JP7117426B1 - 冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、上質なマグロでも、マグロ独特の風味、色、食感、後味のよさ、おいしさを十分に保ちながらマグロ刺身を冷凍することができ、解凍後に漬けとしておいしく食すことができる、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】マグロを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして刺身(A)を作製する、刺身工程(1)、刺身工程(1)の後、前記刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する、吸水工程(2)、吸水工程(2)の後、刺身(B)を冷凍し、保形する、冷凍保形工程(3)、冷凍保形工程(3)の後、冷凍保形された刺身(B)を収納袋に収納し、真空包装する、真空包装工程(4)、真空包装工程(4)の後、真空包装された刺身(B)を冷凍し、保存する、冷凍保存工程(5)を有する、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用 販売日:令和3年1月29日、販売した場所:植野広生(東京都世田谷区代沢2-1-7)、公開者:綿貫安秀、販売した物の内容:公開者が、植野広生に、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を販売した。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開日:令和3年1月30日、ウェブサイトのアドレス:https://ameblo.jp/go-surf-or-eat-sushi/entry-12653468715.html、公開者:綿貫安秀、公開された発明の内容:公開者が、上記アドレスのブログにて、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開日:令和3年1月30日、ウェブサイトのアドレス:https://www.facebook.com/watanuki.yasu/posts/10208977916762707、公開者:綿貫安秀、公開された発明の内容:公開者が、綿貫安秀(@Watanuki Yasu)のFacebookにて、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開日:令和3年1月30日、ウェブサイトのアドレス:https://www.instagram.com/p/CKpbyrDAgOn/?utm_medium=copy_link、公開者:綿貫安秀、公開された発明の内容:公開者が、綿貫安秀(@kourakusushi_yasumitsu)のInstagramにて、綿貫安秀が発明した冷凍漬けマグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
特許法第30条第2項適用 発行日:令和3年3月31日、刊行物:ぴあ株式会社「ぴあMOOK 最強のお取り寄せ」、公開者:ぴあ株式会社、公開された発明の内容:公開者が、上記刊行物にて、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開日:令和3年4月2日、ウェブサイトのアドレス:https://youtu.be/7qadFkRndKc、公開者:綿貫安秀、公開された発明の内容:公開者がm上記アドレスのYou tubeサイトにて、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
特許法第30条第2項適用 放送日:令和3年4月5日、放送番組:テレビ愛知「乃木坂工事中」、公開者:テレビ愛知株式会社、公開された発明の内容:テレビ愛知発全国ネット(テレビ東京等6局ネット)が、令和3年4月5日(日)深夜0時から放送した「乃木坂工事中」の番組にて、出演者である乃木坂46の齋藤飛鳥さんが、「やす秀特製漬け鮪丼」として、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を番組内で紹介し、公開した。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開日:令和3年4月9日、ウェブサイトのアドレス:https://youtu.be/9LxTboA2o1s、公開者:綿貫安秀、公開された発明の内容:公開者が、上記アドレスのYou tubeサイトにて、綿貫安秀が発明した冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法で製造したマグロ刺身を公開した。
本発明は、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に関する。
従来、上質なマグロは、喫食サイズに刺身加工して、すし店等の飲食店店頭で提供されてきた。
しかし、近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が大きな社会問題となり、現時点では、感染予防のために外食店の時短営業が行われたり、外食自体が控えられるようになっている。そのため、これまで店頭で提供していた上質なマグロを、顧客の要望に応じて提供できない状態が続いている。
マグロは、変色やドリップ(肉汁)が散逸するため傷みが早く、マグロの刺身そのままの状態で流通させることが困難である。市場に流通する一般家庭向けのマグロの刺身は、しょうゆに漬けられた、いわゆる「漬け」の状態で冷凍され、販売されている。
特許文献1には、マグロの肉色が褐変しにくいマグロの刺身の冷凍品が開示されている。
特開2008-29209号公報
「漬け」の状態で販売されているマグロは、マグロがしょうゆに漬かった状態であるため色が悪く、しょうゆの味を強く感じてマグロ独特の風味が感じられず、食感も悪いものであった。
特許文献1の技術では、肉色の褐変はしにくいものの、調味液を使用するため、マグロの独特の風味を感じにくいものであった。また、マグロの刺身を解凍した際に出るドリップとともにしょうゆに漬けるため、後味のよさ、おいしさの点で満足な品質ではなかった。
本発明者は、マグロの刺身の冷凍を検討していくなかで、上質なマグロは、脂ののりがよく、肉質がやわらかいため、冷凍し、解凍する過程で、マグロ独特の好ましい香りが、不快なにおいに変化しやすいことを見出した。また、上質なマグロは肉質がやわらかいため、少量のドリップでも食感が損なわれやすく、傷みも早いことがわかった。
このようなことから、本発明は、上質なマグロでも、マグロ独特の風味、色、食感、後味のよさ、おいしさを十分に保ちながらマグロ刺身を冷凍することができ、解凍後に漬けとしておいしく食すことができる、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の[1]~[6]である。
[1]マグロを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして刺身(A)を作製する、刺身工程(1)、刺身工程(1)の後、前記刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する、吸水工程(2)、吸水工程(2)の後、刺身(B)を冷凍し、保形する、冷凍保形工程(3)、冷凍保形工程(3)の後、冷凍保形された刺身(B)を収納袋に収納し、真空包装する、真空包装工程(4)、真空包装工程(4)の後、真空包装された刺身(B)を冷凍し、保存する、冷凍保存工程(5)を有する、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
[2]前記マグロが、ホンマグロ、メジマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、およびキハダマグロからなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロである、[1]に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
[3]前記刺身(A)が、背上、背中、および腹中からなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロの部位から切り出された刺身である、[1]または[2]に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
[4]前記吸水工程(2)が、刺身(A)が重ならないように吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する工程である、[1]~[3]のいずれかに記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
[5]前記冷凍保形工程(3)が、マイナス55℃~マイナス65℃で、20~30時間冷凍する工程である、[1]~[4]のいずれかに記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
[6]前記冷凍保存工程(5)の後、さらに、マイナス10℃~マイナス20℃で1~3日間熟成する冷凍熟成工程(6)を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
本発明によれば、上質なマグロでも、マグロ独特の風味、色、食感、後味のよさ、おいしさを十分に保ちながらマグロ刺身を冷凍することができ、解凍後に漬けとしておいしく食すことができる、冷凍漬け用マグロ刺身を製造することができる。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法によって製造された、真空包装した状態の冷凍漬け用マグロ刺身の模式図である。 本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いる、マグロの部位を説明した模式図である。 本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法において、吸水工程(2)における、刺身(B)の状態を説明した写真である。 本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法において、刺身(A)が吸水シートでサンドイッチ状に挟まれた状態を説明した写真である(吸水工程(2))。 本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法において、真空包装した写真である(真空包装工程(4))。a:真空包装された刺身(B)の状態を説明した写真である。b:刺身(A)が吸水シートでサンドイッチ状に挟まれた状態で真空包装された状態を説明した写真である。 本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法によって製造された、冷凍漬け用マグロ刺身を解凍した状態を説明した写真である。 比較例4の製造方法によって製造された、冷凍漬け用マグロ刺身を解凍した状態を説明した写真である。 比較例11の製造方法によって製造された、冷凍漬け用マグロ刺身を解凍した状態を説明した写真である。
次に本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法について具体的に説明する。
<冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、マグロを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして刺身(A)を作製する、刺身工程(1)、刺身工程(1)の後、前記刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する、吸水工程(2)、吸水工程(2)の後、刺身(B)を冷凍し、保形する、冷凍保形工程(3)、冷凍保形工程(3)の後、冷凍保形された刺身(B)を収納袋に収納し、真空包装する、真空包装工程(4)、真空包装工程(4)の後、真空包装された刺身(B)を冷凍し、保存する、冷凍保存工程(5)を有する。
本発明において、冷凍漬け用マグロ刺身とは、漬けに用いるためのマグロの刺身を冷凍したものを指す。
〔マグロ〕
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、例えば、ホンマグロ、メジマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、およびビントロマグロが挙げられる。
これらの中でも、本発明において、マグロが、ホンマグロ、メジマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、およびキハダマグロからなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロであることが好ましく、マグロ独特の風味が強く、うまみと酸味とのバランスに優れることから、ホンマグロ、メジマグロであることがより好ましく、ホンマグロがさらに好ましい。
本発明において、ホンマグロとは、具体的には、太平洋クロマグロおよび大西洋クロマグロのことを指す。本発明のマグロは、ホンマグロであり、太平洋クロマグロであることが最も好ましい。
本発明において、マグロがホンマグロであると、甘みがやや強いがマグロ独特の風味がやや弱いメバチマグロおよびキハダマグロよりも、漬けにしたときにマグロ独特の風味が残り、おいしい傾向があるため最も好ましい。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、冷凍した後もマグロ独特の風味が強く、うまみが感じられることから、延縄漁法、または一本釣り漁法で漁獲したマグロであることが好ましい。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、日本近海の天然(養殖ではない)のホンマグロであることが好ましい。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、マグロの魚体全体の重さが好ましくは50~500kg、より好ましくは100~400kg、さらに好ましくは130~290kgである。マグロの魚体全体の重さが、上記範囲内であると、脂ののり、筋の入りがよく、肉質が柔らかく、おいしいと感じる傾向があり、好ましい。また、漬けにしたときに、丁度良い食感が残る傾向があり、好ましい。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、冷凍した後もマグロ独特の風味が強く、食感にも優れることから、漁獲から一度も冷凍されていない、生マグロを用いることが好ましい。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法に用いるマグロは、日本近海で、延縄漁法または一本釣り漁法で漁獲した、一度も冷凍されていない生の天然の太平洋クロマグロであり、マグロの魚体全体の重さが130~290kgであることが最も好ましい。
本発明において、上質なマグロとは、新鮮でマグロ独特の風味が強く、脂ののりがよく、肉質がやわらかいマグロを指す。上質なマグロとは、例えば、ホンマグロが挙げられる。より具体的には、魚体全体の重さが130~290kgのホンマグロが挙げられ、上質なマグロの部位としては、背上、背中、および腹中の部位が挙げられる。
<刺身工程(1)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、マグロを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして刺身(A)を作製する、刺身工程(1)を有する。
刺身工程(1)は、マグロの鮮度を保つ観点から、15~25℃で、5~30秒で行われることが好ましい。
〔刺身(A)〕
本発明において、刺身(A)は、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして作製される。刺身(A)は、厚さ5~8mm、かつ、重さ15~20gにスライスされることが好ましい。
刺身(A)が、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスされていると、マグロ独特の風味、色、食感、後味のよさが損なわれることなく、解凍後もおいしく食すことができる。また、漬けにすると刺身へのしょうゆの染み込みが丁度よく、おいしい漬けマグロになる。
本発明者は、刺身(A)は、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして作製されることによって、真空包装工程(4)の後、収納袋内の刺身に均一に圧力がかかりすく、収納袋内の刺身一切れごとのドリップ量にばらつきが出にくいことを見出した。そして、刺身一切れのごとのドリップ量のばらつきが抑えられることで、漬けにした時に食感や味にばらつきが出にくく、おいしさを感じやすくなる傾向があることを見出した。
刺身(A)が、厚さ10mm以上であると、冷凍保存工程(5)の後に解凍した際、ドリップが多く出て、臭みが増す傾向がある。また、漬けにすると刺身の表面部分と中心部分の味にばらつきが出てしまい、おいしさを感じにくくなる傾向がある。
刺身(A)が、厚さ4mm未満であると、冷凍保存工程(5)の後に解凍した際、刺身の食感が悪く、パサつく傾向がある。また、漬けにすると刺身にしょうゆが染じみすぎてしまい、マグロ独特の風味を感じにくくなる傾向がある。
刺身(A)が、厚さ4mm未満のものと厚さ10mm以上のものが混在していると、漬けにしたときに、食感と味にばらつきが出るため、おいしさを感じにくくなる傾向がある。
刺身(A)が、背上、背中、および腹中からなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロの部位から切り出された刺身であることが好ましく、刺身(A)が、背中、および腹中であることがより好ましく、背中がさらに好ましい。
<吸水工程(2)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、刺身工程(1)の後、前記刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する、吸水工程(2)を有する。
吸水工程(2)は、刺身(A)が重ならないように吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する工程であることが好ましい。
刺身(A)が重ならないように吸水シートに配置されることによって、真空包装工程(4)の後、収納袋内の刺身に均一に圧力がかかりやすく、収納袋内の刺身一切れごとのドリップ量にばらつきが出にくいため好ましい。また、解凍後に生臭みを感じにくいため、マグロ独特の風味を感じやすく、漬けにしたときの味のばらつきも抑えられるため、おいしく感じる傾向があり好ましい。さらに、刺身(A)が重ならないように吸水シートに配置されることによって、刺身(A)の色を鮮紅色に保ちやすいため好ましい。
〔刺身(B)〕
本発明において、刺身(B)は、刺身(A)を、吸水シートに配置して作製される。
本発明において、吸水シートとは、水分等を吸着して吸着した水分等を保持する機能を有するシートのことを指す。吸水シートは上記機能を有するものであれば、特に制限なく使用でき、公知のシートや市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、バリアラップシート(常陸化工株式会社製)を用いることができる。
本発明において、刺身(B)は、刺身(A)を吸水シートに配置した後、刺身(A)の上に吸水シートをさらに配置して作製されることが好ましい。具体的には、刺身(B)は、刺身(A)が吸水シートでサンドイッチ状に挟まれた状態であることが好ましい。
刺身(A)が吸水シートでサンドイッチ状に挟まれた状態であると、真空包装工程(4)の後、収納袋内の刺身に均一に圧力がかかりやすく、収納袋内の刺身(B)一切れごとのドリップ量にばらつきが出にくいため好ましい。また、刺身(B)からのドリップをより吸着しやすいため好ましい。
本発明において、刺身(B)は、刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(A)の上に吸水シートをさらに配置した後、食品用ラップで包装して作製されることがより好ましい。
なお、前記食品用ラップの他に、チャック付きの保存袋や、アルミホイルで包装して作製することもできる。
刺身(B)が上記の状態であることによって、刺身(A)が吸水シートに配置されたままの状態を保ちやすく、刺身(A)が吸水シートと接した状態を保ちやすいため好ましい。
本発明において、刺身(B)は、例えば、刺身(A)5~10切れを、縦10~30cm、横10~30cmの略長方形の吸水シートに配置して作製することができる。刺身(B)は、刺身(A)7切を縦14~16cm、横19~21cmの略長方形の吸水シートに配置する工程であることが好ましく、刺身(A)の上に縦14~16cm、横19~21cmの略長方形の吸水シートをさらに配置することがより好ましい。
この場合、吸水工程(2)は、マグロの鮮度を保つ観点から、15~25℃で、5~30秒で行われることがさらに好ましい。
<冷凍保形工程(3)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、吸水工程(2)の後、刺身(B)を冷凍し、保形する、冷凍保形工程(3)を有する。
冷凍保形工程(3)を低温フリーザーで行う場合には、冷凍保形工程(3)が、マイナス55℃~マイナス65℃で、20~30時間冷凍する工程であることが好ましい。
冷凍保形工程(3)をブラストチラーで行う場合には、マイナス15℃~マイナス25℃の冷風で、45~75分冷凍する工程であることがより好ましい。
冷凍保形工程(3)が上記の条件であると、刺身(B)の中心部まで短時間で冷凍できるため好ましい。
冷凍保形工程(3)で用いる冷凍機は、上記工程(3)の温度範囲における冷凍機能を有するものであれば特に制限なく使用でき、例えば、市販品のものを使用してもよい。市販品としては、例えば、マイナス60度超低温フリーザー(株式会社カノウ冷機製)、ブラストチラー(大和冷機工業株式会社)を用いることができる。
<真空包装工程(4)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、冷凍保形工程(3)の後、冷凍保形された刺身(B)を収納袋に収納し、真空包装する、真空包装工程(4)を有する。
本発明において、真空包装は、マイナス75~マイナス85kPaで脱気される真空包装であることが好ましい。
真空包装工程(4)で用いる真空包装に使用する機器は、特に制限されないが、例えば、真空パックロボ HIPPO(朝日産業株式会社製)を用いることができる。
本発明において、収納袋は冷凍保形された刺身(B)を真空包装することができるものであれば特に制限なく使用できるが、例えば、真空袋(クリロン化成株式会社)を用いることができる。
真空包装工程(4)は、マグロの鮮度を保つ観点から、15~25℃で、1~5分で行われることが好ましい。
<冷凍保存工程(5)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、真空包装工程(4)の後、真空包装された刺身(B)を冷凍し、保存する、冷凍保存工程(5)を有する。
冷凍保存工程(5)が、マイナス55℃~マイナス65℃で、1日以上冷凍する工程であることが好ましく、1日~30日冷凍する工程であることがより好ましい。
冷凍保存工程(5)で用いる冷凍機は、上記温度範囲における冷凍機能を有するものであれば特に制限なく使用でき、上述の冷凍保形工程(3)と同じものを使用してもよい。
<冷凍熟成工程(6)>
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、冷凍保存工程(5)の後、さらに、マイナス10℃~マイナス20℃で1~3日間熟成する冷凍熟成工程(6)を有することが好ましい。
本発明において、マグロの甘味とうまみを強くしたい場合は、冷凍熟成工程(6)を有すると、後味に臭みをやや感じるものの、甘味とうまみを強く感じられるため、漬けにしたときにおいしく感じる傾向があり好ましい。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1-(i)、1-(ii)〕
生のホンマグロ(太平洋クロマグロ、天然、マグロの部位:背中、漁法:延縄漁法)のさくを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして、刺身(A)を7切れ作製した(刺身工程(1))。刺身1切れあたり、平均で22gであった。
あらかじめ収納袋に入るサイズに吸水シートを12cm×20cmに切断しておき、その吸水シートの上に、刺身(A)を7切れ配置し、刺身(B)を作製した。その後、刺身(B)を食品用ラップで包装した(吸水工程(2))。
食品用ラップで包装した刺身(B)を、マイナス60℃に設定された低温フリーザーに入れて、24時間冷凍し、保形した(冷凍保形工程(3))。
冷凍保形された刺身(B)から食品用ラップを外した後、20cm×27cmの収納袋に収納し、真空包装した(真空包装工程(4))。
真空包装された刺身(B)を、マイナス60℃に設定された低温フリーザーで、1日冷凍し、保存した(冷凍保存工程(5))。
冷凍保存された刺身(B)を、マイナス20℃に設定された冷凍庫で、3日間冷凍した(冷凍熟成工程(6))。
冷凍熟成工程(6)を経た刺身(B)を、収納袋ごと氷水に30分浸漬して解凍した。
解凍後、収納袋から刺身を取り出し、軽く刺身表面の水分を拭きとった。そして、(i)刺身の状態、および(ii)刺身としょうゆをあえた後、刺身表面のしょうゆを拭きとった状態(マグロ漬けがご飯の上にのっている状態を再現したもの)を用意し、後述する官能評価を行った。
なお、解凍後、吸水シートに吸着された水分等の重さをドリップ量とし、計測した。ドリップ量は、(解凍後の吸水シート重さ)-(吸水シートの自体の重さ)の式により、算出した。実施例1のドリップ量は、5.5gであった。
実施例および比較例において、材料および機械は、以下を用いた。
吸水シート:バリアラップシート(常陸化工株式会社製)
冷凍庫:マイナス60度超低温フリーザー(株式会社カノウ冷機製)
収納袋:真空袋(クリロン化成株式会社)
真空包装:真空パックロボ HIPPO(朝日産業株式会社製)
〔官能評価〕
官能評価は、健康な成人5名をパネラーとした。実施例および比較例の各サンプルについて、(i)マグロ刺身の状態、(ii)マグロ刺身としょうゆをあえた後、刺身表面のしょうゆを拭きとった状態(マグロの漬けがご飯の上にのっている状態を再現したもの)を一切れずつ試食した。
試食した際の味について、評価項目(1)~(5)の評価基準に従って官能評価を行った。各評価項目につき4名の評価点の平均を算出し、四捨五入を行って評価点とした。
評価項目(1)マグロ独特の風味
5点:まぐろ独特の香りが、非常に強く感じられる
4点:まぐろ独特の香りが、強く感じられる
3点:まぐろ独特の香りが、感じられる
2点:まぐろ独特の香りが、あまり感じられない
1点:まぐろ独特の香りが、全く感じられない
評価項目(2)マグロの色
5点:醤油と混ぜる前のまぐろが、鮮やかな赤~ピンクの色味であり、醤油と混ぜた後のまぐろの色が非常に好ましい
4点:醤油と混ぜる前のまぐろが、赤~ピンクの色味であり、醤油と混ぜた後のまぐろの色が好ましい
3点:醤油と混ぜる前のまぐろが、ややくすんだ赤~ピンクの色味であり、醤油と混ぜた後のまぐろの色が好ましい
2点:醤油と混ぜる前のまぐろが、赤~ピンクの色味であり、醤油と混ぜた後のまぐろに色ムラがある
1点:醤油と混ぜる前のまぐろが、くすんだ赤~赤褐色の色味であり、醤油と混ぜた後のまぐろに色ムラがある
評価項目(3)マグロの食感
5点:程よい食感であり、非常に好ましい
4点:程よい食感であり、好ましい
3点:均一な食感がある
2点:食感にばらつきがある
1点:食感が柔らかすぎて、好ましくない
評価項目(4)マグロの後味のよさ
5点:臭みが全く残らず、甘みを感じて非常に好ましい
4点:臭みが残らず、かすかな甘みを感じて好ましい
3点:臭みが残らず、好ましい
2点:やや臭みが残る
1点:臭みが残り、好ましくない
評価項目(5)おいしさ
5点:風味のバランスがとてもよく、非常においしい
4点:風味のバランスがよく、おいしい
3点:おいしい
2点:風味のバランスがやや悪い
1点:風味のバランスがとても悪く、おいしくない
〔実施例2-(i)~4-(ii)〕
配置した刺身(A)の上に、7切れの刺身(A)が全て覆われるように、さらに吸水シートを配置して刺身(B)を作製し、食品用ラップで包装したこと、および冷凍熟成工程(6)について、なし(0日)、3日間、14日間行ったこと以外は、実施例1-(i)、(ii)と同様にして、冷凍漬け用マグロ刺身を製造し、官能評価を行った。
実施例2のドリップ量は8g、実施例3のドリップ量は12g、実施例4のドリップ量は、8gであった。
〔実施例5-(i)~7-(ii)〕
刺身(A)を、厚さ5~8mm、かつ、重さ15~20gにスライスしたこと以外は、実施例2-(i)~4-(ii)と同様にして、冷凍漬け用マグロ刺身を製造し、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で15gであった。
実施例5のドリップ量は、12g、実施例6のドリップ量は12g、実施例7のドリップ量は、13gであった。
〔実施例8-(i)~9-(ii)〕
実施例8-(i)、(ii)は生のメバチマグロ(国産、天然、マグロの部位:背中、漁法:延縄漁法)、実施例9-(i)、(ii)は、生のキハダマグロ(国産、天然、マグロの部位:背中、漁法:延縄漁法)のさくを用いたこと、および厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして、刺身(A)を作製したこと以外は、実施例3-(i)、(ii)と同様にして、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で15gであった。
実施例8のドリップ量は、6g、実施例9のドリップ量は6gであった。
〔比較例1-(i)~2-(ii)〕
厚さ5~8mm、かつ、重さ20gより重くスライスした刺身を用いたこと、吸水シートを使用せず、食品用ラップに刺身を7切れ配置したこと、および冷凍熟成工程を3日間、14日間行った以外は、実施例1-(i)、(ii)と同様にして、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で22gであった。
〔比較例3-(i)~5-(ii)〕
厚さ4~10mm、かつ、重さ13g未満にスライスした刺身を用いたこと、吸水シートまたは、食品用ラップに刺身を7切れ配置したこと、および冷凍熟成工程を3日間、14日間行った以外は、実施例1-(i)、(ii)と同様にして、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で11gであった。
比較例3のドリップ量は、4.5gであった。
〔比較例6-(i)~8-(ii)〕
厚さ4~10mm、かつ、重さ13g未満にスライスした刺身を用いたこと以外は、実施例2-(i)~4-(ii)と同様にして、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で11gであった。
比較例6のドリップ量は10g、比較例7のドリップ量は10g、比較例8のドリップ量は12gであった。
〔比較例9-(i)~10-(ii)〕
吸水シートを使用せず、食品用ラップに刺身を配置したこと以外は、実施例8-(i)~9-(ii)と同様にして、官能評価を行った。なお、刺身1切れあたり、平均で15gであった。
〔比較例11-(i)~14-(ii)〕
比較例11-(i)~12-(ii)では、厚さ2mmの刺身を4切と厚さ11mmの刺身を3切用いた。刺身7切全体の重さは、105gであった。
比較例13-(i)~14-(ii)では、重さ10gの刺身を4切と重さ22gの刺身を2切用いた。刺身6切全体の重さは、84gであった。刺身の厚さまたは大きさ、および冷凍熟成工程を3日間、14日間行った以外は、実施例2-(i)~4-(ii)と同様にして、官能評価を行った。
比較例11のドリップ量は13g、比較例12のドリップ量は12g、比較例13のドリップ量は13gであり、さらに吸水シートに吸着していない水分等が収納袋に付着していた。比較例14のドリップ量は13gであり、さらに吸水シート吸着していない水分等が収納袋に付着していた。
〔比較例15~16〕
比較例15では、通信販売で漬けにされたマグロ(キハダマグロ)を購入し、実施例1-(ii)と同様にして、官能評価を行った。
比較例16では、スーパーで漬けにされたマグロ(キハダマグロ)を購入し、実施例1-(ii)と同様にして、官能評価を行った。
Figure 0007117426000002
Figure 0007117426000003
Figure 0007117426000004
Figure 0007117426000005
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、傷みやすい上質なマグロの刺身のおいしさを十分に保ちながら冷凍できるため、食品廃棄ロス削減に貢献することができる。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、すし店等の飲食店店頭のみならず、家庭でも上質なマグロの漬けをおいしく味わうことができるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により外食を控えている顧客にも、要望に応じて、おいしいマグロの漬けを提供することができる。
本発明の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法は、家庭でも上質なマグロの漬けをおいしく味わうことができるため、普段外出できない身体の不自由な方や、病気の方にも、おいしいマグロの漬けを提供することができる。
1・・・真空袋
2・・・吸水シート
3・・・マグロ

Claims (6)

  1. マグロを、厚さ4~10mm、かつ、重さ13~22gにスライスして刺身(A)を作製する、刺身工程(1)、
    刺身工程(1)の後、前記刺身(A)を吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する、吸水工程(2)、
    吸水工程(2)の後、刺身(B)を冷凍し、保形する、冷凍保形工程(3)、
    冷凍保形工程(3)の後、冷凍保形された刺身(B)を収納袋に収納し、真空包装する、真空包装工程(4)、
    真空包装工程(4)の後、真空包装された刺身(B)を冷凍し、保存する、冷凍保存工程(5)を有する、冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
  2. 前記マグロが、ホンマグロ、メジマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、およびキハダマグロからなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロである、請求項1に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
  3. 前記刺身(A)が、背上、背中、および腹中からなる群から選ばれる少なくとも1種のマグロの部位から切り出された刺身である、請求項1または2に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
  4. 前記吸水工程(2)が、刺身(A)が重ならないように吸水シートに配置し、刺身(B)を作製する工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
  5. 前記冷凍保形工程(3)が、マイナス55℃~マイナス65℃で、20~30時間冷凍する工程である、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
  6. 前記冷凍保存工程(5)の後、さらに、マイナス10℃~マイナス20℃で1~3日間熟成する冷凍熟成工程(6)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍漬け用マグロ刺身の製造方法。
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日本調理科学会誌,2005年, Vol.38, No.1, pp.63-66
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