以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態である作業台1の構成例を示す斜視図である。また図2は、その作業台1を床面7に設置した状態を示す側面図である。この作業台1は、空気調和機や各種配管などの天井吊り下げ物を相互に組み付けてユニット化する作業と、ユニット化された天井吊り下げ物を天井スラブなどの天井構造に固定する作業とを一連の工程として行えるようにした作業台である。より詳しく説明すると、作業台1は、その上端部に後述する天吊り枠体20を支持することにより、作業者が天吊り枠体20に対して天井吊り下げ物を組み付けてユニット化する作業を立ち姿勢のままで行えるようにし、しかも天井吊り下げ物をユニット化した後には、図2に示すリフト装置10を使用することにより、上端部においてユニット化された天井吊り下げ物をそのまま天井構造付近まで上昇させて施工することを可能にするものである。
作業台1は、床面7から立設する支柱2a,2b,2c,2dから成る4本の支柱2を備えている。これら4本の支柱2は、作業台1の四隅に配置され、床面7から垂直方向に立設する。図例では、支柱2が円柱状である場合を例示しているが、これに限られるものではなく、角柱状であっても良い。また4本の支柱2は、例えば床面7から1.2~1.8m程度の高さで統一されている。そのため、支柱2の上端部は、作業者の視線高さとほぼ同じ高さになる。
4本の支柱2のそれぞれの上端部には、天吊り枠体20を支持するための支持部3が形成される。この支持部3は、図1において一部拡大して示すように、支柱2の上端に設けられる支持面3aと、支持面3aの一部(図1では中心位置)から上方に突出する棒状体3bとを有している。4本の支柱2の上端部に設けられる支持部3は、いずれも同一高さ位置にある。
また4本の支柱2の下端近傍位置には、各支柱2a,2b,2c,2dを相互に連結する連結部材4が設けられる。連結部材4は、例えば平板部材4aによって構成され、その平板部材4aの四隅に支柱2を固定したものである。この連結部材4は、各支柱2a,2b,2c,2dの所定高さ位置を垂直な状態に保持すると共に、各支柱2a,2b,2c,2dの相対的な位置関係が変動しないように各支柱2a,2b,2c,2dを固定する。
連結部材4は、各支柱2a,2b,2c,2dを着脱可能な構成としても良い。各支柱2a,2b,2c,2dが連結部材4に対して着脱可能であれば、各支柱2a,2b,2c,2dを連結部材4から取り外した状態で施工現場へ搬送することが可能であり、搬送し易くなるという利点がある。そして施工現場へ搬送した後に、各支柱2a,2b,2c,2dを連結部材4に取り付けることにより、施工現場で作業台1を作成することができる。
連結部材4は、各支柱2の下端から所定高さの位置に固定され、床面7と平行な状態となる。そのため、図2に示すように、連結部材4は、床面7との間に一定間隔の空間を形成している。連結部材4と床面7との間の空間は、リフト装置10のフォーク部14を挿入するための空間である。
図2に示すリフト装置10は、例えば手動操作でフォーク部14を上下動させることが可能な装置である。このリフト装置10は、車輪12が取り付けられた基台11と、基台11から垂直方向に立設するリフトガイド13と、リフトガイド13に沿って上下方向に移動可能なフォーク部14と、フォーク部14を上下動させるワイヤー15と、ワイヤー15を手動操作で巻き取ったり又は巻き戻したりするための回転ハンドル16と、リフト装置10を床面7に沿って移動させる際に作業者が握るための操作ハンドル17とを備えている。このようなリフト装置10は、回転ハンドル16を所定方向へ回すことにより、フォーク部14を上昇させることが可能であり、また回転ハンドル16を所定方向とは異なる方向へ回すことにより、フォーク部14を下降させることが可能である。また車輪12は、ロック機能付きであることが好ましい。
次に、作業台1及びリフト装置10を用いて空気調和機や各種配管などの天井吊り下げ物を天井スラブなどの天井構造に取り付ける施工手順について説明する。
まず作業者は、第1工程として、施工対象となる天井スラブなどの天井構造の下方位置に作業台1を設置する。
次に作業者は、第2工程として、作業台1における4本の支柱2の上端部に対して天吊り枠体20を設置する。図3は、天吊り枠体20を設置した状態の作業台1を示す図である。図3に示すように、天吊り枠体20は、複数のフレーム材21を組み付けて構成される枠体である。図3では、6つのフレーム材21a,21b,21c,21d,21e,21fが組み付けられることにより平面視概略矩形状に構成された天吊り枠体20を例示している。ただし、天吊り枠体20に用いられるフレーム材21の数はこれに限られるものではない。また図3では、平面的な構造の天吊り枠体20を例示しているが、天吊り枠体20は平面的なものに限られず、立体的な構造であっても構わない。すなわち、天吊り枠体20において複数のフレーム材21がどのように組み付けられるかは、空気調和機や各種配管などの天井吊り下げ物の配置や設置環境などに応じて予め定められている。
図4は、天吊り枠体20を構成するフレーム材21の構成例を示す図である。図4(a)に示すようにフレーム材21は、リップ溝形鋼又は軽溝形鋼などの一対の形鋼22,23の平板部を所定間隔で互いに対向させた状態に連結された構成である。具体的には、図4(b)に示すように、互いに同一長さを有する一対の形鋼22,23の両端部にボルト26を挿通する孔22a,22b,23a,23bが設けられており、その孔22a,22b,23a,23bにボルト26が挿通され、ボルト26の先端にナット27が締着されることにより、一対の形鋼22,23が連結される。このとき、形鋼22,23の間においてボルト26の軸部に円筒状のスペーサ25を挿入することで、形鋼22,23の間に所定間隔のスリット24を形成する。スリット24の間隔は、支柱2の支持部3に設けられた棒状体3b、天井構造から垂下する吊りボルト、後述する支持ボルトなどを挿通可能な間隔である。したがって、各フレーム材21は、一端から他端まで延びるスリット24の任意の位置に、棒状体3bや、吊りボルト、支持ボルトなどを挿入して取り付けることが可能である。またスリット24の間隔は、支柱2の支持部3に形成されている支持面3aの外径寸法よりも小さい間隔である。例えば、支柱2の太さをスリット24の間隔よりも太くすることにより、支持面3aの外径寸法をスリット24の間隔よりも大きくすることができる。
したがって、天吊り枠体20を構成するフレーム材21のスリット24に支柱2の支持部3に設けられた棒状体3bを挿入すれば、支持面3aがフレーム材21の下面を支持する状態となる。その結果、図3に示すように、天吊り枠体20が作業台1の上端部に支持された状態となる。そして支持部3の棒状体3bがスリット24の内壁と係合することにより、天吊り枠体20は、各支柱2の支持部3からは離脱しない状態で支持部3によって支持される。このようにして作業台1の上端部に支持される天吊り枠体20は、作業者の視線高さ位置とほぼ同じ高さ位置においてほぼ水平な姿勢を安定して保持するようになる。
尚、一対の形鋼22,23を組み付けてフレーム材21を作成する作業は、予め工場などで行われることが好ましい。そして複数のフレーム材21を組立キットとして工場から施工現場へ搬入する手法とすることにより、施工現場においてフレーム材21を作成する作業を行う必要がなくなると共に、工場から施工現場への搬送効率を上げることができるようになる。
また、図3に示すように4本の支柱2の上端部に対して天吊り枠体20を設置する際には、施工現場において予め作成しておいた天吊り枠体20を支柱2の上端部に載置するようにしても良い。ただし、これに限らず、複数のフレーム材21を組み付けて天吊り枠体20を完成させる作業を支柱2の上端部において行うようにしても良い。この場合、作業者は、視線の高さとほぼ同じ高さ位置でボルト26の締め付け作業など行うことができるため、作業しやすく、簡単且つ安全に天吊り枠体20を完成させることが可能であり、作業効率に優れている。
また図3に示すように4本の支柱2の支持部3において天吊り枠体20を支持した状態になると、作業台1は、4本の支柱2が配置された部分を除き、天吊り枠体20の下方を開放した作業空間を形成する。そのため、作業者は、作業台1の4つの側面のどの方向からでも天吊り枠体20の下方の作業空間に対して同じ姿勢で出入りして作業を行うことが可能である。このとき、作業者は連結部材4の上に乗って作業を行うことができるため、連結部材4が作業時の床として機能する。そのため、天吊り枠体20の下方の作業空間に対して空気調和機などの天井吊り下げ物を搬入して仮置きすることも可能であり、作業効率が向上する。
作業台1の上端部に天吊り枠体20を設置すると、次に作業者は、第3工程として、その天吊り枠体20に対し、空気調和機や各種配管などの天井吊り下げ物を取り付ける。図5は、天吊り枠体20に天井吊り下げ物を取り付けて天井吊り下げユニット30を構成した状態を示す斜視図である。また図6は、天井吊り下げユニット30を支持した状態の作業台1の側面図である。例えば、作業者は、天吊り枠体20を構成する各フレーム材21の予め定められた位置に4本の支持ボルト35を取り付け、天吊り枠体20から4本の支持ボルト35を垂下させた状態にする。そして作業者は、それら4本の支持ボルト35の下端に空気調和機31の四隅を取り付ける。これにより、空気調和機31は、天吊り枠体20に吊設された状態となる。また作業者は、天吊り枠体20を構成する各フレーム材21の予め定められた位置に吊りバンド36を取り付け、天吊り枠体20から複数の吊りバンド36を垂下させた状態にする。そして作業者は、それら吊りバンド36に対してドレン配管32や冷媒配管33などを取り付ける。これにより、ドレン配管32や冷媒配管33は、天吊り枠体20に吊設された状態となる。
このようにして空気調和機31、ドレン配管32及び冷媒配管33などの天井吊り下げ物が天吊り枠体20に取り付けられると、天井吊り下げ物と天吊り枠体20とがユニット化された天井吊り下げユニット30が構成される。その結果、作業台1は、各支柱2の上端部において、天井吊り下げユニット30を支持した状態となる。このように天吊り枠体20に対して天井吊り下げ物を取り付けるときも、作業者は、立ち姿勢のまま、視線の高さとほぼ同じ高さ位置で作業を行うことができるため、作業し易く、安全に且つ効率的に作業を進めることができる。また作業者は、連結部材4として設けられた平板部材4aの上に載って作業を行うことにより、作業台1の内側に入って作業を行うことができる。そのため、作業者は、天吊り枠体20に天井吊り下げ物を取り付けるときには、目の前でボルトの締め付け作業など行うことができるので、作業効率に優れている。
作業台1の上端部において天井吊り下げユニット30が支持された状態になると、次に作業者は、第4工程の作業を行う。図7は、第4工程を示す図である。図7に示すように、第4工程において、作業者は、2つのリフト装置10を用いて天井吊り下げユニット30を支持した状態のまま作業台1を持ち上げる作業を行う。この作業は、二人の作業者で同時に行うことが好ましい。すなわち、作業者は、2つのリフト装置10のフォーク部14を、作業台1の互いに対向する側から連結部材4の下方空間に差し込み、回転ハンドル16を所定方向へ回すことにより、フォーク部14を上昇させる。これにより、フォーク部14が連結部材4の下面を支持した状態で作業台1を持ち上げた状態となる。
作業台1が床面7から浮いた状態になると、作業者は、リフト装置10の操作ハンドル17を持ってリフト装置10を押したり引いたりすることにより、天井吊り下げユニット30を支持した状態の作業台1を床面7上で移動させることができる。そのため、作業者は、図7に示すように、天井スラブ8から吊りボルト9が垂下した状態の天井構造の直下の位置へ作業台1を移動させることができる。
天井吊り下げユニット30の設置位置となる天井構造の直下の位置へ作業台1を移動させると、作業者は、リフト装置10の回転ハンドル16を更に所定方向へ回すことにより、フォーク部14を更に上昇させて作業台1を持ち上げる。これにより、天井吊り下げユニット30を天井構造又は天井構造の近傍位置まで上昇させることができる。
図8は、天井吊り下げユニット30を天井構造の近傍位置まで上昇させた状態を示す図である。図8に示すように天井吊り下げユニット30を天井構造の近傍位置まで上昇させるとき、例えばリフト装置10を操作する作業者とは異なる作業者が昇降作業台などに乗って天井構造の近傍位置で待機しておくことが好ましい。そしてリフト装置10が動作することによって天井吊り下げユニット30が上昇してくると、高所作業を行う作業者は、天井スラブ8から垂下する吊りボルト9が天吊り枠体20のフレーム材21に設けられたスリット24に挿入されるようにリフト装置10を操作している作業者に案内するのである。これにより、リフト装置10を操作する作業者は、高所作業を行う作業者からの指示に基づいてリフト装置10の位置を微調整しながら天井吊り下げユニット30を上昇させていくことが可能であり、天井吊り下げユニット30を上昇させていくことに伴って吊りボルト9をフレーム材21のスリット24に差し込むことができる。吊りボルト9がスリット24に差し込まれた状態で天井吊り下げユニット30が所定高さ位置まで持ち上げられると、リフト装置10を操作する作業者は、回転ハンドル16の操作を止める。これにより、天井吊り下げユニット30は、天井構造に対して仮設置された状態となる。
次に作業者は、第5工程の作業を行う。すなわち、高所作業を行う作業者は、吊りボルト9にナットを差し込んで締着することにより、天井吊り下げユニット30を天井構造に固定する作業を行う。これにより、天井吊り下げユニット30は、天井スラブ8から垂下する吊りボルト9に支持された状態となり、天井構造に固定される。
その後、作業者は、第6工程として、リフト装置10の回転ハンドル16をこれまでとは逆方向に回し、フォーク部14を下降させる。図9は、第6工程を示す図である。リフト装置10のフォーク部14が下降すると、作業台1は、フォーク部14と共に下降する。このとき、作業台1の上端部においてフレーム材21のスリット24に挿入されていた棒状体3bは、スリット24から引き抜かれ、天吊り枠体20との係合状態を解除する。そのため、リフト装置10は、作業台1だけを支持した状態で下降することになる。そして作業台1が床面7に載置された状態に戻ると、一連の施工手順が終了する。尚、天井構造の複数箇所に天井吊り下げユニット30を設置する場合には、上述した工程を繰り返し行えば良い。
上述したように、本実施形態の作業台1を用いれば、空気調和機や各種配管などの天井吊り下げ物を相互に組み付けてユニット化する作業と、ユニット化された天井吊り下げ物を天井スラブなどの天井構造に固定する作業とを一連の工程として行うことができるようになる。そのため、本実施形態の作業台1を用いた施工を行えば、従来の施工方法と比較して作業効率が著しく向上するという利点がある。
ところで、上記においては、天井吊り下げユニット30を支持した状態の作業台1を、リフト装置10のみを用いて天井構造又は天井構造の近傍位置まで上昇させる場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、リフト装置10とは異なる昇降装置19を用いて、天井吊り下げユニット30を支持した状態の作業台1を天井構造又は天井構造の近傍位置まで上昇させるようにしても良い。
図10は、リフト装置10とは異なる昇降装置19を用いて作業台1を上昇させる例を示す図である。例えば、リフト装置10がフォーク部14を最大高さまで上昇させても、天井吊り下げユニット30を所定の設置位置まで持ち上げることができない場合に、図10に示すような手法が採用される。リフト装置10は、天井吊り下げユニット30を支持した状態の作業台1を所定高さ位置まで持ち上げ、連結部材4の下方に昇降装置19を導入可能な空間を形成する。連結部材4の下方に昇降装置19を導入可能な空間が形成されると、次に作業者は、連結部材4の下方に形成した空間に昇降装置19を設置する。そして作業者は、昇降装置19を駆動する。昇降装置19は、例えば油圧式の昇降機構を備えており、その上端部を5m程度の高さ位置まで上昇させることができる。そのため、昇降装置19が駆動されると、図10に示すように、昇降装置19が連結部材4の下面を支持した状態で作業台1を上昇させていくことができる。これにより、天井構造までの高さが比較的高い場合であっても、天井吊り下げユニット30を天井構造又は天井構造の近傍位置まで上昇させることが可能となる。
次に天吊り枠体を立体的な構造とする場合について説明する。図11は、立体的な天吊り枠体40の一構成例を示す図である。図11に示す天吊り枠体40は、下部枠体40aと上部枠体40bとを備えて構成される。下部枠体40aは、上記実施形態において説明した天吊り枠体20と同様の構成である。これに対し、上部枠体40bは、下部枠体40aの上部に取り付けられる枠体である。図11に示す例では、門形に形成された2つの上部枠体40bが下部枠体40aの上部に取り付けられる場合を例示している。上部枠体40bは、例えば垂直方向に配置される2つの縦フレーム材51を、水平方向に配置される横フレーム材52の両端近傍位置に立設させた状態に組み付けることにより、門形のフレーム構造として構成される。ただし、上部枠体40bは、必ずしも門形のフレーム構造に限られるものではない。例えば、上部枠体40bは、4本の横フレーム材52を一平面内で矩形状に組み付け、その四隅のそれぞれから縦フレーム材51を立設させたテーブル形のフレーム構造としても良い。また縦フレーム材51と横フレーム材52とを組み付けることにより、その他の形状のフレーム構造としても良い。
縦フレーム材51は、例えば所定長さを有する1本の角形鋼管によって構成され、その上下両端にL型アングル材53が取り付けられる。これに対し、横フレーム材52は、縦フレーム材51よりも細い2本の角形鋼管を、所定間隔を隔てて平行に配置し、その両端をボルトとナットなどの固定手段で固定した構造である。したがって、横フレーム材52の中央には、長手方向に沿って所定間隔のスリットが形成される。このスリットの間隔は、上述したフレーム材21に設けられるスリット24の間隔にほぼ等しい。そのため、横フレーム材52のスリットには、吊りボルトや支持ボルトなどと同径のボルトを挿通することが可能である。
縦フレーム材51は、下端に設けられたL型アングル材53の平板部が横フレーム材52に対してボルトなどで固定されることにより、横フレーム材52の長手方向所定位置に対して立設した状態に取り付けられる。つまり、2つの縦フレーム材51の間隔は、横フレーム材52に対する取り付け位置を変更することにより、適宜調整することができる。
上記のようにして構成される上部枠体40bは、図11に示すように、下部枠体40aに対して取り付け可能である。すなわち、上部枠体40bの横フレーム材52に形成されているスリットと、下部枠体40aのフレーム材21に形成されているスリット24との双方にボルトを挿通してナットを締着することにより、上部枠体40bを下部枠体40aに対して固定することができる。このとき、上部枠体40bを位置は、フレーム材21に形成されているスリット24に沿って適宜調整することが可能である。
上記のように構成される天吊り枠体40は、上部枠体40bが天井構造に対して固定される。すなわち、上部枠体40bの上端に設けられたL型アングル材53の平板部に設けられた孔54に対して吊りボルト9が挿入され、その吊りボルト9にナットが締着されることにより、上部枠体40bが天井構造に固定される。そして上部枠体40bは、縦フレーム材51の長さに応じた高さ位置で下部枠体40aを支持するのである。
このように上部枠体40bが天井スラブよりも低い位置で下部枠体40aを支持することにより、優れた耐震性能を発揮する。すなわち、上部枠体40bの縦フレーム材51は角形鋼管で構成されており、天井構造から垂下する吊りボルト9よりも太くて剛性が高いため、下部枠体40aを所定高さ位置で安定して支持することができるのである。
図12は、天吊り枠体40を作業台1の上端部に設置した状態を示す図である。作業者は、図12に示すように作業台1の上端部に天吊り枠体40を設置する。そして作業者は、作業台1が天吊り枠体40を支持した状態のまま、天吊り枠体40に対して天井吊り下げ物を取り付け、天井吊り下げユニット30を作成する。その後、上述した工程と同様の工程で作業を進めていくことにより、天井吊り下げユニット30を天井構造に固定することができる。
図13は、上記とは異なる立体的な天吊り枠体50を作業台1の上端部に設置した状態を示す図である。この天吊り枠体50も、上部枠体50aと、下部枠体50bとを有している。上部枠体50aは、上記実施形態において説明した天吊り枠体20と同様の構成である。これに対し、下部枠体50bは、上部枠体50aの下部に取り付けられる枠体である。この下部枠体50bは、上記と同様に縦フレーム材62と、横フレーム材61とを有している。横フレーム材61は、例えば四角形状に組み付けられることにより平面状の矩形枠体を構成し、空気調和機31の四隅を支持する支持ボルト35が取り付けられる。縦フレーム材62は、横フレーム材61によって構成される矩形枠体を上部枠体50aの下方所定高さ位置で支持するためのものであり、例えば角形鋼管によって構成される。
作業者は、そのような天吊り枠体50を作業台1の上端部に設置し、作業台1が天吊り枠体50を支持した状態のまま、天吊り枠体50に対して天井吊り下げ物を取り付け、天井吊り下げユニット30を作成する。その後、上述した工程と同様の工程で作業を進めていくことにより、天井吊り下げユニット30を天井構造に固定することができる。
次に、天井吊り下げ物と天吊り枠体20とがユニット化された天井吊り下げユニット30を天井構造の近傍位置まで上昇させる際に長ボルトをガイドとして利用する施工方法について説明する。例えば、図7及び図8に示したように、リフト装置10を用いて天井吊り下げユニット30を天井構造の近傍位置まで上昇させると、フレーム材21のスリット24の位置を、吊りボルト9の位置に合わせるために微調整が必要となり、その微調整に時間を要することがある。これに対し、予め天井スラブ8から長ボルトを垂下させた状態に設置しておき、その長ボルトをガイドとして利用すれば、天井吊り下げユニット30を天井構造の近傍位置まで上昇させたときに微調整を行うことなく、フレーム材21のスリット24の位置を吊りボルト9の位置に適合させることができる。
図14及び図15は、長ボルト6をガイドとして利用して天井吊り下げユニット30を持ち上げる施工例を示す図である。まず図14に示すように、天井スラブ8に設置された吊りボルト9の近傍位置に長ボルト6を予め設置しておく。例えば、一対の吊りボルト9が1つのフレーム材21の両端近傍位置において同じスリット24に差し込まれる場合、長ボルト6はそれら一対の吊りボルト9のそれぞれの近傍位置に設置される。このとき、長ボルト6は、一対の吊りボルト9を結ぶ直線上に設置される。
図14に示すように、天井吊り下げユニット30を支持する作業台1がリフト装置10によって若干持ち上げられた状態のとき、長ボルト6の下端が天吊り枠体20のフレーム材21の近傍に位置する。作業者は、リフト装置10の回転ハンドル16を所定方向へ回すことにより、天井吊り下げユニット30を支持する作業台1をさらに上昇させるとき、長ボルト6の下端をフレーム材21のスリット24に差し込む。その後、作業者は、リフト装置10の回転ハンドル16を更に所定方向へ回すことにより、天井吊り下げユニット30を支持する作業台1を上昇させていくと、長ボルト6がガイドとなって天井吊り下げユニット30を吊りボルト9の近傍位置へ導くことができる。
そして図15に示すように、天井吊り下げユニット30を天井スラブ8の近傍位置まで上昇させると、吊りボルト9がフレーム材21のスリット24へ差し込まれた状態となる。つまり、長ボルト6は、一対の吊りボルト9の近傍位置に設置されているため、作業者がリフト装置10を操作して天井吊り下げユニット30を支持する作業台1を上昇させていくことにより、吊りボルト9をフレーム材21のスリット24に対してスムーズに挿入することができるのである。そのため、リフト装置10を操作する作業者は、高所作業を行う別の作業者の指示に基づいてリフト装置10の位置を微調整する必要がなくなるので、作業効率がより一層向上する。
その後、高所作業を行う作業者は、フレーム材21のスリット24に挿入された吊りボルト9の先端にナットを差し込んで締着することにより、天井吊り下げユニット30を天井構造に固定する作業を行うと共に、長ボルト6を天井スラブ8から取り外す作業を行う。尚、長ボルト6を天井スラブ8から取り外すことが困難な場合には、長ボルト6を切断するようにしても良い。
このように、一対の吊りボルト9の近傍位置に長ボルト6を予め設置しておき、その長ボルト6をガイドとして利用して天井吊り下げユニット30を上昇させていくことにより、吊りボルト9の先端をフレーム材21のスリット24に差し込む作業を簡単に行うことができるようになり、作業効率をより一層向上させることができるという利点がある。
尚、このようなガイドとして利用し得るものは、棒状体であれば良いため、必ずしもボルト状のものに限られない。また、このようなガイドを利用できる天井吊り下げユニット30は、図14及び図15に示したように天吊り枠体20で構成されるものに限られず、上述した立体的な天吊り枠体40,50で構成されるものであっても構わない。また、このようなガイドは、2本以上使用しても良いし、1本のみの使用であっても構わない。
また、図14及び図15では、吊りボルト9とは別に長ボルト6を設置する例を示したが、上述したガイド用の長ボルト6を吊りボルト9と兼用するようにしても良い。すなわち、天井スラブ8の吊りボルト9を設置する位置に予め長ボルト6を設置しておくのである。この場合、作業者は、長ボルト6の下端をフレーム材21のスリット24に差し込んだ状態でリフト装置10を操作することにより、天井吊り下げユニット30を支持する作業台1を天井スラブ8の近傍位置まで上昇させる。そして、高所作業を行う作業者は、長ボルト6に対してナットを差し込んで締着した後、長ボルト6を切断すれば、長ボルト6が吊りボルト9と同様の機能を発揮する。尚、高所作業を行う作業者は、長ボルト6を切断した後に、長ボルト6の先端にナットを差し込んで締着するようにしても良い。
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られない。すなわち、本発明は、上記実施形態で説明した構成以外にも種々の変形例を適用することが可能である。
例えば上記実施形態では、天井吊り下げ物として、空気調和機31、ドレン配管32、冷媒配管33を例に挙げた。しかし、天井吊り下げユニット30に組み付けられる天井吊り下げ物は、必ずしも上述したものに限られない。例えば天井吊り下げユニット30は、換気用ダクトやケーブル配管、照明器具などが組み付けられたものであっても構わない。
また上記実施形態では、フレーム材21にスリット24が形成されており、作業台1の支持部3において上方に突出する棒状体3bがそのスリット24に挿入される場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、フレーム材21に丸孔や長孔などの孔が形成されており、その孔に棒状体3bが挿入されることによって支持部3が天吊り枠体20,40,50を支持するものであっても構わない。
また上記実施形態では、作業台1の上端部に設けられる支持部3が、支持面3aの一部から棒状体3bを立設させた構成である場合を例示した。しかし、これに限られるものでもない。図16は、支持部3の変形例を示す図である。支持部3は、図16において一部拡大して示すように、平板部3cと、平板部3cの両端部を立設させた一対の壁部3dとを備えるものであっても構わない。この場合、一対の壁部3dは、フレーム材21の幅寸法と同一間隔又はそれよりも若干広い間隔に設置される。また支持部3は、支柱2の中心軸回りに回動可能な構成であることが好ましい。このような支持部3は、作業台1の上端部に天吊り枠体20,40,50が設置されるとき、一対の壁部3dの間のフレーム材21を収容する。これにより、平板部3cがフレーム材21の下面を支持し、一対の壁部3dがフレーム材21の側面を保持する状態となるため、天吊り枠体20,40,50は、作業台1の上端部から落下することなく、支持される。また作業台1を上昇させて天井吊り下げユニット30を天井構造に固定した後、リフト装置10のフォーク部14を下降させれば、作業台1のみを下降させることも可能である。
また上記実施形態では、作業台1を持ち上げるリフト装置10は、手動操作式である場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、リフト装置10は、電動式又はその他の方式でフォーク部14を上昇又は下降させるものであっても構わない。
また上記実施形態では、作業台1を持ち上げるときに2つのリフト装置10を用いる場合を例示した。しかし、これに限られるものでもない。例えば1台のフォークリフトを用いて作業台1を持ち上げるようにしても構わない。