JP7129767B2 - 生体触媒用反応溶媒とそれを用いた基質と生体触媒との反応方法 - Google Patents

生体触媒用反応溶媒とそれを用いた基質と生体触媒との反応方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 第16回日本蛋白質科学会年会 プログラム・要旨集(第146頁、第16回日本蛋白質科学会年会事務局、発行日:平成28年5月19日)で発表
特許法第30条第2項適用 第16回日本蛋白質科学会年会(福岡国際会議場(福岡市博多区石城町2-1))において平成28年6月9日に発表
本発明は、生体触媒用反応溶媒とそれを用いた基質と生体触媒との反応方法に関する。
常温で液体のイオン液体は、不揮発性、高極性、低融点等の特異的な物性を有し、材料からバイオまで幅広い分野での応用が期待される。近年、イオン液体のタンパク質保存液への応用が検討されている中、本発明者らは、特定官能基を導入したアンモニウム型イオン液体が、化学構造に依存して酵素を高濃度で溶解し、長期にそれらの活性を保持することを見出した(特許文献1)。しかしながら、酵素反応においてイオン液体を反応場として利用することや、その有用性については検討されていない。
特許文献1において、保存後の酵素活性保持率を得る際には、極少量の酵素/イオン液体保存溶液を、水(バッファー)を溶媒とした系に添加して、酵素の活性を確認しているが、イオン液体を溶媒とした高濃度の条件を含む濃度範囲での酵素反応効率、耐熱性及び濃度依存性等の生体触媒用反応溶媒についての知見は得られていない。
一般的に反応温度を上げると反応(酵素反応を含む)は促進されるが、酵素反応の場合、酵素至適温度が存在し、酵素によって様々だが、多くは30~40℃であり、それより高温にすると酵素が失活し、反応率が低下する。酵素反応については数多くの検討がされているが(例えば、特許文献2~7を参照)、溶媒としてイオン液体を用い、イオン液体の構造及び含有する官能基と反応効率の相関、さらには、至適温度を超える領域での酵素の耐熱性、反応効率に着目した検討はない。至適温度での酵素の高反応率化をはじめ、イオン液体の融点の極低温化、特に酵素の耐熱化は反応温度の適用範囲を拡張し、さらには、その耐熱化により、一般的な至適温度より高温領域において高反応率化が可能となれば、生命科学、酵素工学、蛋白質工学、遺伝子工学、医療・医薬分野、食品分野、資源・エネルギー分野、環境分野などの様々な分野への応用が期待できる。
特開2016-41682号公報 特開2012-217375号公報 特開2015-27260号公報 特開2009-203454号公報 特開2010-220490号公報 特開2005-270007号公報 特開2009-165362号公報
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、高反応率で生体触媒反応が可能な生体触媒用反応溶媒、特に、高い反応温度においても、高反応率で生体触媒反応が可能な生体触媒用反応溶媒とそれを用いた基質と生体触媒との反応方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の生体触媒用反応溶媒は、アンモニウム塩型イオン液体を含有することを特徴としている。
この生体触媒用反応溶媒において、前記アンモニウム塩型イオン液体は、カチオンが水素結合性官能基を有することが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記カチオンの水素結合性官能基が、水酸基及び/又はカルボキシ基であることが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記カチオンは、前記水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基を有することが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記アンモニウム塩型イオン液体が、下記式(I):
Figure 0007129767000001
(式中、Rはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。nは1~4の整数を示す。)で表わされるアンモニウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体であることが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記アンモニウム塩型イオン液体が、式(I)で表されるイオン液体であり、前記Rはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基を1個以上有することが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記アンモニウム塩型イオン液体が、下記式(II):
Figure 0007129767000002
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。)で表されるイミダゾリウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体であることが好ましい。
この生体触媒用反応溶媒において、前記アンモニウム塩型イオン液体が、式(II)で表されるイオン液体であり、R~Rはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基を1個以上有することが好ましい。
本発明の基質と生体触媒との反応方法は、前記生体触媒用反応溶媒を用いて、次の参照条件Aにおいて基質及び生体触媒をいずれも同一濃度として反応を行った場合に、参照条件Aで反応を行った場合よりも反応率が高い温度Tで反応を行うことを特徴としている:
(参照条件A)
水又は緩衝液を溶媒に用いて、基質と生体触媒との反応を行った場合の反応率が最大となる温度Tmax以上の前記温度Tで前記反応を行う。
本発明の生体触媒用反応溶媒によれば、高反応率で生体触媒反応が可能で、特に、高い反応温度においても、高反応率で生体触媒反応が可能となる。
実施例1~5、比較例1~3の30℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例1~5、比較例2、3の40℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例1~5、比較例1~3の50℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例1~5、比較例1~3の70℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例12~15、比較例8~10の37℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例12~15、比較例8~10の40℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。 実施例12~15、比較例8~10の50℃での酵素反応における時間と基質残存率の関係である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.生体触媒用反応溶媒に使用されるアンモニウム塩型イオン液体
本発明の生体触媒用反応溶媒は、アンモニウム塩型イオン液体を含有する。
上記アンモニウム塩型イオン液体は、アンモニウムカチオン(式(I))、イミダゾリウムカチオン(式(II))、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、イソキノリニウムカチオン、オキサゾリニウムカチオン、チアゾリニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、グアニジウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン、トリアジニウムカチオン、キノリニウムカチオン、インドリニウムカチオン、キノキサリニウムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、カチオン性アミノ酸等のカチオンを持つイオン液体である。なお、ここで例示したカチオンは、記載したとおりの基本構造のカチオンの他、上記したような基等を含むものを包含する総称として示している。
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。アンモニウムカチオンは、環状で剛直な構造に比べて柔軟な構造であり、生体触媒の立体構造の保持性を高めることができる。
本発明に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、カチオンに水素結合性官能基を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。カチオンに水素結合性官能基を有しないものとしては、例えば、カチオンにおける官能基を導入可能な部位(窒素部位や、窒素と共に環を構成する炭素部位などの、基本骨格となる化学構造に含まれる原子)のうち、その少なくとも1つがアルキル基で置換されたものを挙げることができ、その中でも、当該部位の全てがアルキル基で置換されたものや、当該部位の一部がアルキル基で置換され、かつそれ以外の部位が窒素に直接結合した水素原子であるもの等を挙げることができる。
上記アルキル基は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロパン-1-イル基、プロパン-2-イル基、ブタン-1-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ペンタン-1-イル基、1-メチルブタン-1-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、3-メチルブタン-1-イル基、1-エチルブタン-1-イル基、1,1-ジメチルプロパン-1-イル基、1,2-ジメチルプロパン-1-イル基、2,2-ジメチルプロパン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、デカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基等が挙げられる。中でも、炭素数1~8のものが好ましく、炭素数1~4のものがより好ましい。
本発明に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、カチオンに水素結合性官能基を有することが好ましい。この場合、アンモニウム塩型イオン液体のカチオンにおける官能基を導入可能な部位(窒素部位や、窒素と共に環を構成する炭素部位などの、基本骨格となる化学構造に含まれる原子)のうち、その少なくとも1つが水素結合性官能基((例えば、水酸基及び/又はカルボキシ基)もしくは水素結合性官能基を含む基(例えば、水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基)で置換されたものを挙げることができ、その中でも、当該部位の一部が水素結合性官能基もしくは水素結合性官能基を含む基で置換され、かつそれ以外の部位が窒素に直接結合した水素原子であるか、及び/又はアルキル基で置換されたものや、当該部位の全てが水素結合性官能基で置換されたもの等を挙げることができる。このアルキル基の具体的態様や好ましい例は、上述したとおりである。
その中でも、上記アンモニウム塩型イオン液体のカチオンにおける官能基を導入可能な部位の全てが水素結合性官能基((例えば、水酸基及び/又はカルボキシ基)もしくは水素結合性官能基を含む基(例えば、水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基)で置換されたものであるか、あるいは当該部位の一部が水素結合性官能基もしくは水素結合性官能基を含む基で置換され、かつそれ以外の部位が窒素に直接結合した水素原子であるもの(すなわち官能基としてアルキル基等を含まないこと)が好ましい。さらに、窒素に直接結合した水素原子を1つ以上有することがより好ましい。
一般的に、生体触媒の一つである酵素はアミノ酸残基から発現する基質特異性、反応特異性を持ち、反応触媒として働く。基質特異性は、反応部位の立体構造とアミノ酸残基により、結合する基質の構造を認識、選択して、特定の基質のみ反応することをいう。反応特異性は、酵素が特定の化学反応しか触媒しないことをいい、反応部位の立体構造とアミノ酸残基並びに一部の酵素が持つ金属イオンが関与する。例えば、酸化還元酵素等の酵素内部に存在する金属イオンは、アミノ酸残基と3次元的に錯体形成して触媒作用を発現する。つまり、基質特異性、反応特異性、金属イオン等の失活は、アミノ酸残基の立体構造の崩壊が主要因である。そのため、酵素反応率を高めるためには、酵素表面の親水性を発現する水酸基、カルボニル基、アミノ基等のアミノ残基と、活性部位の酵素内部の水酸基、カルボニル基、アミノ基等の親水性のアミノ酸残基及び疎水性官能基を有するアミノ酸残基を保護して、酵素の立体構造を保持することが重要となる。
一方で、酵素の変性による反応率の低下(失活)は、酵素の分子間及び分子内の静電気相互作用による吸着によっても引き起こされる。本発明に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、そのカチオンとアニオンの構造による静電作用から、酵素分子内外の相互作用を抑制し、酵素の立体構造を保持し、酵素の活性を保持することができる。
さらに、本発明の生体触媒用反応溶媒は、イオン液体構造中のカチオンに持つ水素結合性官能基、水素原子が、酵素表面、内部のアミノ酸残基の水酸基、カルボニル基、アミノ基等のアミノ酸残基と水素結合して、その立体構造を保護する。また、従来、生体触媒用反応溶媒として使用されている水・バッファーは、酵素表面の親水性部位との相互作用が可能だが、酵素内部の疎水性部位の立体構造を保護できず触媒活性を保持できない。しかしながら、本発明に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、構造中のアルキル鎖により内部の疎水性官能基を有するアミノ酸残基も保護し、酵素の立体構造を保持して触媒活性を維持することができる。つまり、イオン液体の構造的特徴に加えて、水酸基、カルボキシ基等を含む水素結合性官能基を導入した上記アンモニウム塩型イオン液体は、強固に酵素の立体構造を保持すること可能とし、酵素反応効率を高め、優れた生体触媒用反応溶媒として用いることができる。
さらに、酵素は、熱によってアミノ酸残基間の水素結合の切断、酵素分子の熱振動が起因する酵素分子同士の衝突で立体構造が壊れ、変性したり、やはり、熱による酵素同士の吸着での凝集体の発生で生じる溶解度の低下等で失活するが、上記アンモニウム塩型イオン液体は、他の安定化剤より、アミノ酸残基間の水素結合による強固な立体構造の保持性で上記の熱変性、失活を抑制し、酵素の耐熱化、高温反応を可能とし、さらに、反応を促進し、反応効率を上げることができる。
上記水素結合性官能基としては、例えば、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等が挙げられる。
酸素含有基としては、例えば、水酸基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボキシレート基、尿素基、ウレタン基、アミド基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバミン酸基、カルバメート基等が挙げられる。
窒素含有基としては、例えば、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
硫黄含有基としては、例えば、硫酸基(-O-S(=O)-O-)、スルホニル基(-S(=O)O-)、スルホン酸基(-S(=O)-)、メルカプト基(-SH)、チオエーテル基(-S-)、チオカルボニル基(-C(=S)-)、チオ尿素基(-N-C(=S)-N-)、チオカルボキシル基(-C(=S)OH)、チオカルボキシレート基(-C(=S)O-)、ジチオカルボキシル基(-C(=S)SH)、ジチオカルボキシレート基(-C(=S)S-)等が挙げられる。
リン含有基としては、例えば、リン酸基(-O-P(=O)(-O-)-O-)、ホスホン酸基(-P(=O)(-O-)-O-)、ホスフィン酸基(-P(=O)-O-)、亜リン酸基(-O-P(-O-)-O-)、亜ホスホン酸基(-P(-O-)-O-)、亜ホスフィン酸基(-P-O-)ピロホスフェート基[(-O-P(=O)(-O-))―O-]等が挙げられる。
これらの中でも、カチオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基及び/又はカルボキシ基であることが好ましい。すなわち、カチオンに水酸基もしくはカルボキシ基を1個以上、又は、水酸基及びカルボキシ基を各1個以上有するイオン液体であることが好ましい。
また、カチオンに水素結合性官能基を持つアルキル基を有してもよく、水素結合性官能基が結合したアルキル基として、水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基を有することが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基等が挙げられる。
酵素内部に入り込み、立体構造を保持するためには、イオン液体の分子サイズが小さい方が良く、水素結合性官能基を持つアルキル基におけるアルキル部位の炭素数は、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。
上記ヒドロキシアルキル基は、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
上記カルボキシアルキル基は、カルボキシ基を1個以上有し、好ましくはアルキル部位(カルボキシ基の炭素は含まない。)が炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
ここで、アルキル部位が酸素原子を含む場合、該酸素原子は、例えば、アルキル部位にエーテル結合(-O-)、カルボニル基(-C=O)、エステル結合(-C(=O)O-)、アミド結合(-C(=O)N-)、尿素結合(-NHC(=O)NH-)又はウレタン結合(-NHC(=O)O-)を形成する。したがって本発明において「アルキル部位が酸素原子を含む」とは、酸素原子を含む原子団として窒素原子等のヘテロ原子をも含む基によってアルキル部位が中断される場合を包含する。
上記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、アルコキシヒドロキシアルキル基、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル基等が挙げられる。
モノヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシプロパン-2-イル基、2-ヒドロキシプロパン-2-イル基、1-ヒドロキシブタン-1-イル基、2-ヒドロキシブタン-1-イル基、3-ヒドロキシブタン-1-イル基、4-ヒドロキシブタン-1-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシブタン-2-イル基、2-ヒドロキシブタン-2-イル基、3-ヒドロキシブタン-2-イル基、4-ヒドロキシブタン-2-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-ヒドロキシペンタン-1-イル基、6-ヒドロキシヘキサン-1-イル基、7-ヒドロキシヘプタン-1-イル基、8-ヒドロキシオクタン-1-イル基、9-ヒドロキシノナン-1-イル基、10―ヒドロキシデカン-1-イル基等が挙げられる。これらのモノヒドロキシアルキル基の中でも、炭素数1~12のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~5のものが特に好ましい。
ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシアルキル基としては、例えば、1,2-ジヒドロキシエチル基等のジヒドロキシエチル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基等のジヒドロキシプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基等のジヒドロキシプロパン-2-イル基;トリヒドロキシプロパン-1-イル基;トリヒドロキシプロパン-2-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基等のジヒドロキシブタン-1-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基等のトリヒドロキシブタン-1-イル基;テトラヒドロキシブタン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基等のジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;トリヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;テトラヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基等のジヒドロキシブタン-2-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基等のトリヒドロキシブタン-2-イル基;テトラヒドロキシブタン-2-イル基;1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基;ジ、トリ、テトラ、又はペンタヒドロキシペンタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサヒドロキシヘキサン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、又はヘプタヒドロキシヘプタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシオクタン-1-イル基等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキル基の中でも、好ましくは水酸基を2~6個有する炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~5の直鎖状のヒドロキシアルキル基や、次式で表わされる分岐鎖状のヒドロキシアルキル基が好ましい。
Figure 0007129767000003
(式中、R11は水素原子、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基、又は炭素数1~3の直鎖状のモノヒドロキシアルキル基を示す。)
これらのヒドロキシアルキル基の中でも、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基、ペンタヒドロキシヘキサン-1-イル基が好ましい。
上記カルボキシアルキル基としては、例えば、上記において例示したモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシアルキル基の水酸基をカルボキシ基に置換したものが挙げられる。
モノカルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロパン-1-イル基、2-カルボキシプロパン-1-イル基、3-カルボキシプロパン-1-イル基、1-カルボキシプロパン-2-イル基、2-カルボキシプロパン-2-イル基、1-カルボキシブタン-1-イル基、2-カルボキシブタン-1-イル基、3-カルボキシブタン-1-イル基、4-カルボキシブタン-1-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-カルボキシブタン-2-イル基、2-カルボキシブタン-2-イル基、3-カルボキシブタン-2-イル基、4-カルボキシブタン-2-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-カルボキシペンタン-1-イル基、6-カルボキシヘキサン-1-イル基、7-カルボキシヘプタン-1-イル基、8-カルボキシオクタン-1-イル基、9-カルボキシノナン-1-イル基、10-カルボキシデカン-1-イル基等が挙げられる。これらのカルボキシ基含有アルキル基の中でも、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~5である。
また、ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、例えば、上記において例示したジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシアルキル基の水酸基の一部をカルボキシ基に置換したものが挙げられる。
本発明に使用されるイオン液体のアニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、ホウ素系アニオン、フッ素系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオン等が挙げられる。
前記ハロゲン系アニオンとしては、例えば、クロリドイオン、ブロミドイオン、ヨードイオン等が挙げられる。
前記硫黄系アニオンとしては、スルホナートアニオン、水素スルホナートアニオン、アルキルスルホナートアニオン(例えば、メタンスルホナート、エチルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホナート、スチレンスルホナート、3-スルホプロピルメタクリレートアニオン、3-スルホプロピルアクリレート等)、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、アルキルスルファートアニオン(例えば、メチルスルファートアニオン、エチルスルファートアニオン、ブチルスルファートアニオン、オクチルスルファートアニオン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファートアニオン等)等が挙げられる。
前記リン系アニオンとしては、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、二水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、水素ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン(例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファートアニオン、ジブチルホスファートアニオン等)、アルキルホスホナートアニオン(例えば、メチルホスホナートアニオン、エチルホスホナートアニオン、プロピルホスホナートアニオン、ブチルホスホナートアニオン、メチルメチルホスホナートアニオン等)、アルキルホスフィナートアニオン、ヘキサアルキルホスファートアニオン等が挙げられる。
前記シアン系アニオンとしては、例えば、テトラシアノボレートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等が挙げられる。
前記ホウ素系アニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレートアニオン、ビスオキサレートボラートアニオン、テトラフェニルボレートアニオンのようなテトラアルキルボレートアニオン等が挙げられる。
前記フッ素系アニオンとしては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド等)、パーフルオロアルキルスルホナートアニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフラートアニオン、パーフルオロオクタンスルホーナートアニオン等)、フルオロホスファートアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスファートアニオン、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファートアニオン等)、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン等)、フルオロハイドロジェネートアニオン等が挙げられる。
前記窒素酸化物系アニオンとしては、例えば、硝酸アニオン、亜硝酸アニオンが挙げられる。
前記カルボン酸アニオンは、分子中に、少なくとも1個以上のカルボン酸アニオン(-COO)を持つ有機酸アニオンであり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を持つ官能基を含んでいても良い。特に限定されないが、カルボン酸アニオンとしては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸アニオン、不飽和脂肪族カルボン酸アニオン、脂環式カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオン、カルボニルカルボン酸アニオン、アルキルエーテルカルボン酸アニオン、ハロゲンカルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン等が挙げられる。(以下に挙げるカルボン酸アニオンの炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む)
前記飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数1~22が好ましい。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記不飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数3~22が好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、マレイン酸、フマル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記脂環式カルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、シクロヘキサン環骨格を有する脂環式カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記芳香族カルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環又は複数の環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり炭素数6~20が好ましい。中でも、ベンゼン環骨格を有する芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、安息香酸、ケイヒ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数2~24が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する炭素数2~7の飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシデカンサン酸、3-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、セレブロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数3~22が好ましい。具体的には、リシノール酸、リシノレイン酸、リシネライジン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数4~20が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する6員環骨格の脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、シキミ酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環あるいは複数の環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、1~3個の水酸基を有するベンゼン環骨格の芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記カルボニルカルボン酸アニオンは、分子内にカルボニル基を有する炭素数3~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のカルボニル基を有する炭素数3~7のカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH((CHCO(CH)COO(p及びqは0~2の整数を示す。)で表わされるカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、ピルビン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記アルキルエーテルカルボン酸アニオンは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル カルボン酸アニオンを含む、分子内にエーテル基を有する炭素数2~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のエーテル基を有する炭素数2~12のアルキルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH(CHO(CHCOO(r及びsは0~4の整数を示す。)で表わされるアルキルエーテルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酪酸、エトキシ酪酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記ハロゲンカルボン酸アニオンとしては、炭素数2~22のハロゲンカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、パーフルオロノナン酸等のフッ素置換のハロゲンカルボン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記アミノ酸アニオンとしては、特に限定されないが、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、サルコシン、アミノ酪酸、メチルロイシン、アミノカプリル酸、アミノヘキサン酸、ノルバリン、アミノ吉草酸、アミノイソ酪酸、チロキシン、クレアチン、オルニチン、オパイン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン、デスモシン等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
このような上記アンモニウム塩型イオン液体の酵素の立体構造の保持性は、アニオンにも上記水素結合性官能基を導入することにより、一層向上することができる。
アニオンに水素結合性官能基を有する場合、当該官能基としては酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合可能な基が含まれ、上記の硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオンが好ましい。
アニオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基が好ましく、中でも水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基がより好ましい。
イオン液体は、広義には100℃以下の融点である。本発明に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、生体触媒を低温領域で反応する際、反応温度の適用範囲を拡張するために、より低温下で液体であることが望ましく、アンモニウムカチオンの官能基や特性基及びアニオンの選択により、融点(凝固点)は好ましくは25℃以下、より好ましくは-5℃以下、特に好ましくは-25℃未満である。また、高温領域で反応する際、イオン液体は有機塩の構造的特徴から不揮発性であり、分解温度も高く、例えば、溶媒としての水より高温の100℃以上でも反応が可能で反応温度の適用範囲を拡張でき、また、反応溶液における生体触媒濃度変化が少なく、引火性、可燃性が非常に低いため、利便性が高い。
本発明の生体触媒用反応溶媒に使用されるアンモニウム塩型イオン液体は、カチオンとアニオンの組み合わせから構成されており、そのカチオン、アニオン構造を選択することにより、溶解が困難な基質を高濃度で溶解することが可能となる。また、水素結合性官能基は、酵素を含む生体触媒の溶解性、立体構造の保持性を高め、水素結合性官能基を導入した上記アンモニウム塩型イオン液体は、導入していないイオン液体と比較して、酵素への溶解性が高く、高濃度の酵素溶液でも液性を維持していることから、従来の酵素反応溶媒よりも高濃度での反応が可能となる。
(式(I)で表されるイオン液体)
上記式(I)で表されるイオン液体は、無水イオン液体及び空気中の水分を吸収した含水イオン液体であってもよく、式(I)で表されるアンモニウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体からなる。
式(I)において、アンモニウムカチオンのRはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位(カルボキシ基の炭素は含まない。)が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位(カルボキシ基の炭素は含まない。)がが炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示す。これらのヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、上記に例示したものが挙げられる。
式(I)において、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を示す。このアルキル基としては、上記に例示したものが挙げられる。
式(I)において、nは1~4の整数を示し、1~3の整数であることが好ましい。
また、アニオンへ水素結合性官能基を導入することにより、更に強固に酵素表面、内部のアミノ酸残基と水素結合を形成することができるので、酵素の立体構造の保持性を高めることができる。
式(I)で表されるイオン液体は、例えば、特許文献1に記載の方法で合成することができる。
(式(II)で表されるイオン液体)
上記式(II)で表されるイオン液体は、無水イオン液体及び空気中の水分を吸収した含水イオン液体であってもよく、式(II)で表わされるイミダゾリウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体からなる。
式(II)において、R~Rはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位(カルボキシ基の炭素は含まない。)が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位(カルボキシ基の炭素は含まない。)が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。これらのヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、上記に例示したものが挙げられる。
また、アニオンへ水素結合性官能基を導入することにより、更に強固に酵素表面、内部のアミノ酸残基と水素結合を形成することができるので、酵素の立体構造の保持性を高めることができる。
式(II)で表されるイオン液体は、例えば、特許文献1に記載の方法で合成することができる。
酵素等の生体触媒の立体構造を保持し、活性を保持するためには、式(II)のイミダゾリウム塩のような環状で剛直な構造より、柔軟な構造の式(I)のアンモニウム塩の構造の方が酵素の複雑な立体構造の内部まで効率よく入り込むことができ、好ましい。さらに、酵素表面及び内部の親水性のアミノ残基との相互作用による保護で立体構造を保持する観点から、上記アンモニウム塩型イオン液体のカチオンにおける官能基を導入可能な部位の全てが水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基で置換されたものであるか、あるいは当該部位の一部が水酸基及び/又はカルボキシ基を持つアルキル基で置換され、かつそれ以外の部位が窒素に直接結合した水素原子であるもの(すなわち官能基としてアルキル基等を含まないこと)が好ましい。そして、酵素内部に入り込み、立体構造を保持するためには、イオン液体の分子サイズが小さい方が良く、水素結合性官能基(水酸基及び/又はカルボキシ基)を持つアルキル基におけるアルキル部位の炭素数は、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。また、立体構造の保持性を向上させるためには、アニオンにも水素結合性官能基を含有するのが好ましい。
2.生体触媒
生体触媒とは、生化学反応の触媒であり、本発明における生体触媒とは、生物由来の微生物や動植物細胞、組織及びそれら生物由来の酵素、更には、酵素の機能を持つ人工化合物や、天然にある酵素や生体分子に人工的な改変を加えて新しい性能を持たせた人工酵素などが含まれる。
酵素は、アミノ酸が一次元的に結合して一次構造をとるが、そのアミノ酸の配列状態と数によって、二次元以上の構造が決定される。これらの構造が各酵素特有な性質を決めている。
一次構造は、20種のアミノ酸がペプチド結合により一次元に配列している。多くの酵素はアミノ酸が100~300個で構成され、アミノ酸の配列順序は、酵素の特性を決定させる一つの情報である。二次構造は、一次元配列全体の中である部分(複数)がαヘリックス、βシート、βターンなどの高次の規則的な構造をもつ。三次構造は、一次、二次構造が三次元的な立体構造をとる。この立体構造が酵素の反応触媒としての場である活性中心や、親水性部分・疎水性部分からなるアミノ酸残基の三次元構造などを決定し、一般的なタンパク質(構造タンパク質、輸送タンパク質、貯蔵タンパク質、収縮タンパク質、防御タンパク質、ホルモンタンパク質)にはない酵素等の生体触媒が持つ特異的な基質特異性、反応特異性を有する化学反応を発現する。四次構造は、三次元構造をとった酵素の複数分子からなる会合体である。つまり、酵素等の生体触媒は、タンパク質が持つ基質特異性に加えて、一次から四次構造による反応特異性を持ち、触媒反応に対する活性を保持するためには、一次、二次構造だけではなく三次、四次構造も保持することが重要である。
本発明に適用可能な酵素としては、例えば、酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)、転移酵素(トランスフェラーゼ)、加水分解酵素(ハイドロラーゼ)、脱離酵素(リアーゼ)、異性化酵素(イソメラーゼ)、合成酵素(リガーゼ)等が挙げられる。
酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アミンデヒドロゲナーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、p-クレゾールメチルヒドロキシラーゼ、ヒスタミンデヒドロゲナーゼ、フマル酸リダクターゼ、硝酸レダクターゼ、ヒ酸レダクターゼ、亜硫酸レダクターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、シトクロムP450等が挙げられる。
転移酵素としては、例えば、クエン酸シンターゼ、メチルトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、トランスケトラーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ヘキソキナーゼ、グリセロールキナーゼ、クレアチンキナーゼ、トランスアミナーゼ、トランスアシラーゼ等が挙げられる。
加水分解酵素としては、例えば、カルボキシルエステラーゼ、アセチルCoAヒドロラーゼ、アルカリホスファターゼ、ホスホリパーゼ、アリールスルファターゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、DNAグリコシラーゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、ウレアーゼ、セリンプロテアーゼ、リパーゼ等が挙げられる。
脱離酵素としては、例えば、アルギン酸リアーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホケトケトラーゼ、クエン酸リアーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、トリプトファンシンターゼ、ペクチンリアーゼ、アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、システインリアーゼ、アデニル酸シクラーゼ、フェロキラターゼ等が挙げられる。
異性化酵素としては、例えば、アミノ酸ラセマーゼ、酒石酸エピメラーゼ、グルコース-6-リン酸1-エピメラーゼ、マレイン酸イソメラーゼ、フェニルピルビン酸タウトメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、ホスホマンノムターゼ、チロシン-2、3-アミノムターゼ等が挙げられる。
合成酵素としては、例えば、チロシンtRNAリガーゼ、アセチルCoAシンセターゼ、アスパラギンシンテターゼ、GMP合成酵素、ピルビン酸カルボキシラーゼ、DNAリガーゼ等が挙げられる。
本発明の生体触媒用反応溶媒が適用可能な微生物としては、例えば、原核生物(細菌、放線菌、古細菌)、真核生物(カビ、酵母、キノコ、藻類、原生動物)等が挙げられる。動植物細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、動物培養細胞、植物培養細胞等が挙げられる。
本発明の生体触媒用反応溶媒が適用可能な動植物由来の組織としては、例えば、動物組織、植物組織等が挙げられる。また、抗体、抗原、核酸、DNA、蛋白質等が挙げられる。
酸化還元酵素は、基質から水素原子の移動、電子の移動、酸素原子の付加を行うことで、触媒作用を発現する酵素である。その多くは、酵素中の金属イオンの電子移動による価数の変化によって、触媒作用を発現している。
転移酵素は、一方の基質から他方の基質へ原子団(官能基)を移動させる反応を触媒する酵素である。反応する基質中に存在する官能基にしか転移反応しないため、基質が適合できるための立体構造を保持することが特に重要となる。
加水分解酵素は、基質と水、酵素のアミノ酸残基中の水酸基等を反応させて、基質中の特定の結合を切断(加水分解)する酵素である。
脱離酵素は、基質分子から酸化や加水分解によらず、基質中の炭素-炭素、炭素-酸素などの結合を切断する酵素である。その多くは、金属イオンと基質が反応し、中間体を生成することで基質分子中の結合を切断させる。
異性化酵素は、基質を空間的な配置が異なる立体異性体へ変換させる酵素である。そのため、基質を結合させる酵素中のアミノ酸残基の立体構造が重要となる。
合成酵素は、ATPの加水分解エネルギーを利用して、基質と基質を結合させる酵素である。反応はATPと酵素中の特定のアミノ酸残基が結合した中間体を介して、2つの基質を反応させて目的物を生成させる。
酸化還元、転移、加水分解、脱離、異性化、合成のいずれの酵素においてもアミノ酸残基、アミノ酸残基の立体構造もしくはアミノ酸残基と3次元的に錯体形成した金属イオンが重要であり、それらが酵素の活性を発現する。
本発明の生体触媒用反応溶媒は、その構造的特徴により、アミノ酸残基もしくは錯体形成した金属イオンを保護して、生体触媒の活性を保持することができる。
特許文献1では、水素結合性官能基(水酸基、カルボキシ基)、水素原子を有するイオン液体を保存溶媒として各種酵素の立体構造を保持(安定化)している。本発明に使用される水素結合性官能基(水酸基、カルボキシ基)、水素原子を有するイオン液体も、その基本的な安定化のメカニズムは同様で、特許文献1と同様の範囲の生体触媒に対して立体構造の保持性を持つと考えられるが、本発明では、加えて、生体触媒用反応溶媒として、一定イオン液体濃度以上において、適用範囲が広く、反応効率が高く、特に、酵素に耐熱性を付与し、至適温度より高い温度で、反応を促進(酵素反応率の向上)し、有用性が高いことを見出した。
3.基質
酵素は基質特異性、反応特異性を有している。そのため、使用する生体触媒の種類に応じて、対象となる基質を使用することができる。
4.生体触媒用反応溶媒とそれを用いた基質と生体触媒との反応方法
本発明の生体触媒用反応溶媒を用いた基質と生体触媒との反応方法では、式(I)または式(II)で表されるアンモニウム塩型イオン液体を含有する溶媒を用いて、生体触媒反応を行う。
上記反応方法での反応温度は、特に限定はされず、低温は凝固点の-25℃未満、高温は100℃以上でも使用することができるが、好ましくは0~140℃、より好ましくは20~100℃、さらに好ましくは30~70℃、特に好ましくは30~50℃である。
多くの酵素反応は通常、30~40℃の生体適応温度で反応するが、反応率を促進するために高温での反応を行う場合がある。一方で、至適温度が高温の耐熱性酵素や、低温酵素も存在し、低温~高温条件で反応される。しかしながら、一般的に溶媒として用いられる水、緩衝液は、液体温度範囲が0℃から100℃付近と限られている。それに対して、本発明の生体触媒用反応溶媒は、イオン液体で構成されており、液体温度範囲が広く、不揮発性、分解温度が高いことから低温から高温までの反応が可能となる。
また、上記式(I)又は式(II)で表されるイオン液体は、無水イオン液体及び空気中の水分を吸収した含水イオン液体であってもよく、単独でも、他の溶媒成分と混合しても溶媒として使用することが可能である。例えば、コストの問題をはじめ、高濃度領域で粘度が高くハンドリングに不都合がある場合は、他の溶媒で希釈して低濃度で使用する。上記式(I)又は式(II)で表されるイオン液体は、その構造上の特徴から高親水性で、水や極性溶媒等の他の溶媒成分と混合して使用することが可能である。また、添加剤を加えて使用することもできる。
本発明の生体触媒用反応溶媒におけるアンモニウム塩型イオン液体の濃度は、特に限定はされないが、酵素の安定性を保持し、反応性を向上するためには、10質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
また、生体触媒反応で溶媒として用いられる緩衝液は、使用する生体触媒の至適pHに応じて、調整して用いる。一般的な生体触媒の場合、pH7付近のものが最も多いが、酵素の種類によっては、pH3以下の酸性領域(例えばペプシン)、pH10以上のアルカリ性領域(例えばアルギナーゼ)の至適pHの酵素もある。しかしながら、本発明の生体触媒用溶媒は、必要に応じて水等を加えて、それぞれの生体触媒の至適pHに調製して反応しても良いが、pH調整なしで反応することが可能であり、煩雑な作業、事前の検討を必要としない。
本発明の生体触媒用反応溶媒におけるアンモニウム塩型イオン液体を用いると立体構造の保持性が高く、酵素に耐熱性を付与できることにより、至適温度より高い反応温度で、高反応率で反応することができる。
本発明の生体触媒用反応溶媒を用いて、次の基質と生体触媒との反応方法を行うことができる。この基質と生体触媒との反応方法では、前記生体触媒用反応溶媒を用いて、次の参照条件Aにおいて基質及び生体触媒をいずれも同一濃度として反応を行った場合に、参照条件Aで反応を行った場合よりも反応率が高い温度Tで反応を行う:
(参照条件A)
水又は緩衝液を溶媒に用いて、基質と生体触媒との反応を行った場合の反応率が最大となる温度Tmax以上の前記温度Tで前記反応を行う。
本発明の生体触媒用反応溶媒を用いることで、至適温度としてのTmaxよりも高い反応温度においても、高反応率で生体触媒反応を可能とし、反応効率を上げることができる。
上記方法では、温度Tは、Tmax以上、Tmax+40℃以下が好ましく、Tmax以上、Tmax+20℃以下がより好ましく、Tmax以上、Tmax+10℃以下が特に好ましい。更に、水又は緩衝液を溶媒に用いて温度Tmaxで反応を行った場合よりも反応率が高い温度Tで反応を行うことが好ましい。例えば、多くの酵素の至適温度としての温度Tmaxは、30~40℃であり、その場合、温度Tは好ましくは30~80℃、より好ましくは30~60℃、特に好ましくは30~50℃で、高反応率で反応を行うことができる。特に、至適温度としての温度Tmaxが30~40℃の反応に好適である。
本発明によれば、酵素をはじめとする生体触媒の反応場への応用において、酵素の高効率化、高耐熱化により温度の適用範囲を拡張することができ、生命科学、酵素工学、蛋白質工学、遺伝子工学、医療・医薬分野、食品分野、資源・エネルギー分野、環境分野などの様々な分野への応用が期待される。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1> 化合物1
Figure 0007129767000004
実施例1のイオン液体は和光純薬工業(株)の試薬を用いた。
<実施例2~5>
実施例2~5のイオン液体は特許文献1に記載の方法で合成した。
<実施例2> 化合物2
Figure 0007129767000005
<実施例3> 化合物3
Figure 0007129767000006
<実施例4> 化合物4
Figure 0007129767000007
<実施例5> 化合物5
Figure 0007129767000008
<比較例1> 化合物6
比較例1にはイオン交換水を用いた。
<比較例2> 化合物7
バッファーとして、水酸化ナトリウムでpH7.5に調製したリン酸二水素カリウムの10mM水溶液を用いた。
<比較例3> 化合物8
L(+)-アルギニン(和光純薬工業(株))を水に溶解して10mg/mLに調製した。
上記の実施例、比較例の化合物を用いて、次の測定及び評価を行った。
(1)生体触媒用反応溶媒:反応性評価1
表1に示す仕込み量で、溶媒に基質の尿素を室温で溶解し、表1に示す反応温度に調整した後、酵素のウレアーゼ(和光純薬工業(株))を加え酵素反応を行った。実施例1~5では、溶媒としてイオン液体(化合物1~5)の70質量%水溶液を用いた。酵素反応の反応効率は、所定反応時間後の残存尿素量をHPLC測定により定量して基質残存率で評価した。基質残存率が低いほど反応率が高いことを示す。この結果を表1及び図1~4に示す。
また、イオン液体の生体触媒用溶媒としての優位性、イオン液体の構造と反応効率との相関は、各温度における表1の120分後の基質残存率より表2の判定基準で相対的に評価した(表3)。
Figure 0007129767000009
Figure 0007129767000010
Figure 0007129767000011
今回用いたウレアーゼの至適温度は、文献値(J.Photopoiym.Sci.Technol.,Vol.14,No.1,2001)より30℃であった。
表1及び図1~4より、30~70℃のいずれの反応温度においても、実施例1~5のイオン液体を溶媒に用いた系では、比較例1~3のイオン交換水、バッファー、安定化剤水溶液より120分後の基質残存率が低く、反応率が高い結果が得られた。これらの結果より、本発明の生体触媒用反応溶媒を用いることで酵素の反応効率が向上し、生体触媒用反応溶媒として優位であることが示唆された。また、比較例1~3は、反応温度30、40、50℃において、反応温度の上昇により反応率が下がる(基質残存率が高くなる)傾向が認められた。一方で、実施例1~5は、30℃から40℃に反応温度を上げることにより反応率100%(基質残存率0%)となり、各イオン液体の系は大幅に反応率が上がり(基質残存率が低くなり)、50℃でも高い反応率(60~90%)を保持していた。つまり、本発明の生体触媒用反応溶媒は、酵素に耐熱性を付与し、至適温度より高温領域でも反応が可能であり、反応効率が向上することを確認した。その反応効率化は、反応温度が、至適温度+20℃、至適温度+10℃の順で上昇した。
表3の評価結果より、反応溶媒及び本イオン液体の構造と反応効率との相関を比較した。30~70℃においては、上記にも記載したが、実施例1~5は比較例1~3より反応効率が良好な結果が得られ、優位であった。50℃の反応効率では、比較例1~3(×)<実施例1(△)<実施例2,3(〇)<実施例4,5(◎)の順であり、70℃でも同様な傾向であった。つまり、実施例のイオン液体の構造について、実施例1のイミダゾリウム塩のような環状で剛直な構造より実施例2~5の柔軟な構造が酵素の立体構造の保持性が高く、さらに、水素結合性官能基と水素原子のみで構成され、かつ、その水素結合性官能基のアルキルの炭素数(5以下)が小さい(分子サイズが小さい)実施例4,5は、実施例2,3より立体保持性が高く、酵素の安定化、耐熱化において良好な傾向であることを確認した。
以上の結果より、イオン液体の反応溶媒としての酵素に対する安定化効果及び温度依存性を明らかにし、酵素の高反応効率化、耐熱化、酵素反応場としての高適合性が確認された。つまり、酵素をはじめとする生体触媒の反応場への応用及び、生体触媒の反応場における温度の適用範囲の拡張の可能性が示唆された。
(2)生体触媒用反応溶媒:濃度依存性評価1
表4に示した濃度に調製したイオン液体水溶液に基質の尿素を室温で溶解し、反応温度の30℃に調整した後、酵素のウレアーゼを加え酵素反応を行った。各イオン液体濃度の酵素反応の反応効率は、上記と同様に残存した尿素量をHPLC測定により定量して60分後の基質残存率で評価した。
Figure 0007129767000012
表4より、比較例4のバッファーは基質残存率が58%であった。これに対して、実施例6のイオン液体濃度が10~86質量%では60分後の基質残存率は29~47%と、比較例よりも低く、反応効率が高い結果となった。この結果より、本アンモニウム塩型イオン液体は、低濃度~高濃度の領域で酵素の活性を保持し、生体触媒反応溶媒として有用で利用が可能であることが示唆された。
また、イオン液体濃度10~30質量%では残存率が44%以上、濃度50質量%で45%、濃度70質量%以上では残存率は30%以下と、イオン液体の高濃度化により、残存率が低く、反応効率が高い傾向があり、イオン液体の効果が顕著となり反応率は上がることが認められた。
(3)生体触媒用反応溶媒 使用温度範囲
表5に示した化合物1~8の凝固点(流動性)を評価した。凝固点は、一定温度に設定した低温インキュベーターに化合物を一定時間放置し、設定温度における性状を確認することで評価した。
Figure 0007129767000013
表5より、凝固点は、比較例5~7の化合物6~8より実施例7~11の化合物1~5は低く、<-25℃であり、比較例よりも極低温まで液状を示し、極低温領域での生体触媒反応が可能であることが確認された。つまり、実施例7~11の化合物1~5は、分解温度が高く、不揮発性であることから100℃以上でも使用可能であり、低温~高温まで様々な酵素に対して適用範囲が広いことが示唆された。
(4)生体触媒用反応溶媒:反応性評価2
表6に示す仕込み量で、溶媒に基質の過酸化水素を室温で溶解し、表6に示す反応温度に調整した後、酵素のカタラーゼ(和光純薬工業(株))を加え酵素反応を行った。実施例12~15では、溶媒としてイオン液体(化合物2~5)の70質量%水溶液を用いた。酵素反応の反応効率は、所定反応時間後の残存過酸化水素量を、過マンガン酸カリウムを用いた酸化還元滴定により定量して基質残存率で評価した。基質残存率が低いほど反応率が高いことを示す。この結果を表6及び図5~7に示す。
また、イオン液体の生体触媒用溶媒としての優位性、イオン液体の構造と反応効率との相関は、各温度における表6の120分後の基質残存率より表7の判定基準で相対的に評価した(表8)。
Figure 0007129767000014
Figure 0007129767000015
Figure 0007129767000016
今回用いたカタラーゼの至適温度は、文献値(Shipin Kexue (Beijing, China).,Vol.32(9),2011)より37℃であった。
表6及び図5~7より、37~50℃のいずれの反応温度においても、実施例12~15のイオン液体を溶媒に用いた系では、比較例8~10のイオン交換水、バッファー、安定化剤水溶液より120分後の基質残存率が低く、反応率が高い結果が得られた。これらの結果より、本発明の生体触媒用反応溶媒を用いることで酵素の反応効率が向上し、生体触媒用反応溶媒として優位であることが示唆された。また、比較例8~10は、反応温度37、40、50℃において、反応温度の上昇により反応率が下がる(基質残存率が高くなる)傾向が認められた。一方で、実施例12~15は、37℃から40℃に反応温度を上げることにより、各イオン液体の系は反応率が上がり(基質残存率が低くなり)、50℃でも一定の反応率を保持していた。つまり、本発明の生体触媒用反応溶媒は、酵素に耐熱性を付与し、至適温度より高温領域でも反応が可能であり、反応効率が向上することを確認した。その反応効率化は、反応温度が、至適温度+20℃以下、至適温度+10℃以下の順で上昇した。
表8の評価結果より、反応溶媒及び本イオン液体の構造と反応効率との相関を比較した。37~50℃においては、上記にも記載したが、実施例12~15は比較例8~10より反応効率が良好な結果が得られ、優位であった。50℃の反応効率では、比較例8~10(×)<実施例12,13(〇)<実施例14,15(◎)の順であった。つまり、実施例のイオン液体の構造について、水素結合性官能基と水素原子のみで構成され、かつ、その水素結合性官能基のアルキルの炭素数(5以下)が小さい(分子サイズが小さい)実施例14,15は、実施例12,13より立体保持性が高く、酵素の安定化、耐熱化において良好な傾向であることを確認した。
以上の結果より、イオン液体の反応溶媒としての酵素に対する安定化効果及び温度依存性を明らかにし、酵素の高反応効率化、耐熱化、酵素反応場としての高適合性が確認された。つまり、酵素をはじめとする生体触媒の反応場への応用及び、生体触媒の反応場における温度の適用範囲の拡張の可能性が示唆された。
(5)生体触媒用反応溶媒:濃度依存性評価2
表9に示した濃度に調製したイオン液体水溶液に基質の過酸化水素を室温で溶解し、反応温度の40℃に調整した後、酵素のカタラーゼを加え酵素反応を行った。各イオン液体濃度の酵素反応の反応効率は、上記と同様に残存した過酸化水素量を、過マンガン酸カリウムを用いた酸化還元滴定により定量して60分後の基質残存率で評価した。
Figure 0007129767000017
表9より、比較例11のバッファーは基質残存率が29%であった。これに対して、実施例16のイオン液体濃度が10~86質量%では60分後の基質残存率は15~25%と、比較例よりも低く、反応効率が高い結果となった。この結果より、本アンモニウム塩型イオン液体は、低濃度~高濃度の領域で酵素の活性を保持し、生体触媒反応溶媒として有用で利用が可能であることが示唆された。
また、イオン液体濃度10~30質量%では残存率が25%、濃度50質量%で19%、濃度70質量%以上では残存率は17%以下と、イオン液体の高濃度化により、残存率が低く、反応効率が高い傾向があり、イオン液体の効果が顕著となり反応率は上がることが認められた。

Claims (4)

  1. 生体触媒の至適温度が30~40℃であり、至適温度よりも高い温度でかつ至適温度+20℃以下の温度において基質と生体触媒との反応を至適温度よりも高い反応率で行うための生体触媒用反応溶媒であって、
    アンモニウム塩型イオン液体を50質量%以上含有し、
    前記アンモニウム塩型イオン液体が、下記式(I):
    Figure 0007129767000018
    (式中、Raはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、Rbはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。nは1~4の整数を示す。)で表わされるアンモニウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体であり、
    前記アニオンが、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、及びカルボン酸アニオンから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記硫黄系アニオンが、スルホナートアニオン、水素スルホナートアニオン、アルキルスルホナートアニオン、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、及びアルキルスルファートアニオンから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記リン系アニオンが、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、二水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、水素ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン、アルキルホスホナートアニオン、アルキルホスフィナートアニオン、及びヘキサアルキルホスファートアニオンから選ばれる少なくとも1種である生体触媒用反応溶媒。
  2. 前記アンモニウム塩型イオン液体が、式(I)で表されるイオン液体であり、
    前記Raはそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基を1個以上有する請求項1に記載の生体触媒用反応溶媒。
  3. 生体触媒の至適温度が30~40℃であり、至適温度よりも高い温度でかつ至適温度+20℃以下の温度において基質と生体触媒との反応を至適温度よりも高い反応率で行うための生体触媒用反応溶媒であって、
    アンモニウム塩型イオン液体を50質量%以上含有し、
    前記アンモニウム塩型イオン液体が、下記式(II):
    Figure 0007129767000019
    (式中、R1~R5はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。)で表されるイミダゾリウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体であり、
    前記アニオンが、カルボン酸アニオンである生体触媒用反応溶媒。
  4. 下記式(II):
    Figure 0007129767000020
    (式中、R1~R5はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、又は水酸基及びカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、水素原子又は炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。)で表されるイミダゾリウムカチオン及びアニオンを含むイオン液体であり、
    1~R5は、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基を1個以上有する生体触媒用反応溶媒。
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