JP7112215B2 - シリコン溶融ルツボ、シリコン溶融ルツボの製造方法、及び、反応焼結SiCの製造方法 - Google Patents
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Description
半導体用途では、黒鉛ルツボと石英ルツボとを組み合わせ、中に充填されたシリコンの融液から単結晶を引上げる単結晶引上げ装置を用いてインゴットを製造している。多結晶の太陽電池用途では、黒鉛またはC/C複合材の容器の中でシリコンを凝固させ多結晶のウェハを得ている。
複合材用途では、炭素繊維、SiC繊維などを溶融シリコンに浸漬させることでマトリクスがシリコンである複合材を得ることができる。また、あらかじめ含浸された炭素と後から含浸したシリコンとを反応させて反応焼結SiCを生成させ、反応焼結SiCをマトリックスとした複合材を得ることもできる。
特許文献1に記載のルツボはシリコンを溶融させるために使用されるものであるが、このルツボではシリコンを溶融させ、冷却した後にシリコンがルツボ表面に付着してしまうことがあった。
ルツボ表面にシリコンが付着してしまうと、次回のシリコンの溶融の前にメンテナンスのため付着したシリコンをルツボの表面から除去する処理が必要になるという問題があった。
また、シリコンを除去する際に窒化珪素コーティングがともに剥がれてしまうことがあったが、CVD法により再度窒化珪素コーティングを行うことは非常に手間がかかるため、好まれない処理であった。
黒鉛からなる基材の表面を堆積層により覆うことで、シリコンをシリコン溶融ルツボに入れて溶融させた際に黒鉛とシリコンが直接接触することが無く、黒鉛とシリコンとの反応を防止することができる。
セラミック粒子の堆積層は、CVDによるコーティング層のように気体が堆積して形成される層とは異なる物性を示す。
セラミック粒子の堆積層はその表面が粉っぽい状態の層となる。このような層であると溶融したシリコンをはじくことができ、ルツボ表面へのシリコンの付着を防止することができる。また、シリコンがルツボ表面に残留したとしてもセラミック粒子とともに除去することができ、容易にシリコン溶融ルツボを再利用することができる。
また、セラミック粒子の堆積層は、本発明のシリコン溶融ルツボの製造方法のように、セラミック粒子と溶媒とからなるスラリーを塗布し乾燥させることにより形成することができる。このような堆積層は消耗したとしても再度スラリーを塗布して乾燥させることで形成することができるので、CVDによるコーティング層に比べて再度のコーティングが容易な層であるといえる。
また堆積層の厚さが5mm以下であると、ヒートサイクルによるクラックが発生しにくく、堆積層がクラックとともに剥離することを防止できる。
スラリーの塗布による堆積層の形成は、CVDによるコーティング層の形成よりも簡便に行うことができるため好ましい。また、堆積層が消耗した部分が生じたとしてもその部分にスラリーを塗布することによって堆積層を再度形成することができるため好ましい。
また堆積層の厚さが5mm以下であると、ヒートサイクルによるクラックが発生しにくく、堆積層がクラックとともに剥離することを防止できる。
また、黒鉛からなる基材の表面はセラミック粒子の堆積層であるので、冷却して固まったシリコンが残留してもセラミック粒子とともに除去され、容易にシリコン溶融ルツボを再利用することができる。
さらに、セラミック粒子の堆積層は、消耗してもスラリーを塗布することによって再形成することができる。このため、容易にシリコン溶融ルツボを再利用することができ、低コストの反応焼結SiCの製造方法を提供することができる。
骨材は、炭素又はSiCからなるので、シリコンが含浸されやすく、シリコンと炭素が反応し、反応焼結SiCを形成する。
SiCは、炭素と比較してシリコンと反応しにくく、シリコンが含浸された後も残留し易い。このため、骨材に含まれる炭素が選択的に含浸されたシリコンと反応しSiC繊維の残った反応焼結SiCを形成することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
本発明のシリコン溶融ルツボは、黒鉛からなる基材と、上記基材の表面を覆うセラミック粒子の堆積層とからなることを特徴とする。
図1に示すシリコン溶融ルツボ1は、黒鉛からなる基材10の表面がセラミック粒子の堆積層20に覆われてなる。
黒鉛からなる基材10はルツボ形状をしており、堆積層20は基材10の表面を覆うだけであるのでシリコン溶融ルツボ1の全体形状は基材10のルツボ形状と同様のルツボ形状である。
堆積層を構成するセラミックは粒子の状態で堆積層を形成しているため、シリコン溶融ルツボの表面において粉っぽい状態の層となり、冷却して固まったシリコンがルツボ表面に残留したとしてもセラミック粒子とともに除去することができる。
堆積層を構成するセラミック粒子としては、BN、Al2O3、MgO、ZrO2、Y2O3、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される少なくとも1種のセラミック粒子であることが好ましい。これらの中ではBNであることがより好ましい。
セラミック粒子の平均粒子径は1~100μmであることが好ましい。
また、図1では堆積層20が基材10の表面の全てを覆うように設けられている様子を示している。基材のすべてを覆うようにすると発生したSiの蒸気が内壁面だけでなく外壁面や底面に付着しにくくすることができる。
基材10において溶融させたシリコンが接触する内壁面だけに堆積層20が設けられるようにしてもよい。内壁面だけに堆積層を形成すると、外側面は黒鉛が露出するので、輻射率が高くなり、加熱しやすくすることができる。
本発明のシリコン溶融ルツボの製造方法は、黒鉛からなる基材に、セラミック粒子と溶媒とからなるスラリーを塗布し乾燥させることにより堆積層を形成する工程を含むことを特徴とする。
溶媒としては、有機溶媒を使用することが好ましい。水を用いた場合には結晶水として水を含有し残留するのに対し、有機溶媒の場合、セラミック粒子に取り込まれにくいので残留しにくく、さらに基材の黒鉛との反応性が低いため、基材の黒鉛と溶媒との反応により基材に穴が空くことを防止することができる。
有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエステル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等を使用することが好ましい。
また、スラリー中のセラミック粒子の固形分濃度は粘度をもとに調整することが好ましく、スラリーの粘度を0.03~0.1Pa・sとすることが好ましい。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定する。
また、セラミック粒子の堆積層の基材への付着力を確保するため、バインダを溶媒に加えてもよい。バインダとしては、有機系バインダ、無機系バインダのいずれでも利用することができる。
有機系バインダとしては、ラテックス、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ピッチ、ポリ酢酸ビニルなどが利用できる。また、無機系バインダとしては、セラミックナノ粒子、水ガラスなどが利用できる。セラミックナノ粒子としては、ナノシリカ粒子などが利用できる。
基材へのスラリーの塗布後、乾燥を行ってスラリーを基材に定着させて堆積層を形成する。乾燥条件は特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノールなどの沸点の低い溶媒であれば乾燥温度10~40℃、乾燥時間5~60分で溶媒を除去することができる。
スラリーの塗布条件と乾燥条件を調整することにより堆積層の厚さを調整して、形成する堆積層の厚さを0.1~5mmとすることが好ましい。
本発明の反応焼結SiCの製造方法では、炭素又はSiCからなる骨材と、シリコンとを本発明のシリコン溶融ルツボに充填し、不活性雰囲気下でシリコンを溶融させるとともに上記骨材にシリコンを含浸する工程を行うことを特徴とする。
骨材はシリコンが含浸されるための空間を有している、所定の体積を有する構造体である。炭素からなる骨材としては炭素の多孔質体、炭素繊維を使用することができる。
SiCとしてはSiCの多孔質体、SiC繊維を使用することができる。
骨材が多孔質体の場合は開放気孔にシリコンが含浸される。骨材が繊維の場合、骨材は多数の繊維の集合体であり、繊維の隙間にシリコンが含浸される。
骨材としては、SiC繊維を使用することがより好ましい。骨材としてSiC繊維を使用した場合には、SiC繊維の隙間に炭素を含有させておくことが望ましい。SiC繊維の隙間に炭素を含有していると、シリコンを含浸した際に炭素と反応し反応焼結SiCが形成される。この反応は、シリコンを消費するのでSiC繊維のシリコンへの溶出を抑制することができる。
シリコン溶融ルツボを用いる処理空間に不活性ガスを導入することにより不活性雰囲気下での処理を行うことができる。
不活性ガスとしては窒素、アルゴン等のほか真空下でも利用することができる。
シリコンを溶融させるための加熱は1420~2000℃で行うことが好ましい。
シリコン溶融ルツボ1に粉状のシリコン100と骨材200を入れて加熱することで、シリコン100が溶融する。溶融したシリコン100が骨材200に含浸され、骨材200に含まれる炭素とシリコン100が反応してSiCとなり、反応焼結SiCが生成される。
この過程でシリコン100は堆積層20に接触するが黒鉛からなる基材10には接触しないので、黒鉛からなる基材10と溶融したシリコン100は反応しない。
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
乾燥後、黒鉛ルツボの表面には厚さ0.5mmのセラミック粒子の堆積層が形成されたシリコン溶融ルツボが得られた。
加熱したことにより、融点が1410℃であるシリコンは溶融し、SiCの多孔質体に含浸された。
シリコン溶融ルツボには、SiCの多孔質体に含浸されなかったシリコンが残留したが、セラミックの粒子からなる堆積層の表層が剥がれるとともに取り除かれ、シリコン溶融ルツボの表面には、セラミック粒子の堆積層が残っており、繰り返し使用が可能な状態にあった。
10 基材
20 堆積層
100 シリコン
200 骨材
Claims (12)
- 黒鉛からなる基材と、前記基材の表面の全てを覆うセラミック粒子の堆積層とからなることを特徴とするシリコン溶融ルツボ。
- 前記セラミック粒子は、BN、Al2O3、MgO、ZrO2、Y2O3、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される少なくとも1種のセラミック粒子である請求項1に記載のシリコン溶融ルツボ。
- 黒鉛からなる基材と、前記基材の表面を覆うセラミック粒子の堆積層とからなり、前記セラミック粒子は、Al 2 O 3 、MgO、ZrO 2 、Y 2 O 3 、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される1種のセラミック粒子、又は、BN、Al 2 O 3 、MgO、ZrO 2 、Y 2 O 3 、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される少なくとも2種のセラミック粒子であることを特徴とするシリコン溶融ルツボ。
- 前記堆積層の厚さは0.1~5mmである請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコン溶融ルツボ。
- 黒鉛からなる基材の表面の全てに、セラミック粒子と溶媒とからなるスラリーを塗布し乾燥させることにより堆積層を形成する工程を含むことを特徴とする、シリコン溶融ルツボの製造方法。
- 前記セラミック粒子は、BN、Al2O3、MgO、ZrO2、Y2O3、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される少なくとも1種のセラミック粒子である請求項5に記載のシリコン溶融ルツボの製造方法。
- 黒鉛からなる基材に、セラミック粒子と溶媒とからなるスラリーを塗布し乾燥させることにより堆積層を形成する工程を含み、前記セラミック粒子は、Al 2 O 3 、MgO、ZrO 2 、Y 2 O 3 、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される1種のセラミック粒子、又は、BN、Al 2 O 3 、MgO、ZrO 2 、Y 2 O 3 、AlN、コージェライト、ムライト、ステアタイト及びフォルステライトからなる群から選択される少なくとも2種のセラミック粒子であることを特徴とするシリコン溶融ルツボの製造方法。
- 形成する前記堆積層の厚さは0.1~5mmである請求項5~7のいずれか1項に記載のシリコン溶融ルツボの製造方法。
- 前記溶媒は有機溶媒である請求項5~8のいずれか1項に記載のシリコン溶融ルツボの製造方法。
- 炭素又はSiCからなる骨材と、シリコンとを請求項1~4のいずれか1項に記載のシリコン溶融ルツボに充填し、不活性雰囲気下でシリコンを溶融させるとともに前記骨材にシリコンを含浸する工程を行うことを特徴とする、反応焼結SiCの製造方法。
- 前記骨材はSiC繊維を含む請求項10に記載の反応焼結SiCの製造方法。
- SiCからなる骨材と、シリコンとを請求項1~4のいずれか1項に記載のシリコン溶融ルツボに充填し、不活性雰囲気下でシリコンを溶融させるとともに前記骨材にシリコンを含浸する工程を行い、
前記骨材はSiC繊維を含み、
前記SiC繊維の隙間に炭素が含まれることを特徴とする、反応焼結SiCの製造方法。
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