JP2017198237A - 車両用制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の前進時と後進時との駆動力差が大きい構成における種々の懸念を払拭できる、車両用制御装置を提供する。【解決手段】エンジン水温が温度T3よりも低い状態では、シフトポジションがPポジションまたはDポジションからNポジションを経由してRポジションに切り替えられると、Rレンジが構成されるまでの変速過渡時に、RレンジでのクリープトルクがDレンジでのクリープトルクの最大値に一致するように、無段変速機構のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減される。【選択図】図5

Description

本発明は、無段変速機を搭載した車両に用いられる制御装置に関する。
自動車などの車両では、駆動源からの動力が変速機(トランスミッション)のインプット軸に入力され、変速機で変速された動力がアウトプット軸からデファレンシャルギヤなどを介して駆動輪に伝達される。
車両に搭載される変速機として、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が知られている。ベルト式の無段変速機は、無段変速機の一例であり、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとに無端状のベルトが巻き掛けられた構成を有している。プライマリプーリおよびセカンダリプーリの各プーリは、固定シーブと、固定シーブにベルトを挟んで対向し、その対向方向(回転軸線方向)に移動可能な可動シーブとを備えている。各プーリにおける固定シーブと可動シーブとの間隔の変更により、各プーリに対するベルトの巻きかけ径を変更することができ、変速比(プーリ比)を無段階で連続的に変更することができる。
車両の前進/後進を切り替えるため、無段変速機には、前後進切替機構としてのプラネタリギヤ(遊星歯車機構)が備えられる。プラネタリギヤは、インプット軸とプライマリプーリを支持するプライマリ軸との間、または、セカンダリプーリを支持するセカンダリ軸とアウトプット軸との間に設けられる。
プラネタリギヤがセカンダリ軸とアウトプット軸との間に設けられた構成では、たとえば、セカンダリ軸とプラネタリギヤのサンギヤとが一体回転可能に連結され、アウトプット軸とプラネタリギヤのリングギヤとが一体回転可能に連結されている。プラネタリギヤのキャリアは、セカンダリ軸に対して相対回転可能に設けられている。車両の前進時には、キャリアが自由回転状態にされ、サンギヤとリングギヤとが直結される。これにより、セカンダリ軸に伝達される動力により、サンギヤおよびリングギヤが一体的に回転し、アウトプット軸がリングギヤと一体的に回転する。一方、車両の後進(後退)時には、サンギヤとリングギヤとの直結が解除され、キャリアが回転不能に固定される。これにより、サンギヤがセカンダリ軸と一体的に回転すると、リングギヤがサンギヤと逆方向に回転し、アウトプット軸がリングギヤと一体的に車両の前進時とは逆方向に回転する。このとき、プラネタリギヤの構成上、リングギヤ(アウトプット軸)の回転速度は、サンギヤの回転速度よりも必ず低くなる。
そのため、後進時の最大変速比は、前進時の最大変速比よりも大きく、インプット軸に入力される動力の大きさが同じであれば、後進時は、前進時と比較して、アウトプット軸に出力される駆動力が大きくなる。この前進時と後進時との駆動力差が大きい構成では、とくに後進時に、車両のブレーキ解除時のクリープによる飛び出し、制動力不足によるグローン音(ブレーキ異音)の発生などの懸念があるので、変速機の制御に相当な工夫が必要である。
特開2004−176890号公報
本発明の目的は、車両の前進時と後進時との駆動力差が大きい構成における種々の懸念を払拭できる、車両用制御装置を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、エンジンの動力が入力されるインプット軸から動力を出力するアウトプット軸に至る動力伝達経路上に、動力をプライマリプーリおよびセカンダリプーリのプーリ比の変更によって無段階に変速するベルト式の無段変速機構と、キャリア、セカンダリプーリと一体回転可能に設けられたサンギヤおよびアウトプット軸と一体回転可能に設けられたリングギヤを備える遊星歯車機構とが設けられ、前進レンジでキャリアが自由回転状態にされて、サンギヤとリングギヤとが直結され、後進レンジでサンギヤとリングギヤとの直結が解除されて、キャリアが回転不能に固定される無段変速機を搭載した車両に用いられる。
かかる構成の無段変速機では、インプット軸に入力される動力および無段変速機構のプーリ比をそれぞれ一定として、前進レンジと後進レンジとで比較すると、最大変速比が後進レンジで前進レンジよりも大きく、それゆえ、アウトプット軸に出力される駆動力が後進レンジで前進レンジよりも大きくなる。そのため、車両のエンジンのアイドル回転数が所定回転数(たとえば、エアコンディショナなどのエンジンの負荷となる機器が非作動、かつ、エンジンが十分に暖機された状態でのエンジン回転数)よりも高いアイドル高回転状態では、後進レンジでの車両の発進時(後進発進時)のクリープトルク(エンジンのアイドル回転時にアウトプット軸に出力される駆動力)が過大となる。
そこで、本発明に係る車両用制御装置は、エンジンのアイドル回転数が所定回転数よりも高いアイドル高回転状態であるか否かを判定する判定手段と、判定手段によってアイドル高回転状態であると判定されている場合、後進レンジが構成されていない状態から後進レンジが構成される変速過渡時に、無段変速機構のプーリ比を最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減するプーリ比低減手段とを含む。
この構成によれば、アイドル高回転状態では、後進レンジが構成されていない状態から後進レンジが構成される変速過渡時に、無段変速機構のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減される。これにより、後進発進時のクリープトルクを制限することができる。そのため、車両の後進発進時において、クリープトルクが過大となることを抑制でき、車両のブレーキ解除時のクリープによる飛び出し、制動力不足によるグローン音の発生などの懸念を払拭することができる。
アイドル高回転状態であるか否かは、エンジンのアイドル回転数を取得して、その取得したアイドル回転数と所定回転数とを比較することにより判定されてもよい。
また、アイドル回転数の高低と相関を有する数値または事象を検知して、その検知に基づいてアイドル高回転状態であるか否かが判定されてもよい。
アイドル回転数の高低と相関を有する数値は、たとえば、エンジンを流通する冷却水の水温であり、車両用制御装置は、当該水温を取得するエンジン水温取得手段をさらに含み、判定手段は、エンジン水温取得手段によって取得される水温が所定温度より低い場合にアイドル高回転状態であると判定してもよい。
アイドル回転数の高低と相関を有する事象は、たとえば、車両のエアコンディショナのオン/オフであり、判定手段は、エアコンディショナのオン/オフを検知して、エアコンディショナがオンである場合にアイドル高回転状態と判定してもよい。
プーリ比低減手段は、アイドル高回転状態において、後進レンジにおけるクリープトルクが前進レンジにおけるクリープトルクと同等となるように、無段変速機構のプーリ比を最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減させてもよいし、後進レンジにおけるクリープトルクが前進レンジにおけるクリープトルクの最大値と同等となるように、無段変速機構のプーリ比を最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減させてもよい。
いずれの構成であっても、車両の後進発進時のクリープトルクが過大となることを抑制できる。そして、前者の構成では、車両の後進発進時の挙動を前進発進時の挙動と合わせることができ、後者の構成では、前進レンジにおけるクリープトルクが最大値を下回るアイドル高回転状態において、プーリ比の変更量を抑えることができ、プーリ比の変更(変速)に要する時間を短縮することができる。
本発明によれば、車両の後進発進時のクリープトルクを制限することができるので、その後進発進時において、クリープトルクが過大となることを抑制でき、車両のブレーキ解除時のクリープによる飛び出し、制動力不足によるグローン音の発生などの懸念を払拭することができる。
本発明の一実施形態に係る制御装置が搭載された車両の要部の構成を示す図である。 車両の駆動系統の構成を示すスケルトン図である。 動力分割式無段変速機に含まれる係合要素の状態を示す図である。 動力分割式無段変速機に含まれる遊星歯車機構のサンギヤ、キャリアおよびリングギヤの回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。 エンジン水温とアウトプット軸から出力される駆動力(クリープトルク)、エンジンのアイドル回転数および無段変速機構のプーリ比との各関係を示す図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の要部構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る変速機ECU12が搭載された車両1の要部の構成を示す図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。
エンジン2の出力は、トルクコンバータ3および動力分割式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)4を介して、車両1の駆動輪(たとえば、左右の前輪)に伝達される。
車両1には、CPUおよびメモリなどを含む構成の複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が備えられている。複数のECUには、エンジンECU11および変速機ECU12が含まれる。各ECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
エンジンECU11には、アクセルセンサ13、エンジン回転数センサ14および水温センサ15などが接続されている。
アクセルセンサ13は、運転者により操作されるアクセルペダル(図示せず)の操作量に応じた検出信号を出力する。エンジンECU11は、アクセルセンサ13から入力される信号に基づいて、アクセルペダルの最大操作量に対する操作量の割合、つまりアクセルペダルが踏み込まれていないときを0%とし、アクセルペダルが最大に踏み込まれたときを100%とする百分率であるアクセル開度を演算する。
エンジン回転数センサ14は、エンジン2の回転(クランクシャフトの回転)に同期したパルス信号を検出信号として出力する。エンジンECU11は、エンジン回転数センサ14から入力されるパルス信号の周波数をエンジン2の回転数(エンジン回転数)に換算する。
水温センサ15は、エンジン2を流通する冷却水の温度(エンジン水温)、たとえば、エンジン2からラジエータに向けて流れる冷却水の温度に応じた検出信号を出力する。
エンジンECU11は、各種センサの検出信号から取得した情報および/または他のECUから入力される種々の情報などに基づいて、エンジン2の始動、停止および出力調整などのため、エンジン2に設けられた電子スロットルバルブ、インジェクタおよび点火プラグなどを制御する。
変速機ECU12には、シフトポジションセンサ16などが接続されている。
シフトポジションセンサ16は、シフトレバー(セレクトレバー)のポジションに応じた検出信号を出力する。シフトレバーのポジションとして、たとえば、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションが設けられている。Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションは、それぞれシフトレンジのPレンジ(駐車レンジ)、Rレンジ(後進レンジ)、Nレンジ(中立レンジ)およびDレンジ(前進レンジ)に対応する。シフトレバーは、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションの間でシフト操作することができ、そのシフト操作により、シフトレンジの切り替えを指示することができる。
変速機ECU12は、各種センサの検出信号から取得した情報および/または他のECUから入力される種々の情報に基づいて、たとえば、動力分割式無段変速機4の変速比(ユニット変速比)の変更のため、動力分割式無段変速機4の各部に油圧を供給するための油圧回路17に設けられている各種のバルブを制御する。バルブには、プライマリプーリ53(図2参照)に供給される油圧を制御するための油圧制御バルブ、セカンダリプーリ54(図2参照)に供給される油圧を制御するための油圧制御バルブが含まれる。油圧制御バルブには、電流値により出力油圧を制御可能なバルブ、たとえば、リニアソレノイドバルブが用いられている。また、油圧回路17には、エンジン2の動力により駆動される機械式オイルポンプが油圧の発生源として設けられている。
<車両の駆動系統>
図2は、車両1の駆動系統の構成を示すスケルトン図である。
エンジン2は、E/G出力軸21を備えている。E/G出力軸21は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、ポンプインペラ31、タービンランナ32およびロックアップクラッチ33を備えている。ポンプインペラ31には、E/G出力軸21が連結されており、ポンプインペラ31は、E/G出力軸21と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ32は、ポンプインペラ31と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ31とタービンランナ32とを直結/分離するために設けられている。ロックアップクラッチ33が係合されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが直結され、ロックアップクラッチ33が解放されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが分離される。
ロックアップクラッチ33が解放された状態において、E/G出力軸21が回転されると、ポンプインペラ31が回転する。ポンプインペラ31が回転すると、ポンプインペラ31からタービンランナ32に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ32で受けられて、タービンランナ32が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ32には、E/G出力軸21の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップクラッチ33が係合された状態では、E/G出力軸21が回転されると、E/G出力軸21、ポンプインペラ31およびタービンランナ32が一体となって回転する。
動力分割式無段変速機4は、トルクコンバータ3から入力される動力をデファレンシャルギヤ6に伝達する。動力分割式無段変速機4は、インプット軸41、アウトプット軸42、無段変速機構43、逆転ギヤ機構44、遊星歯車機構45、スプリットドライブギヤ46およびスプリットドリブンギヤ47を備えている。
インプット軸41は、トルクコンバータ3のタービンランナ32に連結され、タービンランナ32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸42は、インプット軸41と平行に設けられている。アウトプット軸42には、出力ギヤ48が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ48は、デファレンシャルギヤ6(デファレンシャルギヤ6の入力ギヤ)と噛合している。
無段変速機構43は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構43は、プライマリ軸51と、プライマリ軸51と平行に設けられたセカンダリ軸52と、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ53と、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ54と、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とに巻き掛けられたベルト55とを備えている。
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたシリンダ63が設けられ、可動シーブ62とシリンダ63との間に、ピストン室(油室)64が形成されている。
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたシリンダ67が設けられ、可動シーブ66とシリンダ67との間に、ピストン室(油室)68が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ65と可動シーブ66との位置関係は、プライマリプーリ53の固定シーブ61と可動シーブ62との位置関係と逆転している。
無段変速機構43では、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各ピストン室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が連続的に無段階で変更される。
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ53の可動シーブ62が固定シーブ61側に移動し、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ53に対するベルト55の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が小さくなる。
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト55に対するセカンダリプーリ54の推力がベルト55に対するプライマリプーリ53の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力は、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54とベルト55との間で滑りが生じない大きさを必要とする。そのため、インプット軸41に入力されるトルクの大きさに応じた推力が得られるよう、セカンダリプーリ54のピストン室68に供給される油圧が制御される。
逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸51に伝達する構成である。具体的には、逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ71と、インプット軸ギヤ71よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸51にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ71と噛合するプライマリ軸ギヤ72とを含む。
遊星歯車機構45は、サンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83を備えている。サンギヤ81は、セカンダリ軸52にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。キャリア82は、アウトプット軸42に相対回転可能に外嵌されている。キャリア82は、複数個のピニオンギヤ84を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ84は、円周上に配置され、サンギヤ81と噛合している。リングギヤ83は、複数個のピニオンギヤ84を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ84にセカンダリ軸52の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ83には、アウトプット軸42が接続され、リングギヤ83は、アウトプット軸42と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリットドライブギヤ46は、インプット軸41に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ47は、遊星歯車機構45のキャリア82と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ47は、スプリットドライブギヤ46よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ46よりも少ない歯数を有している。
また、動力分割式無段変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、遊星歯車機構45のキャリア82を制動する係合状態と、キャリア82の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<変速モード>
図3は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図3において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。図4は、遊星歯車機構45のサンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
動力分割式無段変速機4は、Dレンジにおける変速モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。
ベルトモードでは、図3に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51およびプライマリプーリ53を回転させる。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結されているので、セカンダリ軸52と一体となって、サンギヤ81、リングギヤ83およびアウトプット軸42が回転する。したがって、ベルトモードでは、図4に示されるように、動力分割式無段変速機4の変速比(ユニット変速比)が無段変速機構43による変速比であるベルト変速比、つまり無段変速機構43のプライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比と一致する。
スプリットモードでは、図3に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とが直結され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリーになり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、遊星歯車機構45のサンギヤ81に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力は、スプリットドライブギヤ46からスプリットドリブンギヤ47を介して遊星歯車機構45のキャリア82に増速されて伝達される。
スプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸41に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構45のキャリア82の回転が一定速度に保持される。そのため、プーリ比が上げられると、遊星歯車機構45のサンギヤ81の回転数が下がるので、図4に破線で示されるように、遊星歯車機構45のリングギヤ83(アウトプット軸42)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、無段変速機構43のプーリ比が大きいほど、動力分割式無段変速機4のユニット変速比が小さくなる。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が前進方向に回転する。
Rレンジでは、リバースモードとなり、図3に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82が制動される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、セカンダリ軸52と一体に、遊星歯車機構45のサンギヤ81を回転させる。遊星歯車機構45のキャリア82が制動されているので、サンギヤ81が回転すると、遊星歯車機構45のリングギヤ83がサンギヤ81と逆方向に回転する。このリングギヤ83の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ83の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ83と一体に、アウトプット軸42が回転する。アウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が後進方向に回転する。
<プーリ比低減処理>
図5は、エンジン水温とアウトプット軸42から出力される駆動力(クリープトルク)、エンジン2のアイドル回転数および無段変速機構43のプーリ比との各関係を示す図である。
車両1の発進性能を高める目的で、通常、車両1の停車中における動力分割式無段変速機4の変速比が最大変速比となるように、車両1の停車前に、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比に変更される(ロー戻し)。無段変速機構43のプーリ比を最大プーリ比に変更するため、変速機ECU12により、無段変速機構43のプーリ比の目標値である目標プーリ比が無段変速機構43の最大プーリ比に設定され、プーリ比が目標プーリ比に一致するよう、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54に供給される油圧が制御される。また、エンジン2の始動時にも、通常、動力分割式無段変速機4の変速比が最大変速比となるように、変速機ECU12により、無段変速機構43のプーリ比の目標値である目標プーリ比が無段変速機構43の最大プーリ比に設定されて、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比に変更される(ロー戻し)。
ところが、図5に示されるように、エンジン水温が所定の温度T1(たとえば、80℃)よりも低い状態では、エンジンECU11により、エンジン2のアイドル回転数が通常回転数よりも高くなるように、エンジン2が制御される。具体的には、水温センサ15(図1参照)の検出信号から取得されるエンジン水温が温度T1よりも低く温度T2(T1>T2)よりも高い範囲では、エンジン水温が低いほど、エンジン2のアイドル回転数が通常回転数から上限回転数まで単調に増加するように、エンジン2が制御される。エンジン水温が温度T2以下の範囲では、エンジン2のアイドル回転数が上限回転数となるように、エンジン2が制御される。通常回転数は、たとえば、エンジン2の負荷となる機器(エアコンディショナなど)が非作動、かつ、エンジン2が十分に暖機された状態でのエンジン回転数である。
エンジン2のアイドル回転数が通常回転数よりも高いアイドル高回転状態、つまりエンジン水温が温度T1よりも低い状態では、エンジン2のアイドル回転数が通常回転数である状態と比較して、エンジン2のアイドル回転時にアウトプット軸42に出力される駆動力(クリープトルク)が大きくなる。また、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比である場合、DレンジとRレンジとで比較すると、動力分割式無段変速機4のユニット変速比がRレンジでDレンジよりも大きく、それゆえ、クリープトルクがRレンジでDレンジよりも大きくなる。そのため、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比である場合、エンジン水温が温度T1と温度T2との間の温度T3よりも低い範囲では、図5に二点鎖線で示されるように、RレンジでのクリープトルクがDレンジでのクリープトルクの最大値を上回る。
そこで、変速機ECU12により、エンジンECU11からエンジン水温が取得されて、エンジン水温が温度T3よりも低い状態(エンジン2のアイドル回転数が温度T3に対応する回転数よりも高い状態)であるか否かが判定される。そして、エンジン水温が温度T3よりも低い状態では、シフトポジションがPポジションまたはDポジションからNポジションを経由してRポジションに切り替えられると、Rレンジが構成されるまでの変速過渡時に、RレンジでのクリープトルクがDレンジでのクリープトルクの最大値に一致するように、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減される。
具体的には、アイドル高回転状態におけるエンジン水温とプーリ比との関係、つまり図5に示されるエンジン水温とプーリ比との関係が二次元マップの形態で変速機ECU12の不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリまたはEEPROMなど)に記憶されている。そして、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成されるまでの変速過渡時に、その二次元マップに基づいて、変速機ECU12により、目標プーリ比がエンジンECU11から取得されるエンジン水温に応じたプーリ比に設定され、プーリ比が目標プーリ比に一致するよう、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54に供給される油圧が制御される。
<作用効果>
このように、エンジン水温が温度T3よりも低い状態では、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成される変速過渡時に、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減される。これにより、エンジン水温が温度T3よりも低い状態において、Rレンジでの車両1の発進時(後進発進時)に、クリープトルクがDレンジでのクリープトルクの最大値に制限される。そのため、車両1の後進発進時において、クリープトルクが過大となることを抑制でき、車両1のブレーキ解除時のクリープによる飛び出し、制動力不足によるグローン音の発生などの懸念を払拭することができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、エンジン水温が温度T3よりも低い場合に、RレンジでのクリープトルクがDレンジでのクリープトルクの最大値に一致するように、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減されるとした。これに限らず、エンジン水温が温度T1よりも低い状態、つまりエンジン2のアイドル回転数が通常回転数よりも高いアイドル高回転状態において、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成されるまでの変速過渡時に、同じエンジン水温で比較したときにRレンジでのクリープトルクがDレンジでのクリープトルクに一致するように、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減されてもよい。この場合、車両1の後進発進時の挙動を前進発進時の挙動と合わせることができる。
たとえば、エンジン2のアイドル回転数は、エンジン水温が温度T1よりも低い場合に限らず、車両1のエアコンディショナのオン/オフによっても変化する。そのため、エアコンディショナがオンされているときには、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成されるまでの変速過渡時に、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減されてもよい。また、エアコンディショナに限らず、オンによってエンジン2のアイドル回転数が上昇する電気負荷(たとえば、ヘッドライトなど)であれば、その電気負荷がオンされている状態において、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成されるまでの変速過渡時に、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減されてもよい。
また、変速機ECU12により、エンジンECU11からエンジン2のアイドル回転数が取得されて、エンジン2のアイドル回転数が所定回転数よりも高い状態において、エンジン2のアイドル回転数から後進発進時のクリープトルクが演算により求められて、そのクリープトルクが一定のトルクに抑制されるように、Rレンジが構成されていない状態からRレンジが構成されるまでの変速過渡時に、無段変速機構43のプーリ比が最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減されてもよい。
また、前下がりの路面における車両1の後進発進時には、無段変速機構43のプーリ比を最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減する制御が実行されなくてもよい。
前述の各センサは、本発明に関連するセンサを例示したものに過ぎず、エンジンECU11および変速機ECU12には、その他のセンサが接続されていてもよい。
エンジンECU11および変速機ECU12の機能の一部または全部は、1つのECUに集約されていてもよい。
また、前述の実施形態では、油圧回路17に機械式オイルポンプが設けられているとしたが、機械式オイルポンプに加えて、電動モータの動力により駆動される電動オイルポンプが油圧回路17に設けられていてもよい。すなわち、本発明は、電動オイルポンプを採用した車両の制御にも適用可能である。
無段変速機の一例として、動力分割式無段変速機4を取り上げたが、本発明は、ベルト式の無段変速機を搭載した車両に広く適用することができる。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 車両
2 エンジン
4 動力分割式無段変速機(無段変速機)
12 変速機ECU(車両用制御装置、判定手段、プーリ比低減手段)
41 インプット軸
42 アウトプット軸
43 無段変速機構
45 遊星歯車機構
53 プライマリプーリ
54 セカンダリプーリ
55 ベルト
81 サンギヤ
82 キャリア
83 リングギヤ
B1 ブレーキ
C2 クラッチ

Claims (1)

  1. エンジンの動力が入力されるインプット軸から動力を出力するアウトプット軸に至る動力伝達経路上に、動力をプライマリプーリおよびセカンダリプーリのプーリ比の変更によって無段階に変速するベルト式の無段変速機構と、キャリア、前記セカンダリプーリと一体回転可能に設けられたサンギヤおよび前記アウトプット軸と一体回転可能に設けられたリングギヤを備える遊星歯車機構とが設けられ、前進レンジで前記キャリアが自由回転状態にされて、前記サンギヤと前記リングギヤとが直結され、後進レンジで前記サンギヤと前記リングギヤとの直結が解除されて、前記キャリアが回転不能に固定される無段変速機を搭載した車両に用いられる制御装置であって、
    前記エンジンのアイドル回転数が所定回転数よりも高いアイドル高回転状態であるか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段によって前記アイドル高回転状態であると判定されている場合、前記後進レンジが構成されていない状態から前記後進レンジが構成される変速過渡時に、前記無段変速機構のプーリ比を最大プーリ比よりも小さいプーリ比に低減させるプーリ比低減手段とを含む、車両用制御装置。
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