JP7179414B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ロックアップ機構付きのトルクコンバータを搭載した車両用の制御装置に関する。
たとえば、トルクコンバータおよび無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を含む変速ユニットが搭載された車両では、エンジンの出力がトルクコンバータを介して無段変速機に入力され、無段変速機で変速された動力が駆動輪に伝達される。
トルクコンバータのトルク伝達効率の向上による車両の燃費の向上(低燃費化)を図るため、多くのトルクコンバータには、ポンプインペラとタービンランナとを直結するロックアップ機構(ロックアップクラッチ)が組み込まれている。ロックアップ機構は、たとえば、所定の車速以上でロックアップオン(締結)にされ、所定の車速未満でロックアップオフ(解放)にされる。
ロックアップオフでは、トルクコンバータのポンプインペラとタービンランナとが分離される。エンジンの動力によりポンプインペラが回転すると、トルクコンバータ内では、ポンプインペラからタービンランナに向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナで受けられて、タービンランナが回転する。このとき、トルクの増幅作用が生じ、その増幅されたトルクがタービンランナから自動変速機に入力される。
ロックアップオンでは、ポンプインペラとタービンランナとが直結されて、ポンプインペラとタービンランナとが一体となって回転し、エンジンのトルクが増幅されずに自動変速機に入力される。ポンプインペラとタービンランナとが直結されることにより、ポンプインペラとタービンランナとの間でのエネルギ損失が低減し、トルクコンバータのトルク伝達効率が向上し、ひいては燃費が向上する。
特開2013-117242号公報
車両の急制動などによる急減速時にロックアップオンであると、その急減速に伴ってエンジン回転数が急速に低下し、車速が所定の車速未満に低下したことに応じたロックアップオンからロックアップオフへの切り替わりよりも先に、エンジンが自立回転不能な回転数に低下して、エンジンストールが発生する懸念がある。そのため、車両の急制動時には、車速が所定の車速未満に低下していなくても、ロックアップオンからロックアップオフに切り替えられる。
その急減速時のロックアップオンからロックアップオフへの切り替わりには、高い応答性が求められる。しかし、急減速時の他の制御でオイルが使われると、オイルポンプからのオイルの吐出流量が変速ユニットの各部へのオイルの供給流量の合計に対して不足する事態が生じるおそれがある。この事態が生じると、ロックアップオフへの切り替わりの応答性が低下して、エンジンが自立回転不能な回転数に低下するまでにロックアップオフに切り替わらず、エンジンストールが発生する懸念がある。
本発明の目的は、車両の急減速時にロックアップオンからロックアップオフに高い応答性で切り替えることができる、車両用制御装置を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、油圧式の摩擦係合要素の係合/解放の切り替えにより所定変速比幅に設定されたローモードと所定変速比幅よりも最小変速比が小さい値に設定されたハイモードとに切り替わる変速機と、油圧により駆動源および変速機を機械的に結合するロックアップオンと駆動源および変速機を機械的に分離させるロックアップオフとに切り替わるロックアップ機構付きのトルクコンバータとを搭載した車両用の制御装置であって、ローモードとハイモードとの切り替えのために、摩擦係合要素に供給される油圧を制御する摩擦係合要素制御手段と、ロックアップオンとロックアップオフとの切り替えのために、ロックアップ機構に供給される油圧を制御するロックアップ制御手段と、車両が所定以上の減速度で減速する急減速を判定する急減速判定手段と、ハイモードでの車両の走行中に急減速判定手段により急減速が判定された場合、ロックアップ制御手段にロックアップオンからロックアップオフへの切り替えを指示し、当該指示から所定時間が経過した後、摩擦係合要素制御手段にローモードの構成を指示する指示手段とを含む。
この構成によれば、車両がハイモードでの走行中に急減速した場合、トルクコンバータのロックアップ機構がロックアップオンからロックアップオフに切り替えられる。また、急減速により車速が低下するので、変速機がハイモードからローモードに切り替えられる。ロックアップオンからロックアップオフへの切り替えおよびハイモードからローモードへの切り替えには、その両方に油圧(オイル)の供給が必要となる。
そこで、車両がハイモードでの走行中に急減速した場合、ロックアップオンからロックアップオフへの切り替えが指示されて、ロックアップ機構に供給される油圧の制御が開始される。そして、そのロックアップオンからロックアップオフへの切り替えの指示から所定時間が経過した後に、ローモードの構成が指示されて、ローモードを構成するための摩擦係合要素への油圧の供給が開始される。
これにより、ロックアップ機構にロックアップオンからロックアップオフへの切り替えに必要な油圧が不足することを抑制でき、ロックアップオンからロックアップオフに高い応答性で切り替えることができる。
本発明によれば、車両の急減速時に、ロックアップオンからロックアップオフに高い応答性で切り替えることができる。
車両の駆動系の構成を示すスケルトン図である。 変速機に備えられる各係合要素の状態を示す図である。 変速機に備えられる遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。 変速機に備えられる無段変速機構のプーリ比と動力分割式無段変速機全体の減速比(ユニット変速比)との関係を示す図である。 本発明の一実施形態に係る制御系の構成を示す図である。 急減速時制御の流れを示すフローチャートである 急減速制御時におけるロックアップ指示、ロックアップオン圧、ロックアップオフ圧、クラッチC1指示値、燃料カット実施フラグ、エンジン回転数およびクラッチC2指示値の時間変化の一例を示す図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系>
図1は、車両1の駆動系の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。エンジン2の動力は、トルクコンバータ3および変速機4を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達され、デファレンシャルギヤ5から左右のドライブシャフト6L,6Rを介してそれぞれ左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。
エンジン2は、E/G出力軸11を備えている。E/G出力軸11は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンランナ23およびロックアップ機構24を備えている。フロントカバー21には、E/G出力軸11が接続され、フロントカバー21は、E/G出力軸11と一体に回転する。ポンプインペラ22は、フロントカバー21に対するエンジン2側と反対側に配置されている。ポンプインペラ22は、フロントカバー21と一体回転可能に設けられている。タービンランナ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されて、フロントカバー21と共通の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25を備えている。ロックアップピストン25は、フロントカバー21とタービンランナ23との間に設けられている。ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25とフロントカバー21との間の解放油室26の油圧とロックアップピストン25とポンプインペラ22との間の係合油室27の油圧との差圧により、ロックアップオン(係合)/オフ(解放)される。すなわち、解放油室26の油圧が係合油室27の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21から離間し、ロックアップオフとなる。係合油室27の油圧が解放油室26の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21に押し付けられて、ロックアップオンとなる。
ロックアップオフの状態では、E/G出力軸11が回転されると、ポンプインペラ22が回転する。ポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ23に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ23で受けられて、タービンランナ23が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ23には、E/G出力軸11の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップオンの状態では、E/G出力軸11が回転されると、E/G出力軸11、ポンプインペラ22およびタービンランナ23が一体となって回転する。
変速機4は、インプット軸31およびアウトプット軸32を備え、インプット軸31に入力される動力を2つの経路に分岐してアウトプット軸32に伝達可能に構成された、いわゆる動力分割式(トルクスプリット式)変速機である。2つの動力伝達経路を構成するため、変速機4は、無段変速機構33、前減速ギヤ機構34、遊星歯車機構35およびスプリット変速機構36を備えている。
インプット軸31は、トルクコンバータ3のタービンランナ23に連結され、タービンランナ23と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸32は、インプット軸31と平行に設けられている。アウトプット軸32には、出力ギヤ37が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ37は、デファレンシャルギヤ5(デファレンシャルギヤ5のリングギヤ)と噛合している。
無段変速機構33は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構33は、プライマリ軸41と、プライマリ軸41と平行に設けられたセカンダリ軸42と、プライマリ軸41に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ43と、セカンダリ軸42に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ44と、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とに巻き掛けられたベルト45とを備えている。
プライマリプーリ43は、プライマリ軸41に固定された固定シーブ51と、固定シーブ51にベルト45を挟んで対向配置され、プライマリ軸41にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ52とを備えている。可動シーブ52に対して固定シーブ51と反対側には、プライマリ軸41に固定されたシリンダ53が設けられ、可動シーブ52とシリンダ53との間に、油圧室54が形成されている。
セカンダリプーリ44は、セカンダリ軸42に固定された固定シーブ55と、固定シーブ55にベルト45を挟んで対向配置され、セカンダリ軸42にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ56とを備えている。可動シーブ56に対して固定シーブ55と反対側には、セカンダリ軸42に固定されたシリンダ57が設けられ、可動シーブ56とシリンダ57との間に、油圧室58が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ55と可動シーブ56との位置関係は、プライマリプーリ43の固定シーブ51と可動シーブ52との位置関係と逆転している。
無段変速機構33では、プライマリプーリ43の油圧室54およびセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧がそれぞれ制御されて、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の各溝幅が変更されることにより、変速比(プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比)が連続的に無段階で変更される。
具体的には、変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ43の可動シーブ52が固定シーブ51側に移動し、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ43に対するベルト45の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が小さくなる。
変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が下げられる。これにより、セカンダリプーリ44の推力(セカンダリ推力)に対するプライマリプーリ43の推力(プライマリ推力)の比である推力比が小さくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の推力は、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44とベルト45との間で滑り(ベルト滑り)が生じない大きさを必要とする。そのため、ベルト滑りを生じない必要十分な挟圧が得られるよう、プライマリプーリ43の油圧室54およびセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧が制御される。
前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸41に伝達する構成である。具体的には、前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ61と、インプット軸ギヤ61よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸41にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ61と噛合するプライマリ軸ギヤ62とを含む。
遊星歯車機構35は、サンギヤ71、キャリヤ72およびリングギヤ73を備えている。サンギヤ71は、セカンダリ軸42にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。キャリヤ72は、アウトプット軸32に相対回転可能に外嵌されている。キャリヤ72は、複数個のピニオンギヤ74を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ74は、円周上に配置され、サンギヤ71と噛合している。リングギヤ73は、複数個のピニオンギヤ74を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ74にセカンダリ軸42の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ73には、アウトプット軸32が接続され、リングギヤ73は、アウトプット軸32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリット変速機構36は、スプリットドライブギヤ81と、スプリットドライブギヤ81と噛合するスプリットドリブンギヤ82とを含む平行軸式歯車機構である。
スプリットドライブギヤ81は、インプット軸31に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ82は、遊星歯車機構35のキャリヤ72と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ82は、スプリットドライブギヤ81よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ81よりも少ない歯数を有している。
また、変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、油圧により、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、油圧により、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、油圧により、遊星歯車機構35のキャリヤ72を制動する係合状態と、キャリヤ72の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<動力伝達モード>
図2は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図3は、遊星歯車機構35のサンギヤ71、キャリヤ72およびリングギヤ73の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図4は、無段変速機構33による変速比(プーリ比)と変速機4の全体での変速比(ユニット変速比)との関係を示す図である。
図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
車両1の車室内には、運転者が操作可能な位置に、シフトレバー(セレクトレバー)が配設されている。シフトレバーの可動範囲には、たとえば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジションおよびD(ドライブ)ポジションがこの順に一列に並べて設けられている。
シフトレバーがPポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放され、パーキングロックギヤ(図示せず)が固定されることにより、変速機4の変速レンジの1つであるPレンジが構成される。また、シフトレバーがNポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放されて、パーキングロックギヤが固定されないことにより、変速機4の変速レンジの1つであるNレンジが構成される。クラッチC1およびブレーキB1の両方が解放された状態では、エンジン2の動力がセカンダリ軸42まで伝達されて、セカンダリ軸42が回転するが、遊星歯車機構35のサンギヤ71およびピニオンギヤ74が空転し、エンジン2の動力は駆動輪7L,7Rに伝達されない。
シフトレバーがDポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである前進レンジが構成される。この前進レンジでの動力伝達モードには、ベルトモードおよびスプリットモードが含まれる。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1が係合している状態とクラッチC2が係合している状態との切り替え(クラッチC1,C2の掛け替え)により切り替えられる。
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41およびプライマリプーリ43を回転させる。プライマリプーリ43の回転は、ベルト45を介して、セカンダリプーリ44に伝達され、セカンダリプーリ44およびセカンダリ軸42を回転させる。遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結されているので、セカンダリ軸42と一体となって、サンギヤ71、リングギヤ73およびアウトプット軸32が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3および図4に示されるように、減速比が無段変速機構33の変速比(プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比)に前減速比(インプット軸31の回転数/プライマリ軸41の回転数)を乗じた値と一致する。
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とが結合されて、インプット軸31の回転がスプリットドライブギヤ81およびスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に伝達可能になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離される。
インプット軸31に入力される動力は、スプリットドライブギヤ81からスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に増速されて伝達される。キャリヤ72に伝達される動力は、キャリヤ72からサンギヤ71およびリングギヤ73に分割して伝達される。サンギヤ71の動力は、セカンダリ軸42、セカンダリプーリ44、ベルト45、プライマリプーリ43およびプライマリ軸41を介してプライマリ軸ギヤ62に伝達され、プライマリ軸ギヤ62からインプット軸ギヤ61に伝達される。そのため、ベルトモードでは、インプット軸ギヤ61が駆動ギヤとなり、プライマリ軸ギヤ62が被動ギヤとなるのに対し、スプリットモードでは、プライマリ軸ギヤ62が駆動ギヤとなり、インプット軸ギヤ61が被動ギヤとなる。
スプリットドライブギヤ81とスプリットドリブンギヤ82とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸31に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構35のキャリヤ72の回転が一定速度に保持される。そのため、変速比が上げられると、遊星歯車機構35のサンギヤ71の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構35のリングギヤ73(アウトプット軸32)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、図4に示されるように、無段変速機構33の変速比が大きいほど、変速機4の減速比が小さくなり、変速比に対する減速比の感度(変速比の変化量に対する減速比の変化量の割合)がベルトモードと比べて低い。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが前進方向に回転する。
シフトレバーがRポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである後進レンジが構成される。後進レンジでは、図2に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41からプライマリプーリ43、ベルト45およびセカンダリプーリ44を介してセカンダリ軸42に伝達され、セカンダリ軸42と一体に、遊星歯車機構35のサンギヤ71を回転させる。遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動されているので、サンギヤ71が回転すると、遊星歯車機構35のリングギヤ73がサンギヤ71と逆方向に回転する。このリングギヤ73の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ73の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ73と一体に、アウトプット軸32が回転する。アウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが後進方向に回転する。
<車両の制御系>
図5は、車両1の制御系の構成を示すブロック図である。
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)91が備えられている。図5には、1つのECU91のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU91と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU91を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
ECU91は、エンジン2の始動、停止および出力調整などのため、エンジン2に設けられた電子スロットルバルブ、インジェクタおよび点火プラグなどを制御する。また、トルクコンバータ3のロックアップ制御および変速機4の変速制御などのため、トルクコンバータ3および変速機4を含むユニットの各部に油圧を供給するための油圧回路92に含まれる各種のバルブを制御する。
ECU91には、その制御に必要な各種のセンサが接続されており、それらのセンサから検出信号が入力される。センサには、たとえば、エンジン2の回転(クランクシャフトの回転)に同期したパルス信号を検出信号として出力するエンジン回転センサ93と、車両1の走行に伴って回転する回転体(たとえば、アウトプット軸32)の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する車速センサ94とが含まれる。ECU91は、エンジン回転センサ93の検出信号からエンジン2の回転数(エンジン回転数)を算出する。また、ECU91は、車速センサ94の検出信号から車速を算出し、その車速の時間微分により車両1の車速の変化による加速度を算出する。
<急減速時制御>
図6は、急減速時制御の流れを示すフローチャートである。図7は、急減速制御時におけるロックアップ指示、ロックアップオン圧、ロックアップオフ圧、クラッチC1指示値、燃料カット実施フラグ、エンジン回転数およびクラッチC2指示値の時間変化の一例を示す図である。
動力伝達モードがスプリットモードであり、かつ、トルクコンバータ3のロックアップ機構24がロックアップオンの状態では、ECU91により、図6に示される急減速時制御が実行される。
急減速時制御では、車両1が急減速したか否かが判定される(ステップS1)。具体的には、車両1が所定以上の加速度で減速したか否かが判定される。車両1が急減速していない場合、車両1が急減速したか否かの判定が否定されて(ステップS1のNO)、急減速時制御が終了される。車両1が急減速せずに、スプリットモードかつロックアップオンの状態で走行している間は、一定周期で急減速時制御が繰り返し実行され、その急減速時制御の実行の度に車両1が急減速したか否かが判定される。
車両1が急減速したと判定された場合(ステップS1のYES)、トルクコンバータ3のロックアップ機構24の急解放の指示がECU91に内蔵されたCPUから出される(ステップS2、時刻T1)。この急解放の指示に応じて、ロックアップ機構24の係合油室27の油圧(ロックアップ(L/U)オン圧)が急峻に上がり、ロックアップ機構24の解放油室26の油圧(ロックアップ(L/U)オフ圧)が急峻に下がるよう、油圧回路92が制御される。その結果、ロックアップ機構24がロックアップオンの状態からロックアップオフの状態に速やかに切り替わる。これにより、車両1の急減速に伴ってエンジン2の回転数が低下することを抑制できる。
急解放の指示が出された後、係合(オン)中のクラッチC1を解放(オフ)する指示がCPUから出される(時刻T2)。その指示に応じて、クラッチC1を係合させている油圧が低減されて、クラッチC1が解放される(ステップS3)。クラッチC2およびブレーキB1が解放されているので、クラッチC1が解放されることにより、変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放されたニュートラル状態となる。
また、エンジン2の回転数が自立復帰(スタータレス始動)可能な最低の回転数に低下するまでエンジン2への燃料の供給を停止する燃料カット(フューエルカット)制御が実施されている場合には、燃料カット制御が終了される(時刻T2)。これにより、エンジン2への燃料の供給制御が燃料カット制御から通常制御に戻され、エンジン2への燃料の供給が再開される。その後、エンジン2の点火プラグのスパークにより、エンジン2がファイアリングすると、エンジン回転数が上昇し始める。
その後、変速機4がニュートラル状態となってから所定時間以上が経過し、かつ、エンジン回転数が所定値以上に上昇したという係合制御開始条件が成立したか否かが判断される(ステップS4)。係合制御開始条件が成立するまで、以降の処理に進まず(ステップS4のNO)、係合制御開始条件が成立したか否かが繰り返し判断される。
そして、係合制御開始条件が成立すると(ステップS4のYES)、ECU91に内蔵されたCPUからベルトモードを構成するためのクラッチC2の係合が指示される。この指示に応じて、クラッチC2を係合させる制御が開始されて(ステップS5)、クラッチC2への係合のための油圧の供給が開始される(時刻T3)。
また、CPUからロックアップ機構24をロックアップオフの状態に維持する指示が出され(時刻T4)、これに応じて、ロックアップ機構24の解放油室26および係合油室27にロックアップオフの状態を維持する油圧が供給されるよう、油圧回路92が制御される。
<作用効果>
以上のように、車両1がスプリットモードでの走行中に急減速場合、トルクコンバータ3のロックアップ機構24がロックアップオンからロックアップオフに切り替えられる。また、急減速により車速が低下するので、変速機4がスプリットモードからベルトモードに切り替えられる。ロックアップオンからロックアップオフへの切り替えおよびスプリットモードからベルトモードへの切り替えには、その両方に油圧(オイル)の供給が必要となる。
そこで、車両1がスプリットモードでの走行中に急減速した場合、ロックアップオンからロックアップオフへの切り替えが先に指示されて、ロックアップ機構24への油圧の供給が開始される。そして、そのロックアップオンからロックアップオフへの切り替えの指示から所定時間が経過した後に、ベルトモードを構成するためのクラッチC2の係合が指示されて、そのクラッチC2への油圧の供給が開始される。
これにより、ロックアップ機構24にロックアップオンからロックアップオフへの切り替えに必要な油圧が不足することを抑制でき、ロックアップオンからロックアップオフに高い応答性で切り替えることができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、油圧式のクラッチC1,C2の係合/解放の切り替えによりベルトモードとベルトモードよりも最小変速比が小さい値に設定されたスプリットモードとに切り替わる変速機4を取り上げたが、本発明は、第1変速比幅に設定されたローモードと、第1変速比幅よりも最大変速比および最小変速比がそれぞれ小さい第2変速比幅に設定されたハイモードとを有する副変速機付きの無段変速機を搭載した車両に適用されてもよい。
また、前述の実施形態では、単一のECU91により、エンジン2ならびにトルクコンバータ3および変速機4を備えるユニットの油圧回路92が制御されるとしたが、エンジン2とトルクコンバータ3および変速機4を備えるユニットの油圧回路92とは別々のECUによって制御されてもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1:車両
3:トルクコンバータ
4:変速機
24:ロックアップ機構
91:ECU(車両用制御装置、摩擦係合要素制御手段、ロックアップ制御手段、急減速判定手段、指示手段)
C1,C2:クラッチ(摩擦係合要素)

Claims (1)

  1. 油圧式の摩擦係合要素の係合/解放の切り替えにより所定変速比幅に設定されたローモードと前記所定変速比幅よりも最小変速比が小さい値に設定されたハイモードとに切り替わる変速機と、油圧により駆動源および前記変速機を機械的に結合するロックアップオンと前記駆動源および前記変速機を機械的に分離させるロックアップオフとに切り替わるロックアップ機構付きのトルクコンバータとを搭載した車両用の制御装置であって、
    前記ローモードと前記ハイモードとの切り替えのために、前記摩擦係合要素に供給される油圧を制御する摩擦係合要素制御手段と、
    前記ロックアップオンと前記ロックアップオフとの切り替えのために、前記ロックアップ機構に供給される油圧を制御するロックアップ制御手段と、
    前記車両が所定以上の減速度で減速する急減速を判定する急減速判定手段と、
    前記ハイモードでの前記車両の走行中に前記急減速判定手段により急減速が判定された場合、前記ロックアップ制御手段に前記ロックアップオンから前記ロックアップオフへの切り替えを指示し、当該指示から前記ロックアップオフへの切り替えの完了に必要な時間よりも長い所定時間が経過した後、前記摩擦係合要素制御手段に前記ローモードの構成を指示する指示手段とを含む、車両用制御装置。
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