本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1~図6に基づき、本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器A10について説明する。チップ抵抗器A10は、基板10、抵抗体20、一対の電極30および保護層40を備える。なお、図2および図4は、理解の便宜上、一対の電極30を構成する一対の外部電極34(詳細は後述)、および保護層40の上部保護層42(詳細は後述)の図示を省略している。
チップ抵抗器A10の説明においては、便宜上、基板10の厚さ方向を「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する一方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。「厚さ方向z」、「第1方向x」および「第2方向y」は、後述するチップ抵抗器A20~チップ抵抗器A40の説明においても適用する。
チップ抵抗器A10は、様々な電子機器の配線基板に表面実装される。チップ抵抗器A10は、当該配線基板に流れる電流を制限する、または電流を検出するという機能を有する。チップ抵抗器A10は、厚膜(メタルグレーズ皮膜)型の抵抗器である。図1に示すように、厚さ方向zから視て、チップ抵抗器A10は矩形状である。第1方向xは、厚さ方向zから視たチップ抵抗器A10の長手方向に相当する。
基板10は、図1および図5に示すように、抵抗体20、一対の電極30および保護層40が配置された電気絶縁部材である。厚さ方向zから視て、基板10は、第1方向xに沿った一対の周縁を長辺とする矩形状である。チップ抵抗器A10の使用の際、抵抗体20から熱が発生するため、基板10は、放熱性に優れていることが求められる。このため、基板10の構成材料は、熱伝導率が比較的高いことが望ましい。チップ抵抗器A10では、基板10の構成材料は、アルミナ(Al2O3)である。図5に示すように、基板10は、上面11、裏面12、一対の側面13、一対の上部切欠面141および一対の裏部切欠面142を有する。
図5に示すように、上面11および裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。上面11は、図5の上方を向く。上面11には、抵抗体20が配置される。裏面12は、図5の下方を向く。チップ抵抗器A10を配線基板に実装した際、裏面12は、当該配線基板に対向する。上面11および裏面12は、ともに平坦である。
図2、図4および図5に示すように、一対の側面13は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の側面13は、上面11および裏面12の双方につながっている。これにより、一対の側面13は、第1方向xにおいて互いに反対側を向く。
図5に示すように、一対の上部切欠面141は、第1方向xにおける上面11の両端に位置する。一対の上部切欠面141の各々は、上面11および側面13の双方につながっている。また、一対の上部切欠面141の各々は、上面11および側面13の双方に対して傾斜している。
図5に示すように、一対の裏部切欠面142は、第1方向xにおける裏面12の両端に位置する。一対の裏部切欠面142の各々は、裏面12および側面13の双方につながっている。また、一対の裏部切欠面142の各々は、裏面12および側面13の双方に対して傾斜している。
抵抗体20は、図1、図2および図5に示すように、基板10の上面11に配置され、かつ一対の電極30に導通する受動素子である。厚さ方向zから視て、抵抗体20は、第1方向xに延びる帯状である。チップ抵抗器A10では、抵抗体20の構成材料は、金属粒子およびガラスを含む。当該金属粒子は、酸化ルテニウム(RuO2)、または銀(Ag)-パラジウム(Pd)合金などである。
図2および図5に示すように、抵抗体20には、厚さ方向zに貫通するトリミング溝21が形成されている。トリミング溝21は、抵抗体20と、抵抗体20を覆う保護層40の下部保護層41(詳細は後述)との双方に一体となって形成されている。厚さ方向zから視て、トリミング溝21はL字状である。第2方向yにおける抵抗体20の一端の一部は、トリミング溝21により開口している。
一対の電極30は、図1~図5に示すように、第1方向xにおいて互いに離間した状態で基板10に配置された導電部材である。一対の電極30は、第1方向xにおける抵抗体20の両端において抵抗体20に導通している。チップ抵抗器A10を配線基板に実装した際、一対の電極30は、当該配線基板にハンダ接合される。これにより、一対の電極30は、抵抗体20と当該配線基板との導電経路を構成している。図1~図5に示すように、一対の電極30の各々は、上面電極31、裏面電極32、側方電極33および外部電極34を備える。
一対の上面電極31は、図2および図5に示すように、第1方向xにおいて互いに離間した状態で基板10の上面11に接している。一対の上面電極31は、第1方向xにおける抵抗体20の両端に接している。これにより、一対の上面電極31は、抵抗体20に導通している。一対の上面電極31は、第2方向yに延びる帯状である。一対の上面電極31の構成材料は、銀およびガラスを含む。一対の上面電極31の各々の厚さtaは、25~35μmである。
図5に示すように、一対の上面電極31は、基板10の一対の上部切欠面141に個別に接している。一対の上面電極31の各々には、上面凹部311が形成されている。上面凹部311は、第1方向xにおける上面電極31の一端に位置する。上面凹部311は、厚さ方向zにおいて基板10の上面11が向く側を向く上面電極31の上面31Aから、上部切欠面141に向けて凹んでいる。
一対の裏面電極32は、図4および図5に示すように、第1方向xにおいて互いに離間した状態で基板10の裏面12に接している。一対の裏面電極32は、第2方向yに延びる帯状である。図6に示すように、第1方向xにおいて、一対の裏面電極32は、裏面12と基板10の一対の裏部切欠面142との境界よりも裏面12の内方に位置する。これにより、裏面12には、第1方向xにおいて、裏面12と裏部切欠面142との境界と、裏面電極32との間に隙間121が設けられている。チップ抵抗器A10では、一対の裏面電極32の構成材料は、銀およびガラスを含む。
図6に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の裏面12から厚さ方向zに向けて膨出している。一対の裏面電極32の各々は、第1下垂部321、第1膨出面322および第2膨出面323を有する。
図6に示すように、第1下垂部321は、厚さ方向zにおいて基板10の裏面12から最も離れて位置する裏面電極32の表面の一部である。裏面12から第1下垂部321までの厚さtbは、6~7μmである。
図6に示すように、第1膨出面322は、第1方向xにおいて一対の第1下垂部321の間に位置する裏面電極32の表面の一部である。第1膨出面322が、本発明にかかる特許請求の範囲に記載の「膨出面」に相当する。第2方向yから視て、第1膨出面322は、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ弧をなしている。
図6に示すように、第2膨出面323は、第1方向xにおいて第1下垂部321に対して第1膨出面322とは反対側に位置する裏面電極32の表面の一部である。第2方向yから視て、第2膨出面323は、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ弧をなしている。
一対の側方電極33は、図2、図4および図5に示すように、基板10の一対の側面13に個別に接している。一対の側方電極33は、一対の上面電極31および一対の裏面電極32の双方に個別に導通している。チップ抵抗器A10では、一対の側方電極33の構成材料は、銀および合成樹脂を含む。当該合成樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。
図5に示すように、一対の側方電極33の各々は、上面部331、裏面部332および側面部333を有する。
図2および図5に示すように、上面部331は、厚さ方向zから視て基板10の上面11に重なり、かつ上面電極31の一部を覆っている。これにより、一対の上面部331は、一対の上面電極31に個別に導通している。チップ抵抗器A10では、一対の上面部331は、一対の上面電極31から厚さ方向zに向けて膨出している。
図4および図5に示すように、裏面部332は、厚さ方向zから視て基板10の裏面12に重なり、かつ裏面電極32の一部を覆っている。これにより、一対の裏面部332は、一対の裏面電極32に個別に導通している。図6に示すように、チップ抵抗器A10では、一対の裏面部332は、一対の裏面電極32、および基板10の一対の隙間121の双方から厚さ方向zに向けて膨出している。裏面部332は、第2下垂部332A、第3膨出面332Bおよび第4膨出面332Cを有する。
図6に示すように、第2下垂部332Aは、厚さ方向zにおいて基板10の裏面12から最も離れて位置する裏面部332の表面の一部である。裏面12から第2下垂部332Aまでの厚さtcは、10~11μmである。
図6に示すように、第3膨出面332Bは、第1方向xにおいて一対の第2下垂部332Aの間に位置する裏面部332の表面の一部である。第2方向yから視て、第3膨出面332Bは、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ弧をなしている。
図6に示すように、第4膨出面332Cは、第1方向xにおいて第2下垂部332Aに対して第3膨出面332Bとは反対側に位置する裏面部332の表面の一部である。第2方向yから視て、第4膨出面332Cは、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ弧をなしている。
図5に示すように、側面部333は、基板10の側面13を覆っている。厚さ方向zにおける側面部333の両端において、側面部333は、上面部331および裏面部332の双方につながっている。これにより、一対の側方電極33は、一対の上面電極31および一対の裏面電極32の双方に個別に導通することとなる。チップ抵抗器A10では、一対の側面部333は、一対の側面13から第1方向xに向けて膨出している。
一対の外部電極34は、図1、図3および図5に示すように、一対の上面電極31、一対の裏面電極32および一対の側方電極33を個別に覆っている。これにより、一対の外部電極34は、一対の上面電極31、一対の裏面電極32および一対の側方電極33のいずれにも導通している。
図3および図5および示すように、チップ抵抗器A10では、一対の外部電極34の各々は、裏面電極32、および側方電極33の裏面部332の双方を覆う実装部341を有する。一対の実装部341の各々には、基板10の裏面12に向けて凹む陥入部341Aが形成されている。図6に示すように、陥入部341Aは、第1方向xにおいて裏面電極32の第2膨出面323と、裏面部332の第3膨出面332Bとの境界近傍に位置する。図3に示すように、一対の陥入部341Aは、第2方向yに延びている。
図5および図6に示すように、一対の外部電極34の各々は、第1外部電極34Aおよび第2外部電極34Bを含む。第1外部電極34Aは、上面電極31、裏面電極32および側方電極33を覆っている。一対の第1外部電極34Aの構成材料は、ニッケル(Ni)を含む。第2外部電極34Bは、第1外部電極34Aを覆っている。一対の第2外部電極34Bの構成材料は、錫(Sn)を含む。
保護層40は、図1および図5に示すように、抵抗体20を覆っている。保護層40は、下部保護層41および上部保護層42を有する。
図2および図5に示すように、下部保護層41は、抵抗体20の一部を覆っている。第1方向xにおける下部保護層41の両端から、抵抗体20が第1方向xに向けてはみ出している。下部保護層41には、先述したトリミング溝21が形成されている。下部保護層41の構成材料は、ガラスを含む。
図1および図5に示すように、上部保護層42は、抵抗体20の一部、および下部保護層41の双方を覆っている。上部保護層42は、基板10の上面11の一部と、一対の上面電極31の一部との双方をも覆っている。上部保護層42の構成材料は、たとえば黒色のエポキシ樹脂である。
次に、図7~図20に基づき、チップ抵抗器A10の製造方法の一例について説明する。なお、図16が示す断面位置は、図15が示す断面位置と同一である。
最初に、図7に示すように、厚さ方向zにおいて互いに離間した上面811および裏面812を有するシート状の基材81に、裏面812に接する複数の裏面電極82を形成する。裏面812には、第2方向yに沿った複数の一次溝81Aと、第1方向xに沿った複数の二次溝81Bとが設けられている。複数の一次溝81Aおよび複数の二次溝81Bは、ともに裏面812から厚さ方向zに凹んでいる。複数の一次溝81Aおよび複数の二次溝81Bは、上面811にも設けられている。上面811における複数の一次溝81Aおよび複数の二次溝81Bの形成位置は、裏面812における複数の一次溝81Aおよび複数の二次溝81Bの形成位置に対応している。上面811および裏面812において、複数の一次溝81Aおよび複数の二次溝81Bにより区画された複数の領域80の各々が、チップ抵抗器A10の基板10に相当する。基材81の構成材料は、たとえばアルミナである。
図7に示すように、複数の裏面電極82は、基材81の裏面812に位置する複数の領域80において、第1方向xにおいて互いに離間した状態で個別に形成される。複数の領域80の各々において、領域80を区画する一対の一次溝81Aの間に一対の裏面電極82が形成される。一対の裏面電極82が、チップ抵抗器A10の一対の裏面電極32に相当する。これにより、図8に示すように、第1方向xにおいて一次溝81Aと裏面電極82との間に位置する裏面812には、隙間812Aが設けられる。チップ抵抗器A10では、複数の裏面電極82は、銀粒子およびガラスフリットが含有されたペーストを裏面812に印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。
図8に示すように、複数の裏面電極82の各々は、第1下垂部821、第1膨出面822および第2膨出面823を有する。第1下垂部821は、厚さ方向zにおいて基材81の裏面812から最も離れて位置する裏面電極82の表面の一部である。第1下垂部821が、チップ抵抗器A10の裏面電極32の第1下垂部321に相当する。裏面812に位置する複数の領域80の各々において、第1膨出面822は、一対の第1下垂部821の間に位置する裏面電極82の表面の一部である。第1膨出面822が、チップ抵抗器A10の裏面電極32の第1膨出面322に相当する。第2膨出面823は、第1方向xにおいて第1下垂部821とは反対側に位置する裏面電極82の表面の一部である。第2膨出面823が、チップ抵抗器A10の裏面電極32の第2膨出面323に相当する。
次いで、図9に示すように、基材81の上面811に接する複数の上面電極83を形成する。複数の上面電極83は、第1方向xにおいて隣り合う2つの上面電極83が互いに離間した状態で、上面811に設けられた複数の一次溝81Aを跨いで形成される。これにより、複数の上面電極83の各々は、上面811に位置し、かつ第1方向xにおいて隣り合う2つの領域80の双方に接している。また、複数の領域80の各々には、第1方向xにおいて互いに離間した一対の上面電極83のそれぞれ一部が形成される。一対の上面電極83のそれぞれ一部が、チップ抵抗器A10の一対の上面電極31に相当する。複数の上面電極83は、銀粒子およびガラスフリットが含有されたペーストを裏面812に印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。
次いで、図10に示すように、基材81の上面811に接する複数の抵抗体84を形成する。複数の抵抗体84は、上面811に位置する複数の領域80に個別に形成される。複数の領域80の各々における抵抗体84が、チップ抵抗器A10の抵抗体20に相当する。複数の領域80の各々において、第1方向xにおける抵抗体84の両端は、一対の上面電極83に接する。複数の抵抗体84は、金属粒子およびガラスフリットが含有されたペーストを裏面812に印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。当該金属粒子は、酸化ルテニウム、または銀-パラジウム合金などである。
次いで、図11に示すように、複数の抵抗体84を個別に覆う下部保護層851を形成する。複数の下部保護層851の各々が、チップ抵抗器A10の下部保護層41(保護層40)に相当する。複数の下部保護層851は、ガラスペーストを複数の抵抗体84に個別に印刷した後、当該ガラスペーストを焼成することにより形成される。
次いで、図12に示すように、厚さ方向zに貫通する複数のトリミング溝841を、複数の抵抗体84および複数の下部保護層851の双方に個別に形成する。複数のトリミング溝841の各々が、チップ抵抗器A10の抵抗体20および下部保護層41(保護層40)の双方に形成されたトリミング溝21に対応する。複数のトリミング溝841は、レーザトリミング装置により形成される。
複数のトリミング溝841の各々は、次の手順により形成される。最初に、トリミング溝841の形成対象となる抵抗体84の第1方向xにおける両端に、抵抗値測定用のプローブを接触させる。次いで、第2方向yにおける抵抗体84の一端から、抵抗体84および下部保護層851の双方を厚さ方向zに貫通する溝を第2方向yに沿って形成する。抵抗体84の抵抗値が所定の値(チップ抵抗器A10の抵抗値)に近い値になるまで溝を形成した後、当該溝の終端から今度は第1方向xに沿った溝を形成する。抵抗体84の抵抗値が所定の値となったとき、当該溝の形成を終了する。以上より、複数のトリミング溝841の各々が形成される。
次いで、図13に示すように、複数の抵抗体84および複数の下部保護層851の双方と、複数の上面電極83のそれぞれ一部ずつとを覆う複数の上部保護層852を形成する。複数の上部保護層852は、第1方向xにおいて互いに離間した状態で、かつ第2方向yに延びる帯状となるように形成される。複数の上部保護層852は、基材81の上面811に設けられた複数の二次溝81Bを跨いでいる。上面811に位置する複数の領域80における上部保護層852の一部が、チップ抵抗器A10の上部保護層42(保護層40)に相当する。複数の上部保護層852は、エポキシ樹脂を主剤としたペーストを複数の抵抗体84および複数の下部保護層851の双方に一体となって印刷した後、当該ペーストを熱硬化させることにより形成される。
次いで、図14に示すように、基材81を複数の一次溝81Aに沿って分割する。これにより、第2方向yに延びる帯状である複数の基材81が得られる。図15に示すように、本工程において、基材81の上面811に設けられた複数の一次溝81Aが第1方向xに分断されることにより、第1方向xにおいて互いに離間した一対の上部切欠面814Aが基材81に現れる。複数の領域80の各々に現れる一対の上部切欠面814Aが、チップ抵抗器A10の基板10の一対の上部切欠面141に相当する。また、本工程において、基材81の裏面812に設けられた複数の一次溝81Aが第1方向xに分断されることにより、第1方向xにおいて互いに離間した一対の裏部切欠面814Bが基材81に現れる。複数の領域80の各々に現れる一対の裏部切欠面814Bが、チップ抵抗器A10の基板10の一対の裏部切欠面142に相当する。さらに、本工程において、一対の側面813が、第1方向xにおける基材81の両端に現れる。厚さ方向zにおいて、一対の側面813は、一対の上部切欠面814Aと一対の裏部切欠面814Bとに挟まれている。
次いで、図16に示すように、基材81の一対の側面813に個別に接する一対の側方電極86を形成する。一対の側方電極86は、一対の裏面電極82および一対の上面電極83のそれぞれ一部に個別に接している。複数の領域80の各々における一対の側方電極86が、チップ抵抗器A10の一対の側方電極33に相当する。一対の側方電極86は、エポキシ樹脂を主剤とし、かつ銀粒子が含有されたペーストを、一対の裏面電極82および一対の上面電極83のそれぞれ一部に接するまで一対の側面813に塗布した後、当該ペーストを乾燥させることにより形成される。
図16に示すように、一対の側方電極86の各々は、上面部861、裏面部862および側面部863を有する。上面部861は、厚さ方向zから視て基材81の上面811に重なり、かつ上面電極83の一部を覆っている。上面部861が、チップ抵抗器A10の側方電極33の上面部331に相当する。裏面部862は、厚さ方向zから視て基材81の裏面812に重なり、かつ裏面電極82の一部を覆っている。裏面部862が、チップ抵抗器A10の側方電極33の裏面部332に相当する。側面部863は、側面813を覆っている。側面部863が、側面部863が、チップ抵抗器A10の側方電極33の側面部333に相当する。
図17に示すように、一対の側方電極86の裏面部862の各々は、第2下垂部862A、第3膨出面862Bおよび第4膨出面862Cを有する。第2下垂部862Aは、厚さ方向zにおいて基材81の裏面812から最も離れて位置する裏面部862の表面の一部である。第2下垂部862Aが、チップ抵抗器A10の裏面部332(側方電極33)の第2下垂部332Aに相当する。第3膨出面862Bは、第1方向xにおいて一対の第2下垂部862Aの間に位置する裏面部862の表面の一部である。第3膨出面862Bが、チップ抵抗器A10の裏面部332の第3膨出面332Bに相当する。第4膨出面862Cは、第1方向xにおいて第2下垂部862Aに対して第3膨出面862Bとは反対側に位置する裏面部862の表面の一部である。第4膨出面862Cが、チップ抵抗器A10の裏面部332の第4膨出面332Cに相当する
次いで、図18に示すように、基材81を二次溝81Bに沿って分割する。これにより、複数の個片となった基材81が得られる。個片となった基材81が、チップ抵抗器A10の基板10に相当する。個片となった基材81には、一対の裏面電極82、一対の上面電極83、抵抗体84、下部保護層851、上部保護層852および一対の側方電極86が配置されている。
最後に、図19に示すように、個片となった基材81に配置された一対の裏面電極82、一対の上面電極83および一対の側方電極86を個別に覆う一対の外部電極87を形成する。一対の外部電極87が、チップ抵抗器A10の一対の外部電極34に相当する。一対の外部電極87の各々は、第1外部電極87Aおよび第2外部電極87Bを含む。第1外部電極87Aが、チップ抵抗器A10の外部電極34の第1外部電極34Aに相当する。第2外部電極87Bが、チップ抵抗器A10の外部電極34の第2外部電極34Bに相当する。
一対の第1外部電極87Aおよび一対の第2外部電極87Bは、それぞれ電解バレルめっきにより形成される。一対の第1外部電極87Aは、基材81から露出した一対の裏面電極82、一対の上面電極83および一対の側方電極86にニッケルを析出させることにより形成される。一対の第2外部電極87Bは、一対の第1外部電極87Aに錫を析出させることにより形成される。以上の工程を経ることによって、チップ抵抗器A10が製造される。
図20に示すように、一対の外部電極87の各々は、実装部871を有する。実装部871は、裏面電極82、および側方電極86の裏面部862の双方を覆っている。実装部871が、チップ抵抗器A10の外部電極34の実装部341に相当する。実装部871には、基材81の裏面812に向けて凹む陥入部871Aが形成されている。陥入部871Aが、チップ抵抗器A10の外部電極34の実装部341に形成された陥入部341Aに相当する。
次に、チップ抵抗器A10の作用効果について説明する。
チップ抵抗器A10の構成によれば、図5および図6に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の裏面12から厚さ方向zに向けて膨出している。これにより、一対の裏面電極32において、裏面12から表面(第1下垂部321、第1膨出面322および第2膨出面323)に至るまでの厚さが従来よりも一様に大となるため、一対の裏面電極32の表面に露出する気泡を抑制できる。このため、一対の外部電極34の各々において、裏面電極32を覆う実装部341に形成される空隙が抑制される。したがって、チップ抵抗器A10によれば、一対の外部電極34に形成される空隙を抑制することが可能となる。
一対の裏面電極32の各々は、図6に示すように、第1下垂部321および第1膨出面322を有する。第1膨出面322は、第1方向xにおいて一対の第1下垂部321の間に位置する。第2方向yから視て、第1膨出面322は、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ弧をなしている。これにより、一対の第1膨出面322を覆う一対の第1外部電極34A(外部電極34)は、全体にわたって裏面12から離れる向きに膨らんだ形状となる。
図22は、チップ抵抗器A10を配線基板50に実装する際、一対の裏面電極32の付近における状態を示している。チップ抵抗器A10は、導電接合層51により配線基板50に接合される。導電接合層51は、一対の第2外部電極34B(外部電極34)とハンダとの合金であり、かつ熱により溶融された状態となっている。一対の外部電極34に空隙が存在する場合、導電接合層51に複数の気泡511が発生する。そこで、一対の第1外部電極34A(外部電極34)が、全体にわたって基板10の裏面12から離れる向きに膨らんだ形状をとることにより、複数の気泡511が一対の第1外部電極34Aに沿って導電接合層51の外部に向けて移動する。これは、チップ抵抗器A10の自重により導電接合層51が厚さ方向zに押しつぶされるためである。これにより、導電接合層51における複数の気泡511が減少するため、配線基板50に対するチップ抵抗器A10の実装強度の低下が回避される。
一対の側方電極33の各々は、裏面電極32の一部を覆う裏面部332を有する。一対の裏面部332は、一対の裏面電極32から厚さ方向zに向けて膨出している。これにより、一対の裏面部332に覆われた一対の裏面電極32の部分の表面に気泡が露出していた場合であっても、一対の裏面部332により当該気泡が覆われる。したがって、一対の外部電極34の各々において、裏面部332を覆う実装部341の部分に形成される空隙を、より効果的に抑制できる。
一対の側方電極33の各々は、裏面部332に加えて、上面部331および側面部333を有する。一対の上面部331は、一対の上面電極31から厚さ方向zに向けて膨出している。一対の側面部333は、基板10の一対の側面13から第1方向xに向けて膨出している。一対の側方電極33を形成する際、一対の裏面部332を、一対の裏面電極32から厚さ方向zに向けて膨出した形状となるように形成すると、一対の上面部331および一対の側面部333がこのような形状となる。
一対の側方電極33の裏面部332の各々は、一対の第2下垂部332Aを有する。第1方向xにおいて、一対の裏面電極32の第1下垂部321は、一対の第2下垂部332Aの間に位置する。これにより、一対の外部電極34の実装部341の各々には、基板10の裏面12に向けて凹む陥入部341Aが形成される。図22に示すように、一対の陥入部341Aに導電接合層51が接することによって、投錨(アンカー)効果により配線基板50に対するチップ抵抗器A10の実装強度を向上させることができる。一対の陥入部341Aが第2方向yに延びることによって、配線基板50に対するチップ抵抗器A10の実装強度は、より向上する。
基板10は、第1方向xにおける裏面12の両端に位置する一対の裏部切欠面142を有する。第1方向xにおいて、一対の裏面電極32は、裏面12と一対の裏部切欠面142との境界よりも裏面12の内方に位置する。これにより、チップ抵抗器A10の製造において、図14に示すように、基材81を一次溝81Aに沿って分割する際、複数の裏面電極82に損傷が発生することを防止できる。複数の裏面電極82は、複数の上面電極83よりも曲げに対して弱い。これは、一対の裏面電極32の厚さは、一対の上面電極31の厚さよりも小であるためと、チップ抵抗器A10では、一対の裏面電極32がガラスを含むためである。
〔第2実施形態〕
図22および図23に基づき、本発明の第2実施形態にかかるチップ抵抗器A20について説明する。これらの図において、先述したチップ抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図22が示す断面位置は、図5が示す断面位置と同一である。
チップ抵抗器A20では、一対の裏面電極32および一対の側方電極33の構成が、先述したチップ抵抗器A10と異なる。
チップ抵抗器A20では、一対の裏面電極32の構成材料は、銀および合成樹脂を含む。当該合成樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。図22および図23に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の一対の裏部切欠面142に個別に接している。
図23に示すように、基板10の裏面12から、裏面電極32の第1下垂部321までの厚さtbは、13~14μmである。チップ抵抗器A20の裏面電極32にかかる厚さtbは、チップ抵抗器A10の裏面電極32にかかる厚さtbよりも大である。厚さ方向zから視て、第2方向yに延びる裏面電極32の第2膨出面323の周縁は、側面13に重なっている。
図23に示すように、基板10の裏面12から、側方電極33の裏面部332の第2下垂部332Aまでの厚さtcは、17~18μmである。チップ抵抗器A10にかかる厚さtcは、チップ抵抗器A10にかかる厚さtcよりも大である。
次に、図24および図25に基づき、チップ抵抗器A20の製造方法の一例について説明する。
チップ抵抗器A20の製造方法の一例では、先述したチップ抵抗器A10の製造方法の一例に対して、複数の裏面電極82を形成する工程が異なる。このため、ここでは、複数の裏面電極82を形成する工程について説明する。
図24に示すように、複数の裏面電極82は、第1方向xにおいて隣り合う2つの裏面電極82が互いに離間した状態で、基材81の裏面812に設けられた複数の一次溝81Aを跨いで形成される。これにより、複数の裏面電極82の各々は、裏面812に位置し、かつ第1方向xにおいて隣り合う2つの領域80の双方に接している。また、複数の領域80の各々には、第1方向xにおいて互いに離間した一対の裏面電極82のそれぞれ一部が形成される。一対の裏面電極82のそれぞれ一部が、チップ抵抗器A20の一対の裏面電極32に相当する。チップ抵抗器A20では、複数の裏面電極82は、エポキシ樹脂を主剤とし、かつ銀粒子が含有されたペーストを裏面812に印刷した後、当該ペーストを熱硬化させることにより形成される。
図25に示すように、複数の裏面電極82の各々は、一対の第1下垂部821および一対の第2膨出面823を有する。一対の第2膨出面823は、第1方向xにおいて一対の第1下垂部821の間に位置する。一対の第2膨出面823は、基板10の裏面812に設けられた一次溝81Aにおいて互いにつながっている。
次に、チップ抵抗器A20の作用効果について説明する。
チップ抵抗器A20の構成によれば、図22および図23に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の裏面12から厚さ方向zに向けて膨出している。したがって、チップ抵抗器A20によっても、一対の外部電極34に形成される空隙を抑制することが可能となる。
チップ抵抗器A20では、一対の裏面電極32にかかる厚さtbは、チップ抵抗器A10の一対の裏面電極32にかかる厚さtbよりも大である。これにより、一対の裏面電極32の表面に露出する気泡を、チップ抵抗器A10よりもさらに抑制することができる。
〔第3実施形態〕
図26~図31に基づき、本発明の第3実施形態にかかるチップ抵抗器A30について説明する。これらの図において、先述したチップ抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
チップ抵抗器A30では、一対の裏面電極32、一対の側方電極33および一対の構成が、先述したチップ抵抗器A10と異なる。
チップ抵抗器A30では、一対の裏面電極32の構成材料は、チップ抵抗器A10の一対の裏面電極32の構成材料と同一である。図30および図31に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の一対の裏部切欠面142に個別に接している。図31に示すように、基板10の裏面12から、裏面電極32の第1下垂部321までの厚さtbは、6~7μmである。このため、チップ抵抗器A30の裏面電極32にかかる厚さtbは、チップ抵抗器A10の裏面電極32にかかる厚さtbと同一である。厚さ方向zから視て、第2方向yに延びる裏面電極32の第2膨出面323の周縁は、側面13に重なっている。
チップ抵抗器A30では、一対の側方電極33は、金属薄膜により構成される。当該金属は、たとえばニッケル-クロム(Cr)合金である。図30に示すように、一対の側方電極33の上面部331は、一対の上面電極31に沿った形状をなしており、かつ一対の上面電極31から厚さ方向zに向けて膨出していない。図26および図27に示すように、第1方向xにおける一対の上面部331の長さは、第1方向xにおけるチップ抵抗器A10の一対の上面部331の長さよりも小である。
図30および図31に示すように、一対の側方電極33の裏面部332は、一対の裏面電極32に沿った形状をなしており、かつ一対の裏面電極32から厚さ方向zに向けて膨出していない。このため、裏面部332は、チップ抵抗器A10と異なり、第2下垂部332A、第3膨出面332Bおよび第4膨出面332Cを有さない。図28および図29に示すように、第1方向xにおける一対の裏面部332の長さは、第1方向xにおけるチップ抵抗器A10の一対の裏面部332の長さよりも小である。
図30に示すように、一対の側方電極33の側面部333は、基板10の一対の側面13に沿った形状をなしており、かつ一対の側面13から第1方向xに向けて膨出していない。
図28および図31に示すように、チップ抵抗器A30では、一対の外部電極34の実装部341には、陥入部341Aが形成されていない。
次に、図32に基づき、チップ抵抗器A30の製造方法の一例について説明する。
チップ抵抗器A30の製造方法の一例では、先述したチップ抵抗器A10の製造方法の一例に対して、複数の裏面電極82を形成する工程と、一対の側方電極86を形成する工程とが異なる。これらの工程のうち、複数の裏面電極82を形成する工程は、図24および図25に示すチップ抵抗器A20の製造方法の一例における複数の裏面電極82を形成する工程と同様である。このため、ここでは、一対の側方電極86を形成する工程について説明する。なお、図32が示す断面位置は、図16が示す断面位置と同一である。
図32に示すように、一対の側方電極86は、基材81の一対の側面813に個別に接するように形成される。一対の側方電極86は、一対の裏面電極82および一対の上面電極83のそれぞれ一部に個別に接している。一対の側方電極86は、スパッタリング法によりニッケル-クロム合金を、一対の側面813と、一対の裏面電極82および一対の上面電極83のそれぞれ一部ずつとに成膜することによって形成される。
次に、チップ抵抗器A30の作用効果について説明する。
チップ抵抗器A30の構成によれば、図30および図31に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の裏面12から厚さ方向zに向けて膨出している。したがって、チップ抵抗器A30によっても、一対の外部電極34に形成される空隙を抑制することが可能となる。
チップ抵抗器A30では、一対の側方電極33は、金属薄膜により構成される。これにより、第1方向xにおけるチップ抵抗器A30の寸法を、第1方向xにおけるチップ抵抗器A10の寸法よりも小とすることができる。
〔第4実施形態〕
図33および図34に基づき、本発明の第4実施形態にかかるチップ抵抗器A40について説明する。これらの図において、先述したチップ抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図33が示す断面位置は、図30が示す断面位置と同一である。
チップ抵抗器A40では、一対の裏面電極32の構成が、先述したチップ抵抗器A30と異なる。
チップ抵抗器A40では、一対の裏面電極32の構成材料は、銀および合成樹脂を含む。当該合成樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。図33および図34に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の一対の裏部切欠面142に個別に接している。
図34に示すように、基板10の裏面12から、裏面電極32の第1下垂部321までの厚さtbは、13~14μmである。チップ抵抗器A40の裏面電極32にかかる厚さtbは、チップ抵抗器A30の裏面電極32にかかる厚さtbよりも大である。厚さ方向zから視て、第2方向yに延びる裏面電極32の第2膨出面323の周縁は、側面13に重なっている。
次に、チップ抵抗器A40の作用効果について説明する。
チップ抵抗器A40の構成によれば、図33および図34に示すように、一対の裏面電極32は、基板10の裏面12から厚さ方向zに向けて膨出している。したがって、チップ抵抗器A20によっても、一対の外部電極34に形成される空隙を抑制することが可能となる。
チップ抵抗器A40では、一対の裏面電極32にかかる厚さtbは、チップ抵抗器A30の一対の裏面電極32にかかる厚さtbよりも大である。これにより、一対の裏面電極32の表面に露出する気泡を、チップ抵抗器A30よりもさらに抑制することができる。
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。