JP7127907B1 - 車椅子及び車椅子用自動ブレーキ機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦力で車輪を制動する際に制動力が逃げず、効率的に摩擦を与えて制動できるブレーキ機構を備えた車椅子及び車椅子用自動ブレーキ機構を提供すること。【解決手段】折り畳み状態から着座可能な張設状態へと変位する座部とを備えた車椅子は自動ブレーキ機構31を備える。座部の裏面に上下動する押圧ピン35を配置し、人が座部に座ることで押圧ピン35は下動し、クランク体37を揺動させてブレーキピン45をコイルばね51の付勢力に抗して後退させタイヤ14bへの制動を解除する。人が座部に座っていない場合には押圧ピン35は上動し、クランク体37はコイルばね51によって逆方向に揺動しブレーキピン45はタイヤ14bを制動する。【選択図】図5

Description

本発明は、折り畳み可能で使用者が車椅子から起立した際に自動的に車輪が制動されるブレーキ機構を備えた車椅子及び車椅子用自動ブレーキ機構等に関するものである。
従来から車椅子の座部に着座状態にある使用者が車椅子から起立した際に自動的に車輪を制動するための車椅子用のブレーキ機構が開発されている。
そのようなブレーキ機構を備えた車椅子として特許文献1及び2を示す。特許文献1の車椅子では使用者が着座状態から起立することによって車輪制動部20が下動し、押圧部31を車輪3の外周面に押し付けて制動するというものである。また、引用文献2の車椅子では使用者が着座状態から起立することによって車輪3の内側に配設された円盤4と干渉する位置に制動ピン16が進出して車輪がロックされるというものである。
特開2006-198238号公報 特開2012-029988号公報
特許文献1の車椅子のブレーキ機構は回転する車輪3に対してその直径方向外側から押圧して摩擦を与えるものであり、その摩擦を与える際の力は特許文献1の図3に示すようにシーソーリンク24の先に吊り下げられた車輪制動部20内の回動部29が主としてバネ28による付勢力で制動することになる。しかし、車輪制動部20自体が片持ち梁状にシーソーリンク24に吊り下げられているため、それほど強い力で車輪3を制動できるわけではない。回動部29が車輪3に当接する際に車輪3に当たって弾かれてしまい、摩擦力が逃げてしまうことが想定される。また、特許文献2のブレーキ機構は摩擦による制動ではなく車輪3が制動ピン16に干渉して急停止するタイプであるため、この種の車椅子の使用者にとって必ずしも望ましい停止ではない。
そのため、摩擦力で車輪を制動する際に制動力が逃げず、効率的に摩擦を与えて制動できるブレーキ機構を備えた車椅子及び車椅子用自動ブレーキ機構が求められていた。
上記の目的を達成するために手段1では、それぞれに前輪及び後輪が装着された左右一対の本体フレームと、前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して折り畳み状態と使用状態とに変位する座部フレームと、前記座部フレームに配設され前記本体フレームが互いに離間することによって折り畳み状態から着座可能な張設状態へと変位する座部とを備えた車椅子において、前記座部の下方位置には前記座部への所定以上の付加荷重によって下動し、前記付加荷重が消失することによって上動する上下動部材が配設されるとともに、前記上下動部材の下方位置には揺動部材が配設され、前記揺動部材は前記上下動部材の下動に伴う押動力によって回動し、近い方の前記後輪から離れる方向に揺動させられるとともに、前記上下動部材の上動に伴って押動力が開放されることで近い方の前記後輪に接近する方向に揺動させられ、前記揺動部材が近い方の前記後輪に接近する方向に揺動した際に前記揺動部材に設けられた突起部材の先端が近い方の前記後輪の側面に当接するようにした。
これによって、揺動部材の揺動方向に沿って突起部先端を後輪の側面に押し付けるように当接させることができ、突起部先端の摩擦力が逃げにくく強い摩擦力で後輪を制動させることができる。特にタイヤ側面は回転方向については平面で構成されるため、突起部材の先端をわずかでも食い込ませることで突起部材の食い込んだ部分がタイヤの回転で強くタイヤによって側方から押されるような作用が働くこととなる。この点が従来のようなタイヤの転動する外周面に接する場合の制動とは異なる。
「上下動部材」の動作としては、例えば上下方向にスライド移動してもよく、ある位置を回動中心として揺動するように上下動してもよい。
「揺動部材」は上下動部材の上下動によって揺動するが、上下動部材と例えば軸部材で物理的に連結されていてもよく、単に上下動部材と接触しているだけでもよい。
「突起部」は、突起する部分を有すればその形状は問わない。例えば円筒状や円柱状のように長尺の棒状体であることがスライドさせやすいため特によい。また、先端の車輪側への食い込みをよくして制動力を向上させるために尖端形状とすることがよい。そのために例えば円錐台形状に構成することがよい。
また、手段2では、前記上下動部材は前記本体フレーム側に形成され、前記座部フレームによって前記付加荷重が付加されるようにした。
座部フレームは座部に比べて硬いため上下動部材に付加荷重を付加する場合に座部で押すよりも適しているためである。また、座部フレームは本体フレームに支持されるため座部フレームを支持する部材の位置に上下動部材を配置することがよい。
また、手段3では、前記上下動部材は第1の付勢手段によって上方に付勢されているようにした。
これによって、確実に上下動部材を上動した位置に保持させることができるからである。特に付加荷重が付加されていない場合に付加荷重以外の荷重で上下動部材が下動しないようにすることができる。付勢手段は、例えばコイルばね、板バネ等のばね部材でもよく、圧縮によって付勢力を発揮する弾性を有する例えば発泡ウレタンやスポンジのような発泡体、例えば空気や水を内部に封じた合成ゴム製のダンパー等を用いることがよい。
また、手段4では、前記突起部材は第2の付勢手段によって近い方の前記後輪の側面方向に付勢されているようにした。付勢手段としては上記と同様のものを使用することができる。
これによって、付加荷重が消失しているとき、例えば使用者が座っていない場合や、物が座部上に置かれていない場合等の座部フレーム等だけのなにも載っていない場合やごく軽い物を座部に置いている場合に確実に突起部材の先端を後輪の側面に当接させて車輪を制動することができる。この第2の付勢手段による付勢力は大きいほどタイヤに食い込んで強い制動力を発揮する。
また、手段5では、前記本体フレームには第2の付勢手段の付勢力を調節する付勢力調節手段が設けられているようにした。
これによって、突起部材が後輪の側面に当接する際の付勢力を調整することができるため、当該車椅子にとって最適な制動力を設定することができる。
また、手段6では、前記第2の付勢手段は前記突起部材の外周に配設されたコイルばねであるようにした。
このようにすれば、突起部材を例えば円柱あるいは円筒状の棒状体に取り付けやすく、突起部材の軸方向に沿った安定した付勢力を与えることができる。
また、手段7では、前記上下動部材が前記揺動部材を押動する位置と前記揺動部材の回動軸間の距離よりも、前記揺動部材の前記突起部材が設けられている位置と前記回動軸間の距離を長くすることで前記上下動部材の押動量よりも前記突起部材位置での前記揺動部材の揺動量が大きくなるようにした。
つまり、同軸での回転においては同じ回転角度であれば内方よりも外方ほどで大きく移動するという輪軸作用に基づくものである。これによって、上下動部材を少し動かしただけでそれよりも大きな突起部材の移動量を得ることができるようになっている。
また、手段8では、前記本体フレームには前記揺動部材の揺動量を調整する揺動量調節手段が設けられているようにした。
上下動部材の押動量に対する揺動部材の揺動量によって突起部材の進退量も決まるが、どのくらい揺動させればよいかは実際の各部材の位置関係や形状等の条件で簡単に設定できるとは限らない。そのため、このように揺動量に対する揺動量の調整ができることがよい。
また、手段9では、前記本体フレームには前記突起部材の直線的な進退を補助する案内機構を設けるようにした。
これによって、突起部材を後輪の側面に確実に直線的に進退させることができ、安定した制動力を発揮させることができる。例えば、直線的な通路を設けたり、直線的な対向する壁面で突起部材を挟むようにすることがよい。また、このような突起部材の直線的な進退を補助する案内機構があれば、突起部材の先端がタイヤ側面に当接した際に案内機構がタイヤの回転に対する抵抗となり突起部材をしっかり保持する役割も果たす。
また、手段10では、それぞれに前輪及び後輪が装着された左右一対の本体フレームと、前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して折り畳み状態と使用状態とに変位する座部フレームと、前記座部フレームに配設され前記本体フレームが互いに離間することによって折り畳み状態から着座可能な張設状態へと変位する座部とを備えた車椅子の少なくとも一方の前記後輪に隣接した位置に取り付けて使用される自動ブレーキ機構において、前記自動ブレーキ機構は、前記座部の下方位置には前記座部への所定以上の付加荷重によって下動し、前記付加荷重が消失することによって上動する上下動部材を備えるとともに、前記上下動部材の下方位置には揺動部材が配設され、前記揺動部材は前記上下動部材の下動に伴う押動力によって回動し、前記後輪から離れる方向に揺動させられるとともに、前記上下動部材の上動に伴って押動力が開放されることで前記後輪に接近する方向に揺動させられ、前記揺動部材が前記後輪に接近する方向に揺動した際に前記揺動部材に設けられた突起部材の先端が前記後輪の側面に当接するようにした。
これによって、揺動部材の揺動方向に沿って突起部先端を後輪の側面に押し付けるように当接させることができ、突起部先端の摩擦力が逃げにくく強い摩擦力で後輪を制動させることができる。自動ブレーキ機構は左右の本体フレームの両方に装着するようにしても一方だけに装着するようにしてもよい。
上述の手段1~手段10に示した発明は任意に組み合わせることができる。例えば、手段1に示した発明の全てまたは一部の構成に手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、手段1に示した発明に、手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、手段1から手段10に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。
本発明によれば、揺動部材の揺動方向に沿って突起部先端を後輪の側面に押し付けるように当接させることができ、突起部先端の摩擦力が逃げにくく強い摩擦力で後輪を制動させることができる。
本発明の実施例の車椅子の斜視図。 同じ車椅子の開いていくあるいは閉じていく途中の正面図。 同じ車椅子の使用可能状態に開いた状態の正面図。 同じ車椅子の自動ブレーキ機構付近の一部切り欠き拡大斜視図。 同じ車椅子の自動ブレーキ機構の制動状態にある状態での一部切り欠き拡大正面図。 同じ車椅子の自動ブレーキ機構の非制動状態にある状態での一部切り欠き拡大正面図。 図5のA-A線での断面図。 (a)は同じ車椅子への付加荷重が消失している際の座部固定フレームの下端線と押圧ピンの位置関係を説明する説明図、(b)は同じく車椅子への付加荷重がかかっている場合の説明図。
以下、本発明の車椅子の一実施例について図面に基づいて説明する。
図1~図3に示すように、車椅子1は左右一対の本体フレーム2を骨格として備えている。本体フレーム2は金属製の(本実施の形態ではアルミ合金製の)パイプ材を溶接して構築された平板状の枠体とされている。各本体フレーム2は前後に立設された前脚フレーム3及び後脚フレーム5とこれら両脚フレーム3,5と交差状に接続されたサブフレームとしての中央フレーム6、肘掛フレーム7及び下部フレーム8を基本構成としている。中央フレーム6、肘掛フレーム7及び下部フレーム8は上下方向において平行に配置され、肘掛フレーム7の前端はなだらかに前脚フレーム3と接続されている。後脚フレーム5は上方に延出されて背もたれ布支持フレーム9を構成するとともに、更に延出側の前方が後方に延出されてハンドル10を構成する。肘掛フレーム7の上には肘掛11が配設されている。本体フレーム2の後脚フレーム5には中央フレーム6付近から背もたれ布支持フレーム9の上部にかけて可撓性のある背もたれ布12が配設されている。
左右の前脚フレーム3と下部フレーム8の交差する位置にはそれぞれ前輪としてのキャスター13が配設されている。左右の後脚フレーム5と下部フレーム8の交差する位置にはそれぞれ後輪14が配設されている。後輪14はリムとスポークとハブからなる金属本体部14aにゴム製のタイヤ14bをリムに被せることで構成されている。肘掛フレーム7と中央フレーム6の間には補強用のアルミ合金製の側面プレート16が配設されている。下部フレーム8と中央フレーム6から斜め下方に延出される足乗せプレート用フレーム15の交差する位置には跳ね上げ式の足乗せプレート19が配設されている。左右の中央フレーム6にはそれぞれブラケット17に支持された手動ブレーキ装置18が配設されている。
本体フレーム2の間には金属製の(本実施の形態ではアルミ合金製の)座部フレーム20が配設されている。図2及び図3に示すように、座部フレーム20は棒状フレーム21を正面視においてX状に交差させた前後一対の交差体23を回動軸22によって連結し回動可能としたものである。棒状フレーム21の下端は下部フレーム8に対して軸受け28を介して回動可能に支持されている。後方側の交差体23の左右の棒状フレーム21と後脚フレーム5との間には回動軸24によって回り対偶に連結されたリンク体26が配設されている。前後に配置された棒状フレーム21の上端にはこれと直交するように前後に延出された左右一対のパイプ製の座部固定フレーム25が固着されている。座部固定フレーム25間には可撓性のある布製の座部27が配設されている。
図1に示すように、座部27の左右の縁における前後方向中央位置に切り欠き部28が形成されている。切り欠き部28は座部27を左右に張った使用可能状態とする際に手の指や肉が挟まれないようにするために使用される。座部27の切り欠き部30が形成されている位置に対応する位置に握り部29が形成されている。握り部29は切り欠き部28の形状に沿って湾曲して形成され切り欠き部28の裏面に配設されている。
図2~図8に示すように、各本体フレーム2の中央フレーム6には座部固定フレーム25を受けるための第1の受け板30A及び第2の受け板30Bが配設されている。第1の受け板30Aは乗り込み側、つまり前方に配置され、左右の本体フレーム2の中央フレーム6において対向位置に配置されている。第2の受け板30Bは背もたれ布12側、つまり後方に配置され、左右の本体フレーム2の中央フレーム6において対向位置に配置されている。第1の受け板30Aは座部固定フレーム25を横ずれしないように受けるためにフック状に湾曲して形成されている。第2の受け板30Bは後述する自動ブレーキ機構31の押圧ピン35を遊嵌状に貫通させるとともに押圧ピン35を介して座部固定フレーム25を受けるための台となる。
次に本実施の形態の車椅子1の自動ブレーキ機構31について説明する。
図1に示すように、自動ブレーキ機構31は手動ブレーキ装置18に隣接した位置に配設されている。自動ブレーキ機構31は中央フレーム6と下部フレーム8に対して固定されるベースプレート32を備えている。ベースプレート32は中央フレーム6と下部フレーム8の外面側であって後輪14のタイヤ14bに隣接した位置に配設されてたアルミ合金製の平板である。自動ブレーキ機構31はベースプレート32上に自動ブレーキ機構31を構成する部材が搭載されている。ベースプレート32上の上部寄りの位置であって、第2の受け板30Bの下方位置には円柱体33が固着されている。円柱体33はベースプレート32から突起するように内方に向かって片持ち梁状に張り出している。円柱体33には上下直径方向に貫通する貫通路33aが形成されている。貫通路33a内には押圧ピン35が上下動可能に遊嵌されている。押圧ピン35は上端に軸部よりも大径となるヘッド35aを備えた断面円形の金属製ピンである。押圧ピン35は円柱体33の貫通路33aから下方に突出させられている。
押圧ピン35のヘッド35a側は第2の受け板30Bの上方に突出されており、突出した部分の外周位置にはコイルばね36が配設されている。コイルばね36はヘッド35aと第2の受け板30Bの間にあってヘッド35aに押圧力がかかると収縮し、押圧ピン35を第2の受け板30Bを基準に上方に押圧する付勢力を発生させる。
このように、押圧ピン35は第2の受け板30と円柱体33に挿通された状態で上下方向にスライド移動可能とされている。
円柱体33に隣接する位置には揺動部材としてのクランク体37が配設されている。クランク体37は押圧ピン35の直線的な動きを回転する動きに変換する部材である。図4~図7に示すように、クランク体37はベースプレート32に固定されたステー38に支持されている。クランク体37はステー38に対してワッシャ39を介してボルトとナットを組み合わせたネジ部材40によって回動(ここでは小さく揺れ動くので「揺動」といえる)可能に支持されている。ネジ部材40の軸中心位置がクランク体37の回動軸とされる。
クランク体37は第1のアーム37aと第2のアーム37bを備えている。第1のアーム37aは円柱体33の貫通路33aの下方位置に配置されており、貫通路33aから下方に突出した押圧ピン35の下端がちょうど第1のアーム37aの上面に当接させられている。第2のアーム37bは第1のアーム37aの延出方向に対して直交する方向、つまり下垂するように延出されている。回動軸を中心を基準として第2のアーム37bの長さは第1のアーム37aの長さの約4倍ほどとされている。
第2のアーム37bの外方、つまりベースプレート32方向には上下一対のスタンドピン41がベースプレート32上に固着されている。スタンドピン41はベースプレート32を基部側として第2のアーム37b方向に立設されている。2つのスタンドピン41の間にはチャンネル形状に屈曲形成されたステー43が2つのナット部材44A、44Bによって固定されている。ナット部材44A、44Bはスタンドピン41前方の雄ネジ部42に螺合され、雄ネジ部42の軸方向に沿って移動可能とされている。そのためステー43の取り付け位置は任意に変更可能とされている。ステー43は内方に向かって凸状に突出する突出部46を有している。第2のアーム37bはステー43の突出部46前面に当接して外方への揺動が規制されている。第2のアーム37bの原位置はステー43の位置(つまり突出部46の位置)を変更することによって変更可能とされる。
第2のアーム37bには突起部材としてのブレーキピン45が固着されている。ブレーキピン45は第2のアーム37bの回動軸から3/4程度の位置にベースプレート32の面方向に対して直交する方向が軸方向となるように配設されている。ブレーキピン45は後部側に雄ネジ部45aが形成されており、第2のアーム37bの貫通孔47内の図示しない雌ネジに螺合されている。ブレーキピン45は第2のアーム37bに対して任意の雄ネジ部45aの位置で第2のアーム37bに螺合されダブルナット49A、49B47A、47Bによって進退不能に固定されている。ブレーキピン45は断面円形形状の金属製の直線状の棒部材である。ブレーキピン45の先端はテーパ状に縮径され、先端は尖らないように面取り加工されている。
ブレーキピン45はステー43の突出部46の貫通孔46aとベースプレート32の貫通孔32aを貫通した状態で配設されている。両貫通孔46a、32aに対してブレーキピン45外周はごくわずかに隙間がある遊嵌状態とされる。第2のアーム37bに固定されたブレーキピン45は正確には直進運動ではなく回転運動であるため、この回転の際の上下動を許容する隙間が設けられている。ブレーキピン45はステー43とベースプレート32に保持された状態で進退する。
ブレーキピン45の先端側はベースプレート32の貫通孔32aを貫通してタイヤ14bの側面方向を指向している。ブレーキピン45は第2のアーム37bの揺動に同期して軸方向に進退する。
ブレーキピン45のベースプレート32の内側であってベースプレート32に隣接した位置には小フランジ50が形成されている。ブレーキピン45は小フランジ50によってタイヤ14b方向への進出量が規制されている。ブレーキピン45の外周であって小フランジ50とステー43(の突出部46)の間にはコイルばね51が付勢状態で配設されている。ブレーキピン45はコイルばね51によって付勢されて小フランジ50を介して常時タイヤ14b方向に進出させられている。ステー43の位置を調整することで小フランジ50とステー43の間隔を変更することができ、コイルばね51の圧縮度を変更することができるため、ブレーキピン45のタイヤ14bの側面に当接した際の押圧力(付勢力)を調整することができる。
ここでは車椅子1の正面視における右側の自動ブレーキ機構31について説明したが、左側の自動ブレーキ機構31についても構成部材が鏡像対象となるだけで同様である。
次にこのように構成された自動ブレーキ機構31の動作について車椅子1への使用者の乗り降りと関連させて説明する。
車椅子1の定石に従って畳まれている状態の車椅子1を使用可能とするために作業者はまずハンドル11や肘掛フレーム7を持って本体フレーム2を左右方向に開いていく。図2のようにある程度左右に開いた段階で作業者は切り欠き部28に手を差し込んで握り部29を軽く握り、自身の体重を上から座部固定フレーム25にかけるようにして図3のように完全に座部27を開くようにする。この使用可能状態において座部固定フレーム25は前方側で第1の受け板30A上に載置され、後方側で第2の受け板30Bの上に突出された押圧ピン35のヘッド35a上に載置される。この載置状態が図8(a)の状態である。このとき、第2の受け板30Bには座部固定フレーム25の荷重がかかっているわけであるが、コイルばね36によって押圧ピン35は上動位置を維持しており、付加荷重がかかっていない状態としている。このときの自動ブレーキ機構31は人が載っていないため自動的にブレーキがかかっている状態である。すなわち、図5に示すようにブレーキピン45の先端がタイヤ14bの側面に当接して若干食い込んで制動されている状態である。クランク体37の第2のアーム37bはステー43の突出部46前面に当接しており、第1のアーム37aは押圧ピン35に押動されていない状態である。
次いで、座部27に人が座る、つまりユーザーが車椅子1を使用する際には付加荷重がかかるため、図8(b)のように、コイルばね36が付加荷重によって圧縮され、押圧ピン35は上動位置から下がって下動位置となる。このときの自動ブレーキ機構31はブレーキが解除されることとなる。すなわち、図6に示すように、下動した押圧ピン35によって第1のアーム37aが押動され、クランク体37は図6において時計回り方向に揺動し、第2のアーム37bはステー43から離れ、ブレーキピン45をコイルばね51の付勢力に抗してブレーキピン45を後方に移動させブレーキピン45のタイヤ14bの側面への当接状態を解除する。これによってタイヤ14bへの制動がなくなるため車椅子1の後輪14は自由に回動できるようになる。ここで、付加荷重によって下動される押圧ピン35の押圧力で回動するクランク体37の回動力はコイルばね51の付勢力よりも大きいことが必要である。尚、コイルばね51の付勢力に抗してブレーキピン45を後退させるため、コイルばね51の強さは付加荷重をどれくらいに設定するかが必要条件となる。
改めてユーザーが立ち上がり車椅子1の座部27への付加荷重がなくなると再び自動ブレーキ機構31のブレーキピン45による制動が実行される。
上記のように構成することにより本実施例では次のような効果が奏される。
(1)使用可能状態でユーザーが車椅子1を使用していない場合には、自動ブレーキ機構31が作動して後輪14が制動されるが、その際にブレーキピン45はタイヤ14bの側面へ当接する。ブレーキピン45はタイヤ14bに対して軸方向への進退のみの動作であり、コイルばね51の強さが逃げにくいため制動能力が高い。
(2)タイヤ14bの側面は回転する外周転動面とは異なり平面であるため、ブレーキピン45先端は当接してわずかにタイヤ14bに食い込むと食い込んだ部分がタイヤ14bの回転による側方からの圧力を受けることとなるため、制動能力が高い。
(3)クランク体37は第1のアーム37aが押された際の移動量(揺動量)に比べて第2のアーム37bの移動量(揺動量)が大きくなるようにネジ部材40の軸中心からの第1のアーム37aまでの距離よりも第2のアーム37b側の方が長くなるようになっている。これによって、押圧ピン35によるわずかな上下動が大きく伝わるため座部27のほんのわずかな沈み込みであってもブレーキピン45を大きく動作させることができる。
(4)ブレーキピン45は第2のアーム37bに後端側が固定され先端までにステー43とベースプレート32に間隔をあけて保持されることとなる。つまり、ブレーキピン45は長手方向において複数個所で横方向の力に対して押されて移動しないように支持されることとなり、タイヤ14bにブレーキピン45先端が当接した際の横方向の押圧力にブレーキピン45が降伏することなく当接状態が維持されることとなる。また、同時にこれらステー43とベースプレート32(の貫通孔46a、貫通孔32a)によって案内されることとなる。
(5)ブレーキピン45のタイヤ14bへの押圧力がコイルばね51の圧縮力を調整して変更することが可能である。
(6)クランク体37の揺動量を変更することができるため、押圧ピン35の上下動する量に対するブレーキピン45の進退量の設定がしやすくなっている。
本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・車椅子1の構成は上記は一例であって、上記以外の車椅子に適用することも自由である。例えば上記のように切り欠き部28を有さない車椅子に適用するようにしてもよい。また、例えば手動ブレーキがない車椅子や上記とは異なる手動ブレーキを有する車椅子に適用してもよい。
・自動ブレーキ機構31について例えば、押圧ピン35、ブレーキピン45、クランク体37等の構成部材の形状や構成を上記以外で実施してもよい。例えば押圧ピン35やブレーキピン45を複数の部材で構成したり、コイルばね36、51を他の付勢手段に変更してもよい。
・クランク体37を揺動しやすくするために付勢手段として例えばぜんまいばねをネジ部材40に配設し、図5においてクランク体37を時計回り方向に回りやすくしてもよい。第2のアーム37bとステー43の突出部46間に例えば板ばねのような付勢手段を配置してもよい。
・付勢手段としてばね以外の例えばダンパーやクッション体のような弾性部材を配置してもよい。
・コイルばね36の強さは載る人や荷物の重量を考慮してあまり強くしないほうがよい。例えば子どもが載ることもあるわけなので、例えば15キロ程度の軽い重量でも押圧ピン35が下がるような付勢力を与えることがよい。一方で、より強い制動力を与える場合にはコイルばね36を強く圧縮し、その代わりに付加荷重を重めに設定するようにしてもよい。
・自動ブレーキ機構31を上記以外の位置に配設するようにしてもよい。
・上記実施の形態では左右の本体フレーム2にそれぞれ自動ブレーキ機構31を配設するようにしたが、いずれか一方だけでもよい。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成には限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
1…車椅子、2…本体フレーム、20…座部フレーム、25…アーム部としてのアームフレーム、27…座部、31…自動ブレーキ機構、35…上下動部材としての押圧ピン、37…揺動部材としてのクランク体、45…突起部材としてのブレーキピン。

Claims (9)

  1. それぞれに前輪及び後輪が装着された左右一対の本体フレームと、前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して折り畳み状態と使用状態とに変位する座部フレームと、前記座部フレームに配設され前記本体フレームが互いに離間することによって折り畳み状態から着座可能な張設状態へと変位する座部とを備えた車椅子において、
    前記座部の下方位置には前記座部への所定以上の付加荷重が前記座部フレームによって付加されることで下動し、前記付加荷重が消失することによって上動する上下動部材が配設されるとともに、前記上下動部材の下方位置には揺動部材が配設され、前記揺動部材は前記上下動部材の下動に伴う押動力によって回動し、近い方の前記後輪から離れる方向に揺動させられるとともに、前記上下動部材の上動に伴って押動力が開放されることで近い方の前記後輪に接近する方向に揺動させられ、前記揺動部材が近い方の前記後輪に接近する方向に揺動した際に前記揺動部材に設けられた突起部材の先端が近い方の前記後輪の側面に当接することを特徴とする車椅子。
  2. 前記上下動部材は第1の付勢手段によって上方に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
  3. 前記突起部材は第の付勢手段によって近い方の前記後輪の側面方向に付勢されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車椅子。
  4. 前記本体フレームには第2の付勢手段の付勢力を調節する付勢力調節手段が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車椅子。
  5. 前記第2の付勢手段は前記突起部材の外周に配設されたコイルばねであることを特徴とする請求項3又は4に記載の車椅子。
  6. 前記上下動部材が前記揺動部材を押動する位置と前記揺動部材の回動軸間の距離よりも、前記揺動部材の前記突起部材が設けられている位置と前記回動軸間の距離を長くすることで前記上下動部材の押動量よりも前記突起部材位置での前記揺動部材の揺動量が大きくなるようにしたことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車椅子。
  7. 前記本体フレームには前記揺動部材の揺動量を調整する揺動量調節手段が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の車椅子。
  8. 前記本体フレームには前記突起部材の直線的な進退を補助するための案内機構が設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の車椅子。
  9. それぞれに前輪及び後輪が装着された左右一対の本体フレームと、前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して折り畳み状態と使用状態とに変位する座部フレームと、前記座部フレームに配設され前記本体フレームが互いに離間することによって折り畳み状態から着座可能な張設状態へと変位する座部とを備えた車椅子の少なくとも一方の前記後輪に隣接した位置に取り付けて使用される自動ブレーキ機構において、
    前記自動ブレーキ機構は、前記座部への所定以上の付加荷重が前記座部フレームによって付加されることで下動し、前記付加荷重が消失することによって上動する上下動部材を前記座部の下方位置に備えるとともに、前記上下動部材の下方位置に揺動部材が配設されるように構成され、前記揺動部材は前記上下動部材の下動に伴う押動力によって回動し、前記後輪から離れる方向に揺動させられるとともに、前記上下動部材の上動に伴って押動力が開放されることで前記後輪に接近する方向に揺動させられ、前記揺動部材が前記後輪に接近する方向に揺動した際に前記揺動部材に設けられた突起部材の先端が前記後輪の側面に当接することを特徴とする車椅子用自動ブレーキ機構
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