<リップル制御方式>
図16は、リップル制御方式(=ヒステリシス制御方式+リップルインジェクション機能)のスイッチング電源回路21(=後出の第1実施形態や第2実施形態と対比される比較例に相当)を概略的に示した図である。スイッチング電源回路21は、降圧型スイッチング電源回路であって、電圧生成回路DW1と、帰還電圧生成回路1と、比較回路2と、ゲートドライバ3と、抵抗Rrと、キャパシタCrとを備えている。また、スイッチング電源回路21には、直流電源4及び負荷5が接続されている。
電圧生成回路DW1は、入力端子T1と、キャパシタC1と、スイッチ素子Q1と、ダイオードD1と、インダクタL1と、キャパシタC2と、出力端子T2とを備えている。電圧生成回路DW1は、直流電源4から供給される入力電圧VinをキャパシタC1にて平滑化し、キャパシタC1によって平滑化された電圧からスイッチ素子Q1のオンオフに基づいてインダクタL1にて発生した電圧をキャパシタC2にて平滑化し、これを出力電圧Voutとして出力端子T2から出力する降圧コンバータとしての機能を有する。ここで、インダクタL1とスイッチ素子Q1のソース端子Sとの接続点のノードをノードN1と称し、スイッチ素子Q1のオンオフによって遷移するノードN1の電圧をスイッチング電圧Vn1と称する。ダイオードD1は、アノードが接地されており、カソードがノードN1に接続されている。
抵抗Rr及びキャパシタCrは、ノードN1から供給されるスイッチング電圧Vn1を積分してリップル電圧VS1を生成する。ここで、抵抗RrとキャパシタCrとの接続点のノードをノードN2と称する。なお、リップル電圧VS1は、スイッチ素子Q1のオンオフによって、例えば0V~12Vで遷移するスイッチング電圧Vn1を積分して生成されるため、この遷移に応じたリップル成分を備えたものとなる。
帰還電圧生成回路1は、分圧抵抗R1及びR2を備えており、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する。ここで、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2との接続点のノードをノードN3と称する。ノードN3とノードN2とは接続されている。このため、ノードN3の帰還電圧Vfbは、出力電圧Voutを分圧抵抗R1と分圧抵抗R2とで分圧した電圧とリップル電圧VS1との加算値となり、リップル電圧VS1のリップル成分を備えたものとなる。
比較回路2は、コンパレータ2aと、基準電圧源2bと、ヒステリシス回路2cと、定電圧源2dと、を備えている。コンパレータ2aの反転入力端子は、ノードN3と接続されて帰還電圧生成回路1から帰還電圧Vfbの供給を受ける。コンパレータ2aの非反転入力端子は、基準電圧源2bから、ヒステリシス回路2cによって決まる基準電圧Vref1の供給を受ける。
コンパレータ2aは、反転入力端子に入力された電圧V-(=帰還電圧Vfb)と非反転入力端子に入力された電圧V+(=基準電圧Vref1)とを比較し、比較結果として比較結果信号Vcоmを出力する。コンパレータ2aは、電圧V-が電圧V+よりも高くなった場合には比較結果として例えば0Vでローレベルの比較結果信号Vcоmを自己の動作時間分の遅延をもって出力し、電圧V-が電圧V+よりも低くなった場合には比較結果として例えば5Vでハイレベルの比較結果信号Vcоmを自己の動作時間分の遅延をもって出力する。
なお、ヒステリシス回路2cは、抵抗R3及びR4を備えている。抵抗R3は、一端がコンパレータ2aの出力端子に接続され、他端がコンパレータ2aの非反転入力端子に接続されている。抵抗R4は、一端が抵抗R3の他端とコンパレータ2aの非反転入力端子に接続されており、他端が基準電圧源2bに接続されている。ヒステリシス回路2cは、基準電圧源2bから供給される電圧から抵抗R4と抵抗R3との抵抗比によって決まる基準電圧Vref1を生成してコンパレータ2aの非反転端子に供給するいわゆるヒステリシス特性を備えている。
定電圧源2dから出力される定電圧はコンパレータ2aの駆動電圧として用いられる。
ゲートドライバ3は、比較回路2から比較結果信号Vcomの供給を受け、比較結果信号Vcomの電圧レベルに応じて異なる電圧レベルを備えた制御信号VG1をスイッチ素子Q1のゲート端子Gに供給する。ゲートドライバ3は、比較結果信号Vcomがハイレベルであった場合には、例えば17[V]でハイレベルの制御信号VG1をスイッチ素子Q1のゲート端子Gに供給し、比較結果信号Vcomがローレベルであった場合には、例えば0[V]でローレベルの制御信号VG1をスイッチ素子Q1のゲート端子Gに供給することでスイッチ素子Q1のオンオフを制御する。これにより、スイッチング電圧Vn1は、例えば0V~12Vの間で遷移する。
図17は、図16に示したスイッチング電源回路21の時間変化における各部の信号波形を示した図である。図17(a)は、電圧V-の信号波形と電圧V+との関係を示した図である。図17(b)は、比較結果信号Vcomの信号波形を示した図である。図17(c)は、電圧Vn1の遷移を示した図である。なお、図17(a)~図17(c)はそれぞれ縦軸が電圧レベルV、横軸が時間tであり、時刻t10~t17は図17(a)~図17(c)の共通の時刻として示している。
時刻t10では、例えば3Vの電圧V-が、例えば2Vの電圧V+よりも高いため、比較回路2からはローレベルの比較結果信号Vcomが出力されている。また、比較結果信号Vcomがローレベルのため、ゲートドライバ3によって制御されるスイッチ素子Q1はオフ状態となっており、スイッチング電圧Vn1は接地電位からダイオードD1による電圧降下分低い電圧レベルとなっている。ここで、図17(c)においては、作図の都合上、スイッチング電圧Vn1が0Vよりも低い場合においては0Vとして示している。
時刻t11で、電圧V-が電圧V+以下になると、比較回路2の動作時間分遅れた時刻t12でハイレベルの比較結果信号Vcomが比較回路2から出力され、ゲートドライバ3に供給される。ここで、ゲートドライバ3は比較回路2に比べて動作速度が遅いことから、スイッチ素子Q1がオンされるタイミングが時刻t13まで遅れる。このため、スイッチング電圧Vn1に基づく電圧V-は、時刻t12から時刻t13の期間A1、すなわち、比較結果信号Vcomがハイレベルとなった後、スイッチ素子Q1がオンするまでの間、例えば1Vまで低下し続けることとなる。
時刻t13で、ゲートドライバ3の動作時間分遅れてハイレベルの制御信号VG1がゲートドライバ3からスイッチ素子Q1のゲート端子Gに供給されると、スイッチ素子Q1がオンする。これにより、入力電圧Vinが直流電源4からスイッチ素子Q1を介してノードN1に供給されてスイッチング電圧Vn1が上昇し、これに伴い出力電圧Voutが上昇する。また、出力電圧Voutの上昇に伴って電圧V-が上昇する。ここで、スイッチング電圧Vn1は、例えば12Vまで上昇する。このとき、電圧V-の電位は、期間A1で低下し続けた分だけ、再び電圧V+を超えるまでに時間を要することとなる。
時刻t14で、電圧V-が電圧V+を超えると、比較回路2の動作時間分遅れた時刻t15でローレベルの比較結果信号Vcomが比較回路2から出力され、ゲートドライバ3に供給される。ここで、ゲートドライバ3は比較回路2に比べて動作速度が遅いことからスイッチ素子Q1がオフされるタイミングが時刻t16まで遅れる。このため、ノードN1の電位に基づく電圧V-の電位は、時刻t15から時刻t16までの期間B1、すなわち、比較結果信号Vcomがローレベルとなった後、スイッチ素子Q1がオフするまでの間、例えば3Vまで上昇し続けることとなる。このとき、電圧V-は、リップル電圧VS1のリップル成分を含むものであるため、大きく上昇する。
時刻t16で、ゲートドライバ3の動作時間分遅れてローレベルの制御信号VG1がゲートドライバ3からスイッチ素子Q1のゲート端子Gに供給され、スイッチ素子Q1がオフする。これにより、直流電源4からノードN1への入力電圧Vinの供給が停止されてスイッチング電圧Vn1が低下し、これに伴い出力電圧Voutが低下する。また、出力電圧Voutの低下に伴って電圧V-が低下する。このとき、電圧V-の電位は、期間B1で上昇し続けた分だけ、再び電圧V+以下となるまでに時間を要することとなる。
以上のように、スイッチング電源回路21は、比較結果信号Vcomの信号レベルが切り替わった後も一定期間に亘り電圧V-が上昇又は低下し続けるので、電圧V-が再び電圧V+となるまでに時間がかかってしまい、ひいては負荷5へ出力電圧Voutを安定して供給することができなくなってしまうという問題があった。特に、電圧V-には、スイッチング電圧Vn1の遷移の影響を受けるリップル電圧VS1のリップル成分が含まれることから、電圧V-の変動がより大きくなってしまい、電圧V-が上昇または低下する際に発生する上記問題がより顕著となっていた。
図18は、スイッチング電源回路21と同様のリップル制御方式を昇圧型スイッチング電源回路に適用した場合の概略構成を示した図である。すなわち、図18に示すスイッチング電源回路22は、昇圧型スイッチング電源回路であって、スイッチング電源回路21の電圧生成回路DW1を電圧生成回路UP1に置換した構成である。
電圧生成回路UP1は、入力端子T1と、キャパシタC1と、スイッチ素子Q1と、ダイオードD1と、インダクタL1と、キャパシタC2と、出力端子T2とを備えている。電圧生成回路UP1は、まずスイッチ素子Q1をオンにして直流電源4から供給され入力端子T1に入力される入力電圧Vinに応じた電流をインダクタL1に流してインダクタL1に磁気エネルギーを蓄えさせた後、スイッチ素子Q1をオフにしてインダクタL1の磁気エネルギーを放出させて高電圧を発生させる。このようにして昇圧された電圧は、キャパシタC2にて平滑化されて出力電圧Voutとして出力端子T2から出力される。なお、ダイオードD1は、スイッチ素子Q1がオフの場合にインダクタL1にて生成されたエネルギーを出力端子T2に安定的に供給する役割を果たしている。
ここで、スイッチング電源回路21及び22の起動について説明する。
スイッチング電源回路21は、起動時に電圧V+が電圧V-よりも大きいため、スイッチ素子Q1がオンになる。その結果、負荷5にエネルギーが供給されて電圧V-が増加する。電圧V-の増加によって、電圧V-が電圧V+より大きくなり、比較結果信号Vcomの信号レベルがハイレベルからローレベルに切り替わる。したがって、スイッチング電源回路21は問題なく動作する。
スイッチング電源回路22も、スイッチング電源回路21と同様に、起動時に電圧V+が電圧V-より大きいため、スイッチ素子Q1がオンになる。しかしながら、スイッチング電源回路22では、スイッチ素子Q1がオンになってもインダクタL1にエネルギーが蓄えられるだけで負荷5にはエネルギーが供給されない。このため、電圧V-が増加しない。したがって、比較結果信号Vcomの信号レベルがハイレベルのままでローレベルに切り替わらない。その結果、スイッチング電源回路22は動作しない。
以下では、上記の状況に鑑み、昇圧型スイッチング電源回路を正常に動作させることができ且つ昇圧型スイッチング電源回路の出力電圧を安定化できるリップル注入回路並びにそれを備えた昇圧型スイッチング電源回路について、新規な実施形態を提案する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る昇圧型スイッチング電源回路11を概略的に示した図である。昇圧型スイッチング電源回路11は、図18に示すスイッチング電源回路22に抵抗Rcomを追加した構成である。抵抗Rcomの一端はコンパレータ2aの出力端子に接続され、抵抗Rcomの他端はコンパレータ2aの反転入力端子に接続される。
抵抗Rr及びキャパシタCrによって構成される積分回路は、インダクタL1とスイッチ素子Q1のドレイン端子との接続ノードに発生するスイッチング電圧Vn1を積分して第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成する。
抵抗Rcom及びキャパシタCrによって構成される積分回路は、比較結果信号Vcomを積分して第2のリップル成分を備えた第2のリップル電圧を生成する。
抵抗Rr及びRcomとキャパシタCrとの接続ノードが分圧抵抗R1と分圧抵抗R2との接続ノードに接続されているので、帰還電圧Vfbには、上記第1のリップル成分と上記第2のリップル成分とが加算される。
昇圧型スイッチング電源回路11では、帰還電圧Vfbに第1のリップル成分を与えて単位時間当たりの電位の変動を大きくしてノイズの影響を低減することができる。また、昇圧型スイッチング電源回路11では、帰還電圧Vfbに第2のリップル成分が加算されているので、比較結果信号Vcomがハイレベルになった後の帰還電圧Vfbの電位の低下を抑制することができるとともに、比較結果信号Vcomがローレベルになった後の帰還電圧Vfbの電位の上昇を抑制することができる。これにより、出力電圧Voutの安定化を図ることができる。
更に、昇圧型スイッチング電源回路11では、抵抗Rcomを経由してコンパレータ2aの出力端子からコンパレータ2aの反転入力端子に電力を供給することができるため、昇圧型スイッチング電源回路11の起動時に電圧V-を増加させることが可能となる。
比較結果信号Vcomがハイレベル(例えば定電圧源2dから出力される定電圧と同一の値)であるとき、スイッチング電圧Vn1は、グランド電位(0V)と略同一の値になる。一方、比較結果信号Vcomがローレベル(例えばグランド電位と同一の値)であるとき、スイッチング電圧Vn1は出力電圧Voutと略同一の値になる。したがって、上記第1のリップル成分の遷移パターンと上記第2のリップル成分の遷移パターンとは互いに逆向きとなる。
上記第1のリップル成分の遷移パターンと上記第2のリップル成分の遷移パターンとは互いに逆向きであるので、所定の条件下で、比較結果信号Vcomがハイレベルであるときに電圧V-が単調増加し、比較結果信号Vcomがローレベルであるときに電圧V-が単調減少する。比較結果信号Vcomがハイレベルであるときに電圧V-が単調増加し且つ比較結果信号Vcomがローレベルであるときに電圧V-が単調減少すれば、比較結果信号Vcomの信号レベルがハイレベルからローレベルに切り替わり且つローレベルからハイレベルに切り替わるので、昇圧型スイッチング電源回路11が正常に動作する。以下では、上記所定の条件について説明する。
帰還電圧Vfbに上記第1のリップル成分と上記第2のリップル成分が加算されている部分に対して、キルヒホッフの法則と重ね合わせの原理を適用すると、電圧V-は以下の3つの方程式(1a)、(1b)、及び、(1c)の解V-a、V-b、V-cの和となる。すなわち、V-=V-a+V-b+V-cが成立する。なお、以下の3つの方程式(1a)、(1b)、及び、(1c)において、R1は分圧抵抗R1の抵抗値を示しており、R2は分圧抵抗R2の抵抗値を示しており、Rrは抵抗Rrの抵抗値を示しており、Rcomは抵抗Rcomの抵抗値を示しており、CrはキャパシタCrの容量を示している。
上記した3つの方程式(1a)、(1b)、及び、(1c)を解くと、定常状態では、比較結果信号Vcomがハイレベルであるときの電圧V-は、以下の数式(2)で表すことができる。また、比較結果信号Vcomがローレベルであるときの電圧V-は、以下の数式(3)で表すことができる。なお、数式(2)及び(3)において、Vccは比較結果信号Vcomのハイレベルを示している。
ただし、スイッチ素子Q1のオンデューティをDとし、スイッチ素子Q1のスイッチング周期をTとすると、上記のτ’、A、及び、Bは、以下の数式(4a)、(4b)、及び、(4c)のように定まる。
定常状態の電圧V-を表す数式(2)及び(3)から、上記所定の条件を満たすためには、下記の不等式(5)を満たせばよいことが分かる。したがって、昇圧型スイッチング電源回路11では、下記の不等式(5)を満たすように、抵抗Rr及びRcomの各抵抗値を設定している。
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る昇圧型スイッチング電源回路12を概略的に示した図である。昇圧型スイッチング電源回路12は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11から抵抗Rrを取り除いた構成である。
図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の抵抗Rrの抵抗値が無限大である場合と等価である。したがって、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12において、比較結果信号Vcomがハイレベルであるときに電圧V-が単調増加し、比較結果信号Vcomがローレベルであるときに電圧V-が単調減少する条件は下記の数式(6a)及び(6b)のようになる。下記の条件は抵抗Rcomの抵抗値がどのような値であっても成立する。
なお、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12では、キャパシタCrが、出力電圧Voutの周波数成分を通過させることにより、第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成する。
<第1実施形態と第2実施形態との比較>
図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11は、抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値より大きくなるように、抵抗Rrの抵抗値を設定することで、電圧V-の変動幅を図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12よりも小さくすることができるので、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12よりも高速で動作することができる。
図3は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11におけるコンパレータ2aの反転入力端子に供給される電圧V-の波形を示すタイムチャートである。
図3は、抵抗Rrの抵抗値を100kΩ、分圧抵抗R1の抵抗値を9kΩ、分圧抵抗R2の抵抗値を1kΩ、抵抗Rcomの抵抗値を1kΩ、出力電圧Voutを20Vとした場合のシミュレーション結果である。すなわち、抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値より大きくなるという条件を満たしている。
図3中の太線は図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の電圧V-であり、図3中の細線は図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12の電圧V-である。図3に示すシミュレーション結果では、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の方が図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12よりも電圧V-の変動幅が小さく変動周期が短いことが分かる。すなわち、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の方が図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12よりも高速で動作している。
ここで、抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値より大きくなるという条件が満たされれば、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の方が図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12よりも電圧V-の変動幅が小さくなる理由について説明する。
図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11における電圧V-の最大値Vmax及び最小値Vminは、以下の数式(7a)及び(7b)で表すことができる。
したがって、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11における電圧V-の変動幅ΔVは、以下の数式(8)で表すことができる。
図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12では抵抗Rrの抵抗値を無限大とすればよいため、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12における電圧V-の変動幅ΔVは以下の数式(9)で表すことができる。
抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値より大きくなる場合(例えば抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値の10倍より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値の10倍より大きくなる場合)、上記した数式(8)の右辺第1項と数式(9)の右辺がほぼ同じ大きさになるので、抵抗Rrを設けることによって、数式(8)の右辺第2項の分だけ電圧V-の変動幅ΔVを小さくすることができる。
したがって、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11では、抵抗Rrの抵抗値が分圧抵抗R2の抵抗値より大きくなり、且つ、抵抗Rrの抵抗値が抵抗Rcomの抵抗値より大きくなるように抵抗Rrの抵抗値を設定することが好ましい。
<電圧V-の追従性>
次に、電圧V-の追従性について検討する。昇圧型スイッチング電源回路では常に出力電圧Voutが入力電圧Vinよりも大きくなる。したがって、出力電圧Voutを基に生成される電圧V-は0Vにならない。このため、電圧V+が変動する信号であって0Vになり得る場合、電圧V+が0V付近であるときに電圧V-の追従性が悪化する。
図4は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11におけるコンパレータ2aの反転入力端子に供給される電圧V-の波形を示すタイムチャートである。図5は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11におけるコンパレータ2aの非反転入力端子に供給される電圧V+の波形を示すタイムチャートである。なお、横軸の時間tは図4及び図5の共通の時間として示している。
図4及び図5は、キャパシタCrの容量を30pF、分圧抵抗R1の抵抗値を2kΩ、基準電圧Vref1を周波数1MHz、オフセット1V、振幅1Vの正弦波とした場合のシミュレーション結果である。図6は図4の部分拡大図であり、図7は図5の部分拡大図である。
図4~図7から明らかな通り、電圧V+が0V付近であるときに電圧V-の電圧V+に対する追従性が悪化する。
ここで、分圧抵抗R1の抵抗値をR、基準電圧Vref1が有する周波数成分のうち最小の周波数をfとした場合に、キャパシタCrの容量Cが、R>(1/2πfC)を満たせば、出力電圧Voutの直流成分がキャパシタCrでカットされ、電圧V-が負の値を取ることができるようになるため、電圧V-の電圧V+に対する追従性が改善する。
図8は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11におけるコンパレータ2aの反転入力端子に供給される電圧V-の波形を示すタイムチャートである。図9は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11におけるコンパレータ2aの非反転入力端子に供給される電圧V+の波形を示すタイムチャートである。なお、横軸の時間tは図8及び図9の共通の時間として示している。
図8及び図9は、キャパシタCrの容量を30pFとし、分圧抵抗R1の抵抗値を10kΩとし、基準電圧Vref1を周波数1MHz、オフセット1V、振幅1Vの正弦波とした場合のシミュレーション結果である。すなわち、上述したR>(1/2πfC)を満たす場合のシミュレーション結果である。図10は図8の部分拡大図であり、図11は図9の部分拡大図である。
図8~図11から明らかな通り、上述したR>(1/2πfC)を満たす場合には電圧V+が0V付近であるときに電圧V-の電圧V+に対する追従性が改善する。
上記の検討では、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11を用いてシミュレーションを行ったが、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12でも、上記と同様の結果を得ることができる。
したがって、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11及び図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12では、分圧抵抗R1の抵抗値をR、基準電圧Vref1が有する周波数成分のうち最小の周波数をfとした場合に、キャパシタCrの容量Cが、R>(1/2πfC)を満たすように設定されることが望ましい。
なお、R>(1/2πfC)を満たすようにキャパシタCrの容量Cを設定することに代えて、又は、R>(1/2πfC)を満たすようにキャパシタCrの容量Cを設定することに加えて、電圧V+(=基準電圧Vref1)として時間的に変動し且つ最小値が0より大きい信号を用いることで、電圧V-の電圧V+に対する追従性を改善してもよい。
ここで、電圧V+(=基準電圧Vref1)として、時間的に変動し且つ最小値が0より大きい信号を用いることによって、電圧V-の電圧V+に対する追従性を改善することができる理由について説明する。上述した定常状態における電圧V-を表す式から明らかな通り、定常状態において電圧V-はネイピア数の指数関数で変化する。したがって、電圧V+の最小値が0Vである場合には、電圧V-の最小値付近で電圧V-と電圧V+が交差する。電圧V-の最小値付近では、ネイピア数の指数関数の性質上、電圧V-の傾き(時間変化率)が小さいので、電圧V-と電圧V+が交差するまでに時間がかかる。一方、電圧V+の最小値が0Vでない場合には、電圧V-の最小値付近以外で電圧V-と電圧V+が交差するので、電圧V-と電圧V+が交差するまでに時間がかからなくなり、電圧V-の電圧V+に対する追従性が改善する。
<電子機器への適用>
図12は、上述した昇圧型スイッチング電源回路11及び12の少なくとも一つを搭載した電子機器の一例(携帯端末(スマートフォン)X)を示す外観図である。ただし、携帯端末Xは、あくまで昇圧型スイッチング電源回路が好適に搭載される電子機器の例示に過ぎず、上述した昇圧型スイッチング電源回路11及び12は、多種多様な電子機器(特に入力変動や負荷変動が大きい電子機器)に搭載することができる。
<変形例>
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
例えば、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11に対して、抵抗Rr及びキャパシタCrによって構成される積分回路の位置を変更し、図13に示す昇圧型スイッチング電源回路13のようにキャパシタCrの一端をダイオードD1と出力端子T2との接続ノードではなくインダクタL1と入力端子T1との接続ノードに接続する構成にしてもよい。図13に示す昇圧型スイッチング電源回路13は、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11と同様の効果を奏する。
例えば、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12に対して、キャパシタCrの位置を変更して、図14に示す昇圧型スイッチング電源回路14のようにキャパシタCrの一端をダイオードD1と出力端子T2との接続ノードではなくインダクタL1と入力端子T1との接続ノードに接続する構成にしてもよい。図14に示す昇圧型スイッチング電源回路14では、キャパシタCrが、入力電圧Vinの周波数成分を通過させ第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成する。図14に示す昇圧型スイッチング電源回路14は、図2に示す昇圧型スイッチング電源回路12と同様の効果を奏する。
また、例えばスイッチ素子Q1の入力容量が小さく、比較結果信号Vcomによって直接スイッチ素子Q1のオンオフを制御できるのであれば、ゲートドライバ3を設けなくてもよい。例えば、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11からゲートドライバ3を取り除いて、図15に示す昇圧型スイッチング電源回路15のようにコンパレータ2aの出力端子がスイッチ素子Q1のゲート端子に直接接続される構成にしてもよい。ここでは、図1に示す昇圧型スイッチング電源回路11の変形例について説明したが、昇圧型スイッチング電源回路12~14に対しても同様の変形を行うことができる。ここで、比較結果信号Vcomによって直接スイッチ素子Q1のオンオフを制御できる具体的な条件について説明する。比較結果信号Vcomを直接スイッチ素子Q1のゲート端子に供給する構成では、スイッチ素子Q1の入力容量をCISS、コンパレータ2aの最大出力電流をIGMAX、比較結果信号VcomのハイレベルをVGHとした場合に、スイッチ素子Q1のゲートの立ち上がり、立ち下がりにかかる最小時間tR、tFは以下の数式(10)で表すことができる。ただし、QGはスイッチ素子Q1のゲート電荷である。
スイッチ素子Q1が問題なくオンオフするためには、スイッチ素子Q1のスイッチング周期内でスイッチ素子Q1のゲートの立ち上がり及び立ち下がりが完了する必要があるため、以下の不等式(11)を満たさなければならない。
したがって、上記不等式を満たすようにスイッチ素子Q1の入力容量CISSを設定すればよい。
上述した昇圧型スイッチング電源回路11~15では、第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成するために用いられるキャパシタと、第2のリップル成分を備えた第2のリップル電圧を生成するために用いられるキャパシタが同一のキャパシタ(キャパシタCr)であったが、別々のキャパシタであってもよい。ただし、同一のキャパシタであった方が回路面積の増大を抑制することができる。
また、上述の昇圧型スイッチング電源回路11~15では、比較回路2がヒステリシス回路2cを備えていたが、比較回路2がヒステリシス回路2cを備えていなくてもよい。比較回路2がヒステリシス回路2cを備えていない場合には、基準電圧源2bをコンパレータ2aの非反転入力端子に直接接続すればよい。
また、上述した昇圧型スイッチング電源回路11~15では、電圧生成回路UP1がダイオードD1を備えていたが、電圧生成回路UP1がダイオードD1の代わりに同期整流素子を備えてもよい。
なお、上述した複数の変形例については、矛盾のない限り適宜組み合わせて実施することができる。
<スペクトラム拡散機能の導入>
次に、スイッチング電源回路におけるスペクトラム拡散機能の導入について、幾つかの構成例を挙げながら検討する。
図19は、電圧モード制御方式の降圧型スイッチング電源回路をベースとしつつ、これにスペクトラム拡散機能を導入した構成(=後出の第3実施形態と対比される第1比較例に相当)を示す図である。
本構成例の降圧型スイッチング電源回路101は、スイッチ出力部110と、帰還電圧生成部120と、エラーアンプ130と、コンパレータ140と、駆動部150と、スペクトラム拡散部160と、を有する。
スイッチ出力部110は、入力電圧Vinを降圧することにより所望の出力電圧Voutを生成して負荷抵抗Roに供給する出力段であり、出力スイッチTR(本図ではNMOSFET)と、ダイオードDと、インダクタLと、キャパシタCi及びCoと、を含む。出力スイッチTRのドレインとキャパシタCiの第1端は、入力電圧Vinの入力端に接続されている。出力スイッチTRのソースは、ダイオードDのカソードとインダクタLの第1端に接続されている。出力スイッチTRのゲートは、駆動部150(=ゲートドライバ)の出力端に接続されている。インダクタLの第2端とキャパシタCoの第1端は、出力電圧Voutの出力端に接続されている。ダイオードDのアノードとキャパシタCi及びCoそれぞれの第2端は、接地端に接続されている。なお、スイッチ出力部110の整流方式は、ダイオード整流方式に限らず、同期整流方式としても構わない。
帰還電圧生成部120は、出力電圧Voutの出力端と接地端との間に直列接続された抵抗Rup及びRdownを用いることにより出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfb(=出力電圧Voutの分圧電圧)を生成する。なお、出力電圧Voutがエラーアンプ130の入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、帰還電圧生成部120を割愛し、出力電圧Voutをエラーアンプ130に直接入力することも可能である。
エラーアンプ130は、オペアンプ131と、抵抗132~134と、キャパシタ135及び136とを含み、帰還電圧Vfbと所定の基準電圧Vrefとの差分に応じた電圧V+を生成する。オペアンプ131の非反転入力端(+)は、基準電圧Vrefの印加端に接続されている。オペアンプ131の反転入力端(-)は、抵抗132を介して帰還電圧Vfbの印加端に接続されている。また、オペアンプ131の反転入力端(-)と出力端との間には、抵抗133とキャパシタ135が並列接続されている。また、オペアンプ131の出力端には、抵抗134とキャパシタ136から成るRCローパスフィルタが接続されており、電圧V+の発振が防止されている。なお、電圧V+は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときに上昇し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときに低下する。
コンパレータ140は、電源電圧Vccの供給を受けて動作し、非反転入力端(+)に入力される電圧V+と反転入力端(-)に入力される電圧V-とを比較して、パルス幅変調された比較結果信号Vcomを生成する。なお、比較結果信号Vcomは、電圧V+が電圧V-よりも高いときにハイレベルとなり、電圧V+が電圧V-よりも低いときにローレベルとなる。
駆動部150は、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutが生成されるように、比較結果信号Vcomに応じて出力スイッチTRのデューティ制御を行う。より具体的に述べると、駆動部150は、比較結果信号Vcomがハイレベルであるときに出力スイッチTRをオンとし、比較結果信号Vcomがローレベルであるときに出力スイッチTRをオフとするように、出力スイッチTRのゲート制御(=出力スイッチTRのゲート・ソース間に印加されるゲート・ソース間電圧Vgsの駆動制御)を行う。
スペクトラム拡散部160は、乱数信号生成回路161と、抵抗Rsと、キャパシタCsと、を含む。
乱数信号生成回路161は、所定の乱数生成方法(詳細については後述)を用いて乱数信号Vspを生成する。
抵抗Rsの第1端は、乱数信号生成回路161の出力端(=乱数信号Vspの出力端)に接続されている。抵抗Rsの第2端とキャパシタCsの第1端は、いずれもコンパレータ70の反転入力端(-)に接続されている。キャパシタCsの第2端は、接地端に接続されている。このように接続された抵抗RsとキャパシタCsは、乱数信号Vspに応じた発振周波数を持つ三角波状の電圧V-を生成する。
図20は、降圧型スイッチング電源回路101におけるゲート・ソース間電圧Vgsのスペクトラム強度(縦軸:強度[dB]、横軸:周波数[Hz])を示した図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときのスペクトラム強度が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び、(d)欄には、それぞれ、電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときのスペクトラム強度が示されている。
本図で示したように、本構成例(=電圧モード制御方式+スペクトラム拡散機能)の降圧型スイッチング電源回路101であれば、電圧V-の発振周波数をスペクトラム拡散することによって、ゲート・ソース間電圧Vgsのスペクトラム強度を低減することができる。ただし、降圧型スイッチング電源回路101には、次の課題がある。
図21は、降圧型スイッチング電源回路101における第1の課題を示す図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときの定常時における出力電圧波形が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び(d)欄には、それぞれ、電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときの定常時における出力電圧波形が示されている。
電圧V-の発振周波数を揺らすと、出力スイッチTRのオンデューティも揺れるが、電圧モード制御方式では、エラーアンプ130による遅れ時間のせいで出力電圧Voutが大きく揺れてしまう。特に、本図で示したように、電圧V-の発振周波数の振り幅が増えるにつれて、出力電圧Voutの変動幅も大きくなる傾向がある。
図22は、降圧型スイッチング電源回路101における第2の課題を示す図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び(d)欄には、それぞれ、電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。
電圧モード制御方式では、原理的に負荷変動時にスイッチングが起きてしまうため、負荷変動時における出力電圧Voutの変動がかなり大きくなる。
図23は、降圧型スイッチング電源回路の別の一構成例(=後出の第3実施形態と対比される第2比較例に相当)を示す回路図である。
本構成例のスイッチング電源回路102では、先に説明した第1比較例(図19)の構成要件のうち、エラーアンプ130を割愛するとともに、抵抗Ra及びRbを別途新たに設けることにより、出力帰還方式が電圧モード制御方式からヒステリシス制御方式に変更されている。以下では、この変更点について重点的な説明を行う。
電圧V-は、スペクトラム拡散部160で生成される乱数信号Vspを積分した信号と帰還電圧Vfbとを足し合わせることで生成され、これがコンパレータ140の反転入力端(-)の入力となる。ただし、帰還電圧Vfbに足し合わせる変動信号は、必ずしも乱数信号Vspに起因した信号に限定されるものではなく、所望のスペクトラム拡散機能を実現することができるのであれば、任意の交流信号を用いることが可能である。また、電圧V+に乱数信号Vspを重畳しても構わない。
抵抗Raの第1端は、コンパレータ140の出力端に接続されている。抵抗Raの第2端と抵抗Rbの第1端は、コンパレータ140の非反転入力端(+)に接続されている。抵抗Rbの第2端は、基準電圧Vrefの印加端に接続されている。このように接続された抵抗Ra及びRbにより、コンパレータ140の非反転入力端(+)に入力される電圧V+には、所定のヒステリシス特性が付与される。すなわち、コンパレータ140と抵抗Ra及びRbを一まとめにして、ヒステリシスコンパレータと理解することもできる。
本構成例(=ヒステリシス制御方式+スペクトラム拡散機能)の降圧型スイッチング電源回路102であれば、エラーアンプ130を割愛した分だけ、出力電圧Voutの応答性を高めることができる。ただし、降圧型スイッチング電源回路102には、次のような課題がある。
図24は、降圧型スイッチング電源回路102における課題を示す図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び(d)欄には、それぞれ電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。
本図で示すように、降圧型スイッチング電源回路102では、出力電圧Voutの揺れが非常に大きくなる。以下、その理由について述べる。
図25は、降圧型スイッチング電源回路102における一定周波数(1MHz)での電圧V+(太線)及び電圧V-(細線)を示す図である。降圧型スイッチング電源回路102では、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbに乱数信号Vspのみを重畳して電圧V-が生成されており、乱数信号Vsp以外の交流信号は存在しない。そのため、本図で示したように、出力電圧Voutの揺れに沿って電圧V-が変動し、電圧V-の変動を受けて出力電圧Voutがさらに変化するという悪循環により、出力電圧Voutが大きく揺れてしまうので、インダクタLやキャパシタCoを大きくしなければならなくなる。
以下では、上記の不具合を解消することのできる新規な実施形態について提案する。
<第3実施形態(リップル制御方式+スペクトラム拡散機能)>
図26は、第3実施形態に係る降圧型スイッチング電源回路103を概略的に示した図である。本実施形態の降圧型スイッチング電源回路103は、先の第2比較例(図23)で示した構成要素に加えて、リップル注入部170をさらに有する。なお、リップル注入部170は、抵抗Rr及びRcomとキャパシタCrを含む。
抵抗Rrの第1端は、インダクタLの第1端に接続されている。キャパシタCrの第1端は、インダクタLの第2端に接続されている。抵抗Rr及びキャパシタCrそれぞれの第2端は、帰還電圧Vfbの印加端(=抵抗Rup及びRdown相互間の接続ノード)に接続されている。抵抗Rcomの第1端は、コンパレータ140の出力端に接続されている。抵抗Rcomの第2端は、コンパレータの反転入力端(-)に接続されている。
抵抗Rr及びキャパシタCrによって構成される第1積分回路は、インダクタLの第1端と出力スイッチTRのソースとの接続ノードに発生するスイッチング電圧Vsを積分して第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成する。一方、抵抗Rcom及びキャパシタCrによって構成される第2積分回路は、比較結果信号Vcomを積分して第2のリップル成分を備えた第2のリップル電圧を生成する。従って、帰還電圧Vfb(延いては電圧V-)には、第1のリップル成分と第2のリップル成分が加算される。
本実施形態によれば、電圧V-に第1のリップル成分を与えて単位時間当たりの電位変動(=リップルの傾き)を大きくすることができるので、ノイズの影響を低減することが可能となる。また、電圧V-に第2のリップル成分を与えて比較結果信号Vcomの立上り/立下りに伴う電圧V-の電位変動を抑制することができるので、出力電圧Voutの安定化を図ることが可能となる。さらに、抵抗Rcomを経由してコンパレータ140の出力端からコンパレータ140の反転入力端(-)に電力を供給することができるので、起動時に電圧V-を上昇させることも可能となる。これらの作用効果については、先の第1実施形態(図1)でも述べた通りなので、これ以上の説明は割愛する。
図27は、降圧型スイッチング電源回路103における定常時の出力電圧波形を示す図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときの定常時における出力電圧波形が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び、(d)欄には、それぞれ、電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときの定常時における出力電圧波形が示されている。
先の図21と対比すれば明らかなように、本実施形態によれば、電圧V-の発振周波数の振り幅が増えても、出力電圧Voutの変動幅には殆ど影響しないことが分かる。これは、本実施形態のリップル制御方式(=ヒステリシス制御方式+リップルインジェクション機能)では、電圧モード制御方式と異なり、位相補償器による遅れ時間が存在せず、出力電圧Voutの変動に対する応答性が高いことに起因する。
図28は、降圧型スイッチング電源回路103における負荷変動時の出力波形を示す図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び(d)欄には、それぞれ電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときの負荷変動時における出力電圧変動が示されている。
先の図22と対比すれば明らかなように、本実施形態によれば、電圧モード制御方式の第1比較例と比べて、負荷変動時における出力電圧Voutの変動を1/5程度に抑えられている。
図29は、降圧型スイッチング電源回路103におけるゲート・ソース間電圧Vgsのスペクトラム強度(縦軸:強度[dB]、横軸:周波数[Hz])を示した図である。なお、本図の(a)欄には、電圧V-が一定周波数(1MHz)であるときのスペクトラム強度が示されている。一方、(b)欄、(c)欄、及び、(d)欄には、それぞれ、電圧V-がスペクトラム拡散(1MHz±2%、5%、10%)されているときのスペクトラム強度が示されている。
先の図20と対比すれば明らかなように、本実施形態によれば、スペクトラム拡散部160の働きにより、電圧モード制御方式の第1比較例と同程度まで遜色なく、ゲート・ソース間電圧Vgsのスペクトラム強度が低減されている。
図30は、降圧型スイッチング電源回路103における一定周波数(1MHz)での電圧V+(太線)及び電圧V-(細線)を示す図である。先の図25と対比すれば明らかなように、本実施形態によれば、リップル注入部170の働きにより、出力電圧Voutの揺れに沿って電圧V-が変動することがなくなるので、出力電圧Voutの揺れも小さくなっている。
<動作条件>
次に、電圧V-のスペクトラム拡散を行いつつ、リップル制御方式(=ヒステリシス制御方式+リップルインジェクション機能)による電力変換動作を正しく行うための動作条件について検討する。
まず、定常時(=負荷変動が生じていないとき)に出力スイッチTRのオン/オフ動作を行うためには、電圧V-の変動幅をΔV-とし、電圧V+のヒステリシス幅をΔV+として、定常時に|ΔV-|>|ΔV+|(以下では条件式Xと呼ぶ)を満たす必要がある。
また、定常時におけるスペクトラム拡散機能を有効とするためには、乱数信号Vspに起因するリップル成分の傾きをαとし、乱数信号Vsp以外に起因するリップル成分(=リップル注入部170に起因するリップル成分)の傾きをβとして、|α|>|β|(以下では条件式Y1と呼ぶ)を満たすことが望ましい。
ただし、上記の条件式Y1を満たさない場合でも、|α|≦|β|≦10×|α|(以下では条件式Y2と呼ぶ)を満たせば、定常時におけるスペクトラム拡散機能が有効となり得る(完全に無効とはならない)。この点については後ほど詳述する。
さらに、負荷変動時に出力スイッチTRのオン/オフ動作を一時停止して出力変動を抑えるためには、出力電圧Voutに起因するリップル成分の傾きをγとし、出力電圧Vout以外に起因するリップル成分の傾きをδとして、負荷変動時に|γ|>|δ|(以下では条件式Zと呼ぶ)を満たすことが望ましい。
以下では、上記の条件式X、条件式Y1及びY2、並びに、条件式Zの導出方法について具体的に説明する。
図31は、定常時における電圧V-の導出方法(降圧型)を説明するための図である。定常時には出力電圧Voutがほぼ一定となるので、出力電圧Voutに起因するリップル成分を無視することができる。従って、本図中の(a)欄~(c)欄で示された等価回路のノード電圧V-a(t)、V-b(t)、V-c(t)を重ね合わせることで、定常時における電圧V-のリップル成分(=V-a(t)+V-b(t)+V-c(t))を導出することができる。
図32は、負荷変動時における電圧V-の導出方法を説明するための図である。負荷変動時には、定常時における電圧V-のリップル成分(図31)に、出力電圧Voutに起因するリップル成分(=V-d(t))が加わる。なお、リップル成分V-d(t)は、本図中の(d)欄で示した等価回路のノード電圧V-d(t)として考えればよい。
また、出力電圧Voutは、負荷変動を想定して、本図中の(e)欄で示した等価回路から導出するとよい。なお、Vout0は負荷変動前の出力電圧Voutを示しており、Ro’は負荷変動後の負荷抵抗値を示している。負荷変動直後の時刻をt=0とし、IL(0)=Vout0/Roとして、出力電圧Voutを導出すればよい。
上記重ね合わせの原理から導出される先出の条件式X、条件式Y1及びY2、並びに、条件式Zは、それぞれ、次の数式(12)、数式(13a)及び(13b)、並びに、数式(14)として書き表すことができる。
また、上記数式中のパラメータについては、以下の数式(15a)~(15l)で示す通りである。
<負荷変動時の振る舞い>
図33は、負荷変動時におけるゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタ電流IL、並びに、電圧V+及びV-の挙動を示す図である。なお、本図では、時刻t1において、負荷変動(負荷電流が増加する場合を想定)が生じているものとする。
先出の条件式Zが満たされているときには、負荷変動の直後(時刻t1~t2)にV-<V+となる。従って、出力スイッチTRのスイッチングが一時的に停止された状態(=出力スイッチTRをオンし続ける状態)となるので、出力電圧Voutの瞬時低下を抑えることが可能となる。図33では負荷電流が増加する場合を想定しているが、負荷電流が減少するような負荷変動が発生した場合も同様である。すなわち、条件式Zが満たされれば、負荷変動直後にV->V+となり、出力スイッチTRのスイッチングが一時的に停止された状態(=出力スイッチTRをオフし続ける状態)となるので、出力電圧Voutの瞬時上昇を抑えることが可能となる。
このように、負荷変動により負荷電流が増加した場合には、V-<V+となって出力スイッチTRをオンし続けることが望ましく、逆に、負荷変動により負荷電流が減少した場合には、V->V+となって出力スイッチTRをオフし続けることが望ましい。上記のスイッチング停止動作は条件式Zを満たすこと以外にも、負荷変動時に|ΔV-|<|ΔV+|を満たすことによっても実現することができる。
なお、上記した負荷変動時の振る舞いに着目すると、降圧型スイッチング電源回路103は、出力スイッチTRを駆動して、入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成し、負荷Roに供給するものであって、出力電圧Voutの変動幅が定常時の変動幅よりも増加した場合には、負荷Roに流れる電流が増加する負荷変動時にはキャパシタCoに電流が流れるように、又は、負荷Roに流れる電流が減少する負荷変動時にはキャパシタCoに電流が流れないように、出力スイッチTRを導通状態または遮断状態で所定の時間(例えば、定常時のスイッチング期間の2倍以上の期間)に亘って停止する機能を備えているものとして理解することができる。
<スペクトラム拡散機能が有効となる条件>
図34は、スペクトラム拡散機能が有効となる条件を示す図であり、上から順に、電圧V-、比較結果信号Vcom、及び、乱数信号Vspが描写されている。
先出の条件式Y1(=数式(13a)を参照)を満たせば、スペクトラム拡散機能が確実に有効となる。ただし、条件式Y1を満たさない場合であっても、条件式Y2(=数式(13b)を参照)を満たせば、スペクトラム拡散機能が有効となり得る。以下、本図に即してその理由を説明する。
乱数信号Vspがローレベルであるときには、これに起因するリップル成分の傾きαが負となる。一方、乱数信号Vspがハイレベルであるときには、これに起因するリップル成分の傾きαが正となる。
同様に、比較結果信号Vcomがローレベルであるときには、これに起因するリップル成分の傾きβが負となる。一方、比較結果信号Vcomがハイレベルであるときには、これに起因するリップル成分の傾きβが正となる。
ここで、電圧V-に着目すると、(Vsp,Vcom)=(H,H)であるときには、傾きα及びβが共に正となるので、電圧V-が上昇する。逆に、(Vsp,Vcom)=(L,L)であるときには、傾きα及びβが共に負となるので、電圧V-が低下する。また、(Vsp,Vcom)=(H,L)または(L,H)であるときには、傾きα及びβが互いに打ち消し合う。特に、傾きα及びβが同程度ならば、電圧V-が平坦(またはほぼ平坦)となる。
すなわち、α>βであるときはもちろん、これが満たされない場合でも、傾きα及びβが同程度(例えば|α|≦|β|≦10×|α|)であるならば、電圧V-の周波数が乱数信号Vspの周波数と一致して変動するので、スペクトラム拡散機能が有効となる。
<昇圧型への適用>
なお、第3実施形態(図26)では、降圧型スイッチング電源回路103にスペクトラム拡散部160を導入した例を挙げたが、その導入先はこれに限定されるものではない。
例えば、図35の昇圧型スイッチング電源回路11Aとして示したように、図1の昇圧型スイッチング電源回路11にスペクトラム拡散部160を導入してもよい。
また、図36の昇圧型スイッチング電源回路12Aとして示したように、図2の昇圧型スイッチング電源回路12にスペクトラム拡散部160を導入してもよい。
また、図37の昇圧型スイッチング電源回路15Aとして示したように、図15の昇圧型スイッチング電源回路15にスペクトラム拡散部160を導入することも可能である。なお、昇圧型スイッチング電源回路15Aでは、出力スイッチTRとして、GaN-HEMT[High electron mobility transistor]などを好適に用いることができる。
その他、図13の昇圧型スイッチング電源回路13や図14の昇圧型スイッチング電源回路14をベースとしつつ、これにスペクトラム拡散部160を導入することもできる。
なお、昇圧型スイッチング電源回路においても、電圧V-のスペクトラム拡散を行いつつ、リップル制御方式(=ヒステリシス制御方式+リップルインジェクション機能)による電力変換動作を正しく行うための動作条件は、先と同様であり、先出の条件式X、条件式Y1(またはY2)、並びに、条件式Z自体に変更はない。
ただし、出力形式の変更(降圧型→昇圧型)に伴い、定常時における電圧V-のリップル成分(=V-a(t)+V-b(t)+V-c(t))を導出するための等価回路が若干変更されている。以下、その変更点について述べる。
図38は、定常時における電圧V-の導出方法(昇圧型)を説明するための図である。本図中の(a)欄~(c)欄で示された等価回路は、基本的に図31と同様である。ただし、(a)欄の等価回路では、スイッチング電圧が「Vs」ではなく「Vn1」となるので、その変動範囲も「0⇔Vin」から「0⇔Vout」に変更されている。
上記の変更に伴い、先出の条件式X、条件式Y1及びY2、並びに、条件式Zは、それぞれ、次の数式(16)、数式(17a)及び(17b)、並びに、数式(18)として書き表すことができる。
なお、上記数式中のパラメータについては、先と同様、数式(15a)~(15l)で示す通りである。
<乱数生成方法>
次に、乱数信号生成回路160における乱数生成方法について説明する。図39は、乱数生成方法の一例を示すフローチャートである。本フローが開始されると、まず、ステップS41において、変数kの初期設定(k=1)が行われる。
次に、ステップS42では、入力信号Pkの初期値(=P1)として、0以外の実数Sが設定される。なお、乱数の種となる実数Sとしては、例えば、無理数(または計算機の有効桁数以上の桁数に亘って循環しない小数部を持つ有理数)や素数が好適である。
次に、ステップS43では、入力信号Pkに所定の乗算処理(=係数rの乗算処理)が施されて乗算信号rPkが算出される。
次に、ステップS44では、乗算信号rPkに所定の条件判定処理が施されて入力信号Pkの更新値(=次回の入力信号Pk+1)が設定される。
その後、ステップS45では、変数kが一つインクリメントされて、フローがステップS43に戻される。以降も、ステップS43~S45が繰り返されることにより、乗算信号rPkが順次生成され、その一部または全部、若しくは、これに所定の演算処理を施したものが乱数信号として出力される。例えば、乗算信号rPkが2進数で表記されるデジタル信号である場合には、その任意のビットを乱数信号として利用することができる。
<条件判定処理>
次に、ステップS44における条件判定処理のアルゴリズムについて説明する。上記の条件判定処理では、乗算信号rPkの信号値とL個の閾値K1~KL(ただしLは2以上の整数でありK1<K2<…<KL)がそれぞれ比較され、次の数式(19)0~(19)Lに照らし合わせて、入力信号Pkの更新値(=次回の入力信号Pk+1)が設定される。
なお、実数Sを2進数で表記されるNビット(例えばN=19)のデジタル信号S(2)としたときには、入力信号Pk及び乗算信号rPkもデジタル信号となる。このとき、閾値K1~KLをそれぞれ2N-L+2~2N+1に設定すると、先の数式(8)0~(8)Lは、次の数式(20)0~(20)Lとして書き改めることができる。
このように、ステップS44における条件判定処理では、乗算信号rPkの信号値と複数の閾値K1~KLとがそれぞれ比較され、乗算信号の信号値rPk、若しくは、乗算信号rPkの信号値から複数の閾値K1~KLのいずれかを差し引いた差分値が入力信号Pkの更新値(=次回の入力信号Pk+1)として設定される。
<乱数信号生成回路>
図40は、乱数信号生成回路の一構成例を示す図である。本構成例の乱数信号生成回路200は、乱数信号生成部200Aと、パルス信号生成部200Bと、を有するパルス発振器の一種であり、図26等の乱数信号生成回路161として用いられる。
乱数信号生成部200Aは、先に説明した乱数信号生成方法を用いて乱数信号(=乗算信号rPk)を生成する回路ブロックであり、初期値設定部210と、乗算部220と、条件判定部230と、を含む。
パルス信号生成部200Bは、乗算信号rPkに応じた発振周波数のパルス信号を生成し、これを乱数信号Vsp(=スペクトラム拡散信号)として出力する回路ブロックであり、カウンタ240と、周波数決定部250と、を含む。
初期値設定部210は、入力信号Pkの初期値(=P1)として、0以外の実数Sを設定する。
乗算部220は、入力信号Pkに所定の乗算処理(=係数rの乗算処理)を施して乗算信号rPkを算出する。
条件判定部230は、乗算信号rPkに所定の条件判定処理を施して入力信号Pkの更新値(=次回の入力信号Pk+1)を設定する。
なお、乱数信号生成部200Aでは、上記の乗算処理と条件判定処理が繰り返されることにより、乗算信号rPkが順次生成され、その一部または全部、若しくは、これに所定の演算処理を施したものが乱数信号として出力される。例えば、乗算信号rPkが2進数で表記されるデジタル信号である場合には、その任意のビットを乱数信号として利用することができる。この点については、先述の通りである。
カウンタ240は、クロック信号PWMのパルスカウント値M1を出力する。
周波数決定部250は、パルスカウント値M1と乱数信号rPkに応じた目標カウント値M2とを比較して、乱数信号Vspの発振周波数を決定する。
以下では、S=17d(=000…10001b),r=3,L=2,N=19,K1=219,K2=220である場合を例に挙げて、上記各部の構成及び動作を説明する。ただし、これとは異なる条件を用いることも任意である。