JP7125093B2 - 積層セラミックコンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、サイドマージン部を備えた積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサに対する小型化及び大容量化の要望がますます強くなってきている。そこで、積層セラミックコンデンサの内部電極の交差面積を十分に確保し、かつ、高い信頼性を確保するため、サイドマージン部を後付けする技術が知られている。
特許文献1には、内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップにおいて、このグリーンチップの側面をセラミックグリーンシートに押し付け、側面用セラミックグリーンシートを打ち抜いてセラミック保護層(サイドマージン部)を設ける技術が記載されている。
特開2012-209539号公報
さらに積層セラミックコンデンサを小型化するためには、外部電極を薄く構成することが必要となる。外部電極を薄く構成する場合に、サイドマージン部の外縁が十分に面取りされていないと、外部電極形成用の導電ペーストで当該外縁を十分に覆えないことがあった。
一方で、サイドマージン部を薄く形成する場合、積層セラミックコンデンサの表面から内部電極までの距離も短くなる。このため、サイドマージン部の外縁を面取りするために大きく削ると、内部電極が露出する懸念が高まり、小型化と信頼性の双方を両立させることが難しかった。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、小型かつ大容量であって、信頼性の高い積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、積層チップと、サイドマージン部と、を有し、第1方向に向く主面と、上記第1方向と直交する第2方向に向く側面と、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向に向く端面と、上記主面、上記側面及び上記端面を接続する角部と、が形成される。
上記積層チップは、上記第1方向に積層され、上記第2方向の端部の位置が上記第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極を含む容量形成部と、上記第1方向から上記容量形成部を覆うカバー部と、を含む。
上記サイドマージン部は、上記第2方向から上記積層チップを覆う。
上記外部電極は、上記端面及び上記角部を覆う。
上記角部の表面粗さRaは、30nm以上である。
上記構成の積層セラミックコンデンサでは、セラミック素体の角部が、表面粗さRaが30nm以上となるように微小な凹凸を有する。これにより、角部を削って大きな丸みを付与せずとも、外部電極による角部の被覆性を高め、角部が外部電極から露出することを防止することができる。したがって、研磨等によってセラミック素体から内部電極が露出することを防止できるとともに、外部電極を薄く構成することができる。すなわち、小型かつ大容量であって、信頼性も高い積層セラミックコンデンサを提供することができる。
例えば、上記外部電極は、上記端面上の上記第3方向に沿った厚み寸法が10μm以下である。
これにより、外部電極を非常に薄く構成することができ、積層セラミックコンデンサを小型化することができる。また、上記積層セラミックコンデンサでは、セラミック素体の角部の表面粗さRaが30nm以上であるため、外部電極が非常に薄くても、角部が外部電極から露出することを防止できる。
具体的には、上記サイドマージン部は、上記第2方向に沿った厚み寸法が20μm以下であってもよい。
また、上記カバー部は、上記第1方向に沿った厚み寸法が20μm以下であってもよい。
これらにより、セラミック素体における容量形成部の占める割合を高め、所望の静電容量を得つつも積層セラミックコンデンサを小型化することができる。また、セラミック素体の角部を大きく削らずとも、外部電極の被覆性を十分に確保することができる。
本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、
第1方向に向く主面と、上記第1方向に直交する第2方向に向く側面と、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向に向く端面と、上記主面、上記側面及び上記端面を接続する角部と、が形成されたセラミック素体と、上記セラミック素体の上記端面及び上記角部を覆う外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサの製造方法である。
内部電極が形成された複数のセラミックシートを上記第1方向に積層することで作製された積層シートを切断することにより、上記第1方向に上記内部電極が積層された容量形成部と、上記第1方向から上記容量形成部を覆うカバー部と、上記内部電極の端部が露出する上記第2方向に向いた切断面と、を有する積層チップが作製される。
サイドマージン部形成用セラミックシートを上記積層チップの上記切断面で上記第2方向に押圧し打ち抜くことで、上記積層チップの上記切断面にサイドマージン部が形成される。
上記サイドマージン部が形成された上記積層チップを焼成することで、上記角部の表面粗さRaが30nm以上である上記セラミック素体が作製される。
上記セラミック素体の上記端面及び上記角部を導電性ペーストに浸漬することで、上記外部電極が形成される。
上記製造方法により、サイドマージン部は、サイドマージン部形成用セラミックシートを上記積層チップの上記切断面で上記第2方向に押圧し打ち抜くことで形成される。サイドマージン部の外縁に位置するセラミック素体の角部は、上記セラミックシートのせん断面の形状に基づいて、30nm以上の表面粗さRaを有するように形成される。これにより、外部電極のセラミック素体に対する被覆性を高め、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化及び高信頼性を実現することができる。
また、上記サイドマージン部が形成された上記積層チップをバレル研磨し、上記セラミック素体が作製されてもよい。
これにより、角部を含むセラミック素体の外縁を面取りすることができ、他の部品との接触や取り扱い時におけるセラミック素体の破損を防止することができる。
以上のように、本発明によれば、小型かつ大容量であって、信頼性の高い積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。 上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの図1のC-C'線に沿った断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。 図4の一部を拡大して示す図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程で用いられるサイドマージン部形成用のセラミックシートの一部を模式的に示す図である。 上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。 上記実施形態の比較例に係るサイドマージン部形成用セラミックシートの一部を模式的に示す図である。 上記実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサを、図13と同様の位置で切断し、断面を拡大して示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。図4は、積層セラミックコンデンサ10の図1のC-C'線に沿った断面図であり、後述するセラミック素体11の端面11a近傍を切断した図である。
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸方向を向いた2つの端面11aと、Y軸方向を向いた2つの側面11bと、Z軸方向を向いた2つの主面11cと、を有する。
セラミック素体11は、面取りされており、複数の面同士を接続する第1稜部R1、第2稜部R2、第3稜部R3及び角部R4を有する。これにより、複数の面の間の境界が直線の辺で構成された場合と比較して、他の部品との接触や取り扱い時におけるセラミック素体11の破損を防止することができる。
第1稜部R1は、X軸方向に沿って延び、側面11b及び主面11cの2面を接続する。第2稜部R2は、Z軸方向に沿って延び、側面11b及び端面11aの2面を接続する。第3稜部R3は、Y軸方向に沿って延び、端面11a及び主面11cの2面を接続する。角部R4は、端面11a、側面11b及び主面11cの3面を接続する。
外部電極14,15は、セラミック素体11を挟んでX軸方向に相互に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面11a及びそれに接続する角部Cを覆い、側面11b及び主面11cまで延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
外部電極14,15のX軸方向に沿った厚み寸法D1は、例えば10μm以下である。厚み寸法D1は、端面11aのY軸方向及びZ軸方向における中央部から、外部電極14,15の表面までのX軸方向に沿った寸法とする。
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層チップ16と、サイドマージン部17と、を有する。
積層チップ16は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層チップ16は、容量形成部18と、2つのカバー部19と、を有する。カバー部19は、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆する。
容量形成部18は、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。容量形成部18では、内部電極12,13が複数のセラミック層を挟んでZ軸方向に交互に積層される。容量形成部18は、積層セラミックコンデンサ10における電荷を蓄える機能を有する。
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、Y軸方向の端部の位置がY軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
第1内部電極12は、第1外部電極14に接する端面11aまでX軸方向に延び、かつ第2外部電極15からは離間している。第2内部電極13は、第2外部電極15に接する端面11aまでX軸方向に延び、かつ、第1外部電極14からは離間している。これにより、第1内部電極12は、第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は、第2外部電極15のみに接続される。
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などで構成してもよい。
カバー部19及びサイドマージン部17は、容量形成部18の周囲を保護し、内部電極12,13の絶縁性を確保する機能を有する。カバー部19及びサイドマージン部17は、セラミック層と異なる絶縁性セラミックスで形成されてもよいが、セラミック素体11における内部応力を抑制する観点から、好ましくはセラミック層と同様の誘電体セラミックスで形成される。
カバー部19は、Z軸方向から容量形成部18を覆う。カバー部19のZ軸方向に向いた表面は、セラミック素体11の主面11cを構成する。図3に示すように、カバー部19のZ軸方向に沿った厚み寸法D2は、例えば20μm以下であり、好ましくは10μm以上20μm以下である。厚み寸法D2は、主面11cのX軸方向及びY軸方向における中央部から容量形成部18までのZ軸方向に沿った寸法とする。
サイドマージン部17は、Y軸方向から積層チップ16、すなわち容量形成部18とカバー部19とを覆う。サイドマージン部17のY軸方向に向いた表面は、セラミック素体11の側面11bを構成する。また、サイドマージン部17は、側面11bの4隅に形成された角部R4も構成する。図3に示すように、サイドマージン部17のY軸方向に沿った厚み寸法D3は、例えば20μm以下であり、好ましくは10μm以上20μm以下である。厚み寸法D3は、側面11bのX軸方向及びZ軸方向における中央部から容量形成部18までのY軸方向に沿った寸法とする。
このように、積層セラミックコンデンサ10は、カバー部19及びサイドマージン部17の厚み寸法D2,D3を十分に薄く構成することができ、容量形成部18における内部電極12,13の交差面積及び層数を十分に確保しつつ、セラミック素体11を小型化することができる。さらに、外部電極14,15の厚み寸法D1も薄く構成できるため、積層セラミックコンデンサ10全体をより一層小型化することができる。したがって、小型でかつ大容量の積層セラミックコンデンサ10を実現することができる。
以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を詳細に説明する。
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図6~12は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図5に沿って、図6~12を適宜参照しながら説明する。
(ステップS01:セラミックシート積層)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備し、これらを積層する。
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102,103の厚さは適宜調整可能である。
図6は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。図6には、積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
内部電極112,113は、Y軸方向に沿って延びる複数の帯状にパターニングされている。各帯状のパターンは、各切断線Lxを横切りつつ1本の切断線Lyに沿って延びている。隣り合う帯状のパターンは、1本の切断線Lyを挟んでX軸方向に離間して配置されている。
これらのセラミックシート101,102,103を図7に示すように積層し、積層シート104を作製する。つまり、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102を交互に積層し、かつセラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に第3セラミックシート103を積層する。
第3セラミックシート103の枚数は、図7で示す例に限定されず、焼成後のカバー部19のZ軸方向に沿った厚み寸法が例えば20μm以下となるように調整することができる。
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
(ステップS02:切断)
ステップS02では、ステップS01で得られた積層シート104を、図8に示すように切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層チップ116を作製する。積層チップ116は、焼成後の積層チップ16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
図9に示すように、積層チップ116は、容量形成部18に対応する未焼成の容量形成部118と、カバー部19に対応する未焼成のカバー部119と、を有する。容量形成部118は、セラミック層に対応するグリーンシートの間に、内部電極112,113が交互に積層されている。
積層チップ116には、切断線Lyに沿って切断されて形成された第1切断面116aと、切断線Lxに沿って切断されて形成された第2切断面116bと、が形成される。第1切断面116aは、X軸方向に向いており、第1内部電極112及び第2内部電極113のいずれか一方のX軸方向端部が露出している。第2切断面116bは、Y軸方向に向いており、Z軸方向に交互に並んだ内部電極112,113の双方のY軸方向端部が露出している。
(ステップS03:未焼成のセラミック素体111作製)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層チップ116に未焼成のサイドマージン部117を設けることにより、図10に示す未焼成のセラミック素体111を作製する。
サイドマージン部117は、内部電極112,113の双方が露出した第2切断面116bに設けられる。サイドマージン部117は、サイドマージン部117形成用のセラミックシートを、積層チップ116の第2切断面116bでY軸方向に押圧し打ち抜くことで形成される。当該セラミックシートの厚みを調整することで、例えば焼成後のサイドマージン部17の厚み寸法を20μm以下にすることができる。
さらに、サイドマージン部117が形成された積層チップ116をバレル研磨し、サイドマージン部117及びカバー部119の外縁が研磨される。これにより、稜部Ru1,Ru2,Ru3及び角部Ru4に丸みが付与された未焼成のセラミック素体111が形成される。
バレル研磨は、内部電極112,113がY軸方向に向いた両側面又はZ軸方向に向いた両主面から露出しない程度にサイドマージン部117及びカバー部119の角が面取りされる条件で行われる。サイドマージン部117及びカバー部119が薄く構成された未焼成のセラミック素体111では、これらの角を大きく削ることができない。したがって、セラミック素体111には、わずかに面取りされ角ばった外観の稜部Ru1,Ru2,Ru3及び角部Ru4が形成される。
なお、巨視的には、角部Ru4及び稜部Ru1,Ru2,Ru3は丸みを有するが、微視的には、角部Ru4及び稜部Ru1,Ru2,Ru3には細かな凹凸が形成されている。当該凹凸の詳細については、後述する。
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS03で得られた未焼成のセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。
(ステップS05:外部電極形成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体11の端面11a及び角部R4を覆うように導電性ペーストを塗布する。導電性ペーストの塗布は、導電性ペースト内にセラミック素体11のX軸方向端部を浸漬するディップ法により行われる。
塗布された導電性ペーストは、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付けられる。これにより、外部電極14,15が形成され、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が製造される。さらに、焼き付けられた外部電極14,15を下地膜として、1又は複数のメッキ膜が形成されてもよい。
図11及び12は、外部電極14,15の形成工程を説明する図である。
図11に示すように、塗布対象であるセラミック素体11の端面11a及び角部R4が、ディップ槽Dに充填された導電性ペーストPに浸漬される。
導電性ペーストPは、金属粉末、バインダ、及び有機溶剤等を混ぜ合わせたスラリー状に構成される。導電性ペーストPの組成は、所望の電極形状及び機能が得られるように適宜調整される。
続いて、図12に示すように、セラミック素体11の端面11a及び角部R4が、ディップ槽Dから引き上げられる。導電性ペーストPの膜厚は、導電性ペーストPの粘性や引き上げ速度により制御することができる。これにより、例えば厚み寸法D1が10μm以下の外部電極14,15を形成することができる。
導電性ペーストPは、セラミック素体11の引き上げ時に滴状に引き伸ばされるため、端面11aの中央部で最も厚く塗布される。一方で、外方に突出している角部R4では、導電性ペーストPが流動しやすく、端面11aの中央部と比較して導電性ペーストPがより薄くなる。このため、外部電極14,15の厚み寸法D1を10μm以下に制御する場合、角部R4の膜厚はさらに薄くなり、外部電極14,15から角部R4が露出することが懸念される。
角部R4の露出を回避する方法として、バレル研磨によって角部R4を大きく削り、角部R4に緩やかなカーブを付与する方法が挙げられる。しかしながら、サイドマージン部17及びカバー部19の厚み寸法が20μm以下と薄い場合、角部R4を大きく削ることで内部電極12,13が露出し、内部電極12,13間のショートや耐環境性の低下といった問題が生じ得る。
本実施形態では、内部電極12,13の露出を回避しつつ外部電極14,15の被覆性を十分に確保するため、角部R4を以下のように構成する。
[角部R4の詳細な構成]
図13は、角部R4を示す図4の部分拡大図である。
本実施形態の角部R4は、表面粗さRaが30nm以上であり、細かな凹凸を有する。角部R4が上記表面粗さRaの条件を満たす凹凸を有することで、導電性ペーストPの流れが角部R4の微小な凹凸によって規制され、導電性ペーストPを角部R4に留まりやすくすることができる。したがって、外部電極14,15の厚み寸法が10μm以下と薄く、角部R4のカーブが急峻であっても、外部電極14,15によって角部R4を確実に被覆することができる。
なお、本実施形態における表面粗さRaは、JIS B 0601:2013に基づいて算出される算術平均粗さRaとする。
本実施形態では、積層チップ116の第2切断面116bでサイドマージン部117形成用のセラミックシート117sを押圧して打ち抜くことにより、角部Ru4を大きく削らずとも、上記の凹凸形状を付与することができる。
以下、本実施形態の角部R4の形成方法について詳細に説明する。
図14~16は、ステップS03におけるセラミックシート117sの打ち抜き工程を説明する図である。
まず、図14に示すように、弾性体からなる平板状のベース部材Sの上にセラミックシート117sを配置する。積層チップ116は、一方の第2切断面116bがY軸方向にセラミックシート117sと対向するように、テープTで他方の第2切断面116bが保持されている。
次に、図15に示すように、積層チップ116の第2切断面116bでセラミックシート117sをY軸方向に押圧する。積層チップ116は、セラミックシート117sとともにベース部材Sに局所的に深く沈み込む。これにより、セラミックシート117sにせん断力が作用する。
このせん断力がセラミックシート117sのせん断強度以上になると、図16に示すようにセラミックシート117sが打ち抜かれる。これにより、せん断面117eを有するサイドマージン部117が形成される。
図17は、セラミックシート117sの一部を拡大して示す模式的な図である。
セラミックシート117sは、セラミック粒子Q、バインダ、及び有機溶剤等を混合してセラミックスラリーを形成し、当該スラリーを乾燥させてシート状に成形されたものである。セラミックシート117sでは、セラミック粒子Qが十分に分散しておらず、セラミック粒子Qの凝集体Qaが多数形成されている。セラミック粒子Qの凝集度は、上記セラミックスラリーの攪拌条件や組成によって調整することができる。
セラミックシート117sでは、凝集体Qa間の方が、凝集体Qa内よりもせん断強度が小さい。このため、積層チップ116の押圧によって、セラミックシート117sに第2切断面116bの外縁に沿ったせん断力が付加された場合、図17の破線で示すように、凝集体Qaの間の領域でセラミックシート117sがせん断される。
この結果、図18に示すように、打ち抜き直後のサイドマージン部117のせん断面117eには、凝集体Qaの形状及び分布に応じた凹凸が形成される。
続いて、上述のように、サイドマージン部117が設けられた積層チップ116をバレル研磨し、未焼成のセラミック素体111を形成する。これにより、図4及び13に示すように、巨視的には面取りされ、微視的にはセラミックシート117sの凝集体Qaに起因する凹凸を有する角部R4が形成される。
一方で、図19に示すように、各セラミック粒子Qが分散しており凝集体が形成されていないセラミックシート137sでは、全体としてほぼ一様なせん断強度を有する。これにより、積層チップ116の押圧によってセラミックシート137sに第2切断面116bの外縁に沿ったせん断力が付加された場合、図19の破線で示すように、第2切断面116bの外縁に沿って滑らかにせん断される。
上記セラミックシート137sを用いることにより、図20に示すような、表面粗さRaが30nm未満の円滑な角部R'4を有するセラミック素体31が作製される。
セラミック素体31では、ステップS05の外部電極34,35の形成工程において、角部R'4に導電性ペーストが留まり難く、外部電極34,35が途切れてしまう。これにより、角部R'4が露出した形状の積層セラミックコンデンサ30が形成され、外部電極34,35上に形成されるメッキ膜形成用のメッキ液がセラミック素体31に浸入する等の不具合が生じる。
本実施形態では、あえてセラミックシート117sのセラミック粒子Qを不均一に分布させることで、角部R4に微小な凹凸を付与することができる。これにより、外部電極14,15から角部R4が露出することを防止し、上記不具合を防止することができる。
また、セラミックシート117sにおけるセラミック粒子Qの凝集度を調整することで、角部R4の表面粗さRaを制御することができる。これにより、表面粗さRaの制御を、セラミック素体11の表面処理に依存せずに行うことができる。したがって、内部電極12,13の交差面積及び層数を最大限に確保することができ、小型及び大容量で、かつ信頼性の高い積層セラミックコンデンサ10を作製することができる。
セラミックシート117sによる角部R4の表面粗さRaを制御する他の方法としては、上記の他、例えば、セラミック粒子に対するバインダ及び可塑剤の少なくとも一方の比率を調整する方法が挙げられる。
また、稜部R1,R2及び角部R4は、いずれもセラミックシート117sの切断面であり、かつバレル研磨によって同様に削られるため、実質的に同一の表面粗さRaを有するものと推認できる。したがって、角部R4の表面粗さRaの値として、外部電極14,15に被覆されていない第1稜部R1の表面粗さRaの値を代用してもよい。
[実施例及び比較例]
本実施形態の実施例及び比較例として、上記の製造方法に基づいて積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。このサンプルは、焼成後のセラミック素体のX軸方向の寸法が1mm、Y軸方向及びZ軸方向の寸法が0.5mmとなるように設計された。また、いずれのサンプルも、カバー部19の厚み寸法D2は20μm、サイドマージン部17の厚み寸法D3は20μmとなるように形成された。
まず、上記ステップS01及びS02に基づき、未焼成の積層チップを作製した。続いて、上記ステップS03に基づいて、セラミック粒子、バインダ及び可塑剤等を混合し成形されたセラミックシートを準備し、積層チップの切断面で押圧して打ち抜いた。このとき、セラミックシートを形成するセラミックスラリーの組成及び攪拌等の条件を変えて、せん断面の粗さの異なる6種類のサンプルを作製した。
続いて、各種類のサンプルとも同一の条件の下バレル研磨し、上記ステップS04及びS05に基づいて、焼成及び外部電極の形成を行った。外部電極は、焼付け後の厚み寸法が10μm以下となるよう形成された。これにより、角部の表面粗さRaの異なる6種類の積層セラミックコンデンサ10のサンプル(実施例1~4並びに比較例1及び2)が作製された。
続いて、実施例1~4並びに比較例1及び2のサンプルにおける角部の表面粗さRaを評価した。表面粗さRaは、各実施例及び比較例の1000個以上のサンプルのうち、無作為に抜き取った10個の計測値の平均値とした。当該計測は、セラミック素体の端面付近の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察して撮像し、撮像された画像を画像解析することにより行った。結果を、表1に示す。
Figure 0007125093000001
表1に示すように、角部の表面粗さRaは、実施例1で30nm、実施例2で70nm、実施例3で110nm、実施例4で300nm、比較例1で10nm、比較例2で20nmであった。
さらに、実施例1~4並びに比較例1及び2の外部電極14,15を光学顕微鏡により観察し、角部による外部電極14,15の被覆性について評価した。当該評価は、各実施例及び比較例の1000個以上のサンプルのうち、無作為に抜き取った200個に対して行った。当該200個のサンプルのうち、全てのサンプルにおいて外部電極が角部を覆えているものについてはA、外部電極が角部を覆えていないサンプルが1個以上ある場合にはB、と判定した。結果を、表1に示す。
外部電極による角部の被覆性については、表面粗さRaが30nm以上300nm以下の実施例1~4ではいずれもA判定であった。一方で、表面粗さRaが10nm、20nmの比較例1及び2では、外部電極が角部を覆えていないサンプルがあり、B判定であった。
以上より、角部の表面粗さRaを30nm以上とすることにより、外部電極14,15の厚みが10μm以下であっても、外部電極を途切れることなく形成できることが確認された。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
例えば、上記のステップS05における処理の一部を、ステップS04の前に行ってもよい。例えば、ステップS04の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS04において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の構成は、図1~3に示す構成に限定されない。例えば、内部電極12,13の枚数は、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能に応じて、適宜決定可能である。
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
11a…端面
11b…側面
11c…主面
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層チップ
17…サイドマージン部
18…容量形成部
19…カバー部
R4…角部
112,113…未焼成の内部電極
116…未焼成の積層チップ
116b…切断面
117…未焼成のサイドマージン部
118…未焼成の容量形成部
119…未焼成のカバー部

Claims (5)

  1. 第1方向に積層され、前記第1方向と直交する第2方向の端部の位置が前記第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極を含む容量形成部と、前記第1方向から前記容量形成部を覆うカバー部と、を含む積層チップと、
    前記第2方向から前記積層チップを覆うサイドマージン部と、
    を有し、前記第1方向に向く主面と、前記第2方向に向く側面と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に向く端面と、前記主面、前記側面及び前記端面を接続する角部と、が形成されたセラミック素体と、
    前記端面及び前記角部を覆う外部電極と、
    を具備し、
    前記角部の表面粗さRaは、30nm以上300nm以下であり、
    前記外部電極は、前記端面上の前記第3方向に沿った厚み寸法が10μm以下である
    積層セラミックコンデンサ。
  2. 請求項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
    前記サイドマージン部は、前記第2方向に沿った厚み寸法が20μm以下である
    積層セラミックコンデンサ。
  3. 請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサであって、
    前記カバー部は、前記第1方向に沿った厚み寸法が20μm以下である
    積層セラミックコンデンサ。
  4. 第1方向に向く主面と、前記第1方向に直交する第2方向に向く側面と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に向く端面と、前記主面、前記側面及び前記端面を接続する角部と、が形成されたセラミック素体と、前記セラミック素体の前記端面及び前記角部を覆う外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
    内部電極が形成された複数のセラミックシートを前記第1方向に積層することで作製された積層シートを切断することにより、前記第1方向に前記内部電極が積層された容量形成部と、前記第1方向から前記容量形成部を覆うカバー部と、前記内部電極の端部が露出する前記第2方向に向いた切断面と、を有する積層チップを作製し、
    サイドマージン部形成用セラミックシートを前記積層チップの前記切断面で前記第2方向に押圧し打ち抜くことで、前記積層チップの前記切断面にサイドマージン部を形成し、
    前記サイドマージン部が形成された前記積層チップをバレル研磨し、焼成することで、前記角部の表面粗さRaが30nm以上である前記セラミック素体を作製し、
    前記セラミック素体の前記端面及び前記角部を導電性ペーストに浸漬することで外部電極を形成する
    積層セラミックコンデンサの製造方法。
  5. 請求項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
    前記セラミック素体を作製する工程では、前記サイドマージン部が形成された前記積層チップをバレル研磨し、焼成することで、前記角部の表面粗さRaが30nm以上300nm以下である前記セラミック素体を作製し、
    前記外部電極は、前記端面上の前記第3方向に沿った厚み寸法が10μm以下である
    積層セラミックコンデンサの製造方法。
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