JP7133317B2 - 塩味増強剤及び飲食品の塩味増強方法 - Google Patents
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Description
[1] 焙煎茶葉の粉砕物及び/又は抽出物を含む、飲食品の塩味を増強する塩味増強剤。
[2] 前記飲食品中に0.01~15重量%の前記粉砕物及び/又は抽出物を配合することを特徴とする、[1]に記載の塩味増強剤。
[3] 焙煎茶葉の粉砕物及び又は抽出物を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の塩味を増強する塩味増強方法。
[4] 前記飲食品中に0.01~15重量%の前記粉砕物及び/又は抽出物を配合することを特徴とする、[3]に記載の塩味増強方法。
[5] 前記飲食品が、穀物製品又は液状飲食物であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載の塩味増強方法。
特に、本発明が提案する味覚付与剤及び味覚付与方法をその一態様である塩味付与剤及び塩味付与方法として実施した場合、経口摂取物(とりわけ飲食品)に塩味を全く使用しない又はその使用量を低減することができるため、飲食品における減塩効果を得ることができる。
本発明における茶葉は、茶樹Camellia sinensisの葉若しくは茎又はこれらを原料とするものである。かかる茶樹の品種、産地及び収穫時期は、特に限定されるものではない。また、茶葉は、その発酵工程の程度により不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶に大別されるが、本発明における茶葉は、かかる発酵程度に限定されるものではないが、不発酵茶(緑茶)を好適に用いることができる。
本発明における焙煎茶葉は、茶葉を焙煎処理したものをいう。かかる焙煎処理は、本発明の効果を奏する焙煎茶葉が得られる限りにおいて、その処理方法や条件は特に限定されるものではない。また、本発明における焙煎茶葉として、ほうじ茶を好適に用いることができる。
本発明における焙煎茶葉は、その一部又は全部を粉砕処理して得た粉砕物として好適に用いることができる(焙煎茶葉の粉砕物)。なお、かかる粉砕処理は、石臼、ボールミル、パワーミル、ピンミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いて粉砕して微粉状にすることができる。また、粉末茶の具体例としては、抹茶などを挙げることができる。
なお、茶葉の焙煎処理と粉砕処理の順序は、本発明の効果を奏する焙煎茶葉が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、加工処理を均一にする観点から、焙煎処理した後に粉砕処理するのが好ましい。
本発明における焙煎茶葉の抽出物は、焙煎茶葉やその粉砕物を抽出して得た抽出液、該抽出液を濃縮した濃縮液、及び前記抽出液又は濃縮液を粉体化した粉体物を包含する総称である。かかる焙煎茶葉の抽出物は、前記態様のいずれか1種又は2種以上で使用することができるが、焙煎茶葉やその粉砕物を抽出して得た抽出液(焙煎茶葉の抽出液)を単独で使用するのが調製の簡便性から好ましい。但し、焙煎茶葉の抽出物を添加する経口摂取物の性質にも依存するため、かかる選択は適宜行うことができる。
なお、本発明におけるカテキン類とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの8種カテキン類を総称したものをいう。
なお、本発明における糖類とは、単糖であるグルコース及びフルクトースと、二糖であるスクロース、三糖であるラフィノース及び四糖であるスタキオースを総称したものをいう。
なお、本発明におけるアミノ酸類とは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン及びテアニンを総称したものをいう。
本発明における味覚付与とは、焙煎茶葉の粉砕物を添加することにより添加対象物に味覚上の特性を付与することをいう。味覚上の特性を付与するものであるから、添加対象物は、その性質上、経口摂取物に限られる。なお、本発明における経口摂取物は、各種食品や各種飲料(各種飲食物)を包含するものであるが、かかる飲食品以外であっても経口により摂取されるものも包含するものであり、例えば経口投与薬の各種を挙げることができる。かかる経口摂取薬の剤形は、本発明の味覚付与剤を添加できる限りにおいて特に限定されるものではなく、例えば粉末、錠剤、カプセル、顆粒、ペースト、シロップなどを挙げることができる。この場合、摂取目的となる有効成分の他、かかる剤形を形成するための副原料を使用するのが通例である。なお、経口摂取薬の目的は、特に限定されるものではない。
本発明における飲食物の種類は、本発明の効果を奏する焙煎茶葉が得られる限りにおいて、特に限定されるものではない。かかる飲食物としては、食肉、魚介類、野菜類、果実類等の生鮮食品、加工畜産物、加工水産物、加工果実、加工野菜、加工穀類、乳製品、油脂類、大豆加工食品、調味料、パン類、ケーキ類、菓子類、麺類、液状飲食物などが挙げられる。
かかる加工穀類としては小麦製品や米製品を挙げることができ、さらに小麦製品としてはパスタやパン、米製品としては米飯を挙げることができる。また、かかる液状飲食物としては、つゆやスープ等を挙げることができる他、嚥下食、流動食、ゼリー、プリン等の咀嚼せずに飲み込むことがきできる飲食品も含まれる。
本発明における味覚付与剤は、塩味付与剤として好適に用いることができる。より具体的には、焙煎茶葉の粉砕物を添加することにより添加対象物に塩味を付与することができる。
本発明における塩味付与剤の効果は、味覚上のものであるため官能評価で確認できるが、例えば味覚センサーなどの機器で確認することもできる。特に、味覚センサーなどの機器では、味覚上の特性として塩味を数値化して確認することができる。
本発明における味覚付与剤は、旨味付与剤として好適に用いることができる。より具体的には、焙煎茶葉の粉砕物を添加することにより添加対象物に旨味を付与することができる。
本発明における旨味付与剤の効果は、味覚上のものであるため官能評価で確認できるが、例えば味覚センサーなどの機器で確認することもできる。特に、味覚センサーなどの機器では、味覚上の特性として旨味を数値化して確認することができる。
・サンプル調製
市販の生米(静岡こしひかり無洗米 株式会社遠州米穀社製)150gと、該生米に対して0.5重量%の食塩(0.75g)に水を加えて、市販の炊飯器(JJ-M31A マイコンジャー炊飯器 ハイアール社製)を用いて炊飯米350gを得た。次に、得られた炊飯米から25gを分取したものに水100mLを加えて粥にした(工程1)。
また、市販のほうじ茶粉末(伊藤園社製)0.075gを熱水100mL(95℃)で2分間抽出することにより、ほうじ茶抽出液を得た(工程2)。なお、使用したほうじ茶粉末は、炊飯米25gに対して0.3重量%である。
次に、工程1で得た粥と、工程2で得たほうじ茶抽出液とを混合し、遠心分離(AX-310 TOMY)(3000rpm、10分)した後、上清をサンプル液とした(実施品)。なお、比較例としては、工程1で得た粥を使用した(比較品)。
前出の実施品及び比較品について味覚センサー試験を実施し、各サンプルにつき酸味、塩味、旨味、苦味、渋味、旨味コク、苦味雑味、渋味刺激の8種類について測定した。その結果を表1に示す。なお、味覚センサー試験においては、試験結果における目盛りが1以上の差があると官能評価で識別できるとされている。
測定の結果、実施品は、比較品と比較して、塩味、旨味及び渋味刺激が顕著に高く、とりわけ塩味及び旨味の評価項目については1程度の差があった。
また、炊飯米に対してほうじ茶粉末5.0重量%を加えたものについても、酸味、塩味、旨味、苦味、渋味、旨味コク、苦味雑味、渋味刺激の8種類について測定した。測定の結果、比較品と比較して、塩味、旨味及び渋味刺激が顕著に高く、とりわけ塩味及び旨味の評価項目については1以上の差があった。
・サンプル調製
市販のほうじ茶(伊藤園社製)を用意してほうじ茶抽出液を調製した。溶媒1L当たり7gのほうじ茶葉を用意し、90℃の熱水で90秒間抽出した後、メッシュで濾過してほうじ茶抽出液を得た。また、市販の緑茶(伊藤園社製)を用意して、同様の手法により緑茶抽出液を用意した。
次に、市販の濃縮めんつゆ(商品名:「濃いだし本つゆ」,キッコーマン食品社製)を70g毎に3本用意した。また、濃縮つゆを希釈するための割り材としては、前記ほうじ茶抽出液、前記緑茶抽出液、及びコントロールとして熱水の3種類を用意した。
そして、めんつゆ70gに対して割り材としてのほうじ茶抽出液350gを混合して得た混合液1(実施品1)と、めんつゆ70gに対して割り材としての緑茶抽出液350gを混合して得た混合液2(実施品2)と、めんつゆ70gに対して熱水350gを混合して得た混合液3(比較品)とをそれぞれ得た。
前出の実施品1~2及び比較品について味覚センサー試験を実施し、各サンプルにつき酸味、塩味、旨味(先味)、旨味(後味)、苦味(先味)、苦味(後味)の6種類について測定した。また、前出の実施品1~2及び比較品について味覚センサー試験を実施し、酸味、塩味、旨味(先味)、旨味(後味)の4種類について測定した。
その結果を表2~3に示す。なお、味覚センサー試験においては、試験結果における目盛りが1以上の差があると官能評価で識別できるとされている。
測定の結果、実施品1~2は、比較品と比較して、塩味及び旨味の評価項目が顕著に高く1程度の差があった。
・サンプル調製
市販のパンミックス(日本フーズ株式会社製)315gと付属のイースト菌2.7gに水200gを加えたものに対して、市販のほうじ茶粉末(伊藤園製)15gを添加した。これを市販のホームベーカリー(SHV-722、シロカ株式会社製)を用いることにより、ほうじ茶粉末配合パン530gを得た。なお、一般的に、パンミックスの食塩相当量は5.3g(ミックス1袋315gあたり)である。前記ほうじ茶粉末配合パン20gを採取したものに対して水100gを加え、遠心分離(AX-310 TOMY)(3000rpm、10分)した後、上清をサンプル液(実施品)とした。
また、比較品としては、市販のほうじ茶粉末を添加しないこと以外は、前記サンプル品と同様の方法にて調製した。
脂質類を含有する飲食品については、味覚センサー試験において正しい測定結果を得ることが困難であるため、本試験におけるパンについては、味覚センサー試験の代わりに官能評価試験を実施した。
なお、官能評価は、9人のパネラーが上記の実施品と比較品とを食し、実施品と比較品のいずれにおいて塩味をより感じたか又はどちらでもないとの評価させることにより実施した。その結果、パネラー全員が、実施品(ほうじ茶粉末を配合したパン)の方が、比較品(ほうじ茶粉末を配合しないパン)よりも塩味をより感じたとの結果を得た。
・サンプル調製
市販の薄力粉(日本製粉社製)125gと強力粉(日本製粉社製)125gをふるいがけ(目開き355μm)して、ベーキングパウダー(大宮食糧工業社製)6g、グラニュー糖(フジ日本精糖社製)68g、食塩0.3gを加えて、市販のほうじ茶粉末(伊藤園社製)を15g添加した後、ショートニング(雪印メグミルク社製)45gを加えて、全体がなじむまで混ぜ合わせた。これに市販の卵(イセ食品社製)60g、牛乳(雪印メグミルク社製)110cc、果糖ぶどう糖液糖(日本食品化工社製)15gを加えて混ぜ合わせスコーン生地を作成した。この生地を長方形型(縦10cm、横2.5cm)を用いて1cmの厚さに型抜きし、オーブン(RCK-20AS、リンナイ社製)を用いて150℃、17分間加熱してほうじ茶スコーン559.3gを得た。
上述のとおり、脂質類を含有する飲食品については、味覚センサー試験において正しい測定結果を得ることが困難であるため、ショートニングを配合したスコーンについては、味覚センサー試験の代わりに官能評価試験を実施した。
なお、官能評価は、8人のパネラーが上記の実施品と比較品とを食し、実施品と比較品のいずれにおいて塩味をより感じたか又はどちらでもないとの評価させることにより実施した。その結果、パネラーの大多数に相当する7人が、実施品(ほうじ茶粉末を配合したスコーン)の方が、比較品(ほうじ茶粉末を配合しないスコーン)よりも塩味をより感じたとの結果を得た。
上述のとおり、脂質類を含有する飲食品については、味覚センサー試験において正しい測定結果を得ることが困難であるため、ショートニングを配合しない以外は実施品(ほうじ茶粉末を配合したスコーン)と同様に作製したスコーンについて、味覚センサー試験を実施した。また、比較品としては、ショートニングを配合しない以外は比較品(ほうじ茶粉末を配合しないスコーン)と同様に作製したスコーンを用いた。
前記ほうじ茶粉末配合スコーン20gを採取したものに対して水100gを加え、遠心分離(AX-310 TOMY)(3000rpm、10分)した後、上清をサンプル液(実施品)とした。
また、比較品としては、市販のほうじ茶粉末を添加しないこと以外は、前記サンプル品と同様の方法にて調製した。
上記試験の結果から、緑茶及びほうじ茶が、飲食物に対して塩味及び旨味を付与する効果を有することが明らかになった。
Claims (5)
- 焙煎茶葉の粉砕物及び/又は抽出物を含む、飲食品の塩味を増強する塩味増強剤。
- 前記飲食品中に0.01~15重量%の前記粉砕物及び/又は抽出物を配合することを特徴とする、請求項1に記載の塩味増強剤。
- 焙煎茶葉の粉砕物及び又は抽出物を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の塩味を増強する塩味増強方法。
- 前記飲食品中に0.01~15重量%の前記粉砕物及び/又は抽出物を配合することを特徴とする、請求項3に記載の塩味増強方法。
- 前記飲食品が、穀物製品又は液状飲食物であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の塩味増強方法。
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神戸女子短期大学論攷, 2012年,57巻,p.55-63 |
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