JP7136337B2 - 差動ギヤ機構およびその設計方法 - Google Patents

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Description

本開示は、一対のクラウンギヤと、一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構およびその設計方法に関する。
従来、この種の差動ギヤ機構として、フェースギヤ(クラウンギヤ)およびピニオンギヤの1歯同士の噛み合いと、隣接する2歯の噛み合いとを連続的に繰り返すフェースギヤ伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このフェースギヤ伝達装置において、フェースギヤの歯面の外端側は、外端基準点と、歯面の歯先において外端部よりも内側の位置から歯先基準点に至る間の任意点とを線で結んだ連続形状を有する。また、外端基準点は、歯面の外端部と1歯同士の噛み合い終了位置である噛み合い接触線との交点であり、歯先基準点は、歯面の歯先と噛み合い進行線との交点である。これにより、隣接する2歯の噛み合いの間に、回転方向に先行する1歯の噛み合い接触線長さが次第に減少し、隣接する2歯の噛み合い終了から1歯の噛み合い開始に移行する際の噛み合い接触線長さの急変が緩和される。
特開2018-135964号公報
ところで、上述のような一対のクラウンギヤを含む差動ギヤ機構では、ピニオンギヤを小径化することで、一対のクラウンギヤの軸心方向における寸法(軸長)を小さくして機構全体をコンパクト化することができる。ただし、ピニオンギヤが小径化されると、特に高トルクの伝達時にクラウンギヤの外周側でピニオンギヤのピニオン歯の歯元に作用する応力が大きくなり、当該ピニオンギヤの耐久性が低下するおそれがある。これに対して、クラウンギヤの各ギヤ歯の歯先面が当該クラウンギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底に接近するように傾斜した部分を含む場合、ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置する各ピニオン歯底面をクラウンギヤの軸心側から外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜させることができる。これにより、ピニオンギヤが小径化されても、クラウンギヤの外周側で、各ピニオン歯底面(歯底円)と当該ピニオンギヤ(ピニオンシャフト孔)の内周面との距離(厚み)が増加する。しかしながら、このようにピニオン歯底面の内側の部分の厚みが増加しても、ピニオン歯底面の形状(傾斜の度合い等)によっては、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力が却って大きくなってしまうおそれがある。
そこで、本開示は、一対のクラウンギヤと当該一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることを主目的とする。
本開示の差動ギヤ機構は、一対のクラウンギヤと、前記一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構において、前記クラウンギヤの各ギヤ歯の歯先面が、前記一対のクラウンギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底に接近するように傾斜した傾斜部を含み、前記ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置する各ピニオン歯底面が、前記一対のクラウンギヤの前記軸心側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜した傾斜部を含み、前記クラウンギヤの前記ギヤ歯および前記ピニオンギヤの前記ピニオン歯の何れか一方の歯面上に前記ギヤ歯と前記ピニオン歯との複数の接触線を前記ピニオンギヤの軸心の周りの所定角度おきに規定すると共に、前記一対のクラウンギヤの前記軸心を含む平面上に前記複数の接触線および前記ギヤ歯の前記歯先面の中心線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影したときに、前記平面上に投影された前記歯先面の中心線が、前記平面上に投影された前記複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線の間の範囲を通る傾斜線を含むものである。
本開示の差動ギヤ機構は、一対のクラウンギヤの軸心を含む平面上に投影されたクラウンギヤのギヤ歯の歯先面の中心線が、当該平面上に投影されたクラウンギヤのギヤ歯とピニオン歯との複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の接触線の間の範囲を通る傾斜線を含むように設計される。これにより、ピニオンギヤの各ピニオン歯底面にクラウンギヤのギヤ歯(歯先面)と干渉しないように傾斜部を形成すれば、クラウンギヤの外周側で、各ピニオン歯底面の内側の部分の厚みを増加させると共に、ピニオンギヤの各ピニオン歯底面をピニオン歯の歯元付近におけるクラウンギヤのギヤ歯との接触線に概ね平行にすることができる。この結果、ピニオンギヤを小径化しつつ、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることができる。
本開示の差動ギヤ機構を示す斜視図である。 本開示の差動ギヤ機構を示す部分断面図である。 本開示の差動ギヤ機構に含まれるピニオンギヤを示す平面図である。 本開示の差動ギヤ機構の設計手順を説明するための説明図である。 本開示の差動ギヤ機構の設計手順を説明するための説明図である。 本開示の差動ギヤ機構の設計手順を説明するための説明図である。 本開示の差動ギヤ機構の設計手順を説明するための説明図である。
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の差動ギヤ機構1を示す斜視図であり、図2は、差動ギヤ機構1の要部を示す部分断面図である。これらの図面に示す差動ギヤ機構1は、図示しないデフリングギヤおよびデフケース等と共に車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれるものである。差動ギヤ機構1は、同軸に配置される一対のクラウンギヤ(フェースギヤ)2と、それぞれ一対のクラウンギヤ2に噛合する複数(本実施形態では、例えば4個)のピニオンギヤ3とを含む。一対のクラウンギヤ2は、図示しないドライブシャフトに固定されてデファレンシャルギヤのサイドギヤとして機能する。また、各ピニオンギヤ3には、それぞれデフケースにより支持されて一対のクラウンギヤ2の軸心方向と直交するように放射状に延在する複数のピニオンシャフトの対応する何れかが挿通され、それにより各ピニオンギヤ3は、デフケースにより回転自在に支持される。
クラウンギヤ2は、平坦なピッチ面を有するかさ歯車であり、ドライブシャフトが固定されるシャフト孔2oと、軸心2c(図2参照)と平行に突出する複数のギヤ歯20と、それぞれ隣り合うギヤ歯20の間に位置する複数の歯底25(図1参照)とを含む。各ギヤ歯20は、それぞれピニオンギヤ3の歯面を用いて創成される一対の歯面21と、一対の歯面21の間に形成された平坦面あるいは凸曲面である歯先面22とを含む。図2に示すように、各ギヤ歯20の歯先面22は、クラウンギヤ2の軸心2c側(図2中左側)から外周側(図2中右側)に向かうにつれて歯底25に接近するように傾斜した傾斜部23を含む。
ピニオンギヤ3は、図1および図2に示すように、図示しないピニオンシャフトが挿通されるピニオンシャフト孔3oと、それぞれ軸心3cと平行に延在する歯すじを有する複数のピニオン歯30と、それぞれ隣り合うピニオン歯30の間に位置する複数のピニオン歯底面35とを含む平歯車である。本実施形態において、各ピニオン歯30は、それぞれインボリュート曲線により形成される一対の歯面31と、当該一対の歯面31の間に軸心3cと平行に延在するように形成されたピニオン歯先32(図1参照)とを含む。また、図2に示すように、ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35は、クラウンギヤ2の軸心2c側(図2中左側)から外周側(図2中右側)に向かうにつれてピニオン歯先32に接近するように傾斜した傾斜部36を含む。これにより、図2に示すように、各ピニオン歯底面35(歯底円)とピニオンシャフト孔3o(ピニオンギヤ3)の内周面との距離(厚み)は、クラウンギヤ2の軸心2c側(内周側、図2中左側)からクラウンギヤ2の外周側(図2中右側)に向かうにつれて増加する。また、図3に示すように、ピニオン歯底面35を平面視した際、当該ピニオン歯底面35は、クラウンギヤ2の外周側(図3中右側)からクラウンギヤ2の軸心2c側(内周側、図3中左側)に向かうにつれて狭まり、ピニオン歯30の歯元付近の歯厚は、クラウンギヤ2の外周側から軸心2c側に向かうにつれて大きくなる。
次に、図4から図7を参照しながら、上述の差動ギヤ機構1、より詳細にはクラウンギヤ2のギヤ歯20の歯先面22およびピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の設計手順について説明する。
ピニオンギヤ3のピニオン歯30の各歯面31がインボリュート曲線により形成される場合、ピニオンギヤ3の軸心3cをz軸とし、クラウンギヤ2の軸心2cとピニオンギヤ3の軸心3cとの共通垂線と当該軸心3cとの交点を原点oとする静止座標系を“o-xyz”とし、z=vである軸直角断面上での歯面31上の任意の点のo-xyz座標系における座標を“r”とすれば、座標rを次式(1)のように表すことができる。
Figure 0007136337000001
ただし、式(1)において、“r”は、ピニオンギヤ3の基礎円の半径であり、“u”は、インボリュート曲線を定義する漸開角であり、“θ”は、ピニオンギヤ3の回転角度である。また、“φ”は、次式(2)に示すとおりであり、“v”は、接触の条件式n・w=0を満たす“v”であって次式(3)に示すとおりである。式(2)における“η”は、次式(4)に示すとおりであり、式(3)における“i”は、ピニオンギヤ3の歯数Zとクラウンギヤ2の歯数Zとの歯数比(Z/Z)であり、式(4)における“α”は、圧力角であり、“χ”は、転移係数である。また、各式における複合上段は右歯面、下段は左歯面をそれぞれ示す。更に、ピニオンギヤ3の回転は、図4に示すように、一対のクラウンギヤ2の軸心2cおよび当該ピニオンギヤ3の軸心3cを含む平面(以下、「基準平面」という。)Prefが何れかのピニオン歯底面35の中心線35CL(中央)を通る状態を基準状態とし、図4に示す状態でθ=0°となり、図4中反時計方向が正回転方向であるものとする。
Figure 0007136337000002
更に、歯面31上の任意の点のo-xyz座標系における座標rをクラウンギヤ2と共に回転するo-x座標系に投影(変換)して得られる座標rは、次式(5)のように表される。座標r2は、ピニオンギヤ3のピニオン歯30の歯面31に接触するギヤ歯20の歯面21上の点の座標を示すものである。ただし、式(5)において、“e”は、一対のクラウンギヤ2の軸心2cとピニオンギヤ3の軸心3cとのオフセット量であり、“r”は、ピニオンギヤ3の基準円の半径である。また、o-x座標系は、一対のクラウンギヤ2の軸心2cをZ軸とし、クラウンギヤ2の軸心2cと上記共通垂線との交点からピニオンギヤ3の基準円の半径rだけ離間した点を原点oとする。なお、上記式(1)-(5)の導出手順等の詳細については、「フェースギヤの幾何学的設計 郡原宏 著 日本機会学会論文集(C編)73巻726号(2007-2)」を参照されたい。
Figure 0007136337000003
本実施形態では、クラウンギヤ2のギヤ歯20の歯先面22およびピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の設計に際して、上記式(5)を利用して、クラウンギヤ2のギヤ歯20の歯面21上に当該ギヤ歯20とピニオン歯30との複数の接触線をピニオンギヤ3の軸心3cの周りの所定角度Δθおきに規定する。角度Δθは、歯面21上で隣り合う接触線同士の間隔がクラウンギヤ2のギヤ歯20の歯面21と歯先面22との間に形成される面取り部の面取り半径よりも小さくなるように、例えば5°とされている。更に、上述の基準平面Pref上にクラウンギヤ2のギヤ歯20の歯面21上における複数の接触線をピニオンギヤ3の軸心3cの周りに投影して、図5に示すような基準平面Pref上における複数の接触線Lcを得る。なお、図5における破線は、ピニオンギヤ3の回転角度θが0°であるときの接触線Lcを示す。
ここで、各クラウンギヤ2(ギヤ歯20)とピニオンギヤ3(ピニオン歯30)とのかみ合い率を1.0以上にするためには、ピニオンギヤ3がピニオン歯30の1歯分、すなわち360/Z(°)だけ回転する間に、クラウンギヤ2のギヤ歯20の歯面21上に360/Z//Δθ本以上の接触線が角度Δθおきに確保される必要がある。これを踏まえて、本実施形態では、基準平面Pref上に複数の接触線Lcを規定した後、図6に示すように、当該複数の接触線Lcの中から、360/Z/Δθ本以上の接触線Lcよりもクラウンギヤ2の歯底25とは反対側(図中上側)に位置する接触線Lc(n+1)と、接触線Lc(n+1)よりも1本だけクラウンギヤ2の歯底25とは反対側に位置する接触線Lc(n)とを選択する。
接触線Lc(n+1)およびLc(n)を選択した後、図6に示すように、基準平面Pref上で、接触線Lc(n+1)と接触線Lc(n)との間の範囲を通る直線または曲線である傾斜線23CLを定める。接触線Lc(n+1)と接触線Lc(n)との間の範囲には、接触線Lc(n+1)および接触線Lc(n)自体も含まれ、傾斜線23CLは、接触線Lc(n+1)またはLc(n)の一部であってもよい。更に、図6および図7に示すように、基準平面Pref上で、傾斜線23CLを含むようにクラウンギヤ2のギヤ歯20の歯先面22の中心線22CLを定めると共に、適宜歯先修整を実行して最終的な歯先面22の中心線22CLを得る。そして、得られた中心線22CLに基づいて歯先面22の形状を定める。
また、ピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の中心線35CL(図6および図7参照)を、ギヤ歯20の歯先面22の中心線22CLの傾斜線23CLに沿って延在する傾斜線36CLを含むように定める。本実施形態において、傾斜線36CLは、傾斜線23CLと平行に延在するように定められる。この際、図7に示すように、ピニオン歯底面35の中心線35CLに含まれる傾斜線36CLの外側端部(外周側の端部)36CLoを、歯先面22の中心線22CLに含まれる傾斜線23CLの内側端部(一対のクラウンギヤ2の軸心2c側の端部)23CLiよりも一対のクラウンギヤ2の軸方向(図7における上下方向)においてピニオンギヤ3の軸心3cから離間させる(図7における下側に位置させる)。このようにして中心線35CLを定めた後、当該中心線35CLに基づいて、クラウンギヤ2のギヤ歯20(歯先面22)と干渉しないように、傾斜部36を含むピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の形状を定める。なお、歯先面22の中心線22CLに含まれる傾斜線23CLと、ピニオン歯底面35の中心線CLに含まれる傾斜線36CLとは、両者の距離dがピニオンギヤ3の軸方向(図7における左右方向)において一定になるのであれば、必ずしも傾斜線23CLと傾斜線36CLとを平行にする必要はない。
上述のように、差動ギヤ機構1は、一対のクラウンギヤ2の軸心2cを含む基準平面Prefに投影されたギヤ歯20の歯先面22の中心線22CLが、当該基準平面Pref上に投影されたギヤ歯20とピニオン歯30との複数の接触線Lcのうち、それぞれクラウンギヤ2とピニオンギヤ3とのかみ合い率を1.0以上にする2本の接触線Lc(n+1)およびLc(n)の間の範囲を通る傾斜線23CLを含むように設計される。
これにより、ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35にクラウンギヤ2のギヤ歯20(歯先面22)と干渉しないように傾斜部36を形成すれば、クラウンギヤ2の軸心2c側で各ピニオン歯30の歯元付近の歯厚を確保しつつ、当該クラウンギヤ2の外周側で各ピニオン歯底面35とピニオンシャフト孔3o(ピニオンギヤ3)の内周面との距離、すなわち各ピニオン歯底面35の内側の部分の厚みを増加させることが可能となる。更に、特に高トルクの伝達時に各ピニオンギヤ3が撓んでクラウンギヤ2のギヤ歯20とピニオン歯30とのかみ合い位置が当該クラウンギヤ2の外周側にずれたとしても、ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35をピニオン歯30の歯元付近におけるクラウンギヤ2のギヤ歯20との接触線に概ね平行にすることができる。この結果、ピニオンギヤ3を小径化しつつ、クラウンギヤ2のギヤ歯20との噛み合いに伴ってピニオン歯30の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構1のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤ3の耐久性を向上させることができる。
また、上述のように、2本の接触線Lc(n+1)およびLc(n)は、基準平面Prefにおける歯先面22の中心線22CLよりもクラウンギヤ2の歯底25側(図6における下側)の領域に360/Z/Δθ本以上の接触線Lcが確保されるように選択される。これにより、差動ギヤ機構1におけるクラウンギヤ2(ギヤ歯20)とピニオンギヤ3(ピニオン歯30)とのかみ合い率を良好に確保することが可能となる。
ただし、差動ギヤ機構1は、次のような手順に従って設計されてもよい。すなわち、基準平面Pref上に複数の接触線Lcが規定された後、図6に示すように、当該複数の接触線Lcの中から、360/Z/Δθ+1本以上の接触線Lcよりもクラウンギヤ2の歯底25とは反対側に位置する接触線Lc(n)と、接触線Lc(n)よりも1本だけクラウンギヤ2の歯底25とは反対側に位置する接触線Lc(n-1)とを選択してもよい。この場合、図6に示すように、基準平面Pref上で、接触線Lc(n)と接触線Lc(n-1)との間の範囲を通るように直線または曲線である傾斜線36CLを定める。傾斜線36CLは、接触線Lc(n)またはLc(n-1)の一部であってもよい。更に、図6および図7に示すように、基準平面Pref上で、傾斜線36CLを含むようにピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の中心線35CLを定めると共に、適宜歯底修整を実行して最終的なピニオン歯底面35の中心線35CLを得る。そして、得られた中心線35CLに基づいてピニオン歯底面35の形状を定める。
また、ギヤ歯20の歯先面22の中心線22CLを、ピニオン歯底面35の中心線35CLの傾斜線36CLに沿って(平行に)延在する傾斜線23CLを含むように定める。この際も、図7に示すように、ピニオン歯底面35の中心線35CLに含まれる傾斜線36CLの外側端部36CLoを、歯先面22の中心線22CLに含まれる傾斜線23CLの内側端部23CLiよりも一対のクラウンギヤ2の軸方向(図7における上下方向)においてピニオンギヤ3の軸心3cから離間させる(図7における下側に位置させる)。このようにして中心線22CLを定めた後、当該中心線22CLに基づいて、ピニオンギヤ3のピニオン歯30(ピニオン歯底面35)と干渉しないように、傾斜部23を含む歯先面22の形状を定める。この場合も、歯先面22の中心線22CLに含まれる傾斜線23CLと、ピニオン歯底面35の中心線CLに含まれる傾斜線36CLとは、両者の距離dがピニオンギヤ3の軸方向(図7における左右方向)において一定になるのであれば、必ずしも傾斜線23CLと傾斜線36CLとを平行にする必要はない。
上述のように、差動ギヤ機構1は、一対のクラウンギヤ2の軸心2cを含む基準平面Prefに投影されたピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の中心線35CLが、当該基準平面Pref上に投影されたギヤ歯20とピニオン歯30との複数の接触線Lcのうち、それぞれクラウンギヤ2とピニオンギヤ3とのかみ合い率を1.0以上にする2本の接触線Lc(n)およびLc(n-1)の間の範囲を通る傾斜線36CLを含むように設計されてもよい。
これにより、クラウンギヤ2の軸心2c側で各ピニオン歯30の歯元付近の歯厚を確保しつつ、当該クラウンギヤ2の外周側で各ピニオン歯底面35とピニオンシャフト孔3o(ピニオンギヤ3)の内周面との距離、すなわち各ピニオン歯底面35の内側の部分の厚みを増加させることが可能となる。更に、特に高トルクの伝達時に各ピニオンギヤ3が撓んでクラウンギヤ2のギヤ歯20とピニオン歯30とのかみ合い位置が当該クラウンギヤ2の外周側にずれたとしても、ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35をピニオン歯30の歯元付近におけるクラウンギヤ2のギヤ歯20との接触線に概ね平行にすることができる。この結果、ピニオンギヤ3を小径化しつつ、クラウンギヤ2のギヤ歯20との噛み合いに伴ってピニオン歯30の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構1のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤ3の耐久性を向上させることができる。
また、2本の接触線Lc(n)およびLc(n-1)を基準平面Prefにおける歯先面22の中心線22CLよりもクラウンギヤ2の歯底25側(図6における下側)の領域に360/Z/Δθ+1本以上の接触線Lcが確保されるように選択することで、差動ギヤ機構1におけるクラウンギヤ2(ギヤ歯20)とピニオンギヤ3(ピニオン歯30)とのかみ合い率を良好に確保することが可能となる。
更に、基準平面Pref上に複数の接触線Lcが規定された後、当該複数の接触線Lcの中から、360/Z/Δθ本以上の接触線Lcよりもクラウンギヤ2の歯底25とは反対側(図6中上側)に位置する接触線Lc(n+1)と、接触線Lc(n+1)よりも1本だけクラウンギヤ2の歯底25とは反対側に位置する接触線Lc(n)と、接触線Lc(n)よりも1本だけクラウンギヤ2の歯底25とは反対側に位置する接触線Lc(n-1)とを選択してもよい。この場合には、基準平面Pref上で、接触線Lc(n+1)と接触線Lc(n)との間の範囲を通る直線または曲線である傾斜線23CLを含むようにギヤ歯20の歯先面22の中心線22CLを定めると共に、適宜歯先修整を実行して最終的な歯先面22の中心線22CLを得る。更に、基準平面Pref上で、接触線Lc(n)と接触線Lc(n-1)との間の範囲を通る直線または曲線である傾斜線36CLを含むようにピニオンギヤ3のピニオン歯底面35の中心線35CLを定めると共に、適宜歯底修整を実行して最終的なピニオン歯底面35の中心線35CLを得る。かかる手順に従って差動ギヤ機構1を設計しても、当該差動ギヤ機構1のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤ3の耐久性を向上させることが可能となる。
また、上述のようにして差動ギヤ機構1を設計することで、当該差動ギヤ機構1におけるかみ合い率を基本的に1.0以上かつ1.2以下に設計することが可能となる。ただし、差動ギヤ機構1は、全体のコンパクト化やピニオンギヤ3の耐久性向上を優先して、かみ合い率が1.0未満になるように設計されてもよく、差動ギヤ機構1の設置スペース等に余裕がある場合には、かみ合い率が1.2よりも大きくなるように設計されてもよい。更に、上記差動ギヤ機構1は、車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれるものであるが、これに限られるものではない。すなわち、差動ギヤ機構1は、4輪駆動車両用のトランスファ(センターデフ)等に含まれてもよい。また、ピニオンギヤ3の各ピニオン歯30は、それぞれインボリュート曲線以外の例えば円弧あるいはサイクロイド曲線等により形成される一対の歯面31を含むものであってもよい。更に、差動ギヤ機構1の設計に際して、ギヤ歯20とピニオン歯30との複数の接触線は、ピニオンギヤ3のピニオン歯30の歯面31上にピニオンギヤ3の軸心3cの周りの所定角度Δθおきに規定された後、基準平面Prefに投影されてもよい。
以上説明したように、本開示の差動ギヤ機構は、一対のクラウンギヤ(2)と、前記一対のクラウンギヤ(2)に噛合する複数のピニオンギヤ(3)とを含む差動ギヤ機構(1)において、前記クラウンギヤ(2)の各ギヤ歯(20)の歯先面(22)が、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸心(2c)側から外周側に向かうにつれて歯底(25)に接近するように傾斜した傾斜部(23)を含み、前記ピニオンギヤ(3)の隣り合うピニオン歯(30)の間に位置する各ピニオン歯底面(35)が、前記一対のクラウンギヤ(2)の前記軸心(2c)側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先(32)に接近するように傾斜した傾斜部(36)を含み、前記クラウンギヤ(2)の前記ギヤ歯(20)および前記ピニオンギヤ(3)の前記ピニオン歯(30)の何れか一方の歯面(21,31)上に前記ギヤ歯(20)と前記ピニオン歯(30)との複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の軸心(3c)の周りの所定角度(Δθ)おきに規定すると共に、前記一対のクラウンギヤ(2)の前記軸心(2c)を含む平面(Pref)上に前記複数の接触線および前記ギヤ歯(20)の前記歯先面(22)の中心線(22CL)を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影したときに、前記平面(Pref)上に投影された前記歯先面(22)の中心線(22CL)が、前記平面(Pref)上に投影された前記複数の接触線(Lc)のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線(Lc(n+1),Lc(n))の間の範囲を通る傾斜線(23CL)を含むものである。
本開示の差動ギヤ機構は、一対のクラウンギヤの軸心を含む平面上に投影されたクラウンギヤのギヤ歯の歯先面の中心線が、当該平面上に投影されたクラウンギヤのギヤ歯とピニオン歯との複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の接触線の間の範囲を通る傾斜線を含むように設計される。これにより、ピニオンギヤの各ピニオン歯底面にクラウンギヤのギヤ歯(歯先面)と干渉しないように傾斜部を形成すれば、クラウンギヤの外周側で、各ピニオン歯底面の内側の部分の厚みを増加させると共に、ピニオンギヤの各ピニオン歯底面をピニオン歯の歯元付近におけるクラウンギヤのギヤ歯との接触線に概ね平行にすることができる。この結果、ピニオンギヤを小径化しつつ、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることができる。
また、前記ピニオンギヤ(3)の歯数を“Z”とし、前記所定角度を“Δθ(°)”としたときに、前記2本の前記接触線(Lc(n+1),Lc(n))は、前記平面(Pref)における前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)よりも前記クラウンギヤ(2)の前記歯底(25)側の領域に360/Z/Δθ本以上の前記接触線(Lc)が確保されるように選択されてもよい。これにより、差動ギヤ機構におけるクラウンギヤ(ギヤ歯)とピニオンギヤ(ピニオン歯)とのかみ合い率を良好に確保することが可能となる。
更に、前記平面(Pref)上に前記ピニオン歯底面(35)の中心線(35CL)を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影したときに、前記平面(Pref)上に投影された前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)は、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)に沿って延在する傾斜線(36CL)を含んでもよく、前記平面(Pref)上で、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)の外側端部(36CLo)は、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)の内側端部(23CLi)よりも、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸方向において前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)から離間してもよい。
また、前記平面上(Pref)で、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)と、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)との距離(d)は、前記ピニオンギヤ(3)の軸方向において一定であってもよい。
本開示の他の差動ギヤ機構は、一対のクラウンギヤ(2)と、前記一対のクラウンギヤ(2)に噛合する複数のピニオンギヤ(3)とを含む差動ギヤ機構(1)において、前記クラウンギヤ(2)の各ギヤ歯(20)の歯先面(22)が、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸心(2c)側から外周側に向かうにつれて歯底(25)に接近するように傾斜した傾斜部(23)を含み、前記ピニオンギヤ(3)の隣り合うピニオン歯(30)の間に位置する各ピニオン歯底面(35)が、前記一対のクラウンギヤ(2)の前記軸心(2c)側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先(32)に接近するように傾斜した傾斜部(36)を含み、前記クラウンギヤ(2)の前記ギヤ歯(20)および前記ピニオンギヤ(3)の前記ピニオン歯(30)の何れか一方の歯面(21,31)上に前記ギヤ歯(20)と前記ピニオン歯(30)との複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の軸心(3c)の周りの所定角度(Δθ)おきに規定すると共に、前記一対のクラウンギヤ(2)の前記軸心(2c)を含む平面(Pref)上に前記複数の接触線および前記ピニオンギヤ(3)の前記ピニオン歯底面(35)の中心線(35CL)を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影したときに、前記平面(Pref)上に投影された前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)が、前記平面(Pref)上に投影された前記複数の接触線(Lc)のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線(Lc(n),Lc(n-1))の間の範囲を通る傾斜線(36CL)を含むものである。
かかる差動ギヤ機構においても、クラウンギヤの外周側で各ピニオン歯底面の内側の部分の厚みを増加させると共に、ピニオンギヤの各ピニオン歯底面をピニオン歯の歯元付近におけるクラウンギヤのギヤ歯との接触線に概ね平行にすることができる。この結果、ピニオンギヤを小径化しつつ、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることができる。
また、前記ピニオンギヤの歯数を“Z”とし、前記所定角度を“Δθ(°)”としたときに、前記2本の前記接触線(Lc(n),Lc(n-1))は、前記平面(Pref)における前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)よりも前記クラウンギヤ(2)の前記歯底(25)側の領域に360/Z/Δθ+1本以上の前記接触線(Lc)が確保されるように選択されてもよい。これにより、差動ギヤ機構におけるクラウンギヤ(ギヤ歯)とピニオンギヤ(ピニオン歯)とのかみ合い率を良好に確保することが可能となる。
更に、前記平面(Pref)上に前記歯先面(22)の中心線(22CL)を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影したときに、前記平面(Pref)上に投影された前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)は、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)に沿って延在する傾斜線(23CL)を含んでもよく、前記平面(Pref)上で、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)の外側端部(36CLo)は、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)の内側端部(23CLi)よりも、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸方向において前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)から離間してもよい。
また、前記平面上(Pref)で、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)と、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)との距離(d)は、前記ピニオンギヤ(3)の軸方向において一定であってもよい。
更に、差動ギヤ機構(1)において、前記かみ合い率が、1.0以上かつ1.2以下であってもよい。
また、前記差動ギヤ機構(1)は、車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれてもよい。
本開示の差動ギヤ機構の設計方法は、一対のクラウンギヤ(2)と、前記一対のクラウンギヤ(2)に噛合する複数のピニオンギヤ(3)とを含む差動ギヤ機構(1)の設計方法において、前記クラウンギヤ(2)のギヤ歯(20)および前記ピニオンギヤ(3)のピニオン歯(30)の何れか一方の歯面(21,31)上に前記ギヤ歯(20)と前記ピニオン歯(30)との複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の軸心(3c)の周りの所定角度(Δθ)おきに規定し、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸心(2c)を含む平面(Pref)上に前記複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影し、前記平面(Pref)上で、前記ギヤ歯(20)の歯先面(22)の中心線(22CL)を、前記平面(Pref)上に投影された前記複数の接触線(Lc)のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線(Lc(n+1),Lc(n))の間の範囲を通る傾斜線(23CL)を含むように定めるものである。
かかる方法に従って差動ギヤ機構を設計すれば、ピニオンギヤを小径化しつつ、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることができる。
また、前記平面(Pref)上で、前記ピニオンギヤ(3)のピニオン歯底面(35)の中心線(35CL)を、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)に沿って延在する傾斜線(36CL)を含むように定めると共に、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)の外側端部(36CLo)を、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)の内側端部(23CLi)よりも、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸方向において前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)から離間させてもよい。
更に、前記平面上(Pref)で、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)と、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)との距離(d)を、前記ピニオンギヤの軸方向において一定にしてもよい。
本開示の他の差動ギヤ機構の設計方法は、一対のクラウンギヤ(2)と、前記一対のクラウンギヤ(2)に噛合する複数のピニオンギヤ(3)とを含む差動ギヤ機構(1)の設計方法において、前記クラウンギヤ(2)のギヤ歯(20)および前記ピニオンギヤ(3)のピニオン歯(30)の何れか一方の歯面(21,31)上に前記ギヤ歯(20)と前記ピニオン歯(30)との複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の軸心(3c)の周りの所定角度(Δθ)おきに規定し、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸心(2c)を含む平面(Pref)上に前記複数の接触線を前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)の周りに投影し、前記平面(Pref)上で、前記ピニオンギヤ(3)のピニオン歯底面(35)の中心線(35CL)を、前記平面(Pref)上に投影された前記複数の接触線(Lc)のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線(Lc(n),Lc(n-1))の間の範囲を通る傾斜線(36CL)を含むように定めるものである。
かかる方法に従って差動ギヤ機構を設計しても、ピニオンギヤを小径化しつつ、クラウンギヤのギヤ歯との噛み合いに伴ってピニオン歯の歯元に作用する応力を低下させることが可能となり、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、各ピニオンギヤの耐久性を向上させることができる。
また、前記平面(Pref)上で、前記ギヤ歯(20)の歯先面(22)の中心線(22CL)を、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)に沿って延在する傾斜線(23CL)を含むように定めると共に、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)の外側端部(36CLo)を、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)の内側端部(23CLi)よりも、前記一対のクラウンギヤ(2)の軸方向において前記ピニオンギヤ(3)の前記軸心(3c)から離間させてもよい。
更に、前記平面上(Pref)で、前記歯先面(22)の前記中心線(22CL)に含まれる前記傾斜線(23CL)と、前記ピニオン歯底面(35)の前記中心線(35CL)に含まれる前記傾斜線(36CL)との距離(d)を、前記ピニオンギヤ(3)の軸方向において一定にしてもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本開示の発明は、差動ギヤ機構の製造分野等において利用可能である。
1 差動ギヤ機構、2 クラウンギヤ、2c 軸心、20 ギヤ歯、21 歯面、22 歯先面、22CL 中心線、23 傾斜部、23CL 傾斜線、25 歯底、3 ピニオンギヤ、3c 軸心、30 ピニオン歯、31 歯面、32 ピニオン歯先、35 ピニオン歯底面、35CL 中心線、36 傾斜部、36CL 傾斜線、Lc,Lc(n+1),Lc(n),Lc(n-1) 接触線、Pref 基準平面。

Claims (16)

  1. 一対のクラウンギヤと、前記一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構において、
    前記クラウンギヤの各ギヤ歯の歯先面は、前記一対のクラウンギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
    前記ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置する各ピニオン歯底面は、前記一対のクラウンギヤの前記軸心側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
    前記クラウンギヤの前記ギヤ歯および前記ピニオンギヤの前記ピニオン歯の何れか一方の歯面上に前記ギヤ歯と前記ピニオン歯との複数の接触線を前記ピニオンギヤの軸心の周りの所定角度おきに規定すると共に、前記一対のクラウンギヤの前記軸心を含む平面上に前記複数の接触線および前記ギヤ歯の前記歯先面の中心線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影したときに、前記平面上に投影された前記歯先面の前記中心線は、前記平面上に投影された前記複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線の間の範囲を通る傾斜線を含む差動ギヤ機構。
  2. 請求項1に記載の差動ギヤ機構において、
    前記ピニオンギヤの歯数を“Z”とし、前記所定角度を“Δθ(°)”としたときに、前記2本の前記接触線は、前記平面における前記歯先面の前記中心線よりも前記クラウンギヤの前記歯底側の領域に360/Z/Δθ本以上の前記接触線が確保されるように選択される差動ギヤ機構。
  3. 請求項1または2に記載の差動ギヤ機構において、
    前記平面上に前記ピニオン歯底面の中心線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影したときに、前記平面上に投影された前記ピニオン歯底面の前記中心線は、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線に沿って延在する傾斜線を含み、
    前記平面上で、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の外側端部は、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の内側端部よりも、前記一対のクラウンギヤの軸方向において前記ピニオンギヤの前記軸心から離間する差動ギヤ機構。
  4. 請求項3に記載の差動ギヤ機構において、
    前記平面上で、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線と、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線との距離は、前記ピニオンギヤの軸方向において一定である差動ギヤ機構。
  5. 一対のクラウンギヤと、前記一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構において、
    前記クラウンギヤの各ギヤ歯の歯先面は、前記一対のクラウンギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
    前記ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置する各ピニオン歯底面は、前記一対のクラウンギヤの前記軸心側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
    前記クラウンギヤの前記ギヤ歯および前記ピニオンギヤの前記ピニオン歯の何れか一方の歯面上に前記ギヤ歯と前記ピニオン歯との複数の接触線を前記ピニオンギヤの軸心の周りの所定角度おきに規定すると共に、前記一対のクラウンギヤの前記軸心を含む平面上に前記複数の接触線および前記ピニオンギヤの前記ピニオン歯底面の中心線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影したときに、前記平面上に投影された前記ピニオン歯底面の前記中心線は、前記平面上に投影された前記複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線の間の範囲を通る傾斜線を含む差動ギヤ機構。
  6. 請求項5に記載の差動ギヤ機構において、
    前記ピニオンギヤの歯数を“Z”とし、前記所定角度を“Δθ(°)”としたときに、前記2本の前記接触線は、前記平面における前記ピニオン歯底面の前記中心線よりも前記クラウンギヤの前記歯底側の領域に360/Z/Δθ+1本以上の前記接触線が確保されるように選択される差動ギヤ機構。
  7. 請求項5または6に記載の差動ギヤ機構において、
    前記平面上に前記歯先面の中心線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影したときに、前記平面上に投影された前記歯先面の前記中心線は、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線に沿って延在する傾斜線を含み、
    前記平面上で、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の外側端部は、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の内側端部よりも、前記一対のクラウンギヤの軸方向において前記ピニオンギヤの前記軸心から離間する差動ギヤ機構。
  8. 請求項7に記載の差動ギヤ機構において、
    前記平面上で、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線と、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線との距離は、前記ピニオンギヤの軸方向において一定である差動ギヤ機構。
  9. 請求項1から8の何れか一項に記載の差動ギヤ機構において、前記かみ合い率が、1.0以上かつ1.2以下である差動ギヤ機構。
  10. 請求項1から9の何れか一項に記載の差動ギヤ機構において、車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれる差動ギヤ機構。
  11. 一対のクラウンギヤと、前記一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記クラウンギヤのギヤ歯および前記ピニオンギヤのピニオン歯の何れか一方の歯面上に前記ギヤ歯と前記ピニオン歯との複数の接触線を前記ピニオンギヤの軸心の周りの所定角度おきに規定し、
    前記一対のクラウンギヤの軸心を含む平面上に前記複数の接触線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影し、
    前記平面上で、前記ギヤ歯の歯先面の中心線を、前記平面上に投影された前記複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線の間の範囲を通る傾斜線を含むように定める差動ギヤ機構の設計方法。
  12. 請求項11に記載の差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記平面上で、前記ピニオンギヤのピニオン歯底面の中心線を、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線に沿って延在する傾斜線を含むように定めると共に、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の外側端部を、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の内側端部よりも、前記一対のクラウンギヤの軸方向において前記ピニオンギヤの前記軸心から離間させる差動ギヤ機構の設計方法。
  13. 請求項12に記載の差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記平面上で、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線と、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線との距離を、前記ピニオンギヤの軸方向において一定にする差動ギヤ機構の設計方法。
  14. 一対のクラウンギヤと、前記一対のクラウンギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記クラウンギヤのギヤ歯および前記ピニオンギヤのピニオン歯の何れか一方の歯面上に前記ギヤ歯と前記ピニオン歯との複数の接触線を前記ピニオンギヤの軸心の周りの所定角度おきに規定し、
    前記一対のクラウンギヤの軸心を含む平面上に前記複数の接触線を前記ピニオンギヤの前記軸心の周りに投影し、
    前記平面上で、前記ピニオンギヤのピニオン歯底面の中心線を、前記平面上に投影された前記複数の接触線のうち、それぞれかみ合い率を1.0以上にする2本の前記接触線の間の範囲を通る傾斜線を含むように定める差動ギヤ機構の設計方法。
  15. 請求項14に記載の差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記平面上で、前記ギヤ歯の歯先面の中心線を、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線に沿って延在する傾斜線を含むように定めると共に、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の外側端部を、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線の前記一対のクラウンギヤの内側端部よりも、前記一対のクラウンギヤの軸方向において前記ピニオンギヤの前記軸心から離間させる差動ギヤ機構の設計方法。
  16. 請求項15に記載の差動ギヤ機構の設計方法において、
    前記平面上で、前記歯先面の前記中心線に含まれる前記傾斜線と、前記ピニオン歯底面の前記中心線に含まれる前記傾斜線との距離を、前記ピニオンギヤの軸方向において一定にする差動ギヤ機構の設計方法。
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