以下、本発明の構成を図面に示す実施形態の一例に基づいて詳細に説明する。以下では、一例として、燃料電池車両に搭載される燃料電池またはこれを含む燃料電池システムに本発明を適用した場合を例示して説明するが、適用範囲がこのような例に限られることはない。
燃料電池システム1は、車両(図示せず)に搭載され、車両を駆動するための電力を供給する。図1に示すように、燃料電池システム1は、単位セルである燃料電池セルを複数個積層させて構成された燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10に空気等の酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給系20と、燃料電池スタック10に水素等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給系30とを備えている。
酸化剤ガス供給系20は、例えば、燃料電池スタック10(のカソード電極)に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給流路25と、燃料電池スタック10に供給され、各燃料電池セルで電気化学反応に供された後の酸化剤オフガスを燃料電池スタック10から排出する酸化剤ガス排出流路29と、を備えている。酸化剤ガス供給系20の各流路は、例えば、ゴムホースや金属製のパイプ等の配管によって構成することができる。
酸化剤ガス供給流路25には、上流側から、エアクリーナ21、コンプレッサ22、インタクーラ23等が備えられ、酸化剤ガス排出流路29には、マフラ28等が備えられている。
酸化剤ガス供給流路25において、エアクリーナ21は、大気中から取り込む酸化剤ガス(空気等)中の塵埃を除去する。コンプレッサ22は、前記エアクリーナ21を介して導入された酸化剤ガスを圧縮し、圧縮された酸化剤ガスをインタクーラ23へ圧送する。インタクーラ23は、コンプレッサ22から圧送されて導入された酸化剤ガスを通過させるときに、例えば冷媒との熱交換によって冷却し、燃料電池スタック10(のカソード電極)に供給する。
酸化剤ガス排出流路29において、マフラ28は、酸化剤ガス排出流路29に流れる酸化剤オフガス(排出ガス)を、例えば、気相と液相とに分離して外部に排出する。
一方、燃料ガス供給系30は、例えば、水素等の高圧の燃料ガスを貯留する水素タンク等の燃料ガス供給源31と、燃料ガス供給源31からの燃料ガスを燃料電池スタック10(のアノード電極)へ供給する燃料ガス供給流路35と、燃料電池スタック10から排出された燃料オフガスの一部を燃料ガス供給流路35に還流させる循環流路36と、循環流路36に分岐接続されて循環流路36内の燃料オフガスを外部へ排出(大気放出)する燃料ガス排出流路39とを有する。燃料ガス供給系30の各流路は、例えば、ゴムホースや金属製のパイプ等の配管によって構成することができる。
燃料ガス供給流路35には、燃料ガス供給流路35を開閉して燃料電池スタック10へ向けて流れる燃料ガスを遮断するための遮断弁35Vと、燃料ガス供給流路35を流れる燃料ガスの圧力を調整(減圧)するためのレギュレータ34とが設けられる。遮断弁35Vを開くと、燃料ガス供給源31に貯留された高圧の燃料ガスが燃料ガス供給源31から燃料ガス供給流路35に流出し、レギュレータ34により調圧(減圧)されて、燃料電池スタック10(のアノード電極)に供給される。
循環流路36には、上流側(燃料電池スタック10側)から、気液分離器40、燃料ガスポンプ(水素ポンプともいう)50等が備えられている。気液分離器40は、循環流路36に流れる燃料ガス(水素等)に含まれる生成水を気液分離して貯留する。この気液分離器40から分岐して、燃料ガス排出流路39が設けられている。燃料ガスポンプ50は、気液分離器40で生成水と分離された燃料オフガスの一部を圧送して燃料ガス供給流路35へ循環させる。
燃料ガス排出流路39には、燃料ガス排出流路39を開閉して、気液分離器40で分離した生成水と燃料電池スタック10から排出された燃料オフガスの一部を排出するための排気排水弁39Vが設けられる。
上記構成を有する燃料電池システムは、酸化剤ガス供給系20によって燃料電池スタック10(のカソード電極)に供給された空気等の酸化剤ガスと、燃料ガス供給系30によって燃料電池スタック10(のアノード電極)に供給された水素等の燃料ガスとの電気化学反応によって発電を行う。
次に、本実施形態の燃料電池システム1の気液分離器40および燃料ガスポンプ50の構造を詳細に説明する。気液分離器40は、燃料電池スタック10から排出される燃料オフガス中に含まれる水等の液体を分離し、分離された液体を貯留して排出するものである。
図2および図3に示すように、気液分離器40は、上ケース41aと下ケース41bとからなるケース41で構成され、図示していないOリング等により密閉ケースとなっている。上ケース41aの図3において右上部には、燃料電池スタック10の燃料オフガスが排出される開口部(図示せず)に連通するとともに循環流路36を構成する導入配管42が設けられ、燃料電池スタック10で発電した後の燃料オフガスがケース41内に導入されるようになっている。導入配管42は、燃料電池スタック10から気液分離器40に向かって下方に傾斜し、気液分離器40に連結されている。なお、気液分離器40と導入配管42との接続部分の詳細構造については、後述する。
また、図3に示すように、上ケース41aの上面の所定位置には、上方に向かって延びる管状の第1接続部46が設けられている。第1接続部46は、燃料ガスポンプ50の開口部51に挿入されている。気液分離器40によって液体が分離された燃料オフガスは、燃料ガスポンプ50によって吸い上げられた後、燃料ガスポンプ50の上面に設けられた送出部52を介して燃料ガス供給流路35に合流される。なお、燃料ガスポンプ50および気液分離器40の第1接続部46周辺の詳細構造については、後述する。
気液分離器40には、導入配管42の排出口より下方において、分離された水等の液体を排出する排出経路43と、この排出経路43の上流側に、分離された液体を貯留する液溜め部44が形成されている。
具体的には、下ケース41bは、下方に向けて徐々につぼまるような形状をしており、液溜め部44は、下ケース41bの最下部の凹部に形成されている。排出経路43は、液溜め部44の底面より僅かに高い位置に形成され、略水平方向に貫通する貫通孔である。
排出経路43としての貫通孔は、ケース41外まで通じており、ケース41外に設置された排気排水弁39Vに接続されている。また、貫通孔は、排気排水弁39Vを介して燃料ガス排出流路39に接続されている。
この燃料電池システム1では、燃料電池スタック10から排出された燃料オフガスは、導入配管42により気液分離器40のケース41内に導入され、気体と液体に分離される。気液分離器40により分離された気体は、燃料電池システム1の稼働中には、燃料ガスポンプ50によって燃料ガス供給流路35に合流され、燃料電池スタック10に再度供給される。
一方、気液分離器40により分離された液体は、燃料電池システム1の稼働中には、排気排水弁39Vを閉弁した状態で、下ケース41bの液溜め部44に貯留される。所定量の液体が液溜め部44に貯留されたことを、液溜め部44の液面センサ(図示せず)が検出すると、排気排水弁39Vが開弁し、貯留された液体の一部が、排出経路43を通過して外部に排出される。
また、燃料電池システム1の停止時には、排気排水弁39Vが開弁した状態となり、貯留された液体および燃料オフガスは、排出経路43を通過して外部に排出される。
次に、燃料ガスポンプ50および気液分離器40の第1接続部46周辺の構造について詳細に説明する。燃料ガスポンプ50は、ケース55と、ケース55内に回転可能に配置される2つのロータ56と、を含んでいる。ケース55の下面中央には、燃料オフガスが導入される開口部51が設けられており、上面中央には、燃料オフガスが送り出される送出部52が設けられている。また、燃料オフガスには水や水蒸気が含まれており、2つのロータ56が回転しケース55内に気流が生じることによって、燃料オフガス、水および水蒸気が気液分離器40から吸い込まれるとともに送出部52から送り出される。なお、騒音および振動対策のため、ロータ56の回転数は上限が設定されている。このため、ケース55内の水を完全に無くす(送出部52から送り出す)ことは困難である。
ケース55は、ポンプ室S50を構成する内壁面55aを有する。図4に示すように、内壁面55aの下部は、開口部51に向かって下方に傾斜するように形成されており、内壁面55aの最も低い位置に開口部51が形成されている。
気液分離器40の第1接続部46の外周面には、第1接続部46の外周面と開口部51の内周面との間をシールするOリング49aが設けられている。
ここで、本実施形態では、第1接続部46の先端(上端)は、燃料ガスポンプ50の内壁面55aの下部に沿った延長面(下部の傾斜面の延長面)S1以下の高さに配置されている。第1接続部46の先端には、第1接続部46の内周面46aの上端に連続して設けられるとともに内周面46aに向かって下方に傾斜する傾斜面46bが形成されている。これにより、第1接続部46の先端に付着した水滴は、気液分離器40に落下しやすくなる。なお、傾斜面46bの外縁から径方向外側には、第1接続部46を燃料ガスポンプ50の開口部51に挿入しやすくするためのテーパ面46cが径方向外側に向かって下方に傾斜するように形成されている。傾斜面46bおよびテーパ面46cによって、第1接続部46の先端が形成されている。図5に示すように、開口部51および第1接続部46は、上方から見て真円状に形成されている。
傾斜面46bは図4に示すように、内壁面55aの下部の傾斜角θ1以上の傾斜角θ2を有するように形成されており、本実施形態では、内壁面55aの下部の傾斜角θ1と等しい傾斜角θ2を有するように形成されている。なお、傾斜面46bの径方向長さL1は、テーパ面46cの径方向長さL2よりも長く形成されている。また、テーパ面46cは、傾斜面46bの傾斜角θ2よりも大きい傾斜角θ3を有するように形成されている。
また、傾斜面46bは、上述したように内壁面55aの下部に沿った延長面S1以下の高さに配置されており、本実施形態では、延長面S1上に配置されている。このため、ロータ56が回転した際に生じる気流は、傾斜面46bから内壁面55aに乱れることなくスムーズに流れるので、開口部51周辺において燃料オフガスが滞留するのを抑制することができる。これにより、開口部51から導入された燃料オフガス、水および水蒸気を送出部52から効率良く送り出すことができるので、内壁面55aの下部に水が溜まるのを抑制することができる。
次に、気液分離器40と導入配管42との接続部分の構造について詳細に説明する。上ケース41aの図3において右上部には、導入配管42が挿入されて接続される管状の第2接続部47が設けられている。図6に示すように、第2接続部47は、導入配管42の下流端の外周面42aに沿って延びる内周面47aを有するとともに、ケース41内に向かってわずかに下り勾配に形成されている。
導入配管42の下流端は、第2接続部47に挿入されており、導入配管42の外周面42aは第2接続部47の内周面47aに接触している。また、導入配管42の外周面42aには、導入配管42の外周面と第2接続部47の内周面47aとの間をシールするOリング49bが設けられている。
ここで、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最下部は、少なくとも導入配管42の下流端42bから下流側(図6の左側)において、下流側に向かって高さが単調的に低くなるように形成されており、本実施形態では、長さ方向の全域において、下流側に向かって高さが単調的に低くなるように形成されている。すなわち、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最下部は、段差のない直線状に形成されているとともに、導入配管42の外周面42aの延長面S2上に沿って延びるように配置されている。これにより、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最下部には、液滴が溜まる部分(凹部や上りの段差)がない。このため、燃料オフガスに含まれる水や水蒸気に起因して第2接続部47の内周面47aの周方向最下部に付着した水滴は、第2接続部47を下流側に移動し、液溜め部44に落下する。
また、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最上部には、段差部47bが形成されており、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最上部と導入配管42の内周面とが面一になっている。これにより、第2接続部47の内面積と導入配管42の内面積との差が大きくなるのを抑制することができるので、圧力損失が大きくなるのを抑制することができる。なお、本実施形態では図7に示すように、段差部47bは、第2接続部47の内周面47aの下部から上部に向かって徐々に段差が大きくなるように形成されている。また、段差部47bは、内周面47aの最下部から所定距離(第2接続部47の中心回りに所定角度)を隔てた位置から上側に形成されている。すなわち、段差部47bは、内周面47aのうちの水滴が流れる領域よりも上側のみに形成されている。
本実施形態では、上記のように、第1接続部46の先端は、内壁面55aの下部に沿った延長面S1以下の高さに配置され、第1接続部46の先端には、第1接続部46の内周面47aに連続して設けられるとともに内周面47aに向かって下方に傾斜する傾斜面46bが形成されている。これにより、第1接続部46の先端周辺における燃料オフガスの流れをスムーズにすることができる。すなわち、燃料ガスポンプ50の開口部51周辺において燃料オフガスが滞留するのを抑制することができる。このため、燃料ガスポンプ50内の水を燃料オフガスと共に燃料電池スタック10に効率良く送ることができるので、燃料ガスポンプ50内に水が残るのを抑制することができる。
また、第1接続部46の先端に、第1接続部46の内周面47aに連続して設けられるとともに内周面47aに向かって下方に傾斜する傾斜面46bを形成することによって、第1接続部46の先端(傾斜面46b)に付着した水滴は、気液分離器40に戻りやすくなる。すなわち、燃料ガスポンプ50の開口部51に水滴が溜まるのを抑制することができる。このため、燃料ガスポンプ50の開口部51に溜まった水滴が、凍結して開口部51を閉塞したり、車両停車後に振動等により気液分離器40に落下するとともに凍結して気液分離器40の排出経路43を閉塞したりするのを抑制することができる。
また、上記のように、傾斜面46bは、内壁面55aの下部に沿った延長面S1上に配置されている。これにより、内壁面55aの下部および傾斜面46bの周辺における燃料オフガスの流れを特にスムーズにすることができる。すなわち、燃料ガスポンプ50の開口部51周辺において燃料オフガスが滞留するのを特に抑制することができる。このため、燃料ガスポンプ50内の水を燃料オフガスと共に燃料電池スタック10に特に効率良く送ることができるので、燃料ガスポンプ50内に水が残るのを特に抑制することができる。
また、上記のように、第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最下部は、導入配管42の下流端42bから下流側において、下流側に向かって高さが単調的に低くなるように形成されている。これにより、第2接続部47の内周面47aの周方向最下部に付着した水滴は、第2接続部47を下流側に移動して液溜め部44に落下する。すなわち、第2接続部47の内周面47aの周方向最下部に例えば下流側に向かって上りの段差等が形成されている場合と異なり、気液分離器40の第2接続部47に水滴が溜まるのを抑制することができる。このため、気液分離器40の第2接続部47に溜まった水滴が、凍結して第2接続部47を閉塞したり、車両停車後に振動等により気液分離器40に落下するとともに凍結して気液分離器40の排出経路43を閉塞したりするのを抑制することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、段差部47bを第2接続部47の内周面47aの少なくとも周方向最下部に形成しない例について示したが、本発明はこれに限らず、内周面47aの全周に形成してもよい。
また、上記実施形態では、気液分離器40の第2接続部47の内周面47aに段差部47bを形成する例について説明したが、本発明はこれに限らない。第2接続部47の内周面47aに段差部47bを形成しなくてもよい。
また、例えば図8に示す本発明の第1変形例による燃料電池システムの気液分離器40のように、例えば、段差部47bを第2接続部47の内周面47aの上半分のみに形成し、内周面47aの下半分には形成しなくてもよい。この場合、段差部47bの段差の大きさを一定にしてもよい。
また、上記実施形態では、第1接続部46の先端にテーパ面46cを設ける例について示したが、テーパ面46cを設けなくてもよい。
また、例えば図9および図10に示す本発明の第2変形例による燃料電池システムの気液分離器40のように、第1接続部46の先端に、内周面46aに向かって下方に傾斜する切り込み46dを設けてもよい。このように構成すれば、テーパ面46cとケース55との間に溜まった水を切り込み46dによって気液分離器40に流れ落とすことができる。
また、上記実施形態では、気液分離器40の第2接続部47の少なくとも周方向最下部を段差のない直線状に形成する例について示したが、本発明はこれに限らない。導入配管42の下流端42bから下流側において、第2接続部47の少なくとも周方向最下部に、下流側に向かって下りの段差部を形成してもよい。