JP2020111116A - 車両の自動制動装置 - Google Patents

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千裕 新田
鈴木 孝治
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鈴木  孝治
将啓 杉山
Masahiro Sugiyama
将啓 杉山
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Abstract

【課題】 前後方式の制動系統を備える車両の自動制動装置において、運転者への違和感を低減し、車両偏向が良好に抑制され得るものを提供することである。【解決手段】 自動制動装置は、2つの制動系統として前後方式を採用する車両に備えられる。自動制動装置は、車両の前方の物体と車両との距離に応じた要求減速度に基づいて、ホイールシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧から増加する自動制動制御を実行するものであって、「前輪ホイールシリンダに接続された前輪制動系統の前輪液圧を調整する前輪調圧弁」と、「後輪ホイールシリンダに接続された後輪制動系統の後輪液圧を調整する後輪調圧弁」と、「要求減速度に基づいて、前輪、後輪調圧弁を制御することによって、前輪、後輪液圧を調整するコントローラ」と、を備える。コントローラは、自動制動制御の開始時に、前輪液圧よりも後輪液圧が小さくなるよう調整する。【選択図】 図3

Description

本開示は、車両の自動制動装置に関する。
特許文献1には、「障害物との衝突の可能性がある場合に、車輪の制動力配分を好適に調整しつつ制動力を最大限に確保する」ことを目的に、「自車両が障害物と衝突する可能性があるか否かを判定する判定部と、前記判定部により衝突の可能性があると判定された場合に、各車輪に作用するブレーキ液圧を増大させて前記車輪を制動する自動制動制御を実行する自動制動制御部と、を備えた制動力制御装置であって、前記ブレーキ液圧を保持することにより前記車輪の制動力配分を制御する制動力配分制御部を備え、前記制動力配分制御部は、前記判定部により衝突の可能性があると判定されている場合、前記判定部により衝突の可能性がないと判定されている場合と比較して、前記ブレーキ液圧を大きな値に保持するよう、前記制動力配分を制御する。前記制動力配分制御部は、前記判定部により衝突の可能性があると判定されている場合、前記判定部により衝突の可能性がないと判定されている場合と比較して、後輪のブレーキ液圧を大きな値に保持するよう、前記制動力配分を制御する」ことが記載されている。
特許文献2には、「自動ブレーキ制御時の車両の姿勢安定性を向上する」ことを目的に、「運転者のブレーキ操作によらず、自動的に車両の車輪に制動力を発生させる自動ブレーキ制御を行うブレーキ装置であって、マスタシリンダから左右前輪の各ホイールシリンダにそれぞれ液圧を伝達する第1及び第2のブレーキ液圧回路と、前記ブレーキ液圧回路に設けられ、前記各ホイールシリンダに供給される液圧を個別に調節可能なブレーキアクチュエータと、前記ブレーキアクチュエータを制御して、前記各前輪の制動力を個別に制御するブレーキ制御部と、前記車両のヨー方向の挙動を検出する挙動検出センサとを備え、前記ブレーキアクチュエータは、自動ブレーキ制御時に前記各ブレーキ液圧回路の液圧を加圧するポンプと、前記各ブレーキ液圧回路の液圧を個別に調節する調圧弁とを有し、前記ブレーキ制御部は、自動ブレーキ制御時に、前記挙動検出センサが検出したヨー方向の挙動に基づいて、前記各前輪のうち制動力が低い方のホイールシリンダに供給される液圧を増圧するように前記調圧弁を制御する」ことが記載されている。
特許文献1の装置では、自車両が障害物と衝突する可能性があるか否かが判定され、衝突の可能性があると判定された場合に、その可能性がないと判定された場合と比較して、後輪の制動液圧が大きな値に保持されるような制動力配分が行われる。即ち、制動力の前後配分が後輪寄りにされ、後輪制動力が増大される。
ところで、車輪(タイヤ)においては、制動力と横力との間には、トレードオフの関係が存在する。特許文献1の装置のように、後輪制動力が増大されると、車両が偏向した結果、後輪に横滑り角が発生した場合に、後輪横力の発生が小さくなる。つまり、後輪の横力によって、車両偏向を抑制する方向のヨーモーメント(「安定化モーメント」ともいう)が発生されるが、その発生が小さいため、車両の偏向が収束され難い。
特許文献2の装置のように、2系統のブレーキ液圧回路(制動系統)として、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)が採用される車両では、調圧弁の精度ばらつき等によって、左右前輪の制動力に差が生じ、車両偏向が生じることがある。特許文献2の装置では、この車両偏向を抑制するため、自動ブレーキ制御時に、ヨー方向の挙動に基づいて、制動力が低い方のホイールシリンダに供給される液圧が増圧されるように調圧弁が制御される。しかしながら、特許文献2の装置では、実際にヨー挙動が生じた後に液圧調整が開始されるため、運転者は、この際に発生する車両のヨー挙動変化に対して違和を感じる場合が生じ得る。
また、自動ブレーキ制御(自動制動制御)の実行中の車両偏向は、ダイアゴナル方式の制動配管が採用される車両だけでなく、前後方式(「II方式」ともいう)の制動配管が採用される車両でも発生し得る。前後方式(前後型)制動系統では、前輪制動系統の液圧が、一方側の調圧弁で調整され、後輪系統の液圧が他方側の調圧弁で制御される。従って、調圧弁のばらつきに起因した制動力の左右差によっては、車両偏向は生じない。例えば、前後型制動系統の車両では、その偏向は、車両の重心位置の偏りによって発生する。トラック、商用バン等では、車両に積載された積荷が片荷である場合に、自動制動制御の実行中に、車両偏向が生じ得る。ここで、「片荷」とは、車両に積載された積荷が車幅方向に偏っている状態である。
上述した理由から、自動制動制御を実行する自動制動装置では、運転者が違和を感じることなく、車両偏向が好適に抑制され得るものが望まれている。
特開2018−062273号 特開2017−149378号
本発明の目的は、前後方式の制動系統を備える車両の自動制動装置において、運転者への違和感を低減し、車両偏向が良好に抑制され得るものを提供することである。
車両の自動制動装置は、2つの制動系統として前後方式を採用する車両に備えられる。車両の自動制動装置は、前記車両の前方の物体と前記車両との距離(Ob)に応じた要求減速度(Gs)に基づいて、ホイールシリンダ(CW)の液圧(Pw)をマスタシリンダ(CM)の液圧(Pm)から増加する自動制動制御を実行するものであって、「前記2つの制動系統のうちで前輪ホイールシリンダ(CWi、CWj)に接続された前輪制動系統(Hf)の前輪液圧(Ppf)を調整する前輪調圧弁(UPf)」と、「前記2つの制動系統のうちで後輪ホイールシリンダ(CWk、CWl)に接続された後輪制動系統(Hr)の後輪液圧(Ppr)を調整する後輪調圧弁(UPr)」と、「前記要求減速度(Gs)に基づいて、前記前輪、後輪調圧弁(UPf、UPr)を制御することによって、前記前輪、後輪液圧(Ppf、Ppr)を調整するコントローラ(ECU)」と、を備える。
車両の自動制動装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧(Ppf)よりも前記後輪液圧(Ppr)が小さくなるよう調整する。また、前記コントローラ(ECU)は、前記自動制動制御の開始時からの経過時間(Tk)を演算し、前記経過時間(Tk)の増加に応じて、前記前輪液圧(Ppf)に対する前記後輪液圧(Ppr)の比率(Kr)を徐々に増加する。
車両の自動制動装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記要求減速度(Gs)に基づいて、急制動か否かを判定し、前記急制動が判定されない場合には、前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧(Ppf)、及び、前記後輪液圧(Ppr)が同じになるよう調整し、前記急制動が判定される場合には、前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧(Ppf)よりも前記後輪液圧(Ppr)が小さくなるよう調整する。
上記構成によれば、緊急的な自動制動制御の開始初期には、後輪調整液圧Pprが、前輪調整液圧Ppfよりも低くされ、制動力の前後配分が常用配分に比較して、前輪寄りにされる。このため、車両が偏向した場合であっても、後輪WHrの横力が十分に確保される。結果、車両の方向安定性が向上され、運転者への違和感が低減される。
車両の自動制動装置JSの実施形態を説明するための全体構成図である。 運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理を説明するための機能ブロック図である。 自動制動制御の第1例を説明するためのフロー図である。 自動制動制御の第1例の作動を説明するための時系列線図である。 自動制動制御の第2例を説明するためのフロー図である。 自動制動制御の第2例の作動を説明するための時系列線図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」〜「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」〜「l」は省略され得る。添字「i」〜「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
各種記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、車両の前後方向の車輪において、それが何れに関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪、「r」は後輪を示す。例えば、車輪において、前輪WHf、及び、後輪WHrと表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、その総称を表す。例えば、「WH」は、4つの各車輪を表す。
<車両の自動制動装置の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、車両の自動制動装置JSの実施形態について説明する。マスタシリンダCMは、マスタシリンダ流体路HM、及び、ホイールシリンダ流体路HWを介して、ホイールシリンダCWに接続されている。流体路は、自動制動装置JSの作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。流体路の内部には、制動液BFが満たされている。流体路において、マスタシリンダCMに近い側が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側が「下部」と称呼される。
車両には、2系統の流体路(即ち、2つの制動系統)が採用される。2つの制動系統のうちの前輪系統(前輪マスタシリンダ室Rmfに係る系統)は、右前輪、左前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)に接続される。また、2つの制動系統のうちの後輪系統(後輪マスタシリンダ室Rmrに係る系統)は、右後輪、左前輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)に接続される。車両の2つの制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用されている。
自動制動装置JSを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、マスタリザーバRV、マスタシリンダCM、及び、ブレーキブースタBBが備えられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwが調整され、車輪WHの制動トルクTqが調整され、車輪WHに制動力が発生される。
車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられ、その内部の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクTqが発生される。制動トルクTqによって、車輪WHに減速スリップが発生され、その結果、制動力が生じる。
マスタリザーバ(大気圧リザーバであり、単に、「リザーバ」ともいう)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド、クレビス(U字リンク)等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCMは、タンデム型であり、マスタピストンPLf、PLrによって、その内部が、前輪、後輪マスタシリンダ室Rmf、Rmrに分けられている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMのマスタシリンダ室Rmf、RmrとリザーバRVとは連通状態にある。マスタシリンダCMには、前輪、後輪マスタシリンダ流体路HMf、HMrが接続されている。制動操作部材BPが操作されると、2つのマスタピストンPLf、PLrが前進し、2つのマスタシリンダ室Rmf、Rmrは、リザーバRVから遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、制動液BFは、マスタシリンダCMから、前輪、後輪マスタシリンダ流体路HMf、HMrを介して、4つのホイールシリンダCWi〜CWlに向けて圧送される。
ブレーキブースタ(単に、「ブースタ」ともいう)BBによって、運転者による制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。ブースタBBとして、負圧式のものが採用される。負圧は、エンジン、又は、電動負圧ポンプにて形成される。ブースタBBとして、電気モータを駆動源とするものが採用されてもよい(例えば、電動ブースタ、アキュムレータ式ハイドロリックブースタ)。
車両の各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向(即ち、過大な減速スリップ)を抑制するアンチスキッド制御(アンチロックブレーキ制御)等の各輪独立の制動制御に利用される。
操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)には、操舵角Saを検出するように操舵角センサSAが備えられる。車両の車体には、ヨーレイト(ヨー角速度)Yrを検出するよう、ヨーレイトセンサYRが備えられる。また、車両の前後方向(進行方向)の加速度(前後加速度)Gx、及び、横方向(進行方向に直角な方向)の加速度(横加速度)Gyを検出するよう、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYが設けられる。これらの信号(Sa、Yr等)は、過大なオーバステア挙動、アンダステア挙動を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)等の車両運動制御に用いられる。
運転者による制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作量Baを検出するよう、制動操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するマスタシリンダ液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダ液圧Pm、操作変位Sp、及び、操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
上記の各センサ(VW等)によって検出された車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度(減速度)Gx、横加速度Gy、制動操作量Ba(Pm、Sp、Fp)等の信号は、制動コントローラECUに入力される。
車両には、障害物との衝突を回避、又は、衝突時の被害を軽減するよう、運転支援システムが備えられる。運転支援システムは、距離センサOB、及び、運転支援コントローラECJを含んで構成される。距離センサOBによって、自車両の前方に存在する物体(他車両、固定物、人、自転車、等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obが検出される。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が採用される。相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。運転支援コントローラECJでは、相対距離Obに基づいて、要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、車両が物体にぶつかることを回避するための、車両減速度の目標値である。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。
≪制動コントローラECU≫
自動制動装置JSは、制動コントローラECU、及び、流体ユニットHUにて構成される。制動コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。制動コントローラECUは、車載の通信バスBSを介して、信号(検出値、演算値等)を共有するよう、他のコントローラ(運転支援コントローラECJ等)と通信バスBSを通してネットワーク接続されている。例えば、制動コントローラECUにて車体速度Vxが演算され、それが、運転支援コントローラECJに送信される。一方、運転支援コントローラECJから、制動コントローラECUには、自動制動制御(障害物との衝突回避、又は、衝突被害の軽減を達成する制動制御)を実行するための要求減速度Gs(目標値)が送信される。制動コントローラECUでは、要求減速度Gsに基づいて自動制動制御が実行される。
制動コントローラECU(電子制御ユニット)によって、流体ユニットHUの電気モータML、及び、3種類の異なる電磁弁UP、VI、VOが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁UP、VI、VOを制御するための駆動信号Up、Vi、Voが演算される。同様に、電動ポンプDLの駆動源である電気モータMLを制御するための駆動信号Mlが演算される。
制動コントローラECUには、電磁弁UP、VI、VO、及び、電気モータMLを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMLを駆動するよう、スイッチング素子(MOS−FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mlに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMLの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁UP、VI、VOを駆動するよう、駆動信号Up、Vi、Voに基づいて、スイッチング素子によって、それらの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。なお、駆動回路DRには、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOの実際の通電量を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータML、及び、電磁弁UP、VI、VOへ供給される電流値(通電量)が検出される。
≪流体ユニットHU≫
流体ユニットHUは、前輪、後輪マスタシリンダ流体路HMf、HMrに接続される。流体ユニットHU内の部位Btf、Btr(分岐部)にて、2つのマスタシリンダ流体路HMf、HMrは、4つのホイールシリンダ流体路HWi〜HWlに分岐され、4つのホイールシリンダCWi〜CWlに接続される。ここで、右前輪、左前輪ホイールシリンダCWi、CWjに接続される制動系統が、「前輪制動系統Hf」と称呼される。また、右後輪、左後輪ホイールシリンダCWk、CWlに接続される制動系統が、「後輪制動系統Hr」と称呼される。
従って、前輪制動系統Hfにおいて、前輪マスタシリンダ流体路HMfは、前輪分岐部Btfにて、右前輪、左前輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWjに分岐される。右前輪、左前輪ホイールシリンダ流体路HWi、HWjには、右前輪、左前輪ホイールシリンダCWi、CWjが接続されている。同様に、後輪制動系統Hrにおいて、後輪マスタシリンダ流体路HMrは、後輪分岐部Btrにて、右後輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWk、HWlに分岐される。右後輪、左後輪ホイールシリンダ流体路HWk、HWlには、右後輪、左後輪ホイールシリンダCWk、CWlが接続されている。つまり、車両には、前輪制動系統Hf(=HMf+HWi、HWj)、及び、後輪制動系統Hr(=HMr+HWk、HWl)を有する、前後型(II型)の制動系統が採用されている。
流体ユニットHUは、調圧弁UP、電動ポンプDL、低圧リザーバRL、マスタシリンダ液圧センサPM、調整液圧センサPP、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
前輪、後輪調圧弁UPf、UPr(=UP)が、前輪、後輪マスタシリンダ流体路HMf、HMr(=HM)に設けられる。調圧弁UPとして、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)が採用される。調圧弁UPは、コントローラECUによって、前輪、後輪調圧弁駆動信号Upf、Upr(=Up)に基づいて制御される。ここで、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrとして、常開型の電磁弁が採用される。
電動ポンプDLは、1つの電気モータML、及び、2つの流体ポンプQLf、QLr(=QL)にて構成される。電気モータMLは、コントローラECUによって、駆動信号Mlに基づいて制御される。電気モータMLによって、前輪、後輪流体ポンプQLf、QLrが一体となって回転され、駆動される。前輪、後輪流体ポンプQLf、QLrによって、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrとマスタシリンダCMとの間(即ち、調圧弁UPの上部)に位置する、前輪、後輪吸込部Bsf、Bsrから制動液BFが汲み上げられる。汲み上げられた制動液BFは、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrの下部に位置する、前輪、後輪吐出部Btf、Btrに吐出される。ここで、電動ポンプDLは、一方向に限って回転される。前輪、後輪流体ポンプQLf、QLrの吸込み側には、前輪、後輪低圧リザーバRLf、RLr(=RL)が設けられる。
コントローラECUにて、自動制動制御の演算結果(例えば、目標液圧Pt)に基づいて、調圧弁UPの目標通電量が演算され、これに基づいて駆動信号Upが決定される。そして、駆動信号Upに応じて、調圧弁UPへの通電量(電流)が調整され、調圧弁UPの開弁量が調整される。
流体ポンプQLが駆動されると、「Bs→RL→QL→Bt→UP→Bs」の還流(循環する制動液BFの流れ)が形成される。調圧弁UPへの通電が行われず、常開型の調圧弁UPが全開状態である場合には、調圧弁UPの上部の液圧(即ち、マスタシリンダ液圧Pm)と、調圧弁UPの下部の実際の液圧Pp(「調整液圧」という)とは一致する。
常開型の前輪、後輪調圧弁UPf、UPrへの通電量が増加され、その開弁量が減少される。前輪、後輪調圧弁UPf、UPrによって、制動液BFの還流が絞られ、オリフィス効果によって、前輪、後輪調整液圧(実液圧)Ppf、Ppr(=Pp)(「前輪、後輪液圧」に相当)は、前輪、後輪マスタシリンダ液圧Pmf、Pmr(=Pm)から増加される(従って、「Pp>Pm」)。つまり、電動ポンプDL、及び、調圧弁UPによって、マスタシリンダ液圧Pmと調整液圧Ppとの間の差圧が調整される。電動ポンプDL、及び、調圧弁UPが制御されることによって、制動操作部材BPの操作に応じたマスタシリンダ液圧Pmよりも、調整液圧Pp(結果、ホイールシリンダCWの制動液圧Pw)が増加される。例えば、制動操作部材BPが操作されていない場合には、「Pm=0」であるが、自動制動制御によって、制動液圧Pwが「0」から上昇される。
調圧弁UPの上部(マスタシリンダCMに近い側)には、前輪、後輪マスタシリンダ液圧Pmf、Pmrを検出するよう、前輪、後輪マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。なお、基本的には、「Pmf=Pmr」であるため、前輪、後輪マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2のうちの一方は、省略可能である。
調圧弁UPの下部(ホイールシリンダCWに近い側)には、前輪、後輪調整液圧(前輪、後輪液圧)Ppf、Pprを検出するよう、前輪、後輪調整液圧センサPPf、PPrが設けられる。なお、調圧弁UPにおいて、通電量(供給電流)と差圧(マスタシリンダ液圧Pmと調整液圧Ppとの圧力差)との関係は既知であるため、前輪、後輪調整液圧センサPPf、PPrのうちの少なくとも1つは省略され得る。調圧弁UPへの通電量は、駆動信号Upによって調整されるため、例えば、2つの調整液圧センサPPが省略された場合には、駆動信号Up(即ち、調圧弁UPへの通電量)に基づいて、調整液圧Ppが推定され得る。
ホイールシリンダ流体路HWi〜HWlには、インレット弁VIi〜VIlが設けられる。ホイールシリンダ流体路HWは、インレット弁VIの下部(インレット弁VIとホイールシリンダCWとの間)にて、常閉型のアウトレット弁VOを介して、低圧リザーバRLに接続される。なお、ホイールシリンダ流体路HWと低圧リザーバRLとを接続する流体路が、「リザーバ流体路HR」と称呼される。従って、各アウトレット弁VOは、各リザーバ流体路HRに設けられる。
インレット弁VIとして、常開型のオン・オフ電磁弁が採用される。ここで、「オン・オフ電磁弁」は、開位置と閉位置の2つの位置を有する、2ポート2位置切替型の電磁弁である。つまり、常開型のインレット弁VIでは、開位置と閉位置とが選択的に実現される。インレット弁VIの開弁状態は、デューティ比Duに基づいて演算された駆動信号Viによって調整される。ここで、「デューティ比」は、一定の周期で連続するパルス列において、パルスのオン時間(通電時間)の比率である。インレット弁VIは、常開型であるため、非通電時(Du=0%)には全開状態にされ、フル通電時(Du=100%)には全閉状態にされる。そして、デューティ比Duが、0%〜100%の間で調整されることによって、インレット弁VIの開弁状態が調整され得る。
アウトレット弁VOとして、常閉型のオン・オフ電磁弁が採用される。従って、常閉型のアウトレット弁VOでも、開位置と閉位置とが選択的に実現される。インレット弁VIと同様に、アウトレット弁VOの開弁状態も、デューティ比Du(単位時間当たりの通電時間の割合)に基づいて演算された駆動信号Voによって調整される。アウトレット弁VOは、常閉型であるため、非通電時(Du=0%)には全閉状態にされ、フル通電時(Du=100%)には全開状態にされる。デューティ比Duが、0%〜100%の間で調整されることによって、VOの開弁状態(閉弁状態)が調整され得る。
インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにおいて、各車輪WHに係る構成は同じである。例えば、アンチスキッド制御において、ホイールシリンダCW内の液圧Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、低圧リザーバRLに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するため、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの低圧リザーバRLへの流出が阻止され、調圧弁UPによって調節された調整液圧Ppが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。更に、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが、共に閉位置にされる。
<運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理>
図2の機能ブロック図を参照して、運転支援コントローラECJ、及び、制動コントローラECUでの演算処理について説明する。運転支援コントローラECJによって、自動制動制御での要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。制動コントローラECUによって、要求減速度Gsに基づいて、各車輪WHの制動液圧Pw(即ち、制動トルクTq)を調整するよう、流体ユニットHU(ML、UP等)が制御される。
車両には、自車両が走行している先に存在する物体(他の車両、固定物、自転車、人、動物等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obを検出するよう、距離センサOBが設けられる。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が利用される。また、固定物が地図情報に記憶されている場合には、距離センサOBとして、ナビゲーションシステムが利用され得る。検出された相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。運転支援コントローラECJには、衝突余裕時間演算ブロックTC、車頭時間演算ブロックTW、及び、要求減速度演算ブロックGSが含まれる。
衝突余裕時間演算ブロックTCにて、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obに基づいて、衝突余裕時間Tcが演算される。衝突余裕時間Tcは、自車両と物体とが衝突に至るまでの時間である。具体的には、衝突余裕時間Tcは、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obが、障害物と自車両との速度差(即ち、相対速度)によって除算されることによって決定される。ここで、相対速度は、相対距離Obが時間微分されて演算される。
車頭時間演算ブロックTWにて、相対距離Ob、及び、車体速度Vxに基づいて、車頭時間Twが演算される。車頭時間Twは、前方の物体の現在位置に自車両が到達するまでの時間である。具体的には、車頭時間Twは、相対距離Obが、車体速度Vxにて除算されて演算される。なお、自車両前方の物体が静止している場合には、衝突余裕時間Tcと車頭時間Twとは一致する。車体速度Vxは、制動コントローラECUの車体速度演算ブロックVXから、通信バスBSを介して取得される。
要求減速度演算ブロックGSにて、衝突余裕時間Tc、及び、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、自車両と前方物体との衝突を回避するための自車両の減速度の目標値である。要求減速度Gsは、演算マップZgsに従って、衝突余裕時間Tcが大きいほど、小さくなるよう(又は、衝突余裕時間Tcが小さいほど、大きくなるよう)、演算される。また、要求減速度Gsは、車頭時間Twに基づいて調整され得る。車頭時間Twが大きいほど、要求減速度Gsが小さくなるよう(又は、車頭時間Twが小さいほど、要求減速度Gsが大きくなるよう)、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Gsが調整される。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに入力される。
車両の各車輪WHには、車輪WHの回転速度(車輪速度)Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが設けられる。検出された車輪速度Vwは、制動コントローラECUに入力される。制動コントローラECUには、車体速度演算ブロックVX、実減速度演算ブロックGA、自動制動制御ブロックJC、及び、駆動回路DRが含まれる。
車体速度演算ブロックVXにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。例えば、車両の加速時を含む非制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も遅いもの(最遅の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。また、制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も速いもの(最速の車輪速度)に基づいて、車体速度Vxが演算される。更に、車体速度Vxの演算において、その時間変化量において制限が設けられ得る。即ち、車体速度Vxの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。演算された車体速度Vxは、通信バスBSを介して、運転支援コントローラECJの車頭時間演算ブロックTWに送信される。
実減速度演算ブロックGAにて、車体速度Vxに基づいて、実減速度Gaが演算される。実減速度Gaは、実際に発生している車両の前後方向(進行方向)の減速度(負の加速度)である。具体的には、車体速度Vxが時間微分されて、実減速度Gaが演算される。また、実減速度Gaの演算に、前後加速度(減速度)Gxが採用される。この場合、実減速度Gaとして、前後加速度Gx(検出値)が、そのまま決定される。前後加速度Gxは、前後加速度センサGXによって検出されるが、前後加速度Gxには、走行路面の勾配が含まれる。このため、実減速度Gaの演算には、前後加速度Gxよりも、車体速度Vxの微分値の方が好ましい。また、ロバスト性を向上するよう、車体速度Vxの微分値(演算値)、及び、前後加速度Gx(検出値)に基づいて、実際の車両減速度Gaが演算されてもよい。
自動制動制御ブロックJCにて、要求減速度Gs、及び、実減速度Gaに基づいて、自動制動制御が実行される。先ず、自動制動制御ブロックJCでは、自動制動の要否が判定される。運転者が既に制動操作部材BPを操作しており、実減速度Gaが要求減速度Gsよりも大きい場合には、自動制動制御は不要である。一方、実減速度Gaが要求減速度Gsよりも小さい場合に、実減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、車両の減速度に基づくフィードバック制御(自動制動制御)が実行される。自動制動制御ブロックJCには、目標液圧演算ブロックPT、経過時間演算ブロックTK、及び、駆動信号演算ブロックDSを含んで構成される。
目標液圧演算ブロックPTにて、要求減速度Gs、及び、予め設定された演算マップZpf等に基づいて、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptr(=Pt)が演算される。前輪目標液圧Ptfは、前輪ホイールシリンダCWf(=CWi、CWj)に接続された前輪制動系統Hfの調整液圧Ppf(「前輪液圧」に相当)に対する目標値である。また、後輪目標液圧Ptrは、後輪ホイールシリンダCWr(=CWk、CWl)に接続された後輪制動系統Hrの調整液圧Ppr(「後輪液圧」に相当)に対する目標値である。車両諸元(質量、重心高等)、及び、制動装置の諸元(回転部材KTの制動有効半径、摩擦材の摩擦係数、ホイールシリンダCWの受圧面積等)は、既知であるため、上記演算マップZpf等では、これらの諸元を利用し、要求減速度Gsが大きいほど、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrが大きくなるように決定される。
経過時間演算ブロックTKにて、自動制動制御が開始された時点からの経過時間Tkが演算される。経過時間Tkは、後述するように、自動制動制御が実行される際に、車両の偏向を未然に抑制できるよう、調整液圧(結果、制動力)の前後配分を調整するために用いられる。
駆動信号演算ブロックDSでは、モータ駆動信号Ml、調圧弁駆動信号Up、及び、インレット弁、アウトレット弁駆動信号Vi、Voが演算される。例えば、目標液圧Ptに基づいて、電気モータMLの目標回転数が決定され、目標回転数が達成されるよう、電気モータMLへの通電量(電流値)を指示する駆動信号Ml(電流指示値)が演算される。また、電気モータMLは、予め設定された一定の回転数で駆動されてもよい。この場合には、モータ駆動信号Mlとして、電気モータMLの回転指示を行うための、オン信号が決定される。
駆動信号演算ブロックDSでは、目標液圧Ptに基づいて、調圧弁駆動信号Upが決定される。駆動信号Upは、調圧弁UPを制御するために、駆動回路DRに送信される信号である。調圧弁UPは、常開型のリニア電磁弁であり、非通電時には開弁量は全開状態である。そして、通電量(電流値)が増加されるに従って、開弁量が減少され、流体ポンプQLを含んで構成される還流路が絞られ、実際の液圧Pp(結果、制動液圧Pw)が増加される。調圧弁UPにおいて、供給通電量と調整液圧Ppとの関係は既知であるため、目標液圧Ptに基づいて、駆動信号Up(通電指示量)が演算される。つまり、目標液圧Ptが相対的に小さい場合には、通電指示値Upが小さく演算され、目標液圧Ptが増加するに従って、通電指示値Upが大きくなるように決定される。
加えて、駆動信号演算ブロックDSでは、自動制動制御が開始された時点からの経過時間Tkに基づいて、前輪目標液圧Ptfに対する後輪目標液圧Ptrの比率(後輪比率)Krが調整される。具体的には、自動制動制御の開始時には、後輪比率Krが「1」よりも小さい値(例えば、「0.5」以下)に決定される。そして、経過時間Tkの増加に応じて、後輪比率Krが徐々に増加され、最終的には、「1」にされる。つまり、調整液圧Ppは、目標液圧Ptに一致するよう制御されるため、自動制動制御の開始時には、前輪調整液圧Ppfよりも、後輪調整液圧Pprが小さくなるように調整される。そして、経過時間Tkの増加に伴って、前輪調整液圧Ppfに対する後輪調整液圧Pprの比率(後輪比率)Krが順次増加されていき、最終的には、前輪調整液圧Ppfと後輪調整液圧Pprとが一致される。ここで、前輪調整液圧Ppfと後輪調整液圧Pprとが同じである場合の制動力の前後配分が、「常用配分」と称呼される。常用配分は、自動制動制御が非作動であって、制動操作部材BPの操作による制動時における制動力の前後配分に相当する。
経過時間Tkに応じた後輪比率Krの調整によって、制御開始時点では、制動力の前後配分が常用配分に比較して前輪寄りにされ、車両偏向が発生しても十分な後輪横力が確保され、車両偏向を低減する安定化モーメントが発生される。結果、自動制動制御の開始初期段階での車両のふらつきが抑制され、方向安定性が確保され得る。そして、経過時間Tkの増加に伴い、後輪調整液圧Pprが緩やかに増加されるため、十分な車両減速度が確保され得る。
駆動回路DRでは、駆動信号Ml、Upに基づいて、スイッチング素子(パワー半導体デバイス)によって、電気モータML、及び、リニア電磁弁(調圧弁)UPの通電状態が制御される。駆動回路DRには、電気モータML、及び、調圧弁UPの実際の通電量(供給電流値)を検出する通電量センサ(電流センサ)が設けられ、供給電流値が、駆動信号Ml、Upに一致するよう、電流フィードバック制御が実行される。駆動回路DRでは、スイッチング素子によって、駆動信号Vi、Voによって、オン・オフ電磁弁VI、VOの通電状態が制御され、結果、それらの開弁状態(閉弁状態)が調整される。
<自動制動制御の第1処理例>
図3のフロー図を参照して、自動制動制御の第1の処理例について説明する。自動制動制御は、車両の前方の物体(障害物)と、車両との相対距離Obに応じた要求減速度Gsに基づいて、車両と障害物との衝突を回避等するよう、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)PwをマスタシリンダCMの液圧(マスタシリンダ液圧)Pm以上に増加するものである。特に、第1の処理例は、車両と障害物との衝突の蓋然性が高い場合(即ち、緊急時)にのみ、所定の減速度以上急制動を行うものである。例えば、車輪と路面との摩擦係数の上限に近い領域であって、常用制動(通常の制動時)よりも極めて高い減速度(0.7〜0.8G以上)での作動である。
ステップS110にて、各種信号が読み込まれる。具体的には、要求減速度Gs、前後加速度Gx(検出値)、及び、車体速度Vxが取得される。ステップS120にて、前後加速度(検出値)Gx、及び、車体速度Vxのうちの少なくとも1つに基づいて、実際に発生している車両前後方向の減速度Gaが演算される。
ステップS130にて、自動制動制御の要否が判定され、自動制動制御が必要な場合には、要求減速度Gsに基づいて目標液圧Ptが演算される。具体的には、自動制動制御の要否は、要求減速度Gsと実減速度Gaとの比較に基づいて判定される。「Gs≦Ga」であり、運転者によって十分な車両減速が行われている場合には、自動制動制御は不要であるため、処理は、ステップS110に戻される。一方、「Gs>Ga」である場合には、自動制動制御が必要であるため、処理は、ステップS140に進められる。ステップS140にて、自動制動制御が開始された演算周期(即ち、制御の開始時)からの経過時間Tkが演算される。
ステップS150にて、要求減速度Gs、及び、ブロックX150に示す演算マップZpfに基づいて、前輪目標液圧Ptfが決定される。前輪目標液圧Ptfは、実際の前輪調整液圧Ppf(前輪液圧)についての目標値である。前輪目標液圧Ptfは、予め設定された演算マップZpfに基づいて、要求減速度Gsが増加するほど、前輪目標液圧Ptfが、マスタシリンダ液圧Pmから増加するように演算される。例えば、制動操作部材BPが操作されていない場合には、「Pm=0」であるため、要求減速度Gsが「0」から増加するに従って、前輪目標液圧Ptfは、「0」から増加するように演算される。
ステップS160にて、経過時間Tk、及び、ブロックX160に示す演算マップZkrに基づいて、後輪比率Krが演算される。ここで、後輪比率Krは、前輪目標液圧Ptf(結果、前輪調整液圧Ppf)に対する後輪目標液圧Ptr(結果、後輪調整液圧Ppr)の比率である(即ち、「Kr=Ptr/Ptf=Ppr/Ppf」)。後輪比率Krは、演算マップZkrに従って、経過時間Tkが「0」から増加するに従って、所定比率kaから、「1」にまで徐々に増加するように演算される。所定比率kaは、予め設定された「1」未満の定数である。例えば、所定比率kaは、「0.5」以下であることが好適である。また、ブロックX160の破線で示す演算マップZksに基づいて、後輪比率Krが決定されてもよい。該演算マップZksでは、経過時間Tkが所定時間taまでは、後輪比率Krが所定比率kaに維持される。そして、経過時間Tkが所定時間taを超えると、経過時間Tkの増加に従って、後輪比率Krが、所定比率kaから、「1」にまで順次増加される。所定時間taは、予め設定された定数である。
ステップS160では、前輪目標液圧Ptf、及び、後輪比率Krに基づいて、後輪目標液圧Ptrが演算される。後輪目標液圧Ptrは、実際の後輪調整液圧Ppr(後輪液圧)についての目標値である。具体的には、前輪目標液圧Ptfに後輪比率Krが乗算されて、後輪目標液圧Ptrが演算される(即ち、「Ptr=Kr×Ptf」)。自動制動制御の開始時には、「Kr=ka(<1)」であるため、後輪目標液圧Ptrは、後輪目標液圧Ptrよりも小さい値として決定される。つまり、自動制動制御の開始初期段階では、制動力の前後配分は、「Ptf=Ptr(即ち、常用配分)」の場合に比較して、相対的に前輪寄りにされる。つまり、車両全体の制動力に対して、前輪制動力の寄与度が大きく、後輪制動力の寄与度が小さい。
ステップS170にて、電気モータMLが駆動される。例えば、電気モータMLは、その最大出力で、急速に回転数が上昇するように駆動される。これにより、調圧弁UP、及び、流体ポンプQLを含む制動液BFの還流(「QL→Bt→UP→Bs→RL→QL」で循環する制動液BFの流れ)が形成される。そして、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに基づいて、前輪、後輪調整液圧Ppf、Ppr(実際値、又は、推定値)が、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptr(目標値)に近づき、一致するよう、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrがフィードバック制御される。或いは、調整液圧センサPPが省略された構成では、調圧弁UPへの通電量に対する、調整液圧Ppとマスタシリンダ液圧Pmとの差圧の関係は既知であるため、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに応じた通電量が、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrに供給される。何れにせよ、目標液圧Ptに基づいて、駆動信号(通電指示信号)Upが決定され、調圧弁UPへの通電量が制御される。
前輪、後輪調圧弁UPf、UPrの制御によって、前輪、後輪液圧Ppf、Pprが調整される。調圧弁UPへの通電量の制御においては、実際の通電量(通電量センサによる検出値)が、目標通電量(駆動信号)Upに一致するよう、通電量フィードバック制御が行われ得る。更に、調圧弁UPへの通電量の制御において、実際の減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、減速度フィードバック制御が加えられてもよい。
<自動制動制御の第1処理例の作動>
車両は、前後方式の2つの制動系統を有している。自動制動装置JSによって、車両の前方の物体と前記車両との距離Obに応じた要求減速度Gsに基づいて、ホイールシリンダCWの液圧Pwが、マスタシリンダCWの液圧Pmから増加され、自動制動制御が達成される。自動制動装置JSは、「前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)に接続された前輪制動系統Hfの前輪液圧Ppfを調整する前輪調圧弁UPf」と、「後輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)に接続された後輪制動系統Hrの後輪液圧Pprを調整する後輪調圧弁UPr」と、「要求減速度Gsに基づいて、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrを制御することによって、前輪、後輪液圧Ppf、Pprを調整するコントローラECU」と、で構成される。そして、コントローラECUによって、自動制動制御の開始時に、後輪液圧Pprが、前輪液圧Ppfよりも小さくなるように調整される。
図4の時系列線図を参照して、自動制動制御の第1処理例の作動について説明する。線図では、運転者が制動操作部材BPを操作しておらず、自動制動装置JSによって、車両が自動的に急減速される状況が想定されている。時点t0以前では、自動制動制御は開始されておらず、「Gs=0」である。従って、目標液圧Ptは「0」であり、結果、調整液圧Ppも「0」である。
以下、図4(a)を参照して、ブロックX160の演算マップZkr(実線にて示す)に対応した作動について説明する。時点t0にて、自動制動制御が開始され、要求減速度Gsが減速度変化量dGにて増加される。自動制動制御が開始されると、電気モータMLが最大出力で駆動開始される。前輪目標液圧Ptfが、減速度変化量dGに対応した前輪増圧勾配dPfにて急増される。そして、前輪調圧弁UPfによって、前輪調整液圧Ppfが、前輪目標液圧Ptfに一致するよう制御される。なお、図4(a)では、前輪目標液圧Ptfと前輪調整液圧Ppfとは重なっている。
時点t0(制御の開始時)を起点にして、経過時間Tkの時間カウントが開始される(即ち、時点t0では、「Tk=0」)。このとき、後輪比率Krは、「1」未満の所定比率kaに決定される。後輪目標液圧Ptrが、前輪増圧勾配dPfよりも小さい後輪増圧勾配dPrにて増加される。そして、後輪調圧弁UPrによって、後輪調整液圧Pprが、後輪目標液圧Ptrに一致するよう制御される。同様に、図4(a)では、後輪目標液圧Ptrと後輪調整液圧Pprとは重なっている。
時点t0以降、後輪比率Krは経過時間Tkに従って徐々に増加される。そして、時点t2にて、経過時間Tkが所定時間txに達すると、後輪比率Krは「1」に決定される。これにより、「Ptf=Ptr」に演算され、制御の結果として、「Ppf=Ppr」が達成される。
車両の減速において、前輪WHi、WHj(=WHf)の制動力の寄与度は、後輪WHk、WHl(=WHr)の制動力の寄与度に比較して、格段に高い。これは、車両の減速に起因して、前輪WHfの荷重(垂直力)は増加し、後輪WHrの荷重が減少することに基づく。また、後輪WHrの制動力が過大になると、車両の方向安定性が損なわれ易いため、常用配分においても、前輪制動力が後輪制動力よりも大きくなるよう、前輪ホイールシリンダCWfの受圧面積が、後輪ホイールシリンダCWrの受圧面積よりも大きく設定されている。
自動制動装置JSでは、自動制動制御の開始初期(時点t0〜時点t2までの間)には、後輪調整液圧Pprが後輪調整液圧Pprよりも小さくなるように調整される。このため、常用配分(「Ppf=Ppr」での配分)に比べ、前輪制動力の寄与度が増加され、後輪制動力の寄与度が減少されている。従って、制御開始時点では、後輪調整液圧Ppr(結果、後輪制動液圧Pwk、Pwl)の増加勾配dPrが抑制されるとともに、後輪調整液圧Pprが低くされているため、車両が偏向した場合であっても、後輪WHrの十分な横力が発生し、安定化モーメントが確保される。結果、車両の方向安定性が向上され、車両のふらつき(偏向)に起因する運転者への違和感が解消される。
更に、自動制動装置JSでは、自動制動制御が開始された時点からの経過時間Tkに基づいて、後輪比率Krが徐々に増加される。これにより、後輪調整液圧Pprが、前輪調整液圧Ppfに向けて、順次増加され、最終的には、前輪、後輪調整液圧Ppf、Pprが一致し、常用配分とされる。結果、十分な車両減速度が確保され得る。以上で説明したように、自動制動装置JSでは、自動制動制御の開始初期段階おいては、車両偏向を抑制して違和感を低減しつつ、車両減速度が効率的に達成されるとともに、自動制動制御の継続に応じて、十分な車両減速度が確保され得る。
次に、図4(b)を参照して、ブロックX160の演算マップZks(破線にて示す)に対応した作動について説明する。ここでは、所定比率kaは「0」に設定されている。時点t0にて、自動制動制御が開始される。時点t0にて、電気モータMLが最大出力で駆動され、前輪目標液圧Ptfが、減速度変化量dGに対応した勾配dPfにて急増される。時点t0では、「Kr=ka=0」であるため、後輪目標液圧Ptrは「0」のままである。自動制動制御の開始時点t0から、経過時間Tkが積算され始める。経過時間Tkが所定時間taに達する時点t3にて、後輪比率Krが「0」から徐々に増加される。このため、後輪目標液圧Ptrが、勾配dPrにて緩やかに増加される。時点t4にて、後輪目標液圧Ptrが、前輪目標液圧Ptfに一致する。
前輪、後輪調圧弁UPf、UPrによって、前輪、後輪調整液圧Ppf、Pprが、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに一致するよう制御される。従って、図4(b)でも、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrと、前輪、後輪調整液圧Ppf、Pprとは重なっている。図4(b)の作動においても、図4(a)の作動と同様の効果を奏する。即ち、制御開始時点では、後輪調整液圧Pprが低い値に制限されるため(例えば、「Ppr=0(即ち、前輪制動力のみによる急制動)」にされるため)、後輪WHrの横力(即ち、安定化モーメント)が十分に確保される。車両の方向安定性が向上されるため、運転者への違和感が低減される。加えて経過時間Tkに基づいて、後輪比率Krが徐々に増加され、後輪調整液圧Pprが上昇されるため、十分な車両減速度が確保され得る。
<自動制動制御の第2処理例>
図5のフロー図を参照して、自動制動制御の第2の処理例について説明する。第1の処理例では、車両が障害物に衝突する可能性が極めて高い緊急時に限って作動する自動制動装置JSを想定していた。第2の処理例は、自動制動制御が、緊急時の自動制動に加え、運転者による常用制動(「サービスブレーキ」ともいう)をも支援する自動制動装置JSに対応している。従って、第2の処理例では、第1の処理例に対して、ステップS135(緊急時の判定)、及び、ステップS155の処理(常用制動の作動)が付加されている。なお、第1の処理例と同一記号の演算ステップは同じ処理を実行するため、以下、簡単に説明する。
ステップS110にて、各種信号(Gs等)が読み込まれる。ステップS120にて、実際の減速度Gaが演算される。ステップS130にて、自動制動制御の要否が判定される。運転者が制動操作部材BPを操作し、自身で車両減速を行っている場合(つまり、「Gs≦Ga」の場合)には、自動制動制御は実行されず、処理はステップS110に戻される。「Gs>Ga」である場合には、処理は、ステップS135に進められる。
ステップS135にて、「急制動が指示されたか、否か(つまり、自動制動制御の実行において、緊急制動であるか、常用制動であるか)」が判定される。例えば、該判定は、「減速度変化量dGが所定変化量dx以上、且つ、要求減速度Gsが所定減速度gx以上であるか、否か」に基づいて判定される。ここで、減速度変化量dGは、要求減速度Gsに基づいて、要求減速度Gsが時間微分されて演算される。また、所定変化量dx、及び、所定減速度gxは、判定用のしきい値であり、予め設定された定数である。「dG≧dx、且つ、Gs≧gx」であり、ステップS135が肯定される場合(緊急制動時)には、処理は、ステップS140に進められる。「dG<dx、又は、Gs<gx」であり、ステップS135が否定される場合(常用制動時)には、処理は、ステップS155に進められる。
ステップS140にて、緊急時の自動制動制御の開始時点からの経過時間Tkが演算される。ステップS150にて、要求減速度Gs、及び、ブロックX150の演算マップZpfに基づいて、要求減速度Gsが増加するほど、前輪目標液圧Ptfが、マスタシリンダ液圧Pmから増加するように演算される。ステップS160にて、経過時間Tk、及び、ブロックX160の演算マップZkrに基づいて、後輪比率Kr(前輪液圧に対する後輪液圧の比)が、経過時間Tkが「0」から増加するに従って、所定比率ka(「1」未満の定数で、例えば、「0.5」以下の所定値)から、「1」にまで徐々に増加するように演算される。或いは、経過時間Tk、及び、ブロックX160の演算マップZksに基づいて、経過時間Tkが所定時間taまでは、後輪比率Krが所定比率kaに維持され、経過時間Tkが所定時間taを超えると、経過時間Tkの増加に従って、後輪比率Krが所定比率kaから、「1」にまで順次増加される。そして、前輪目標液圧Ptf、及び、後輪比率Krに基づいて、後輪目標液圧Ptrが演算される。例えば、前輪目標液圧Ptfと後輪比率Krとが乗算されて、後輪目標液圧Ptrが演算される(即ち、「Ptr=Kr×Ptf」)。
ステップS155にて、ステップS150と同様の処理で、前輪目標液圧Ptfが、要求減速度Gs、及び、演算マップZpfに基づいて演算される。つまり、要求減速度Gsが増加するほど、前輪目標液圧Ptfが、マスタシリンダ液圧Pmから増加するように演算される。そして、後輪目標液圧Ptrが、前輪目標液圧Ptfと等しくなるように演算される(即ち、「Ptf=Ptr」)。ステップS155は、常用制動(サービスブレーキ)における処理であるが、該処理では、4つのホイールシリンダCWに、同じ制動液圧Pwが供給される。つまり、自動制動制御が実行されず、制動操作部材BPによる制動と同様のものである。なお、この状況では、制動力の前後配分は、制動装置の諸元(回転部材KTの制動有効半径、摩擦材の摩擦係数、ホイールシリンダCWの受圧面積等)によって定まり、「Kr=1」の状態である。従って、制動力の前後配分は、常用配分である。
ステップS170にて、電気モータMLが駆動される。緊急制動が判定されている場合には、電気モータMLは、その最大出力で、急速に回転数が上昇するように駆動される。電気モータMLの駆動によって、制動液BFの還流が形成され、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに基づいて、前輪、後輪調整液圧Ppf、Pprが、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに一致するよう、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrがフィードバック制御される。或いは、調整液圧センサPPが省略された構成では、前輪、後輪目標液圧Ptf、Ptrに応じた通電量が、前輪、後輪調圧弁UPf、UPrに供給される。つまり、目標液圧Ptに基づいて、駆動信号Upが決定され、調圧弁UPへの通電量が制御される。更に、調圧弁UPでは通電量フィードバック制御、車両の減速度フィードバック制御が行われ得る。
<自動制動制御の第2処理例の作動>
第2処理例の自動制動装置JSの構成は、第1の処理例のものと同様である。相違点は、制動コントローラECUによって、要求減速度Gsに基づいて「急制動か、否か」が判定されることである。そして、急制動が判定されない場合には、常用配分に相当する「Ptf=Ptr(結果、Ppf=Ppr)」が決定される。一方、急制動が判定される場合には、経過時間Tkに基づいて、制動力の前後配分が、常用配分よりも小さくなるように、後輪調整液圧Pprが、前輪調整液圧Ppfよりも小さくなるように調整される。
図6の時系列線図を参照して、自動制動制御の第2処理例の作動について説明する。第1処理例の場合と同様に、運転者によって制動操作部材BPが操作されていない状況(即ち、「Ba=0」の場合)が想定されている。
時点u0より前では、自動制動制御は開始されておらず、「Gs=0」である。従って、目標液圧Pt(結果、調整液圧Pp)は「0」である。時点u0にて、自動制動制御(先ずは、常用制動)が開始される。要求減速度Gsに応じて、電気モータMLの回転駆動が開始されるとともに、目標液圧Ptf、Ptrが「0」から増加される。調圧弁UPf、UPrへの通電が開始され、調整液圧Ppf、Pprが「0」から増加され始める。
時点u1にて、「減速度変化量dG(要求減速度Gsの微分値)が所定変化量dx以上」、且つ、「要求減速度Gsが所定減速度gx以上」の条件が満足されて、自動制動制御において緊急制動であることが判定される。緊急制動開始時点u1から、経過時間Tkの積算が開始される。時点u1にて、後輪比率Krが所定比率kaに決定される。時点u1以降、経過時間Tkに応じて、後輪調整液圧Pprが、前輪調整液圧Ppfよりも低くされる。前輪調整液圧Ppfは、減速度変化量dGに応じた前輪増圧勾配dPfにて増加するが、後輪調整液圧Pprは、前輪増圧勾配dPfよりも小さい後輪増圧勾配dPrで増加されるとともに、前輪調整液圧Ppfよりも低圧である。
時点u1以降、経過時間Tkの増加に応じて、後輪比率Krが所定比率kaから徐々に増加される。これにより、後輪調整液圧Pprが緩やかに増加される。経過時間Tkが所定時間txに達する時点u2にて、前輪調整液圧Ppfと後輪調整液圧Pprとが等しくなり、後輪制動液圧Pwk、Pwl(=Pwr)は、前輪制動液圧Pwi、Pwj(=Pwf)と一致する。
第2の処理例でも、後輪比率Krが所定時間に亘って、一定値に保持されてもよい(ブロックX160の演算マップZksを参照)。この場合、一点鎖線で示すように、後輪調整液圧Pprは、時点u1から時点u3まで、値pbに維持される。その後、後輪比率Krの増加に伴って、後輪調整液圧Pprが徐々に増加される。
第2の処理例でも、第1の処理例と同様の効果を奏する。自動制動制御は、常用制動領域で作動する場合には、制動力の前後配分は常用配分である。一方、自動制動制御の緊急制動(急制動)の開始初期には、後輪調整液圧Pprが、前輪調整液圧Ppfよりも低くされている。即ち、制動力配分が常用配分よりも前輪寄りに設定されているため(車両の減速において、常用配分の場合に比較して、前輪制動力の寄与度が増加され、後輪制動力の寄与度が減少されているため)、車両がふらついた場合であっても、後輪WHrに十分な横力が生じ、安定化モーメントが確保され得る。結果、車両の方向安定性が向上され、運転者への違和感が低減される。更に、緊急の自動制動制御が開始された時点からの経過時間Tkに基づいて、後輪比率Krが徐々に増加されるため、十分な車両減速度が確保され得る。
JS…自動制動装置、BP…制動操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、UPf、UPr(=UP)…前輪、後輪調圧弁、VI…インレット弁、VO…アウトレット弁、ECU…コントローラ、Ptf、Ptr(=Pt)…前輪、後輪目標液圧、Ppf、Ppr(=Pp)…前輪、後輪調整液圧(前輪、後輪液圧)、Pmf、Pmr(=Pm)…前輪、後輪マスタシリンダ液圧、Tk…経過時間、Kr…後輪比率。


Claims (3)

  1. 2つの制動系統として前後方式を採用する車両に備えられ、
    前記車両の前方の物体と前記車両との距離に応じた要求減速度に基づいて、ホイールシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧から増加する自動制動制御を実行する車両の自動制動装置であって、
    前記2つの制動系統のうちで前輪ホイールシリンダに接続された前輪制動系統の前輪液圧を調整する前輪調圧弁と、
    前記2つの制動系統のうちで後輪ホイールシリンダに接続された後輪制動系統の後輪液圧を調整する後輪調圧弁と、
    前記要求減速度に基づいて、前記前輪、後輪調圧弁を制御することによって、前記前輪、後輪液圧を調整するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧よりも前記後輪液圧が小さくなるよう調整する、車両の自動制動装置。
  2. 請求項1に記載の車両の自動制動装置において、
    前記コントローラは、
    前記自動制動制御の開始時からの経過時間を演算し、
    前記経過時間の増加に応じて、前記前輪液圧に対する前記後輪液圧の比率を徐々に増加する、車両の自動制動装置。
  3. 2つの制動系統として前後方式を採用する車両に備えられ、
    前記車両の前方の物体と前記車両との距離に応じた要求減速度に基づいて、ホイールシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧から増加する自動制動制御を実行する車両の自動制動装置であって、
    前記2つの制動系統のうちで前輪ホイールシリンダに接続された前輪制動系統の前輪液圧を調整する前輪調圧弁と、
    前記2つの制動系統のうちで後輪ホイールシリンダに接続された後輪制動系統の後輪液圧を調整する後輪調圧弁と、
    前記要求減速度に基づいて、前記前輪、後輪調圧弁を制御することによって、前記前輪、後輪液圧を調整するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記要求減速度に基づいて、急制動か否かを判定し、
    前記急制動が判定されない場合には、前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧、及び、前記後輪液圧が同じになるよう調整し、
    前記急制動が判定される場合には、前記自動制動制御の開始時に、前記前輪液圧よりも前記後輪液圧が小さくなるよう調整する、車両の自動制動装置。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH10264799A (ja) * 1997-01-23 1998-10-06 Denso Corp 車両用ブレーキ装置
WO2013088581A1 (ja) * 2011-12-16 2013-06-20 トヨタ自動車株式会社 車両用制動装置

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