JP7128605B2 - 内装材および該内装材を具備した構造物並びに該内装材を用いた下地の放射化抑制方法 - Google Patents
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Description
これら施設においては、中性子の使用によって床面・壁面・天井が放射化された場合、医療従事者・患者・作業者等の被曝が懸念される。また、これら施設が老朽化した時の取り壊しの際には、大量の放射性廃棄物が発生し、廃棄にかかる費用が膨大になるおそれがある。
そこで放射化抑制対策として、中性子吸収材を配合したコンクリート板、Na含有量を低減したコンクリート材料、中性子遮蔽方法が知られている(特許文献1~3参照)。
中性子吸収層を備えた内装材であって、前記中性子吸収層が、合成樹脂100重量部に対して中性子吸収材3~90重量部を含み、前記中性子吸収層の合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂であり、厚み方向両側の前記中性子吸収層に対し、中間層として基材が積層され、前記基材が織布であり、前記中性子吸収材の含有量が0.1~3kg/m2であり、前記中性子吸収層には、無機充填材が1~10重量部含まれ、前記厚み方向両側の前記中性子吸収層と,前記基材とは熱融着により積層されていることを特徴とする内装材。
図1(a)に示す内装材A1は、深層側から順番に、第1の中性子吸収層1と、基材2と、第2の中性子吸収層3と、意匠層4とを積層した多層構造に構成される。
また、単位面積あたりの中性子吸収材の含有量は0.1~3kg/m2であることが好ましい。この含有量が0.1kg/m2未満の場合は充分な放射化抑制性能が得られない。3kg/m2よりも多い場合は、製造時の加工性が著しく低下する。
この無機充填材は、当該内装材A1を下地に接着する際の接着剤と第1の中性子吸収層1との接着性を向上するものであり、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、1~10重量部配合される。
なお、無機充填材の他例としては、シリカ、クレー、水酸化マグネシウム等を用いることも可能である。
この基材2の材質としては綿、麻、ポリエステル、アクリル、ナイロン、炭素繊維、ガラス等の有機繊維、無機繊維からなる織布、不織布等が挙げられる。
この基材2は、最下層(換言すれば、最深層あるいは最裏側の層)として、または中間層として各層の間に積層することができ、使用用途に応じて材質および積層位置を選択することができる。特に耐動荷重性・耐へこみ性・寸法安定性が重要な用途においては、ガラスなどの無機繊維から基材2を構成し、この基材2を中間層として積層するのが好ましい。基材2の厚みt2は、特に限定されないが、通常0.01~1mmの範囲内に設定される。
これら第1の中性子吸収層1と第2の中性子吸収層3の厚みt1,t3は、略同一に設定され、本実施の形態の好ましい一例ではそれぞれ約0.8mm(合計1.6mm)に設定されている。
第1の中性子吸収層1は、基材2の一方の面に、例えばラミネート加工等により熱融着されている。
同様に、第2の中性子吸収層3は、基材2の他方の面に、例えばラミネート加工等により熱融着されている。
意匠層4は、透明または半透明の合成樹脂からなる層であり、例えばラミネート加工等により、第2の中性子吸収層3の表面に積層されている。
この意匠層4の好ましい厚みt4は、0.2mm~1mmの範囲内に設定される。
例えば、内装材A1を床材として用いる場合、その全体の厚みT1は通常用いられる床材の厚みに設定することが可能であるが、具体的に好ましい態様としては、厚みT1を1.5~5mmに設定する。
仮に厚みT1を1.5mmより薄く設定した場合には、施工する際に下地の微細な凹凸などの形状の影響を受けやすく、施工後の美観が損なわれたり、歩行やキャスター走行に対する耐久性が劣ったりするおそれがある。一方。厚みT1を5mmより厚く設定した場合は、不必要な重量増加により、当該内装材A1を敷設する際の作業性の低下や、コストアップ等を招くおそれがある。
内装材B1は、単一の第3の中性子吸収層5のみからなる単層構造に構成される。
第3の中性子吸収層5の構成及び材質等は、上述した第1及び第2の中性子吸収層1,3と同様である。
この内装材B1の厚みT2は、内装材A1と同様に、1.5~5mmに設定することが可能であり、図示例の内装材B1は、厚さ約5mmのタイル材を構成している。
なお、この内装材B1においても、必要に応じて上述した意匠や意匠層4を設けることが可能である。
そして、内装材A1,B1の施工においては、従来の施工方法および接着剤などの副資材を用いることが可能である。
図2(a)に示す構造物A2は、上述した構成の内装材A1と、該内装材A1により被覆された下地Cを具備して構成される。
同様に、図2(b)に示す構造物B2は、上述した構成の内装材B1と、該内装材B1により被覆された下地Cを具備して構成される。
これら構造物A2,B2は、例えば、放射線医療施設・研究施設などの放射線施設・中性子利用施設、PET施設あるいは加速器施設・中性子を利用した検査施設等とすることが可能である。そして、下地Cは、前記施設の床面であり、例えば、コンクリートやモルタルにより形成される。
内装材A1,B1は、下地Cの表面の一部又は全部を被覆するとともに、該表面との間に接着層6を介在するようにして、該表面に張り付けられる。
接着層6には、下地C面に塗布されたプライマー(下塗り塗料)、及び該プライマーの乾燥後の表面に塗布された接着剤等から構成される。
前記プライマーには、例えば、ロンシール工業製のSPプライマーUを用いることができる。
また、前記接着剤は、JIS A 5536に準拠するものが好ましく、例えば、ロンシール工業製のロンセメントパワーエポを用いることができる。
合成樹脂:ポリ塩化ビニル樹脂(PVC) 重合度1000、比重:1.4
可塑剤:フタル酸ジオクチル(DOP)、比重:0.99
熱安定剤:バリウム-亜鉛系金属石鹸、粉末状、比重:1.15
無機充填材:炭酸カルシウム、比重:2.7、モース硬度:3
中性子吸収材A:六方晶窒化ホウ素、平均粒径:8μm、比重:2.27、モース硬度:2
中性子吸収材B:炭化ホウ素、平均粒径:13.7μm、比重:2.51、モース硬度:14
基材:ガラスクロス、厚さ 約0.2mm、目付 縦約3本/cm×横約3本/cm
先ず、図3(表1)に記載の各混合物(コンパウンド)を、溶融混練後、温度185℃のカレンダーロールを用いたカレンダー成形により単層のシート状に成形した。
表1中、実施例1~6の配合の単層シート状物は、第1の中性子吸収層1又は第2の中性子吸収層3として構成されるものであり、それぞれ、その厚みt1(又はt3)が約0.8mmである。
表1中、実施例7の配合の単層シート状物は、第3の中性子吸収層5として構成されるものであり、その厚みT2が約5mmである。
また、表1中、比較例1~3の配合の単層シート状物は、それぞれ、その厚みが約0.8mmである。
実施例1~6及び比較例1~3は、それぞれ、上述した内装材A1と同様の断面構造(図1(a)参照)の積層体であり、全体の厚さT1が約2mmの床板状に形成した。
なお、全体の厚みT1は、先に説明したように第1の中性子吸収層1と第2の中性子吸収層3が基材2の網目を埋めるため、各層の厚みt1~t4の合計値にならない場合がある。
図4(表2)の成形加工性は、図3(表1)の配合の各混合物(コンパウンド)を、185℃の二本ロールにて溶融混練して厚み約0.8mmの単層シート状に成形する際に、その成形加工性を評価した結果を示している。
表2中、成型加工性の行における〇△×は、それぞれ、以下の状態を示す。
○:混練作業性・シート成形性共に良好。
△:混練作業時にやや硬さを感じるが、シート成形は可能。
×:コンパウンドが非常に硬く、混練作業が困難。ロール間隙へのコンパウンドのくい込みが悪く、シート成形が困難。
図4(表2)に示す熱中性子吸収性の評価は、内装材A1又は内装材B1の断面構造(図1(a)(b)参照)を有する実施例1~7及び比較例1~3をシミュレーション対象とし、粒子・重イオン輸送計算コードPHITS(Particle and Heavy Ion Transport Code System)による放射線シミュレーション解析により行った。PHITSは、汎用の粒子・重イオン輸送のモンテカルロ計算コードの1つであり、放射線施設の許認可申請にも用いられる信頼性の高い解析システムである。
表2中、熱中性子吸収性の行における◎○△×は、それぞれ、熱中性子透過量について、比較例1を1とした場合の比率が以下の範囲であることを示す。
◎:0.5以下
○:0.5~0.8
△:0.8~1.0
×:1.0以上
図4(表2)に示す折り曲げ柔軟性の評価には、内装材A1の断面構造(図1(a)参照)を有する実施例1~6及び比較例1~3について、それぞれ、縦100mm×横25mmの試験片を作製し用いた。
この折り曲げ柔軟性は、JIS K 7106の試験方法を応用利用し、オルゼン式曲げこわさ試験機の支点間距離(20mm)と荷重(1.2Lbs)を一定とし、入隅方向に60°折り曲げ時の指示値にて評価した。
表2中、折り曲げ柔軟性の行における〇△×は、それぞれ、前記試験機の荷重を100%とした場合の比率(単位:%)が以下の範囲内であることを示す。この数値が低い程、柔軟であると評価できる。
○:50以下
△:51~80
×:81以上
図4(表2)に示す90度剥離接着強度の評価には、内装材A1の断面構造(図1(a)参照)を有する実施例1~6及び比較例1~3について、それぞれ、縦200mm×横25mmの試験片を作製し用いた。
この試験は、JIS K 6854-1によるものであり、モルタル板にプライマー(ロンシール工業製:SPプライマーU)を塗布乾燥させたものを下地とし、JIS A 5536に準拠するエポキシ樹脂系二液形接着剤(ロンシール工業製:ロンセメントパワーエポ)を、専用くし目ゴテを用いて塗布し、オープンタイムを45分とった後に、前記試験片を張り付け、2日後の常態接着強度を引張試験機にて測定した。
表2中、90度剥離接着強度の行における◎○△は、それぞれ、90度剥離接着強度が以下の範囲内であることを示す。
◎:131(N/25mm)以上
○:61~130(N/25mm)
△:20~60(N/25mm)
そして、実施例7は、成形加工性、及び熱中性子吸収性をバランスよく有したものであった。
特に、中性子吸収層に無機充填材(炭酸カルシウム)を配合したもの(実施例6)については接着性が更に優れたものとなった。
比較例2は、中性子吸収材(窒化ホウ素)を少量配合したものであるが、熱中性子吸収性が不十分であった。
比較例3は、中性子吸収材(窒化ホウ素)を多量に配合したものであり、成形加工性・折り曲げ柔軟性が不十分であった。
この放射化実験には、内装材A1の断面構造(図1(a)参照)を有する実施例6及び比較例1について、それぞれ、直径5cmの試験片を作製し用いた。
この実験では、直径5cm,高さ5cmの普通コンクリートの円柱の上部に前記試験片を置き、前記試験片の上方には中性子発生装置を設置し、この中性子発生装置から前記試験片の表面に向けて熱中性子を一定量照射し、その後、前記普通コンクリート(円柱)に生成した被曝の主な原因となる2種類の放射性同位元素Na-24,Mn-56の生成量を、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。
前記中性子発生装置は、加速器(サイクロトロン)より発射した陽子ビームを、ベリリウムターゲットに衝突させて発生させ、ポリエチレン減速材によって熱中性子のエネルギーまで減速し放出するものである。
前記中性子発生装置により照射した熱中性子量は1.9×10-5 n/sec/cm2で、照射時間は2時間とした。
さらに、本実施の形態の内装材A1,B1によれば、意匠層4等の構造により、内装材に求められる意匠性を向上することができる。
2:基材
3:第2の中性子吸収層
4:意匠層
5:第3の中性子吸収層
6:接着層
A1,B1:内装材
A2,B2:構造物
Claims (6)
- 中性子吸収層を備えた内装材であって、前記中性子吸収層が、合成樹脂100重量部に対して中性子吸収材3~90重量部を含み、
前記中性子吸収層の合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂であり、
厚み方向両側の前記中性子吸収層に対し、中間層として基材が積層され、
前記基材は、綿、麻、ポリエステル、アクリル、ナイロン、炭素繊維またはガラスの少なくともいずれか一つからなる織布であり、
前記中性子吸収材の含有量が0.1~3kg/m2であり、
前記中性子吸収層には、無機充填材が1~10重量部含まれ、
前記厚み方向両側の前記中性子吸収層と,前記基材とは熱融着により積層されていることを特徴とする内装材。 - 前記中性子吸収材は、六方晶窒化ホウ素であることを特徴とする請求項1記載の内装材。
- 前記織布が、厚さ 約0.2mm、縦約3本/cm×横約3本/cmの網状のガラスクロスであることを特徴とする請求項1又は2記載の内装材。
- 最表層に合成樹脂からなる意匠層を有することを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の内装材。
- 請求項1~4何れか1項記載の内装材と、該内装材により覆われている下地とを具備することを特徴とする構造物。
- 請求項1~4何れか1項記載の内装材を、下地に張り付けることを特徴とする下地の放射化抑制方法。
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