電気モータMLの回転数が決定される。そして、該回転数が達成されるよう、電気モータMLへの通電量(電流値)を指示する駆動信号Ml(電流指示値)が演算される。また、電気モータMLは、予め設定された一定の回転数で駆動されてもよい。この場合には、モータ駆動信号Mlとして、電気モータMLの回転指示を行うための、オン信号が決定される。
駆動信号演算ブロックDSでは、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2に基づいて、第1、第2調圧弁駆動信号Up1、Up2(=Up)が決定される。駆動信号Upは、調圧弁UPを制御するために、駆動回路DRに送信される信号である。調圧弁UPは、常開型のリニア電磁弁であり、非通電時には開弁量は全開状態である。そして、通電量(電流値)が増加されるに従って、開弁量が減少され、流体ポンプQLを含んで構成される還流路が絞られ、実際の液圧Pp(結果、制動液圧Pw)が増加される。調圧弁UPにおいて、供給通電量と実液圧Ppとの関係は既知であるため、修正液圧(修正後の目標値)Psに基づいて、駆動信号Up(通電指示量)が演算される。つまり、目標液圧(修正液圧)Psが相対的に小さい場合には、通電指示値Upが小さく演算され、目標液圧Psが増加するに従って、通電指示値Upが大きくなるように決定される。
駆動回路DRでは、駆動信号Up、Mlに基づいて、スイッチング素子(パワー半導体デバイス)によって、リニア電磁弁(調圧弁)UP、及び、電気モータMLの通電状態が制御される。駆動回路DRには、調圧弁UP、及び、電気モータMLの実際の通電量(供給電流値)を検出する通電量センサ(電流センサ)が設けられ得る。そして、供給電流値が、駆動信号Up、Mlに一致するよう、電流フィードバック制御が実行される。また、後述するように、駆動信号Vi、Voによって、オン・オフ電磁弁VI、VOの通電状態が制御される。
<自動制動制御の演算処理>
図3のフロー図を参照して、自動制動制御の処理について説明する。自動制動制御は、車両の前方の物体(障害物)と、車両との相対距離Obに応じた要求減速度Gsに基づいて、車両と障害物との衝突を回避等するよう、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)PwをマスタシリンダCMの液圧(マスタシリンダ液圧)Pmから増加するものである。
ステップS110にて、各種信号が読み込まれる。具体的には、要求減速度Gs、前後加速度Gx(検出値)、ヨーレイトYr、操舵角Sa、及び、車体速度Vxが取得される。ステップS120にて、前後加速度Gx、及び、車体速度Vxのうちの少なくとも1つに基づいて、実際に発生している車両前後方向の減速度Gaが演算される。
ステップS130にて、自動制動制御の要否が判定される。例えば、該要否は、要求減速度Gsと実減速度Gaとの比較に基づいて判定される。「Gs≦Ga」である場合には、自動制動制御は不要であり、処理は、ステップS110に戻される。「Gs>Ga」である場合には、自動制動制御が必要であることが判定され、処理は、ステップS140に進められる。
ステップS140にて、電気モータMLが駆動される。これにより、調圧弁UP、及び、流体ポンプQLを含む制動液BFの還流(「QL→Bt→UP→Bs→RL→QL」で循環する制動液BFの流れ)が形成される。ステップS150にて、要求減速度Gsに基づいて、目標液圧Pt(=Pt1、Pt2)が決定される。第1、第2目標液圧Pt1、Pt2(第1、第2液圧目標値)は、実際の第1、第2実液圧Pp1、Pp2(第1、第2液圧実際値)についての目標値である。ここで、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2は、「Pt1=Pt2」として演算され、左右の前輪ホイールシリンダCWi、CWjの液圧(実液圧)Pp1、Pp2は同じになるように指示が行われる。
ステップS160にて、規範旋回量Ys、及び、実旋回量Yaに基づいて、旋回量偏差hYが演算される。ここで、規範旋回量Ysは、操舵角Saに基づいて演算され、実旋回量Yaは、ヨーレイトYrに基づいて演算される。そして、旋回量偏差hYは、規範旋回量Ysと実旋回量Yaとの差として演算される。従って、旋回量偏差hYは、車両偏向の程度(運転者が所望する進行方向と実際の進行方向との差)を表す状態変数である。例えば、旋回量偏差hYは、「hY=sgn(Yr)×(Ya-Ys)」にて演算される。
ステップS170にて、目標液圧Ptの修正の要否が判定される。具体的には、旋回量偏差hY(旋回方向が考慮されない場合には偏差hYの絶対値)が所定量hx未満である場合には、第1、第2実液圧Pp1、Pp2とは概ね等しく、目標液圧Ptの修正は不要である。このため、「hY<hx」の場合には、処理は、ステップS180に進められる。ここで、所定量hxは、予め設定された定数であり、目標液圧Ptの修正の要否判定のためのしきい値である。旋回量偏差hY(又は、その絶対値)が所定量hx以上である場合には、実際に生じている第1、第2実液圧Pp1、Pp2に差があると推測されるため、目標液圧Ptの修正が必要とされ、処理は、ステップS190に進められる。
ステップS180にて、最終的な第1、第2目標液圧(第1、第2修正液圧)Ps1、Ps2が演算される。ステップS180は、自動制動制御において、車両偏向が生じていない場合に対応する。目標液圧の修正は不要であるため、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2として、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が、そのまま決定される。つまり、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2は同一値に演算されるため、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2(「第1、第2液圧目標値」に相当)も同じに決定される。
ステップS190~S220は、自動制動制御において、車両偏向が生じている場合に対応する。この一連の処理では、旋回量偏差hYに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が修正され、最終的な第1、第2目標液圧(第1、第2修正液圧)Ps1、Ps2(修正された第1、第2液圧目標値)が演算される。
ステップS190にて、吹き出し部に示す修正量演算ブロックZGの演算マップZpz、Zpg、及び、旋回量偏差hYに基づいて、液圧修正量Pz、Pgが演算される。増加修正量Pzは、最終的な目標液圧(修正液圧)Psを、目標液圧Ptから増加して修正するためのものである。増加修正量Pzは、増加演算マップZpzに従って、旋回量偏差hYが所定量hx(予め設定された定数)未満の場合には「0」に演算され、旋回量偏差hY(又は、その絶対値)が所定量hx以上の場合には、旋回量偏差hY(又は、その絶対値)の増加に従って、増加修正量Pzが「0」から増加するように演算される。そして、修正後の液圧目標値として、修正液圧Psは、目標液圧Ptに増加修正量Pzが加算されて演算される(即ち、「Ps=Pt+Pz」)。減少修正量Pgは、最終的な目標液圧Psを、目標液圧Ptから減少して修正するためのものである。同様に、減少修正量Pgは、減少演算マップZpgに従って、「hY<hx」の場合には「0」に演算され、「hY≧hx」の場合には、旋回量偏差hYが増加するに従って、減少修正量Pgが「0」から増加するように演算される。修正後の液圧目標値として、修正液圧Psは、目標液圧Ptから減少修正量Pgが減算されて演算される(即ち、「Ps=Pt-Pg」)。
ステップS200にて、「車両の偏向方向Hnが、左方向であるか、右方向であるか」が判定(識別)される。例えば、該識別は、ヨーレイトYrの符号に基づいて行われる。また、ヨーレイトYrに基づいて演算された旋回量偏差hYの符号に応じて識別されてもよい。偏向方向Hnが左方向である場合には、処理は、ステップS210に進められる。一方、偏向方向Hnが右方向である場合には、処理は、ステップS220に進められる。
増加修正量Pzは、減少修正量Pgより大きく設定される(即ち、「Pz>Pg」)。実際の液圧Ppは、減少され易いが、増加され難いため、「Pz>Pg」として液圧修正量が演算されることにより、実際の液圧Ppの修正が素早く行われ得る。また、増加、減少修正量Pz、Pgには、上限値pz、pgが設定されている。自動制動制御における制動力左右差のみならず、路面外乱(例えば、路面摩擦係数の変化、路面の車幅方向の傾斜)によっても旋回量偏差hYは発生する。液圧修正量Pz、Pgに制限が設けられることによって、過剰な液圧修正が回避され、自動制動制御において、オーバーシュート、ハンチング等が抑制され得る。
ステップS210にて、第1修正液圧Ps1が、第1目標液圧Pt1から、増加修正量Pzの分だけ増加修正される。また、第2修正液圧Ps2が、第2目標液圧Pt2から減少修正量Pgの分だけ減少修正される。即ち、「Pt1=Pt2」であった液圧の目標値が、「Ps1=Pt1+Pz、Ps2=Pt2-Pg」に修正演算される。
ステップS220にて、第1修正液圧Ps1が、第1目標液圧Pt1から、減少修正量Pgの分だけ減少修正される。また、第2修正液圧Ps2が、第2目標液圧Pt2から増加修正量Pzの分だけ増加修正される。即ち、「Pt1=Pt2」であった液圧の目標値が、「Ps1=Pt1-Pg、Ps2=Pt2+Pz」に修正演算される。
ステップS210、S220にて、第1、第2目標液圧(第1、第2液圧目標値)Pt1、Pt2が、液圧修正量Pz、Pgによって、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2(修正後の最終的な目標値)に修正される。これにより、実際に発生している液圧(第1、第2液圧実際値)Pp1、Pp2の左右差が補償されるため、結果、車両の偏向が低減される。
ステップS230にて、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2(第1、第2液圧目標値)に基づいて、第1、第2調圧弁UP1、UP2が制御される。具体的には、第1、第2修正液圧Ps1、Ps2に基づいて、第1、第2駆動信号(通電指示信号)Up1、Up2が決定され、第1、第2調圧弁UP1、UP2への通電量が制御される。第1、第2調圧弁UP1、UP2への通電量の制御においては、実際の通電量(通電量センサによる検出値)が、目標通電量Up1、Up2に一致するよう、通電量フィードバック制御行われ得る。更に、第1、第2調圧弁UP1、UP2への通電量の制御において、実際の減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、減速度フィードバック制御が行われてもよい。
<作用・効果>
以下に、自動制動装置JSの構成、及び、作用・効果についてまとめる。自動制動装置JSが適用される車両には、2つの制動系統として、ダイアゴナル方式のものが採用されている。自動制動装置JSは、車両前方の物体と車両との距離(相対距離)Obに応じた要求減速度Gsに基づいて、該物体との衝突を回避するよう、ホイールシリンダCWの液圧PwをマスタシリンダCMの液圧Pmから増加する。自動制動装置JSは、「車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサYR」と、「車両の操舵角Saを検出する操舵角センサSA」と、「2つの制動系統のうちで右前輪ホイールシリンダCWiに接続された第1制動系統HM1の液圧である第1液圧実際値Pp1を調整する第1調圧弁UP1」と、「2つの制動系統のうちで左前輪ホイールシリンダCWjに接続された第2制動系統HM2の液圧である第2液圧実際値Pp2を調整する第2調圧弁UP2」と、「要求減速度Gsに基づいて、第1液圧実際値Pp1に対応する第1液圧目標値Pt1(又は、Ps1)と第2液圧実際値Pp2に対応する第2液圧目標値Pt2(又は、Ps2)とを同じに演算し、第1、第2液圧実際値Pp1、Pp2が第1、第2液圧目標値Pt1、Pt2(又は、Ps1、Ps2)に一致するよう、第1、第2調圧弁UP1、UP2を制御するコントローラECU」と、を含んで構成されている。
自動制動装置JSでは、コントローラECUによって、操舵角Saに応じた規範旋回量Ys、及び、ヨーレイトYrに応じた実旋回量Yaに基づいて旋回量偏差hYが演算される。旋回量偏差hYが所定量hx以上の場合には、ヨーレイトYrに基づいて、車両の偏向方向Hnが判定される。そして、偏向方向Hnが左方向である場合には、第1液圧目標値Pt1が増加するよう修正されるとともに、第2液圧目標値Pt2が減少するよう修正される。一方、偏向方向Hnが右方向である場合には、第1液圧目標値Pt1が減少するよう修正されるとともに、第2液圧目標値Pt2が増加するよう修正される。
ダイアゴナル型の制動系統(流体路)を有する車両において、規範旋回量Ysと実旋回量Yaとの偏差(ヨーレイト偏差、操舵角偏差等)、及び、車両の偏向方向に基づいて、車両の偏向を抑制するよう、一方側の制動系統の液圧目標値が増加修正され、他方側の制動系統の液圧目標値が減少修正される。2つの制動系統において、一方側系統が増圧され、他方側系統が減圧されるため、車両全体に作用する制動力は一定に維持される。このため、車両の減速度が変化することなく、確実に要求減速度Gsが達成されるとともに、2つの調圧弁UP1、UP2のバラツキに起因する車両偏向のみならず、片荷等に起因する車両偏向に対しても効果が発揮され得る。
旋回量偏差hYに基づいて、液圧修正量Pz、Pgが演算される。液圧修正量Pz、Pgは、旋回量偏差hYの増加に応じて、大きくなるように決定される。第1、第2液圧目標値Pt1、Pt2のうちの一方に増加修正量Pzが加算されることによって増加修正される。また、第1、第2液圧目標値Pt1、Pt2のうちの他方から、増加修正量Pzよりも小さい値である減少修正量Pgが減算されることによって減少修正される(即ち、「Pz>Pg」の関係)。つまり、目標液圧Ptの増加修正量Pzが、目標液圧Ptの減少修正量Pgよりも大きく決定される。これにより、前輪制動力が小さい側の最終的な目標液圧(修正液圧)が、より大きく演算されるため、増圧側の液圧増加における時間遅れの影響が補償され、昇圧応答性が向上される。
増加修正量Pz、及び、減少修正量Pgにおいて制限値(上限値)pz、pgが設けられる。車体速度Vxの減少に伴って、実際に発生するヨーレイトYrは減少する。また、路面外乱(摩擦係数、路面の傾き等)によっても、ヨーレイトYrの変動が生じ得る。上記の制限値pz、pgを設けることによって、ヨーレイト変動(オーバシュート、ハンチング)が抑制される。
液圧が増加修正される制動系統に接続された後輪ホイールシリンダに対応したインレット弁VIによって、該後輪制動液圧が増加されず、保持され得る。つまり、「hY≧hx」が満足された時点(該当する演算周期)で、液圧の増加修正が行われると同時に、インレット弁VIを閉位置(全閉状態)にするよう、駆動回路DRに駆動信号Viが出力される。ダイアゴナル型流体路では、液圧が増加される側の制動系統に対応した後輪制動力は、車両の偏向を助長する方向のヨーモーメントを発生させる。また、後輪制動力が増加されると、後輪横力が減少されるため、車両偏向が抑制され難くなる。以上の観点から、液圧が増加修正される制動系統では、後輪ホイールシリンダCWrの液圧Pwrが保持されることによって、車両偏向が効率的に抑制される。加えて、該制動系統の流体ポンプQLが吐出する制動液BFは、後輪ホイールシリンダには供給されず、その全量が前輪ホイールシリンダに供給される。このため、前輪制動液圧の増加修正が高応答で行われ得る。
JS…自動制動装置、BP…制動操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、UP…調圧弁、VI…インレット弁、VO…アウトレット弁、ECU…コントローラ、YR…ヨーレイトセンサ、SA…操舵角センサ、Ys…規範旋回量、Ya…実旋回量、hY…旋回量偏差、Hn…偏向方向、Pt…目標液圧(液圧目標値)、Pp…実液圧(液圧実際値)、Ps…修正液圧(修正された液圧目標値)。


Claims (1)

  1. 2つの制動系統としてダイアゴナル方式を採用する車両に備えられ、
    前記車両の前方の物体と前記車両との距離に応じた要求減速度に基づいて、ホイールシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧から増加する車両の自動制動装置であって、
    前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、
    前記車両の操舵角を検出する操舵角センサと、
    前記2つの制動系統のうちで右前輪ホイールシリンダに接続された第1制動系統の液圧である第1液圧実際値を調整する第1調圧弁と、
    前記2つの制動系統のうちで左前輪ホイールシリンダに接続された第2制動系統の液圧である第2液圧実際値を調整する第2調圧弁と、
    前記要求減速度に基づいて、前記第1液圧実際値に対応する第1液圧目標値と前記第2液圧実際値に対応する第2液圧目標値とを同じに演算し、前記第1、第2液圧実際値が前記第1、第2液圧目標値に一致するよう、前記第1、第2調圧弁を制御するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記操舵角に応じた規範旋回量、及び、前記ヨーレイトに応じた実旋回量に基づいて旋回量偏差を演算し、
    前記旋回量偏差が所定量以上の場合には、
    前記ヨーレイトに基づいて、前記車両の偏向方向を判定し、
    前記偏向方向が左方向である場合には、前記第1液圧目標値を増加するよう修正するとともに、前記第2液圧目標値を減少するよう修正し、
    前記偏向方向が右方向である場合には、前記第1液圧目標値を減少するよう修正するとともに、前記第2液圧目標値を増加するよう修正する、車両の自動制動装置。

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