JP7138338B2 - 高分子化合物の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
本実施形態に係る高分子化合物の製造方法は、下記式(1)で表される化合物(「第一モノマー」とも言う)と下記式(2)で表される化合物(「第二モノマー」とも言う)との直接アリール化反応によって下記式(3)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する方法である。本実施形態では、直接アリール化反応について説明したうえで、本実施形態に係る製造方法および当該製造方法において用いる製造装置について説明する。
本実施形態の製造方法M1について、図1を参照して説明する。図1は、製造方法M1の流れを示すフローチャートである。図1に示すように、製造方法M1は、収容工程であるステップS11と、加熱工程であるステップS12と、冷却工程であるステップS13とを含む。冷却工程は、通常、加熱工程と実質的に同時に行われる。
収容工程であるステップS11は、有機溶媒、第一モノマー、第二モノマー、触媒および添加物を含有する組成物をフラスコ槽(反応槽)に収容する工程である。本実施形態においては、有機溶媒として、市販品を購入した状態の有機溶媒をそのまま使用する。また、本実施形態においては、組成物を含むフラスコ槽の内部は、冷却装置を介してフラスコ槽の外部と連通している。このため、本実施形態においては、フラスコ槽内の気圧は、概ね大気圧に保つことができる。
加熱工程であるステップS12は、組成物を、外部と連通している反応槽内で加熱する工程である。この加熱工程により、組成物中の有機溶媒は、沸騰する。加熱工程での加熱は、有機溶媒の沸点に応じて適宜に制御される。たとえば、加熱工程は、有機溶媒の沸点よりも十分に高い温度の熱媒を用いて実行される。有機溶媒の沸点は、直接アリール化反応を進行させるのに十分に高い温度であればよい。
冷却工程であるステップS13は、加熱工程による有機溶媒の蒸気を冷却装置によって冷却して有機溶媒を組成物に還流させる工程である。冷却装置には、蒸気の凝集液を組成物(反応槽)に戻す通常の冷却機器を用いることができる。
本実施形態の製造方法は、本実施形態の効果が得られる範囲において、前述した加熱工程および冷却工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。このような他の工程の例には、前述した収容工程のほか、粗生成物を洗浄する洗浄工程、および、粗生成物を精製する精製工程、が含まれる。これらの工程は、公知の技術を利用して行うことが可能である。
上述した製造方法M1において用いる製造装置の一例である製造装置1について、図2を参照して説明する。図2は、製造装置1の構成を示す模式図である。
本実施形態の製造装置は、反応系内の圧力を調整するための圧力調整部をさらに有していてもよい。圧力調整部は、たとえば、連通部に接続され、反応槽内が正圧の時に連通部の連通路を開く圧力調整弁であってもよい。このような圧力調整弁を製造装置が有すると、反応系への外気の混入をより一層抑制することが可能となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る高分子化合物の製造方法は、下記式(1)で表される化合物(第一モノマー)と下記式(2)で表される化合物(第二モノマー)との直接アリール化反応によって下記式(3)で表される構成単位を含む高分子化合物の製造方法である。当該製造方法は、有機溶媒、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、触媒、および触媒に配位可能な添加物を含有する組成物を、外部と連通している反応槽内で加熱する加熱工程と、当該加熱工程による有機溶媒の蒸気を冷却装置によって冷却して有機溶媒を組成物に還流させる冷却工程と、を含む。なお、下記式中、Ar1およびAr2は、それぞれアリーレン基を表し、Hは水素原子を表し、Xは独立してハロゲン原子を表す。アリーレン基は、置換基を有していてもよいし、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
図2に示すように、ナス型のフラスコ11にジムロート冷却管13を接続し、またフラスコ11に対して相対的に進退自在にオイルバス12を配置することにより、製造装置1を構成した。
フラスコ11に、下記の成分からなる組成物Sを下記の量で投入した。
第一添加物 1.8mg(0.0050mmol)
第二添加物 8.6μL(0.075mmol)
塩基 163mg(0.50mmol)
第一モノマー 66.3mg(0.25mmol)
第二モノマー 137mg(0.25mmol)
脱水トルエン 1.25mL
触媒は、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)である。第一添加物(A)は、トリシクロヘキシルフォスフォニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4(A1))である。第二添加物は、ピバル酸(PivOH)である。塩基は、炭酸セシウム(Cs2CO3)である。第一モノマーは、5-(2-エチルヘキシル)チエノ-[3,4,c]-ピロール-4,6-ジオン(TPD)であり、式(1-2-1)で表される化合物に該当する。第二モノマーは、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(Br2-DOF)であり、式(2-1-1)で表される化合物に該当する。脱水トルエンは、市販のトルエン(1級)を蒸留したものである。脱水トルエン中の水の濃度は、検出限界(3質量ppm)以下である。
ジムロート冷却管13の先端に窒素ガス供給装置を接続せずに開放したままとしてフラスコ11およびジムロート冷却管13内の雰囲気を大気雰囲気とし、トルエンに市販のトルエン(1級)をそのまま用い、オイルバス12の温度を120℃に設定して、反応系内が外気と連通している状態でトルエンをその還流温度まで加熱し、ジムロート冷却管13によってトルエンを還流させる以外は、実験例1と同様にしてポリマー1-2を得た。ポリマー1-2の収率は91%であり、数平均分子量Mnは176,800であり、分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
ジムロート冷却管13の先端に窒素ガス供給装置を接続して反応系内を窒素雰囲気と連通させ、フラスコ11およびジムロート冷却管13内の雰囲気を窒素雰囲気に置換する以外は、実験例2と同様にしてポリマー1-3を得た。ポリマー1-3の収率は93%であり、数平均分子量Mnは195,400であり、分子量分布Mw/Mnは2.6であった。
PCy3・HBF4の量を4モル%に変更する以外は実験例2と同様にしてポリマー1-4を得た。ポリマー1-4の収率は91%であり、数平均分子量Mnは68,300であり、分子量分布Mw/Mnは2.6であった。
トルエンに代えてo-キシレンを用い、オイルバス12の温度を160℃に設定してo-キシレンをその還流温度まで加熱する以外は実験例2と同様にしてポリマー1-5を得た。ポリマー1-5の収率は91%であり、数平均分子量Mnは112,00であり、分子量分布Mw/Mnは2.3であった。
実験例3と同様にしてフラスコ11およびジムロート冷却管13内の雰囲気を窒素雰囲気に置換する以外は、実験例5と同様にしてポリマー1-6を得た。ポリマー1-6の収率は90%であり、数平均分子量Mnは123,900であり、分子量分布Mw/Mnは2.6であった。
PCy3・HBF4に代えてトリス(2-メトキシフェニルフォスフィン)(P(o-MeOPh)3(A2))を4モル%の量で用いる以外は実験例2と同様にしてポリマー1-7を得た。ポリマー1-7の収率は87%であり、数平均分子量Mnは32,000であり、分子量分布Mw/Mnは2.0であった。
オイルバス12の温度を100℃に変更する以外は実験例2と同様にしてポリマー1-8の製造を試みた。しかしながら、ポリマー1-8の収率は0%であった。
PCy3・HBF4の量を4モル%に変更する以外は実験例8と同様にしてポリマー1-9の製造を試みた。しかしながら、ポリマー1-9の収率は0%であった。
ジムロート冷却管13を外してフラスコ11を密閉し、オイルバス12の設定温度を調整して反応温度を120℃に変更する以外は実験例2と同様にしてポリマー1-10の製造を試みた。しかしながら、ポリマー1-10の収率は0%であった。
トルエンに代えてo-キシレンを用い、オイルバス12の設定温度を調整して反応温度を120℃に変更する以外は実験例2と同様にしてポリマー1-11の製造を試みた。しかしながら、ポリマー1-11の収率は0%であった。
トルエンに代えてo-キシレンを用い、オイルバス12の設定温度を調整して反応温度を120℃に変更する以外は実験例1と同様にしてポリマー1-12を得た。ポリマー1-12の収率は92%であり、数平均分子量Mnは35,700であり、分子量分布Mw/Mnは2.0であった。
第一モノマーに5-オクチル-チエノ-[3,4,c]-ピロール-4,6-ジオンを用い、第二モノマーに2,6-ジブロモ-4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェンを用いる以外は実験例2と同様にして、第一モノマーと第二モノマーとが縮合重合した分子構造を有するポリマー2を製造した。ポリマー2は、深青色の固体であり、ポリマー2の収率は88%であり、数平均分子量Mnは31,500であり、分子量分布Mw/Mnは1.9であった。
第一モノマーに5-(2-エチルヘキシル)チエノ-[3,4,c]-ピロール-4,6-ジオンを用いる以外は実験例13と同様にして、ポリマー3を製造した。ポリマー3の収率は69%であり、数平均分子量Mnは19,300であり、分子量分布Mw/Mnは1.6であった。
ポリマー1-1~1-12の製造における反応条件と結果を表1に示す。
ポリマー1-1~1-7および1-12について、クロロホルム溶液の状態で光ルミネセンススペクトルを測定したところ、いずれも良好な発光特性を発現した。
12 オイルバス
13 ジムロート冷却管
14 昇降台
121 本体
122 オイル
131 外筒部
132 冷却管部
132a、132b 接続管部
133 塩化カルシウム管
134 充填相
135、136 チューブ
137 冷媒循環部
Claims (9)
- 下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物との直接アリール化反応によって下記式(3)で表される構成単位を含む高分子化合物の製造方法であって、
有機溶媒、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、触媒、および前記触媒に配位可能な添加物を含有する組成物を、大気雰囲気と連通している反応槽内で加熱して前記有機溶媒を沸騰させる加熱工程と、
前記加熱工程による前記有機溶媒の蒸気を冷却装置によって冷却して有機溶媒を前記組成物に還流させる冷却工程と、
を含む高分子化合物の製造方法。
- 前記有機溶媒に、脱水処理が施されていない有機溶媒を用いる、請求項1に記載の高分子化合物の製造方法。
- 前記反応槽内の気相部と前記外部とを連通する連通部中の気体が通気可能な吸湿部によって除湿される、請求項1または2に記載の高分子化合物の製造方法。
- 前記組成物は、塩基をさらに含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
- 前記塩基に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩を用いる、請求項4に記載の高分子化合物の製造方法。
- 前記反応槽は、大気圧の雰囲気と連通している、請求項1~5のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
- 下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物との直接アリール化反応によって下記式(3)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造するための製造装置であって、
有機溶媒、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、触媒および前記触媒に配位可能な添加物を含有する組成物、製造される高分子化合物を収容している反応槽と、
前記反応槽中の前記組成物を加熱して前記有機溶媒を沸騰させるための加熱装置と、
前記反応槽で発生した前記有機溶媒を含む蒸気を冷却して前記反応槽に還流させるための冷却装置と、
前記反応槽内の気相部と前記反応槽の大気雰囲気とを連通する連通部と、
を備えている高分子化合物の製造装置。
- 前記連通部に配置され、前記連通部中の気体を除湿するための吸湿部をさらに有する、請求項7に記載の高分子化合物の製造装置。
- 前記連通部は、前記反応槽内の気相部と大気圧の雰囲気とを連通している、請求項7または8に記載の高分子化合物の製造装置。
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Akito Ichige, et al.,Facile Synthesis of Thienopyrroledione-Based π-Conjugated Polymers via Direct Arylation Polycondensation under Aerobic Conditions,Macromolecules,2018年,Vol. 51, No.17,Pages 6782-6788,https://doi.org/10.1021/acs.macromol.8b01289 |
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