JP7121619B2 - 複合不織布を用いたウエットティシューおよび複合不織布の製造方法 - Google Patents

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本発明は、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとからなる複合不織布を用いて製作されるウエットティシューに関する。
対人や対物向けに様々な仕様のウエットティシューが市販されている。ウエットティシュー用の原反については、親水性が高く薬液を保持できること、ウエット状態でも十分な強度を有すること、更には風合いが良いこと等が一般的に求められており、例えばレーヨン繊維と熱融着繊維および合成繊維を配合した複合型の不織布が従来、広く使用されてきた。
そして、近年にあって、必要とする強度やコスト低減を重視することから、特許文献1などで開示する技術で製造されるスパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとからなる複合不織布を原反として使用するウエットティシューも提供されるようになっている。
特許第2533260号公報
しかしながら、レーヨン繊維を含む複合不織布は長繊維を水流交絡しているため、十分な熱融着性繊維を配合しないと、伸びやすく、強度的にも低くなる傾向があり、高額なレーヨン繊維と熱融着繊維を多く配合するため、強度、風合いに比例してコストが高額となる問題がある。
これに対して、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとによる複合不織布は製造コストを抑制でき、スパンボンド不織布による強度を確保し易いので好ましいが、一方、スパンボンド不織布は親油性繊維であるため、保水性が期待できない。これをウエットティシューの原反として使用する場合に、ウエットティシューに基本的に求められる、保水性や湿潤強度と共に、外観、風合い、拭取り性などについて改善の余地がある。更に、リント(発塵)の発生が少ないウエットティシューに設計できれば、より好ましい製品としてユーザに提供できる。
よって、本発明の目的は、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとによる複合不織布を原反として使用して製造コストを抑え、保水性や湿潤強度と共に、外観、風合い、拭取り性なども改善されているウエットティシューを提供することにある。
上記目的は、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとを水流交絡して得た複合不織布を原反としているウエットティシューにおいて、前記パルプ繊維ウエブは坪量15g/m以上、且つ、前記スパンボンド不織布は坪量8g/m以上であって、スパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブの質量構成比が15/85~50/50(wt%)であり、前記スパンボンド不織布を構成している樹脂繊維の繊維径は0.6~5.6デシテックスであり、前記スパンボンド不織布は繊維流れ方向に対して直角な横方向に0.5Nの負荷を作用させたときの前記横方向における伸び率が5%以下に形成してあり、更に、JISで規定されている湿潤テーバ試験で20回以上の耐摩耗性を備えている、ことを特徴とするウエットティシューにより達成できる。
そして、前記スパンボンド不織布上に前記パルプ繊維ウエブが積層されている形態である前記複合不織布の、前記パルプ繊維ウエブ側にエンボス処理が施されているのがより好ましい。
また、上記目的は、上記記載のウエットティシューの原反として用いる複合不織布を製造する方法であって、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとを水流交絡処理する水流交絡工程を少なくも含み、前記水流交絡工程でウォータジェットを噴射するウォータジェットノズルの穴直径φが0.06~0.15mmであり、前記ウォータジェットノズルが不織布搬送方向に沿って3段以上で配置され、前記ウォータジェットの打込み圧が10MPa以上であること特徴とする複合不織布の製造方法によっても達成される。
本発明によると、所定条件を満たすようにして製造した、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとによる複合不織布を原反として用いることで、低コストで、保水性や湿潤強度と共に、外観、風合い、拭き取り性に優れたウエットティシュー提供できる。そして、パルプ繊維ウエブ側にエンボス処理を施した複合不織布を原反としてウエットティシューを製造した場合には、リントの発生を抑え、更に風合い、拭き取り性を改善できる。
本発明のウエットティシューの原反とする複合不織布を製造する装置について示した図である。 本発明に係るウエットティシューについて示した図である。
本発明に係るウエットティシューは、所定の条件で形成してある複合不織布を原反として使用することにより、製造コストを抑制し、ウエットティシューに求められる保水性と湿潤強度、外観、風合い、拭き取り性等が改善されているものである。先ず、ウエットティシューの原反とするのが好適な複合不織布を製造するのに好適な装置とその工程について、図1に基づいて説明する。
図1に示す不織布製造装置1は、上流側にエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、サクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される不織布WPを巻き取るための巻取装置8が更に設けてある。
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、従来のスパンボンド不織布よりも、横方向における伸び率を抑制してあるスパンボンド不織布SWがロール状とされ、スパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。ここでは、前述したスパンボンド不織布SWの繊維流れ方向(縦方向)MDと本製造装置1のウエブ搬送方向TDとは一致している。
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
なお、図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mm、より好ましくは0.10~0.12mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば1~30MPaであり、より具体的に10MPa以上で搬送方向TDに沿ってウォータジェットノズルを3段以上に設定しておくのが好ましい。
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体
化が促進される。
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
そこで、図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはウエブに残留する水分を吸引除去し、その後に乾燥を行って、不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水、乾燥を行うと効率よく不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した不織布を製造できるので、嵩高感のある製品に仕上げることができる。
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の不織布を脱水する。乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合不織布WPは巻取装置8のロール81に巻取られて一連の工程が完了する。
以上のように製造される複合不織布WPは、以下のような条件を満たすようにして製造されている。これにより、ウエットティシューに好適な原反として使用できる。
まず、上記パルプ繊維ウエブPFWについては坪量15g/m以上とされている。これによりウエットティシューの原反として用いる複合不織布に求められる十分な保水性能力が確保される。
そして、上記スパンボンド不織布SWについては坪量8g/m以上とされている。これによりウエットティシューの原反として用いる複合不織布に求められる十分な湿潤強度を確保できる。
なお、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとの質量構成比である、スパンボンド不織布/前記パルプ繊維ウエブは15/85~50/50(wt%)の範囲にしておくのが好ましい。
また、スパンボンド不織布SWを構成している繊維については、繊維径0.6~5.6デシテックス(dtex)とするのが好ましい。これにより、ウエットティシューの原反として用いる複合不織布に求められる風合い(手触り感や肌触り感)の改善を期待することができる。
更に、スパンボンド不織布について繊維流れ方向(搬送方向TDと平行)と直角な横方向CDでの0.5N低負荷時での伸び率が5%以下であるものを採用するのが好ましい。これにより、ウエットティシューの原反として用いる複合不織布に求められる形状安定性の改善を図ることができる。
紡糸された直後のスパンボンド繊維は繊維の流れ方向(縦方向)MDでは伸び率が小さく、強度が高く、これに対して横方向CDでは伸び率が大きく、強度が低いという、製造由来の特性がある。これでは縦横方向での強度がアンバランスになるので、結果としてウエットティシューの強度低下を招くことになる。そこで、上記複合不織布におけるスパンボンド不織布では、低負荷時(0.5N)における、横方向での伸び率を5%以下、より好ましくは2%以下であるものが好ましい。これはスパンボンド不織布を製造する際に実施される熱融着処理で、熱融着点の配置を調整することで横方向の伸び率を抑制したスパンボンド不織布を得ることができる。
また、上記複合不織布WPは、JISに規定された湿潤(WET)テーバ試験による回数が20回以上を満たすように製造されている。これによりウエットティシューに必要な耐摩耗性が確保されている。
湿潤テーバ試験は、JIS L 1096に規定されたテーバ試験機を用いて、回転する水平円盤に水で湿潤させた試料を取り付けて、砥粒結合体で成形された一対の摩擦輪(H-18)を規定荷重(4.9N)のもとに加えて、耐摩耗性を調べた。判定は、摩耗によるシートの穴が13mmとなるまでの円盤の回転数で判定した。この回転数が20回以上となる複合不織布WPをウエットティシューの原反とした。
更に、複合不織布WPの片面側にエンボス処理を施すことによって、リントの発生を抑え、拭取り性や風合いも改善する不織布を製造できる。例えば、図1において矢印ARで示す、乾燥装置7と巻取装置8との間にエンボス装置EAを追加配置することでエンボス処理を行うことができる。
エンボス装置EAは、例えばパルプ繊維ウエブPFW側に接触するエンボスロールと反対側のプレーンロールとを備えている。エンボスロールの外周面にはパルプ繊維ウエブPFWに形成する凹凸部パターンが刻設してあり、内部にヒータなどの加熱手段が配設されている。一方、プレーンロールは外周面が平坦に形成され、エンボスロールと同様に加熱手段を配設している。このようにパルプ繊維ウエブ側への片面エンボス処理を施すようにすると、前述したリントの発生を抑止でき、拭取り性や風合いが向上した不織布を形成できる。
望ましくはエンボスロール、プレーンロール間は20~70kgf/cmの線圧で圧接し、エンボスロールの凹凸パターンについて、ドット要素を点在したパターンで押し込み、その押込み面積率を5~17%とするのが望ましい。或いは、ドット要素に替えて、中抜き環形状要素を点在したパターンで押し込み、その押込み面積率を10~30%かつ環状パターンの線幅を0.5~2.0mmとするのが望ましい。
なお、上述したように図1の不織布製造装置に追加でエンボス装置EAを設けるのがコスト面からは好ましいが、いったん複合不織布WPをロール81に巻き取り、別に設けたエンボス装置EAでオフラインによりエンボス処理するようにしてもよい。
上記本発明に係る複合不織布WPでは、例えば、パルプ平均繊維長1.0~5.0mmであるパルプを用いて、パルプ繊維ウエブを形成するのが好ましい。具体的には、パルプ繊維ウエブをラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の繊維を用いて形成するのが好ましい。いずれか1つのパルプ繊維によるパルプ繊維ウエブとしてもよいし、2つ以上を混合して形成したパルプ繊維ウエブとしてもよい。
また、スパンボンド不織布を構成する合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から選択することができ、ポリプロピレンを用いるのが好ましい。
図2は、本発明に係るウエットティシューついて示した図であり、図2(a)はウエットティシューTSを包装して製品パッケージPGに整えたときの外観について示した斜視図、図2(b)は製品パッケージPG内のウエットティシューTSの様子を確認できるように示した側部断面構成図である。図2は開閉自在である蓋部HNを開けた状態を示している。
(実施例)
図2に示したウエットティシューは前述した複合不織布を原反として使用して、例えば以下で示す薬液等を用いて製造される。なお、複合不織布を原反として準備し、これを折り畳む工程、薬液を不織布に含侵させる工程、切断する工程などを経て、最後に包装して図2に示す製品パッケージPGの形態に仕上げるウエットティシューの製造装置は公知のものを使用すればよい。
以下では、使用する薬液等について具体的に例示する。
薬液を原反の乾燥重量に対して、200~500wt%以下の割合で含浸させてウエットティシューを製造した。原反の保水量(TWA:Total Water Absorbency)は、8.0g/g以上14.0g/g以下であった。
上記TWAは次のように求めた。まず、不織布を75×75mmの正方形に切断して試料片を作製し、乾燥重量を測定する。次に、この試料片を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態の容器中で、試料片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(100%RH)で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定する。水切りには、ペーパータオルを3×38mmにカットして使用する。そして、測定値を試料片1g当たりの保水量(g/g)に換算した。
薬液は、用途に応じて順次設定すれば良いが、長期間安定に保持するための防腐剤、拭取り時に肌を保護するための保湿剤を含むことが好ましい。
防腐剤としては、安息香酸及びその塩類、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸及びその塩類、ソルヒビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、イソプロピルメチフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン等が配合できる。これらの防腐剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、防腐剤の配合量は、薬液に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
保湿剤としては、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の有機酸類、尿素、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエステル等のアルキレングリコール類、また、油溶性成分のエモリエント剤として作用する、天然油脂、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリン、ラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ等のラノリン類、リン脂質、セラミド類、さらにアロエ抽出エキス等の天然保湿成分等が配合できる。これらの保湿剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、保湿剤の配合量は、薬液に対して、0.0001質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
この他、薬液には、医薬部外品及び化粧品等に一般的に用いられる各種成分、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、ゲル化剤、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、金属封鎖剤、界面活性剤、安定化剤、変色防止剤、香料、着色剤等を適宜に配合してもよい。
以上で説明したように製造されるウエットティシューは、パルプ繊維ウエブおよびスパンボンド不織布が所定坪量に設定されていると共に、これらが所定の質量構成比とされ、またスパンボンドの繊維径が所定範囲にあり、且つ、横方向の伸び率が低く抑えられ、所定のテーバ試験による耐摩耗性が所定以上であるという条件を満している複合不織布を、原反として採用することによって、製造コストを抑え、保水性と湿潤強度、外観、風合い、拭き取り性に優れたウエットティシュー製品としてユーザに提供できる。
そして、パルプ繊維ウエブ側にエンボス処理を更に施してある、複合不織布の原反を採用すればリントの発生を抑え、更に風合や拭取り性を向上させたウエットティシューとして提供できる。
また、図1に示した製造装置によれば、ウエットティシュー用の原反となる複合不織布を効率よく、低コストにて製造できる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
1 不織布製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
MD 繊維流れ方向(縦方向)
CD 横方向
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合不織布
TD 搬送方向

Claims (3)

  1. スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとを水流交絡して得た複合不織布を原反としているウエットティシューにおいて、
    前記パルプ繊維ウエブは坪量15g/m以上、且つ、前記スパンボンド不織布は坪量8g/m以上であって、スパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブの質量構成比が15/85~50/50(wt%)であり、
    前記スパンボンド不織布を構成している樹脂繊維の繊維径は0.6~5.6デシテックスであり、
    前記スパンボンド不織布は繊維流れ方向に対して直角な横方向に0.5Nの負荷を作用させたときの前記横方向における伸び率が5%以下に形成してあり、
    更に、JISで規定されている湿潤テーバ試験で20回以上の耐摩耗性を備えている、ことを特徴とするウエットティシュー。
  2. 前記スパンボンド不織布上に前記パルプ繊維ウエブが積層されている形態である前記複合不織布の、前記パルプ繊維ウエブ側にエンボス処理が施されている、ことを特徴とする請求項1に記載のウエットティシュー。
  3. 請求項1または2に記載のウエットティシューの原反として用いる複合不織布を製造する方法であって、
    前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとを水流交絡処理する水流交絡工程を少なくも含み、
    前記水流交絡工程でウォータジェットを噴射するウォータジェットノズルの穴直径φが0.06~0.15mmであり、
    前記ウォータジェットノズルが不織布搬送方向に沿って3段以上で配置され、前記ウォータジェットの打込み圧が10MPa以上である、こと特徴とする複合不織布の製造方法。
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