JP7123473B2 - 動力分割式無段変速機の制御装置 - Google Patents

動力分割式無段変速機の制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、インプット軸(入力軸)に入力される動力を2系統に分割してアウトプット軸(出力軸)に伝達可能な動力分割式無段変速機とともに車両に搭載される動力分割式無段変速機の制御装置に関する。
自動車などの車両に搭載される変速機として、エンジンの動力を無段階に変速する無段変速機構と、エンジンの動力を無段変速機構を経由せずに伝達する歯車機構と、無段変速機構からの動力と歯車機構からの動力とを合成するための遊星歯車機構とを備えたものが提案されている。この変速機では、エンジンからの動力を無段変速機構と歯車機構とに分割し、その分割された各動力を遊星歯車機構で合成して車輪に伝達することができる。
特開2004-176890号公報
駆動源の動力を2系統に分割して伝達可能な変速機は、動力分割式無段変速機として、出願人も提案している。
この提案に係る動力分割式無段変速機には、無段変速機構、平行軸式歯車機構および遊星歯車機構が含まれる。無段変速機構は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。無段変速機構のプライマリ軸には、インプット軸に入力されるエンジンの動力が伝達される。無段変速機構のセカンダリ軸は、遊星歯車機構のサンギヤに接続されている。平行軸式歯車機構は、インプット軸の動力が伝達/遮断されるスプリットドライブギヤと、スプリットドライブギヤとギヤ列を構成し、遊星歯車機構のキャリアと一体回転するスプリットドリブンギヤとを備えている。遊星歯車機構のリングギヤには、アウトプット軸が接続されている。アウトプット軸の回転は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の駆動輪に伝達される。
この動力分割式無段変速機では、前進走行時における動力伝達モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードが設けられている。
ベルトモードでは、遊星歯車機構のサンギヤとリングギヤとが一体回転するように結合される。また、インプット軸からスプリットドライブギヤへの動力の伝達が遮断されることにより、スプリットドライブギヤが自由回転状態(フリー)にされ、遊星歯車機構のキャリアが自由回転状態にされる。そのため、無段変速機構から出力される動力により、サンギヤおよびリングギヤが一体的に回転し、アウトプット軸がリングギヤと一体的に回転する。したがって、ベルトモードでは、動力分割式無段変速機の変速比(ユニット変速比)が無段変速機構の変速比(ベルト変速比)と一致する。
スプリットモードでは、遊星歯車機構のサンギヤとリングギヤとの結合が解除される。そのため、無段変速機構から出力される動力により、サンギヤが回転する。一方、インプット軸からスプリットドライブギヤに動力が伝達され、その動力がスプリットドライブギヤからスプリットドリブンギヤを介することにより一定のスプリット変速比で変速されて、遊星歯車機構のキャリアに入力される。そのため、スプリットモードでは、ベルト変速比が大きいほどユニット変速比が小さくなり、スプリット変速比以下の変速比を実現することができる。
ユニット変速比がスプリット変速比を跨いで変更される場合、そのユニット変速比の変更には、ベルトモードとスプリットモードとの切り替えが伴う。このモード切替は、サンギヤとリングギヤとを結合/分離するクラッチとインプット軸とスプリットドライブギヤとを結合/分離するクラッチとの掛け替えにより達成される。係合側のクラッチに差回転が生じていない状態、つまりベルト変速比がスプリット変速比とほぼ一致する変速比まで変速された時点(スプリット点またはその近傍)で2個のクラッチの掛け替えを行えば、モード切替による変速ショックの発生を抑制することができる。
しかしながら、変速開始からユニット変速比が目標回転数に応じた変速比に変速されるまでに時間がかかる。そのため、スプリット変速比を跨いだユニット変速比の急変が要求される場合(たとえば、スプリットモードでアクセルペダルが素早くかつ大きく踏み込まれた場合)、クラッチに供給される油圧(クラッチ圧)の制御で変速ショックの発生を抑制できる範囲において、クラッチに差回転が生じている状態で2個のクラッチの掛け替えによりベルトモードとスプリットモードとを切り替える、いわゆる飛び変速切替が行われることが望ましい。
ところが、飛び変速切替が無条件で許可されると、飛び変速切替による変速ショックが発生する場合がある。
本発明の目的は、第1係合要素と第2係合要素との掛け替えによる変速ショックの発生を抑制できる、動力分割式無段変速機の制御装置を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る動力分割式無段変速機の制御装置は、インプット軸、遊星歯車機構、遊星歯車機構のリングギヤと一体的に回転するアウトプット軸、インプット軸の動力を無段階に変速して遊星歯車機構のサンギヤに伝達するベルト式の無段変速機構、インプット軸の動力を一定の変速比で変速して遊星歯車機構のキャリアに伝達するスプリット変速機構、スプリット変速機構によるキャリアへの動力の伝達/遮断を切り替えるために油圧により係合/解放される第1係合要素、およびサンギヤとリングギヤとを一体回転可能に結合/分離するために油圧により係合/解放される第2係合要素を含む構成の動力分割式無段変速機に用いられる制御装置であって、第1係合要素と第2係合要素との掛け替えのために、第1係合要素および第2係合要素に供給される油圧を制御する油圧制御手段と、油圧制御手段による油圧の制御が安定している場合には、無段変速機構による変速比とスプリット変速機構による一定の変速比とが所定以上離れた状態での第1係合要素と第2係合要素との掛け替えによる飛び変速切替を許可し、油圧制御手段による油圧の制御が安定していない場合には、飛び変速切替を禁止する飛び変速切替許否手段とを含む。
この構成によれば、第1/第2係合要素がそれぞれ解放/係合された状態では、動力分割式無段変速機全体での変速比(ユニット変速比)がベルト式の無段変速機構の変速比(ベルト変速比)と一致する。一方、第1/第2係合要素がそれぞれ係合/解放された状態では、ベルト変速比が大きいほどユニット変速比が小さくなり、ユニット変速比がベルト変速比(スプリット変速機構による一定の変速比)以下となる。よって、動力分割式無段変速機では、第1/第2係合要素を掛け替えて使用することにより、動力分割式無段変速機全体での変速比幅を無段変速機構単独での変速比幅よりも大きく確保することがきる。
第1/第2係合要素を掛け替える際には、ベルト変速比がスプリット変速機構による一定の変速比(スプリット変速比)に向けて小さくされる。ベルト変速比がスプリット変速比にほぼ一致した状態で第1/第2係合要素を掛け替えることにより、変速比の急変による変速ショックの発生を抑制できる。一方、ベルト変速比がスプリット変速比にほぼ一致する前に第1/第2係合要素の掛け替えによる飛び変速切替を行うことにより、ユニット変速比を目標とする変速比に一致させるのに要する時間を短縮することができる。
第1/第2係合要素に供給される油圧(クラッチ圧)の制御が安定している状態では、飛び変速切替が許可される。その状態では、クラッチ圧を狙い通りに制御できるので、クラッチ圧の制御で飛び変速切替による変速ショックの発生を抑制することが可能である。よって、ユニット変速比の急変が要求される場合に、飛び変速切替を行うことにより、ユニット変速比を目標とする変速比に速やかに一致させることができる。
しかし、クラッチ圧の制御が安定していない状態では、クラッチ圧を狙い通りに制御できないために、飛び変速切替が行われると、クラッチ圧の制御で飛び変速切替による変速ショックの発生を抑制できない懸念がある。そのため、クラッチ圧の制御が安定していない状態では、飛び変速切替が禁止される。これにより、第1/第2係合要素の掛け替えによる変速ショックの発生を抑制することができる。
なお、油圧制御手段による油圧の制御が安定していない状態としては、初期学習(たとえば、動力分割式無段変速機を搭載した車両が出荷される前に実施される機差情報をコントローラに書き込むことによる学習、動力分割式無段変速機を搭載した車両の走行中に行われる学習の初期数回分)が未完了である状態、動力分割式無段変速機の油温が所定温度以下である状態、フェイルが発生している状態などが例示される。
フェイルが発生している状態では、第1/第2係合要素の掛け替えが禁止されるのが一般的であるが、飛び変速切替が禁止されて、ベルト変速比がスプリット変速比にほぼ一致した状態での第1/第2係合要素を掛け替えが許可されることにより、フェイルが発生している状態での第1/第2係合要素の掛け替えが可能となる。
本発明によれば、第1係合要素と第2係合要素との掛け替えによる変速ショックの発生を抑制でき、その変速ショックの発生を抑制できる範囲において、飛び変速切替を行うことにより、動力分割式無段変速機全体での変速比を目標とする変速比に速やかに一致させることができる。
本発明の一実施形態に係る制御装置が搭載された車両の要部の構成を示す図である。 車両の駆動系統の構成を示すスケルトン図である。 車両の前進時および後進時における各係合要素の状態を示す図である。 遊星歯車機構のサンギヤ、キャリアおよびリングギヤの回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。 ベルト変速比とユニット変速比との関係を示す図である。 モード切替時処理の流れを示すフローチャートである。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の要部構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置が搭載された車両1の要部の構成を示す図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。エンジン2の出力は、トルクコンバータ3および動力分割式無段変速機4を介して、車両1の駆動輪(たとえば、左右の前輪)に伝達される。
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、ROM、RAM、データフラッシュ(フラッシュメモリ)などが内蔵されている。図1には、動力分割式無段変速機4を制御するための1つのECU11のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU11と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU11を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
ECU11には、タービン回転数センサ12、プライマリ回転数センサ13、セカンダリ回転数センサ14および油温センサ15などが接続されている。
タービン回転数センサ12は、トルクコンバータ3のタービンランナの回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。ECU11は、タービン回転数センサ12から入力されるパルス信号の周波数をタービンランナの回転数であるタービン回転数に換算する。
プライマリ回転数センサ13は、たとえば、動力分割式無段変速機4のプライマリ軸51(図2参照)の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。ECU11は、プライマリ回転数センサ13から入力されるパルス信号の周波数をプライマリ軸51の回転数(プライマリ回転数)に換算する。
セカンダリ回転数センサ14は、たとえば、動力分割式無段変速機4のセカンダリ軸52(図2参照)の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。ECU11は、セカンダリ回転数センサ14から入力されるパルス信号の周波数をセカンダリ軸52の回転数(セカンダリ回転数)に換算する。
油温センサ15は、動力分割式無段変速機4に封入されているオイル(フルード)の温度に応じた検出信号を出力する。ECU11は、油温センサ15の検出信号からオイルの温度(油温)を取得する。
ECU11は、各種センサの検出信号から取得した情報および/または他のECUから入力される種々の情報に基づいて、動力分割式無段変速機4の各部に油圧を供給するための油圧回路16に設けられている各種のバルブを制御することにより、動力分割式無段変速機4の変速比などを制御する。
変速比の制御では、たとえば、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)および車速と目標回転数との関係を定めた変速線図が用いられる。変速線図は、ECU11の不揮発性メモリ(たとえば、ROM)にマップの形態で記憶されている。アクセル開度および車速の情報は、他のECUからECU11に入力されてもよいし、アクセルペダルの操作量に応じた検出信号を出力するアクセルセンサおよび車速に応じた検出信号を出力する車速センサがECU11に接続されて、それらの検出信号から取得されてもよい。ECU11は、変速線図に基づいて、アクセル開度および車速に応じた目標回転数を設定し、動力分割式無段変速機4に入力される回転数(タービン回転数)が目標回転数に一致するように、動力分割式無段変速機4の変速比を目標とする変速比(目標変速比)に変更する。
<車両の駆動系統>
図2は、車両1の駆動系統の構成を示すスケルトン図である。
エンジン2は、E/G出力軸21を備えている。E/G出力軸21は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、ポンプインペラ31、タービンランナ32およびロックアップクラッチ33を備えている。ポンプインペラ31には、E/G出力軸21が連結されており、ポンプインペラ31は、E/G出力軸21と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ32は、ポンプインペラ31と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ31とタービンランナ32とを直結/分離するために設けられている。ロックアップクラッチ33が係合されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが直結され、ロックアップクラッチ33が解放されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが分離される。
ロックアップクラッチ33が解放された状態において、E/G出力軸21が回転されると、ポンプインペラ31が回転する。ポンプインペラ31が回転すると、ポンプインペラ31からタービンランナ32に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ32で受けられて、タービンランナ32が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ32には、E/G出力軸21の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップクラッチ33が係合された状態では、E/G出力軸21が回転されると、E/G出力軸21、ポンプインペラ31およびタービンランナ32が一体となって回転する。
動力分割式無段変速機4は、トルクコンバータ3から入力される動力をデファレンシャルギヤ6に伝達する。動力分割式無段変速機4は、インプット軸41、アウトプット軸42、無段変速機構43、逆転ギヤ機構44、遊星歯車機構45、スプリットドライブギヤ46およびスプリットドリブンギヤ47を備えている。
インプット軸41は、トルクコンバータ3のタービンランナ32に連結され、タービンランナ32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸42は、インプット軸41と平行に設けられている。アウトプット軸42には、出力ギヤ48が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ48は、デファレンシャルギヤ6(デファレンシャルギヤ6の入力ギヤ)と噛合している。
無段変速機構43は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構43は、プライマリ軸51と、プライマリ軸51と平行に設けられたセカンダリ軸52と、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ53と、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ54と、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とに巻き掛けられたベルト55とを備えている。
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたシリンダ63が設けられ、可動シーブ62とシリンダ63との間に、油圧室64が形成されている。
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたシリンダ67が設けられ、可動シーブ66とシリンダ67との間に、油圧室68が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ65と可動シーブ66との位置関係は、プライマリプーリ53の固定シーブ61と可動シーブ62との位置関係と逆転している。
無段変速機構43では、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が連続的に無段階で変更される。
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ53の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ53の可動シーブ62が固定シーブ61側に移動し、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ53に対するベルト55の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が小さくなる。
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ53の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト55に対するセカンダリプーリ54の推力がベルト55に対するプライマリプーリ53の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力は、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54とベルト55との間で滑りが生じない大きさを必要とする。そのため、インプット軸41に入力されるトルクの大きさに応じた推力が得られるよう、セカンダリプーリ54の油圧室68に供給される油圧が制御される。
逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸51に伝達する構成である。具体的には、逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ71と、インプット軸ギヤ71よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸51にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ71と噛合するプライマリ軸ギヤ72とを含む。
遊星歯車機構45は、サンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83を備えている。サンギヤ81は、セカンダリ軸52にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。キャリア82は、アウトプット軸42に相対回転可能に外嵌されている。キャリア82は、複数個のピニオンギヤ84を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ84は、円周上に配置され、サンギヤ81と噛合している。リングギヤ83は、複数個のピニオンギヤ84を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ84にセカンダリ軸52の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ83には、アウトプット軸42が接続され、リングギヤ83は、アウトプット軸42と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリットドライブギヤ46は、インプット軸41に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ47は、遊星歯車機構45のキャリア82と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ47は、スプリットドライブギヤ46よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ46よりも少ない歯数を有している。
また、動力分割式無段変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、遊星歯車機構45のキャリア82を制動する係合状態と、キャリア82の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<変速モード>
図3は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図4は、遊星歯車機構45のサンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図5は、無段変速機構43による変速比であるベルト変速比と動力分割式無段変速機4の全体での変速比であるユニット変速比との関係を示す図である。
図3において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
動力分割式無段変速機4は、車両1の前進時の変速モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1,C2の掛け替えにより切り替えられる。
ベルトモードでは、図3に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51およびプライマリプーリ53を回転させる。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結されているので、セカンダリ軸52と一体となって、サンギヤ81、リングギヤ83およびアウトプット軸42が回転する。したがって、ベルトモードでは、図4および図5に示されるように、ユニット変速比がベルト変速比、つまり無段変速機構43のプライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比と一致する。
スプリットモードでは、図3に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とが直結され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリーになり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、遊星歯車機構45のサンギヤ81に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力は、スプリットドライブギヤ46からスプリットドリブンギヤ47を介して遊星歯車機構45のキャリア82に増速されて伝達される。
スプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比(スプリット変速比)は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸41に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構45のキャリア82の回転が一定速度に保持される。そのため、プーリ比が上げられると、遊星歯車機構45のサンギヤ81の回転数が下がるので、図4に破線で示されるように、遊星歯車機構45のリングギヤ83(アウトプット軸42)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、図5に示されるように、無段変速機構43のプーリ比が大きいほど、動力分割式無段変速機4のユニット変速比が小さくなる。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が前進方向に回転する。
車両1の後進時のリバースモードでは、図3に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82が制動される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、セカンダリ軸52と一体に、遊星歯車機構45のサンギヤ81を回転させる。遊星歯車機構45のキャリア82が制動されているので、サンギヤ81が回転すると、遊星歯車機構45のリングギヤ83がサンギヤ81と逆方向に回転する。このリングギヤ83の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ83の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ83と一体に、アウトプット軸42が回転する。アウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が後進方向に回転する。
<モード切替時処理>
図6は、モード切替時処理の流れを示すフローチャートである。
動力分割式無段変速機4の変速比の制御では、ベルトモードとスプリットモードとの切り替え(以下、単に「モード切替」という。)が必要になる場合がある。モード切替は、クラッチC1,C2の掛け替えにより達成される。すなわち、クラッチC1,C2に供給される油圧の制御(以下、「クラッチ圧制御」という。)により、解放状態のクラッチC1(係合側)が係合され、係合状態のクラッチC2(解放側)が解放されることにより、ベルトモードからスプリットモードに切り替えられる。逆に、係合状態のクラッチC1(解放側)が解放され、解放状態のクラッチC2(係合側)が係合されることにより、スプリットモードからベルトモードに切り替えられる。
モード切替(クラッチC1,C2の掛け替え)の際には、ECU11により、ベルト変速比がスプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比であるスプリット変速比に向けて小さくされる。そして、図6に示されるモード切替時処理が実行される。
モード切替時処理では、クラッチ圧制御が安定している場合(ステップS1のYES)、ベルト変速比とスプリット変速比とが一定以上離れた状態でのクラッチC1,C2の掛け替えによるモード切替、つまり飛び変速切替が許可され(ステップS2)、クラッチ圧制御が安定していない場合(ステップS1のNO)、飛び変速切替が禁止される(ステップS3)。
クラッチ圧制御が安定していない状態は、たとえば、次の(1)~(3)の少なくとも1つが満たされている状態をいう。
(1)初期学習(たとえば、動力分割式無段変速機4を搭載した車両1が出荷される前に実施される機差情報をECU11に書き込むことによる学習、動力分割式無段変速機4を搭載した車両1の走行中に行われる学習の初期数回分)が未完了である。
(2)動力分割式無段変速機4の油温が所定温度以下である。
(3)動力分割式無段変速機4にフェイルが発生している。
クラッチ圧制御が安定している場合、ベルト変速比がスプリット変速比と一致する前であって、ベルト変速比が飛び変速切替による変速ショックの発生をクラッチ圧制御で抑制可能な変速比まで低下した時点で、ベルト変速比がスプリット変速比から一定以上離れていても、クラッチC1,C2の掛け替えのためのクラッチ圧制御が実行される。これにより、飛び変速切替が行われるので、ユニット変速比を目標とする変速比に一致させるのに要する時間を短縮することができる。
一方、クラッチ圧制御が安定していない場合、飛び変速切替が禁止されるので、ベルト変速比とスプリット変速比との差が一定未満に小さくなるまで、クラッチC1,C2の掛け替えが行われない。そして、ベルト変速比がスプリット変速比とほぼ一致する変速比まで変速された時点(スプリット点またはその近傍)で、クラッチC1,C2の掛け替えのためのクラッチ圧制御が実行される。これにより、モード切替による変速ショックの発生を抑制することができる。
なお、ベルト変速比とスプリット変速比とが一定以上離れた状態は、係合前のクラッチC1,C2に一定以上の差回転が生じている状態と等価であり、ベルト変速比とスプリット変速比とが一定以上離れた状態でのクラッチC1,C2の掛け替えは、係合前のクラッチC1,C2に一定以上の差回転が生じている状態でのクラッチC1,C2の掛け替えと同じことである。
したがって、前述のモード切替時処理では、クラッチ圧制御が安定していないときには、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46との間に一定以上の差回転が生じている状態でのクラッチC1,C2の掛け替えによるベルトモードからスプリットモードへのモード切替(飛び変速切替)が禁止され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とキャリア82(リングギヤ83)との間に一定以上の差回転が生じている状態でのクラッチC1,C2の掛け替えによるスプリットモードからベルトモードへのモード切替(飛び変速切替)が禁止される。
<作用効果>
以上のように、クラッチ圧制御が安定している状態では、飛び変速切替が許可されるので、ユニット変速比の急変が要求される場合に、飛び変速切替を行うことにより、ユニット変速比を目標とする変速比に速やかに一致させることができる。
一方、クラッチ圧制御が安定していない状態では、飛び変速切替が禁止されるので、モード切替による変速ショックの発生を抑制することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもでき、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
4:動力分割式無段変速機
11:ECU(油圧制御手段、飛び変速切替許否手段、制御装置)
41:インプット軸
42:アウトプット軸
43:無段変速機構
45:遊星歯車機構
46:スプリットドライブギヤ(スプリット変速機構)
47:スプリットドリブンギヤ(スプリット変速機構)
81:サンギヤ
82:キャリア
83:リングギヤ
C1:クラッチ(第1係合要素)
C2:クラッチ(第2係合要素)

Claims (1)

  1. インプット軸、遊星歯車機構、前記遊星歯車機構のリングギヤと一体的に回転するアウトプット軸、前記インプット軸の動力を無段階に変速して前記遊星歯車機構のサンギヤに伝達するベルト式の無段変速機構、前記インプット軸の動力を一定の変速比で変速して前記遊星歯車機構のキャリアに伝達するスプリット変速機構、前記スプリット変速機構による前記キャリアへの動力の伝達/遮断を切り替えるために油圧により係合/解放される第1係合要素、および前記サンギヤと前記リングギヤとを一体回転可能に結合/分離するために油圧により係合/解放される第2係合要素を含む構成の動力分割式無段変速機に用いられる制御装置であって、
    前記第1係合要素と前記第2係合要素との掛け替えのために、前記第1係合要素および前記第2係合要素に供給される油圧を制御する油圧制御手段と、
    前記油圧制御手段による油圧の制御の初期学習が未完了である状態、前記動力分割式無段変速機の油温が所定温度以下である状態および前記動力分割式無段変速機にフェイルが発生してい状態のいずれの状態でもなく、前記油圧制御手段による油圧の制御が安定している場合には、前記無段変速機構による変速比と前記スプリット変速機構による前記一定の変速比とが所定以上離れた状態での前記第1係合要素と前記第2係合要素との掛け替えによる飛び変速切替を許可し、前記油圧制御手段による油圧の制御の初期学習が未完了である状態、前記動力分割式無段変速機の油温が前記所定温度以下である状態および前記動力分割式無段変速機にフェイルが発生してい状態のうちの少なくとも1つの状態であり、前記油圧制御手段による油圧の制御が安定していない場合には、前記飛び変速切替を禁止する飛び変速切替許否手段とを含む、制御装置。
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