以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
[第1実施形態]
(車椅子の概要)
図1は、本実施形態に係る車椅子1の一例を模式的に示す斜視図である。車椅子1は、手動式の車椅子である。手動式の車椅子とは、電動機のようなアクチュエータを備えず、介助者又は搭乗者の力を利用して動く車椅子をいう。手動式の車椅子は、バッテリ及び電動機を備える電動式の車椅子に比べて、安価で軽量であり環境に対する負荷が小さいという利点を有する。
図1に示すように、車椅子1は、搭乗者を支持する車体2と、車体2を支持する一対の車輪3と、車体2を支持する一対のキャスター4と、介助者に操作されるハンドグリップ5と、介助者に操作されるティッピングバー6と、一対の車輪3を制動させるブレーキ機構7と、一対の車輪3のそれぞれを支持する一対の支持部材9を有し、支持部材9の移動により車輪3のトー角θを調整するトー角調整機構10とを備える。
車体2は、メインフレーム21と、シート22と、バックレスト23と、アームレスト24と、レッグレスト25と、フットレスト26と、サイドガード27とを有する。
メインフレーム21は、シート22、バックレスト23、アームレスト24、レッグレスト25、フットレスト26、及びサイドガード27を支持する。メインフレーム21は、複数のパイプを組み合わせることによって形成される。メインフレーム21は、シート22、レッグレスト25、及びフットレスト26を支持するメインパイプ211と、アームレスト24を支持するアームパイプ212と、バックレスト23を支持するバックレストパイプ213と、メインパイプ211の一部と連結されるベースパイプ214と、メインパイプ211とベースパイプ214とを連結するサポートパイプ215と、メインパイプ211とベースパイプ214とを連結するクロスパイプ216とを有する。
シート22は、搭乗者が着座する座面22Sを有する。バックレスト23は、搭乗者の背中を支持する。アームレスト24は、搭乗者の腕を支持する。アームレスト24は、搭乗者の左腕及び右腕のそれぞれを支持するために一対設けられる。レッグレスト25は、搭乗者の脚を支持する。フットレスト26は、搭乗者の足を支持する。フットレスト26は、搭乗者の左足及び右足のそれぞれを支持するために一対設けられる。サイドガード27は、搭乗者の衣類がシート22の外側に垂れ下がることを防止する。
以下の説明においては、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。シート22の座面22Sと平行な面内においてシート22に対してレッグレスト25及びフットレスト26が存在する方が「前」であり、バックレスト23が存在する方が「後」である。シート22の座面22Sと平行な面内においてシート22に対して一方のアームレスト24が存在する方が「左」であり、他方のアームレスト24が存在する方が「右」である。シート22の座面22Sと直交する方向においてシート22に対してバックレスト23が存在する方が「上」であり、レッグレスト25及びフットレスト26が存在する方が「下」である。
バックレスト23は、シート22の後方において、シート22よりも上方に配置される。バックレスト23は、上下方向に延在する。一方のアームレスト24は、シート22の左方において、シート22よりも上方に配置される。他方のアームレスト24は、シート22の右方において、シート22よりも上方に配置される。一対のアームレスト24は、前後方向に延在する。レッグレスト25は、シート22の前方において、シート22よりも下方に配置される。フットレスト26は、レッグレスト25の前方において、レッグレスト25よりも下方に配置される。サイドガード27は、シート22の左方及び右方のそれぞれに配置される。
車輪3は、シート22の左方及び右方のそれぞれに1つずつ設けられる。車輪3は、ホイールと、ホイールに装着されるタイヤとを含む。車輪3は、トー角調整機構10の支持部材9に回転可能に支持される。車輪3は、回転軸RXを中心に回転可能である。回転軸RXは、シート22の座面22Sと実質的に平行である。
以下の説明においては、シート22の左方に配置される車輪3を適宜、左車輪3L、と称し、シート22の右方に配置される車輪3を適宜、右車輪3R、と称する。左車輪3Lの構造及び寸法と右車輪3Rの構造及び寸法とは同一である。
また、以下の説明においては、左車輪3Lを回転可能に支持する支持部材9を適宜、左支持部材9L、と称し、右車輪3Rを回転可能に支持する支持部材9を適宜、右支持部材9R、と称する。左支持部材9Lの構造及び寸法と右支持部材9Rの構造及び寸法とは同一である。
車輪3にハンドリム31が装着される。ハンドリム31は、左右方向において車輪3の外側に装着されるリング状の部材である。搭乗者は、ハンドリム31を操作して、車輪3を回転させることができる。
キャスター4は、車輪3の前方に配置される。キャスター4は、シート22の左方及び右方のそれぞれに1つずつ設けられる。キャスター4の直径は、車輪3の直径よりも小さい。キャスター4は、キャスターフォーク41に回転可能に支持される。キャスター4は、回転軸FXを中心に回転可能である。回転軸FXは、シート22の座面22Sと実質的に平行である。キャスターフォーク41は、車体2のメインフレーム21に回転可能に支持される。キャスターフォーク41は、回転軸VXを中心に回転可能である。回転軸VXは、キャスター4の回転軸FXと平行な軸と直交する。
以下の説明においては、シート22の左方に配置されるキャスター4を適宜、左キャスター4L、と称し、シート22の右方に配置されるキャスター4を適宜、右キャスター4R、と称する。左キャスター4Lの構造及び寸法と右キャスター4Rの構造及び寸法とは同一である。
ハンドグリップ5は、介助者に操作される介助者用の操作部材である。ハンドグリップ5は、介助者に握られる。ハンドグリップ5は、バックレストパイプ213の上端部よりも上方に配置される。介助者は、ハンドグリップ5を握った状態で車椅子1を動かすことができる。
ティッピングバー6は、介助者に操作される介助者用の操作部材である。ティッピングバー6は、キャスター4を上昇させるときに介助者に踏み込まれる。ティッピングバー6は、シート22よりも下方に配置される。
ブレーキ機構7は、車輪3に制動力を付与する。ブレーキ機構7は、介助用ブレーキ71と、駐車用ブレーキ72とを含む。
介助用ブレーキ71は、ハンドグリップ5の下方に設けられる介助用操作レバーと、介助用操作レバーの操作により車輪3の少なくとも一部と接触するブレーキパッドとを含む。介助者用操作レバーは、ワイヤを介してブレーキパッドに接続される。介助者が介助用操作レバーを操作すると、車輪3の少なくとも一部と接触するようにブレーキパッドが作動する。ブレーキパッドと車輪3の少なくとも一部とが接触することにより、車椅子1が制動する。
駐車用ブレーキ72は、シート22の左方及び右方のそれぞれに設けられる駐車用操作レバーと、駐車用操作レバーの操作により車輪3を押さえ付ける押圧部材とを含む。介助者又は搭乗者が駐車用操作レバーを操作すると、車輪3を押さえ付けるように押圧部材が作動する。押圧部材が車輪3を押さえ付けることにより、車椅子1が停止する。
(トー角調整機構)
次に、本実施形態に係るトー角調整機構10について説明する。図2は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す側面図である。図3は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。
トー角調整機構10は、車輪3のトー角θを調整する。トー角θとは、車椅子1を上方から見たときの車椅子1の進行方向に対する車輪3の角度をいう。すなわち、トー角θとは、シート22の座面22Sと平行な面内において、左右方向における車体2の中心を通り前後方向に延在する車体中心線ALと、タイヤ幅方向における車輪3の中心を通るタイヤ中心線CL(タイヤ赤道面)とがなす角度をいう。
本実施形態において、トー角調整機構10は、左車輪3Lを回転可能に支持する左支持部材9Lと、右車輪3Rを回転可能に支持する右支持部材9Rとを有する。トー角調整機構10は、左支持部材9Lを移動することにより左車輪3Lのトー角θを調整し、右支持部材9Rを移動することにより右車輪3Rのトー角θを調整する。
支持部材9(9L,9R)は、車輪3(3L,3R)に連結されたシャフト部材91を回転可能に支持する。シャフト部材91は、回転軸RXを含む。シャフト部材91は、回転軸RXを中心に車輪3と一緒に回転する。本実施形態において、支持部材9は、前後方向に延在するバー部材92を含む。シャフト部材91は、前後方向における支持部材9の中間部に回転可能に支持される。
本実施形態において、トー角調整機構10は、ポール部材8を介して支持部材9に接続されるハンドグリップ5を有する。ハンドグリップ5は、介助者用の操作部材である。ポール部材8は、上下方向に延在する。ポール部材8の下端部と支持部材9の後端部とが接続される。ハンドグリップ5は、ポール部材8の上端部に接続される。
また、トー角調整機構10は、左支持部材9Lと右支持部材9Rとを連結するリンク機構11を有する。図3に示すように、リンク機構11は、左支持部材9L及び右支持部材9Rのそれぞれに連結される第1リンク14と、左支持部材9Lに連結される第2リンク16と、右支持部材9Rに連結される第3リンク19とを有する。第1リンク14の左端部は、第1関節12を介して左支持部材9Lに連結される。第1リンク14の右端部は、第2関節13を介して右支持部材9Rに連結される。第2リンク16は、第3関節15を介して左支持部材9Lに連結される。第3リンク19は、第4関節17を介して右支持部材9Rに連結される。第2リンク16と第3リンク19とは第5関節18を介して連結される。
第1関節12の回転軸、第2関節13の回転軸、第3関節15の回転軸、第4関節17の回転軸、及び第3関節18の回転軸のそれぞれは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
第1関節12は、左支持部材9Lの前端部と左側のベースパイプ214の後端部との間に設けられる。第2関節13は、右支持部材9Rの前端部と右側のベースパイプ214の後端部との間に設けられる。第1リンク14の左端部は、第1関節12を介して左支持部材9Lの前端部に連結される。第1リンク14の右端部は、第2関節13を介して右支持部材9Rの前端部に連結される。ベースパイプ214と第1リンク14との相対位置は固定される。座面22Sと平行な面内において、左支持部材9Lは、第1関節12を中心に旋回可能である。座面22Sと平行な面内において、右支持部材9Rは、第2関節13を中心に旋回可能である。
第3関節15は、左支持部材9Lの後部に設けられる。第4関節17は、右支持部材9Rの後部に設けられる。第2リンク16の一端部は、第3関節15を介して左支持部材9Lの後部に連結される。第3リンク19の一端部は、第4関節17を介して右支持部材9Rの後部に連結される。第2リンク16の他端部と第3リンク19の他端部とは第5関節18を介して連結される。第5関節18は、第3関節15及び第4関節17よりも後方に配置される。第2リンク16の長さと第3リンク19の長さとは同一である。
一対のハンドグリップ5は、接近又は離間するように移動可能である。本実施形態においては、介助者がハンドグリップ5を操作することにより、ポール部材8を介してハンドグリップ5に接続されている一対の支持部材9が移動する。
一対のハンドグリップ5が接近するようにハンドグリップ5が操作されると、図3(A)に示すように、第2リンク16と第3リンク19とが接近し、第1関節12に旋回可能に支持されている左支持部材9Lの後端部と第2関節13に旋回可能に支持されている右支持部材9Rの後端部とが接近するように、左支持部材9L及び右支持部材9Rのそれぞれが移動する。
一対のハンドグリップ5が離間するようにハンドグリップ5が操作されると、図3(B)に示すように、第2リンク16と第3リンク19とが離間し、第1関節12に旋回可能に支持されている左支持部材9Lの後端部と第2関節13に旋回可能に支持されている右支持部材9Rの後端部とが離間するように、左支持部材9L及び右支持部材9Rのそれぞれが移動する。
図3(B)に示すように、トー角調整機構10は、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも短くなるようにトー角θを調整する。車輪3の前端部3Sとは、前後方向においてキャスター4に最も近い車輪3の部位をいう。車輪3の後端部3Tとは、前後方向においてキャスター4から最も遠い車輪3の部位をいう。すなわち、本実施形態において、トー角調整機構10は、一対の車輪3がトーイン(toe in)になるようにトー角θを調整する。
上述のように、トー角θとは、車体中心線ALとタイヤ中心線CLとがなす角度をいう。トー角調整機構10は、車体中心線ALに対して車輪3の後端部3Tが前端部3Sよりも外側に移動するようにトー角θを調整する。本実施形態において、車輪3の前端部3Sを通り車体中心線ALに平行な仮想線ILとタイヤ中心線CLとがなす角度をトー角θとする。図3(A)に示すように、一対のハンドグリップ5が接近するようにハンドグリップ5が操作され、車輪3の後端部3Tが車体中心線ALに接近したとき、車輪3のトー角θは小さくなる。図3(B)に示すように、一対のハンドグリップ5が離間するようにハンドグリップ5が操作され、車体2の後端部3Tが車体中心線ALから離れたとき、車輪3のトー角θは大きくなる。
トー角調整機構10は、車輪3のトー角θを第1角度θ1と第2角度θ2との一方から他方に変更する。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも大きい。図3(A)は、トー角θが第1角度θ1である状態を示す。図3(B)は、トー角θが第2角度θ2である状態を示す。
本実施形態において、第1角度θ1は、0[°]である。第2角度θ2は、5[°]以上15[°]以下である。
介助者は、一対のハンドグリップ5が接近するようにハンドグリップ5を操作することにより、車輪3のトー角θを第2角度θ2から第1角度θ1に変更することができる。また、介助者は、一対のハンドグリップ5が離間するようにハンドグリップ5を操作することにより、車輪3のトー角θを第1角度θ1から第2角度θ2に変更することができる。
トー角θが第1角度θ1になるようにハンドグリップ5が操作されたとき、図2に示すように、ポール部材8はバックレストパイプ213の後方に配置される。トー角θが第1角度θ1になるようにハンドグリップ5が操作されたとき、ハンドグリップ5(ポール部材8、支持部材9)の可動範囲において、ポール部材8とバックレストパイプ213との距離が最も短くなる。トー角θが第2角度θ2になるようにハンドグリップ5が操作されたとき、ハンドグリップ5(ポール部材8、支持部材9)の可動範囲において、ポール部材8とバックレストパイプ213との距離が最も長くなる。なお、ハンドグリップ5の可動範囲は、リンク機構11により規定される。
トー角θが第1角度θ1になるようにハンドグリップ5が操作され、ポール部材8とバックレストパイプ213との距離が短くなったとき、ポール部材8とバックレストパイプ213とが不図示のロック機構により固定されてもよい。また、トー角θが第2角度θ2になるようにハンドグリップ5が操作されたとき、第2角度θ2が維持されるように、ポール部材8が不図示のロック機構により固定されてもよい。
一対のハンドグリップ5が接近するようにハンドグリップ5が操作されると、図3(A)に示すように、第2リンク16と第3リンク19とがなす角度が小さくなるように、リンク機構11が作動する。一対のハンドグリップ5が離間するようにハンドグリップ5が操作されると、図3(B)に示すように、第2リンク16と第3リンク19とがなす角度が大きくなるように、リンク機構11が作動する。
リンク機構11の作用により、トー角調整機構10は、一対の支持部材9(9L,9R)を同期して移動することができる。また、リンク機構11の作用により、トー角調整機構10は、一対の車輪3(3L,3R)のトー角θを同じ角度に変更することができる。例えば、左車輪3Lのトー角θが0[°]のとき、右車輪3Rのトー角θも0[°]となる。左車輪3Lのトー角θが10[°]のとき、右車輪3Rのトー角θも10[°]となる。
(使用例)
次に、本実施形態に係る車椅子1の使用例について説明する。図4は、本実施形態に係る車椅子1の使用例を模式的に示す図である。図4に示すように、車椅子1を下り坂において移動させる場合、介助者は、車輪3のトー角θが第2角度θ2になるようにハンドグリップ5を操作して車椅子1を移動させる。車輪3のトー角θが大きいので、車輪3と地面との摩擦抵抗が大きくなる。車輪3と地面との摩擦抵抗により、車椅子1の移動速度が高くなることが抑制される。車椅子1は制動しながら下り坂をゆっくりと移動することができる。
一方、車椅子1を水平な地面において移動させる場合又は上り坂において移動させる場合、介助者は、車輪3のトー角θが第1角度θ1になるようにハンドグリップ5を操作して車椅子1を移動させる。車輪3のトー角θが小さいので、車輪3と地面との摩擦抵抗は小さくなる。したがって、介助者は、車椅子1を円滑に押すことができる。
なお、下り坂を下る車椅子1を制動させる場合、介助者は、車輪3のトー角θが第2角度θ2になるようにハンドグリップ5を操作するとともに、介助用操作レバーを握って介助用ブレーキ71を作動させてもよい。介助用操作レバーを握る介助者の握力が弱くても、車輪3のトー角θを大きくすることにより、車輪3と地面との摩擦抵抗によって、車椅子1は、制動しながら下り坂をゆっくりと移動することができる。
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、車椅子1にトー角調整機構10が設けられることにより、下り坂において車椅子1を移動させるとき、介助者は、車輪3のトー角θを大きくすることによって、車椅子1を制動しながら移動させることができる。ハンドグリップ5を操作して支持部材9を移動させるだけで、車椅子1に制動力を付与することができるので、介助者の負担は軽減される。
下り坂において車椅子1を移動させるとき、介助者は、車椅子1の移動速度が高くなることを抑制するために、重力の作用に抗うように車椅子1を操作する必要がある。また、下り坂において車椅子1を移動させるときにおいて、介助用ブレーキ71を有効に作動させるために、介助者は、介助用操作レバーを強く握る必要がある。このような場合、介助者に大きい力(腕力、握力)が要求される。介助者が高齢者である場合、下り坂において車椅子を有効に制動しながら移動させることは困難である可能性が高い。
本実施形態によれば、車輪3が回転している状態でハンドグリップ5を操作することにより、介助者は、小さい力で車輪3のトー角θを大きくすることができる。したがって、介助者の負担が軽減された状態で、車椅子1は、下り坂を制動しながら移動することができる。
また、本実施形態においては、トー角調整機構10は、トー角θを第1角度θ1と第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2との一方から他方に変更する。水平な地面又は上り坂において車椅子1を移動させる場合、トー角θが第1角度θ1に変更され、下り坂において車椅子1を移動させる場合、トー角θを第2角度θ2に変更されることにより、様々な傾斜角度の地面において車椅子1を円滑に移動させることができる。
また、本実施形態においては、第1角度θ1は、0[°]である。これにより、水平な地面又は上り坂において車椅子1を移動させる場合、車輪3と地面との摩擦抵抗を十分に抑制した状態で、車椅子1を円滑に移動させることができる。
また、本実施形態においては、第2角度θ2は、5[°]以上15[°]以下である。本発明者の知見によると、第2角度θ2が5[°]よりも小さいと、車輪3と地面との間の摩擦抵抗が小さ過ぎるため、下り坂において十分な制動効果を発揮させることができない。一方、第2角度θ2が15[°]よりも大きいと、車輪3と地面との間の摩擦抵抗が大き過ぎるため、下り坂においても車椅子1は停止してしまう。トー角θを5[°]以上15[°]以下に設定することにより、下り坂において適度な制動力が得られ、車椅子1は下り坂をゆっくりと移動することができる。なお、この知見は、下り坂の傾斜角度が8[°]以上10[°]以下であるときに有効である。
また、本実施形態においては、トー角調整機構10は、左支持部材9Lと右支持部材9Rを同期して移動する。左支持部材9Lと右支持部材9Rとが同一のタイミングで移動を開始し同一のタイミングで移動を終了することにより、車輪3を回転させながらトー角θを変更するとき、車椅子1は安定して走行することができる。
また、本実施形態においては、トー角調整機構10は、左車輪3Lのトー角θと右車輪3Rのトー角θとを同じ角度に変更する。これにより、車椅子1は、下り坂を真っ直ぐに安定して移動することができる。
また、本実施形態においては、トー角調整機構10は、一対の車輪3をトーインに調整する。これにより、車椅子1は、下り坂を安定して移動することができる。
また、本実施形態においては、左支持部材9Lと右支持部材9Rとはリンク機構11を介して連結される。これにより、介助者は、一対のハンドグリップ5の少なくとも一方を操作するだけで、左支持部材9Lと右支持部材9Rとを同期して移動させたり、左車輪3Lのトー角θと右車輪3Rのトー角θとを同じ角度にしたりすることができる。
なお、本実施形態においては、第1角度θ1が0[°]であることとした。第1角度θ1は0[°]でなくてもよく、例えば1[°]以上4[°]以下でもよい。以下の実施形態においても同様である。
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図5は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す側面図である。図6は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。
図5及び図6に示すように、トー角調整機構10は、旋回軸SXを中心に支持部材9を旋回可能に支持する旋回機構81と、規定方向に旋回するように支持部材9に力を付与する弾性部材82と、ワイヤ83を介して支持部材9に接続され規定方向の逆方向に旋回するように支持部材9に力を付与可能な操作部材であるトー角操作レバー84とを有する。
旋回機構81の旋回軸SXは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
支持部材9は、車輪3に連結されるシャフト部材91を回転可能に支持する軸受部材93と、軸受部材93から前方に突出する第1突出部材94Fと、軸受部材93から後方に突出する第2突出部材94Rとを有する。軸受部材93は、旋回機構81に連結される。旋回機構81は、メインフレーム21に支持される。ワイヤ83は、第1突出部材94Fに接続される。弾性部材82の一端部は、第2突出部材94Rに接続される。弾性部材82の他端部は、メインフレーム21の少なくとも一部に接続される。
トー角操作レバー84は、ハンドグリップ5の近傍に配置される。トー角操作レバー84は、介助者に操作される介助者用の操作部材である。
ワイヤ83は、トー角操作レバー84に接続される上端部と、左支持部材9Lの第1突出部材94Fに接続される左分岐部と、右支持部材9Rの第1突出部材94Fに接続される右分岐部とを有する。すなわち、ワイヤ83は、中間部において左分岐部と右分岐部とに分岐する。トー角調整機構10は、トー角操作レバー84と支持部材9との間においてワイヤ83を支持するプーリ85と、プーリ85と左支持部材9Lとの間においてワイヤ83を支持する左プーリ86Lと、プーリ85と右支持部材9Rとの間においてワイヤ83を支持する右プーリ86Rとを有する。
本実施形態においても、介助者がトー角操作レバー84を操作することにより、支持部材9が移動して、トー角θが変更される。本実施形態においては、トー角操作レバー84が操作されることにより、ワイヤ83が上方に移動する。ワイヤ83が上方に移動すると、第1突出部材94Fにワイヤ83による引張力が付与される。ワイヤ83により第1突出部材94Fに付与される引張力が、弾性部材82により第2突出部材94Rに付与される弾性力よりも大きい場合、図6(B)に示すように、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが大きくなるように旋回する。すなわち、トー角操作レバー84が操作されることにより、車輪3のトー角θは、第2角度θ2に変更される。
トー角操作レバー84の操作が解除されると、ワイヤ83が下方に移動する。ワイヤ83が下方に移動し、第1突出部材94Fに対する引張力の付与が解除されると、弾性部材82により第2突出部材94Rに付与される弾性力によって、図6(A)に示すように、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが小さくなるように旋回する。すなわち、トー角操作レバー84の操作が解除されることにより、車輪3のトー角θは、第1角度θ1に変更される。
以上説明したように、本実施形態においても、トー角調整機構10は、介助者用の操作部材であるトー角操作レバー84の操作により、車輪3のトー角θを第1角度θ1と第2角度θ2との一方から他方に変更することができる。
なお、本実施形態においては、弾性部材82は規定方向に旋回するように支持部材9に力を付与し、トー角操作レバー84が操作されたときに車輪3のトー角θが大きくなり、トー角操作レバー84の操作が解除されたときに弾性部材82の弾性力により車輪3のトー角θが小さくなることとした。弾性部材82は規定方向の逆方向に旋回するように支持部材9に力を付与し、トー角操作レバー84が操作されたときに車輪3のトー角θが小さくなり、トー角操作レバー84の操作が解除されたときに弾性部材82の弾性力により車輪3のトー角θが大きくなってもよい。この場合、何らかの理由でワイヤ83が切断されトー角操作レバー84が操作不能になったとき、弾性部材82の弾性力により車輪3のトー角θは大きくなる(トーインになる)。そのため、ワイヤ83が切断されトー角操作レバー84が操作不能になったとき、車椅子1に制動力を付与することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図7は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。図7に示すように、トー角調整機構10は、第1関節112を介して左支持部材9Lに連結される第1リンク113と、第2関節114を介して右支持部材9Rに連結され第3関節115を介して第1リンク113に連結される第2リンク116と、第3関節115に連結されるロッド部材117と、ロッド部材117をガイドするガイド部材118と、ロッド部材117に接続される操作部材119と、旋回軸SXを中心に支持部材9を旋回可能に支持する旋回機構81とを有する。第3関節115は、第1関節112及び第2関節114よりも後方に配置される。
旋回機構81の旋回軸SXは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
支持部材9は、車輪3に連結されるシャフト部材91を回転可能に支持する軸受部材93と、軸受部材93から後方に突出する突出部材94とを有する。軸受部材93は、旋回機構81に連結される。旋回機構81は、メインフレーム21に支持される。第1リンク113は、第1関節112を介して左支持部材9Lの軸受部材93に連結される。第2リンク116は、第2関節114を介して右支持部材9Rの軸受部材93に連結される。
第1リンク113の長さと第2リンク116の長さとは同一である。ロッド部材117は、第3関節115に連結される。ガイド部材118は、リニアガイド機構を含む。ガイド部材118は、メインフレーム21に支持される。ロッド部材117は、前後方向に移動可能にガイド部材118に支持される。
操作部材119は、ロッド部材117に接続される。操作部材119の操作により、ロッド部材117は前後方向に移動する。ロッド部材117の移動により支持部材9が移動する。
本実施形態において、操作部材119は、介助者に操作される介助者用の操作部材でもよいし、搭乗者に操作される搭乗者用の操作部材でもよい。操作部材119が介助者又は搭乗者によって操作されることにより、支持部材9が移動する。
図7(A)に示すように、ロッド部材117が後方に移動するように操作部材119が操作されると、第1リンク113と第2リンク116とがなす角度は小さくなり、第1リンク113は、旋回機構81に支持されている左支持部材9Lの軸受部材93が規定方向に旋回するように軸受部材93に力を付与し、第2リンク116は、旋回機構81に支持されている右支持部材9Rの軸受部材93が規定方向に旋回するように軸受部材93に力を付与する。これにより、図7(A)に示すように、車輪3のトー角θは、第1角度θ1に変更される。
図7(B)に示すように、ロッド部材117が前方に移動するように操作部材119が操作されると、第1リンク113と第2リンク116とがなす角度は大きくなり、第1リンク113は、旋回機構81に支持されている左支持部材9Lの軸受部材93が規定方向の逆方向に旋回するように軸受部材93に力を付与し、第2リンク116は、旋回機構81に支持されている右支持部材9Rの軸受部材93が規定方向の逆方向に旋回するように軸受部材93に力を付与する。これにより、図7(B)に示すように、車輪3のトー角θは、第2角度θ2に変更される。
以上説明したように、本実施形態においても、トー角調整機構10は、操作部材119の操作により、車輪3のトー角θを第1角度θ1と第2角度θ2との一方から他方に変更することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図8は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。図8に示すように、トー角調整機構10は、支持部材9に接続され旋回軸SXを中心に回転可能なピニオン95と、ピニオン95に噛み合うラック96と、ラック96に接続される操作部材119とを有する。
ピニオン95の旋回軸SXは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
支持部材9は、車輪3に連結されるシャフト部材91を回転可能に支持する軸受部材93を含む。軸受部材93は、ピニオン95に連結される。ピニオン95は、メインフレーム21に回転可能に支持される。
以下の説明において、左支持部材9Lの軸受部材93に連結されるピニオン95を適宜、左ピニオン95L、と称し、右支持部材9Rの軸受部材93に連結されるピニオン95を適宜、右ピニオン95R、と称する。
左ピニオン95Lの直径及び歯数と右ピニオン95Rの直径及び歯数とは同一である。
ラック96は、左ピニオン95Lと右ピニオン95Rとの間に配置される。ラック96は、前後方向に移動可能である。
操作部材119は、ラック96に接続される。操作部材119の操作により、ラック96は前後方向に移動する。ラック96の移動によりピニオン95が回転し、ピニオン95の回転により支持部材9が移動する。
本実施形態において、操作部材119は、介助者に操作される介助者用の操作部材でもよいし、搭乗者に操作される搭乗者用の操作部材でもよい。操作部材119が介助者又は搭乗者によって操作されることにより、支持部材9が移動する。
図8(A)に示すように、ラック96が前方に移動するように操作部材119が操作されると、ピニオン95が回転する。左ピニオン95Lは、左支持部材9Lの軸受部材93が規定方向に旋回するように回転し、右ピニオン95Rは、右支持部材9Rの軸受部材93が規定方向に旋回するように回転する。これにより、図8(A)に示すように、車輪3のトー角θは、第1角度θ1に変更される。
図8(B)に示すように、ロッド部材117が後方に移動するように操作部材119が操作されると、ピニオン95が回転する。左ピニオン95Lは、左支持部材9Lの軸受部材93が規定方向の逆方向に旋回するように回転し、右ピニオン95Rは、右支持部材9Rの軸受部材93が規定方向の逆方向に旋回するように回転する。これにより、図8(B)に示すように、車輪3のトー角θは、第2角度θ2に変更される。
以上説明したように、本実施形態においても、トー角調整機構10は、操作部材119の操作により、車輪3のトー角θを第1角度θ1と第2角度θ2との一方から他方に変更することができる。
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図9は、本実施形態に係る車椅子1の使用例を模式的に示す図である。上述の各実施形態においては、トー角調整機構10は、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも短くなるようにトー角θを調整することとした。トー角調整機構10は、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも長くなるようにトー角θを調整してもよい。上述のように、車輪3の前端部3Sとは、前後方向においてキャスター4に最も近い車輪3の部位をいい、車輪3の後端部3Tとは、前後方向においてキャスター4から最も遠い車輪3の部位をいう。図9に示すように、下り坂において車輪3がキャスター4よりも進行方向前方に配置された状態で、車椅子1を移動させる場合、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも長くなるようにトー角θが調整されることにより、車椅子1は、下り坂を安定して移動することができる。
[第6実施形態]
第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
上述の実施形態においては、介助者又は搭乗者が操作部材を操作することにより支持部材9が移動してトー角θが変更される例について説明した。以下の説明においては、操作部材の操作によらずに、介助者が車椅子1を後方から押したときに車輪3のトー角θが変更される例について説明する。
図10は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。図10に示すように、トー角調整機構10は、旋回軸SXを中心に支持部材9を旋回可能に支持する旋回機構81と、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも短くなるように車輪3の回転軸RXよりも前方の支持部材9の第1部位に力を付与する第1弾性部材97とを有する。
旋回機構81の旋回軸SXは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
支持部材9は、車輪3に連結されるシャフト部材91を回転可能に支持する軸受部材93と、軸受部材93から前方に突出する第1突出部材98Fと、軸受部材93から後方に突出する第2突出部材98Rとを有する。軸受部材93は、旋回機構81に連結される。旋回機構81は、メインフレーム21に支持される。第1弾性部材97の一端部は、第1突出部材98Fに接続される。第1弾性部材97の他端部は、メインフレーム21の少なくとも一部に接続される。
第2突出部材98Rと対向する位置にストッパ部材28が配置される。ストッパ部材28は、メインフレーム21に支持される。
車椅子1が例えば水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置され、車椅子1に外力が付与されていない場合、第1弾性部材97から第1突出部材98Fに付与される弾性力によって、図10に示すように、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが大きくなるように旋回する。すなわち、車椅子1が水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置されている状態で、介助者が車椅子1を操作していないとき、車輪3のトー角θは、第2角度θ2に変更される。車輪3のトー角θが第2角度θ2であるため、傾斜角度が小さい下り坂に車椅子1が設置された場合、車輪3と地面との摩擦抵抗により、車椅子1は停止する。
なお、傾斜角度が小さい下り坂とは、傾斜角度が例えば1[°]以上4[°]以下の下り坂をいう。
一方、車椅子1が水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置されている状態で、介助者が車椅子1を後方から押したとき、トー角θが小さくなるように車輪3に力が付与される。介助者が車椅子1を押すことによりトー角θが小さくなるように車輪3に付与される力が、第1弾性部材97により第1突出部材98Fに付与される弾性力よりも大きい場合、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが小さくなるように旋回する。
すなわち、本実施形態においては、傾斜角度が小さい下り坂に車椅子1が設置されている状態で、車椅子1に外力が付与しないとき、車輪3のトー角θが大きくなり、車輪3と地面との摩擦抵抗が大きくなる。これにより、車椅子1は、傾斜角度が小さい下り坂において、停止する又は非常にゆっくりと下り坂を下る。一方、介助者が車椅子1を後方から押すことにより、車輪3のトー角θが小さくなり、車椅子1は、比較的高い移動速度で移動することができる。介助者が車椅子1を押すことをやめれば、車輪3のトー角θが大きくなり、車椅子1は減速又は停止する。
以上説明したように、本実施形態においては、トー角調整機構10は、車椅子1に付与される外力に基づいて、車輪3のトー角θを変更することができる。
[第7実施形態]
第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態は、上述の第6実施形態の変形例である。図11は、本実施形態に係るトー角調整機構10の一例を模式的に示す平面図である。図11に示すように、トー角調整機構10は、旋回軸SXを中心に支持部材9を旋回可能に支持する旋回機構81と、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が後端部3Tの間隔よりも短くなるように車輪3の回転軸RXよりも前方の支持部材9の第1部位に力を付与する第1弾性部材97と、一対の車輪3の前端部3Sの間隔が長くなるように車輪3の回転軸RXよりも後方の支持部材9の第2部位に力を付与する第2弾性部材99とを有する。
旋回機構81の旋回軸SXは、車輪3の回転軸RXに平行な軸と直交する。
支持部材9は、車輪3に連結されるシャフト部材91を回転可能に支持する軸受部材93と、軸受部材93から前方に突出する第1突出部材98Fと、軸受部材93から後方に突出する第2突出部材98Rとを有する。軸受部材93は、旋回機構81に連結される。旋回機構81は、メインフレーム21に支持される。
第1弾性部材97の一端部は、ワイヤ100を介して第1突出部材98Fに接続される。ワイヤ100は、左プーリ86L及び右プーリ86Rのそれぞれに支持される。第1弾性部材97の他端部は、メインフレーム21の後端部に固定された固定部材101に接続される。
第2弾性部材99の一端部は、第2突出部材98Rに接続される。第2弾性部材99の他端部は、メインフレーム21の少なくとも一部に接続される。
本実施形態において、第1弾性部材97が発生する弾性力は、第2弾性部材99が発生する弾性力よりも大きい。
車椅子1が水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置され、車椅子1に外力が付与されていない場合、第1弾性部材97が発生する弾性力は、第2弾性部材99が発生する弾性力よりも大きいため、第1弾性部材97により第1突出部材98Fに付与される弾性力によって、図11に示すように、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが大きくなるように旋回する。すなわち、車椅子1が水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置されている状態で、介助者が車椅子1を操作していないとき、車輪3のトー角θは、第2角度θ2に変更される。車輪3のトー角θが第2角度θ2であるため、傾斜角度が小さい下り坂に車椅子1が設置された場合、車輪3と地面との摩擦抵抗により、車椅子1は停止する。
一方、車椅子1が水平な地面又は傾斜角度が小さい下り坂に設置されている状態で、介助者が車椅子1を後方から押したとき、介助者が車椅子1を押すことによりトー角θが小さくなるように車輪3に付与される力と第2弾性部材99により第2突出部材98Rに付与される弾性力との和が、第1弾性部材97により第1突出部材98Fに付与される弾性力よりも大きい場合、旋回機構81に支持されている支持部材9は、車輪3のトー角θが小さくなるように旋回する。
すなわち、第6実施形態と同様、本実施形態においても、傾斜角度が小さい下り坂に車椅子1が設置されている状態で、介助者が車椅子1に外力を付与しないとき、車輪3のトー角θが大きくなり、車輪3と地面との摩擦抵抗により、車椅子1は停止する又は非常にゆっくりと下り坂を下る。一方、介助者が車椅子1を後方から押すことにより、車輪3のトー角θが小さくなり、車椅子1は、比較的高い移動速度で移動することができる。また、介助者が車椅子1を押すことをやめれば、車輪3のトー角θが大きくなり、車椅子1は減速又は停止する。
以上説明したように、本実施形態においても、トー角調整機構10は、車椅子1に付与される外力に基づいて、車輪3のトー角θを変更することができる。本実施形態においては、第2弾性部材99が設けられるため、介助者が車椅子1を押す力が小さくても、車椅子1は円滑に移動することができる。
なお、上述の各実施形態においては、車輪3にハンドリム31が装着されることとした。車椅子1が介助式の車椅子である場合、ハンドリム31は省略されてもよい。また、上述の各実施形態においては、介助用ブレーキ71が設けられることとした。車椅子1が自走式の車椅子である場合、介助用ブレーキ71は省略されてもよい。