JP7116555B2 - 皮膜 - Google Patents

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Description

本発明は皮膜に関し、より詳細には撥水性を有する皮膜に関する。
フルオロオキシアルキレン基(フルオロポリエーテル構造)含有化合物を含む組成物から形成される皮膜は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、離形性等を有する。その性質を利用して、特許文献1には(A)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、該(A)成分の平均分子量以下の平均分子量を有する(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを含む含フッ素コーティング剤が開示されている。特許文献1の(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーは、無官能のフルオロオキシアルキレン基を含有する旨が記載されている。
また、特許文献2には、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を主成分とする原料から基材上に製膜された防汚膜が記載され、原料としてパーフルオロポリエーテル構造を有する化合物128、129などが開示されている。
特開2015-199915号公報 WO2006/092927号公報
フルオロポリエーテル構造を有する化合物から得られる皮膜は、用途によっては耐摩耗性が要求される場合があるが、特許文献1、2で得られる皮膜の耐摩耗性は未だ十分ではなかった。
そこで、本発明はフルオロポリエーテル構造を有し、耐摩耗性に優れる皮膜を提供することを目的とする。
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]ポリシロキサン骨格を有する皮膜であって、該皮膜では、
2n+1-で表されるパーフルオロアルキル基を末端に有する1価の基(a)が、前記ポリシロキサン骨格のケイ素原子の少なくとも一部に結合しており、
前記基(a)は基中にパーフルオロポリエーテル構造を有すると共に、-Cm2m-で表される基の少なくとも1種を有し、
飛行時間型二次イオン質量分析計によって測定したCm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度に対する、C2n+1フラグメントイオン強度の比が0.25以上である皮膜。
[2]更に、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を有する構造(b)を有する[1]に記載の皮膜。
[3]前記基(a)が下記式(1a)で表される基である[1]または[2]に記載の皮膜。
Figure 0007116555000001
上記式(1a)中、
Rf11は、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、
Rf12、Rf13、Rf14及びRf15は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基またはフッ素原子であり、
11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
Mは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-(Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基)であり、
Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子であり、
a1、b1、c1、d1及びe1はそれぞれ独立して0~600の整数であり、a1、b1、c1、d1及びe1の合計値は9以上であり、
f1は、1~20の整数であり、
g1は、0~2の整数であり、
a1、b1、c1、d1、e1及びf1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造及び-Cm2m-を形成し、Rf11-及び-Zが末端である限りそれぞれ任意の順に並んでいればよい。
[4]前記構造(b)が下記式(1b)で表される[2]または[3]に記載の皮膜。
Figure 0007116555000002
上記式(1b)中、
1、X2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
30は、ヒドロキシ基又は結合手であり、
Rf31、Rf32、Rf33は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-CF3であり、
Jは-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-O-であり、
a3は1~5、b3は20~200、c3は5~200であり、d3は0又は1であり、
a3、b3、及びc3を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部で、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を形成し、X1-、-(X2d3が末端となる限り、それぞれ任意の順に並んでいればよい。
[5]前記基(a)が上記式(1a)で表され、式(1a)がOCF2CF2CF2O構造及びCF2OCF2構造を含み、かつ
前記構造(b)が上記式(1b)で表され、式(1b)がCF2OCF2構造及びOCF2O構造を含むとともに、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造の少なくとも一種と、OCH2CH2構造及びOCH2O構造の少なくとも一種を含む[4]に記載の皮膜。
[6]前記基(a)が下記式(1a-2)で表されると共に、
前記構造(b)が、下記式(1b-1)で表されると共にCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCH2構造及びOCH2CH2構造を含む構造であるか、又は下記式(1b-2)で表されると共にCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCF2構造及びOCH2O構造を含む構造である[5]に記載の皮膜。
Figure 0007116555000003
上記式(1a-2)中、R50は炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基であり、R51は炭素数が2~24のパーフルオロアルキレン基であり、R52は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、x1は10~60であり、x2は1~8である。
Figure 0007116555000004
上記式(1b-1)中、R60、R61、R62、R63、R64、R65は、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、R61、R62、R63、R64のうち、少なくとも1つのアルキレン基において少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されており、R66及びR67はそれぞれ独立して水素原子又は結合手であり、y1は2~10、y2は1~4、y3~y5はR66及びR67がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が2000~4200となるように定められる値であり、y6は1~4、y7は2~10である。
Figure 0007116555000005
式(1b-2)中、R40及びR43は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R41は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~5のアルキレン基であって、R42は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~3のアルキレン基であり、R44及びR45はそれぞれ独立して水素原子又は結合手であり、w1及びw4はそれぞれ独立して1~3であり、w2及びw3は、R44及びR45がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が3800~4200となるように定められる値である。
[7]X線光電子分光法により測定される酸素(O1s)のスペクトルを解析して求められるCF2OCF2構造のOに由来するピーク強度に対する、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造のOに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上である[5]または[6]に記載の皮膜。
[8]X線光電子分光法により測定される炭素(C1s)のスペクトルを解析して求められるOCF2O構造とOCF2CF2構造のCに由来するピーク強度の合計に対する、OCH2CH2構造及びOCH2O構造のCに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上である[5]~[7]のいずれかに記載の皮膜。
本発明によれば、皮膜の表面で測定されるCm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度に対する、C2n+1フラグメントイオン強度の比が所定以上であるため、皮膜の耐摩耗性に優れている。
本発明の皮膜は、ポリシロキサン骨格を有する皮膜(通常、透明な皮膜である)であって、末端がCn2n+1-で表されるパーフルオロアルキル基である1価の基(a)が、前記ポリシロキサン骨格のケイ素原子の少なくとも一部(好ましくは全部)に結合している。前記基(a)は、基中にパーフルオロポリエーテル構造を有すると共に、-Cm2m-で表されるパーフルオロアルキレン基の少なくとも1種を有している。そして、皮膜を飛行時間型二次イオン質量分析計(以下、TOF-SIMSと呼ぶ)によって測定した際、Cm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度(基(a)中の-Cm2m-基が1種のみである場合には、その1種の-Cm2m-基の強度を意味する)に対する、Cn2n+1-フラグメントイオン強度の比(以下、単にイオン強度比と呼ぶ)が0.25以上である。なお、上記した-Cm2m-基は、パーフルオロポリエーテル構造中のパーフルオロアルキレンは含まない意味である。
TOF-SIMSによれば、皮膜の表面から約1nm程度の領域(以下、皮膜の最表面と呼ぶ)を測定することができ、上記イオン強度比が0.25以上であることは、皮膜の最表面にCn2n+1-基が十分に存在することを意味し、このようにすることで皮膜の耐摩耗性を確保することができる。前記イオン強度比は、0.27以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.40以上であり、上限は例えば0.60以下である。
TOF-SIMSの測定条件は、例えばULVAC-PHI社製(米国)PHI TRIFT V nanoTOFを用いた。一次イオンとして、Auを用い、加速電圧は30kVとし、100μm×100μmのエリアを測定した。測定質量範囲は、正二次イオンに対して、0.0a.m.u.~1850a.m.u.とした。積算時間は、照射するAuイオンの量が、1.0×1012個/cm2以下となるように調整し、正二次イオン測定においては5分間とした。測定中のチャージ補正対策として、帯電補正用電子銃を適宜使用した。
基(a)の末端に存在するC2n+1-基のnは、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また5以下が好ましく、より好ましくは4以下である。また、基(a)中の-Cm2m-基のmは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上であり、また5以下が好ましく、より好ましくは4以下である。基(a)は、-Cm2m-基のうち、少なくとも-C24-を含むことが好ましい。また、Cm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度を示す基が-C24-であることがより好ましく、この時、基(a)が末端に有するC2n+1-基がC37-であることが更に好ましい。すなわち、C24フラグメントイオン強度に対するC37フラグメントイオン強度の比(C37フラグメントイオン/C24フラグメント)が0.25以上であることが特に好ましく、この場合のイオン強度比の好ましい範囲は前述の範囲と同様である。
基(a)中のパーフルオロポリエーテル構造(パーフルオロオキシアルキレン基とも言える)は、皮膜に撥水性を与えることができ、パーフルオロポリエーテル構造中の炭素数は、例えば5以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは20以上であり、特に50以上が好ましい。前記炭素数の上限は特に限定されないが、例えば200程度であってもよい。
基(a)中のパーフルオロポリエーテル構造は、Cm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度を示す-Cm2m-基よりも、末端側(C2n+1-基側)に位置することが好ましい。また、基(a)は直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよい。
基(a)は、下記式(1a)で表されることが好ましい。
Figure 0007116555000006
上記式(1a)中、
Rf11は、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、
Rf12、Rf13、Rf14及びRf15は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基またはフッ素原子であり、
11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
Mは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-(Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基)であり、
Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子であり、
a1、b1、c1、d1及びe1はそれぞれ独立して0~600の整数であり、a1、b1、c1、d1及びe1の合計値は9以上であり、
f1は、1~20の整数であり、
g1は、0~2の整数であり、
a1、b1、c1、d1、e1及びf1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造及び-Cm2m-を形成し、Rf11-及び-Zが末端である限りそれぞれ任意の順に並んでいればよい。
Rf12が複数存在する場合は、複数のRf12は互いに同一であっても異なっていてもよく、Rf13、Rf14、Rf15、R11、R12、R13、R14、M、及びYが複数存在する場合についても同様である。
Rf11は、好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基である。
Rf12、Rf13、Rf14及びRf15は、好ましくはそれぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~2のアルキル基またはフッ素原子であり、より好ましくはすべてフッ素原子である。
11、R12、R13及びR14は、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
Mは、好ましくはそれぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-、-O-C(=O)-であり、より好ましくはすべて-O-である。
Yは、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
Zは、好ましくは水素原子である。
好ましくはa1、c1及びd1はそれぞれb1の1/2以下であり、より好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくはc1又はd1は0であり、特に好ましくはc1及びd1は0である。
e1は、好ましくはa1、b1、c1及びd1の合計値の1/5以上であり、a1、b1、c1及びd1の合計値以下である。
b1は、20以上、600以下が好ましく、より好ましくは20以上、200以下であり、更に好ましくは50以上、200以下である。e1は4以上、600以下が好ましく、より好ましくは4以上、200以下であり、更に好ましくは10以上、200以下である。a1、b1、c1、d1及びe1の合計値は、20以上、600以下が好ましく、20以上、200以下がより好ましく、50以上、200以下が更に好ましい。
f1は、好ましくは1以上、18以下である。更に好ましくは、1以上、15以下である。
g1は、好ましくは0以上、1以下である。
a1、b1、c1、d1及びe1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の順序について、好ましくは最も固定端側(ケイ素原子と結合する側)のb1を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa1を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置し、より好ましくは最も固定端側のb1及びd1を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa1及びc1を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置する。また、e1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも2つ存在することが好ましい。
式(1a)において、特にRf11が炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、Rf12、Rf13、Rf14及びRf15が全てフッ素原子、Mが全て-O-、Y及びZがいずれも水素原子、a1が0、b1が30~150(より好ましくは80~140)、e1が30~60、c1及びd1が0、g1が0以上1以下(特に0)、f1が1~10であることが好ましい。
前記基(a)は、下記式(1a-1)で表されることがより好ましい。
Figure 0007116555000007
上記式(1a-1)中、R50は炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基であり、R51は炭素数が2~24のパーフルオロアルキレン基であり、R52は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R53は炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、x1は10~60であり、x2は1~10である。R50、R53、及びR52の炭素数は、それぞれ独立に2~4が好ましく、2~3がより好ましく、R51の炭素数は、2~6が好ましく、x1は20~50が好ましく、x2は1~6が好ましい。R52、R53が複数存在する場合には、複数のR52は同一であっても異なっていてもよく、複数のR53は同一であってもことなっていてもよい。
前記基(a)は、上記式(1a-1)におけるR53が-CF2CF2CF2-であること、すなわち、下記式(1a-2)で表されることが好ましい。
Figure 0007116555000008
上記式(1a-2)におけるR50、R51、R52、x1、x2は、上記式(1a-1)におけるR50、R51、R52、x1、x2と同じである。
本発明の皮膜は、構造(b)を有していることが好ましく、構造(b)は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を有する。構造(b)は、前記イオン強度比を0.25以上にするのに有効に作用する。構造(b)は、基材やポリシロキサン骨格のケイ素原子などと結合しうる基(例えば1~3価)として存在していてもよいし、ヒドロキシ基とオキシアルキレン単位(但し、オキシアルキレン単位の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されている)を有する化合物の形で存在してもよい。
構造(b)は、下記式(1b)で表されることが好ましい。
Figure 0007116555000009
上記式(1b)中、
1、X2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
30は、ヒドロキシ基又は結合手であり、
Rf31、Rf32、Rf33は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-CF3であり、
Jは-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-O-であり、
a3は1~5、b3は20~200、c3は5~200であり、d3は0又は1であり、
a3、b3、及びc3を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部で、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を形成し、X1-、-(X2d3が末端となる限り、それぞれ任意の順に並んでいればよい。またa3、b3、c3で括られる単位が複数存在する場合には、複数のa3で括られる単位は互いに異なっていても同一であってもよく、b3、c3についても同様である。
上記式(1b)は、パーフルオロアルキレン基を含むことが好ましく、特に-C24-を含むことが好ましい。
30はヒドロキシ基であることが好ましく、Rf31、Rf32、Rf33は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましく、X1、X2はいずれも水素原子であることが好ましく、Jは-O-であることが好ましく、a3は1以上3以下が好ましく、より好ましくは1又は2(最も好ましくは1)である。b3は30以上100以下が好ましく、c3は10以上80以下が好ましく、d3は0又は1が好ましい。b3、c3は、後記する式(1B)で表される化合物の数平均分子量が2000~4500、より好ましくは2500~4500となるように定められることも好ましい。最も好ましくは、R30がヒドロキシ基であり、Rf31、Rf32、Rf33がそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、X1、X2がいずれも水素原子であり、Jが-O-であり、a3が1又は2であり、b3、c3が、後記する式(1B)で表される化合物の数平均分子量が2000~4500(より好ましくは2500~4500)となるように定められる値であり、d3が1であることが好ましい。
構造(b)は、下記式(1b-1)又は(1b-2)で表されることがより好ましい。
Figure 0007116555000010
上記式(1b-1)中、R60、R61、R62、R63、R64、R65は、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1~6(好ましくは1~5)のアルキレン基であり、R61、R62、R63、R64のうち、少なくとも1つのアルキレン基において少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されており、R66及びR67はそれぞれ独立して水素原子又は結合手であり、y1は2~10、y2は1~4、y3~y5はR66及びR67がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が2000~4200となるように定められる値であり、y6は1~4、y7は2~10である。y1で括られる単位が複数存在する場合には、複数のy1で括られる単位は互いに異なっていても同一であってもよく、y2~y7で括られる単位についても同様である。
60、R61、R62、R64及びR65は、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数2~4(より好ましくは炭素数2~3)のアルキレン基であることが好ましく、このときR60及びR65はいずれの水素原子も置換されていないアルキレン基(特に-C24-)であることが好ましい。またR63は炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~2(特に2)のパーフルオロアルキレン基である。R66及びR67は少なくともいずれかがヒドロキシ基であることが好ましく、いずれもヒドロキシ基であることがより好ましい。y1は3~9が好ましく、より好ましくは4~8であり、y2は1~3が好ましく、より好ましくは1~2であり、y6は1~3が好ましく、より好ましくは1~2であり、y7は3~9が好ましく、より好ましくは4~8である。
Figure 0007116555000011
式(1b-2)中、R40及びR43は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R41は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~5のアルキレン基であって、R42は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~3のアルキレン基であり、R44及びR45はそれぞれ独立して水素原子又は結合手であり、w1及びw4はそれぞれ独立して1~3であり、w2及びw3は、R44及びR45がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が3800~4200となるように定められる値である。w1で括られる単位が複数存在する場合には、複数のw1で括られる単位は互いに異なっていても同一であってもよく、w2~w4で括られる単位についても同様である。
40及びR43は、それぞれ独立して炭素数1~2(特に1)のアルキレン基であることが好ましく、R41は水素原子の少なくとも1つ(好ましくは全ての水素原子)がフッ素原子に置換されている炭素数1~3(特に2)のアルキレン基であることが好ましく、R42は水素原子の少なくとも1つ(好ましくは全ての水素原子)がフッ素原子に置換されている炭素数1~2(特に2)のアルキレン基であることが好ましく、w1及びw4はそれぞれ独立して1~2であることが好ましく、R44及びR45は少なくともいずれかがヒドロキシ基であることが好ましく(いずれもヒドロキシ基であることがより好ましい)、これらの要件を同時に満たすことがより好ましい。
本発明の皮膜は、基(a)と構造(b)とを含み、基(a)が上記式(1a)で表される基であると共に、基(1a)がOCF2CF2CF2O構造及びCF2OCF2構造を含み(以下、条件(Xa)と呼ぶ)、前記構造(b)が上記式(1b)で表され、式(1b)がCF2OCF2構造及びOCF2O構造を含むとともに、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造の少なくとも一種と、OCH2CH2構造及びOCH2O構造の少なくとも一種を含む(以下、条件(Xb)と呼ぶ)ことが好ましい。
基(a)が条件(Xa)を満足すると共に、構造(b)が条件(Xb)を満足する場合、基(a)が上記式(1a-2)で表され、且つ構造(b)が式(1b-1)で表されると共に式(1b-1)がCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCH2構造及びOCH2CH2構造を含む構造であるか、又は(1b-2)で表されると共に式(1b-2)がCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCF2構造及びOCH2O構造を含む構造であることが好ましい。
基(a)が条件(Xa)を満足すると共に、構造(b)が条件(Xb)を満足する場合、本発明の皮膜をX線光電子分光法(XPS)で測定し、(i)酸素(O1s)のスペクトルを解析して求められるCF2OCF2構造のOに由来するピーク強度に対する、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造のOに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上であること、又は(ii)炭素(C1s)のスペクトルを解析して求められるOCF2O構造とOCF2CF2構造とのCに由来するピーク強度の合計に対する、OCH2CH2構造及びOCH2O構造のCに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上であることが好ましく、前記(i)及び(ii)の両方を満たすことがより好ましい。本発明の皮膜が(i)及び/又は(ii)を満たすことで、基(a)と構造(b)の存在比率を適切に調節することができる結果、皮膜の耐摩耗性を良好にできる。
XPS測定における上記(i)において、O1sのスペクトルを解析して求められるCF2OCF2構造のOに由来するピーク強度とは、すなわち、Oの両隣がCF2である部分が存在する場合に検出され、同様に、CH2OCH2構造のOに由来するピーク強度は、Oの両隣がCH2である部分が存在する場合に、CH2OCF2構造のOに由来するピーク強度は、Oの両隣がCH2及びCF2である部分が存在する場合に検出される。上記(ii)において、C1sのスペクトルを解析して求められるOCF2O構造のCに由来するピーク強度とは、CF2の両隣がOである部分が存在する場合に検出され、OCF2CF2構造のCに由来するピーク強度とは、CF2の両隣がO及びCF2である場合に検出される。また、OCH2CH2構造のCに由来するピーク強度は、CH2の両隣がO及びCH2である場合に検出され、OCH2O構造のCに由来するピーク強度は、CH2の両隣がOである場合に検出される。前記(i)におけるXPSのピーク強度比は、0.10以上がより好ましく、更に好ましくは0.15以上であり、また0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよい。前記(ii)におけるXPSのピーク強度比は、0.10以上がより好ましく、更に好ましくは0.13以上であり、0.30以下であってもよく、0.25以下であってもよい。
前記XPS測定には、日本電子社製 JFS-9010型を用いた。励起X線として、MgKαを用い、X線出力は110Wとし、光電子脱出角度は45°、パスエネルギー50eVにて、フッ素(F1s)、酸素(O1s)、炭素(C1s)、ケイ素(2/3)の各種元素について、測定を行った。測定中に試料がチャージアップする場合には、適宜帯電補正用電子銃を用いた。さらに測定スペクトルの化学シフトの帯電補正は、各種標準サンプルなどで実施することができるが、今回は酸素のスペクトルのうち、CF2-O-CF2構造のO1sによるスペクトルをエネルギー基準536.5eVと補正した。
本発明の皮膜の膜厚は、例えば1nm~20nmであり、下限は2nm以上であってもよく、また上限は15nm以下であってもよい。
本発明の皮膜の算術平均粗さRa(JIS B0601)は、例えば1.2nm以下であり、1.0nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8nm以下である。算術平均粗さRaの下限は特に限定されないが、例えば0.05nm以上であり、0.1nm以上であってもよい。
本発明の皮膜の、液滴法でθ/2法により解析(水滴量は3μL)される初期接触角は、例えば110°以上とすることができ、好ましくは113°以上であり、より好ましくは115°以上であり、上限は特に限定されないが、例えば125°程度である。また、動摩擦係数は、0.12以下であり、下限は特に限定されないが例えば0.10である。また後記する実施例で評価される耐摩耗回数は、7,000回以上であり、より好ましくは8,000回以上、更に好ましくは10,000回以上であり、上限は特に限定されないが、例えば13,000回である。このように、本発明の皮膜は、撥水性、耐摩耗性が要求される用途に有用に用いられる。
本発明の皮膜は、例えば、下記の化合物(A)と、下記の化合物(B)を含む組成物を真空蒸着によって基材に成膜することにより得られる。
化合物(A)は、C2n+1-で表されるパーフルオロアルキル基を末端に有する1価の基(a)と、加水分解性基及びヒドロキシ基のいずれかである基(a2)が、ケイ素原子に結合している化合物であり、基(a)は、基中にパーフルオロポリエーテル構造と-Cm2m-で表される基を有する。
化合物(A)における基(a)は、本発明の皮膜で説明した基(a)と同じものを意味する。
また、化合物(A)では、ケイ素原子に加水分解性基及びヒドロキシ基の少なくともいずれか一方である基(a2)が結合しており、該加水分解性基及びヒドロキシ基は、それぞれ加水分解及び/又は脱水縮合反応を通じて、化合物(A)同士を結合するか、又は化合物(A)と基材表面のヒドロキシ基などに由来する活性水素とを結合する、或いは化合物(A)と化合物(B)のヒドロキシ基とを結合する作用を有する。加水分解性基としては、例えばアルコキシ基(特に炭素数1~4のアルコキシ基)、アセトキシ基、ハロゲン原子(特に塩素原子)などが挙げられる。好ましい加水分解性基は、アルコキシ基及びハロゲン原子であり、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
ケイ素原子に結合する加水分解性基の数は、1つ以上であればよく、2または3であってもよいが、2または3であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。2つ以上の加水分解性基がケイ素原子に結合している場合、異なる加水分解性基がケイ素原子に結合していてもよいが、同じ加水分解性基がケイ素原子に結合しているのが好ましい。ケイ素原子に結合する含フッ素基と加水分解性基との合計数は、通常4であるが、2または3(特に3)であってもよい。3以下の場合、残りの結合手には、例えば、アルキル基(特に炭素数が1~4のアルキル基)、水素原子、イソシアネート基などが結合できる。
化合物(A)の数平均分子量は特に限定されないが、例えば2500以上(好ましくは4000以上)、15000以下(好ましくは12000以下)である。
化合物(A)としては、例えば下記式(1A)の化合物が挙げられる。
Figure 0007116555000012
上記式(1A)におけるRf11、Rf12、Rf13、Rf14、Rf15、R11、R12、R13、R14、M、Y、Z、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1は、いずれも上記式(1a)中のこれらと同じものを意味する。
Gは、加水分解性基またはヒドロキシ基であり、R15は炭素数1~20のアルキル基である。pは1~3の整数である。Gはアルコキシ基又はハロゲン原子が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、又は塩素原子が好ましい。pは2~3が好ましく、3がより好ましい。
化合物(A)としては、式(1A)において、Rf11が炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、Rf12、Rf13、Rf14及びRf15が全てフッ素原子、Mが全て-O-、Y及びZがいずれも水素原子、Gがメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)、a1が0、b1が30~150(より好ましくは80~140)、e1が30~60、c1及びd1が0、g1が0以上1以下(特に0)、f1が1~10、pが3である化合物を用いることが好ましい。
なお、後記する実施例で化合物(A)として用いた化合物a1を上記式(1A)で表すと、Rf11がC37-であり、Rf12及びRf13がいずれもフッ素原子であり、a1=c1=d1=0であり、b1が131、e1が44、f1が1~6、g1が0、Y及びZが水素原子、Mが-O-であり、Gがメトキシ基、pが3である。
化合物(A)としては、式(1A-1)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 0007116555000013
式(1A-1)におけるR50、R51、R52、及びR53は、それぞれ式(1a-1)におけるこれらと同じものを意味する。R54は炭素数が1~3のアルキル基である。
式(1A-1)において、R50、R53、及びR52の炭素数が、それぞれ独立に2~4(2~3がより好ましい)、R51の炭素数が2~6、R54の炭素数が1~2、x1が20~50、x2が1~6である化合物が更に好ましく、これに加えてR53が-CF2CF2CF2-であることが最も好ましい。
化合物(B)は、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位と、ヒドロキシ基とを有する化合物であって、数平均分子量が10000未満である化合物が好ましい。化合物(B)のヒドロキシ基が、ガラスなどの基材または化合物(A)と相互作用を形成して、はがれ難くなるため、化合物(B)の代わりにヒドロキシ基を有さない類似構造の化合物を用いる場合と比べて、皮膜の耐摩耗性が向上できると考えられる。
また、化合物(B)の数平均分子量は、真空蒸着によって得られる皮膜に化合物(B)に由来する成分を十分確保して、上述したイオン強度比を0.25以上とする観点から10000未満であることが重要であり、下限は例えば1000程度であることが好ましい。化合物(B)の数平均分子量は好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。
化合物(B)中のヒドロキシ基は少なくとも1つあればよく、好ましくは5以下であり、より好ましくは2以下である。また、化合物(B)は、ヒドロキシ基中の水素原子以外の水素原子数と、フッ素原子数との合計に対するフッ素原子数の割合は40%以上であることが好ましく、このようにすることで良好な撥水性を発揮できる。前記したフッ素原子数の割合は、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは55%以上であり、上限は特に限定されず100%であってもよく、例えば80%程度であってもよい。
化合物(B)は、下記式(1B)で表されることが好ましい。
Figure 0007116555000014
上記式(1B)中、X1、X2、Rf31、Rf32、Rf33、J、a3、b3、及びc3は、それぞれ上記式(1b)中におけるこれらと同じものを意味する。
化合物(B)は、下記式(1B-1)又は(1B-2)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 0007116555000015
上記式(1B-1)におけるR60、R61、R62、R63、R64、R65、y1、y2、y3、y4、y5、y6、y7は、いずれも上記式(1b-1)におけるこれらと同じものを意味する。
Figure 0007116555000016
上記式(1B-2)におけるR40、R41、R42、R43、w1、w2、w3及びw4は、いずれも上記式(1b-2)におけるこれらと同じものを意味する。
皮膜形成用組成物中の化合物(A)に対する化合物(B)の質量比は0.03以上であることが好ましい。このようにすることで、前記したTOF-SIMSにより測定されるイオン強度比を0.25以上とすることができ、得られる皮膜の耐摩耗性を向上できる。組成物中の化合物(A)に対する化合物(B)の質量比は、0.06以上がより好ましく、0.125以上が更に好ましく、0.2以上が一層好ましい。得られる皮膜の撥水性と耐摩耗性のバランスを考慮すると、該質量比の上限は0.5以下が好ましく、より好ましくは0.4以下である。
皮膜形成用組成物100質量%中の、化合物(A)と化合物(B)との合計含有量は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは12質量%以上であり、更に好ましくは14質量%以上であり、上限は特に限定されないが、例えば30質量%以下であり、28質量%以下であってもよく、26質量%以下であることも好ましい。
本発明の皮膜形成用組成物は、上記した化合物(A)及び(B)と共に、フッ素系溶剤(C)を含むことが好ましい。フッ素系溶剤(C)は、例えばフッ素化エーテル系溶剤、フッ素化アミン系溶剤、フッ素化炭化水素系溶剤(特にフッ素化芳香族溶剤)等を用いることができ、特に沸点が100℃以上であることが好ましい。フッ素化エーテル系溶剤としては、フルオロアルキル(特に炭素数2~6のパーフルオロアルキル基)-アルキル(特にメチル基又はエチル基)エーテルなどのハイドロフルオロエーテルが好ましく、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルが挙げられる。エチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルとしては、例えばNovec(登録商標)7200(3M社製、分子量約264、沸点76℃)が挙げられる。フッ素化アミン系溶剤としては、アンモニアの水素原子の少なくとも1つがフルオロアルキル基で置換されたアミンが好ましく、アンモニアの全ての水素原子がフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)で置換された第三級アミンが好ましく、具体的にはトリス(ヘプタフルオロプロピル)アミンが挙げられ、フロリナート(登録商標)FC-3283(分子量約471、沸点128℃)がこれに該当する。フッ素化炭化水素系溶剤としては、1,3-ビス(トリフルオロメチルベンゼン)(沸点:約116℃)が挙げられる。
フッ素系溶剤(C)としては、上記の他、アサヒクリン(登録商標)AK225(旭ガラス社製)などのハイドロクロロフルオロカーボン、アサヒクリン(登録商標)AC2000(旭ガラス社製)などのハイドロフルオロカーボンなどを用いることができる。
フッ素系溶剤(C)の分子量は、好ましくは900以下であり、より好ましくは800以下であり、下限は特に限定されないが、例えば300程度である。
前記組成物中におけるフッ素系溶剤(C)の含有量は、組成物の全質量に対して例えば20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは88質量%以下であり、更に好ましくは86質量%以下である。
前記組成物は、さらにシラノール縮合触媒を含んでいてもよい。シラノール縮合触媒としては、塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸などの有機酸、チタン錯体(たとえば、松本ファインケミカル製、オルガチクスTC-750など)や錫錯体などの金属錯体や金属アルコキシドなどがあげられる。シラノール縮合触媒の量は、組成物の全質量に対して、例えば、0.00001~0.1質量%、好ましくは、0.00002~0.01質量%、さらに好ましくは0.0005~0.001質量%である。
前記組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等、各種の添加剤を含有していてもよい。
前記組成物が各種の添加剤を含む場合、各種の添加剤の含有量としては、例えば、前記組成物のポリマー成分に対して、0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
前記組成物は、真空蒸着によって基材に皮膜を形成することが好ましい。真空蒸着の条件としては、公知の条件を採用することができる。真空度は、例えば2.0×10-3Pa以下程度である。また蒸着処理時の加熱方法としては、抵抗加熱方式、電子ビーム加熱方式のいずれを用いてもよく、加熱温度は、例えば100~400℃である。成膜時間は例えば1~90秒程度である。
真空蒸着の後は、空気中で、室温で静置するか又は加温(例えば50~150℃で5~30分)することで、空気中の水分を取り込んで、化合物(A)のケイ素原子に結合した加水分解性基が加水分解され、シロキサン結合が形成され、硬化した皮膜を得ることができる。
前記組成物を蒸着する基材の材料は特に限定されず、有機系材料、無機系材料のいずれでもよく、基材の形状は平面、曲面のいずれであってもよいし、多数の面が組み合わさった三次元的構造でもよい。前記有機系材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。前記無機系材料としては、鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属、これら金属を含む合金、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。この中でも特にガラス、金属、セラミックス等の無機材料の基材に、前記組成物を蒸着して皮膜を形成することが好ましい。
基材に皮膜を形成した後は、蒸着したままでもよいし、所定の後処理を行ってもよく、後処理をすることによって皮膜の耐摩耗性をより向上できる。後処理としては、加熱保持すること、加湿雰囲気に静置すること、超音波洗浄すること、溶媒を含む布や乾いた布で表面を拭くことなどが挙げられ、これらの後処理は単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。この中でも特に加熱保持すること、超音波洗浄すること、乾いた布で表面を拭くことが好ましい。加熱保持は、例えば100~200℃で10~60分保持すればよく、超音波洗浄は、例えば水、フッ素系溶媒、又はアルコールなどを洗浄液として1~5分程度行えばよく、乾いた布で表面を拭くのは、数回行えばよい。耐摩耗性をより高める観点からは、加熱保持の後、表面を乾いた布で拭くことや、超音波洗浄を行うことが好ましい。前記組成物は、ヒドロキシ基を有する化合物(B)を含むので、組成物が従来のヒドロキシ基を有さない化合物を含む場合に比べ、加熱保持を行うことにより、化合物(B)と基材(例えばガラス)または化合物(A)との相互作用がより高い耐久力をもつ状態に変化することが期待される。また、表面を拭くことで、余剰分が除去され、より平滑で濁りのない膜が得られる。そのような膜上では、耐摩耗試験時の抵抗が低くなり、耐摩耗性がより高くなると予想される。
基材には予め易接着処理を施しておいてもよい。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の親水化処理が挙げられる。また、樹脂、シランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等によるプライマー処理を用いてもよい。また、蒸着で二酸化けい素層を製膜してもよい。基材に親水化処理を行うことで、基材の表面にヒドロキシ基(特に、基材がガラス、または、エポキシ樹脂から形成されるハードコート層である場合)又はカルボキシ基(特に、基材がポリカーボネート等の樹脂や、アクリル樹脂から形成されるハードコート層である場合)等の官能基(親水性基)を形成させることができる。基材の表面に、前記官能基が形成されていると、基材と皮膜との密着性を向上できる。蒸着を行う前に、親水化処理を行うことが好ましく、プラズマ処理を行うことがより好ましい。
プラズマ処理としては、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理が挙げられる。真空プラズマ処理は、例えば、卓上プラズマ処理装置(YHS-360;株式会社魁半導体製)を用いて行うことができる。プラズマ処理は、5分以上行うことが好ましく、10分以上行うことがより好ましい。このように処理を行うことによって、基材表面が十分に親水化する。
プライマー層としては、下記式(p1)で表される化合物及び/又はその部分加水分解縮合物からなる(E)成分を含むプライマー層形成用組成物を用いて形成された層が好ましい。
Si(X24 ・・・(p1)
(ただし、式(p1)中、複数あるX2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアネート基を示す。)
上記式(p1)中、X2はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1~4のアルコキシ基またはイソシアネート基であることが好ましく、さらに4個のX2が同一であることが好ましい。
このような式(p1)で示される化合物として、具体的には、Si(NCO)4、Si(OCH34、Si(OC254等が好ましく用いられる。(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プライマー層形成用組成物に含まれる(E)成分は、上記式(p1)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。上記式(p1)で表される化合物の部分加水分解縮合物は、酸や塩基触媒を用いた一般的な加水分解縮合方法を適用することで得ることができる。ただし、部分加水分解縮合物の縮合度(多量化度)は、生成物が溶媒に溶解する程度である必要がある。(E)成分としては、上記式(p1)で表される化合物であっても、上記式(p1)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよく、上記式(p1)で表される化合物とその部分加水分解縮合物との混合物、例えば、未反応の上記式(p1)で表される化合物が含まれる該化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。なお、上記式(p1)で表される化合物やその部分加水分解縮合物としては市販品があり、本発明にはこのような市販品を用いることが可能である。
また、プライマー層形成用組成物は、上記(E)成分と、下記式(p2)で表わされる化合物(化合物(p2)という場合がある)及び/又はその部分加水分解縮合物からなる(F)成分とを含む、もしくは、上記(E)成分と上記(F)成分の部分加水分解縮合物(ただし、上記(E)成分及び/又は上記化合物(p2)を含んでもよい)を含む組成物であってもよい。
(X33Si-(CH2p-Si(X33 ・・・(p2)
(ただし、式(p2)中、複数あるX3はそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基を示し、pは1~8の整数である。)
式(p2)で表される化合物は、2価有機基を挟んで両末端に加水分解性シリル基またはシラノール基を有する化合物である。
式(p2)中、X3で示される加水分解性基としては、上記X2と同様の基または原子が挙げられる。上記式(p2)で表される化合物の安定性と加水分解のし易さとのバランスの点から、X3としては、アルコキシ基及びイソシアネート基が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数1~4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。これらは、製造上の目的、用途等に応じて適宜選択され用いられる。式(p2)中に複数個存在するX3は同じ基でも異なる基でもよく、同じ基であることが入手しやすさの点で好ましい。
式(p2)で表される化合物として、具体的には、(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH33、(OCN)3SiCH2CH2Si(NCO)3、Cl3SiCH2CH2SiCl3、(C25O)3SiCH2CH2Si(OC253、(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33等が挙げられる。(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プライマー層形成用組成物に含まれる成分は、式(p2)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。式(p2)で表される化合物の部分加水分解縮合物は、式(p1)で表される化合物の部分加水分解縮合物の製造において説明したのと同様の方法で得ることができる。部分加水分解縮合物の縮合度(多量化度)は、生成物が溶媒に溶解する程度である必要がある。(F)成分としては、式(p2)で表される化合物であっても、式(p2)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよく、式(p2)で表される化合物とその部分加水分解縮合物との混合物、例えば、未反応の式(p2)で表される化合物が含まれる該化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。なお、上記式(p2)で示される化合物やその部分加水分解縮合物としては市販品があり、本発明にはこのような市販品を用いることが可能である。
また、プライマー層には、上記式(p1)と同様のケイ素を主成分とする酸化膜を得ることができる、各種ポリシラザンを用いてもよい。
プライマー層形成用組成物は、通常、層構成成分となる固形分の他に、経済性、作業性、得られるプライマー層の厚さ制御のしやすさ等を考慮して、有機溶剤を含む。有機溶剤は、プライマー層形成用組成物が含有する固形分を溶解するものであれば特に制限されない。有機溶剤としては、本発明の皮膜形成用組成物に用いられる溶剤と同様の化合物が挙げられる。有機溶剤は1種に限定されず、極性、蒸発速度等の異なる2種以上の溶剤を混合して使用してもよい。プライマー層形成用組成物が、部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含有する場合、これらを製造するために使用した溶媒を含んでもよい。
さらに、プライマー層形成用組成物においては、部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含まないものであっても、加水分解共縮合反応を促進させるために、部分加水分解縮合の反応において一般的に使用されるのと同様の酸触媒等の触媒を配合しておくことも好ましい。部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含む場合であっても、それらの製造に使用した触媒が組成物中に残存していない場合は、触媒を配合することが好ましい。プライマー層形成用組成物は、上記含有成分が加水分解縮合反応や加水分解共縮合反応するための水を含んでいてもよい。
プライマー層形成用組成物を用いてプライマー層を形成する方法としては、オルガノシラン化合物系の表面処理剤における公知の方法を用いることが可能である。例えば、はけ塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗り等の方法でプライマー層形成用組成物を基体の表面に塗布し、大気中または窒素雰囲気中において、必要に応じて乾燥した後、硬化させることで、プライマー層を形成できる。硬化の条件は、用いる組成物の種類、濃度等により適宜制御される。なお、プライマー層形成用組成物の硬化は、撥水膜形成用組成物の硬化と同時に行ってもよい。
プライマー層の厚さは、その上に形成される透明皮膜に耐湿性を付与できる他、基材との密着性を付与でき、また基材からのアルカリ等をバリアできる厚さであれば特に限定されない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)膜厚の測定
測定には、リガク社製X線反射率測定装置(SmartLab)を用いた。X線源として45kWのX線発生装置、CuターゲットによるCuKα線の波長λ=0.15418nmまたはCuKα1線の波長λ=0.15406nmを使用し、また、モノクロメータは、用いない。設定条件として、サンプリング幅は0.01°、走査範囲0.0~2.5°に設定した。そして、上記設定条件により測定し、反射率測定値を得た。得られた測定値を、同社解析ソフト(GlobalFit)を用いて解析した。
(2)初期接触角の測定
接触角測定装置(協和界面科学社製 DM700)を用い、液滴法(解析方法:θ/2法)で液量:3μLにて、皮膜表面の水の接触角を測定した。
(3)耐摩耗性の評価
minoan製消しゴムを具備したスクラッチ装置を用い、消しゴムがサンプルに接した状態で、荷重1000gをかけ、40r/minでサンプルを動かすことによって摩耗試験を行った。摩耗回数1000回ごとに接触角を測定し、初期接触角から-15度以下となるまでの回数を測定した。
(4)動摩擦係数の測定
トライボギア往復摩耗試験機(TYPE:38、HEIDON社製)を使用し、ASTM D1894を参考に、表面の動摩擦係数を測定した。具体的には、摩擦子として、直径10mm、SUJ2製のボール圧子を使用し、荷重1000g、速度40mm/secとして測定を行った。
(5)TOF-SIMSによる皮膜測定
ULVAC-PHI社製(米国)PHI TRIFT V nanoTOFを用いた。一次イオンとして、Auを用い、加速電圧は30kVとし、100μm×100μmのエリアを測定した。測定質量範囲は、正二次イオンに対して、0.0a.m.u.~1850a.m.u.として測定した。積算時間は、照射するAuイオンの量が、1.0×1012個/cm2以下となるように調整した。正二次イオン測定においては5分間とした。チャージ補正対策としては、帯電補正用のカーボンテープおよび帯電補正用電子銃を用いた。
(6)XPSによる皮膜測定
日本電子社製 JFS-9010型を用いた。励起X線として、MgKαを用い、X線出力は110Wとし、光電子脱出角度は45°、パスエネルギー50eVにて、フッ素(F1s)、酸素(O1s)、炭素(C1s)、ケイ素の各種元素について、測定を行った。測定中にチャージアップが生じてしまう場合には、帯電補正用電子銃を用いた。さらに測定スペクトルの化学シフトの帯電補正を行う際には、適宜標準サンプルを用いることが出来るが、今回は、酸素のスペクトルのうち、CF2-O-CF2構造によるスペクトルをエネルギー基準536.5eVと補正した。
さらに、酸素(O1s)、炭素(C1s)のスペクトルについて、それぞれピークの波形分離を行った。酸素(O1s)スペクトルについては、波形分離を行ったところ、CF2OCF2構造、CH2OCH2構造またはCH2OCF2構造に帰属されるピークであった。また、炭素(C1s)のスペクトルについては、OCF2O構造、OCF2CF2構造、OCH2CH2構造またはOCH2O構造に帰属されるピークであった。なお、エネルギー基準の補正、及び、波形分離については、下記の文献を参考とした。
M. Toselli et. al, Polym Int 52: 1262-1274 (2003)
A. Hawkridge et. al, Macromolecules, Vol. 35, No. 17 (2002)
(7)ラフネスの測定
走査型プローブ顕微鏡(SPA300HV,SPI4000;エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、皮膜の表面観察を行った。走査エリアを10μmとして、JIS B0601に準拠して算術平均粗さRaを算出した。
実施例1
特開2014-15609号公報の合成例1、2に記載の方法により、下記式(a)で表される化合物(数平均分子量約8000)を合成した。
Figure 0007116555000017
上記式(a)において、nは43であり、mは1~6の整数である。
化合物(A)として、上記式(a)で表される化合物(a)、化合物(B)として、下記式(b1)で表される化合物(b1)(数平均分子量約2240)を用いた。
Figure 0007116555000018
上記式(b1)において、r及びsは前記平均分子量になる範囲の整数である。また、上記式(b1)において、ヒドロキシ基中の水素原子以外の水素原子数と、フッ素原子数との合計に対するフッ素原子数の割合は40%以上である。
フッ素系溶剤(C)としてNovec7200(登録商標)を用い、質量比が化合物(A):化合物(B):フッ素系溶剤(C)=97.5:12.2:390.3の割合の組成物を調製した。これを蒸着用のMoボートに1mL滴下した後、溶媒を蒸発させて蒸着に用いるサンプルを調製した。アルバック機工株式会社製VPC-410Aを用いて、真空蒸着法(抵抗加熱法、圧力1×10-3Pa、印加電流50A、蒸着処理時間90秒)により、前述のサンプルを予め、卓上プラズマ処理装置(YHS-360;株式会社魁半導体製)を用いて、真空プラズマ処理を10分間行い、基材表面を親水化した、無アルカリガラスEAGLE-XG(登録商標、コーニング社製)上に成膜し、皮膜を形成した。皮膜形成後、温度150℃で30分間加熱保持した。その後、皮膜表面を乾いた布で拭いた。
実施例2
化合物(b1)に代えて、下記式(b2)で示すFluorolink(登録商標)D4000(数平均分子量約4000)を用い、化合物(A)、化合物(B)、フッ素系溶剤(C)の割合を、化合物(A):化合物(B):フッ素系溶剤(C)=95.2:23.8:381にした以外は実施例1と同様の操作を行い、皮膜を形成した。Fluorolink(登録商標)D4000は、末端にヒドロキシ基を有するとともに、オキシアルキレン単位を有し、オキシアルキレン単位の水素原子の一部がフッ素原子に置換されていた。また、Fluorolink(登録商標)D4000において、ヒドロキシ基中の水素原子以外の水素原子数と、フッ素原子数との合計に対するフッ素原子数の割合は40%以上である。
Figure 0007116555000019
実施例3
化合物(A):化合物(B):フッ素系溶剤(C)=95.2:23.8:381にした以外は実施例1と同様にして、皮膜を形成した。
実施例4
化合物(B)として、Fluorolink(登録商標)D4000を用いたこと以外は実施例1と同様にして、皮膜を形成した。
比較例1
化合物(B)を用いることなく、化合物(A):フッ素系溶剤(C)=100:400としたこと以外は、実施例1と同様にして、皮膜を形成した。
比較例2
化合物(b1)に代えて、下記式(c)で表されるFomblin(登録商標)M03(数平均分子量約4000)を用いた以外は実施例1と同様にして、皮膜を形成した。Fomblin(登録商標)M03は、オキシアルキレン単位を有し、オキシアルキレン単位の水素原子の全部がフッ素原子に置換されていたが、その分子内にヒドロキシ基を有さなかった。
Figure 0007116555000020
比較例3
化合物(b1)に代えて、上記式(c)で表され、数平均分子量が約9800であるFomblin(登録商標)M30を用いた以外は実施例1と同様にして、皮膜を形成した。Fomblin(登録商標)M30は、オキシアルキレン単位を有し、オキシアルキレン単位の水素原子の全部がフッ素原子に置換されていたが、その分子内にヒドロキシ基を有さなかった。
上記(1)~(4)に示した方法により、実施例1~4及び比較例1~3を評価した結果を表1に示す。
Figure 0007116555000021
表1より、実施例1~4では、TOF-SIMSで測定したCm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度に対する、C2n+1フラグメントイオン強度の比(本実施例において実際に測定されたのはC24フラグメントイオン強度に対するC37フラグメントイオン強度)が0.25以上であり、耐摩耗性試験における耐摩耗回数が7000回以上であり、耐摩耗性が良好である一方、イオン強度比が0.25未満であった比較例1~3では耐摩耗性に劣っていることが分かる。

Claims (4)

  1. ポリシロキサン骨格を有する皮膜であって、該皮膜では、
    2n+1-で表されるパーフルオロアルキル基を末端に有する1価の基(a)が、前記ポリシロキサン骨格のケイ素原子の少なくとも一部に結合しており、
    前記基(a)は基中にパーフルオロポリエーテル構造を有すると共に、-Cm2m-で表される基の少なくとも1種を有し、
    該皮膜は更に、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を有する構造(b)を有し、
    前記基(a)が下記式(1a)で表され、式(1a)がOCF2CF2CF2O構造及びCF2OCF2構造を含み、
    前記構造(b)が下記式(1b)で表され、式(1b)がCF2OCF2構造及びOCF2O構造を含むとともに、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造の少なくとも一種と、OCH2CH2構造及びOCH2O構造の少なくとも一種を含み、
    飛行時間型二次イオン質量分析計によって測定したCm2mフラグメントイオン強度のうちの最大の強度に対する、C2n+1フラグメントイオン強度の比が0.25以上であることを特徴とする皮膜。
    Figure 0007116555000022
    上記式(1a)中、
    Rf11は、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、
    Rf12、Rf13、Rf14及びRf15は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基またはフッ素原子であり、
    11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
    Mは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-(Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基)であり、
    Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
    Zは、水素原子またはハロゲン原子であり、
    a1、b1、c1、d1及びe1はそれぞれ独立して0~600の整数であり、a1、b1、c1、d1及びe1の合計値は9以上であり、
    f1は、1~20の整数であり、
    g1は、0~2の整数であり、
    a1、b1、c1、d1、e1及びf1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造及び-Cm2m-を形成し、Rf11-及び-Zが末端である限りそれぞれ任意の順に並んでいればよい。
    Figure 0007116555000023
    上記式(1b)中、
    1、X2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、
    30は、ヒドロキシ基であるか、又はR30で構造(b)が基材又はポリシロキサン骨格と結合し、
    Rf31、Rf32、Rf33は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-CF3であり、
    Jは-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-O-であり、
    a3は1~5、b3は20~200、c3は5~200であり、d3は1であり、
    a3、b3、及びc3を付して括弧でくくられた各繰り返し単位は、少なくとも一部で、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されているオキシアルキレン単位を形成し、X1-、-(X2d3が末端となる限り、それぞれ任意の順に並んでいればよい。
  2. 前記基(a)が下記式(1a-2)で表されると共に、
    前記構造(b)が、下記式(1b-1)で表されると共にCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCH2構造及びOCH2CH2構造を含む構造であるか、又は下記式(1b-2)で表されると共にCF2OCF2構造、OCF2O構造、CH2OCF2構造及びOCH2O構造を含む構造である請求項1に記載の皮膜。
    Figure 0007116555000024
    上記式(1a-2)中、R50は炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基であり、R51は炭素数が2~24のパーフルオロアルキレン基であり、R52は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、x1は10~60であり、x2は1~8である。
    Figure 0007116555000025
    上記式(1b-1)中、R60、R61、R62、R63、R64、R65は、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、R61、R62、R63、R64のうち、少なくとも1つのアルキレン基において少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されており、R66及びR67はそれぞれ独立して水素原子であるか、又はR66若しくはR67で構造(b)が基材又はポリシロキサン骨格と結合し、y1は2~10、y2は1~4、y3~y5はR66及びR67がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が2000~4200となるように定められる値であり、y6は1~4、y7は2~10である。
    Figure 0007116555000026
    式(1b-2)中、R40及びR43は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R41は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~5のアルキレン基であって、R42は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されている炭素数1~3のアルキレン基であり、R44及びR45はそれぞれ独立して水素原子であるか、又はR44若しくはR45で構造(b)が基材又はポリシロキサン骨格と結合し、w1及びw4はそれぞれ独立して1~3であり、w2及びw3は、R44及びR45がいずれも水素原子である場合の数平均分子量が3800~4200となるように定められる値である。
  3. X線光電子分光法により測定される酸素(O1s)のスペクトルを解析して求められるCF2OCF2構造のOに由来するピーク強度に対する、CH2OCH2構造及びCH2OCF2構造のOに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上である請求項1または2に記載の皮膜。
  4. X線光電子分光法により測定される炭素(C1s)のスペクトルを解析して求められるOCF2O構造とOCF2CF2構造のCに由来するピーク強度の合計に対する、OCH2CH2構造及びOCH2O構造のCに由来するピーク強度の合計の比が0.07以上である請求項1~3のいずれかに記載の皮膜。
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