JP7115463B2 - 非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池機能層用スラリー組成物、非水系二次電池用機能層、および非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池機能層用スラリー組成物、非水系二次電池用機能層、および非水系二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池機能層用スラリー組成物、非水系二次電池用機能層、および非水系二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、非水系二次電池は、一般に、電極(正極および負極)、並びに、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
ここで、二次電池の電池部材としては、結着材を含み、任意に、電池部材に所望の機能を発揮させるために配合されている粒子(以下、「機能性粒子」という。)を含んでなる機能層を備える部材が使用されている。
具体的に、二次電池のセパレータとしては、セパレータ基材の上に、結着材を含む接着層や、結着材と機能性粒子としての非導電性粒子とを含む多孔膜層を備えるセパレータが使用されている。また、二次電池の電極としては、集電体の上に、結着材と機能性粒子としての電極活物質粒子とを含む電極合材層を備える電極や、集電体上に電極合材層を備える電極基材の上に、さらに上述の接着層や多孔膜層を備える電極が使用されている。
そして、二次電池の更なる性能向上を達成すべく、結着材を含んでなるバインダー組成物の改良が従来から試みられている。例えば、特許文献1では、所定のバインダー組成物を用いることにより、電極合材層の集電体に対する接着性を向上させる技術が提案されている。
特開2016-009544号公報
しかしながら、上記従来の技術では、電極合材層の接着性を十分に確保することは困難であり、また二次電池に優れたレート特性を発揮させることができなかった。したがって、上記従来の技術には、電極合材層などの機能層に優れた接着性を付与すると共に、二次電池のレート特性を向上させる点において、改善の余地があった。
そこで、本発明は、結着性に優れると共に、非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池用バインダー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池機能層用スラリー組成物を提供することを目的とする。
そして、本発明は、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る非水系二次電池用機能層を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、レート特性に優れる非水系二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、結着材およびメラミン化合物を所定の量比で含むバインダー組成物が結着性に優れ、当該バインダー組成物を用いて機能層を形成すれば、得られる機能層の接着性を高めつつ、機能層を備える二次電池に優れたレート特性を発揮させることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物は、結着材およびメラミン化合物を含み、前記メラミン化合物の含有量が、前記結着材100質量部当たり0.5質量部以上85質量部以下であることを特徴とする。このように、結着材と、当該結着材に対して所定量のメラミン化合物を含むバインダー組成物は、結着性に優れるため、当該バインダー組成物を用いれば、接着性に優れる機能層を得ることができる。そして、当該機能層を備える電池部材を用いれば、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
ここで、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物において、前記結着材が、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基、スルホン酸基、ニトリル基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体であることが好ましい。上述した何れかの官能基を有する重合体を結着材として用いれば、バインダー組成物の結着性を更に高めると共に、機能層の接着性および二次電池のレート特性を一層向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池機能層用スラリー組成物は、上述した何れかの非水系二次電池用バインダー組成物を含むことを特徴とする。上述した何れかのスラリー組成物から機能層を形成すれば、機能層の接着性を高めることができる。そして、当該機能層を備える電池部材を用いれば、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
ここで、本発明の非水系二次電池機能層用スラリー組成物は、さらに電極活物質粒子を含むことができる。上述したスラリー組成物が電極活物質粒子を含む場合、当該スラリー組成物を用いれば、接着性に優れ、二次電池に優れたレート特性を発揮させ得る電極合材層を形成することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した何れかの非水系二次電池機能層用スラリー組成物を用いて形成されることを特徴とする。上述した何れかのスラリー組成物から形成された機能層は、接着性に優れる。そして、当該機能層を備える電池部材を用いれば、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用機能層を備えることを特徴とする。上述した機能層を備える電池部材を含む二次電池は、レート特性などの電池特性に優れる。
なお、本明細書では、結着材および電極活物質粒子を含む機能層を「電極合材層」と、結着材および非導電性粒子を含む機能層を「多孔膜層」と、結着材を含み、電極活物質粒子および非導電性粒子の何れも含まない機能層を「接着層」と称する。
本発明によれば、結着性に優れると共に、非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池用バインダー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池機能層用スラリー組成物を提供することができる。
そして、本発明によれば、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る非水系二次電池用機能層を提供することができる。
さらに、本発明によれば、レート特性に優れる非水系二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物は、非水系二次電池の製造用途に用いられるものであり、例えば、本発明の非水系二次電池機能層用スラリー組成物の調製に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池機能層用スラリー組成物は、非水系二次電池内において電子の授受、または補強若しくは接着などの機能を担う、任意の機能層(例えば、電極合材層、多孔膜層、接着層)の形成に用いることができる。さらに、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用スラリー組成物から形成される。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用機能層を有する電池部材を備える。
(非水系二次電池用バインダー組成物)
本発明のバインダー組成物は、結着材およびメラミン化合物が、溶媒中に溶解および/または分散してなる組成物である。なお、本発明のバインダー組成物は、結着材、メラミン化合物、および溶媒以外のその他の成分を含有していてもよい。ここで、本発明のバインダー組成物は、結着材100質量部当たり、0.5質量部以上85質量部以下のメラミン化合物を含有することを特徴とする。
そして、本発明のバインダー組成物は、メラミン化合物が結着材と水素結合等で相互作用するためと推察されるが、結着材100質量部当たり0.5質量部以上のメラミン化合物を含むことで、優れた結着性を発現する。そして、本発明のバインダー組成物を用いれば、得られる機能層に優れた接着性を発揮させて、二次電池の電池特性を高めることができる。また、本発明のバインダー組成物は、メラミン化合物の含有量が結着材100質量部当たり85質量部以下であるため、固形分中に占める結着材の割合が確保されることで機能層の接着性が十分に保持され、加えて、メラミン化合物量過多により機能層の導電性が過度に低下することもなく、二次電池のレート特性が損なわれることもない。また、メラミン化合物の潤滑剤としての性質に由来すると推察されるが、本発明のバインダー組成物を用いて、機能層としての電極合材層を形成すれば、加圧処理により電極合材層を容易に高密度化することができる(すなわち、電極合材層のプレス性が向上する)。したがって、本発明のバインダー組成物を用いれば、機能層に優れた接着性を付与すると共に、レート特性等の電池特性に優れた二次電池を作製することができる。
<結着材>
結着材は、バインダー組成物に結着性を発現させる成分であり、バインダー組成物を含むスラリー組成物を使用して基材上に形成した機能層において、機能性粒子などの成分が機能層から脱離しないように保持すると共に、機能層を介した電池部材同士の接着を可能にする。
[結着材の種類]
ここで、結着材としては、二次電池内において使用可能なものであれば特に限定されない。例えば、結着材としては、結着性を発現しうる単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体(合成高分子、例えば、付加重合して得られる付加重合体)を用いることができる。このような重合体としては、脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体(脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を主として含む重合体)、アクリル系重合体((メタ)アクリル酸エステル単量体単位を主として含む重合体)、フッ素系重合体(フッ素含有単量体単位を主として含む重合体)、アクリル酸/アクリルアミド系共重合体((メタ)アクリル酸単位および(メタ)アクリルアミド単位を主として含む重合体)、アクリロニトリル系重合体((メタ)アクリロニトリル単位を主として含む重合体)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。そしてこれらの中でも、脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体、アクリル酸/アクリルアミド系共重合体、アクリロニトリル系重合体が好ましい。
ここで、脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体の脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体、脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体の芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体、アクリル系重合体の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体、フッ素系重合体のフッ素含有単量体単位を形成し得るフッ素含有単量体は、既知のものを使用することができる。
なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
また、本発明において、1種または複数種の単量体単位を「主として含む」とは、「重合体に含有される全単量体単位の量を100質量%とした場合に、当該1種の単量体単位の含有割合、または当該複数種の単量体単位の含有割合の合計が50質量%を超える」ことを意味する。
そして、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリロとは、アクリロおよび/またはメタクリロを意味する。
[結着材の官能基]
ここで、結着材として使用される重合体は、官能基を含むことが好ましい。結着材に含まれる官能基としては、機能層の接着性および二次電池のレート特性を更に高める観点から、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基、スルホン酸基、ニトリル基、およびアミド基(以下、これらの官能基を纏めて「特定官能基」と称する場合がある。)が好ましく、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基、アミド基がより好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、2種類以上の官能基を有する重合体としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基およびヒドロキシル基を有する重合体;カルボン酸基およびアミド基を有する重合体;カルボン酸基、ニトリル基、およびアミノ基を有する重合体;カルボン酸基、エポキシ基、ヒドロキシル基、およびニトリル基を有する重合体;が挙げられる。
重合体に特定官能基を導入する方法は特に限定されず、上述した特定官能基を含有する単量体(特定官能基含有単量体)を用いて重合体を調製し、特定官能基含有単量体単位を含む重合体を得てもよいし、任意の重合体を末端変性することにより、上述した特定官能基を末端に有する重合体を得てもよいが、前者が好ましい。すなわち、結着材として使用される重合体は、特定官能基含有単量体単位として、カルボン酸基含有単量体単位、ヒドロキシル基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、エポキシ基含有単量体単位、オキサゾリン基含有単量体単位、スルホン酸基含有単量体単位、ニトリル基含有単量体単位、およびアミド基含有単量体単位の少なくとも何れかを含むことが好ましく、カルボン酸基含有単量体単位、ヒドロキシル基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、ニトリル基含有単量体単位、およびアミド基含有単量体単位の少なくとも何れかを含むことがより好ましい。
なお、2種類以上の特定官能基含有単量体単位を含む重合体としては、例えば、カルボン酸基含有単量体単位およびヒドロキシル基含有単量体単位を含む重合体;カルボン酸基含有単量体単位およびアミド基含有単量体単位を含む重合体;カルボン酸基含有単量体単位、ニトリル基含有単量体単位、およびアミノ基含有単量体単位を含む重合体;カルボン酸基含有単量体単位、エポキシ基含有単量体単位、ヒドロキシル基含有単量体単位、およびニトリル基含有単量体単位を含む重合体;が挙げられる。
ここで、カルボン酸基含有単量体単位を形成しうるカルボン酸基含有単量体としては、モノカルボン酸およびその誘導体や、ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸モノエステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
また、カルボン酸基含有単量体としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。中でも、カルボン酸基含有単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。なお、カルボン酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシル基含有単量体単位を形成しうるヒドロキシル基含有単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ-2-ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ-4-ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式:CH2=CR-COO-(Cq2qO)p-H(式中、pは2~9の整数、qは2~4の整数、Rは水素原子またはメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2-ヒドロキシエチル-2’-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2-ヒドロキシエチル-2’-(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル-2-ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-3-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-3-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-4-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-6-ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル-2-クロロ-3-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシ-3-クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲンおよびヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテルおよびそのハロゲン置換体;(メタ)アリル-2-ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;N-ヒドロキシメチルアクリルアミド(N-メチロールアクリルアミド)、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミドなどのヒドロキシル基を有するアミド類などが挙げられる。なお、ヒドロキシル基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
アミノ基含有単量体単位を形成しうるアミノ基含有単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどが挙げられる。なお、アミノ基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
エポキシ基含有単量体単位を形成しうるエポキシ基含有単量体としては、炭素-炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
炭素-炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5-エポキシ-2-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-9-デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル-4-メチル-3-ペンテノエート、3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、などの、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;が挙げられる。なお、エポキシ基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン基含有単量体単位を形成しうるオキサゾリン基含有単量体としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどが挙げられる。なお、オキサゾリン基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
スルホン酸基含有単量体単位を形成しうるスルホン酸基含有単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。なお、スルホン酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ニトリル基含有単量体単位を形成しうるニトリル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。具体的には、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。なお、ニトリル基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アミド基含有単量体単位を形成しうるアミド基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。なお、アミド基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そして、例えば、重合体が脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体またはアクリル系重合体である場合、重合体に含有される全単量体単位の量を100質量%とした場合の重合体における特定官能基含有単量体単位の含有割合は、0.3質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。重合体中の特定官能基含有単量体単位の含有割合が上述の範囲内であれば、機能層の接着性および二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
[結着材の調製方法]
結着材としての重合体の調製方法は特に限定されない。結着材としての重合体は、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより製造される。なお、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、重合体中の所望の単量体単位(繰り返し単位)の含有割合に準じて定めることができる。
なお、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合、各種縮合重合、付加重合などいずれの反応も用いることができる。そして、重合に際しては、必要に応じて既知の乳化剤や重合開始剤を使用することができる。
<メラミン化合物>
メラミン化合物は、結着材を含むバインダー組成物に添加することで、バインダー組成物の結着性を向上させ得る成分である。また、メラミン化合物を含むバインダー組成物を用いて機能層としての電極合材層を調製すれば、得られる電極合材層のプレス性も高めることができる。
ここで、本発明において、「メラミン化合物」としては、メラミンおよびメラミンの誘導体、並びにそれらの塩が挙げられる。
そして、メラミンおよびメラミンの誘導体としては、例えば以下の式(I)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007115463000001
式(I)中、各Aは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基または-NR(RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、またはヒドロキシル基含有炭化水素基を表す。また、式(I)中にRが複数存在する場合は、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよく、Rが複数存在する場合は、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)を表す。
ここで、RおよびRの炭化水素基およびヒドロキシル基含有炭化水素基は、炭素原子と炭素原子の間に1つ又は2つ以上の酸素原子(-O-)が介在していてもよい(但し、2つ以上の酸素原子が介在する場合、それらは互いに隣接しないものとする)。そして、RおよびRの炭化水素基およびヒドロキシル基含有炭化水素基の炭素原子数は、特に限定されないが、1以上5以下であることが好ましい。
また、メラミンおよびメラミンの誘導体の塩としては、特に限定されないが、硫酸塩、シアヌル酸塩などが挙げられる。
メラミン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。そして、これらの中でも、機能層の接着性および二次電池のレート特性を更に高める観点から、メラミン、アンメリン、およびアンメリド、並びにこれらのシアヌル酸との塩が好ましく、メラミン、およびメラミンのシアヌル酸との塩(メラミンシアヌレート)がより好ましい。
そして、バインダー組成物中のメラミン化合物の含有量は、結着材100質量部当たり、0.5質量部以上85質量部以下であることが必要であり、1質量部以上であることが好ましく、5質量部であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、19質量部以上であることが特に好ましく、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。メラミン化合物の含有量が結着材100質量部当たり0.5質量部未満であると、機能層の接着性を確保することができない。一方、メラミン化合物の含有量が結着材100質量部当たり85質量部を超えると、機能層の接着性が低下すると共に、機能層の導電性が損なわれて二次電池のレート特性が低下する。また、メラミン化合物の含有量が結着材100質量部当たり0.5質量以上85質量部以下であれば、バインダー組成物を含むスラリー組成物から形成される電極合材層のプレス性を向上させることができる。
<溶媒>
バインダー組成物中に含まれる溶媒としては、上述した結着材およびメラミン化合物を溶解または分散可能な溶媒であれば特に限定されず、水および有機溶媒の何れも使用することができる。有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミン、ジメチルベンゼン(キシレン)、メチルベンゼン(トルエン)、シクロペンチルメチルエーテル、およびイソプロピルアルコールなどを用いることができる。
なお、これらの溶媒は、一種単独で、或いは複数種を任意の混合比率で混合して用いることができる。
<その他の成分>
本発明のバインダー組成物は、上述した結着材、メラミン化合物、および溶媒に加えて、任意で、上記結着材とは組成および性状の異なる他の重合体、導電材、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤など、電極合材層、多孔膜層、および接着層などの機能層に添加しうる既知の添加剤を含有しても良い。また、本発明のバインダー組成物は、二次電池の安全性向上の観点から、炭酸水素ナトリウムなどの発泡剤、リン系化合物やシリコーン系化合物などの難燃剤を含有してもよい。これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上述した発泡剤および難燃剤の含有量はそれぞれ、例えば、結着材100質量部当たり30質量部以下、または15質量部以下とすることができる。
<バインダー組成物の調製方法>
ここで、バインダー組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、結着材と、メラミン化合物と、必要に応じて用いられうるその他の成分とを、溶媒中で混合してバインダー組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、通常用いられうる撹拌機や、分散機を用いて混合を行う。
(非水系二次電池機能層用スラリー組成物)
本発明のスラリー組成物は、機能層の形成用途に用いられる組成物であり、上述したバインダー組成物を含み、任意に、機能性粒子とその他の成分を更に含有する。すなわち、本発明のスラリー組成物は、通常、結着材と、メラミン化合物と、溶媒とを含有し、任意に、機能性粒子およびその他の成分を更に含有する。そして、本発明のスラリー組成物は、上述したバインダー組成物を含んでいるので、本発明のスラリー組成物を例えば基材上で乾燥することで、接着性に優れる機能層を得ることができる。そして、当該機能層を備える電池部材を使用すれば、二次電池に優れた電池特性、特には優れたレート特性を発揮させることができる。
<バインダー組成物>
バインダー組成物としては、少なくとも結着材およびメラミン化合物を含む、上述した本発明のバインダー組成物を用いる。
なお、スラリー組成物中のバインダー組成物の配合量は、特に限定されない。例えばスラリー組成物が電極用スラリー組成物である場合、バインダー組成物の配合量は、電極活物質粒子100質量部当たり、固形分換算で、結着材の量が0.5質量部以上15質量部以下となる量とすることができる。また例えばスラリー組成物が多孔膜層用スラリー組成物である場合、バインダー組成物の配合量は、非導電性粒子100質量部当たり、固形分換算で、結着材の量が0.5質量部以上30質量部以下となる量とすることができる。
<機能性粒子>
ここで、機能層に所期の機能を発揮させるための機能性粒子としては、例えば、機能層が電極合材層である場合には電極活物質粒子が挙げられ、機能層が多孔膜層である場合には非導電性粒子が挙げられる。
[電極活物質粒子]
そして、電極活物質粒子としては、特に限定されることなく、二次電池に用いられる既知の電極活物質よりなる粒子を挙げることができる。具体的には、例えば、二次電池の一例としてのリチウムイオン二次電池の電極合材層において使用し得る電極活物質粒子としては、特に限定されることなく、以下の電極活物質よりなる粒子を用いることができる。
-正極活物質-
リチウムイオン二次電池の正極の正極合材層に配合される正極活物質としては、例えば、遷移金属を含有する化合物、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属との複合金属酸化物などを用いることができる。なお、遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が挙げられる。
具体的には、正極活物質としては、特に限定されることなく、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co-Ni-Mnのリチウム含有複合酸化物、Ni-Mn-Alのリチウム含有複合酸化物、Ni-Co-Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、Li1+xMn2-x(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]O、LiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。
なお、上述した正極活物質は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
-負極活物質-
リチウムイオン二次電池の負極の負極合材層に配合される負極活物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、および、これらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいう。そして、炭素系負極活物質としては、具体的には、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)およびハードカーボンなどの炭素質材料、並びに、天然黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛質材料が挙げられる。
また、金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。そして、金属系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびそれらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが挙げられる。さらに、チタン酸リチウムなどの酸化物を挙げることができる。
なお、上述した負極活物質は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[非導電性粒子]
また、多孔膜層に配合される非導電性粒子としては、特に限定されることなく、二次電池に用いられる既知の非導電性粒子を挙げることができる。
具体的には、非導電性粒子としては、無機微粒子と有機微粒子との双方を用いることができるが、通常は無機微粒子が用いられる。なかでも、非導電性粒子の材料としては、二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定である材料が好ましい。このような観点から非導電性粒子の材料の好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、水和アルミニウム酸化物(ベーマイト)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO、ZrO、アルミナ-シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。また、これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。
なお、上述した非導電性粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<その他の成分>
スラリー組成物に配合し得るその他の成分としては、特に限定することなく、本発明のバインダー組成物に配合し得るその他の成分と同様のものが挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<スラリー組成物の調製>
スラリー組成物の調製方法は、特に限定はされない。
例えば、スラリー組成物が電極用スラリー組成物である場合は、バインダー組成物と、電極活物質粒子と、必要に応じて用いられるその他の成分とを、溶媒の存在下で混合してスラリー組成物を調製することができる。
また、スラリー組成物が多孔膜層用スラリー組成物である場合は、バインダー組成物と、非導電性粒子と、必要に応じて用いられるその他の成分とを、溶媒の存在下で混合してスラリー組成物を調製することができる。
そして、スラリー組成物が接着層用スラリー組成物である場合は、バインダー組成物をそのまま、または溶媒で希釈してスラリー組成物として使用することもできるし、バインダー組成物と、必要に応じて用いられるその他の成分とを、溶媒の存在下で混合してスラリー組成物を調製することもできる。
なお、スラリー組成物の調製の際に用いる溶媒は、バインダー組成物に含まれていたものも含まれる。また、混合方法は特に制限されないが、通常用いられうる撹拌機や、分散機を用いて混合を行う。
<非水系二次電池用機能層>
本発明の機能層は、非水系二次電池内において電子の授受または補強若しくは接着などの機能を担う層であり、機能層としては、例えば、電気化学反応を介して電子の授受を行う電極合材層や、耐熱性や強度を向上させる多孔膜層や、接着性を向上させる接着層などが挙げられる。そして、本発明の機能層は、上述した本発明のスラリー組成物から形成されたものであり、例えば、上述したスラリー組成物を適切な基材の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより、形成することができる。即ち、本発明の機能層は、上述したスラリー組成物の乾燥物よりなり、通常、少なくとも、結着材と、メラミン化合物とを含有する。なお、機能層中に含まれている各成分は、上記スラリー組成物中に含まれていたものであるため、それら各成分の好適な存在比は、スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。また、結着材が、架橋性の官能基(例えば、エポキシ基、およびオキサゾリン基など)を有する重合体である場合には、当該重合体は、スラリー組成物の乾燥時、或いは、乾燥後に任意に実施される熱処理時などに架橋されていてもよい(即ち、機能層は、上述した結着材の架橋物を含んでいてもよい)。
本発明の機能層は、本発明のバインダー組成物を含む本発明のスラリー組成物から形成されているので、優れた接着性を有すると共に、本発明の機能層を備える電池部材を有する二次電池に、優れた電池特性(レート特性など)を発揮させることができる。
[基材]
ここで、スラリー組成物を塗布する基材に制限は無く、例えば、離型基材の表面にスラリー組成物の塗膜を形成し、その塗膜を乾燥して機能層を形成し、機能層から離型基材を剥がすようにしてもよい。このように、離型基材から剥がされた機能層を自立膜として二次電池の電池部材の形成に用いることもできる。
しかし、機能層を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材として、集電体、セパレータ基材、または電極基材を用いることが好ましい。具体的には、電極合材層の調製の際には、スラリー組成物を、基材としての集電体上に塗布することが好ましい。また、多孔膜層や接着層を調製する際には、スラリー組成物を、セパレータ基材または電極基材上に塗布することが好ましい。
-集電体-
集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。中でも、負極に用いる集電体としては銅箔が特に好ましい。また、正極に
用いる集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
-セパレータ基材-
セパレータ基材としては、特に限定されないが、有機セパレータ基材などの既知のセパレータ基材が挙げられる。有機セパレータ基材は、有機材料からなる多孔性部材であり、有機セパレータ基材の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微多孔膜または不織布などが挙げられ、強度に優れることからポリエチレン製の微多孔膜や不織布が好ましい。
-電極基材-
電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、上述した集電体上に、電極活物質粒子および結着材を含む電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
電極基材中の電極合材層に含まれる電極活物質粒子および結着材としては、特に限定されず、「非水系二次電池機能層用スラリー組成物」の項で上述した電極活物質粒子、および、「非水系二次電池用バインダー組成物」の項で上述した結着材を使用することができる。加えて、電極基材中の電極合材層には、メラミン化合物が含まれていてもよい。すなわち、電極基材中の電極合材層として、本発明の機能層を使用してもよい。
[機能層の形成方法]
上述した集電体、セパレータ基材、電極基材などの基材上に機能層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
1)本発明のスラリー組成物を基材の表面(電極基材の場合は電極合材層側の表面、以下同じ)に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)本発明のスラリー組成物に基材を浸漬後、これを乾燥する方法;および
3)本発明のスラリー組成物を離型基材上に塗布し、乾燥して機能層を製造し、得られた機能層を基材の表面に転写する方法。
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の層厚制御をしやすいことから特に好ましい。前記1)の方法は、詳細には、スラリー組成物を基材上に塗布する工程(塗布工程)と、基材上に塗布されたスラリー組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(乾燥工程)を含む。
-塗布工程-
そして、塗布工程において、スラリー組成物を基材上に塗布する方法としては、特に制限は無く、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。
-乾燥工程-
また、乾燥工程において、基材上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。乾燥法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。乾燥温度は、使用するメラミン化合物の熱分解、昇華の懸念を避けるために、好ましくは200℃未満であり、さらに好ましくは150℃未満である。
なお、機能層としての電極合材層を調製する場合は、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、電極合材層に加圧処理を施すことが好ましい。本発明の機能層としての電極合材層は、メラミン化合物を所定量含んでいるため、プレス性に優れる。そのため、加圧処理により、高密度であり且つ集電体との接着性に優れる電極合材層を容易に作製することができる。
(機能層を備える電池部材)
本発明の機能層を備える電池部材(セパレータおよび電極)は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した本発明の機能層と、基材以外の構成要素を備えていてもよい。このような構成要素としては、特に限定されることなく、本発明の機能層に該当しない電極合材層、多孔膜層、および接着層などが挙げられる。
また、電池部材は、本発明の機能層を複数種類備えていてもよい。例えば、電極は、集電体上に本発明の電極用スラリー組成物から形成される電極合材層を備え、且つ、当該電極合材層上に本発明の多孔膜層用および/または接着層用スラリー組成物から形成される多孔膜層および/または接着層を備えていてもよい。また例えば、セパレータは、セパレータ基材上に本発明の多孔膜層用スラリー組成物から形成される多孔膜層を備え、且つ、当該多孔膜層上に本発明の接着層用スラリー組成物から形成される接着層を備えていてもよい。
本発明の機能層を備える電池部材は、隣接する電池部材と良好に接着することができ、また二次電池に優れた電池特性(例えば、レート特性)を発揮させることができる。
(非水系二次電池)
本発明の二次電池は、上述した本発明の機能層を備えるものである。より具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、上述した非水系二次電池用機能層が、電池部材である正極、負極およびセパレータの少なくとも一つに含まれる。そして、本発明の二次電池は、優れた電池特性(例えば、レート特性)を発揮し得る。
<正極、負極およびセパレータ>
本発明の二次電池に用いる正極、負極およびセパレータは、少なくとも一つが、上述した本発明の機能層を備える電池部材である。なお、本発明の機能層を備えない正極、負極およびセパレータとしては、特に限定されることなく、既知の正極、負極およびセパレータを用いることができる。
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。また、これらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
<非水系二次電池の製造方法>
上述した本発明の二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造することができる。なお、正極、負極、セパレータのうち、少なくとも一つの部材を、本発明の機能層を備える電池部材とする。また、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、機能層の接着性、電極合材層のプレス性、および二次電池のレート特性は、下記の方法で評価した。
<機能層の接着性>
<<機能層としての負極合材層の接着性>>
作製したリチウムイオン二次電池用負極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、負極合材層を有する面を下にして、試験片の負極合材層表面をセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を介して試験台(SUS製基板)に貼り付けた。その後、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力(N/m)を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている)。上記と同様の測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、以下の基準により評価した。ピール強度の値が大きいほど、負極合材層と集電体とが強固に密着し、負極合材層が接着性に優れることを示す。
A:ピール強度が3.0N/m以上
B:ピール強度が2.5N/m以上3.0N/m未満
C:ピール強度が1.5N/m以上2.5N/m未満
D:ピール強度が1.5N/m未満
<<機能層としての正極合材層の接着性>>
作製したリチウムイオン二次電池用正極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、正極合材層を有する面を下にして、試験片の正極合材層表面をセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を介して試験台(SUS製基板)に貼り付けた。その後、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力(N/m)を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている)。上記と同様の測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、以下の基準により評価した。ピール強度の値が大きいほど、正極合材層と集電体とが強固に密着し、正極合材層が接着性に優れることを示す。
A:ピール強度が50.0N/m以上
B:ピール強度が40.0N/m以上50.0N/m未満
C:ピール強度が30.0N/m以上40.0N/m未満
D:ピール強度が30.0N/m未満
<<機能層としての多孔膜層の接着性>>
作製した多孔膜層を備えるセパレータを長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、多孔膜層を有する面を下にして、試験片の多孔膜層表面をセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を介して試験台(SUS製基板)に貼り付けた。その後、セパレータ基材の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力(N/m)を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている)。上記と同様の測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、以下の基準により評価した。ピール強度の値が大きいほど、多孔膜層とセパレータ基材とが強固に密着し、多孔膜層が接着性に優れることを示す。
A:ピール強度が3.0N/m以上
B:ピール強度が2.5N/m以上3.0N/m未満
C:ピール強度が1.5N/m以上2.5N/m未満
D:ピール強度が1.5N/m未満
<電極合材層のプレス性>
<<負極合材層のプレス性>>
作製した負極原反の負極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧11t(トン)の条件でロールプレスし、負極合材層密度が1.70g/cm3の負極を得た。その後、当該負極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。そして、放置後の負極の負極合材層密度(g/cm3)を測定し、以下の基準で評価した。放置後の負極合材層密度が高いほど負極合材層がスプリングバックを生じておらず、負極合材層のプレス性が良好であることを示す。
A:放置後の負極合材層密度が1.65g/cm3以上
B:放置後の負極合材層密度が1.60g/cm3以上1.65g/cm3未満
C:放置後の負極合材層密度が1.50g/cm3以上1.60g/cm3未満
D:放置後の負極合材層密度が1.50g/cm3未満
<<正極合材層のプレス性>>
作製した正極原反の正極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧14t(トン)の条件でロールプレスし、正極合材層密度が3.50g/cm3の正極を得た。その後、当該正極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。そして、放置後の正極の正極合材層密度(g/cm3)を測定し、以下の基準で評価した。放置後の正極合材層密度が高いほど正極合材層がスプリングバックを生じておらず、正極合材層のプレス性が良好であることを示す。
A:放置後の正極合材層密度が3.45g/cm3以上
B:放置後の正極合材層密度が3.40g/cm3以上3.45g/cm3未満
C:放置後の正極合材層密度が3.35g/cm3以上3.40g/cm3未満
D:放置後の正極合材層密度が3.35g/cm3未満
<二次電池のレート特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で、5時間静置した。次に、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.65Vまで充電し、その後、温度60℃で12時間エージング処理を行った。そして、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.00Vまで放電した。その後、0.2Cの定電流にて、CC-CV充電(上限セル電圧4.35V)を行い、0.2Cの定電流にてセル電圧3.00VまでCC放電を行った。この0.2Cにおける充放電を3回繰り返し実施した。
次に、温度25℃の環境下、セル電圧4.20-3.00V間で、0.2Cの定電流充放電を実施し、このときの放電容量をC0と定義した。その後、同様に0.2Cの定電流にてCC-CV充電し、温度-10℃の環境下において、0.5Cの定電流にて2.5Vまで放電を実施し、このときの放電容量をC1と定義した。そして、レート特性として、ΔC=(C1/C0)×100(%)で示される容量変化率を求め、以下の基準により評価した。この容量変化率ΔCの値は大きいほど、低温環境下、高電流での放電容量が高く、そして内部抵抗が低いことを示す。
A:容量変化率ΔCが65%以上
B:容量変化率ΔCが60%以上65%未満
C:容量変化率ΔCが55%以上60%未満
D:容量変化率ΔCが55%未満
(実施例1)
<結着材(重合体A)の調製>
撹拌機付き5MPa耐圧容器に、芳香族ビニル単量体としてのスチレン65部、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエン35部、カルボン酸基含有単量体としてのイタコン酸2部、ヒドロキシル基含有単量体としてのアクリル酸-2-ヒドロキシエチル1部、分子量調整剤としてのt-ドデシルメルカプタン0.3部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、溶媒としてのイオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム1部を投入し、十分に撹拌した後、温度55℃に加温して重合を開始した。単量体消費量が95.0%になった時点で冷却し、反応を停止した。こうして得られた重合体を含んだ水分散体に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。さらにその後、温度30℃以下まで冷却することにより、結着材としての重合体Aを含む水分散液を得た。
<負極合材層用バインダー組成物の調製>
重合体Aの水分散液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート1.0部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<負極合材層用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部、天然黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分相当で1部とを投入した。さらに、イオン交換水にて固形分濃度が60%となるように希釈し、その後、回転速度45rpmで60分混練した。その後、上述で得られた負極合材層用バインダー組成物を固形分相当で1.5部投入し、回転速度40rpmで40分混練した。そして、粘度が3000±500mPa・s(B型粘度計、25℃、60rpmで測定)となるようにイオン交換水を加えることにより、負極合材層用スラリー組成物を調製した。
<負極の製造>
上記負極合材層用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の表面に、塗付量が11±0.5mg/cm2となるように塗布した。その後、負極合材層用スラリー組成物が塗布された銅箔を、400mm/分の速度で、温度80℃のオーブン内を2分間、さらに温度110℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、集電体上に負極合材層が形成された負極原反を得た。この負極原反を用いて、負極合材層のプレス性を評価した。結果を表1に示す。
その後、作製した負極原反の負極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧11t(トン)の条件でロールプレスし、負極合材層密度が1.60g/cm3の負極を得た。その後、当該負極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。放置後の負極を用いて、負極合材層の接着性を評価した。結果を表1に示す。
<正極の製造>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのCo-Ni-Mnのリチウム複合酸化物系の活物質(NMC111、LiNi1/3Co1/3Mn1/32)を96部、導電材としてのアセチレンブラック2部(電気化学工業製、商品名「HS-100」)、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ化学製、商品名「KF-1100」)2部を添加し、さらに、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を全固形分濃度が67%となるように加えて混合し、正極合材層用スラリー組成物を調製した。
続いて、得られた正極合材層用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、塗布量が20±0.5mg/cm2となるように塗布した。
さらに、200mm/分の速度で、温度90℃のオーブン内を2分間、さらに温度120℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、アルミニウム箔上のスラリー組成物を乾燥させ、集電体上に正極合材層が形成された正極原反を得た。
その後、作製した正極原反の正極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧14t(トン)の条件でロールプレスし、正極合材層密度が3.40g/cm3の正極を得た。その後、当該正極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。
<セパレータの準備>
セパレータとして、ポリプロピレン製、セルガード2500を用いた。
<二次電池の製造>
上記の負極、正極およびセパレータを用いて、捲回セル(放電容量520mAh相当)を作製し、アルミ包材内に配置した。その後、このアルミ包材内に、電解液として濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤:ビニレンカーボネート2体積%(溶媒比)含有)を充填した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、温度150℃のヒートシールをしてアルミ包材を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。このリチウムイオン二次電池を用いて、レート特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートの配合量を25部に変更した以外は、実施例1と同様にして、結着材としての重合体A、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例3)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートに替えてアンメリンを使用した以外は、実施例2と同様にして、結着材としての重合体A、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例4)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレート1.0部に替えてメラミン82部を使用した以外は、実施例1と同様にして、結着材としての重合体A、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例5)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンに替えてメラミンシアヌレートを使用した以外は、実施例4と同様にして、結着材としての重合体A、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例6)
<結着材(重合体B)の調製>
セプタム付き1Lフラスコに、イオン交換水720gを投入して、温度40℃に加熱し、流量100mL/分の窒素ガスでフラスコ内を置換した。次に、イオン交換水10gと、カルボン酸基含有単量体としてのアクリル酸25部と、アクリルアミド75部とを混合して、シリンジでフラスコ内に注入した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液8部をシリンジでフラスコ内に追加した。更に、その15分後に、重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液22部をシリンジで追加した。4時間後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液4部をフラスコ内に追加し、更に重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液11部を追加して、温度を60℃に昇温し、重合反応を進めた。3時間後、フラスコを空気中に開放して重合反応を停止させ、生成物を温度80℃で脱臭し、残留単量体を除去した。その後、水酸化リチウムの10%水溶液を用いて生成物のpHを8に調整することにより、結着材としての重合体Bを含む水分散液を得た。
<負極合材層用バインダー組成物の調製>
重合体Bの水分散液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート25部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<負極合材層用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部、天然黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部とを投入した。さらに、イオン交換水にて固形分濃度が60%となるように希釈し、その後、回転速度45rpmで60分混練した。その後、上述で得られた負極合材層用バインダー組成物を固形分相当で1.5部投入し、回転速度40rpmで40分混練した。そして、粘度が3000±500mPa・s(B型粘度計、25℃、60rpmで測定)となるようにイオン交換水を加えることにより、負極合材層用スラリー組成物を調製した。
<負極の製造>
上記負極合材層用スラリー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、負極原反および負極を得た。そして、得られた負極原反を用いて負極合材層のプレス性を評価し、得られた負極を用いて負極合材層の接着性を評価した。結果を表1に示す。
<正極、セパレータ、二次電池の製造>
上述で得られた負極を使用した以外は、実施例1と同様にして、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、得られたリチウムイオン二次電池を用いてレート特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)
<結着材(重合体C)の準備>
結着材としてのポリフッ化ビニリデン(重合体C、クレハ化学製、商品名「KF-1100」)をNMPに溶解させて、結着材としての重合体CのNMP溶液(固形分濃度:8%)を調製した。
<負極合材層用バインダー組成物の調製>
重合体CのNMP溶液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート25部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<負極合材層用スラリー組成物の調製>
負極活物質としての人造黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部、天然黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部に対して、上記負極合材層用バインダー組成物を固形分相当で2.5部とを添加して、さらにNMPにて固形分濃度50%となるように希釈し、ディスパーにて3000rpmで1時間撹拌した。そして、粘度が3000±500mPa・s(B型粘度計、25℃、60rpmで測定)となるようにNMPを加えることにより、負極合材層用スラリー組成物を調製した。
<負極の製造>
上記負極合材層用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の表面に、塗付量が11±0.5mg/cm2となるように塗布した。その後、負極合材層用スラリー組成物が塗布された銅箔を、200mm/分の速度で、温度90℃のオーブン内を2分間、さらに温度120℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、集電体上に負極合材層が形成された負極原反を得た。この負極原反を用いて、負極合材層のプレス性を評価した。結果を表1に示す。
その後、作製した負極原反の負極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧11t(トン)の条件でロールプレスし、負極合材層密度が1.70g/cm3の負極を得た。その後、当該負極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。放置後の負極を用いて、負極合材層の接着性を評価した。結果を表1に示す。
<正極、セパレータ、二次電池の製造>
上述で得られた負極を使用した以外は、実施例1と同様にして、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、得られたリチウムイオン二次電池を用いてレート特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例8)
<結着材(重合体C)の準備>
実施例7と同様にして、結着材としての重合体CのNMP溶液(固形分濃度:8%)を調製した。
<正極合材層用バインダー組成物の調製>
重合体CのNMP溶液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート25部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<正極合材層用スラリー組成物の調製>
正極活物質としてのCo-Ni-Mnのリチウム複合酸化物系の活物質(セルシード(登録商標)NMC111、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、日本化学工業社製)96部に対して、導電材としてのアセチレンブラック2部(電気化学工業製、商品名「HS-100」)と、上記正極合材層用バインダー組成物を固形分相当で2部とを添加して、NMPにて固形分濃度65%となるように希釈し、ディスパーにて3000rpm、1時間撹拌した。そして、粘度が3000±500mPa・s(B型粘度計、25℃、60rpmで測定)となるようにイオン交換水を加えることにより、正極合材層用スラリー組成物を調製した。
<正極の製造>
上述で得られた正極合材層用スラリー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして正極原反および正極を製造した。そして、得られた正極原反を用いて正極合材層のプレス性を評価し、得られた正極を用いて正極合材層の接着性を評価した。結果を表1に示す。
<負極の製造>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部、天然黒鉛(理論容量:360mAh/g)48.75部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分相当で1部とを投入した。さらに、イオン交換水にて固形分濃度が60%となるように希釈し、その後、回転速度45rpmで60分混練した。その後、実施例1と同様にして得た重合体Aを固形分相当で1.5部投入し、回転速度40rpmで40分混練した。そして、粘度が3000±500mPa・s(B型粘度計、25℃、60rpmで測定)となるようにイオン交換水を加えることにより、負極合材層用スラリー組成物を調製した。
上記負極合材層用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の表面に、塗付量が11±0.5mg/cm2となるように塗布した。その後、負極合材層用スラリー組成物が塗布された銅箔を、400mm/分の速度で、温度80℃のオーブン内を2分間、さらに温度110℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、集電体上に負極合材層が形成された負極原反を得た。
その後、作製した負極原反の負極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧11t(トン)の条件でロールプレスし、負極合材層密度が1.60g/cm3の負極を得た。その後、当該負極を、温度25±3℃、相対湿度50±5%の環境下にて1週間放置した。
<セパレータ、二次電池の製造>
上述で得られた正極および負極を使用した以外は、実施例1と同様にして、セパレータを準備し、二次電池を製造した。そして、得られたリチウムイオン二次電池を用いてレート特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例9)
<結着材(重合体D)の調製>
メカニカルスターラーおよびコンデンサを装着した反応器Aに、窒素雰囲気下、イオン交換水85部、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れた後、撹拌しながら55℃に加熱し、過硫酸カリウム0.3部を5.0%水溶液として反応器Aに添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器Bに、窒素雰囲気下、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル93.3部(96.0モル%)、カルボン酸基含有単量体としてメタクリル酸1.9部(1.2モル%)、アミノ基含有単量体としてジメチルアミノエチルメタクリレート2.3部(0.8モル%)、および(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn-ブチルアクリレート4.7部(2.0モル%)、並びに、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6部、ターシャリードデシルメルカプタン0.035部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.4部、およびイオン交換水80部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、5時間かけて一定の速度で反応器Aに添加し、重合転化率が95%になるまで反応させ、共重合体の水分散液を得た。続いて得られた共重合体の水分散液に、NMPを共重合体の固形分濃度が7%になるよう添加した。そして90℃にて減圧蒸留を実施して水および過剰なNMPを除去し、結着材としての重合体DのNMP溶液(固形分濃度が8%)を得た。
<正極合材層用バインダー組成物の調製>
重合体DのNMP溶液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート25部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、二次電池の製造>
上述で得られた正極合材層用バインダー組成物を使用した以外は、実施例8と同様にして、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例10)
正極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートの配合量を19部に変更すると共に、発泡剤としての炭酸水素ナトリウムを6.3部配合した以外は、実施例9と同様にして、結着材としての重合体D、正極合材層用バインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例11)
正極合材層用バインダー組成物の調製の際に、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム6.3部に替えて、難燃剤としてのリン系化合物を6.3部配合した以外は、実施例10と同様にして、結着材としての重合体D、正極合材層用バインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例12)
正極合材層用バインダー組成物の調製の際に、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム6.3部に替えて、難燃剤としてのシリコーン系化合物を6.3部配合した以外は、実施例10と同様にして、結着材としての重合体D、正極合材層用バインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例13)
<結着材(重合体E)の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器でイオン交換水50部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのブチルアクリレート94部、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリル2部、カルボン酸基含有単量体としてのメタクリル酸2部、ヒドロキシル基含有単量体としてのN-ヒドロキシメチルアクリルアミド1部及びエポキシ基含有単量体単位としてのアリルグリシジルエーテル1部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、結着材としての重合体Eを含む水分散液を得た。
<多孔膜層用バインダー組成物の調製>
重合体Eの水分散液100部(固形分相当)に対し、メラミン化合物としてのメラミンシアヌレート25部を混合し、バインダー組成物を調製した。
<多孔膜用スラリー組成物の調製>
非導電性粒子としてのアルミナ(住友化学社製、製品名「AKP3000」)を固形分相当で100部と、上記多孔膜層用バインダー組成物を5部(固形分相当)と、増粘剤としてのポリアクリルアミドを1.5部と、分散剤としてのポリアクリル酸を0.8部と固形分濃度が40%となるようイオン交換水を追加し、ボールミルを用いて混合し、多孔膜層用スラリー組成物を得た。
<セパレータの製造>
基材としての有機セパレータ基材(ポリプロピレン製、製品名「セルガード2500」)上に、上述で得られた多孔膜層用スラリー組成物を、当該多孔膜層用スラリー組成物の塗布厚みが2μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥させて、有機セパレータ基材の片面に多孔膜層を有するセパレータを得た。この片面に多孔膜層を有するセパレータを用いて、多孔膜層の接着性を評価した。結果を表1に示す。また別途、上記塗布および乾燥の操作を両面に施すことにより、有機セパレータ基材の両面に多孔膜層を有するセパレータを得た。
<負極の製造>
実施例8と同様にして、負極を製造した。
<正極の製造>
実施例1と同様にして、正極を製造した。
<二次電池の製造>
上記の負極、正極およびセパレータを用いて、捲回セル(放電容量520mAh相当)を作製し、アルミ包材内に配置した。該捲回セルを加熱式平板プレス機にて、温度70℃、圧力1.0MPaでアルミ包材ごと8秒間プレスし、セパレータと電極(負極および正極)を接着させた。
その後、アルミ包材内に、電解液として濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤:ビニレンカーボネート2体積%(溶媒比)含有)を充填した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、温度150℃のヒートシールをしてアルミ包材を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。このリチウムイオン二次電池を用いて、レート特性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートを配合しない以外は、実施例1と同様にして、結着材としての重合体A、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例2)
負極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートの配合量を400部に変更した以外は、実施例6と同様にして、結着材としての重合体B、負極合材層用バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、負極、正極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例3)
正極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートを配合しない以外は、実施例8と同様にして、結着材としての重合体C、正極合材層用バインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例4)
正極合材層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートを配合しない以外は、実施例9と同様にして、結着材としての重合体D、正極合材層用バインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、正極、負極、セパレータ、および二次電池を製造した。そして、実施例8と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例5)
多孔膜層用バインダー組成物の調製の際に、メラミンシアヌレートを配合しない以外は、実施例13と同様にして、結着材としての重合体E、多孔膜層用バインダー組成物、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、正極、負極、および二次電池を製造した。そして、実施例13と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
なお、以下に示す表1中、
「SBR」は、脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体(スチレン-ブタジエン共重合体)を示し、
「AA/AAm」は、アクリル酸/アクリルアミド系共重合体を示し、
「PVDF」は、フッ素系重合体(ポリフッ化ビニリデン)を示し、
「PAN」は、アクリロニトリル系重合体を示し、
「ACR」は、アクリル系重合体を示す。
Figure 0007115463000002
表1より、結着材およびメラミン化合物を含み、メラミン化合物の対結着材量が所定の範囲内であるバインダー組成物を用いた実施例1~13では、機能層に優れた接着性を発揮させつつ、二次電池のレート特性を向上できることが分かる。また、表1より、結着材およびメラミン化合物を含み、メラミン化合物の対結着材量が所定の範囲内であるバインダー組成物を用いて電極合材層を調製した実施例1~12では、プレス性に優れる電極合材層が得られることが分かる。
一方、表1より、結着材を含むが、メラミン化合物を含まないバインダー組成物を用いた比較例1,3~5では、機能層の接着性および二次電池のレート特性の双方を十分に確保できていないことがわかる。また、表1より、結着材を含むが、メラミン化合物を含まないバインダー組成物を用いて電極合材層を調製した比較例1,3,4では、電極合材層のプレス性が損なわれることが分かる。そして、表1より、結着材およびメラミン化合物を含み、メラミン化合物の対結着材量が所定の範囲を超えるバインダー組成物を用いて電極合材層(機能層)を調製した比較例2では、機能層の接着性および二次電池のレート特性が十分に確保できず、電極合材層のプレス性も損なわれることが分かる。
本発明によれば、結着性に優れると共に、非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池用バインダー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る機能層を形成可能な非水系二次電池機能層用スラリー組成物を提供することができる。
そして、本発明によれば、優れた接着性を備え、且つ非水系二次電池のレート特性を向上させ得る非水系二次電池用機能層を提供することができる。
さらに、本発明によれば、レート特性に優れる非水系二次電池を提供することができる。

Claims (5)

  1. 結着材およびメラミン化合物を含み、
    前記メラミン化合物の含有量が、前記結着材100質量部当たり0.5質量部以上25質量部以下であり、
    前記結着材が、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキサゾリン基、スルホン酸基、ニトリル基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体であり、
    前記メラミン化合物は、以下の式(I)で表される化合物及びその塩の少なくとも一方である、非水系二次電池用バインダー組成物。
    Figure 0007115463000003
    式(I)中、各Aは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基または-NR (R およびR は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、またはヒドロキシル基含有炭化水素基を表す。また、式(I)中にR が複数存在する場合は、複数存在するR は同一であっても異なっていてもよく、R が複数存在する場合は、複数存在するR は同一であっても異なっていてもよい。)を表す。
    ここで、R およびR の炭化水素基およびヒドロキシル基含有炭化水素基は、炭素原子と炭素原子の間に1つ又は2つ以上の酸素原子(-O-)が介在していてもよい。但し、2つ以上の酸素原子が介在する場合、それらは互いに隣接しないものとする。
  2. 請求項1に記載の非水系二次電池用バインダー組成物を含む、非水系二次電池機能層用スラリー組成物。
  3. さらに電極活物質粒子を含む、請求項2に記載の非水系二次電池機能層用スラリー組成物。
  4. 請求項2または3に記載の非水系二次電池機能層用スラリー組成物を用いて形成される、非水系二次電池用機能層。
  5. 請求項4に記載の非水系二次電池用機能層を備える、非水系二次電池。
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