以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1、図2及び図3を参照して、本発明の第1実施の形態におけるシートパッド1について説明する。図1はシートパッド1の平面図である。図2は図1のII-II線におけるシートパッド1の断面図である。図3はシートパッド1の底面図である。各図面の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれシートパッド1の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。なお、このシートパッド1の上下方向や左右方向、前後方向は、シートパッド1に着座した着座者Hの上下方向、左右方向、前後方向と略同一である。また各図面では、シートパッド1の各部を模式的に図示している。
図1及び図2に示すように、シートパッド1は、着座者Hが着座するシートにクッション材として用いられるものである。シートパッド1は、振動を伴う車両に搭載される後部座席や運転席、助手席用のシートの着座部分に設けられる。シートパッド1は、厚さ方向(矢印U-D方向)の着座者H側が表面4であり、表面4に対して厚さ方向の反対側が裏面5である。シートの着座部分であるシートパッド1の表面4は、着座者Hからの荷重を受ける着座面であり、表皮材(図示せず)で覆われる部位である。裏面5は、車体フロアやフレーム(図示せず)により下方から支持される部位である。
シートパッド1は、シートパッド1の後方(矢印B)側を構成する尻下部10と、尻下部10よりも前方(矢印F)側を構成する腿下部14と、尻下部10及び腿下部14の左右両側にそれぞれ設けられるサイドサポート6とを備える。サイドサポート6は、着座者Hの臀部や大腿部を側方から支持する部位であり、尻下部10及び腿下部14と一体成形される。
尻下部10は、着座者Hの臀部を下方から支持する部位である。腿下部14は、着座者Hの大腿部を下方から支持する部位である。尻下部10は、表面4を形成する表面層11と、裏面5の一部を形成して表面層11に一体化される裏面層12とを備える。腿下部14は、表面4を形成する表面層15と、裏面5の一部を形成して表面層15に一体化される裏面層16(図3参照)とを備える。表面層11,15が裏面層12,16の前後左右の周囲にも設けられている。
表面層11及び表面層15は、軟質ポリウレタンフォーム等の軟質フォーム(クッション材)からなる一体の部材であり、通気性を有する。裏面層12及び裏面層16は、発泡スチロール等の非通気性の発泡体からなる一体の部材である。裏面層12,16は、表面層11,15よりも硬くて比重が小さく設定されている。そのため、シートパッド1が軟質フォームのみからなる場合に比べ、シートパッド1を薄くしても裏面層16によりフレーム等の硬さを着座者Hに感じさせ難くできると共に、シートパッド1を軽量化できる。
図2及び図3に示すように、尻下部10には、裏面層12を厚さ方向に貫通する断面円形状の貫通孔17が設けられる。この貫通孔17は、表面層11を貫通していない。但し、表面4に開口しないように貫通孔17の一部を表面層11に設けても良い。また、貫通孔17は、腿下部14の裏面層16には設けられていない。なお、裏面層12と裏面層16との境界Bを一点鎖線で図3に示している。
貫通孔17は、シートパッド1に座った着座者Hの左右の坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置にそれぞれ設けられる。なお、坐骨結節部T1,T2の間隔は、一般的に100mm~160mmの間に含まれている。そのため、尻下部10の裏面層12の左右方向中央Cから左右方向(矢印L-R方向)にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に貫通孔17の少なくとも一部を設けることが好ましい。
貫通孔17は、シートパッド1の厚さ方向に亘って内径L1が一定であり、内径L1が50mm~150mmに設定される。そのため、貫通孔17の中心位置と坐骨結節部T1,T2の位置とがずれていても、坐骨結節部T1,T2の直下に貫通孔17を配置し易くできる。
次に図4(a)及び図4(b)を参照してシートパッド1の製造方法について説明する。図4(a)は裏面層12,16を金型20に装着した状態を示す説明図である。図4(b)はシートパッド1を成形した状態を示す説明図である。
図4(a)に示すように、金型20の下型21に対して上型23を開いた状態で、上型23の成形面24に裏面層12,16を装着する。このとき、上型23の成形面24から突出する突部25が貫通孔17に嵌まる。これにより、上型23に対して裏面層12,16が位置決めされて固定される。なお、突部25の高さは、貫通孔17周囲の裏面層12の厚さと同一かそれ以上に設定され、突部25が下型21の成形面22に接触しないように設定されている。
次いで、下型21の成形面22に発泡原液を注入して下型21と上型23とを閉じる。そして、発泡原液を発泡させて軟質フォーム製の表面層11,15を発泡成形する。これにより、表面層11,15の軟質フォームの一部が裏面層12,16の外面の凹凸に入り込むことで、表面層11,15と裏面層12,16とが一体化され、シートパッド1が製造される。金型20の一部である突部25が貫通孔17に嵌まった状態で、表面層11が発泡成形されるので、貫通孔17に表面層11の一部が入り込まず、貫通孔17が空洞となる。
以上のようなシートパッド1によれば、シートパッド1に着座者Hが着座した状態で車両に振動が生じると、車両からの振動を減衰するために軟質フォーム製の表面層11,15が弾性変形し、表面層11,15に空気が出入りする。非通気性の発泡体である裏面層12に貫通孔17が設けられているので、表面層11の弾性変形によって生じる空気の移動が貫通孔17を通して行われ、その空気の移動を裏面層12に妨げられ難くできる。これにより、道路の凹凸などに伴う車両の振動時に、表面層11のストローク量を多く(尻下部10の共振倍率を大きく)できるので、特に振動による着座者Hの内臓への影響を低減できる。即ち、表面層11に貫通孔17がない場合に比べて貫通孔17がある方が、表面層11の振動時のストローク量を多くでき、車両に搭載されるシートパッド1に着座した際の乗り心地を良くできる。
特に、硬い裏面層12に柔らかい表面層11を重ねて尻下部10を約40mm~70mmと薄くした場合には、尻下部10の共振倍率が小さいと、車両から着座者Hへの振動を尻下部10により十分に減衰できないことがある。しかし、貫通孔17によって尻下部10の共振倍率を大きくできるので、尻下部10を薄くしても乗り心地を良くできる。
また、貫通孔17の内径L1が30mm以上(本実施の形態では50mm~150mm)であれば、シートパッド1に着座者Hが着座したときの表面層11の撓み量を貫通孔17により増加させることができる。これにより、表面層11から着座者Hが受ける圧力を分散でき、シートパッド1の座り心地を良くできる。
なお、貫通孔17の内径L1が大きい程、表面層11の撓み量を増加でき、シートパッド1の座り心地をより良くできる。さらに、内径L1が30mm以上の貫通孔17が、着座者Hから大きな荷重を受け易い位置に設けられる場合、表面層11の撓み量を増加でき、シートパッド1の座り心地をより良くできる。
ここで、貫通孔17が表面層11を貫通する場合には、着座者Hが表面4の感触に違和感を覚えることや、表面4に開口した貫通孔17から、表面層11の弾性変形に伴って空気が出入りすることによる違和感を着座者Hが覚えることがある。本実施の形態では、貫通孔17が表面層11を貫通していないので、表面4の感触や、表面4の局所的な空気の出入りによって着座者Hに違和感を覚え難くさせることができる。
貫通孔17が空洞なので、貫通孔17の厚さ方向の少なくとも一部に表面層11の一部が入り込んでいる場合に比べて、表面層11の弾性変形によって生じる空気の移動をし易くできる。その結果、表面層11の振動時のストローク量をより多くして乗り心地をより良くできる。
貫通孔17は、着座者Hから大きな荷重を受け易い尻下部10の裏面層12に設けられている。そのため、着座者Hから大きな荷重を受け易い尻下部10の振動時のストローク量を多くできるので、乗り心地をより良くできる。
特に、尻下部10には、着座者Hの坐骨結節部T1,T2から最も大きな荷重が付与される。尻下部10の左右方向中央Cから左右方向にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に貫通孔17の少なくとも一部が設けられているので、着座者Hの坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置の尻下部10に貫通孔17が配置される。着座者Hから最も大きな荷重を受け易い部分の尻下部10の振動時のストローク量をより多くできるので、乗り心地をより一層良くできる。
貫通孔17の内径L1が50mm~150mmに設定されるので、着座者Hの坐骨結節部T1,T2の位置に個人差があっても、坐骨結節部T1,T2の直下に貫通孔17を位置させ易い。これにより、シートパッド1の座り心地を向上し易くできる。さらに、貫通孔17の内径L1が50mm以上に設定されるので、表面層11の弾性変形時に、貫通孔17を通して空気を移動し易くできる。その結果、表面層11の振動時のストローク量をより多くして乗り心地を良くできる。
貫通孔17の内径L1が100mm以上に設定されることが好ましい。この場合には、坐骨結節部T1,T2の直下に貫通孔17を更に位置させ易くできると共に、貫通孔17を通して空気を更に移動し易くできる。その結果、乗り心地を更に向上できる。
着座者Hの臀部を支持する尻下部10に比べて、着座者Hの大腿部を支持する腿下部14には、着座者Hから大きな荷重が付与され難い。このような腿下部14の裏面層16に貫通孔17が設けられていないので、腿下部14の振動時のストローク量を比較的少なくでき、シートパッド1に座った着座者Hの安定感を確保できる。
さらに、車両に搭載されるシートパッド1の腿下部14の裏面層16に貫通孔17が設けられていないので、腿下部14が軟らかくなり過ぎないようにできる。その結果、車両の衝突時などに、シートパッド1に対して着座者Hが前方へ滑り込むサブマリン現象を生じ難くできる。
次に図5、図6(a)及び図6(b)を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、尻下部10の裏面層12に比較的大きな2つの貫通孔17が設けられる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、尻下部10の裏面層31に比較的小さな複数の貫通孔32が設けられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第2実施の形態におけるシートパッド30の底面図である。図6(a)は裏面層16,31を金型36に装着した状態を示す説明図である。図6(b)はシートパッド30を成形した状態を示す説明図である。
図5に示すように、シートパッド30の裏面層16,31は、発泡スチロール等の非通気性の発泡体からなる一体の部材である。裏面層31は、着座者Hの臀部を支持する尻下部10の一部である。この裏面層31には、断面円形状の複数の貫通孔32が厚さ方向に貫通形成されている。
複数の貫通孔32は、裏面層31の左右方向中央Cから左右方向にそれぞれ離れた対称位置の仮想円33,34内に設けられる。仮想円33,34の直径L2は、約50mm~150mmに設定される。貫通孔32の内径L3は、厚さ方向に亘って一定であり、約6~20mmに設定される。貫通孔32同士の間隔L4は、約6mm~20mmに設定される。
シートパッド30に座った着座者Hの左右の坐骨結節部T1,T2の直下に仮想円33,34が位置するように、仮想円33,34間の距離や位置が設定される。即ち、裏面層31の左右方向中央Cから左右方向にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に仮想円33,34(複数の貫通孔32)の少なくとも一部が設けられる。
図6(a)及び図6(b)に示すように、シートパッド30を製造するには、まず金型36を開いた状態で、金型36の上型37の成形面24に裏面層16,31を装着する。上型37には、裏面層31の貫通孔32に嵌まる突部が設けられていない。裏面層16,31は上型37にピンやフック等(図示せず)で固定される。
下型21の成形面22に発泡原液を注入して下型21と上型37とを閉じ、発泡原液を発泡させて軟質フォーム製の表面層11,15が発泡成形される。これにより、表面層11,15と裏面層16,31とが一体化され、シートパッド30が製造される。シートパッド30の表面4を表面層11,15が形成し、シートパッド30の裏面5の一部を裏面層16,31が形成する。また、貫通孔32が空洞の状態で表面層11,15が発泡成形されるので、表面層11の一部が貫通孔32内に入り込む(充填される)。
以上のようなシートパッド30によれば、第1実施の形態のシートパッド1と同様に、軟質フォーム製の表面層11の弾性変形によって生じる空気の移動が、非通気性の発泡体である裏面層31に設けた貫通孔32を通して行われる。これにより、その空気の移動が裏面層31に妨げられ難くできる。その結果、表面層11の振動時のストローク量を多くして乗り心地を良くできる。
裏面層31の貫通孔32には表面層11の一部が入り込むので、表面層11と裏面層31とをずれ難くして強固に一体化できる。通気性を有する(裏面層31よりも通気性が高い)軟質フォームから表面層11が構成されるので、貫通孔32に表面層11の一部が入り込んでいても、表面層11の弾性変形によって生じる空気の移動をし易くできる。
裏面層31の左右方向中央Cから左右方向にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に仮想円33,34の少なくとも一部が設けられ、その仮想円33,34内に複数の貫通孔32が設けられている。これにより、着座者Hの坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置の尻下部10に複数の貫通孔32を設けることができるので、着座者Hから最も大きな荷重を受け易い部分の尻下部10の振動時のストローク量をより多くできる。その結果、乗り心地をより良くできる。
仮想円33,34の直径L2は、50mm~150mmに設定されるので、着座者Hの坐骨結節部T1,T2の位置に個人差があっても、坐骨結節部T1,T2の直下の尻下部10に複数の貫通孔32を位置させ易い。これにより、乗り心地を向上し易くできる。特に、仮想円33,34の直径L2が100mm以上に設定されることが好ましい。この場合には、坐骨結節部T1,T2の直下の尻下部10に複数の貫通孔32を更に位置させ易くできると共に、表面層11の弾性変形時に複数の貫通孔32を通して空気を移動し易くできる。その結果、乗り心地を更に向上できる。
貫通孔32の内径L3が約6mm~20mmと比較的小さいので、貫通孔32の内径L3が大きい場合と比べて、シートパッド30に着座者Hが座ったとき、潰れた表面層11を介して貫通孔32の縁を着座者Hに感じさせ難くできる。このような貫通孔32が裏面層31に複数設けられているので、貫通孔32を通して空気を十分に移動し易くできる。これらの結果、シートパッド30の座り心地および乗り心地をより良くできる。
貫通孔32同士の間隔L4が約6mm~20mmに設定されているので、仮想円33,34内の貫通孔32の数を多くでき、貫通孔32を通して空気を移動し易くできる。さらに、間隔L4を15mm以下に設定することが好ましく、間隔L4を10mm以下に設定することがより好ましい。間隔L4を小さくする程、仮想円33,34内の貫通孔32の数をより多くでき、複数の貫通孔32を通して空気をより移動し易くできる。その結果、乗り心地をより良くできる。
また、間隔L4を貫通孔32の内径L3と略同一にすることで、仮想円33,34内の貫通孔32の割合を十分に確保でき、複数の貫通孔32を通して空気を十分に移動し易くできる。その結果、乗り心地をより良くできる。
次に図7及び図8(a)を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、腿下部14の裏面層16に貫通孔17が設けられていない場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、腿下部14の裏面層42に貫通孔44を設ける場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7は第3実施の形態におけるシートパッド40の底面図である。図8(a)はシートパッド40を成形した状態を示す説明図である。なお、図7には、貫通孔43の表面層11側の端部の縁が破線で図示されている。
図7及び図8(a)に示すように、シートパッド40は、車両用のシートの着座部分にクッション材として用いられるものである。シートパッド40は、厚さ方向(矢印U-D方向)の着座者H側が表面4であり、表面4に対して厚さ方向の反対側が裏面5である。
シートパッド40の尻下部10は、表面4を形成する表面層11と、裏面5の一部を形成して表面層11に一体化される裏面層41とを備える。シートパッド40の腿下部14は、表面4を形成する表面層15と、裏面5の一部を形成して表面層15に一体化される裏面層42とを備える。
裏面層41及び裏面層42は、発泡スチロール等の非通気性の発泡体からなる一体の部材である。裏面層41には、裏面層41を厚さ方向に貫通する断面円形状の2つの貫通孔43が設けられる。裏面層42には、裏面層42を厚さ方向に貫通する断面円形状の複数の貫通孔44が設けられる。これらの貫通孔43,44は、表面層11,15を貫通していない。
裏面層41の左右方向中央Cから左右方向にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に貫通孔43の少なくとも一部が設けられる。即ち、貫通孔43は、シートパッド40に座った着座者Hの左右の坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置にそれぞれ設けられる。
貫通孔43は、裏面5から表面4へ向かうにつれて次第に内径が拡径される。貫通孔43は、裏面5での最小内径L5が50mm~150mmに設定される。貫通孔43は、表面4側での最大内径L6が最小内径L5の1.1~1.5倍に設定される。
貫通孔44は、内径L7が厚さ方向に亘って一定であり、約6mm~20mmに設定される。複数の貫通孔44は、前後方向に2列で設けられている。複数の貫通孔44同士の左右方向の間隔L8、及び、貫通孔44同士の前後方向の間隔L9は、それぞれ約6mm~20mmに設定される。本実施の形態では、間隔L8よりも間隔L9が大きく設定されているが、間隔L8と間隔L9とを同じにしたり、間隔L8よりも間隔L9を小さくしたりしても良い。
図8(a)に示すように、シートパッド40を製造するには、まず金型46を開いた状態で、金型46の上型47の成形面24に裏面層41,42を装着する。上型47には、裏面層41の貫通孔43に挿入される突部25と、裏面層42の貫通孔44に嵌まる突部48とが設けられている。突部25は、貫通孔43の最小内径L5と同一の外径を有する円柱状の部材である。
下型21の成形面22に発泡原液を注入して下型21と上型47とを閉じ、発泡原液を発泡させて軟質フォーム製の表面層11,15が発泡成形される。これにより、表面層11,15と裏面層41,42とが一体化され、シートパッド40が製造される。貫通孔44に突部48が嵌まった状態で、表面層15が発泡成形されるので、貫通孔44に表面層15の一部が入り込まず、貫通孔44が空洞となる。
裏面5から表面4へ向かうにつれて次第に内径が拡径される貫通孔43に、貫通孔43の最小内径L5と同一外径の突部25が挿入されるので、貫通孔43の内周面と突部25の外周面との間に表面層11の一部が入り込む。金型46からシートパッド40を外すと、貫通孔43の内側には、厚さ方向に亘って最小内径L5と同一内径の空洞43aが形成される。
以上のようなシートパッド40によれば、第1実施の形態のシートパッド1と同様に、軟質フォーム製の表面層11の弾性変形によって生じる空気の移動が、非通気性の発泡体である裏面層41に設けた貫通孔43を通して行われる。これにより、その空気の移動が裏面層41に妨げられ難くできる。その結果、表面層11の振動時のストローク量を多くして乗り心地を良くできる。
腿下部14の裏面層42に貫通孔44が設けられているので、腿下部14の表面層15の弾性変形によって生じる空気の移動が貫通孔44を通して行われ、その空気の移動が裏面層42に妨げられ難くできる。その結果、腿下部14の表面層15の振動時のストローク量をより多くできるので、乗り心地をより良くできる。
腿下部14の裏面層42には、内径L7が約6mm~20mmと比較的小さい貫通孔44が複数設けられる。そして、例えば前後方向に2列で複数の貫通孔44を裏面層42に設けるなどのように、貫通孔44の数を比較的少なくすることで、裏面層42を柔らかくなり過ぎないようにできる。これにより、腿下部14の裏面層42に貫通孔44を設けても、車両の衝突時などにサブマリン現象を生じ難くできる。
左右方向に並んだ貫通孔44同士の左右方向の間隔L8がそれぞれ同一に設定されている。これにより、着座者Hが大腿部を腿下部14上で左右にスライドさせたとしても、大腿部が腿下部14から受ける感触を略同一にできる。また、貫通孔44同士の左右方向の間隔L8よりも、貫通孔44同士の前後方向の間隔L9が大きいので、腿下部14に付与される前後方向の荷重に対する腿下部14の剛性を比較的大きくできる。その結果、車両の衝突時など、腿下部14に前後方向の荷重が付与されて腿下部14が変形することを抑制できるので、サブマリン現象を生じ難くできる。
裏面層41の貫通孔43に表面層11の一部が入り込むので、表面層11と裏面層41とをずれ難くして強固に一体化できる。さらに、貫通孔43の内側には、裏面層41を厚さ方向に貫通する空洞43aが形成されているので、表面層11の弾性変形時に、貫通孔43の空洞43aを通して空気を移動し易くできる。その結果、貫通孔43の空洞43aによって乗り心地をより良くできる。
貫通孔43の内径が表面4側から裏面5側へ向かうにつれて次第に縮径されるので、シートパッド40に着座者Hが座ったとき、潰れた表面層11を介して貫通孔43の縁を着座者Hに感じさせ難くできる。特に、その貫通孔43の内周面に表面層11の一部が一体化されているので、着座者Hに貫通孔43の縁をより感じさせ難くできる。その結果、シートパッド40の座り心地をより良くできる。
貫通孔43は、裏面5側の最小内径L5よりも表面4側の最大内径L6が大きいので、貫通孔43を通して空気を移動し易くできる。最大内径L6が大きい程、貫通孔43を通して空気をより移動し易くできる。
本実施の形態では、最大内径L6が最小内径L5の1.1倍以上に設定されているので、貫通孔43を通して空気を十分に移動し易くできる。最大内径L6が最小内径L5の1.3倍以上に設定されることが好ましい。この場合には、貫通孔43を通して空気をより移動し易くできる。なお、最大内径L6が最小内径L5の1.5倍よりも大きい場合、その倍率を大きくしても空気の移動し易さが殆ど変わらないが、貫通孔43を形成し難くなる。そのため、最大内径L6を最小内径L5の1.5倍以下に設定することで、貫通孔43を通した空気の移動し易さと、貫通孔43の形成し易さとを両立できる。
次に図8(b)を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、裏面5から表面4へ向かうにつれて次第に内径が縮径される貫通孔43について説明した。これに対し第4実施の形態では、貫通孔52が小径部53及び大径部54を有する場合について説明する。なお、第1,3実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8(b)は第4実施の形態におけるシートパッド50を成形した状態を示す説明図である。なお、シートパッド50の底面図は、第3実施の形態におけるシートパッド40の底面図(図7)と略同一である。
図8(b)に示すように、シートパッド50の尻下部10の裏面層51は、発泡スチロール等の非通気性の発泡体からなり、腿下部14の裏面層42と一体成形されている。裏面層51には、裏面層51を厚さ方向に貫通する貫通孔52が設けられる。この貫通孔52は、表面層11を貫通していない。
裏面層51の左右方向中央C(図7参照)から左右方向にそれぞれ50mm~80mm離れた対称位置に貫通孔52の少なくとも一部が設けられる。即ち、貫通孔52は、シートパッド50に座った着座者Hの左右の坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置にそれぞれ設けられる。
貫通孔52は、裏面5側の小径部53と、小径部53の上方(表面4側)に連なる大径部54とを備えている。小径部53は、内径L5が厚さ方向に亘って一定であり、約50mm~150mmに設定される。大径部54は、小径部53よりも内径が大きい部位である。大径部54は、小径部53に対して段差状に拡径されると共に、表面4へ向かうにつれて次第に拡径される。大径部54の最大内径L6が内径L5の1.1~1.5倍に設定される。
金型46の上型47の突部25を貫通孔52に挿入すると、小径部53に突部25が嵌まり、大径部54の内周面と突部25との間に隙間ができる。この状態で、表面層11,15を発泡成形すると、大径部54に表面層11の一部が入り込む。そして、金型46からシートパッド50を外すと、大径部54の内側には、内径L5の空洞54aが形成される。この空洞54aは、空洞である小径部53と連なっている。
以上のようなシートパッド50によれば、第1,3実施の形態のシートパッド1,40と同様に、軟質フォーム製の表面層11,15の弾性変形によって生じる空気の移動が、非通気性の発泡体である裏面層42,51に設けた貫通孔44,52を通して行われる。これにより、その空気の移動が裏面層42,51に妨げられ難くできる。その結果、表面層11,15の振動時のストローク量を多くして乗り心地を良くできる。
裏面層51の貫通孔52の大径部54に表面層11の一部が入り込むので、表面層11と裏面層51とをずれ難くして強固に一体化できる。さらに、大径部54の内側の空洞54aと、空洞54aに連なる空洞である小径部53とが裏面層51に貫通形成されているので、表面層11の弾性変形時に、空洞54a及び小径部53を通して空気を移動し易くできる。
表面4側の大径部54の内径が小径部53の内径L5よりも大きいので、貫通孔52を通して空気をより移動し易くできる。また、大径部54によって小径部53まわりの表面層11の厚さを大きくできるので、その表面層11の厚さ(大径部54の矢印U-D方向の寸法)に応じて小径部53まわりの表面層11の振動時のストローク量を多くできる。よって、大径部54を設けて大径部54の形状や各寸法を適宜設定することで、小径部53まわりの表面層11の振動時のストローク量を調整でき、乗り心地を適宜調整できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、シートパッド1,30,40,50の全体形状や寸法、表面層11,15や裏面層12,16,31,41,42,51等の形状や寸法などは適宜設定できる。
裏面層12,16,31,41,42,51の前後左右の周囲に表面層11,15が位置して、裏面層12,16,31,41,42,51が裏面5の一部を形成する場合に限らず、裏面層により裏面5全体を形成しても良い。また、貫通孔17,32,43,44,52が断面円形状ではなく、貫通孔を多角形状などに形成しても良い。この場合、上述した貫通孔17,32,43,44,52の内径L1,L3,L5,L7を、多角形状の貫通孔の中心を通る最小寸法に置き換えれば良い。
上記各実施の形態では、シートパッド1,30,40,50が車両に搭載される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。船舶や航空機、鉄道車両などの乗物にシートパッド1,30,40,50を搭載しても良い。また、シートパッド1,30,40,50は、シートのうち着座者Hが座る着座部分に用いられる場合に限らず、シートの背凭れ部分に用いられるシートパッドに本発明を適用しても良い。この場合、シートパッドの前後方向がシートパッドの厚さ方向となる。
上記各実施の形態では、軟質フォームからなる表面層11,15よりも硬くて比重が小さい発泡スチロール等の非通気性の発泡体から裏面層12,16,31,41,42,51が構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。通気性を有するクッション材であれば、軟質フォーム以外から表面層11,15を構成しても良い。軟質フォーム以外の通気性を有するクッション材としては、例えば、チップウレタンや、合成樹脂製等の繊維をウレタン等のバインダで硬化(結合)したもの、合成樹脂製の繊維を熱で溶融して互いに溶着させたもの等が挙げられる。また、これらのクッション材を複合して用いても良い。
また、表面層11,15よりも硬くて比重が小さい非通気性の発泡体としては、発泡スチロール(ビーズ法発泡ポリスチレン)以外に、ビーズ法発泡ポリプロピレンやビーズ法発泡ポリエチレン等のビーズ法発泡体が挙げられる。また、裏面層は、表面層11,15よりも硬くて比重が小さいものに限らない。また、裏面層は、非通気性の発泡体に限らず、表面層11,15よりも通気性が低い発泡体であれば良い。このような場合でも、表面層11,15よりも通気性が低い裏面層に貫通孔17,32,43,44,52を設けることで、表面層11,15の振動時のストローク量を多くできる。
上記各実施の形態では、尻下部10の裏面層12,31,41,51のうち、着座者Hの坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置に主に貫通孔17,32,43,52が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。貫通孔17,32,43,52の位置や大きさ、数は適宜変更可能であり、坐骨結節部T1,T2の直下に相当する位置から離れた箇所に貫通孔17,32,43,52を設けても良い。また、腿下部14の裏面層42に設ける貫通孔44の位置や大きさ、数も適宜変更可能である。但し、サブマリン現象が生じ難いよう、貫通孔44の位置や大きさ、数を調整したり、裏面層42の素材の硬さを調整したりする必要がある。
また、尻下部10や腿下部14の裏面層12,16,31,41,42,51に設けた貫通孔17,32,43,44,52を裏面層12,16,31,41,42,51の前後左右に開口させても良い。この場合には、表面層11,15の弾性変形時に、貫通孔17,32,43,44,52を通して空気をより移動し易くできる。但し、貫通孔17,32,43,44,52が裏面層12,16,31,41,42,51の前後左右に開口していない方が、シートパッド1,30,40,50の前後左右の局所的な空気の出入りに伴って着座者Hが違和感を覚えることを防止できる。
上記第2,3,4実施の形態では、貫通孔32,44内に表面層11,15の一部が充填される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。貫通孔32,44内の一部に表面層11,15の一部が入り込めば良い。特に、この表面層11,15の一部が貫通孔32,44の内周面に一体化されていれば、表面層11,15と裏面層31,41,42,51とをより強固に一体化できる。
上記各実施の形態では、金型20,36,46内に裏面層12,16,31,41,42,51を配置した状態で表面層11,15を発泡成形し、裏面層12,16,31,41,42,51と表面層11,15とを一体化する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。発泡成形済の表面層11,15と、裏面層12,16,31,41,42,51とを接着やワイヤ、フック等を用いて一体化しても良い。