JP7302705B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「自動制動装置の作動中にアンンチスキッドブレーキ装置(ABS)が作動し、その後ABSの作動が終了する時ブレーキ力の増圧により車両の実際の減速度が目標の減速度を越えてオーバシュートするのを防止する」ことを目的に、「車両に、所定の条件で各車輪のブレーキを自動的にかける自動制動装置と、車両の制動時における過大な制動力を抑制するABSとを装備する。そして、上記自動制動装置及びABSの各作動状態を検出する作動状態検出手段と、該検出手段からの信号を受ける増圧レート変更手段とを設ける。該変更手段は、自動制動装置の作動中にABSが作動し、その後ABSの作動が終了する時ブレーキ圧の増圧レートを通常のそれよれも低くするように変更する。また、その増圧レートを低くする度合いを、ABSの作動中における車両の実際の減速度とABSの作動終了時における自動制動装置の目標減速度との差に応じて変更する」旨が記載されている。
ところで、自動制動制御の実行中にアンチスキッド制御が開始される場合、上記のオーバシュートの課題に加え、2つの制御の干渉が発生することがある。例えば、走行路面の摩擦係数が低い場合、自動制動制御によって制動液圧が増加され、この制動液圧の増加に起因してアンチスキッド制御が実行されることがある。自動制動制御は、目標とする減速度を達成すべく制動液圧を増加させようとするが、アンチスキッド制御は、車輪スリップを減少すべく制動液圧を減少しようとする。制動制御装置には、この様な制御干渉が、抑制され得るものが望まれている。
特開平5-319233号公報
本発明の目的は、自動制動制御とアンチスキッド制御とが実行される車両の制動制御装置において、2つの制御の干渉が、好適に抑制され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両の車輪(WH)に制動トルク(Tq)を付与するものであり、前記車両の前方の物体と前記車両との距離(Ob)に応じた前記車両の減速度目標値(Gt)に基づいて、前記制動トルク(Tq)を調整する自動制動制御を実行するとともに、前記車輪(WH)の速度(Vw)に基づいて、前記制動トルク(Tq)を調整して、前記車輪(WH)の過大なスリップ(Sw)を抑制するアンチスキッド制御を実行するコントローラ(ECU)を備える。
本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記減速度目標値(Gt)に対応した減速度実際値(Ge)を演算し、前記減速度目標値(Gt)、及び、前記減速度実際値(Ge)に基づいて、前記減速度実際値(Ge)を前記減速度目標値(Gt)に近付けるよう、フィードバック制御(PH、IG)を実行し、前記アンチスキッド制御が実行される場合(Fa=1)には、前記フィードバック制御(PH、IG)の制御ゲイン(Kc)を減少するよう構成されている

上記構成によれば、アンチスキッド制御の実行中には、自動制動制御の減速度フィードバック制御の効きが弱められる。これにより、2つの制御の相互干渉が抑制され得る。

本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記アンチスキッド制御において、前記速度(Vw)に基づいて、前記制動トルク(Tq)を減少する減少モード(Mg)、及び、前記制動トルク(Tq)を増加する増加モード(Mz)のうちの何れか一方を決定し、前記制御ゲイン(Kc)を減少している場合に、前記車輪(WH)の全てについて前記増加モード(Mz)が決定される状態が、所定時間(tk)に亘って継続された時点で、前記制御ゲイン(Kc)を増加する。例えば、前記コントローラ(ECU)は、前記フィードバック制御(PH、IG)が禁止されている場合に、前記車輪(WH)の全てについて前記増加モード(Mz)が決定される状態が、所定時間(tk)に亘って継続された時点で、前記フィードバック制御(PH、IG)の実行を再開する。
上記構成によれば、アンチスキッド制御の実行中に、車輪グリップが回復されつつあることが判定される。「4つの車輪WHが増加モードMzの状態であり、その状態の継続時間Tkが所定時間tk以上である」ことが肯定される場合には、制御ゲインKcが増加される。これにより、減速度フィードバック制御の効きが増加され、自動制動制御の制御精度が向上される。つまり、制御干渉が抑制された上で、自動制動制御のフィードバック制御が好適に実行され得る。
本発明に係る車両の制動制御装置SCの第1の実施形態を説明するための全体構成図である。 運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理を説明するための機能ブロック図である。 自動制動制御ブロックJCの第1の演算処理例を説明するための機能ブロック図である。 自動制動制御ブロックJCの第2の演算処理例を説明するための機能ブロック図である。 制御ゲイン調整ブロックKCの演算処理を説明するための制御フロー図である。 本発明に係る車両の制動制御装置SCの第2の実施形態を説明するための概略図である。 本発明に係る車両の制動制御装置SCの第3の実施形態を説明するための概略図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」~「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」~「l」は、省略され得る。添字「i」~「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
各種記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、第2マスタシリンダ流体路HM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「HM」は、各制動系統のマスタシリンダ流体路を表す。
<本発明に係る車両の制動制御装置の第1の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第1の実施形態について説明する。マスタシリンダCMは、マスタシリンダ流体路HM、及び、ホイールシリンダ流体路HWを介して、ホイールシリンダCWに接続される。ここで、流体路は、制動制御装置SCの作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。各流体路の内部は、制動液BFが満たされている。なお、流体路において、リザーバRVに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が、「上流側」、又は、「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(リザーバRVから遠い側)が、「下流側」、又は、「下部」と称呼される。
一般的な車両では、流体路として、2系統のものが採用され、冗長性が確保されている。2系統の流体路のうちの第1系統(第1マスタシリンダ室Rm1に係る系統)は、ホイールシリンダCWi、CWlに接続される。2系統の流体路のうちの第2系統(第2マスタシリンダ室Rm2に係る系統)は、ホイールシリンダCWj、CWkに接続される。つまり、第1の実施形態では、2系統流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。
制動制御装置SCを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、リザーバRV、マスタシリンダCM、及び、ブレーキブースタBBが備えられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクTqが調整され、車輪WHに制動力が発生される。
車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクTqが発生される。この制動トルクTqによって、車輪WHに減速スリップが発生し、その結果、制動力が生じる。
リザーバ(大気圧リザーバ)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。大気圧リザーバRVの内部は、仕切り板SKによって、2つの部位に区画されている。第1マスタリザーバ室Ru1は第1マスタシリンダ室Rm1に、第2マスタリザーバ室Ru2は第2マスタシリンダ室Rm2に、夫々、接続される。
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド、クレビス(U字リンク)等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCMは、タンデム型であり、第1、第2マスタピストンPL1、PL2によって、その内部が、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2に分けられている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMの第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2とリザーバRV(第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2)とは連通状態にある。マスタシリンダCMは、第1、第2ポートからなる2系統の出力ポートを有し、リザーバRVからの制動液の供給を受け、第1、第2マスタシリンダ液圧Pm1、Pm2を、第1、第2ポートに発生する。マスタシリンダCM(特に、第1、第2ポート)には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2が接続されている。
制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダCM内の第1、第2マスタピストンPL1、PL2が押され、第1、第2マスタピストンPL1、PL2は前進する。この前進によって、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2は、リザーバRV(特に、第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2)から遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、マスタシリンダ室Rm1、Rm2の体積は減少し、制動液BFは、マスタシリンダCMから、ホイールシリンダCWに向けて圧送される。
ブレーキブースタ(単に、「ブースタ」ともいう)BBによって、運転者による制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。ブースタBBとして、負圧式のものが採用される。負圧は、エンジン、又は、電動負圧ポンプにて形成される。ブースタBBとして、電気モータを駆動源とするものが採用されてもよい(例えば、電動ブースタ、アキュムレータ式ハイドロリックブースタ)。
更に、車両には、車輪速度センサVW、操舵角センサSA、ヨーレイトセンサYR、前後加速度センサGX、横加速度センサGY、制動操作量センサBA、操作スイッチST、及び、距離センサOBが備えられる。
車両の各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向(即ち、過大な減速スリップ)を抑制するアンチスキッド制御等の各輪での独立制御に利用される。
操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)には、操舵角Saを検出するように操舵角センサSAが備えられる。車両の車体には、ヨーレイト(ヨー角速度)Yrを検出するよう、ヨーレイトセンサYRが備えられる。また、車両の前後方向(進行方向)の加速度(前後加速度)Gx、及び、横方向(進行方向に直角な方向)の加速度(横加速度)Gyを検出するよう、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYが設けられる。これらの信号は、過大なオーバステア挙動、アンダステア挙動を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)等の車両運動制御に用いられる。
運転者による制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作量Baを検出するよう、制動操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するマスタシリンダ液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダ液圧Pm、操作変位Sp、及び、操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
制動操作部材BPには、操作スイッチSTが設けられる。操作スイッチSTによって、運転者による制動操作部材BPの操作の有無が検出される。制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)には、制動操作スイッチSTによって、操作信号Stとしてオフ信号が出力される。一方、制動操作部材BPが操作されている場合(即ち、制動時)には、操作信号Stとしてオン信号が出力される。
各センサ(VW等)によって検出された車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、横加速度Gy、制動操作量Ba、及び、制動操作信号Stは、コントローラECUに入力される。コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
車両には、自車両の前方に存在する物体(他車両、固定物、人、自転車、等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obを検出するよう、距離センサOBが設けられる。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が採用される。距離Obは、コントローラECJに入力される。コントローラECJでは、相対距離Obに基づいて、要求減速度Grが演算される。
≪電子制御ユニットECU≫
制動制御装置SCは、コントローラECU、及び、流体ユニットHUにて構成される。
コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUは、車載の通信バスBSを介して、他のコントローラと、信号(検出値、演算値等)を共有するよう、ネットワーク接続されている。例えば、制動用コントローラECUは、運転支援用コントローラECJと、通信バスBSを通して接続される。制動コントローラECUから、運転支援コントローラECJには、車体速度Vxが送信される。一方、運転支援コントローラECJから、制動コントローラECUには、障害物との衝突を回避するよう(又は、衝突時の被害を軽減するよう)、自動制動制御を実行するための要求減速度Gr(目標値)が送信される。
コントローラECU(電子制御ユニット)によって、流体ユニットHUの電気モータML、及び、3種類の異なる電磁弁UP、VI、VOが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁UP、VI、VOを制御するための駆動信号Up、Vi、Voが演算される。同様に、電気モータMLを制御するための駆動信号Mlが演算される。
コントローラECUには、電磁弁UP、VI、VO、及び、電気モータMLを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMLを駆動するよう、スイッチング素子(MOS-FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mlに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMLの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁UP、VI、VOを駆動するよう、駆動信号Up、Vi、Voに基づいて、スイッチング素子によって、それらの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。なお、駆動回路DRには、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOの実際の通電量を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOへの供給電流が検出される。
制動用コントローラECUには、制動操作量Ba(Pm、Sp、Fp)、制動操作信号St、下流側液圧Pp、車輪速度Vw、ヨーレイトYr、操舵角Sa、前後加速度Gx、横加速度Gy、等が入力される。また、運転支援用コントローラECJから、要求減速度Grが、通信バスBSを介して入力される。
例えば、制動コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車輪WHの過度の減速スリップ(例えば、車輪ロック)を抑制するよう、アンチスキッド制御が実行される。コントローラECUでは、実際のヨーレイトYr等に基づいて、車両の不安定挙動(過度のオーバステア挙動、アンダステア挙動)を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)が実行される。また、コントローラECUでは、要求減速度Grに基づいて、障害物との衝突を回避するよう(又は、衝突の際の被害を低減するよう)、自動制動制御が実行される。
≪流体ユニットHU≫
第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に、流体ユニットHUが接続される。流体ユニットHU内の部位Bw1、Bw2にて、マスタシリンダ流体路HM1、HM2は、ホイールシリンダ流体路HWi~HWlに分岐され、ホイールシリンダCWi~CWlに接続される。具体的には、第1マスタシリンダ流体路HM1は、第1分岐部Bw1にて、ホイールシリンダ流体路HWi、HWlに分岐される。ホイールシリンダ流体路HWi、HWlには、ホイールシリンダCWi、CWlが接続されている。同様に、第2マスタシリンダ流体路HM2は、第2分岐部Bw2にて、ホイールシリンダ流体路HWj、HWkに分岐される。ホイールシリンダ流体路HWj、HWkには、ホイールシリンダCWj、CWkが接続されている。
流体ユニットHUは、電動ポンプDL、低圧リザーバRL、調圧弁UP、マスタシリンダ液圧センサPM、下流側液圧センサPP、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
電動ポンプDLは、1つの電気モータML、及び、2つの流体ポンプQL1、QL2にて構成される。電気モータ(還流モータ)MLは、コントローラECUによって、駆動信号Mlに基づいて制御される。電気モータMLによって、第1、第2流体ポンプQL1、QL2が一体となって回転され、駆動される。第1、第2流体ポンプQL1、QL2によって、第1、第2調圧弁UP1、UP2の上流部に位置する、第1、第2吸込部Bs1、Bs2から制動液BFが汲み上げられる。汲み上げられた制動液BFは、第1、第2調圧弁UP1、UP2の下流部に位置する、第1、第2吐出部Bt1、Bt2に吐出される。ここで、電動ポンプDLは、一方向に限って回転される。第1、第2流体ポンプQL1、QL2の吸込み側には、第1、第2低圧リザーバRL1、RL2が設けられる。
第1、第2調圧弁UP1、UP2が、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に設けられる。調圧弁UP(第1、第2調圧弁UP1、UP2の総称)として、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)が採用される。調圧弁UPは、コントローラECUによって、駆動信号Up(第1、第2駆動信号Up1、Up2の総称)に基づいて制御される。ここで、第1、第2調圧弁UP1、UP2として、常開型の電磁弁が採用される。
コントローラECUにて、車両安定化制御、自動制動制御等の演算結果(例えば、ホイールシリンダCWの目標液圧)に基づいて、調圧弁UPの目標通電量が決定される。該目標通電量に基づいて駆動信号Upが決定される。そして、駆動信号Upに応じて、調圧弁UPへの通電量(電流)が調整され、調圧弁UPの開弁量が調整される。
流体ポンプQLが駆動されると、「Bs→RL→QL→Bt→UP→Bs」の還流(循環する制動液BFの流れ)が形成される。調圧弁UPへの通電が行われず、常開型の調圧弁UPが全開状態である場合には、調圧弁UPの上流側の液圧(即ち、マスタシリンダ液圧Pm)と、調圧弁UPの下流側の液圧Pp(即ち、電磁弁VI、VOの非駆動時の制動液圧Pw)とは、略一致する。
常開型調圧弁UPへの通電量が増加され、調圧弁UPの開弁量が減少される。調圧弁UPによって、制動液BFの還流が絞られ、オリフィス効果によって、下流側液圧Pp(=Pw)は、上流側液圧Pmから増加される。つまり、電動ポンプDL、及び、調圧弁UPによって、上流部液圧Pmと下流部液圧Ppとの間の差圧(Pp>Pm)が調整される。電動ポンプDL、及び、調圧弁UPが制御されることによって、制動操作部材BPの操作に応じたマスタシリンダ液圧Pmよりも、下流側液圧Pp(即ち、制動液圧Pw)が増加される。例えば、制動操作部材BPが操作されていない場合には、「Pm=0」であるが、制動液圧Pwが、「0」よりも大きい値に上昇される。
調圧弁UPの上流部には、第1、第2マスタシリンダ液圧Pm1、Pm2を検出するよう、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。また、調圧弁UPの下流部には、第1、第2下流側液圧Pp1、Pp2を検出するよう、第1、第2下流側液圧センサPP1、PP2が設けられる。なお、4つの液圧センサPM1、PM2、PP1、PP2のうちの少なくとも1つは、省略可能である。
マスタシリンダ流体路HMは、調圧弁UPの下流側の部位(分岐部)Bwにて、各前輪ホイールシリンダ流体路HWに分岐(分流)される。ホイールシリンダ流体路HWには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが設けられる。インレット弁VIとして、常開型のオン・オフ電磁弁が採用される。また、アウトレット弁VOとして、常閉型のオン・オフ電磁弁が採用される。ここで、オン・オフ電磁弁は、開位置と閉位置の2つの位置を有する、2ポート2位置切替型の電磁弁である。電磁弁VI、VOは、コントローラECUによって、駆動信号Vi、Voに基づいて制御される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOによって各輪の制動液圧Pwが独立して制御され得る。
インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにおいて、各車輪WHに係る構成は同じである。ホイールシリンダ流体路HW(部位BwとホイールシリンダCWとを結ぶ流体路)には、常開型のインレット弁VIが設けられる。ホイールシリンダ流体路HWは、インレット弁VIの下流部にて、常閉型のアウトレット弁VOを介して、低圧リザーバRLに接続される。例えば、各輪の独立制御(アンチスキッド制御、車両安定化制御等)において、ホイールシリンダCW内の液圧Pwを減少するために、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、低圧リザーバRLに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するため、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの低圧リザーバRLへの流出が阻止され、調圧弁UPによって調節された下流側液圧Ppが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。
制動液圧Pwの増減によって、車輪WHの制動トルクTqが増減(調整)される。制動液圧Pwが増加されると、摩擦材が回転部材KTに押圧される力が増加され、制動トルクTqが増加される。結果、車輪WHの制動力が増加される。一方、制動液圧Pwが減少されると、摩擦材の回転部材KTに対する押圧力が減少され、制動トルクTqが減少される。結果、車輪WHの制動力が減少される。
<運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理>
図2の機能ブロック図を参照して、運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理について説明する。運転支援コントローラECJによって、自動制動制御において、要求減速度Grが演算される。要求減速度Grは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。制動コントローラECUによって、要求減速度Grに基づいて、車輪WHの制動トルクTqを調整するよう、流体ユニットHU(ML、UP等)が制御される。また、コントローラECUでは、車輪WHの過大な減速スリップを抑制するよう、アンチスキッド制御が実行される。
車両には、自車両が走行している先に存在する物体(他の車両、固定物、自転車、人、動物等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obを検出するよう、距離センサOBが設けられる。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が利用される。また、固定物が地図情報に記憶されている場合には、距離センサOBとして、ナビゲーションシステムが利用され得る。検出された相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。
運転支援コントローラECJには、衝突余裕時間演算ブロックTC、車頭時間演算ブロックTW、及び、要求減速度演算ブロックGRが含まれる。
衝突余裕時間演算ブロックTCにて、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obに基づいて、衝突余裕時間Tcが演算される。衝突余裕時間Tcは、自車両と物体とが衝突に至るまでの時間である。具体的には、衝突余裕時間Tcは、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obが、障害物と自車両との速度差(即ち、相対速度)によって除算されることによって決定される。ここで、相対速度は、相対距離Obが時間微分されて演算される。
車頭時間演算ブロックTWにて、相対距離Ob、及び、車体速度Vxに基づいて、車頭時間Twが演算される。車頭時間Twは、前方の物体の現在位置に自車両が到達するまでの時間である。具体的には、車頭時間Twは、相対距離Obが、車体速度Vxにて除算されて演算される。なお、自車両前方の物体が静止している場合には、衝突余裕時間Tcと車頭時間Twとは一致する。車体速度Vxは、コントローラECUの車体速度演算ブロックVXから、通信バスBSを介して取得される。
要求減速度演算ブロックGRにて、衝突余裕時間Tc、及び、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Grが演算される。要求減速度Grは、自車両と前方物体との衝突を回避するための自車両の減速度の目標値である。要求減速度Grは、演算マップZgrに従って、衝突余裕時間Tcが大きいほど、小さくなるよう(又は、衝突余裕時間Tcが小さいほど、大きくなるよう)、演算される。また、要求減速度Grは、車頭時間Twに基づいて調整され得る。車頭時間Twが大きいほど、要求減速度Grが小さくなるよう(又は、車頭時間Twが小さいほど、要求減速度Grが大きくなるよう)、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Grが調整される。要求減速度Grは、通信バスBSを介して、制動コントローラECU内の目標減速度演算ブロックGTに入力される。
車両の各車輪WHには、車輪WHの回転速度(車輪速度)Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが設けられる。検出された車輪速度Vwは、コントローラECUに入力される。制動コントローラECUには、車体速度演算ブロックVX、車輪加速度演算ブロックDV、車輪スリップ演算ブロックSW、アンチスキッド制御ブロックAC、指示減速度演算ブロックGS、目標減速度演算ブロックGT、実減速度演算ブロックGE、自動制動制御ブロックJC、及び、駆動回路DRが含まれる。
車体速度演算ブロックVXにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。例えば、車両の加速時を含む非制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も遅いもの(最遅の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。また、制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も速いもの(最速の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。更に、車体速度Vxの演算において、その時間変化量において制限が設けられ得る。即ち、車体速度Vxの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。演算されたVxは、コントローラECJの車頭時間Twに送信される。
車輪加速度演算ブロックDVにて、車輪速度Vwに基づいて、車輪加速度dV(車輪速度Vwの時間変化量)が演算される。具体的には、車輪速度Vwが時間微分されて、車輪加速度dVが演算される。
車輪スリップ演算ブロックSWにて、車体速度Vx、及び、車輪速度Vwに基づいて、車輪WHの減速スリップ(「車輪スリップ」ともいう)Swが演算される。車輪スリップSwは、走行路面に対する車輪WHのグリップの程度を表す状態量である。例えば、車輪スリップSwとして、車輪WHの減速スリップ速度(車体速度Vxと車輪速度Vwと偏差)hVが演算される(hV=Vx-Vw)。また、車輪スリップSwとして、スリップ速度(速度偏差)hVが車体速度Vxにて無次元化された車輪スリップ率(=hV/Vx)が採用され得る。
アンチスキッド制御ブロックACにて、車輪加速度dV、及び、車輪スリップSwに基づいて、アンチスキッド制御が実行される。アンチスキッド制御での制動液圧Pwの調整は、「制動トルクTq(即ち、制動液圧Pw)を減少する減少モード(減圧モード)Mg」、及び、「制動トルクTq(即ち、制動液圧Pw)を増加する増加モード(増圧モード)Mz」のうちの何れか1つのモードが選択されることによって達成される。ここで、減少モードMg、及び、増加モードMzは、「制御モード」と総称され、アンチスキッド制御ブロックACに含まれる制御モード選択ブロックMDによって決定される。
制御モード選択ブロックMDには、各制御モードを決定するよう、複数のしきい値が予め設定されている。これらのしきい値と、「車輪加速度dV、及び、車輪スリップSw」と、の相互関係に基づいて、減少モードMg、及び、増加モードMzのうちでの何れか1つの制御モードが選択される。加えて、制御モード選択ブロックMDでは、アウトレット弁VOのディーティ比Dg、及び、インレット弁VIのディーティ比Dzが決定される。ここで、「ディーティ比」は、単位時間当たりの通電時間(オン時間)の割合である。選択された制御モード、及び、決定されたデューティ比に基づいて、電磁弁VI、VOが駆動され、ホイールシリンダCWの制動液圧Pwが調整される。加えて、低圧リザーバRLから制動液BFを、インレット弁VIの上流部Btに戻すよう、電気モータMLの駆動信号Mlが演算される。
アンチスキッド制御によって、減少モードMgが選択され、制動液圧Pwが減少される場合には、インレット弁VIが閉状態にされ、アウトレット弁VOが開状態にされる。つまり、増圧デューティ比Dzが「100%(常時通電)」に決定され、アウトレット弁VOが、減圧デューティ比Dgに基づいて駆動される。ホイールシリンダCW内の制動液BFが、低圧リザーバRLに移動され、制動液圧Pwが減少される。ここで、減圧速度(制動液圧Pwの減少における時間勾配)は、アウトレット弁VOのデューティ比Dgによって決定される。減圧デューティ比Dgの「100%」が、アウトレット弁VOの常時開状態に対応し、制動液圧Pwは急減される。「Dg=0%(非通電)」によって、アウトレット弁VOの閉位置が達成される。
アンチスキッド制御によって、増加モードMzが選択され、制動液圧Pwが増加される場合には、インレット弁VIが開状態にされ、アウトレット弁VOが閉状態にされる。つまり、減圧デューティ比Dgが「0%」に決定され、インレット弁VIが、増圧デューティ比Dzに基づいて駆動される。制動液BFが、ホイールシリンダCWに移動され、制動液圧Pwが増加される。インレット弁VIのデューティ比Dzによって、増圧速度(制動液圧の増加における時間勾配)が調整される。増圧デューティ比Dzの「0%」が、インレット弁VIの常時開状態に対応し、制動液圧Pwは急増される。「Dz=100%(常時通電)」によって、インレット弁VIの閉位置が達成される。
なお、アンチスキッド制御によって、制動液圧Pwの保持が必要な場合には、減少モードMg、又は、増加モードMzにおいて、アウトレット弁VO、又は、インレット弁VIが、常時、閉状態にされる。具体的には、減少モードMgにおいて、制動液圧Pwの保持が必要な場合には、アウトレット弁VOのデューティ比Dgが「0%(常閉状態)」に決定される。また、増加モードMzにおいて、制動液圧Pwの保持が必要な場合には、インレット弁VIのデューティ比Dzが「100%(常閉状態)」に決定される。
アンチスキッド制御ブロックACでは、アンチスキッド制御が開始された時点(即ち、初めて減少モードMgが選択された時点)における車体の減速度Geに基づいて、走行路面の摩擦係数Muが推定演算される。具体的には、該時点の実際の減速度Geが大きいほど、摩擦係数Muは大きく推定され、実減速度Geが小さいほど、摩擦係数Muは小さく決定される。推定された摩擦係数Muは、自動制動制御ブロックJCに入力される。
アンチスキッド制御ブロックACでは、アンチスキッド制御の実行状況、選択された制御モード、等を表す各種の作動フラグ(信号)Fa、Fmが決定される。例えば、アンチスキッド制御が実行されていない場合には、作動フラグFaは、「0」にされる。一方、アンチスキッド制御が実行される場合、作動フラグFaは、「1」にされる。つまり、作動フラグFaは、アンチスキッド制御の実行を表す信号である。また、アンチスキッド制御ブロックACでは、全ての車輪WHに増加モードMzが選択されている場合(「4輪増圧モード状態」という)には、作動フラグFmが、「1」に決定される。一方、4つの車輪のうちの少なくとも1つで、減少モードMgが選択されている場合には、作動フラグFmが「0」に演算される。つまり、作動フラグFmは、4輪増圧モード状態を表す信号である。作動フラグFa、Fmは、自動制動制御ブロックJCに入力される。
指示減速度演算ブロックGSにて、制動操作量Baに基づいて、指示減速度Gsが演算される。指示減速度Gsは、運転者による制動操作部材BPの操作によって発生される車両減速度の目標値である。指示減速度Gsは、演算マップZgsに従って、制動操作量Baが、所定値bo未満では、指示減速度Gsは、「0」に演算される。そして、制動操作量Baが、所定値bo以上では、「0」から単調増加するよう、指示減速度Gsが演算される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。
目標減速度演算ブロックGTにて、要求減速度Gr、及び、指示減速度Gsに基づいて、目標減速度Gtが演算される。目標減速度Gtは、自動制動制御における、最終的な車両減速度の目標値である。目標減速度演算ブロックGTでは、要求減速度Gr、及び、指示減速度Gsのうちで絶対値が大きい方の値が、目標減速度Gtとして決定される。従って、「|Gr|>|Gs|」の場合には、自動制動制御が実行される。しかし、「|Gr|<|Gs|」の場合には、運転者が既に車両減速を行っているため、自動制動制御は実行されない。
実減速度演算ブロックGEにて、車体速度Vxに基づいて、実減速度Geが演算される。実減速度Geは、目標減速度Gtに対応した実際値である。具体的には、車体速度Vxが時間微分されて、実減速度Geが演算される。また、実減速度Geの演算に、前後加速度(前後減速度)Gxが採用される。この場合、実減速度Geとして、前後加速度Gx(検出値)が、そのまま決定される。前後加速度Gxは、前後加速度センサGXによって検出されるが、前後加速度Gxには、走行路面の勾配が含まれる。このため、実減速度Geの演算には、前後加速度Gxよりも、車体速度Vxの微分値の方が好ましい。また、ロバスト性を向上するよう、車体速度Vxの微分値、及び、前後加速度Gxに基づいて、実減速度Geが演算されてもよい。
自動制動制御ブロックJCにて、目標減速度Gt、及び、実減速度Geに基づいて、自動制動制御が実行される。自動制動制御ブロックJCでは、実際の減速度Geが、目標減速度Gtに一致するよう、車両減速度に基づくフィードバック制御が実行される。自動制動制御ブロックJCでは、調圧弁UPの駆動信号Upを演算するための目標通電量Itが決定される。
自動制動制御ブロックJCには、制御ゲイン調整ブロックKCが含まれる。制御ゲイン調整ブロックKCにて、作動フラグFa、Fm、及び、路面摩擦係数Muに基づいて、上記フィードバック制御の制御ゲインKcが調整される。これにより、自動制動制御、及び、アンチスキッド制御の相互干渉が抑制されるとともに、自動制動制御が、効率的に実行され得る。自動制動制御ブロックJCの詳細については後述する。
駆動回路DRにて、増減圧デューティ比Dz、Dg、目標通電量It、及び、駆動信号Mlに基づいて、電磁弁VI、VO、UP、及び、還流モータMLが駆動される。駆動回路DRでは、アンチスキッド制御を実行するよう、増圧デューティ比Dzに基づいて、インレット弁VI用の駆動信号Viが演算されるとともに、減圧デューティ比Dgに基づいて、アウトレット弁VO用の駆動信号Voが決定される。また、電気モータMLを予め設定された所定回転数で駆動するよう、駆動信号Mlが演算される。
駆動回路DRでは、自動制動制御を実行するよう、目標通電量Itに基づいて、調圧弁UP用の駆動信号Upが決定される。また、目標減速度Gtに基づいて、電気モータMLの目標回転数が決定され、これに基づいて、駆動信号Mlが演算される。電気モータMLの目標回転数は、目標減速度Gtが大きいほど大きく演算され、目標減速度Gtが小さいほど小さく演算される。なお、自動制動制御とアンチスキッド制御とが同時に実行される場合には、アンチスキッド制御用の所定回転数、及び、自動制動制御用の目標回転数のうちの大きい方の値に基づいて、電気モータMLが駆動される。また、自動制動制御においても、予め設定された所定回転数で、電気モータMLが駆動されてもよい。
駆動回路DRでは、駆動信号Vi、Vo、Up、Mlに基づいて、スイッチング素子(パワー半導体デバイス)によって、電磁弁VI、VO、UP、及び、電気モータMLの通電状態が制御される。これにより、電磁弁VI、VO、UP、及び、電気モータMLが駆動され、自動制動制御、アンチスキッド制御等が実行される。
<自動制動制御ブロックJCの第1演算処理例>
図3の機能ブロック図を参照して、自動制動制御ブロックJCの第1の演算処理例について説明する。自動制動制御ブロックJCの減速度フィードバック制御では、目標減速度Gt、及び、実減速度Geに基づいて、実際の減速度Geが、目標減速度Gtに一致するよう、調圧弁UPの目標通電量Itが演算される。減速度フィードバック制御によって制動トルクTqが調節され、最終的には、目標とする車両の減速度が達成される。自動制動制御ブロックJCは、複数のフィードバック制御ループが含まれるカスケード制御の構成が採用されている。
カスケード制御では、制御対象を測定した外側のフィードバック制御ループの出力信号によって、内側のフィードバック制御ループの目標値が決定される。内側のフィードバック制御ループでは、外側よりも時間遅れが小さい制御対象が制御される。これにより、応答性が向上され、フィードバック制御全体が安定化される。第1の演算処理例では、最も外側の制御ループが、車両の減速度に係る目標値Gt、及び、実際値Geに基づくもの(「減速度フィードバック制御」という)である。その内側に、制動液圧に係る目標値Pt、及び、実際値Ppに基づく制御ループ(「液圧フィードバック制御」という)が形成される。そして、最も内側に、調圧弁UPの通電量に係る目標値It、及び、実際値Iaに基づく制御ループ(「通電量フィードバック制御」という)が含まれている。
自動制動制御ブロックJCは、指示液圧演算ブロックPS、補償液圧演算ブロックPH、制御ゲイン調整ブロックKC、目標液圧演算ブロックPT、指示通電量演算ブロックIS、補償通電量演算ブロックIH、及び、目標通電量演算ブロックITにて構成される。
指示液圧演算ブロックPSにて、目標減速度Gtに基づいて、指示液圧Psが演算される。指示液圧Psは、液圧の目標値の1つである。指示液圧Psは、演算マップZpsに従って、目標減速度Gtの増加に従って、増加するように決定される。指示液圧Psには、所定の上限値po(予め設定された定数)が設定される。指示液圧演算ブロックPSは、減速度フィードバック制御の応答性を向上するための減速度フィードフォワード制御に相当する。
目標減速度Gt、及び、実減速度Geが比較され、それらの偏差hG(=Gt-Ge)が演算される。減速度偏差hGは、補償液圧演算ブロックPHに入力される。補償液圧演算ブロックPHにて、偏差hGに基づいて、補償液圧Phが演算される。指示液圧Psのみの制御では、実際には、実減速度Geと目標減速度Gtとの誤差が生じる。この誤差を低減するよう、補償液圧Phが演算される。指示液圧Psと同様に、補償液圧Phも液圧の目標値の1つである。補償液圧Phは、演算マップZphに従って、偏差hGが、値-hoから値hoの範囲(即ち、「-ho<hG<ho」の場合)では、「0」に決定される。そして、偏差hGが所定値-ho以下の場合には、偏差hGの増加に従って、補償液圧Phは、増加勾配Kc(可変値)にて「0」に向けて増加される。また、偏差hGが所定値ho以上の場合には、偏差hGの増加に従って、補償液圧Phは、増加勾配Kcにて「0」から増加される。ここで、所定値hoは、予め設定された定数であり、フィードバック制御が煩雑にならないように設けられた不感帯を形成する。
補償液圧演算ブロックPHは、減速度フィードバック制御に対応する。減速度フィードバック制御は、最終的には、目標とする車両の減速度を達成するよう、制動トルクTqを調整するものである。減速度フィードバック制御の直接の制御対象は調圧弁UPの下流部Btの液圧(下流側液圧)Ppである。ここで、補償液圧Phを演算するための演算マップZphにおいて、増加勾配Kcが、減速度フィードバック制御の制御ゲインである。制御ゲインKcは、フィードバック制御の効きを調節するためのものである。例えば、制御ゲインKcが過大である場合には、系は不安定であり、オーバシュートが生じ易い。一方、制御ゲインKcが過小である場合には、感度が低く、目標値が達成され難い。従って、制御ゲインKcは、適正値に設定される必要がある。
フィードバック制御は、「PID制御」とも称呼される。制御ゲインKcは、フィードバック制御における比例ゲイン(比例項)である。従って、補償液圧Phは、減速度偏差hGの比例要素(=Kc×hG)に基づいて決定される。なお、図示はされていないが、偏差hGの微分要素、及び、偏差hGの積分要素のうちの何れか1つが加味されて、補償液圧Phが演算されてもよい。この場合、微分要素は、偏差hGが時間微分され、これに微分ゲイン(微分項)が乗算されて、演算される。また、積分要素は、偏差hGが時間積分され、これに積分ゲイン(積分項)が乗算されて、決定される。
制御ゲイン調整ブロックKCにて、アンチスキッド制御の作動フラグFa、Fm、及び、摩擦係数Muに基づいて、制御ゲインKcが決定される。アンチスキッド制御が実行されていない場合には、制御ゲインKcは、予め設定された所定値ko(ノミナル値)に決定されている。アンチスキッド制御が実行されると、制御干渉を抑制するよう、制御ゲインKcが調整される。制御ゲインKcの決定方法の詳細については後述する。
目標液圧演算ブロックPTにて、指示液圧Ps、及び、補償液圧Phに基づいて、目標液圧Ptが演算される。目標液圧Ptは、最終的な液圧の目標値である。具体的には、指示液圧Psに、補償液圧Phが加算されて、目標液圧Ptが決定される。
指示通電量演算ブロックISにて、目標液圧Ptに基づいて、指示通電量Isが演算される。指示通電量Isは、調圧弁UPへの通電量の目標値の1つである。指示通電量Isは、演算マップZisに従って、目標液圧Ptの増加に従って、増加するように決定される。指示通電量Isには、所定の上限値so(予め設定された定数)が設定される。指示通電量演算ブロックISは、液圧フィードバック制御の応答性を向上するための液圧フィードフォワード制御に相当する。
目標液圧Pt、及び、下流側液圧Pp(下流側液圧センサPPの検出値)が比較され、それらの偏差hP(=Pt-Pp)が演算される。液圧偏差hPは、補償通電量演算ブロックIHに入力される。補償通電量演算ブロックIHにて、液圧偏差hPに基づいて、補償通電量Ihが演算される。指示通電量Isのみの制御では、実際には、下流側液圧Ppと目標液圧Ptとの誤差が生じる。この誤差を低減するよう、補償通電量Ihが演算される。指示通電量Isと同様に、補償通電量Ihも液圧の目標値の1つである。補償通電量Ihは、演算マップZihに従って、液圧偏差hPの増加に従って、増加勾配kpにて増加される。ここで、増加勾配kpは、予め設定された定数である。
補償通電量演算ブロックIHは、液圧フィードバック制御に対応する。補償通電量Ihの増加勾配kpは、液圧フィードバック制御における制御ゲイン(比例ゲイン)である。従って、補償通電量Ihは、液圧偏差hPの比例要素(=kp×hP)に基づいて決定される。補償液圧演算ブロックPHと同様に、補償通電量Ihの演算においても、液圧偏差hPの微分要素、及び、積分要素のうちの何れか1つが加味され得る。また、補償通電量Ihの演算において、不感帯が設けられ得る。
目標通電量演算ブロックITにて、指示通電量Is、及び、補償通電量Ihに基づいて、目標通電量Itが演算される。目標通電量Itは、最終的な通電量の目標値である。具体的には、指示通電量Isに、補償通電量Ihが加算されて、目標通電量Itが決定される。目標通電量Itは、駆動回路DRに入力される。
駆動回路DRでは、目標通電量Itに基づいて、調圧弁UPに対して、通電量フィードバック制御が実行される。駆動回路DRには、調圧弁UPへの実際の通電量(例えば、電流値)Iaを検出するよう、通電量センサIAが設けられる。そして、実通電量Iaが、目標通電量Itに一致するよう、通電量フィードバック制御が行われる。具体的には、他のフィードバック制御と同様に、目標通電量Itと実通電量Iaとの偏差hIが演算され、通電量偏差hIに基づいて、偏差hIが「0」に近付くように、調圧弁UPへの通電量が調整される。
<自動制動制御ブロックJCの第2の演算処理例>
図4の機能ブロック図を参照して、自動制動制御ブロックJCの第2の演算処理例について説明する。第1の演算処理例では、「目標減速度Gt、及び、実減速度Geに基づく減速度フィードバック制御ループ」、及び、「目標液圧Pt、及び、実液圧Ppに基づく液圧フィードバック制御ループ」が含まれていた。第2の演算処理例では、液圧フィードバック制御ループが省略される。これに伴い、流体ユニットHUにおいて、下流側液圧センサPPが省略され得る。これは、調圧弁UPによる調圧量が、調圧弁UPへの通電量(つまり、供給電流)に応じて、比例的に変化することに基づく。第2の演算処理例では、目標減速度Gt、及び、実減速度Geに基づく減速度フィードバック制御において、調圧弁UPの通電量が直接の制御対象にされる。
自動制動制御ブロックJCは、指示通電量演算ブロックIR、補償通電量演算ブロックIG、制御ゲイン調整ブロックKC、及び、目標通電量演算ブロックITにて構成される。
指示通電量演算ブロックIRにて、目標減速度Gtに基づいて、指示通電量Ir(通電量の目標値の1つ)が演算される。指示通電量演算ブロックIRは、減速度フィードバック制御の応答性を向上するための減速度フィードフォワード制御に相当する。指示通電量Irは、演算マップZirに従って、目標減速度Gtの増加に従って、増加するように決定される。指示通電量Irには、所定の上限値ro(予め設定された定数)が設定される。
第1処理例と同様に、目標減速度Gt、及び、実減速度Geの偏差hG(=Gt-Ge)が演算される。補償通電量演算ブロックIGにて、減速度偏差hGに基づいて、補償通電量Ig(通電量の目標値の1つ)が演算される。演算マップZigに従って、偏差hGが、値-hoから値hoの範囲(即ち、不感帯の範囲)では、補償通電量Igは、「0」に決定される。偏差hGが所定値-ho以下の場合には、偏差hGの増加に従って、補償通電量Igは、増加勾配Kc(可変値)にて「0」に向けて増加される。また、偏差hGが所定値ho以上の場合には、偏差hGの増加に従って、補償通電量Igは、増加勾配Kcにて「0」から増加される。所定値hoは、制御の不感帯を形成するよう、予め設定された定数である。
補償通電量演算ブロックIGは、減速度フィードバック制御に対応する。第2の演算処理例においては、減速度フィードバック制御の直接の制御対象は、調圧弁UPへの通電量である。演算マップZigにおける増加勾配Kcは、減速度フィードバック制御における制御ゲイン(比例ゲイン)である。補償通電量Igの演算おいて、偏差hGの微分要素(偏差hGの微分値に微分ゲインが乗算されたもの)、及び、偏差hGの積分要素(偏差hGの積分値に積分ゲインが乗算されたもの)のうちの何れか1つが考慮され得る。
以下、制御ゲイン調整ブロックKC、目標通電量演算ブロックIT、及び、駆動回路DRでの処理は、第1の演算処理例と同様である。制御ゲイン調整ブロックKCにて、アンチスキッド制御の作動フラグFa、Fm、及び、摩擦係数Muに基づいて、制御ゲインKcが決定される。目標通電量演算ブロックITにて、指示通電量Ir、及び、補償通電量Igに基づいて、最終的な通電量の目標値(目標通電量)Itが演算される。例えば、目標通電量Itは、指示通電量Irと補償通電量Igとが合算されて、決定される。駆動回路DRでは、目標通電量Itに基づいて、調圧弁UPの通電量フィードバック制御が実行される。つまり、駆動回路DRによって、調圧弁UPへの実際の通電量(通電量センサIAの検出値)Iaが、目標通電量Itに一致するよう、通電量フィードバック制御が行われる。
<制御ゲイン調整ブロックKCの処理>
図5の制御フロー図を参照して、自動制動制御(特に、制御ゲイン調整ブロックKC)の処理について説明する。制御ゲイン調整ブロックKCでは、減速度フィードバック制御の制御ゲインKcが決定される。該処理は、制動コントローラECUにプログラムされている。
ステップS110にて、要求減速度Gr、車輪速度Vw、制動操作量Ba、前後加速度Gx、作動フラグFa、Fm、路面摩擦係数Muが読み込まれる。要求減速度Grは、運転支援コントローラECJにて演算され、通信バスBSを通して、制動コントローラECUに送信される。車輪速度Vw、制動操作量Ba、及び、前後加速度(前後減速度)Gxは、車輪速度センサVW、制動操作量センサBA、及び、前後加速度センサGXによって検出され、コントローラECUに入力される。作動フラグFa、Fm、及び、路面摩擦係数Muは、コントローラECU内のアンチスキッド制御ブロックACにて演算される。なお、路面摩擦係数Muとして、公知の方法によって、他のコントローラ等にて演算されたものが、利用可能である。
ステップS120にて、要求減速度Gr、及び、指示減速度Gsに基づいて目標減速度Gtが演算される(目標減速度演算ブロックGTの処理を参照)。ステップS130にて、車体速度Vx、及び、前後加速度Gxのうちの少なくとも1つに基づいて、実減速度Geが演算される(実減速度演算ブロックGEの処理を参照)。ステップS140にて、目標減速度Gt、及び、実減速度Geの偏差hG(=Gt-Ge)が演算される(自動制動制御ブロックJCの処理を参照)。
ステップS150にて、制御ゲインKcが、所定値koに設定される。ここで、所定値koは、アンチスキッド制御が実行されていない場合に対応した初期値(ノミナル値)である。初期値koは、予め設定された、相対的に大きい値の定数である。
ステップS160にて、作動フラグFaに基づいて、「アンチスキッド制御が実行中であるか、否か」が判定される。作動フラグFaは、アンチスキッド制御ブロックACにて演算される作動フラグである。「Fa=0」であり、アンチスキッド制御が実行されていない場合には、ステップS160は否定され、処理は、ステップS200に進む。一方、「Fa=1」であり、アンチスキッド制御が実行されている場合には、ステップS160は肯定され、処理は、ステップS170に進む。
ステップS170にて、作動フラグFm、目標減速度Gt、及び、摩擦係数Muに基づいて、「制御ゲインKcの回復条件が満足されるか、否か」が判定される。アンチスキッド制御が実行されている場合には、制御ゲインKcは、初期値koから減少されている。回復条件が満足される場合には、減少された制御ゲインKcが、増加される。回復条件の詳細については後述する。回復条件が満足されず、ステップS170が否定される場合には、処理は、ステップS180に進む。一方、回復条件が満足され、ステップS170が肯定される場合には、処理は、ステップS190に進む。
ステップS180にて、制御ゲインKcが第1所定値kmに設定される。第1所定値kmは、アンチスキッド制御が実行されている場合に対応した、予め設定された定数である。所定値kmは、初期値koに比較して、相対的に小さい値である。例えば、所定値kmは、「0」に設定され得る。「km=0」の場合には、減速度フィードバック制御が禁止され、実行されない(即ち、オープンループ制御になる)。
ステップS190にて、制御ゲインKcが第2所定値knに設定される。第2所定値knも、アンチスキッド制御が実行されている場合に対応した、予め設定された定数である。第2所定値knは、初期値ko以下ではあるが、第1所定値kmに比較して、相対的に大きい値である。つまり、各制御ゲインは、「km<kn≦ko」の関係にある。例えば、第2所定値knは、ノミナル値(初期値)koに等しく設定され得る。「kn=ko」の場合には、アンチスキッド制御が実行されていても、それが実行されていない場合と同様の減速度フィードバック制御が実行される。
ステップS200にて、設定された制御ゲインKcに基づいて、減速度フィードバック制御が実行される(自動制動制御ブロックJCの処理を参照)。具体的には、減速度偏差hG、及び、制御ゲインKcに基づいて、補償液圧Phが演算される。補償液圧Phに基づいて、最終的には、目標通電量Itが演算され、実通電量Iaが目標通電量Itに近付くように、調圧弁UPが制御される(図3を参照)。また、偏差hG、及び、制御ゲインKcに基づいて、補償通電量Igが演算される。補償通電量Igに基づいて、目標通電量Itが決定され、実通電量Iaが目標通電量Itに近付くように、調圧弁UPが制御される(図4を参照)。
≪回復条件≫
ステップS170の回復条件について説明する。
自動制動制御とアンチスキッド制御との相互干渉を抑制するため、アンチスキッド制御が実行されている場合には、自動制動制御のフィードバック制御の制御ゲインKcが、通常時のノミナル値koから、第1所定値kmに減少される。減速度フィードバック制御の効きが減少され、制御干渉は回避されるが、制御精度が低下する。アンチスキッド制御に実行が終了されれば、制御ゲインKcは、元のノミナル値koに戻される。アンチスキッド制御が実行されている途中において、回復条件によって、「車輪WHのグリップが回復され、車輪スリップが元に戻りつつあること」が判定される。これは、車輪スリップが減少され始めると、制御ゲインKcが第1所定値kmから増加されても、制御干渉が生じ難いことに基づく。
回復条件に応じた可否判定では、作動フラグFmに基づいて、「4つの車輪WHの制御モードが全て、増加モードMzの状態(4輪増加モード状態)にあり、その状態の継続時間Tkが所定時間tk以上であるか、否か」が判定される。ここで、所定時間(しきい値)tkは、可否判定のための、予め設定された定数(所定値)である。該条件が、回復条件の「基準条件」と称呼される。
基準条件では、4つの車輪WHのうちの少なくとも1つが、減少モードMgである場合(「Fm=0」の場合)には、回復条件は否定される。また、全ての車輪WHの増加モードMzの場合(「Fm=1」の場合)であっても、4輪増加モード状態の継続時間Tkが、所定時間tk未満である場合には、回復条件は否定される。継続時間Tkは、初めて4輪増加モード状態が判定された時点(該当する演算周期であり、作動フラグFmが「0」から「1」に遷移された時点)を起点に、タイマによってカウントされる。継続時間Tkが所定時間tkに達する前に、4輪増加モード状態が否定されると(即ち、作動フラグFmが、「1」から「0」に遷移されると)、継続時間Tkは、「0」に戻される。
回復条件の可否判定において、上記の基準条件に加えて、以下の条件が考慮される。
条件1:路面摩擦係数Muが所定係数mu以上であるか、否か。ここで、所定係数(所定値)muは、判定のための予め設定された定数である。
上記基準条件が満足される場合、摩擦係数Muが所定値mu以上であれば、回復条件は肯定される。しかし、基準条件が満足されても、摩擦係数Muが所定値mu未満である場合には、回復条件は否定される。これは、路面摩擦係数Muが低い場合には、車輪WHのグリップが回復されつつある状況でも、再度、グリップが失われる蓋然性が高いことに因る。摩擦係数Muは、アンチスキッド制御ブロックACにて演算されたもの以外に、他のコントローラで演算された摩擦係数Muが利用され得る。
条件2:目標減速度Gtが、所定減速度gt以上であるか、否か。ここで、所定減速度gtは、判定のための予め設定された定数である。
上記基準条件が満足される場合、目標減速度Gtが所定減速度gt以上であれば、回復条件は肯定される。しかし、基準条件が満足されても、目標減速度Gtが所定減速度gt未満である場合には、回復条件は否定される。目標減速度Gtが相対的に小さい場合には、然程、減速度フィードバック制御の効きが必要とされ難いことに因る。この場合、制御ゲインKcが第1所定値kmのままにされることによって、制御干渉が確実に抑制され得る。
条件1、及び、条件2のうちの少なくとも1つが省略され得る。つまり、ステップS170の回復条件として、「基準条件のみ」、「基準条件+条件1」、「基準条件+条件2」、及び、「基準条件+条件1+条件2」の4つの条件のうちで、何れか1つが採用される。
通常の自動制動制御では、「Kc=ko」に設定され、実減速度Geが、目標減速度Gtに近付くように、減速度フィードバック制御が実行される。アンチスキッド制御が実行されると、「Kc=km(<ko)」に設定され、制御ゲインKcが減少される(又は、「0」にされる)。これにより、減速度フィードバック制御の効きが減少される(又は、減速度フィードバック制御が禁止される)。結果、アンチスキッド制御と自動制動制御との干渉が抑制され得る。
更に、車輪WHの増加モードMzに基づいて、回復条件が設定される。回復条件が満足されると、制御ゲインKcが、第1所定値kmから第2所定値kn(≦ko)に増加される。これにより、減速度フィードバック制御の効きが増加され、自動制動制御の制御精度が向上される(又は、元に戻される)。なお、フィードバック制御の効きを滑らかに変化(増加)させるため、回復条件が初めて満足された時点(演算周期)から、制御ゲインKcが、第1所定値kmから第2所定値knに向けて、時間変化量が所定値に制限されて、徐々に増加され得る。
<制動制御装置SCの第2の実施形態>
図6の概略図を参照して、車両の制動制御装置SCの第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、制動制御装置SCは、所謂、ブレーキ・バイ・ワイヤ型である。アンチスキッド制御は、流体ユニットHUの電磁弁VI、VOによって達成されるが、自動制動制御は、調圧ユニットYCの電気モータ(調圧モータ)MEによって達成される。
上述したように、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号末尾の添字「i」~「l」では、「i」が右前輪、「j」が左前輪、「k」が右後輪、「l」が左後輪を示す。記号末尾の添字「i」~「l」は、省略され得る。この場合、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。加えて、各種記号末尾の添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、「1」が第1系統、「2」が第2系統を示す。記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。この場合、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。
制動制御装置SCは、マスタシリンダ弁VM、シミュレータ弁VS、シミュレータSS、マスタシリンダ液圧センサPM、流体ユニットHU、調圧ユニットYC、及び、調整液圧センサPFを含んで構成される。
マスタシリンダCMに接続されるマスタシリンダ流体路HMには、マスタシリンダ弁VMが設けられる。マスタシリンダ弁VMは、常開型のオン・オフ電磁弁である。制動時には、マスタシリンダ弁VMが閉位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの接続が遮断される。
制動時に、制動操作部材BPに操作力Fpを発生するよう、シミュレータSSが設けられる。また、制動制御装置SCが不調の場合に、シミュレータSSに制動液BFが消費されないよう、シミュレータ弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、常閉型のオン・オフ電磁弁である。制動時には、シミュレータ弁VSが開位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとが連通状態にされる。マスタシリンダCMの液圧Pmを検出するよう、マスタシリンダ液圧センサPMが設けられる。マスタシリンダ液圧センサPMは、制動操作量センサBAの1つである。マスタシリンダ流体路HMは、第1の実施形態と同様の、流体ユニットHUに接続される。流体ユニットHUには、インレット弁VI、アウトレット弁VO、及び、電気モータMLが含まれる。これらによって、アンチスキッド制御が実行される。
運転者によるマスタシリンダCMからの液圧Pmに代えて、調整液圧Pf(=Pw)を調整するよう、調圧ユニットYCが設けられる。調圧ユニットYCは、所謂、「電動シリンダ」と称呼される。調圧ユニットYCは、調圧用の電気モータME、減速機GN、回転・直動変換機構(ねじ機構)NJ、押圧部材PO、調圧シリンダCE、調圧ピストンPE、及び、戻しばねSEにて構成される。
電気モータ(調圧モータ)MEは、調圧ユニットYCが制動液圧Pwを調整(増減)するための動力源である。調圧モータMEは、コントローラECUによって駆動される。例えば、調圧モータMEとして、ブラシレスモータが採用され得る。
減速機GNは、小径歯車SK、及び、大径歯車DKにて構成される。減速機GNによって、電気モータMEの回転動力が減速されて、ねじ機構NJに伝達される。ねじ機構NJにて、減速機GNの回転動力が、押圧部材POの直線動力に変換される。押圧部材POにはナット部材NTが固定される。ねじ機構NJのボルト部材BTが大径歯車DKと同軸に固定される。ナット部材NTの回転運動はキー部材KYによって拘束されるため、大径歯車DKの回転によって、ボルト部材BTと螺合するナット部材NTが大径歯車DKの回転軸の方向に移動される。押圧部材POによって、調圧ピストンPEが移動される。調圧ピストンPEは、調圧シリンダCEの内孔に挿入され、ピストンとシリンダとの組み合わせが形成されている。調圧シリンダCEと調圧ピストンPEとによって区画される液圧室(調圧シリンダ室)Reが形成される。調圧シリンダ室Re内には、戻しばね(圧縮ばね)SEが設けられる。調圧シリンダCEの内部にストッパ部Sqが設けられ、調圧モータMEの出力が「0」の場合には、戻しばねSEによって調圧ピストンPEがストッパ部Sqに当接する位置にまで押し付けられる。
調圧シリンダ室Reは、調圧流体路HEに接続される。調圧流体路HEは、マスタシリンダ弁VMの下流部にて、マスタシリンダ流体路HMに接続される。調圧ピストンPEが中心軸方向に移動されることによって、調圧シリンダ室Reの体積が変化し、調整液圧Pfが調整される。具体的には、調圧モータMEが正転方向に回転駆動されると、調圧ピストンPEが、前進方向Heに移動され、調整液圧Pfが増加される。一方、調圧モータMEが逆転方向に回転駆動されると、調圧ピストンPEが、後退方向Hgに移動され、調整液圧Pfが減少される。調圧モータMEへの通電量が調整されることにより、調整液圧Pfが調整(増減)される。調整液圧Pfを検出するよう、調圧流体路HEには、調整液圧センサPFが設けられる。
調整液圧Pfの増減によって、制動液圧Pwが増減され、車輪WHの制動トルクTqが増減(調整)される。調整液圧Pfが増加されると、摩擦材が回転部材KTに押圧される力が増加され、制動トルクTqが増加される。結果、車輪WHの制動力が増加される。一方、調整液圧Pfが減少されると、摩擦材の回転部材KTに対する押圧力が減少され、制動トルクTqが減少される。結果、車輪WHの制動力が減少される。
第2の実施形態では、自動制動制御は、調圧ユニットYCによって実現される。つまり、自動制動制御には、流体ユニットHUが利用されない。従って、第2の実施形態では、調圧ユニットYCの出力液圧Pfが、減速度フィードバック制御の直接の制御対象にされる。この場合、自動制動制御ブロックJCの第1処理例と同様に、減速度偏差hG、及び、制御ゲインKcを含む演算マップに基づいて、調整液圧Pfの目標値が決定される。そして、調整液圧Pf(調整液圧センサPFの検出値)が、該目標値に一致するよう、フィードバック制御が実行される。
電気モータMEへの通電量(供給電流)と、電気モータMEの出力とは概ね比例する。このため、電気モータMEへの通電量が、減速度フィードバック制御の直接の制御対象にされ得る。この場合、自動制動制御ブロックJCの第2処理例と同様に、減速度偏差hG、及び、制御ゲインKcを含む演算マップに基づいて、電気モータMEへの目標通電量が決定される。そして、電気モータMEの実際の通電量が、該目標通電量に一致するよう、フィードバック制御が実行される。
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を奏する。作動フラグFa、Fm、摩擦係数Mu、目標減速度Gtに基づいて、制御ゲインKcが、適宜、調整される。これにより、自動制動制御をアンチスキッド制御との相互干渉が抑制され得る。加えて、減速スリップが回復に向かっている場合には、回復条件に基づいて、アンチスキッド制御が終了される前に、制御ゲインKcが増加される。これにより、フィードバック制御の効きが適切に調整され、自動制動制御の制御精度が確保され得る。
<制動制御装置SCの第3の実施形態>
図7を参照して、車両の制動制御装置SCの第3の実施形態について説明する。第1、第2の実施形態では、制動トルクTqの調整に、制動液圧Pwが利用された。第3の実施形態では、制動トルクTqの調整に、流体は利用されない。従って、アンチスキッド制御、及び、自動制動制御は、電気モータMTの回転方向、及び、出力が調整されることによって実現される。該構成は、所謂、「EMB(電気機械式気ブレーキ)」と称呼される。
第3の実施形態に係る制動制御装置SCは、電気モータMT、減速機GN、ねじ機構NJ、押圧ピストンPN、及び、押圧力センサFBにて構成される。制動制御装置SCは、ブレーキキャリパCP内に形成されている。第1、第2の実施形態におけるホイールシリンダCWに代えて、制動制御装置SCが設けられている。
電気モータ(車輪モータ)MTは、摩擦部材MSが回転部材KTを押圧する力Fbを調整(増減)するための動力源である。電気モータMTは、コントローラECUによって駆動される。例えば、電気モータMTとして、ブラシレスモータが採用され得る。
減速機GNは、小径歯車SK、及び、大径歯車DKにて構成される。減速機GNによって、電気モータMTの回転動力が減速されて、ねじ機構NJに伝達される。ねじ機構NJにて、減速機GNの回転動力が、押圧ピストンPNの直線動力に変換される。押圧ピストンPNにはナット部材NTが固定される。ねじ機構NJのボルト部材BTが大径歯車DKと同軸に固定される。ナット部材NTの回転運動はキー部材KYによって拘束されるため、大径歯車DKの回転によって、ボルト部材BTと螺合するナット部材NTが大径歯車DKの回転軸の方向に移動され、押圧ピストンPNと回転部材KTとの相対距離が調整される。
押圧ピストンPNには、摩擦部材MSが固定される。電気モータMTの回転方向、及び、出力の調整によって、制動トルクTqが調整される。電気モータMTが正転方向に回転駆動されると、押圧ピストンPNが、前進方向Heに移動され、摩擦部材MSが回転部材KTを押圧する力Fbが増加される。押圧力Fbの増加によって、制動トルクTqが増加され、車輪WHの制動力が増加される。一方、電気モータMTが逆転方向に回転駆動されると、押圧ピストンPNが、後退方向Hgに移動され、押圧力Fbが減少される。押圧力Fbの減少によって、制動トルクTqが減少され、車輪WHの制動力が減少される。制動制御装置SCには、押圧力Fbを検出するよう、押圧力センサFBが設けられる。
押圧力Fbが、減速度フィードバック制御の直接の制御対象にされる。この場合、減速度偏差hG、及び、制御ゲインKcを含む演算マップに基づいて、押圧力Fbに対応する目標値(目標押圧力)が決定される。そして、押圧力Fb(押圧力センサFBの検出値)が、該目標押圧力に一致するよう、フィードバック制御が実行される。
電気モータMTへの通電量(供給電流)と、電気モータMTの出力とは概ね比例する。このため、電気モータMTへの通電量が、減速度フィードバック制御の直接の制御対象にされ得る。この場合、減速度偏差hG、及び、制御ゲインKcを含む演算マップに基づいて、電気モータMTへの目標通電量が決定される。そして、電気モータMTの実際の通電量が、該目標通電量に一致するよう、フィードバック制御が実行される。
第3の実施形態でも、第1、第2の実施形態と同様の効果を奏する。制御ゲインKcが、適宜、調整されることにより、制御干渉が抑制され得る。車輪グリップが回復傾向にある場合には、アンチスキッド制御が終了される前に、制御ゲインKcが増加されることによって、フィードバック制御の効きが適切に調整され得る。
<作用・効果>
以下、本発明に係る制動制御装置SCの作用・効果についてまとめる。
制動制御装置SCによって、車輪WHに制動トルクTqが付与される。制動制御装置SCのコントローラECUでは、車両前方の物体と車両との相対距離Obに応じて決定された減速度目標値Gtに基づいて、制動トルクTqを調整する自動制動制御が実行される。自動制動制御では、減速度目標値Gtに対応した減速度実際値Geが演算される。そして、減速度目標値Gt、及び、減速度実際値Geに基づいて、減速度実際値Geを減速度目標値Gtに近付けるよう、フィードバック制御(演算ブロックPH、IGの処理)が実行される。つまり、車両の減速度に係るフィードバック制御によって、減速度目標値Gtが達成されるよう、制動トルクTqが調整される。
また、コントローラECUでは、車輪WHの速度Vwに基づいて、制動トルクTqを調整して、車輪WHの過大なスリップSwを抑制するアンチスキッド制御が実行される。アンチスキッド制御が実行される場合(即ち、「Fa=1」の場合)には、上記のフィードバック制御の制御ゲインKcが減少される。例えば、アンチスキッド制御が実行される場合には、制御ゲインKcが「0」に調節され、フィードバック制御の実行が禁止される。つまり、自動制動制御がオープンループ制御にされる。自動制動制御では、制御ゲインKcによって、フィードバック制御の効きが調整される。アンチスキッド制御の実行中には、制御ゲインKcが、初期値koから第1所定値kmに減少され、その効きが弱められる。このため、2つの制御の相互干渉が抑制され得る。
コントローラECUでは、アンチスキッド制御において、速度Vwに基づいて、制動トルクTqを減少する減少モードMg、及び、制動トルクTqを増加する増加モードMzのうちの何れか一方が決定される。フィードバック制御の制御ゲインKcが減少されている状況で、車輪WHの全てについて増加モードMzが決定され続ける時間Tkがしきい時間tkを超過した時点で、制御ゲインKcが増加される。例えば、制御ゲインKcは、アンチスキッド制御の非実行時の値(初期値ko)に戻される。上記条件(回復条件)が満足される場合には、車輪グリップは回復傾向にあり、制御干渉は生じ難い。このため、制御ゲインKcが増加され、自動制動制御の効きが強められ得る。
「路面摩擦係数Muが所定値mu以上であるか、否か」が判定され、「Mu≧mu」の場合には、制御ゲインKcの増加は許可される。一方、「Mu<mu」の場合には、制御ゲインKcの増加は禁止される。路面摩擦係数Muが低い場合には、車輪グリップが失われる可能性が高く、制御ゲインKcの増減が繰り返されることがあり得る。制御の煩雑さを回避するため、摩擦係数Muが所定値mu以上の場合に限って、制御ゲインKcが増加され得る。
「目標減速度Gtが、所定加速度gt以上であるか、否か」が判定され、「Gt≧gt」の場合には、制御ゲインKcの増加は許可される。一方、「Gt<gt」の場合には、制御ゲインKcの増加は禁止される。目標減速度Gtが小である場合には、然程、減速度フィードバック制御の効きが必要とされない。この場合、制御の煩雑さが考慮され、制御ゲインKcが、第1所定値kmに減少されたままにされ、増加されない。
制御ゲインKcが減少される場合、及び、制御ゲインKcが増加される場合のうちの少なくとも一方において、制御ゲインKcが緩やかに変化(修正)され得る。例えば、制御ゲインKcの減少勾配が、予め設定された所定勾配(所定値)kgに制限される。また、制御ゲインKcの増加勾配が、予め設定された所定勾配(所定値)kzに制限される。これにより、自動制動制御のフィードバック制御において、円滑なゲイン調節が行われ得る。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果を奏する。
上記実施形態では、リニア型の調圧弁UPには、通電量に応じて開弁量が調整されるものが採用された。例えば、調圧弁UPは、オン・オフ弁(2位置切替型の電磁弁)ではあるが、弁の開閉がデューティ比で制御され、液圧が線形に制御されるものでもよい。
上記実施形態では、運転支援コントローラECJから制動コントローラECUに、加速度の次元で要求値(要求減速度Gr)が送信された。これに代えて、速度の次元で要求値が送信され得る。具体的には、運転支援コントローラECJにて、要求速度Vrが演算され、これが、通信バスBSを介して送信される。制動コントローラECU内にて、要求速度Vrが加速度の諸元に変換されて、要求減速度Grが演算され得る。
運転支援コントローラECJと制動コントローラECUとが一体化され得る。この場合、コントローラECJの処理は、コントローラECUに含まれ、相対距離センサOBは、コントローラECUに接続される。
上記実施形態では、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示された。この場合、摩擦部材はブレーキパッドであり、回転部材はブレーキディスクである。ディスク型制動装置に代えて、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)が採用され得る。ドラムブレーキの場合、キャリパに代えて、ブレーキドラムが採用される。また、摩擦部材はブレーキシューであり、回転部材はブレーキドラムである。
上記実施形態では、2系統流体路として、ダイアゴナル型流体路が例示された。これに代えて、前後型(「H型」ともいう)の構成が採用され得る。前後型流体路では、第1マスタシリンダ流体路HM1(即ち、第1系統)には、前輪ホイールシリンダCWi、CWjが流体接続される。また、第2マスタシリンダ流体路HM2(即ち、第2系統)には、後輪ホイールシリンダCWk、CWlに流体接続される。
BP…制動操作部材、BF…制動液、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、UP…調圧弁、VI…インレット弁、VO…アウトレット弁、ML…電気モータ(還流モータ)、ME…電気モータ(調圧モータ)、MT…電気モータ(車輪モータ)、QL…流体ポンプ、ECU…コントローラ、Kc…制御ゲイン。


Claims (1)

  1. 車両の車輪に制動トルクを付与する車両の制動制御装置であって、
    前記車両の前方の物体と前記車両との距離に応じた前記車両の減速度目標値に基づいて、前記制動トルクを調整する自動制動制御を実行するとともに、前記車輪の速度に基づいて、前記制動トルクを調整して、アンチスキッド制御を実行するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記減速度目標値に対応した減速度実際値を演算し、前記減速度目標値、及び、前記減速度実際値に基づいて、前記減速度実際値を前記減速度目標値に近付けるよう、フィードバック制御を実行し、前記アンチスキッド制御が実行される場合には、前記フィードバック制御の制御ゲインを減少するよう構成され、
    前記コントローラは、
    前記アンチスキッド制御において、前記速度に基づいて、前記制動トルクを減少する減少モード、及び、前記制動トルクを増加する増加モードのうちの何れか一方を決定し、前記制御ゲインを減少している場合に、前記車輪の全てについて前記増加モードが決定される状態が所定時間に亘って継続された時点で、前記制御ゲインを増加する、車両の制動制御装置。

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