JP7107915B2 - ガラス積層体とその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2、3に記載のガラス積層体は、ガラス積層体の製造時に高温高圧処理を要さないため、反り、層剥離、および割れ等の不良の発生を抑制することができる。しかしながら、特許文献2に記載のガラス積層体の製造方法は、プラスチック板/第1の中間膜の積層構造を有する第1の積層体と、第2の中間膜/無機ガラス板の積層構造を有する第2の積層体とを別々に作製した後、これら2つの積層体を貼り合わせる方法である(請求項1)。そのため、工程が多く、高コストである。特許文献3に記載のガラス積層体は、第1、第2の中間膜の間に好ましくは透明な水蒸気バリアー層を備える必要があり、生産性に乏しい。
前記硬質樹脂シートが下記特性(a)および(b)を有する硬質樹脂組成物からなり、
前記中間膜が下記特性(c)および(d)を有する軟質樹脂組成物からなる、ガラス積層体。
(a)ガラス転移温度が120℃以上である。
(b)光路長200mmでの波長420nmにおける光透過率が60%以上である。
(c)設定温度25℃、周波数1.0Hzでの貯蔵弾性率G′が1.0×107Pa以下である。
(d)周波数1.0Hzでの損失正接tanδが最大となるピーク温度が25℃以下である。
[3] 前記メタクリル酸メチル(共)重合体の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50~85%である、[2]のガラス積層体。
[4] 前記硬質樹脂組成物がさらに、前記硬質樹脂シートのマトリクス樹脂の屈折率との屈折率差(Δn)の絶対値が0.3~3である光拡散粒子を0.0001~0.1質量%含む、[1]~[3]のいずれかのガラス積層体。
[5] 前記屈折率差(Δn)の絶対値と前記光拡散粒子の体積平均粒径d(μm)との積(Δn・d)が0.1μm以上である、[4]のガラス積層体。
[6] 前記軟質樹脂組成物が熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかのガラス積層体。
[7] 前記中間膜は少なくとも片面に表面凹凸構造を有する、[1]~[6]のいずれかのガラス積層体。
[8] 前記硬質樹脂シートの少なくとも一方の面上にさらに耐擦傷性層を備える、[1]~[7]のいずれかのガラス積層体。
[10] [1]~[8]のいずれかのガラス積層体、または[9]の面状発光体を含む、車両部材。
[11] 自動車グレージング材または自動車サンルーフ材である、[10]の車両部材。
[13] 前記無機ガラス板と前記中間膜となる軟質樹脂シートと前記硬質樹脂シートとをこの順で重ねた後、加熱圧着する、[1]~[8]のいずれかのガラス積層体の製造方法。
[14] 前記無機ガラス板と、前記中間膜となる軟質樹脂シートと、あらかじめ少なくとも一方の面に前記耐擦傷性層が形成された前記硬質樹脂シートとをこの順で重ねた後、加熱圧着する、[8]のガラス積層体の製造方法。
本発明のガラス積層体は、無機ガラス板上に中間膜を介して硬質樹脂シートが積層された積層構造を含む。本発明のガラス積層体において、硬質樹脂シートは特定の耐熱特性および光学特性、具体的には下記特性(a)および(b)を有する硬質樹脂組成物からなる。中間膜は特定の粘弾性特性、具体的には下記特性(c)および(d)を有する軟質樹脂組成物からなる。
(a)ガラス転移温度(Tg)が120℃以上である。
(b)光路長200mmでの波長420nmにおける光透過率が60%以上である。
(c)設定温度25℃、周波数1.0Hzでの貯蔵弾性率G′が1.0×107Pa以下である。
(d)周波数1.0Hzでの損失正接tanδが最大となるピーク温度が25℃以下である。
本明細書において、任意の数値範囲A~Bは、A以上B以下の数値範囲を示す。
無機ガラス板としては特に制限されず、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、特殊ガラス(例えば太陽光を制御する目的で銀等の金属またはインジウム錫酸化物等の金属酸化物のスパッタリングが施されたもの)、低Eガラス、強化ガラス、およびこれらの組合せ等が挙げられる。これらは無色でも有色でもよい。
硬質樹脂シートは、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、光路長200mmでの波長420nmにおける光透過率が60%以上である硬質樹脂組成物からなる。硬質樹脂シートは、単層構造でも組成の異なる複数の硬質樹脂組成物層からなる積層構造でもよい。
波長420nmは、導光板等の光学部材の光源の1つとして用いられる一般的な青色LED(発光ダイオード)のピーク波長である470nmに近接する領域の波長である。この波長420nmでの光透過率が低いと、わずかながらも黄色見が増加する恐れがある。したがって、光透過率の測定波長として420nmを採用することで、透明性および導光性能を適切に評価することができる。
なお、本明細書において、特に明記しない限り、波長420nmでの分光光透過率は、射出成形された長光路成形品(200mm×50mm×2mm)を用い、200mmの光路長の条件で測定されるものとする。
一態様において、硬質樹脂組成物は、メタクリル酸メチル(共)重合体(A)を含むメタクリル系樹脂組成物である。メタクリル酸メチル(共)重合体(A)は、メタクリル酸メチル(MMA)の単独重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)、または、MMAと他の1種以上の単量体との共重合体である。メタクリル酸メチル(共)重合体(A)は、1種または2種以上用いることができる。
メタクリル酸メチル(共)重合体(A)中のMMA単位の含有量は、メタクリル酸メチル(共)重合体(A)をメタノール中で再沈殿することにより精製した後、熱分解ガスクロマトグラフィを用いて熱分解および揮発成分の分離を行い、MMAと共重合成分とのピーク面積の比から算出することができる。
メタクリル酸メチル(共)重合体(A)のrr比率は、重水素化クロロホルム中、30℃で、1H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからテトラメチルシラン(TMS)を0ppmとした際の、0.6~0.95ppmの領域の面積(X)と0.6~1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出することができる。
なお、本明細書において、「MFR」は、特に明記しない限り、メルトインデクサーを用い、温度230℃、3.8kg荷重の条件で測定される値である。
ポリカーボネート系樹脂(PC)は、炭酸結合に直接結合する炭化水素の種類から、芳香族ポリカーボネート系樹脂と脂肪族ポリカーボネート系樹脂とに分類できる。いずれを用いてもよいが、耐熱性、機械的物性、および電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート系樹脂がより好ましい。
Schnellの粘度式:[η]=1.23×10-4・Mv0.83・・・(1)、
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2・c・・・(2)
なお、硬質樹脂シートはメタクリル酸メチル(共)重合体(A)および/またはポリカーボネート系樹脂(PC)等の硬質樹脂のみから形成されていてもよい。本発明においては、このように硬質樹脂シートが硬質樹脂のみから形成されている場合においても、便宜上、硬質樹脂シートは硬質樹脂組成物からなると考えるものとする。
点灯時の明るさと透明性のバランスから、屈折率差(Δn)の絶対値と体積平均粒径d(μm)との積(Δn・d)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。
硬質樹脂組成物中における他の重合体の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
複数の硬質樹脂組成物層からなる積層構造の硬質樹脂シートは、公知の多層成形によって成形することができる。
硬質樹脂シートは、中間膜、または他の任意の層と共に多層押出成形することもできる。
中間膜は、無機ガラス板と硬質樹脂シートとを接着させる透明な層である。中間膜は、特定の粘弾性特性を有する軟質樹脂組成物からなる。中間膜は、単層構造でも組成の異なる複数の軟質樹脂組成物層からなる積層構造でもよい。
軟質樹脂組成物は、周波数1.0Hzでの損失正接tanδが最大となるピーク温度が25℃以下であり、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。損失正接tanδの最大ピーク温度が25℃以下であることで、本発明のガラス積層体は、上記不良の発生を抑制することができ、かつ耐衝撃性に優れるものとなる。
中間膜は、無機ガラス板と硬質樹脂シートとを良好に接着させる機能と、ガラス積層体の耐衝撃性を向上させる機能を有する。さらに、内部応力緩和性能を有し、これにより、無機ガラス板と硬質樹脂シートとの線膨張係数の差および吸水率の差に起因して、ガラス積層体の製造時および実使用時において生じる恐れがある反り、層剥離、および割れ等の不良の発生を抑制する機能を有する。かかる機能に優れることから、熱可塑性ポリウレタン系樹脂が特に好ましい。中間膜は熱可塑性ポリウレタン系樹脂等の軟質樹脂のみから形成されていてもよいし、上記のような軟質樹脂の他に各種添加剤等をさらに含んでいてもよい。なお、本発明においては、このような中間膜が軟質樹脂のみから形成されている場合においても、便宜上、中間膜は軟質樹脂組成物からなると考えるものとする。
ポリオールは、1種または2種以上用いることができる。
表面凹凸構造の形成方法としては、エンボスロール法、カレンダーロール法、および異形押出法等が挙げられる。中でも、比較的多くの一定量の凹凸模様を簡易に形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
複数の軟質樹脂組成物層からなる積層構造の軟質樹脂シートは、公知の多層成形によって成形することができる。
軟質樹脂シートは、硬質樹脂シート、または他の任意の層と共に多層押出成形することもできる。
なお、表面凹凸構造は、軟質樹脂シートを成形する際の冷却工程中または冷却工程後、若しくは軟質樹脂シートの製造後に付与することができる。
図面を参照して、本発明に係る第1~第5実施形態のガラス積層体の構造と製造方法の例について、説明する。これらの図において、同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。
各構成要素の厚さは特に制限されない。無機ガラス板11の厚さは、剛性および軽量化の観点から、好ましくは0.1~4.0mm、より好ましくは0.5~3.0mm、特に好ましくは1.0~2.0mmである。中間膜12の厚さは、層間接着性、耐衝撃性、および内部応力緩和性能の観点から、好ましくは0.03~8.0mm、より好ましくは0.1~7.0mm、特に好ましくは0.4~6.0mmである。硬質樹脂シート13の厚さは、耐擦傷性、耐候性、および耐衝撃性等の観点から、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは0.5~5mm、特に好ましくは1.0~3.0mmである。
中間膜12と硬質樹脂シート13とからなる積層シートは、公知の多層成形によって行うことができる。多層成形法としては、多層押出成形法、多層ブロー成形法、多層プレス成形法、多色射出成形法、およびインサート射出成形法等が挙げられる。
生産性の観点から、中間膜12と硬質樹脂シート13とを溶融共押出しにより積層する多層押出成形が好ましい。特に、フラットなTダイと互いに隣接する複数の冷却ロールとを備えた成形装置を用いた多層押出成形が好ましい。
Tダイの方式としては、加熱溶融状態の複数種の樹脂をTダイ流入前に積層するフィードブロック方式、および、加熱溶融状態の複数種の樹脂をTダイ内部で積層するマルチマニホールド方式等が挙げられる。層間の界面の平滑性を高める観点から、マルチマニホールド方式が好ましい。
複数の冷却ロールのうち少なくとも硬質樹脂シートに接する冷却ロールは、表面が鏡面仕上げされたポリシングロールであることが好ましい。
ガラス積層体は必要に応じて、他の任意の層を含むことができる。他の層の構成材料は特に制限されず、中間膜および硬質樹脂シートとは組成の異なる各種樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂、およびこれらの組合せ)等が挙げられる。
他の層の機能は特に制限されず、他の要素を支持する支持層、耐擦傷性層、帯電防止層、防汚層、摩擦低減層、防眩層、反射防止層、粘着層、熱線吸収層、遮音層および衝撃強度付与層等の各種機能層として機能してもよい。他の層は単数でも複数でもよい。他の層が複数である場合、組成は同一でも非同一でもよい。
熱可塑性樹脂層14の構成樹脂としては特に制限されず、メタクリル系樹脂;ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン;変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド;シリコーン変性樹脂;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリフェニレンオキサイド;ポリイミド、ポリエーテルイミド;フェノキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、透明性、耐熱性、および耐衝撃性の観点から、メタクリル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂等が好ましい。
その他の製造方法としては、あらかじめ中間膜12と熱可塑性樹脂層14と硬質樹脂シート13とからなる積層シートを用意し、この積層シートを無機ガラス板11上に重ね、加熱圧着して貼り合わせる方法が挙げられる。
なお、第2実施形態のガラス積層体2においても、第1実施形態と同様に適宜設計変更が可能である。
図4に示す第4実施形態のガラス積層体4は、第2実施形態のガラス積層体2を基本構造とし、さらに、硬質樹脂シート13上に耐擦傷性層21を備えた態様である。
図5に示す第5実施形態のガラス積層体5は、第1実施形態のガラス積層体1を基本構造とし、さらに、硬質樹脂シート13の両面に耐擦傷性層21を備えた態様である。
熱硬化性組成物は必要に応じて、架橋剤および重合開始剤等の硬化剤または重合促進剤等を含有していてもよい。硬化剤としては、ポリウレタン系樹脂にはイソシアネート、ポリエステル系樹脂には有機スルホン酸等、エポキシ系樹脂にはアミン、不飽和ポリエステル系樹脂にはメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物およびアゾビスイソブチルエステル等のラジカル開始剤が好ましく用いられる。
エネルギー線硬化性組成物は、光重合開始剤および/または光増感剤を含有していてもよい。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、および4-クロロベンゾフェノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、およびトリ-n-ブチルホスフイン等が挙げられる。
なお、第3~第5実施形態のガラス積層体3~5においても、第1実施形態と同様に適宜設計変更が可能である。
本発明の面状発光体は、一態様において、上記の本発明のガラス積層体と、このガラス積層体の片端面または両端面から光を導入する光源とを含む。
図6に、本発明に係る一実施形態の面状発光体の模式断面図を示す。
本実施形態の面状発光体6は、ガラス積層体61と、このガラス積層体61の硬質樹脂シート61Cの両端面にそれぞれ隣接して配置された光源62および光を効率良く利用するための光反射カバー63とを備える。
ガラス積層体61は、無機ガラス板61A上に中間膜61Bを介して硬質樹脂シート61Cが積層された積層構造を含む本発明のガラス積層体であり、例えば図1~図5に示した第1~第5実施形態のガラス積層体1~5のうちのいずれかの積層構造を有する。
光源62からの出射光は、ガラス積層体61の硬質樹脂シート61Cの光入射側の端面である両端面から入射し、ガラス積層体61の中央部に向けて導光される。
ガラス積層体61に含まれる硬質樹脂シート61Cが光拡散粒子を含む態様では、ガラス積層体61の厚さ方向に光を散乱しながらガラス積層体61の中央部に向かって、ガラス積層体61の面方向に光を良好に導光させることができる。
図7に示す設計変更の面状発光体7は、ガラス積層体61と、このガラス積層体61の片端面に隣接して配置された光源62および光反射カバー63とを備える。なお、図7において、図6と同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。
本発明によれば、ガラス積層体の少なくとも一方の端面から光を供給したときに、導光距離によらず、均一な色相の光を取り出すことが可能な発光特性に優れた面状発光体を提供することができる。
本発明のガラス積層体は例えば、安全窓ガラスおよび間仕切り等の建築用部品;液晶保護板、導光板、各種ディスプレイの前面板、および拡散板等の光学関係部品;自動車内装/外装部材(サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、バンパー、サンルーフ、およびグレージング等)等の車両部材;温室、大型水槽、箱水槽、バスタブ等の浴室部材、サニタリー部材、時計パネル、デスクマット、遊技部品、玩具、および熔接時の顔面保護用マスク等に用いることができる。
本発明のガラス積層体および面状発光体は車両部材として好適であり、自動車グレージング材、特に自動車サンルーフ材等として好適である。本発明の面状発光体を用いることで、光源の消灯時には透明板として機能し、点灯時には車内照明として機能する自動車サンルーフ材等の高機能自動車グレージング材を提供することが可能となる。
[評価項目および評価方法]
評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(硬質樹脂組成物のガラス転移温度(Tg))
硬質樹脂組成物10mgを80℃で24時間乾燥した後、アルミパンに入れた。示差走査熱量計(TA Instruments社製「Q20」)を用い、30分以上窒素置換を行った後、10ml/分の窒素気流中、25℃から200℃まで20℃/分の速度で昇温し、200℃で10分間保持した後、25℃まで自然冷却した(1次走査)。次いで、10℃/分の速度で再度200℃まで昇温し(2次走査)、中点法にてガラス転移温度(Tg)を算出した。
射出成形機(株式会社名機製作所製「M-100-DM」)を用い、シリンダ温度270℃、金型温度50℃および成形サイクル40秒の条件で硬質樹脂組成物を射出成形して、厚さ2mm、短辺50mm、長辺200mmの短冊状の試験片を得た。試験片の短辺側の両端面を成形導光用ゲート加工機(メガロテクニカ株式会社製「GCPB-S」)を用いて研磨した後、試験片の光路長200mmでの波長420nmにおける光透過率を、日本分光株式会社製「紫外可視近赤外分光光度計V-670」を用いて測定した。
軟質樹脂組成物を金型枠に入れ、200℃、50kg/cm2の条件にて、5分間熱プレスし、厚さ1mmの単層シートを得た。得られた単層シートを直径8mmの円柱状の打ち抜き片を用いて打ち抜くことで、直径8mm、厚さ1mmの試験片を作製した。得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製「ARES-G2」を用い、25℃から140℃まで昇温した後、動的歪み5.0%、1.0Hzの条件で、140℃から-40℃まで3℃/minで降温した際の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G″)を測定した。得られたG′およびG″から、損失正接tanδ(損失正接(tanδ)=損失弾性率(G″)/貯蔵弾性率(G′))を求め、測定温度範囲内でtanδの値が最大となる温度を損失正接tanδのピーク温度とした。
<製造直後>
製造直後のガラス積層体に対して、外観不良の有無を評価した。目視観察にて、色相不良(黄変)、光学歪み、最外層の表面荒れ、中間層の皺、気泡、白化、反り、層剥離、および割れ等の外観不良が確認されたものを「不良」、前記外観不良が確認されなかったものを「良好」と判定した。
<ヒートサイクル試験後>
製造されたガラス積層体を、温度20℃・相対湿度20%の環境下に1時間放置した。その後、相対湿度85%の環境下で、1℃/分の速度で70℃まで昇温し、4時間保持した後、1℃/分の速度で温度-40℃まで降温し、4時間保持する湿熱プロファイルを1サイクルとし、これを10サイクル繰り返した。このヒートサイクル試験後のガラス積層体に対して、製造直後と同様の方法にて、外観不良の有無を評価した。
得られたガラス積層体を用いて図7に示したような面状発光体7を作製し、評価した。ガラス積層体61にはあらかじめ、光入射側の端面に対向する他方の端面に光吸収処理64を施しておいた。ガラス積層体61の光入射側の端面に隣接して、光源62と光反射カバー63とを配置した。光源62としては、7個のLEDを10mmの間隔で、ガラス積層体の光入射側の端面に対して平行方向に一列に配置したものを用いた。LEDとしては、日亜化学工業株式会社製「LED NFSW036BT」(発光部の径:3mm)を用いた。個々のLEDに2.8Vの電圧を印加した。
光源62からの出射光は、ガラス積層体61の光入射側の端面から入射し、ガラス積層体61内を光吸収処理64が施された他方の端面に導光される。光入射側の端面から光吸収処理64が施された他方の端面までの距離を300mmとした。光入射側の端面の位置を0mmとし、光吸収処理64が施された他方の端面までの間の任意の地点までの距離を「導光距離」とした。
得られた面状発光体について、導光距離200mmにおける光源点灯時の明るさと色目の変化を硬質樹脂シート61C側から目視評価した。導光距離200mmにおいても高輝度の面発光が確認でき、導光距離による色度変化が小さく、光入射側の端面から他方の端面まで色目の変化が確認されないものを「良好」と判定した。面発光が低輝度であった、または色ムラが見られたものを「不良」と判定した。
用いた材料は、以下の通りである。
<無機ガラス板>
(G1)市販のフロートガラス(厚さ2.8mm)。
メタクリル系樹脂(A1)として、株式会社クラレ製パラペット(Mw=82,000、MMA単独重合体(MMA比率=100%)、rr比率=52%)を用意した。
撹拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル(MMA)100質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0065質量部、およびn-オクチルメルカプタン0.290質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。この原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
上記オートクレーブと配管を介して接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を120℃に維持した状態で、先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、温度120℃に維持したまま、平均滞留時間が120分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は45質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温230℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットした。以上のようにして、ペレット状のメタクリル系樹脂(A2)(Mw=83,000、MMA単独重合体(MMA比率=100質量%)、rr比率=55%)を得た。
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec-ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n-ヘキサン5%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、蒸留精製したメタクリル酸メチル(MMA)550gを20℃にて30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるMMAの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得、得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥した。以上のようにして、メタクリル系樹脂(A3)(Mw=81,400、MMA単独重合体(MMA比率=100質量%)、rr比率=73%)を得た。
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、メタクリル酸メチル(MMA)を630g、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-イル(TCDMA)を350g、アクリル酸メチル(MA)を20g、アゾビスイソブチロニトリルを0.6g、n-オクチルメルカプタンを2.0g、イオン交換水を2500g、分散剤を0.9g、およびpH調整剤を10.7g仕込んだ。撹拌しながら、液温を室温から70℃に上げ、120分間保持して、重合反応を行った。液温を室温まで下げ、重合反応液をガラス製反応容器内から抜き出した。重合反応液から固形分を濾過で取り出し、水で洗浄し、80℃にて24時間熱風乾燥させた。得られた固形分を二軸押出機に供給し、シリンダ温度230℃で溶融混練して押出成形した。以上のようにして、ペレット状のメタクリル系樹脂(A4)(Mw=119,300、MMA/TCDMA/MA共重合体(MMA比率=67.2質量%、TCDMA比率=31.7質量%、MA比率=1.1質量%))を得た。
メタクリル系樹脂(A5)として、株式会社クラレ製パラペット(Mw=120,000、MMA/MA共重合体(MMA比率=93.6質量%、MA比率=6.4質量%)、rr比率=48%)を用意した。
(V1)電気化学工業株式会社製「レジスファイR-200」(Mw=80,000、スチレン(St)/無水マレイン酸(MAH)/MMA共重合体(St比率56質量%、MAH比率=18質量%、MMA比率=26質量%))。
(PC1)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユーピロンHL-8000」(Mw=27,000、温度300℃、1.2kg荷重下でのMFR=139g/10分)、
(PC2)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユーピロンE-2000」(Mw=60,000、温度300℃、1.2kg荷重下でのMFR=5.3g/10分)。
ルブリゾール社製「Estane AG-8451」をカレンダー成形した後、両面エンボス加工を施して、厚さ760μmの熱可塑性ポリウレタンシート(PU1)を得た。
株式会社クラレ製ポリビニルブチラール(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度74モル%、ビニルアルコール単位19モル%、ビニルアセテート単位7モル%)61.5質量部に対して、可塑剤として、「クラレポリオールP-510」(株式会社クラレ製、水酸基2つ当たりの数平均分子量が500、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルジオール)38.5質量部を添加した。得られたポリビニルブチラール樹脂組成物を押出成形した後、両面エンボス加工を施して、厚さ760μmのポリビニルブチラールシート(PVB1)を得た。
株式会社クラレ製ポリビニルブチラール(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度74モル%、ビニルアルコール単位19モル%、ビニルアセテート単位7モル%)72.5質量部に対して、可塑剤として、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート27.5質量部を添加した。得られたポリビニルブチラール樹脂組成物を押出成形した後、両面エンボス加工を施して、厚さ760μmのポリビニルブチラールシート(PVB2)を得た。
ポリビニルブチラールシート(PVB3)として、株式会社クラレ製「Trosifol Extra-Stiff」(厚さ760μm)を用意した。
エチレン系アイオノマーシート(EI1)として、株式会社クラレ製「SentryGlas」(厚さ760μm)を用意した。
表2に示す配合比でメタクリル系樹脂(A1)~(A5)、ビニル系共重合体(V1)、ポリカーボネート系樹脂(PC1)~(PC2)、光拡散粒子、および、紫外線吸収剤を二軸押出機に供給し、シリンダ温度240℃で溶融混錬して押出成形して、ペレット状の硬質樹脂組成物(HRC1)~(HRC8)を得た。光拡散粒子としては、酸化チタン粒子(体積平均粒径d=1.0μm、テイカ株式会社製「JR-1000」)を用いた。マトリクス樹脂の屈折率と光拡散粒子の屈折率との屈折率差(Δn)の絶対値、および、屈折率差(Δn)の絶対値と光拡散粒子の体積平均粒径d(μm)との積(Δn・d)を表2に示しておく。紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製「TINUVIN479」)を用いた。
得られたペレット状の硬質樹脂組成物(HRC1)~(HRC8)を軸径50mmのベント式単軸押出機に連続的に投入し、シリンダ温度190~260℃、吐出量30kg/時の条件にて溶融押出した。溶融状態の硬質樹脂組成物を260℃に設定した幅400mmのTダイより押出し、100℃、130℃に設定した一対の金属剛体ロールでニップすることでシート状に成形し、0.47m/minの速度で引き取った。以上のようにして、硬質樹脂シート(HRS1)~(HRS9)(幅300mm、長さ400mm、厚さ2mm)を得た。
製造例1~5、7~9では、得られた各硬質樹脂シートの一方の面に、多官能アクリル系樹脂を含む紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業株式会社製「UV-1700B」)を用いて、ロールコート法により耐擦傷性層(厚さ約4μm)を形成した。
製造例6では、得られた硬質樹脂シートの両面に、多官能アクリル系樹脂を含む紫外線硬化型ハードコート塗料(アイカ工業株式会社製「アイカアイトロンZ-850-3AF」)を用いて、ディップコート法により耐擦傷性層(厚さ約4μm)を形成した。
以上のようにして、少なくとも一方の面に耐擦傷性層を有する硬質樹脂シートを得た。
実施例1~7、比較例1~6の各例においては、用いる材料を変えて、無機ガラス板と、中間膜となる軟質樹脂シートと、少なくとも一方の面に耐擦傷性層を有する硬質樹脂シートとをこの順で重ねた後、加熱圧着して、耐擦傷性層/硬質樹脂シート/中間膜/無機ガラス板の積層構造を有するガラス積層体(図3)または、耐擦傷性層/硬質樹脂シート/耐擦傷性層/中間膜/無機ガラス板の積層構造を有するガラス積層体(図5)を作製し、評価した。加熱圧着は、真空バッグ法により、30℃から110℃に60分間で昇温し、その後110℃で30分間保持する温度プロファイルの条件にて実施した。得られたガラス積層体を用いて、図7に示したような面状発光体を作製し、評価した。各例において、各層に用いた材料と特性、および評価結果を表3に示す。
実施例1~7では、硬質樹脂シート/中間膜/無機ガラス板の積層構造を含み、硬質樹脂シートが特定の耐熱特性と光学特性(特性(a)、(b))を有する硬質樹脂組成物からなり、中間膜が特定の粘弾性特性(特性(c)、(d))を有する軟質樹脂組成物からなるガラス積層体を製造した。得られたガラス積層体はいずれも、製造直後およびヒートサイクル試験後のいずれにおいても、表面荒れ、反り、層剥離、および割れ等の外観不良が発生せず、耐久性が良好であった。得られたガラス積層体はいずれも、硬質樹脂シートが長い導光距離においても高い光透過率を有し、好ましくは光拡散粒子を適当量含み、導光性能に優れるものであった。そのため、高輝度で色ムラのない均一な面発光の面状発光体が得られた。
硬質樹脂シートに、スチレン(St)/無水マレイン酸(MAH)/MMA共重合体(ビニル系共重合体(V1))を含み、光透過率が低い硬質樹脂組成物からなる硬質樹脂シート(HRS8)を用いた比較例2では、得られた面状発光体は低輝度で色ムラも見られた。
硬質樹脂シートに、光透過率が低いポリカーボネート系樹脂からなる硬質樹脂シート(HRS9)を用いた比較例3では、製造直後およびヒートサイクル試験後に光学歪みが発生し、さらに、得られた面状発光体は低輝度で色ムラも見られた。
中間膜に、20℃における貯蔵弾性率G′が高く、損失正接tanδのピーク温度が高い軟質樹脂を用いた比較例4~6では、製造直後に反りが発生し、ヒートサイクル試験において経時的に反り量が増し、最終的にはガラス板に割れが発生した。
6、7 面状発光体
11、61A 無機ガラス板
12、61B 中間膜
13、61C 硬質樹脂シート
14 熱可塑性樹脂層
62 光源
63 光反射カバー
64 光吸収処理
Claims (12)
- 無機ガラス板上に中間膜を介して硬質樹脂シートが積層された積層構造を含むガラス積層体であって、
前記硬質樹脂シートが、当該硬質樹脂シートのマトリクス樹脂の屈折率との屈折率差(Δn)の絶対値が0.3~3である光拡散粒子を0.0001~0.1質量%含み、下記特性(a)および(b)を有する硬質樹脂組成物からなり、
前記硬質樹脂シートの前記マトリクス樹脂は、メタクリル酸メチル単位60~100質量%およびメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステル単位0~40質量%からなるメタクリル酸メチル(共)重合体であり、
前記中間膜が下記特性(c)および(d)を有する軟質樹脂組成物からなる、ガラス積層体。
(a)ガラス転移温度が120℃以上である。
(b)光路長200mmでの波長420nmにおける光透過率が60%以上である。
(c)設定温度25℃、周波数1.0Hzでの貯蔵弾性率G′が1.0×107Pa以下である。
(d)周波数1.0Hzでの損失正接tanδが最大となるピーク温度が25℃以下である。 - 前記メタクリル酸メチル(共)重合体の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50~85%である、請求項1に記載のガラス積層体。
- 前記屈折率差(Δn)の絶対値と前記光拡散粒子の体積平均粒径d(μm)との積(Δn・d)が0.1μm以上である、請求項1または2に記載のガラス積層体。
- 前記軟質樹脂組成物が熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 前記中間膜は少なくとも片面に表面凹凸構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 前記硬質樹脂シートの少なくとも一方の面上にさらに耐擦傷性層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス積層体と、当該ガラス積層体の少なくとも一方の端面に光を導入する光源とを含む、面状発光体。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス積層体、または請求項7に記載の面状発光体を含む、車両部材。
- 自動車グレージング材または自動車サンルーフ材である、請求項8に記載の車両部材。
- 前記中間膜および前記硬質樹脂シートを溶融共押出しにより積層して、積層シートを得る工程と、
前記積層シートを前記無機ガラス板上に重ね、加熱圧着する工程とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス積層体の製造方法。 - 前記無機ガラス板と前記中間膜となる軟質樹脂シートと前記硬質樹脂シートとをこの順で重ねた後、加熱圧着する、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス積層体の製造方法。
- 前記無機ガラス板と、前記中間膜となる軟質樹脂シートと、あらかじめ少なくとも一方の面に前記耐擦傷性層が形成された前記硬質樹脂シートとをこの順で重ねた後、加熱圧着する、請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
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