JP7116976B2 - 離型フィルム - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ポリエステルフィルムに酸化ケイ素などの不活性無機粒子を含有させることが開示されている。しかしながら、無機粒子は、変形しにくく、樹脂の溶融押出のろ過工程においてフィルターが目詰まりし、フィルター昇圧しやすいことから、生産性に問題を生じる場合がある。特許文献2には、最外層のポリエステル層に有機粒子を含有させた低光沢度の離型用二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されている、有機粒子を含有するポリエステルフィルムは、表面に、さらにバインダー成分やフッ素系離型剤を含有する離型層が設けられる工程が煩雑であり、また、離型層に含有する低分子成分が離型後の被着体面を汚染する恐れがあるため、離型後の被着体に残存接着率を求める用途には不向きであった。
しかしながら、特許文献3に開示された、固相重合処理したポリエステルを用いたマット調フィルムでは、ポリエステルの固有粘度が高いため、延伸後のフィルムにボイドが発生してしまい、得られたフィルムは、外観に劣るものとなった。また、固相重合処理したポリエステルを使用した場合であっても、表面がマット化されていると、フィルムの製造中にも、熱処理によってフィルム表面にオリゴマーが析出し、連続生産されたフィルムには、このオリゴマーが原因となってスジ等が発生する恐れがあった。
また、特許文献4に開示された、積層膜を積層してオリゴマー析出を抑制する方法は、工程が増えるため、煩雑であるという問題点がある。また、表面凹凸形状を付与する場合、表面凹凸形状を付与した後に積層膜を積層したフィルムは、表面凹凸形状が均されてしまい、耐ブロッキング性や離型性に劣るものとなる傾向があった。
(1)少なくとも一方の最表面がポリエステルフィルム層Aで構成される離型フィルムであって、
ポリエステルフィルム層Aは、大気雰囲気下における熱分解温度が275℃以上であり、平均粒子径が1~30μmである有機粒子を0.1~15質量%含み、
100℃、5時間加熱後のポリエステルフィルム層Aの表面から析出する、有機粒子の添加に伴って増加するオリゴマー量が3.5mg/m2以下であることを特徴とする離型フィルム。
(2)有機粒子の平均粒子径が1~15μmであることを特徴とする(1)記載の離型フィルム。
(3)有機粒子が架橋アクリル粒子であることを特徴とする(1)または(2)記載の離型フィルム。
(4)ポリエステルフィルム層A面における光沢度(60°)が60%以下であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の離型フィルム。
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートは、耐熱性、機械特性のバランスに優れ、延伸性に優れることから、好適に使用することができる。ポリエチレンテレフタレートは、通常、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換方法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合する方法により得られる。
本発明のポリエステルフィルムは、有機粒子を含むポリエステルフィルム層Aのみで構成されてもよく、またポリエステルフィルム層A以外のポリエステルフィルム層(以下、ポリエステルフィルム層Bということがある)との積層フィルムであってもよい。ポリエステルフィルム層Bは、ポリエステルフィルムの表層を構成する場合、フィルム走行の観点から、粒子を含むことが好ましく、粒子は、有機粒子、無機粒子のいずれでもよい。
本発明のポリエステルフィルムが、複数のフィルム層Aで構成される場合、厚みの合計は、特に制限はないが、全光線透過率の制御の観点から、ポリエステルフィルム全体厚みの1~50%であることが好ましく、10~40%がより好ましい。
ポリエステルフィルム層Aは、大気雰囲気下における熱分解温度が275℃以上である有機粒子を含むことで、理由は不明であるが、熱処理によってフィルム表面に析出するオリゴマー量を低減することができる。
無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリン、クレー、タルク、マイカ等が挙げられる。また、有機粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル-スチレン共重合体等の有機粒子が挙げられる。特に酸化ケイ素(シリカ)は粒径分布が優れ、安価なことから好適である。
本発明のポリエステルフィルムが積層フィルムの場合は、全ての層が口金から共溶融押出しされる共押出法により押出された未延伸シートを、二軸方向に延伸、熱固定する方法が好ましい。
共押出方法としては、フィードブロックタイプまたはマルチマニホールドタイプにいずれを用いてもよい。ポリエステルフィルム層Aを形成するための、有機粒子を含有する樹脂組成物と、フィルム層Bを形成するための樹脂組成物とを、各々別の溶融押出装置に供給し、それぞれのポリエステル樹脂の融点~(融点+40℃)の温度で溶融させ、フィルターをそれぞれ介して、Tダイにより、シート状に押し出す。
そして、押出した積層シート状体を、静電印可キャスト法、エアーナイフ法等の公知の方法により、30℃以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させ、ガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化させて、所望厚さの未延伸シートを得る。
延伸倍率は特に制限はないが、ポリエステルフィルムの面積倍率で3倍以上が好ましく、より好ましくは4~20倍、さらに好ましくは6~15倍である。上限は特に設けないが、面積倍率を20倍以下とすることで、ボイドの発生をさらに抑制することが可能であり、さらにはフィルムの破断頻度を下げることができる。
延伸温度は特に制限はないが、ポリエステル樹脂の(ガラス転移温度+5℃)~(ガラス転移温度+60℃)の範囲が好ましく、(ガラス転移温度+15℃)~(ガラス転移温度+55℃)の範囲がより好ましい。(ガラス転移温度+5℃)以上で延伸することにより、ボイドの発生をさらに抑制することが可能である。延伸後のフィルムは、縦方向および横方向の弛緩率を0~10%として、テンター内で150℃~(ポリエステルの融点-5℃)の温度で数秒間熱処理した後、室温まで冷却し、20~200m/分の速度で巻き取る。これによって、所望の厚さのフィルムを得ることができる。
フィルムの厚みは特に限定されないが、5~500μmの範囲が好ましい。
〔粒子の平均粒子径〕
レーザー回折散乱式粒子径測定機(島津製作所社製SALD-7100型)により測定し、体積平均粒子径を粒子の平均粒子径とした。粒子の分散液の調製は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒に、マスターバッチチップを回折・散乱光強度が40~60%になるように溶解し、これを粒子の分散液とした。
有機粒子を60℃で4時間減圧乾燥後、示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー社製、「TG/DTA 7200」)を用いて、大気雰囲気下(住友精化社製 AIR ZERO-A、流量200mL/分)で、30℃から470℃まで20℃/分で昇温した。昇温前の質量に対して5質量%減少する温度を熱分解温度とした。
有機粒子を60℃で4時間減圧乾燥後、示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー社製、「TG/DTA 7200」)を用いて、窒素雰囲気下(住友精化社製 N2 ZERO-A、流量200mL/分)で、30℃から470℃まで20℃/分で昇温した。昇温前の質量に対して5質量%減少する温度を熱分解温度とした。
日本電色工業社製分球式濁度計NDH-300Aにより、ポリエステルフィルムの全光線透過率およびヘーズを測定した。
JIS-Z-8741に規定された方法に従って、グロスメーター(日本電色製VG7000)を用いて、ポリエステルフィルムのポリエステルフィルム層A面について60度鏡面光沢度を測定した。
非接触式表面粗さ測定装置(テーラーホブソン社製タリサーフCCI6000型)を使用して、スライドガラス上に固定したポリエステルフィルムのポリエステルフィルム層A面を対物レンズ20倍で実態計測し、ロバストガウシアンフィルター0.25mmを使用して、ポリエステルフィルムのポリエステルフィルム層A面の表面粗さを解析して、平均値からの偏差の算術平均値を中心線平均粗さRa(μm)とし、高さ上位5つの高さと上位5つの深さを足した平均値を十点平均高さRzとした。
実施例、比較例で得られたポリエステルフィルムを50mm×50mmの大きさに切り出し、当該ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(S-50、ユニチカ社製)とを、ポリエステルフィルム層A面と二軸延伸PETフィルムの非コロナ面とが接触するように重ね合せ、60℃で10kPaの荷重をかけた状態で、24時間放置した。荷重を取り除いて室温まで冷却した後、層AとPETフィルムとの密着状態を調べることで耐ブロッキング性を評価した。
○:層AとPETフィルム間に密着が認められない。
△:層AとPETフィルム間で密着が認められたものの、簡単に剥がれ、層Aに白化などの変化が見られない(実用上問題なし)。
×:層AとPETフィルム間を剥がすときに、層Aが凝集破壊を起こすか、または、剥がした後の層Aが全体的に白くなっている。
実施例、比較例において、ポリエステルフィルムを15時間連続で生産し、操業性について下記の基準で評価した。
○:フィルム外観を含めて問題がなかった。
△:フィルムに多少のスジが入るも、生産には問題がなかった。
×:フィルター昇圧が原因でフィルムを15時間連続生産できない状況に陥った。
JIS A4サイズのケント紙の上に、ポリエステルフィルム層A面が外側になるようにポリエステルフィルムを重ね合わせ、四隅をクリップして、ケント紙にポリエステルフィルムを固定した。この固定した状態のポリエステルフィルムを、窒素雰囲気下の100℃のオーブンに入れ、5時間静置した後、取り出した。
次いで、ポリエステルフィルム層A面を内向きとして底面が(12.5cm×20cm)となるように4辺を折って箱を作成し、この箱に約10mlのアセトニトリルを入れ3分間浸した後、アセトニトリル抽出液および箱の共洗い溶液は20mLメスフラスコに移し、最終的に20mlになるようにメスアップした。溶液中のオリゴマー量を、液体クロマトグラフィー(Waters社製Alliance)を用いて、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したポリエチレンテレフタレートの環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したアセトニトリルに溶解して作成した。
ポリエステルフィルム層A表面の析出オリゴマー量(mg/m2)は、溶液中のオリゴマー量をポリエステルフィルム層Aの面積で除することにより算出した。
液体クロマトグラフの測定条件は次のとおりとした。移動相A:アセトニトリル、移動相B:アセトニトリル/水混合(=7/3)、カラム:Waters社製マイクロボンダスフェア、カラム温度:25℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm。
実施例、比較例で得られたポリエステルフィルムを100℃のオーブンに入れ5時間熱処理した。ポリエステルフィルム層A面に粘着テープ(ニチバン社製LP-24)を貼り、23℃、50%RHの雰囲気で調湿した。その後、調湿したサンプルについて、オートグラフを用いて、クロスヘッド速度300mm/分で、ポリエステルフィルム層A表面から粘着テープを剥がした際の180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。離型性を下記の基準で評価した。
○:1.5N/cm未満
△:1.5N/cm以上、2.5N/cm未満
×:2.5N/cm以上
上記剥離強度の測定においてポリエステルフィルムの層A面から剥離した粘着テープ(ニチバン社製LP-24)を、SUS板に貼付し、23℃、50%RHの雰囲気で調湿した。その後、前記粘着テープとSUS板との剥離強度(F1)を、上記剥離強度の測定方法と同様にして測定した。
一方、未使用の粘着テープを、SUS板に貼付し、23℃、50%RHの雰囲気で調湿した。その後、前記粘着テープとSUS板との剥離強度(F2)を、上記剥離強度の測定方法と同様にして測定した。
得られたF1とF2より、下記式を用いて残留接着率を計算した。
残留接着率(%)=(F1/F2)×100
○:85%以上
△:50%以上85%未満
×:50%未満
[有機粒子]
有機粒子(P-1)~(P-7)として、下記架橋アクリル粒子を使用した 。
P-1:綜研化学社製 KSR-3A
P-2:綜研化学社製 MX-180TA
P-3:JX日鉱日石エネルギー社製 ユニパウダーNMB-0520
P-4:JX日鉱日石エネルギー社製 ユニパウダーNMB-1520
P-5:JX日鉱日石エネルギー社製 ユニパウダーNMB-3020
P-6:綜研化学社製 MX-300
P-7:JX日鉱日石エネルギー社製 ユニパウダーNMB-0520C
P-8:シリカ粒子(平均粒子径2.3μm)
P-9:酸化チタン粒子(平均粒子径0.2μm)
[ポリエステルフィルム層A形成用の樹脂組成物の調製]
有機粒子(P-1)の含有量が4.0質量%となるように、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g)と有機粒子とを二軸混練機にて溶融ブレンドした。常法により払い出しを行った後ペレット化し、常法により乾燥して、ポリエステルフィルム層A形成用の樹脂組成物(A-1)を得た。
[ポリエステルフィルム層B形成用の樹脂組成物の調製]
シリカ粒子(P-8)を含有量が0.05質量%となるように、ポリエチレンテレフタレートペレット(固有粘度0.69dl/g)にブレンドした後、常法により乾燥し、サブ押出機にて溶融して、ポリエステルフィルム層B形成用の樹脂組成物を調製した。
[ポリエステルフィルムの製造]
フィルム層A形成用の樹脂組成物(A-1)の溶融物と、フィルム層B形成用の樹脂組成物の溶融物とを、フィードブロックにて合流させたのち、Tダイより、フィルム層Aとフィルム層Bの厚み比が15/23になるように押出し、表面温度を20℃に温調した冷却ドラム上に静電印加法で密着させて急冷して、厚み650μmの未延伸フィルムを得た。
続いて未延伸フィルムを、90℃に温調した予熱ロール群で予熱した後、90℃に温調した延伸ロール間で周速を変化させて3.5倍に縦延伸し、厚み180μmの縦延伸フィルムを得た。続いて縦延伸フィルムをテンター式延伸機に導き、予熱温度90℃、延伸温度120℃で5倍に横延伸し、続いて245℃で熱処理を行い、200℃で横方向に3%の弛緩処理を行った。
テンターから出たフィルムは、フィルム層B側をコロナ処理した後、フィルム速度90m/minで巻き取り、厚み38μmのポリエステルフィルムを得た。
表1に示すようにポリエステルフィルム層Aを構成する粒子の種類と含有量、ポリエステル樹脂の種類、ポリエステルフィルムの積層構成と厚み構成、を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。なお、実施例8においては、フィルム層Aと層Bを構成するポリエステル樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(固有粘度1.10dl/g)を使用した。
一方、比較例1および2のポリエステルフィルムは、大気雰囲気下における熱分解温度が本発明で規定する範囲よりも低い有機粒子を含有するため、熱処理によってフィルム表面に析出するオリゴマー量が多く、粘着テープの残存接着率が劣り、連続生産においては、オリゴマーの蓄積によりコートスジが入り品位に劣る傾向にあった。
比較例3のポリエステルフィルムは、本発明で規定する有機粒子ではなく無機粒子を含有していたため、長時間の生産によってフィルターが昇圧し生産を途中で中断した。
比較例4のポリエステルフィルムは、フィルム層A中に粒子を含有しなかったため、ロール状に巻いた際のブロッキングが顕著であり、離型性にも劣る傾向であった。
Claims (4)
- 少なくとも一方の最表面がポリエステルフィルム層Aで構成される離型フィルムであって、
ポリエステルフィルム層Aは、大気雰囲気下における熱分解温度が275℃以上であり、平均粒子径が1~30μmである有機粒子を0.1~15質量%含み、
100℃、5時間加熱後のポリエステルフィルム層Aの表面から析出する、有機粒子の添加に伴って増加するオリゴマー量が3.5mg/m2以下であることを特徴とする離型フィルム。 - 有機粒子の平均粒子径が1~15μmであることを特徴とする請求項1記載の離型フィルム。
- 有機粒子が架橋アクリル粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の離型フィルム。
- ポリエステルフィルム層A面における光沢度(60°)が60%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。
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