JP7126352B2 - 防湿皮膜形成用シート - Google Patents
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Description
電子機器に対する小型化の要求を満足させるべく前記プリント回路板には、高密度実装が求められている。
そのため、プリント配線板は、配線ピッチが狭ピッチなものとなっている。
このような狭ピッチのプリント配線板を用いたプリント回路板では、はんだブリッジなどによるショートが生じるおそれがある。
このようなショートは、はんだブリッジを原因とする場合だけでなく水分によっても生じ得る。
例えば、電子機器内に入り込んだ水蒸気によってプリント回路板の表面に結露が生じたりすると、水滴が極めて小さなものであっても回路ショートの原因となる。
従来の防湿処理は、樹脂組成物でプリント回路板の表面に防湿皮膜を形成するような方法で実施されている。
なお、プリント回路板だけでなく、樹脂組成物で被処理品の表面に防湿皮膜を形成させた防湿処理製品は、各種の用途において用いられている。
防湿処理製品での防湿皮膜の形成には、下記特許文献1、2に記載されているように液状のコート剤が用いられており、防湿皮膜は、被処理品の被処理面に前記コート剤を塗布してウェット塗膜を形成させた後に、塗膜を乾燥させて防湿皮膜を形成させるような方法によって作製されている。
具体的には、複数本のリードフレームが一定間隔で並んでいるような表面実装部品(SMD)が搭載されているプリント回路板に液状のコート剤で防湿皮膜を形成しようとした場合、リードフレームの上部では薄い塗膜しか形成されず、リードフレーム間に液溜りが出来易くなる。
また、リードフレームのエッジ部などにおいては、特に薄い塗膜しか形成されないおそれがある。
さらに、DIP(Dual Inline Package)のようなスルホール挿入型の電子部品(THD)を搭載したプリント回路板のはんだ面では、リードの先端部が突出した状態になっており、このようなはんだ面を被処理面とするとリード先端部の塗膜厚みが他に比べて薄くなり易い。
なお、上記のような問題は、防湿処理を施す被処理品がプリント回路板である場合に限って生じるものではない。
即ち、部分的に厚みの薄い防湿皮膜が形成されると、防湿性能が十分に発揮されないおそれがあるため、部分的に厚みの薄い防湿皮膜の形成を抑制することは、特定の分野に限らず広く一般に要望されている事項である。
しかも、本発明の防湿皮膜形成用シートは、適度に加熱することで良好な軟化状態となる樹脂シートに防湿コート層が積層されているため、仮に被処理品の表面に凹凸が形成されていたとしても該表面に対して優れた追従性を発揮させ得る。
従って、本発明によれば、被処理品に対して防湿性能に優れた防湿皮膜を形成させ得る。
以下においては、被処理品がプリント回路板である場合を例にして本発明の実施の形態について説明する。
即ち、以下においては本発明の防湿皮膜形成用シートを使ってプリント回路板の表面に防湿皮膜を形成させる場合を例示する。
本実施形態の防湿皮膜形成用シートFは、該防湿コート層F2が被処理品であるプリント回路板に転写され、防湿処理が施されるべき該プリント回路板の表面(以下「被処理面」)に防湿コート層F2で防湿皮膜を形成すべく用いられる。
本実施形態での前記防湿コート層F2は、基材シートF1の両面には備えられておらず、片面にのみ備えられている。
また、前記防湿コート層F2は、基材シートF1の全面を覆うようには備えられていない。
即ち、防湿コート層F2が形成されている領域の面積は、基材シートF1の面積よりも小さい。
したがって、前記基材シートF1の一方の表面には、前記防湿コート層F2が積層されている領域(以下、「積層領域F11」ともいう)と前記防湿コート層F2が積層されていない領域(以下、「非積層領域F12」ともいう)とが備えられている。
本実施形態の前記積層領域F11は、基材シートF1の中央部に設けられている。
前記非積層領域F12は、基材シートF1の外周縁に沿って設けられ、前記積層領域F11を包囲するように設けられている。
即ち、本実施形態における防湿皮膜形成用シートFは、形成すべき防湿皮膜の形状に対応したパターニングが施された防湿コート層F2を備えている。
該樹脂シートは、適度なコシを有することが好ましく、5μm以上の厚みを有することが好ましい。
樹脂シートの厚みは、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。
樹脂シートは、過度な厚みを有していないことが好ましい。
樹脂シートの厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。
前記樹脂シートの常温(例えば、23℃)における貯蔵弾性率は、1GPa以上であることがより好ましい。
前記樹脂シートの常温(例えば、23℃)における貯蔵弾性率は、10GPa以下であることが好ましく、5GPa以下であることがより好ましい。
従って、前記樹脂シートは、熱接着によって防湿コート層F2をプリント回路板に転写する際に適度な軟化状態となることが好ましい。
具体的には、前記樹脂シートは、85℃~100℃の範囲の何れかの温度で0.01GPa以上0.1GPa以下の貯蔵弾性率を示すことが好ましい。
前記樹脂シートは、上記の温度範囲の内の何れかの温度で0.02GPa以上0.05GPa以下の貯蔵弾性率を示すことがより好ましい。
前記樹脂シートは、上記のような貯蔵弾性率を示す温度範囲が85℃~100℃の範囲の中で5℃以上存在することが好ましく、10℃以上存在することがより好ましい。
前記樹脂シートは、85℃~100℃の範囲の全域において上記のような貯蔵弾性率を示すことが特に好ましい。
(貯蔵弾性率測定条件)
・装置:
動的粘弾性測定装置(例えば、日立ハイテクサイエンス社製「DMA7100」)
・測定モード:引張り
・測定周波数:1Hz
・測定温度範囲:常温~150℃
・昇温速度:5℃/min
前記樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;GPPS(スチレン単独重合体)、HIPS(スチレン-ブタジエン共重合体)などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリイミド樹脂などが挙げられる。
前記樹脂シートを構成する樹脂は、例えば、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーであってもよい。
前記樹脂シートは、単層構造でなく積層構造を有していてもよい。
前記のような貯蔵弾性率を発揮させる上において、前記樹脂シートを構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂かアクリル系樹脂かの何れかから選択される1種以上であることが好ましい。
また、樹脂シートは、防湿コート層F2の保持性を良好にすべく前記表面に粗化処理が施されていてもよい。
さらに、樹脂シートは、離型処理と粗化処理との両方が施されていてもよい。
前記樹脂組成物には、硫黄系のガスに対するガスバリア性を防湿皮膜に発揮させるべく、スチレン系オリゴマーをさらに含有させてもよい。
これらの構成単位は、1種単独で前記ビニル芳香族ブロックを構成しても、または2種以上でビニル芳香族ブロックを構成してもよい。
前記ブロックコポリマーは、上記例示以外のビニル芳香族化合物によってビニル芳香族ブロックを構成させてもよく、上記例示のビニル芳香族化合物と上記例示以外のビニル芳香族化合物とでビニル芳香族ブロックが構成されていてもよい。
また、これらの水素添加品なども前記ブロックコポリマーとして用いられ得る。
前記スチレン系オリゴマーは、例えば、これらの内のいずれか一つで構成されているもの、これらの内の複数で構成されているもの、上記例示の構成単位と共重合可能なビニル化合物をさらに構成単位として含むものなどとすることができる。
このスチレン系オリゴマーは、通常、上記構成単位が100以下の数量で重合されており、質量平均分子量の値が1万以下(数百~数千)程度となるものを採用することができる。
前記粘着性付与剤としては、一般に利用されているテルペン系の成分を利用することができる。
また、その他の前記添加剤として、例えば、難燃剤、耐候剤、防錆剤、充填剤、改質剤、顔料などを樹脂組成物にさらに含有させてもよい。
この水系溶媒としては、水のみであっても水に溶解可能なアルコールなどの有機溶媒を少量(例えば、10質量%以下の割合で)含むものであってもよい。
なお、このような水系溶媒を用いる際には、ブロックコポリマーやスチレン系オリゴマー、あるいは、これらの混合物によって形成される微小な粒子を被覆して保護コロイド化させる保護コロイド成分をさらに含有させてコーティング剤を水性エマルジョンの形態とすることが好ましい。
これらの保護コロイド成分は1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。
これらの中でも、保護コロイド成分として、(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩及び/又はポリビニルアルコールを用いるのが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩を用いることが特に好ましい。
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、モノメチルイタコン酸などが挙げられる。
また、前記(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体としては、前記単量体の他に、スチレンなどがさらに共重合されているものであってもよい。
また、前記(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の酸価は50~300mg-KOH/gであることが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体は、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアミン塩、又はアンモニウム塩などで水溶化され得る。
ポリビニルアルコールは、カルボキシル基、スルホン酸基、アセトアセチル基、及び、カチオン基の内の1以上の官能基を有するように変性されたものであってもよい。
また、前記保護コロイド成分は、前記ブロックコポリマー100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下の割合で含有させ得る。
コーティング剤で基材シート上に塗膜を形成させるには、該塗膜を全面に施す場合は、スプレーコート、ナイフコート、リバースコート、刷毛塗りなどの一般的な塗工方法を採用することができる。
前記塗膜を部分的なものとする場合(塗膜時点でパターンを形成する場合)は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷などの塗工方法を採用することができる。
該塗工方法で形成された塗膜を乾燥して防湿皮膜を形成させる方法としては、一般的な加熱乾燥炉を用いることができる。
前記防湿コート層F2の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記防湿コート層F2の厚みは、基材シートF1と同様にマイクロメータなどによって求めることができる。
前記のように本実施形態の防湿皮膜形成用シートFは、防湿皮膜を有するプリント回路板(以下、「防湿皮膜付きプリント回路板」ともいう)の形成に用いられる。
即ち、本実施形態の防湿皮膜形成用シートFは、防湿皮膜付きプリント回路板のような防湿処理製品の製造に利用される。
また、本実施形態での防湿処理製品の製造方法は、前記防湿皮膜を形成する被処理面に凹凸を有する被処理品を用い、前記樹脂組成物で形成された防湿コート層F2が熱可塑性を有する基材シートF1に積層された積層構造を有する防湿皮膜形成用シートFを用意する工程、及び、前記防湿皮膜形成用シートFで空間を区分けし、該防湿皮膜形成用シートFを介して隣り合う第1空間部と第2空間部とを形成する区分工程を実施し、前記防湿皮膜形成用シートFを加熱して軟化させる加熱工程を前記区分工程の前又は前記区分工程の後に実施し、前記区分工程と前記加熱工程との後には、前記第1空間部の気圧を前記第2空間部よりも低圧にして前記防湿皮膜形成用シートFに対して前記第2空間部から前記第1空間部に向けて圧力を加える加圧工程を更に実施し、前記区分工程では、第1空間部側の表面が前記防湿コート層F2となるように前記防湿皮膜形成用シートFを配置し、且つ、前記被処理面が前記防湿コート層F2と対向するように前記被処理品を前記第1空間部に配置し、前記加圧工程では、前記加熱工程によって軟化された前記防湿皮膜形成用シートFを前記圧力を利用して前記被処理面に接着させ、該防湿皮膜形成用シートFを構成する前記防湿コート層F2を被処理面に転写することによって前記防湿皮膜を形成する、防湿処理製品の製造方法である。
プリント回路板1は、エッチングされた金属箔で形成された配線を有するプリント配線板10と、該プリント配線板10の両表面に施されたソルダーレジスト層11と、ソルダーレジスト層11が設けられていないランドなどにはんだ付けされた電子部品(表面実装部品SMD、及び、スルホール挿入型部品THD)とを備えている。
本実施形態のプリント回路板1は、電子機器の筐体などに螺子止めし得るように平面視における4隅に貫通孔H1~H4を有している。
即ち、本実施形態においては、前記部品面1a及びはんだ面1bが防湿処理の施される被処理面となっている。
前記部品面1aには、表面実装部品SMDとスルホール挿入型部品THDとが混載されている。
スルホール挿入型部品THDは、プリント配線板10を厚み方向に貫通するように設けられたスルホールTHにリードRを挿通させて部品面側に配されている。
そのため、プリント回路板1の第1の被処理面(以下「第1被処理面」ともいう)である部品面1aには、表面実装部品SMDやスルホール挿入型部品THDの部品高さに応じた凹凸が形成されているとともにプリント回路板1の第2の被処理面(以下「第2被処理面」ともいう)であるはんだ面1bにもリードRの突出高さなどに応じた凹凸が形成されている。
第1被処理面での凹凸に比べて第2被処理面での凹凸の方がプリント配線板10の表面からの突出高さが低いものの該第2被処理面での凹凸の突出高さは、後述する防湿皮膜の厚みに比べて大きい。
そのため、液状のコーティング剤を用いる場合に比べて防湿皮膜に一定以上の厚みを付与させ易いものの単に防湿コート層F2を被処理面に接着させるだけでは被処理面の凹凸に十分良好な追従性を示さないおそれがある。
本実施形態においては、防湿コート層F2を熱接着によって被処理面に転写する際に基材シートが適度な弾性率となるため、凹凸を有する被処理面に対して良好な追従性を発揮する。
また、本実施形態においては、防湿コート層F2をより良好な状態で被処理面に熱接着させるべく特定の装置が用いられる。
図に示す装置100は、垂直方向において対向するように対になって配された2つの型を有している。
具体的には、装置100は、下型110と、該下型の上方に配された上型120とを有している。
前記下型110は、扁平な矩形箱形状を有しており、上方に向けて開口した有底筒形形状を有している。
具体的には、前記下型110は、底壁111と、該底壁111の外周縁部から上方に延びる筒状の側壁112とを有している。
そして、前記上型120は、前記下型110と逆の形状を有している。
即ち、前記上型120は、扁平な矩形箱形状を有しており、下方に向けて開口し、天井壁121と、該天井壁121の外周縁部から下方に延びる筒状の側壁122とを有している。
具体的には、装置100では、前記下型110が固定された状態で配されており、前記上型120が上下に移動可能な状態で備えられている。
なお、前記下型110には、前記底壁111よりも一回り小さな板状のステージ114と、下型内で前記ステージ114を上下動させるためのシリンダー115とを備えている。
該ステージ114は、板面が略水平となるように配されており、前記シリンダー115は、垂直方向に延在するように配されている。
そして、前記シリンダー115は、上端部においてステージ114を下面側から支持するように配されている。
なお、前記ステージ114は、プリント回路板1の最大厚みに該当する距離よりも移動距離が大きくなるように前記シリンダー115によって支持されており、上方に移動した際に上面が下型110の側壁112(以下「下型側壁112」ともいう)の上端よりも上方となり、下方に移動した際に上面が下型側壁112の上端よりも下方となるように前記シリンダー115によって支持されている。
さらに、前記装置100は、前記下型110と前記上型120と互いに接近させて下型側壁112の上端と上型120の側壁122(以下「上型側壁122」ともいう)の下端とを全周に亘って当接させ得るように構成されている。
即ち、前記装置100は、下型110と上型120とを合わせた閉型状態において型の内部に密閉空間を形成し得るように構成されている。
そして、前記第2空間部A2となる上型120の内部には、前記フィルムを上面側から加熱するための加熱装置が配されており、本実施形態では該加熱装置として複数の輻射加熱式ヒーター124が配されている。
(a)素材準備工程
(b)区分工程
(c)加熱工程
(d)加圧工程
(e)剥離工程
各工程の具体的な内容については、以下において詳細に説明する。
当該素材準備工程では、被処理品となる前記プリント回路板1と、該プリント回路板1の部品面1aに形成する防湿皮膜に対応した防湿コート層F2を有する防湿皮膜形成用シートFと、前記プリント回路板1のはんだ面1bに形成する防湿皮膜に対応した防湿コート層F2を有する防湿皮膜形成用シートFとをそれぞれ準備する。
前記防湿コート層F2は、熱可塑性及び熱接着性を示す樹脂組成物を用いて形成する。
当該素材準備工程では、加熱時に特定の弾性率となる基材シートF1に前記防湿コート層F2が積層された防湿皮膜形成用シートFを用意する。
本実施形態では、前記のように前記防湿皮膜の形成箇所に対応したパターンが防湿コート層F2に形成されている防湿皮膜形成用シートFを用意する。
そして、後段において詳述するが、本実施形態の前記区分工程では、上記のようにパターン形成された前記防湿コート層F2と前記被処理面との位置合わせを実施する。
また、該防湿コート層には、前記のようにスクリーン印刷などの方法によってパターンを形成させてもよい。
当該区分工程では、前記下型110と前記上型120との間に前記防湿皮膜形成用シートFを挟み込み、これらを閉じた際に内部に形成される密閉空間を前記防湿皮膜形成用シートFで区分けする。
即ち、区分工程では、図4に示すように、該防湿皮膜形成用シートFを介して隣り合う第1空間部A1と第2空間部A2とを型内に形成する。
前記プリント回路板1は、前記ステージ114の上に載置して下型内に収容させる。
前記プリント回路板1は、部品面1aが上側となるように前記ステージ114の上に載置する。
このとき前記ステージ114は、水平方向に下型110を見た際に下型側壁112の上端よりも上側にプリント回路板1がはみ出ることが無いように位置を低げた状態にする。
その後、下型110の上部開口を塞ぐように防湿皮膜形成用シートFをセットする。
このとき防湿コート層F2が下側となるように防湿皮膜形成用シートFをセットして防湿コート層F2と前記部品面1aとを対向させる。
さらに、このとき部品面1aにおいて防湿皮膜の形成が必要となる領域と防湿コート層F2の形成された領域とが一致するように防湿皮膜形成用シートFを下型110に対して位置合わせする。
この位置合わせがされた状態で上型120を下降させ、上型120と下型110との間に防湿皮膜形成用シートFを挟み込む。
前記区分工程では、同様に下型側壁112の上端部と防湿皮膜形成用シートFとの間にもスペーサーを配置してもよい。
このようにスペーサーを用いる場合、該スペーサーとしては、薄いゴム板やPTFE板などのような弾性変形性を有する材質のものが好適である。
スペーサーは、側壁112,122の形状に対応するように矩形枠状に加工されたものを用いることができる。
前記区分工程は、2枚の矩形枠状のスペーサーの間に予め防湿皮膜形成用シートFを挟み込んで積層体を構成させておき、当該積層体を下型110と上型120との間に挟み込むようにして実施してもよい。
該加熱工程では、防湿皮膜形成用シートFを加熱して軟化させる。
具体的には、下型110と上型120との間に挟み込まれた防湿皮膜形成用シートFを前記輻射加熱式ヒーター124によって加熱する。
防湿皮膜形成用シートFの加熱温度は、通常、基材シートF1の貯蔵弾性率が0.01GPa~0.1GPaとなるような温度とされることが好ましい。
また、例えば、防湿皮膜形成用シートFに最も多く含まれている樹脂が非晶性樹脂で、該非晶性樹脂のガラス転移温度(JIS K7121-1987:DSC法での中間点ガラス転移温度)をTg(℃)とした場合、前記加熱温度は0.9×Tg(℃)~1.5×Tg(℃)の範囲内とされることが好ましく、1.0×Tg(℃)~1.4×Tg(℃)の範囲内とされることがより好ましい。
さらに、防湿皮膜形成用シートFに最も多く含まれている樹脂が結晶性樹脂で、該結晶性樹脂の融点(JIS K7121-1987:DSC法での融解ピーク温度)をTm(℃)とした場合、前記加熱温度は0.9×Tm(℃)~1.2×Tm(℃)の範囲内とされることが好ましい。
このような加熱工程での軟化の挙動を比較的マイルドなものにする上において、前記基材シートF1は、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。
このことにより防湿コート層F2に残留溶媒などの揮発性成分が含まれているような場合において、当該加熱工程で防湿コート層F2から揮発性成分をより確実に除去することができる。
加熱工程での第1空間部A1と第2空間部A2との気圧は、例えば、0.5kPa以下とすることができる。
第1空間部A1と第2空間部A2との気圧は、0.3kPa以下であることが好ましく、0.2kPa以下であることがより好ましい。
即ち、前記区分工程は、予め十分に加熱された防湿皮膜形成用シートFを下型110と上型120との間に挟み込む形で実施してもよい。
当該加圧工程は、前記区分工程及び前記加熱工程の後に実施する。
該加圧工程では、前記第1空間部A1の気圧を前記第2空間部A2の気圧よりも低圧にして前記防湿皮膜形成用シートFに対して前記第2空間部A2から前記第1空間部A1に向けた圧力を加える。
該加圧工程では、前記加熱工程によって軟化された前記防湿皮膜形成用シートFを前記圧力を利用してプリント回路板1の部品面1aに接着させ、該防湿皮膜形成用シートFを構成する前記防湿コート層F2によって部品面上に防湿皮膜を形成する。
即ち、加圧工程では、防湿コート層F2が部品面1aに熱接着される。
このとき、軟化された防湿皮膜形成用シートFには、第2空間部側から比較的均等に圧力が加えられることになるため、局所的に強い圧力が加わって防湿皮膜の厚みが極端に薄い箇所が出来てしまうことが抑制される。
本実施形態においては、前記のように防湿皮膜の一部の厚みが極端に薄くなることをが抑制されるため水滴の接触による回路ショートがより確実に防止可能であるばかりでなく、水蒸気の侵入による防湿皮膜とプリント回路板との間での結露やイオンマイグレーションなどのトラブルをも回避し得る。
例えば、電子部品の周縁部などにおいては、加圧工程で防湿コート層F2が伸長され易いため、該周縁部における防湿コート層F2の厚みを電子部品の中央部などに比べて厚くした防湿皮膜形成用シートFを前記素材準備工程で作製しておいてもよい。
前記加圧工程では、前記第1空間部を大気圧未満の減圧状態にし、且つ、第2空間部A2に過剰に空気を供給して前記第2空間部を大気圧を超える加圧状態にすることが好ましい。
このことによって部品面1aに対して防湿コート層F2をより強固に接着させることができ、しかも、転写後の防湿皮膜と部品面1aとの間に隙間が形成されてしまうことをより確実に防ぐことができる。
このときの第2空間部A2の気圧は、1.1気圧以上の加圧状態とすることが好ましく、1.2気圧以上の加圧状態とすることがより好ましく、1.5気圧以上の加圧状態とすることがさらに好ましい。
第2空間部A2の気圧は、通常、5気圧以下とされる。
即ち、前記加圧工程の前には、事前に部品面1aを防湿皮膜形成用シートFに接触させる当接工程を実施することが好ましい。
該当接工程は、部品面1aで防湿皮膜形成用シートFを第1空間部側から押圧し、防湿皮膜形成用シートFを第2空間部A2に向けて膨化させることが好ましい。
このことによって部品面1aに対して防湿コート層F2をより強固に接着させることができ、防湿皮膜と部品面1aとの間に隙間が形成されてしまうことをより確実に防ぐことができる。
また、前記基材シートF1が適度な貯蔵弾性率を示す状態となることで当該基材シートF1に破れなどの不具合が生じるおそれも抑制される。
このようなことから、本実施形態の防湿皮膜形成用シートFは、その効果をより顕著に発揮させる上において前記表面に1.5mm以上の段差を有する前記被処理品に前記防湿皮膜を形成すべく用いられることが好ましい。
被処理品の表面の段差は、2mm以上であることがより好ましい。
但し、防湿コート層F2の追従性にも限界はあるため前記段差は10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることが特に好ましい。
該剥離工程では、基材シートF1と防湿コート層F2との間で防湿皮膜形成用シートFを界面剥離し、防湿コート層F2のみをプリント回路板1の部品面1aに残存させる。
このことによりに防湿コート層F2で出来た防湿皮膜が部品面1aの上に備えられる。
前記加圧工程と当該剥離工程との間には、前記防湿皮膜形成用シートFを冷却する冷却工程を実施してもよい。
該冷却工程では、防湿皮膜形成用シートFを常温に近い温度(例えば、50℃以下)にまで冷却することが好ましい。
なお、部品面1aの防湿皮膜とはんだ面1bの防湿皮膜とは、材質や厚みなどが共通している必要はなく、互いに異なっていてもよい。
また、要すれば、部品面1aとはんだ面1bとの何れか一方においては、従来どおり液状のコーティング剤を使って防湿皮膜を形成させてもよい。
さらに、本発明は、上記例示に何等限定されることなく、各種の変更を適宜加えることができるものである。
まず、表面に凹凸を有する被処理品としてLEGO社製のブロックパーツを用意した。
より詳しくは、64mm×64mmの大きさを有し、直径4.9mmで突出高さ1.8mmの円柱状の突起が片面に64個(タテ8個×ヨコ8個)配列されたベースプレートを被処理品として用意した。
(基材シート1)
アクリル系(ポリメチルメタクリレート系)樹脂フィルム、厚み50μm、貯蔵弾性率1.5GPa(at40℃)、0.024GPa(at99.7℃)
(基材シート2)
ポリオレフィン系樹脂フィルム、厚み100μm、貯蔵弾性率3.0GPa(at40℃)、0.028GPa(at86.7℃)
また、「基材シート2」の片面に50μm厚みの防湿コート層を形成させた防湿皮膜形成用シート(以下「試験体2(50)」ともいう)と、「基材シート2」の片面に100μm厚みの防湿コート層を形成させた防湿皮膜形成用シート(以下「試験体1(100)」ともいう)とを作製した。
得られた防湿処理製品は、いずれの温度条件でも、且つ、防湿コート層の厚みにも関係なく、防湿皮膜がベースプレートの円柱状の突起の付け根などに対しても良好な付き回り性を示していた。
結果、「試験体1(50)」及び「試験体1(100)」と同様に防湿皮膜が良好な付き回り性を示していた。
「試験体2(50)」及び「試験体2(100)」については、加熱温度を90℃、100℃で同様の評価を実施したところ防湿皮膜とベースプレートとがより良好な密着状態となることが分かった。
以上のことからも、本発明によれば被処理品に対して防湿性能に優れた防湿皮膜を形成させ得る防湿皮膜形成用シートが提供されることがわかる。
Claims (4)
- 基材シートと、該基材シートの表面に積層された防湿コート層とを備え、
該防湿コート層を被処理品に転写して該被処理品の表面に防湿皮膜を形成すべく用いられ、
前記防湿コート層は、ビニル芳香族ブロックとオレフィンブロックとを有するブロックコポリマーを含み且つ熱接着性を有する樹脂組成物により構成され、
前記基材シートは、1Hzの測定周波数で測定されたときに、85℃~100℃の範囲の何れかの温度で0.01GPa以上0.1GPa以下の貯蔵弾性率を示す樹脂シートであって、ポリメチルメタクリレート系樹脂シート又はポリオレフィン系樹脂シートである、防湿皮膜形成用シート。 - 前記表面に1.5mm以上の段差を有する前記被処理品に前記防湿皮膜を形成すべく用いられる請求項1に記載の防湿皮膜形成用シート。
- 前記被処理品がプリント回路板である請求項1又は2に記載の防湿皮膜形成用シート。
- 前記基材シートの前記表面には、前記防湿コート層が積層されている領域と前記防湿コート層が積層されていない領域とが備えられている請求項1乃至3の何れか1項に記載の防湿皮膜形成用シート。
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