以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系>
図1は、車両1の駆動系の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。エンジン2の動力は、トルクコンバータ3および変速機4を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達され、デファレンシャルギヤ5から左右のドライブシャフト6L,6Rを介してそれぞれ左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。
エンジン2は、E/G出力軸11を備えている。E/G出力軸11は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンランナ23およびロックアップ機構24を備えている。フロントカバー21には、E/G出力軸11が接続され、フロントカバー21は、E/G出力軸11と一体に回転する。ポンプインペラ22は、フロントカバー21に対するエンジン2側と反対側に配置されている。ポンプインペラ22は、フロントカバー21と一体回転可能に設けられている。タービンランナ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されて、フロントカバー21と共通の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25を備えている。ロックアップピストン25は、フロントカバー21とタービンランナ23との間に設けられている。ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25とフロントカバー21との間の解放油室26の油圧とロックアップピストン25とポンプインペラ22との間の係合油室27の油圧との差圧により、ロックアップオン(係合)/オフ(解放)される。すなわち、解放油室26の油圧が係合油室27の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21から離間し、ロックアップオフとなる。係合油室27の油圧が解放油室26の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21に押し付けられて、ロックアップオンとなる。
ロックアップオフの状態では、E/G出力軸11が回転されると、ポンプインペラ22が回転する。ポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ23に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ23で受けられて、タービンランナ23が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ23には、E/G出力軸11の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップオンの状態では、E/G出力軸11が回転されると、E/G出力軸11、ポンプインペラ22およびタービンランナ23が一体となって回転する。
変速機4は、インプット軸31およびアウトプット軸32を備え、インプット軸31に入力される動力を2つの経路に分岐してアウトプット軸32に伝達可能に構成された、いわゆる動力分割式(トルクスプリット式)変速機である。2つの動力伝達経路を構成するため、変速機4は、無段変速機構33、前減速ギヤ機構34、遊星歯車機構35およびスプリット変速機構36を備えている。
インプット軸31は、トルクコンバータ3のタービンランナ23に連結され、タービンランナ23と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸32は、インプット軸31と平行に設けられている。アウトプット軸32には、出力ギヤ37が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ37は、デファレンシャルギヤ5(デファレンシャルギヤ5のリングギヤ)と噛合している。
無段変速機構33は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構33は、プライマリ軸41と、プライマリ軸41と平行に設けられたセカンダリ軸42と、プライマリ軸41に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ43と、セカンダリ軸42に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ44と、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とに巻き掛けられたベルト45とを備えている。
プライマリプーリ43は、プライマリ軸41に固定された固定シーブ51と、固定シーブ51にベルト45を挟んで対向配置され、プライマリ軸41にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)52とを備えている。可動シーブ52に対して固定シーブ51と反対側には、プライマリ軸41に固定されたシリンダ53が設けられ、可動シーブ52とシリンダ53との間に、油圧室54が形成されている。
セカンダリプーリ44は、セカンダリ軸42に固定された固定シーブ55と、固定シーブ55にベルト45を挟んで対向配置され、セカンダリ軸42にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)56とを備えている。可動シーブ56に対して固定シーブ55と反対側には、セカンダリ軸42に固定されたシリンダ57が設けられ、可動シーブ56とシリンダ57との間に、油圧室58が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ55と可動シーブ56との位置関係は、プライマリプーリ43の固定シーブ51と可動シーブ52との位置関係と逆転している。
無段変速機構33では、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の各油圧室54,58に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が連続的に無段階で変更される。
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ43の可動シーブ52が固定シーブ51側に移動し、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ43に対するベルト45の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が小さくなる。
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が下げられる。これにより、セカンダリプーリ44の推力(セカンダリ推力)に対するプライマリプーリ43の推力(プライマリ推力)の比である推力比が小さくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の推力は、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44とベルト45との間で滑り(ベルト滑り)が生じない大きさを必要とする。そのため、ベルト滑りを生じない必要十分な挟圧が得られるよう、プライマリプーリ43の油圧室54およびセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧が制御される。
前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸41に伝達する構成である。具体的には、前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ61と、インプット軸ギヤ61よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸41にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ61と噛合するプライマリ軸ギヤ62とを含む。
遊星歯車機構35は、サンギヤ71、キャリア72およびリングギヤ73を備えている。サンギヤ71は、セカンダリ軸42にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。キャリア72は、アウトプット軸32に相対回転可能に外嵌されている。キャリア72は、複数個のピニオンギヤ74を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ74は、円周上に配置され、サンギヤ71と噛合している。リングギヤ73は、複数個のピニオンギヤ74を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ74にセカンダリ軸42の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ73には、アウトプット軸32が接続され、リングギヤ73は、アウトプット軸32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリット変速機構36は、スプリットドライブギヤ81と、スプリットドライブギヤ81と噛合するスプリットドリブンギヤ82とを含む平行軸式歯車機構である。
スプリットドライブギヤ81は、インプット軸31に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ82は、遊星歯車機構35のキャリア72と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ82は、スプリットドライブギヤ81よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ81よりも少ない歯数を有している。
また、変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、油圧により、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、油圧により、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、油圧により、遊星歯車機構35のキャリア72を制動する係合状態と、キャリア72の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<動力伝達モード>
図2は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図3は、遊星歯車機構35のサンギヤ71、キャリア72およびリングギヤ73の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図4は、無段変速機構33による変速比であるベルト変速比と変速機4の全体での変速比であるユニット変速比、つまりインプット軸31とアウトプット軸32との回転数比であるユニット変速比との関係を示す図である。
図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
変速機4は、車両1の前進時の動力伝達モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1が係合している状態とクラッチC2が係合している状態との切り替え(クラッチC1,C2の掛け替え)により切り替えられる。
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のキャリア72がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41およびプライマリプーリ43を回転させる。プライマリプーリ43の回転は、ベルト45を介して、セカンダリプーリ44に伝達され、セカンダリプーリ44およびセカンダリ軸42を回転させる。遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結されているので、セカンダリ軸42と一体となって、サンギヤ71、リングギヤ73およびアウトプット軸32が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3および図4に示されるように、ユニット変速比がベルト変速比(無段変速機構33のプライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比)に前減速比(インプット軸31の回転数/プライマリ軸41の回転数)を乗じた値と一致する。
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とが結合されて、インプット軸31の回転がスプリットドライブギヤ81およびスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリア72に伝達可能になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離される。
インプット軸31に入力される動力は、スプリットドライブギヤ81からスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリア72に増速されて伝達される。キャリア72に伝達される動力は、キャリア72からサンギヤ71およびリングギヤ73に分割して伝達される。サンギヤ71の動力は、セカンダリ軸42、セカンダリプーリ44、ベルト45、プライマリプーリ43およびプライマリ軸41を介してプライマリ軸ギヤ62に伝達され、プライマリ軸ギヤ62からインプット軸ギヤ61に伝達される。そのため、ベルトモードでは、インプット軸ギヤ61が駆動ギヤとなり、プライマリ軸ギヤ62が被動ギヤとなるのに対し、スプリットモードでは、プライマリ軸ギヤ62が駆動ギヤとなり、インプット軸ギヤ61が被動ギヤとなる。
スプリットドライブギヤ81とスプリットドリブンギヤ82とのギヤ比(スプリット変速比)は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸31に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構35のキャリア72の回転が一定速度に保持される。そのため、ベルト変速比が上げられると、遊星歯車機構35のサンギヤ71の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構35のリングギヤ73(アウトプット軸32)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、図4に示されるように、無段変速機構33のベルト変速比が大きいほど、変速機4のユニット変速比が小さくなる。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが前進方向に回転する。
車両1の後進時のリバースモードでは、図2に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離され、遊星歯車機構35のキャリア72が制動される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41からプライマリプーリ43、ベルト45およびセカンダリプーリ44を介してセカンダリ軸42に伝達され、セカンダリ軸42と一体に、遊星歯車機構35のサンギヤ71を回転させる。遊星歯車機構35のキャリア72が制動されているので、サンギヤ71が回転すると、遊星歯車機構35のリングギヤ73がサンギヤ71と逆方向に回転する。このリングギヤ73の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ73の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ73と一体に、アウトプット軸32が回転する。アウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが後進方向に回転する。
<車両の制御系>
図5は、車両1の制御系の構成を示すブロック図である。
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、ROMおよびRAM、データフラッシュ(フラッシュメモリ)などが内蔵されている。図5には、トルクコンバータ3および変速機4を制御するための1つのECU101のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU101と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU101を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
ECU101には、制御に必要な各種センサが接続されている。その一例として、ECU101には、エンジン2の回転(E/G出力軸11の回転)に同期したパルス信号を検出信号として出力するエンジン回転センサ102と、トルクコンバータ3のタービンランナ23の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するタービン回転センサ103と、車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する車速センサ104とが接続されている。
ECU101では、エンジン回転センサ102、タービン回転センサ103および車速センサ104の各検出信号から、エンジン回転数、タービン回転数(タービンランナ23の回転数)および車速が取得される。また、ECU101では、他のECUから情報が取得される。そして、ECU101により、各種のセンサから取得される情報、他のECUから入力される情報などに基づいて、トルクコンバータ3のロックアップ制御および変速機4の変速制御などのため、トルクコンバータ3および変速機4を含むユニットの各部に油圧を供給するための油圧回路に含まれる各種のバルブなどが制御される。
<油圧回路>
図6は、トルクコンバータ3に油圧を供給するための油圧回路111の構成を示す回路図である。
トルクコンバータ3に油圧を供給するための油圧回路111には、ソレノイドリレーバルブ112、SL1ソレノイドバルブ113、SLバルブ114、ロックアップスイッチバルブ115、ロックアップリレーバルブ116およびロックアップコントロールバルブ117が含まれる。
<ソレノイドリレーバルブ>
ソレノイドリレーバルブ112は、略円筒状の周壁を有するスリーブ121を備えている。スリーブ121内には、スプール122がスリーブ121の中心線方向に第1位置(D位置)と第2位置(P,N,R位置)との間で移動可能に設けられている。スプール122には、5つのランド部123,124,125,126,127が中心線方向にこの順で間隔を空けて形成されている。また、スリーブ121内には、ランド部127をランド部123側に押圧するスプリング128が設けられている。
スリーブ121の周壁には、第1入力ポート131、EXポート132、第1出力ポート133、第2入力ポート134、第2出力ポート135、EXポート136、第3入力ポート137、第3出力ポート138、第4入力ポート139、第4出力ポート140、第5入力ポート141および第5出力ポート142が形成されている。
第1入力ポート131は、スプール122の位置にかかわらず、ランド部123とスリーブ121のランド部123側の端面との間の空間と連通する。変速機4は、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジおよびD(ドライブ)レンジを含む変速レンジ(シフトレンジ)を有しており、第1入力ポート131には、変速機4の変速レンジがDレンジであるときに、一定のクラッチモジュレータ圧Pcが入力される。
クラッチモジュレータ圧Pcは、クラッチモジュレータバルブ(図示せず)から出力される油圧である。クラッチモジュレータバルブには、オイルポンプの発生油圧に応じたライン圧が入力され、クラッチモジュレータバルブは、ライン圧が一定圧未満であるときには、ライン圧と同圧のクラッチモジュレータ圧Pcを出力し、ライン圧が一定圧以上であるときには、ライン圧を調圧して、その一定圧のクラッチモジュレータ圧Pcを出力する。
EXポート132は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部123により閉鎖され、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部123,124間と連通する。
第1出力ポート133は、スプール122の位置にかかわらず、ランド部123,124間と連通する。
第2入力ポート134は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部123,124間と連通し、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部124,125間と連通する。
第2出力ポート135は、スプール122の位置にかかわらず、ランド部124,125間と連通する。
EXポート136は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部124,125間と連通し、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部125により閉鎖される。
第3入力ポート137は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部125により閉鎖され、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部125,126間と連通する。
第3出力ポート138は、スプール122の位置にかかわらず、ランド部125,126間と連通する。
第4入力ポート139および第4出力ポート140は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部125,126間と連通し、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部126により閉鎖される。変速機4の変速レンジがDレンジであるとき、第4入力ポート139には、一定のクラッチモジュレータ圧Pcが入力され、そのクラッチモジュレータ圧Pcが第4出力ポート140から出力される。
第5入力ポート141は、スプール122の位置にかかわらず、ランド部126,127間と連通する。
なお、第4入力ポート139および第4出力ポート140は、環状の入出力ポートとして一体に形成されていてもよい。
第5出力ポート142は、スプール122が第1位置に位置するときに、ランド部126,127間と連通し、スプール122が第2位置に位置するときに、ランド部127とスリーブ121のランド部127側の端面との間の空間と連通する。
<SL1ソレノイドバルブ>
SL1ソレノイドバルブ113は、非通電時に全閉となるノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブからなる。SL1ソレノイドバルブ113(電磁コイル)への通電が制御されることにより、ソレノイドリレーバルブ112の第3出力ポート138から出力される油圧がSL1ソレノイドバルブ113で調圧されて、その調圧により得られるSL1圧がSL1ソレノイドバルブ113から出力される。
SL1圧は、ソレノイドリレーバルブ112の第2入力ポート134に入力される。変速機4の変速レンジがDレンジであり、ソレノイドリレーバルブ112のスプール122が第1位置に位置する状態では、ソレノイドリレーバルブ112において、第2入力ポート134がランド部123,124間を介して第1出力ポート133と連通している。そのため、第2入力ポート134に入力されるSL1圧は、第1出力ポート133から出力される。
<SLバルブ>
SLバルブ114は、ノーマルクローズタイプのオン/オフソレノイドバルブからなる。SLバルブ114は、通電により開弁(オン)し、非通電により閉弁(オフ)する。SLバルブ114には、クラッチモジュレータ圧Pcが入力される。SLバルブ114の開弁状態(オン状態)では、SLバルブ114からクラッチモジュレータ圧Pcが出力され、そのクラッチモジュレータ圧Pcがソレノイドリレーバルブ112の第5入力ポート141に入力される。
<ロックアップスイッチバルブ>
ロックアップスイッチバルブ115は、略円筒状の周壁を有するスリーブ151を備えている。スリーブ151内には、スプール152がスリーブ151の中心線方向にコントロール位置(Cont位置)とロック位置(LOCK位置)との間で移動可能に設けられている。スプール152には、2つのランド部153,154が中心線方向にこの順で間隔を空けて形成されている。また、スリーブ121内には、ランド部154をランド部153側に押圧するスプリング155が設けられている。
スリーブ151の周壁には、第1入力ポート161、第2入力ポート162、出力ポート163、第3入力ポート164および第4入力ポート165が形成されている。
第1入力ポート161は、スプール152の位置にかかわらず、ランド部153とスリーブ151のランド部153側の端面との間の空間と連通する。
第2入力ポート162は、スプール152がコントロール位置に位置するときに、ランド部153,154間と連通し、スプール152がロック位置に位置するときに、ランド部153により閉鎖される。第2入力ポート162は、ソレノイドリレーバルブ112の第1出力ポート133と連通している。そのため、第1出力ポート133から出力されるSL1圧は、第2入力ポート162に入力される。
出力ポート163は、スプール152の位置にかかわらず、ランド部153,154間と連通する。出力ポート163は、スリーブ151の外部において、第1入力ポート161と連通している。そのため、出力ポート163から出力される油圧は、第1入力ポート161にも入力される。
第3入力ポート164は、スプール152がコントロール位置に位置するときに、ランド部154により閉鎖され、スプール152がロック位置に位置するときに、ランド部153,154間と連通する。第3入力ポート164は、ソレノイドリレーバルブ112の第4出力ポート140と連通している。
第4入力ポート165は、スプール152の位置にかかわらず、ランド部154とスリーブ151のランド部154側の端面との間の空間と連通する。第4入力ポート165には、オン状態のSLバルブ114から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcが入力される。
<ロックアップリレーバルブ>
ロックアップリレーバルブ116は、略円筒状の周壁を有するスリーブ171を備えている。スリーブ171内には、スプール172がスリーブ171の中心線方向にオン位置とオフ位置との間で移動可能に設けられている。スプール172には、6つのランド部173,174,175,176,177,178が中心線方向にこの順で間隔を空けて形成されている。また、スリーブ171内には、ランド部178をランド部173側に押圧するスプリング179が設けられている。
スリーブ171の周壁には、第1入力ポート181、連通ポート182,183、EXポート184、第2入力ポート185、第3入力ポート186、第1出力ポート187、第2出力ポート188、第4入力ポート189、第3出力ポート190、第5入力ポート191が形成されている。
第1入力ポート181は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部173とスリーブ171のランド部173側の端面との間の空間と連通する。第1入力ポート181は、ソレノイドリレーバルブ112の第5出力ポート142と連通している。
連通ポート182は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部173,174間と連通する。連通ポート183は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部174,175間と連通する。連通ポート182,183は、スリーブ171の外部で互いに連通している。
EXポート184は、スプール172がオン位置に位置するときに、ランド部174により閉鎖され、スプール172がオフ位置に位置するときに、ランド部174,175間と連通する。
第2入力ポート185は、スプール172がオン位置に位置するときに、ランド部174,175間と連通し、スプール172がオフ位置に位置するときに、ランド部175により閉鎖される。第2入力ポート185は、ロックアップスイッチバルブ115の出力ポート163と連通している。
第3入力ポート186は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部175,176間と連通する。第3入力ポート186には、一定のレギュレータ圧Prが入力される。
第1出力ポート187は、スプール172がオン位置に位置するときに、ランド部175,176間と連通し、スプール172がオフ位置に位置するときに、ランド部176,177間と連通する。
第2出力ポート188は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部176,177間と連通する。第2出力ポート188は、トルクコンバータ3の係合油室27と連通している。
第4入力ポート189は、スプール172がオン位置に位置するときに、ランド部176,177間と連通し、スプール172がオフ位置に位置するときに、ランド部177,178間と連通する。第4入力ポート189には、一定のレギュレータ圧Prが入力される。
第3出力ポート190は、スプール172の位置にかかわらず、ランド部177,178間と連通する。第3出力ポート190は、トルクコンバータ3の解放油室26と連通している。
第5入力ポート191は、スプール172がオン位置に位置するときに、ランド部177,178間と連通し、スプール172がオフ位置に位置するときに、ランド部178により閉鎖される。
<ロックアップコントロールバルブ>
ロックアップコントロールバルブ117は、略円筒状の周壁を有するスリーブ201を備えている。スリーブ201内には、スプール202がスリーブ201の中心線方向に移動可能に設けられている。スプール202には、3つのランド部203,204,205が中心線方向にこの順で間隔を空けて形成されている。また、スリーブ201内には、ランド部205をランド部203側に押圧するスプリング206が設けられている。
スリーブ201の周壁には、第1入力ポート211、F/Bポート212、第2入力ポート213、出力ポート214、EXポート215,216が形成されている。
第1入力ポート211は、スプール202の位置にかかわらず、ランド部203とスリーブ201のランド部203側の端面との間の空間と連通する。第1入力ポート211は、ロックアップスイッチバルブ115の出力ポート163と連通している。
F/Bポート212は、スプール202の位置にかかわらず、ランド部203,204間と連通する。
第2入力ポート213は、スプール202がスリーブ201のランド部203側の端面に当接する位置に位置するときに、ランド部203,204間と連通する。スプール202がその位置からスプリング206側に移動すると、その移動に伴って、ランド部204と第2入力ポート213との重なりが大きくなって、第2入力ポート213の開度(開口面積)が小さくなり、ついには第2入力ポート213がランド部204によって閉鎖される。第2入力ポート213が開放されている状態では、第2入力ポート213に、一定のレギュレータ圧Prが入力される。
出力ポート214は、スプール202の位置にかかわらず、ランド部204,205間と連通する。また、出力ポート214は、ロックアップリレーバルブ116の第5入力ポート191と連通している。
EXポート215は、スプール202がスリーブ201のランド部203側の端面に当接する位置に位置するときに、ランド部205によって閉鎖される。スプール202がその位置からスプリング206側に移動すると、その移動に伴って、ランド部205とEXポート215との重なりが大きくなって、EXポート215の開度が大きくなる。
EXポート216は、スプール202の位置にかかわらず、ランド部205とスリーブ201のランド部205側の端面との間の空間と連通している。
<ロックアップ制御>
図7は、ロックアップオフからロックアップオンへの切替時における、SLバルブ114、ロックアップスイッチバルブ(L/U SWITCH)115およびロックアップリレーバルブ(L/U RELAY)116の各状態、ロックアップコントロールバルブ(L/U−Cont)117に入力される制御信号圧、ON圧、OFF圧、エンジン回転数ならびにタービン回転数の時間変化を示す図である。
以下では、トルクコンバータ3のロックアップ機構24がロックアップオフからロックアップオンに切り替えられる場合の制御について説明する。そのため、変速機4の変速レンジがDレンジであり、ソレノイドリレーバルブ112のスプール122は、第1位置に位置している。
ロックアップオフの状態では、SLバルブ114がオフ状態であり、SLバルブ114からのクラッチモジュレータ圧Pcの出力が停止している。そのため、SLバルブ114からクラッチモジュレータ圧Pcが出力されていないので、ソレノイドリレーバルブ112の第5入力ポート141に油圧(クラッチモジュレータ圧Pc)が入力されておらず、第5入力ポート141とランド部126,127間を介して連通する第5出力ポート142から油圧が出力されていない。また、ロックアップスイッチバルブ115の第4入力ポート165に油圧(クラッチモジュレータ圧Pc)が入力されていない。
なお、油圧が入力されていない状態は、入力される油圧がほぼ零である状態と同義である。同様に、油圧が出力されていない状態は、出力される油圧がほぼ零である状態と同義である。
また、SL1ソレノイドバルブ113に通電されておらず、SL1ソレノイドバルブ113からSL1圧が出力されていない。そのため、ソレノイドリレーバルブ112の第2入力ポート134に油圧(SL1圧)が入力されておらず、第2入力ポート134とランド部123,124間を介して出力される第1出力ポート133から油圧が出力されていないので、ロックアップスイッチバルブ115の第2入力ポート162に油圧が入力されていない。
それゆえ、ロックアップスイッチバルブ115のスプール152は、スプリング155の弾性力により、コントロール位置に保持されている。
ロックアップスイッチバルブ115のスプール152がコントロール位置に位置するとき、第2入力ポート162は、ランド部153,154間を介して出力ポート163と連通する。第2入力ポート162に油圧が入力されていないので、出力ポート163から油圧が出力されておらず、ロックアップコントロールバルブ117の第1入力ポート211に制御信号圧としての油圧が入力されていない。そのため、ロックアップコントロールバルブ117のスプール202は、スプリング206の弾性力により、スリーブ201のランド部203側の端面に当接する位置に位置する。
また、ソレノイドリレーバルブ112の第5出力ポート142から油圧が出力されていないので、ロックアップリレーバルブ116の第1入力ポート181に油圧が入力されておらず、ロックアップリレーバルブ116のスプール202は、スプリング206の弾性力により、オフ位置に位置している。そのため、ロックアップリレーバルブ116の第4入力ポート189に入力されるレギュレータ圧Prは、第4入力ポート189とランド部177,178間を介して連通する第3出力ポート190から出力されて、トルクコンバータ3の解放油室26に供給される。
ロックアップオフからロックアップオンへの切り替えに際しては、ECU101により、SLバルブ114がオン状態にされて、SLバルブ114からクラッチモジュレータ圧Pcが出力される(時刻T1)。SLバルブ114から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcは、ソレノイドリレーバルブ112の第5入力ポート141に入力され、第5入力ポート141とランド部126,127間を介して連通する第5出力ポート142から出力されて、ロックアップリレーバルブ116の第1入力ポート181に入力される。これにより、ロックアップリレーバルブ116のスプール172がクラッチモジュレータ圧Pcを受けてオフ位置からオン位置に移動する。
また、SLバルブ114から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcがロックアップスイッチバルブ115の第4入力ポート165に入力される。そのため、これ以後、SLバルブ114がオン状態からオフ状態に切り替えられるまで、ロックアップスイッチバルブ115のスプール152がコントロール位置に保持される。
ロックアップリレーバルブ116のスプール172がオン位置に移動すると、ロックアップリレーバルブ116の第4入力ポート189がランド部176,177間を介して第2出力ポート188と連通するので、第4入力ポート189に入力されるレギュレータ圧Prが第2出力ポート188から出力されて、トルクコンバータ3の係合油室27に供給される。これにより、係合油室27の油圧(ON圧)が一気に上昇する。また、ロックアップリレーバルブ116の第5入力ポート191がランド部177,178間を介して第3出力ポート190と連通するので、ロックアップコントロールバルブ117の第2入力ポート213、ランド部204,205間および出力ポート214を介して第5入力ポート191に入力されるレギュレータ圧Prが第3出力ポート190から出力されて、トルクコンバータ3の解放油室26に供給される。
その後、ECU101により、SL1ソレノイドバルブ113から出力されるSL1が漸増するよう、SL1ソレノイドバルブ113への通電が制御される(時刻T2)。SL1圧の漸増に伴って、ロックアップコントロールバルブ117のスプール202がスプリング206側に移動し、第2入力ポート213がスプール202のランド部204によって閉じられていく。これにより、出力ポート214から出力される油圧が漸減し、トルクコンバータ3の解放油室26の油圧(OFF圧)が漸減する。
SL1ソレノイドバルブ113から出力されるSL1圧が所定圧まで上昇すると、ロックアップコントロールバルブ117の第2入力ポート213がランド部204により閉鎖され、出力ポート214がランド部204,205間を介してEXポート215と連通する。これにより、トルクコンバータ3の解放油室26の油圧がロックアップリレーバルブ116の第3出力ポート190、ランド部177,178間および第5入力ポート191、ならびにロックアップコントロールバルブ117の出力ポート214、ランド部204,205間およびEXポート215を介して解放される。その結果、トルクコンバータ3の解放油室26の油圧がほぼ零に低下し、トルクコンバータ3のロックアップ機構24がロックアップオンとなる(時刻T3)。ロックアップオンの状態では、エンジン回転数とタービン回転数とがほぼ一致する。
この後、図7に二点鎖線で示されるように、SLバルブ114がオンからオフに切り替えられる場合、ロックアップスイッチバルブ115の第1入力ポート161に入力されているSL1圧により、ロックアップスイッチバルブ115のスプール152がコントロール位置からロック位置に移動する。スプール152がロック位置に移動すると、第2入力ポート162がランド部153によって閉鎖され、第3入力ポート164がランド部153,154間を介して出力ポート163と連通する。第3入力ポート164は、ソレノイドリレーバルブ112の第4出力ポート140と連通しているので、第4出力ポート140から第3入力ポート164にクラッチモジュレータ圧Pcが入力され、このクラッチモジュレータ圧Pcが出力ポート163から出力される。出力ポート163から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcが第1入力ポート161に入力されることにより、ロックアップスイッチバルブ115のスプール152がロック位置に保持される。また、出力ポート163から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcがロックアップリレーバルブ116の第2入力ポート185に入力され、そのクラッチモジュレータ圧Pcがロックアップリレーバルブ116のスプール172のランド部174,175間および連通ポート182,183を介してランド部173,174間に供給されることにより、スプール172がオン位置に保持される。また、出力ポート163から出力されるクラッチモジュレータ圧Pcがロックアップコントロールバルブ117の第1入力ポート211に入力される。そのため、SL1ソレノイドバルブ113からのSL1圧の出力の有無にかかわらず、ロックアップコントロールバルブ117のスプール202の位置がランド部204により第2入力ポート213を閉鎖する位置に保持される。
ECU101によるロックアップ制御では、図7に実線で示されるように、エンジン回転数とタービン回転数とがほぼ一致した後も引き続き、SLバルブ114がオン状態に保持され、第1出力ポート133から出力されるSL1圧がクラッチモジュレータ圧Pc未満の所定圧に保持される。そして、動力伝達モードがベルトモードからスプリットモードに切り替えられるよりも前のタイミング、たとえば、車両1の車速が所定速度(たとえば、10km/h)まで上昇した時点で、SLバルブ114がオンからオフに切り替えられる(時刻T4)。
所定圧は、エンジン回転数とタービン回転数とがほぼ一致した時点でのSL1圧に余裕分αを加えた圧に設定される。エンジン回転数とタービン回転数とがほぼ一致した時点で、トルクコンバータ3の解放油室26の油圧と係合油室27の油圧との差圧に応じたトルクコンバータ3のトルク伝達容量がエンジン2からトルクコンバータ3に入力されるエンジントルクとほぼ一致するので、その時点でのSL1圧は、トルクコンバータ3に入力されるエンジントルクに応じた圧である。余裕分αは、図8に示されるように、車両1の車速が大きいほど大きな値に設定される。
SLバルブ114がオンからオフに切り替えられると、SL1ソレノイドバルブ113からのSL1圧の出力の有無にかかわらず、ロックアップコントロールバルブ117のスプール202が一定位置に保持されるので、ベルトモードからスプリットモードとの切り替え時にクラッチC1を係合させるため、ソレノイドリレーバルブ112の第1出力ポート133から出力されるSL1圧、つまりSL1ソレノイドバルブ113から出力されるSL1圧を利用することができる。すなわち、油圧回路111の構成であれば、SL1ソレノイドバルブ113をロックアップ制御およびクラッチC1の係合制御に使用することができる。
また、変速機4の変速レンジがRレンジであり、ソレノイドリレーバルブ112のスプール122が第2位置に位置するときには、第2入力ポート134と第2出力ポート135とがランド部124,125間を介して連通し、第2入力ポート134に入力されるSL1圧は、第2出力ポート135から出力され、第1出力ポート133からは出力されない。したがって、第2出力ポート135から出力されるSL1圧をブレーキB1の係合に利用することができる。すなわち、油圧回路111の構成であれば、SL1ソレノイドバルブ113をブレーキB1の係合制御にも使用することができる。
よって、SL1ソレノイドバルブ113に、ロックアップ制御、クラッチC1の係合制御およびブレーキB1の係合制御のためのバルブとしての3役を担わせることができる。その結果、油圧回路111において、油圧を調整可能なバルブの必要数を削減でき、部品点数および部品コストを低減することができる。
<作用効果>
以上のように、トルクコンバータ3のロックアップ機構24がロックアップオフからロックアップオンに切り替えられるときには、SL1ソレノイドバルブ113が制御されて、その切り替えのための油圧、つまりロックアップコントロールバルブに入力される制御信号圧であるSL1圧が漸増される。SL1圧の漸増により、ロックアップオフからロックアップオンに切り替えが進み、それに伴って、エンジン回転数とタービン回転数との差が小さくなる。そして、エンジン回転数とタービン回転数とがほぼ一致すると、ポンプインペラ22とタービンランナ23とが直結されてロックアップオンとなる。その後、SL1圧は、予め設定された上限圧であるクラッチモジュレータ圧Pcまで上げられず、トルクコンバータ3に入力されるエンジントルクに応じた圧以上かつクラッチモジュレータ圧Pc未満の圧に保持される。
そのため、車両1の急減速時など、ロックアップ機構24をロックアップオンからロックアップオフに速やかに切り替える必要が生じた場合に、ロックアップオフからロックアップオンへの切り替えのためのSL1圧を速やかに低下させて、ロックアップオンからロックアップオフに高い応答性で切り替えることができる。よって、ロックアップオンの状態での急減速によるエンジンストールの発生を抑制できる。
また、エンジン回転数とタービン回転数とが一致した後、SL1圧は、車両の車速が大きいほど高い圧に保持される。車速が小さい低車速域では、車両1の駆動輪7L,7Rの回転数が低いので、急減速時にエンジン回転数がエンジンストールを生じる回転数まで短時間で低下する。そのため、SL1圧が相対的に低い圧に保持されることにより、SL1圧を短時間で低下させることができ、エンジンストールの発生を効果的に抑制できる。一方、車速が大きい高車速域では、SL1圧が相対的に高い圧に保持されることにより、たとえば、車両1の加速に伴うエンジントルクの上昇時にロックアップオンが解除されること、いわゆるロックアップ外れを抑制でき、ロックアップ外れに対する余裕度を向上させることができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明が、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、変速機4に動力分割式(トルクスプリット式)変速機が採用された構成を取り上げたが、動力分割式変速機に限らず、無段変速機や有段式の自動変速機(AT:Automatic Transmission)の構成を有する変速機など、種々の形式の変速機を変速機4に採用することができる。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。