本発明の重合体組成物は、少なくとも、(i)エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)由来の成分と、(ii)結晶性ポリオレフィン(B)と、(iii)前記式(1)で表される構造単位を含有するケイ素含有化合物と、GPC法で求めた数平均分子量が100以上500,000以下であるビニル基含有化合物との反応(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)によって得られる、シリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物(C)とから構成される。
本発明において、「エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体由来の成分」とは、エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を原料として得られる成分を表す。
<エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
本発明で用いるエチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)(本発明において共重合体(A)とも称す)は、エチレン由来の構造単位、少なくとも1種の炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位、及び少なくとも一種の非共役ポリエンに由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン(炭素数3)、1-ブテン(炭素数4)、1-ノネン(炭素数9)、1-デセン(炭素数10)、1-ノナデセン(炭素数19)、1-エイコセン(炭素数20)等の側鎖のない直鎖状のα-オレフィン;側鎖を有する4-メチル-1-ペンテン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等の側鎖を有するα-オレフィンなどが挙げられる。これらα-オレフィンは1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがより好ましい。これらα-オレフィンは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非共役ポリエンとしては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。これら非共役ポリエンは、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、1,4-ヘキサジエンなどの環状非共役ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン及び5-ビニル-2-ノルボルネンの混合物が好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンがより好ましい。
共重合体(A)としては、エチレン・1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ペンテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-へプテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ノネン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-デセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体などが挙げられる。
共重合体(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン/α-オレフィン比、すなわち、エチレン由来の構造単位[A]と、α-オレフィンに由来する構造単位[B]とのモル比[[A]/[B]]が、40/60~90/10の範囲にある。モル比[A]/[B]の下限としては、好ましくは45/55、より好ましくは50/50、特に好ましくは55/45である。また、モル比[A]/[B]の上限としては、好ましくは80/20、より好ましくは75/25、更に好ましくは70/30、特に好ましくは65/35である。
共重合体(A)は、JIS K6300(1994)に準じて測定して得られた、125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)(125℃)に特に制限はないが、通常50~300であり、好ましくは50~250であり、更に好ましくは50~230であり、特に好ましくは50~200である。前記ムーニー粘度が50~300の範囲にあると、オイル透過防止性に優れる。
共重合体(A)のヨウ素価は、通常2~50g/100g、好ましくは5~40g/100g、より好ましくは7~30g/100gである。ヨウ素価がこの下限値以上であれば、高温下での形状回復性が良好であり、この上限値以下であれば、成形性が良好である。
共重合体(A)は、非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が、[A]、[B]及び[C]の構造単位の合計を100モル%に対して、好ましくは0.1~6.0モル%、より好ましくは0.5~4.0モル%、更に好ましくは0.5~3.5モル%、特に好ましくは0.5~3.0モル%の範囲にある。非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が前記範囲にあると、十分な架橋性、及び柔軟性を有するエチレン系共重合体が得られる傾向にある。
前記共重合体は、例えば「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会、発行p.309~330)」もしくは本願出願人の出願に係る特開平9-71617号公報、特開平9-71618号公報、特開平9-208615号公報、特開平10-67823号公報、特開平10-67824号公報、特開平10-110054号公報、WO2009/081792号パンフレット、WO2009/081794号パンフレットなどに記載されているような方法により製造することができる。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造の際に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒としては、例えば、
バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)等の遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)とからなる公知のチーグラー触媒;
元素の周期律表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物又はイオン化イオン性化合物とからなる公知のメタロセン触媒、例えば特開平9-40586号公報に記載されているメタロセン触媒;
特定の遷移金属化合物と、ホウ素化合物等の共触媒とからなる公知のメタロセン触媒、例えばWO2009/072553号パンフレットに記載されているメタロセン触媒;
特定の遷移金属化合物と、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物又は該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなる遷移金属化合物触媒、例えば特開2011-52231号公報に記載されている遷移金属化合物触媒;
特開2010-241897号公報に記載された触媒を挙げることができる。また、WO2016/152711号パンフレットに記載の触媒を用いて製造することもできる。特にメタロセン触媒を用いると、ジエンの分布が均一となってジエンの導入が少なくても高い架橋効率を得ることができ、また触媒活性が高いため触媒由来の塩素含量を低減できるため特に好ましい。
<結晶性ポリオレフィン(B)>
結晶性ポリオレフィン(B)は、オレフィンから得られる結晶性の重合体であれば特に制限されないが、1種以上のモノオレフィンを、高圧法又は低圧法のいずれかにより重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物からなる重合体であることが好ましい。このような重合体としては、アイソタクチックモノオレフィン重合体、シンジオタクチックモノオレフィン重合体等が挙げられる。
結晶性ポリオレフィン(B)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
結晶性ポリオレフィン(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリオレフィン(B)の原料となるモノオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらのオレフィンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
結晶性ポリオレフィン(B)の中でも、耐熱性、耐油性の点からは、プロピレンを主とするモノオレフィンから得られるプロピレン単独重合体又はプロピレン共重合体であるプロピレン系(共)重合体が好ましい。なお、プロピレン共重合体の場合、プロピレン由来の構造単位の含有量は好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、プロピレン以外の単量体由来の構造単位となるモノオレフィンとしては、好ましくはプロピレン以外の前記モノオレフィン、より好ましくはエチレン、ブテンである。
重合様式はランダム型でもブロック型でも、結晶性の樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。
前記結晶性ポリオレフィン(B)は、メルトフローレート(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が通常0.01~100(g/10分)であり、好ましくは0.05~50(g/10分)、特に好ましくは0.1~30)(g/10分)である。前記メルトフローレートが0.01(g/10分)以上であると、熱可塑性エラストマーの流動性が良好で、成形性に優れ、100(g/10分)以下であると、適度な流動性を有し、ドローダウンやバリの発生が生じにくく、熱可塑性エラストマーの機械特性も良好である。
結晶性ポリオレフィン(B)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点(Tm)が、100℃以上であり、好ましくは105℃以上である。前記融点(Tm)が100℃未満であると、熱可塑性エラストマーの耐油性、耐熱性が低下する。
示差走査熱量測定は、例えば次のようにして行われる。試料5mg程度を専用アルミパンに詰め、(株)パーキンエルマー社製DSCPyris1又はDSC7を用い、30℃から200℃までを320℃/分で昇温し、200℃で5分間保持したのち、200℃から30℃までを10℃/分で降温し、30℃で更に5分間保持し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より融点を求める。なお、DSC測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピーク温度を融点(Tm)と定義する。
結晶性ポリオレフィン(B)は、熱可塑性エラストマー組成物の流動性及び耐熱性を向上させる役割を果たす。
結晶性ポリオレフィン(B)の配合量は、柔軟性及び低圧縮永久歪性の点から、共重合体(A)由来の成分の合計100質量部に対して、20~150質量部、好ましくは20~100質量部である。
<シリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物(C)>
本発明で用いられるケイ素含有化合物は、下記式(1):
-Si(R1)H-Y1- (1)
(式(1)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、Y1はO、S又はNR30(R30は、水素原子又は炭化水素基である)である。)
で表される構造単位を含有するヒドロシラン化合物である。
前記式(1)において、R1で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記式(1)において、R1又はR30で表される炭化水素基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられる。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
また前記の炭化水素基は、1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の少なくとも一つの水素原子又は炭素原子が、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子、イオウ原子を含む基で置換された基が挙げられる。
本発明の一実施形態において、ケイ素含有化合物は、式(2)で表される構造を有する。
R22-(Si(R21)H-Y21)m-Z-(Y22-Si(R23)H)n-R24 (2)
前記式(2)中、R21及びR23はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、
R22及びR24はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、
Y21及びY22はそれぞれ独立して、O、S又はNR30(R30は、水素原子又は炭化水素基である)であり、
mは0又は1であり、
nは0又は1であり、
R21、R23、Y21及びY22のうち、複数が存在する場合、各基は同一であっても異なっていてもよく、
Zは、下記式(3)で表される2価の基である:
-Si(R41)(R41)-(Y23-Si(R41)(R41))l- (3)
前記式(3)中、R41は水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、各R41はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Y23はそれぞれ独立して、O、S又はNR30(R30は、水素原子又は炭化水素基である)であり、
lは0~10,000の整数である。
ただし、前記式(2)において、m=n=0の場合、前記式(3)において、少なくとも1つのR41は水素原子である。
なお、前記式(2)及び前記式(3)におけるハロゲン原子及び炭化水素基の定義は、前記式(1)における定義と同様である。
また、前記式(1)、(2)、(3)における炭化水素基として、炭素原子と水素原子とのみからなるものであることも1つの典型的な実施態様である。
本発明の一実施形態において、ケイ素含有化合物は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上、更に好ましくは10個以上のケイ素原子を有する。またケイ素含有化合物は好ましくは10,000個以下、より好ましくは1,000個以下、特に好ましくは300個以下、更に好ましくは50個以下のケイ素原子を有する。このようなケイ素含有化合物を用いたシリル化ポリオレフィンを用いることにより、共重合体(A)や結晶性ポリオレフィン(B)に対し良好な分散性を有する。
本発明の一実施形態において、前記式(3)におけるlは0~10,000の整数であるが、好ましい上限及び下限としては、前記式(2)のmとnの値と前記好ましいケイ素原子の個数とから定まる数を挙げることができる。
本発明の一実施形態において、前記式(2)においてm=n=1、すなわち両末端にSiH基を有するケイ素含有化合物が好ましく用いられる。
本発明の一実施形態において、前記式(2)においてm=1であり、n=0、すなわち片末端にSiH基を有するケイ素含有化合物が好ましく用いられる。
特に好ましいケイ素含有化合物としては、前記式(2)及び式(3)において、m=n=1であり、R21、R23及びR41は全て炭化水素基である化合物が挙げられる。
特に好ましい別のケイ素含有化合物としては、前記式(2)及び式(3)において、m=1、n=0であり、R21及びR41は全て炭化水素基である化合物が挙げられる。
本発明の実施形態で用いられるケイ素含有化合物の具体例を以下に示す。本実施形態のケイ素含有化合物としては、SiH基を1個有する化合物が挙げられる。
SiH基を1個有するケイ素含有化合物の例としては、例えば、下記式(2a)で表される化合物、及び下記式(2a)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)d-Si(CH3)3 (2a)
(前記式(2a)中、dは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
C4H9-((CH3)2SiO)9-(CH3)2SiH
C4H9-((CH3)2SiO)65-(CH3)2SiH
SiH基を1個有するケイ素含有化合物の別の例としては、例えば、下記式(2b)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、及び下記式(2b)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
Si(CH3)3O-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)-Si(CH3)3 (2b)
(前記式(2b)中、eは、0以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
なお、-Si(CH3)2-O-単位と-SiH(CH3)-O-単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であってもよい。
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されない。
Si(CH3)3O-SiH(CH3)-O-Si(CH3)3
本実施形態のケイ素含有化合物としてはまた、SiH基を2個以上有する化合物が挙げられる。
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の例としては、例えば、下記式(2c)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、及び下記式(2c)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
(CH3)3SiO-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH3)3 (2c)
(前記式(2c)中、fは2以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の別の例としては、例えば、下記式(2d)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、及び下記式(2d)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
(CH3)3SiO-(-Si(CH3)2-O-)g-(-SiH(CH3)-O-)h-Si(CH3)3 (2d)
(前記式(2d)中、gは1以上の整数であり、hは2以上の整数であり、gとhとの合計の上限は、例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
また、前記式(2d)において、-Si(CH3)2-O-単位と-SiH(CH3)-O-単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であってもよい。
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されない。
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の更に別の例としては、例えば、下記式(2e)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、及び下記式(2e)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)i-Si(CH3)2H (2e)
(前記式(2e)中、iは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)5-Si(CH3)2H
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)8-Si(CH3)2H
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)18-Si(CH3)2H
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)80-Si(CH3)2H
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)230-Si(CH3)2H
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の更に別の例としては、例えば、下記式(2f)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、及び下記式(2f)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-SiH(CH3)-O-)j-Si(CH3)2H (2f)
(前記式(2f)中、jは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の更に別の例としては、例えば、下記式(2g)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、及び下記式(2g)においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換された化合物等が挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)k-(-SiH(CH3)-O-)l-Si(CH3)2H (2g)
(前記式(2g)中、k及びlは、それぞれ1以上の整数であり、kとlとの合計の上限は例えば1000、好ましくは300、更に好ましくは50である。)
また、-Si(CH3)2-O-単位と-SiH(CH3)-O-単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であってもよい。
本発明で用いられるビニル基含有化合物のGPC法により求めた数平均分子量は、100以上500,000以下であり、100以上100,000以下であることが好ましい。数平均分子量が前記下限値以上であると、オイル透過防止性が良好であり、前記上限値以下であると、共重合体(A)や結晶性ポリオレフィン(B)への分散性が良好である。なお、本明細書では後述するように数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びMw/Mnはポリエチレン換算の値とした。
以下にビニル基含有化合物について説明する。
ビニル基含有化合物は、通常炭素数2~50のオレフィンから選ばれる1種以上を重合又は共重合して得られるものである。
炭素数2~50のオレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等のα-オレフィン;シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン等の内部二重結合を含むオレフィン;イソブテン、2-メチル-1-ペンテン、2,4-ジメチル-1-ペンテン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、2-メチル-1-オクテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ペンテン、2,3-ジメチル-1-ヘキセン、2,3-ジメチル-1-オクテン、2,3,3-トリメチル-1-ブテン、2,3,3-トリメチル-1-ペンテン、2,3,3-トリメチル-1-ヘキセン、2,3,3-トリメチル-1-オクテン、2,3,4-トリメチル-1-ペンテン、2,3,4-トリメチル-1-ヘキセン、2,3,4-トリメチル-1-オクテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、2,4,4-トリメチル-1-オクテン、2-メチル-3-シクロヘキシル-1-プロピレン、ビニリデンシクロペンタン、ビニリデンシクロヘキサン、ビニリデンシクロオクタン、2-メチルビニリデンシクロペンタン、3-メチルビニリデンシクロペンタン、4-メチルビニリデンシクロペンタン等のビニリデン化合物;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のアリールビニル化合物;α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、2-メチル-3-フェニルプロピレン等のアリールビニリデン化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、2-シアノプロピレン、2-アミノプロピレン、2-ヒドロキシメチルプロピレン、2-フルオロプロピレン、2-クロロプロピレン等の官能基置換ビニリデン化合物;シクロブテン、シクロペンテン、1-メチル-1-シクロペンテン、3-メチル-1-シクロペンテン、2-メチル-1-シクロペンテン、シクロヘキセン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1Hインデン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等の内部二重結合を含む脂肪族環状オレフィン;シクロペンタ-2-エニルベンゼン、シクロペンタ-3-エニルベンゼン、シクロヘキサ-2-エニルベンゼン、シクロヘキサ-3-エニルベンゼン、インデン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン等の芳香環を含有する環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,4-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン等の、二個以上の二重結合を有する環状ポリエン及び二個以上の二重結合を有する鎖状ポリエン等が挙げられる。
また、炭素数2~50のオレフィンは、酸素、窒素、硫黄等の原子を含んだ官能基を有していてもよい。例えばアクリル酸、フマル酸、イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の不飽和カルボン酸金属塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジルエステル;塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化アリル等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、2-シアノ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン等の不飽和シアノ化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等の不飽和エーテル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等の不飽和アミド;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等の官能基含有スチレン誘導体;N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
好ましい実施形態において、ビニル基含有化合物は、下記式(4)で表される構造を有し、数平均分子量が100以上500,000以下の化合物である。
A-CH=CH2 (4)
ここで、前記式(4)中、Aは1種以上の炭素数2~50のα-オレフィン由来の構成単位を含む重合鎖である。
前記式(4)において、好ましくは、ビニル基含有化合物のA部は、エチレン重合鎖、プロピレン重合鎖又は炭素数2~50のα-オレフィンからなる群から選択される2種以上のオレフィンの共重合鎖である。また前記α-オレフィンは、炭素数が2~20のα-オレフィンであることが好ましい。
好ましい実施形態において、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物のAは、炭素数2~50のα-オレフィンのみから構成される重合鎖である。更に好ましくはビニル基含有化合物のAは炭素数2~20のα-オレフィンのみから構成される重合鎖である。更に好ましくは、ビニル基含有化合物のAは、エチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、又はエチレン・炭素数3~20のα-オレフィン共重合鎖である。
前記式(4)で表されるビニル基含有化合物は、エチレン由来の構成単位が81~100モル%、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位が0~19モル%の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましい。より好ましくは、エチレン由来の構成単位が90~100モル%、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位が0~10モル%の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましい。とりわけエチレン由来の構成単位が100モル%であることが好ましい。
また、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比、Mw/Mn)が1.1~3.0の範囲にあることが好ましい。
また、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物は、数平均分子量(Mn)が100以上500,000以下の範囲にあり、500以上50,000以下であることが好ましい。
また、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物は、融点が70℃以上130℃以下であることが好ましい。
更に好ましくは、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物のビニル基は、主鎖の末端に存在することが好ましく、ビニル基が主鎖の末端のみに存在することがより好ましい。
なお、ビニル基が主鎖の末端に存在することの確認は、例えば13C-NMR、1H-NMRを利用することで可能である。例えばAがエチレン単独重合体である場合、13C-NMRにより3級炭素が検出されず、かつ1H-NMRでビニル基の水素が検出されることで確認する方法が挙げられる。1H-NMRのみにおいても、検出された各プロトンのピークを帰属することにより、構造の確認が可能である。また、別の方法として、主鎖末端に存在するビニル基の水素の方が、側鎖に存在するビニル基の水素よりも1H-NMR測定における緩和時間が短いことを利用して、例えば側鎖にビニル基を有するポリマーの当該ビニル基の水素と緩和時間を比較する方法で決めることも可能である。
側鎖のビニル基の1H-NMRにおけるケミカルシフトが、末端に存在するビニル基よりも低磁場シフトすることを利用して判別することができる場合もある。
また、前記式(4)で表されるビニル基含有化合物が、主鎖の末端のみにビニル基を含有する場合、1H-NMRにより計算される末端不飽和率(後述するVE)が60モル%以上100モル%以下であることが好ましい。更に好ましい態様の一つは、1H-NMRにより計算される末端不飽和率が80モル%以上99.5モル%以下、より好ましくは90モル%以上99モル%以下であるものである。
前記式(4)で表されるビニル基含有化合物は、例えば以下の式(I)、式(II)、又は式(III)で表される遷移金属化合物(A)と、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、及び(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる触媒(B)により、炭素数2~50のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上を重合又は共重合することにより得ることができる。
(前記式(I)中、Mは周期律表4~5族の遷移金属原子を示す。mは、1~4の整数を示す。R51は、炭素数1~5の直鎖炭化水素基(Cn'H2n'+1,n'=1~5)又は水素原子を示す。R52~R56は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR52~R56で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示す。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(前記式(II)中、Mは周期律表第4~5族の遷移金属原子を示す。mは、1~4の整数を示す。R61は、1つ又は複数の置換基を有していてもよい3~5員環の脂環式炭化水素基を示す。R62~R66は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR62~R66で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示す。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(前記式(III)中、Mは周期律表第4~5族の遷移金属原子を示す。mは、1~4の整数を示す。R71は、1つ又は複数の置換基を有していてもよい炭素数4~20の少なくとも1つ以上の炭素を共有する2環性炭化水素基を示す。R72~R76は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR72~R76で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、又はスズ含有基を示す。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
また、Aがエチレン由来の構成単位のみからなる場合、及びプロピレン由来の構成単位のみからなる場合は、以下の方法で製造することもできる。
(エチレン単独重合鎖を有するポリオレフィン)
(E1)エチレン単独重合鎖を有するポリオレフィン重合鎖は、例えば、以下の方法によって製造することも可能である。
(a)特開2000-239312号公報、特開2001-2731号公報、特開2003-73412号公報等に示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(b)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(c)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(d)ジルコノセン等のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
(プロピレン単独重合鎖を有するポリオレフィン)
(E2)プロピレン単独重合鎖を有するポリオレフィン重合鎖は、例えば、以下の方法によって製造することも可能である。
(a)特開2004-262993号公報等に示されているような担持型チタン系触媒、例えばマグネシウム担持型チタン系触媒又は、メタロセン触媒の存在下、プロピレンを重合する方法。
(b)特開2000-191862号公報、特開2002-097325号公報等に示されているような金属化合物中の遷移金属と反応してイオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサンとからなるメタロセン系触媒の存在下、プロピレンを重合する方法。
(オレフィン・ポリエン共重合体)
本実施形態のビニル基含有化合物の1つである、(Z)オレフィン・ポリエン共重合体について説明する。
オレフィンとしては、エチレン及び炭素数3~12のα-オレフィンが挙げられる。
炭素数3~12のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。これらのうち、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィン、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィン、特に好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
ポリエンとしては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン(5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)、ジシクロペンタジエン、2-メチル-1,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン等が挙げられる。これらのなかでは、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,4-ヘキサジエン又は2-メチル-1,6-オクタジエンが好ましい。ビニルノルボルネンは、嵩高い骨格を有するために、低密度であってもワックスを硬くでき、ワックス製品のブロッキングを起こしにくいため、特に好ましい。
(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、以下の共重合体(Z1)であることが好ましい。すなわち(Z1)は前記のようなエチレンとポリエンとの共重合体、又はエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンとポリエンとの共重合体から選ばれる少なくとも1種以上である。
本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、ポリエンから導かれる構成単位を0.01~6.0モル%、好ましくは0.1~4.0モル%の割合で含有することが好ましい。また、(Z)オレフィン・ポリエン共重合体が炭素数3~12のα-オレフィンから導かれる構成単位を含有する場合は、その含有率は0.01~15モル%、好ましくは0.1~12モル%が好ましい。
本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体が、ポリエンから導かれる構成単位を前記の範囲の割合で含有すると、重合活性も適度に高い。
また、炭素数3~12のα-オレフィンから導かれる構成単位を前記の範囲の割合で含有すると、表面のタック感が少なく、機械的特性、衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
(Z2)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、平均で0.5~3.0個/分子、好ましくは0.5~2.0個/分子、より好ましくは1.0~2.0個/分子、特に好ましくは1.0~1.9個、とりわけ好ましくは1.0~1.5個の範囲にある不飽和基含有量を有することが好ましい。(Z)オレフィン・ポリエン共重合体中の不飽和基含有量が前記範囲内にあると、すべての(Z)オレフィン・ポリエン共重合体にシリコーンが付加しているため、シリル化ポリオレフィンが効果的に無機強化材に作用し、機械的特性、衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
なお、(Z)オレフィン・ポリエン共重合体の不飽和基含有量は、以下のようにして測定される。13C-NMRによる不飽和部分の炭素のピーク面積と全炭素のピーク面積とを比較することにより、1,000炭素あたりの不飽和基数Mを得ることができる。1分子あたりの不飽和基含有量は、数平均分子量Mnを用いて、Mn×M/14,000により算出することができる。
なお、本実施形態において、1,000炭素あたりの不飽和基数Mは、通常1.4~105個、好ましくは1.4~70個、より好ましくは2.8~70個である。
(Z3)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、密度勾配管法で測定した密度が通常870kg/m3以上、好ましくは890kg/m3以上、より好ましくは910kg/m3以上、かつ、980kg/m3以下、好ましくは970kg/m3以下、より好ましくは960kg/m3以下である。(Z)オレフィン・ポリエン共重合体の密度が前記範囲内にあると、柔軟性が良好である。
(Z4)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上、かつ、130℃以下、好ましくは125℃以下、より好ましくは120℃以下である。(Z)オレフィン・ポリエン共重合体の融点が前記範囲内にあると、耐熱性と柔軟性のバランスが良好である。
(Z5)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が通常400~5,000、好ましくは400~4,000、より好ましくは400~3,000、特に好ましくは1,500~2,500の範囲にある。(Z)オレフィン・ポリエン共重合体のMnが前記範囲内にあると、共重合体(A)や結晶性ポリオレフィン(B)への分散性が良好である。
(Z6)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が通常4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算値である。ここで、GPCによる測定は、温度:140℃、溶媒:オルトジクロロベンゼンの条件下で行う。
(Z7)本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、針入硬度が通常15dmm(1dmm=0.1mm)以下、好ましくは10dmm以下、より好ましくは3dmm以下、特に好ましくは1dmm以下である。なお、針入硬度はJIS K2207に準拠して測定することができる。(Z)オレフィン・ポリエン共重合体の針入硬度が前記範囲内にあると、ハンドリング性が良好である。
本実施形態における(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、前記(Z2)不飽和基含有量、(Z3)密度、(Z4)融点、(Z5)数平均分子量(Mn)、(Z6)Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)、(Z7)針入硬度の条件のうち1つ以上を満たすことが望ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、3つ以上を満たすことが更に好ましく、4つ以上を満たすことが更により好ましく、5つ以上を満たすことがとりわけ好ましく、6つ全てを満たすことが特に好ましい。例えば特に好ましい態様としては(Z2-1)不飽和基含有量が0.5~3.0個/分子であり、(Z3-1)密度が870~980kg/m3であり、(Z4-1)融点が70~130℃であり、(Z5-1)数平均分子量(Mn)が400~5,000であり、(Z6-1)Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)が4.0以下である態様が挙げられ、更に好ましくはこれら5つに加えて(Z7-1)針入硬度が15dmm以下を満たすものが挙げられる。
また、本実施形態に係る(Z)オレフィン・ポリエン共重合体がポリエンとしてビニルノルボルンネン(5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)を用いて共重合されたものである場合、この(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、前記(Z2)不飽和基含有量、(Z3)密度、(Z4)融点、(Z5)数平均分子量(Mn)、(Z6)Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)、(Z7)針入硬度の条件のうち1つ以上を満たすことが望ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、3つ以上を満たすことが更に好ましく、4つ以上を満たすことが更により好ましく、5つ以上を満たすことがとりわけ好ましく、6つ全てを満たすことが特に好ましい。例えば特に好ましい態様としては(Z2-2)不飽和基含有量が0.5~2.0個/分子であり、(Z3-2)密度が890~980kg/m3であり、(Z4-2)融点が80~130℃であり、(Z5-2)数平均分子量(Mn)が400~5,000であり、(Z6-2)Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)が4.0以下である態様が挙げられ、更に好ましくはこれら5つに加えて、(Z7-2)針入硬度が15dmm以下を満たすものが挙げられる。
上述したような(Z)オレフィン・ポリエン共重合体は、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物及び/又はイオン化イオン性化合物とからなる、以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる。本実施形態において好適なメタロセン系触媒としては、特開2001―002731号公報、WO2007/114102、WO2007/105483、WO2007/114009、WO2007/122906等に記載された、例えば、(A)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、並びに(B)(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b-2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物及び(b-3)有機アルミニウム化合物とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物とからなるオレフィン重合用触媒を挙げることができる。
本実施形態における(A)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチル((t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド等が挙げられる。
また、本実施形態における(B)(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b-2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物及び(b-3)有機アルミニウム化合物とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物の具体例としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。
本実施形態では特に、ビニル基含有化合物が前記式(4)で表される場合が共重合体(A)や結晶性ポリオレフィン(B)への分散性の点から好ましい。
本実施形態で用いられるシリル化ポリオレフィンは、どのような方法によって製造されたものでも使用できるが、好ましくは下記の[工程1]及び[工程2]を順次実施することにより得られたシリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物である。
本明細書において、「シリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物」をまとめてシリル化ポリオレフィンとも呼ぶ。
[工程1]ケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属とを混合攪拌し、得られた懸濁溶液を濾過して濾液として遷移金属触媒組成物(C)を得る工程、
[工程2]前記[工程1]で得られた遷移金属触媒組成物(C)の存在下、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)させる工程。
以下で、シリル化ポリオレフィンの製造方法について詳述する。
[工程1]:遷移金属触媒組成物(C)を得る工程
[工程1]では、ケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属とを混合攪拌し、得られた懸濁溶液を濾過して濾液として遷移金属触媒組成物(C)を得る。
ハロゲン化遷移金属としては、元素周期表第3族~第12族の遷移金属のハロゲン化物であり、入手の容易さや経済性の点から好ましくは元素周期表第8族~第10族の遷移金属のハロゲン化物であり、より好ましくは白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、パラジウムのハロゲン化物である。更に好ましくは白金のハロゲン化物である。また、二種以上のハロゲン化遷移金属の混合物であっても構わない。
ハロゲン化遷移金属のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、これらのうちでは取扱いの容易さの点で塩素が好ましい。
[工程1]に使用するハロゲン化遷移金属の具体例としては、二塩化白金、四塩化白金、二臭化白金、二ヨウ化白金、三塩化ロジウム、三臭化ロジウム、三ヨウ化ロジウム、三塩化イリジウム、四塩化イリジウム、三臭化イリジウム、三ヨウ化イリジウム、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三ヨウ化ルテニウム、三塩化オスミウム、三臭化オスミウム、三ヨウ化オスミウム、二塩化ニッケル、二フッ化ニッケル、二臭化ニッケル、二ヨウ化ニッケル、二塩化パラジウム、二臭化パラジウム、二ヨウ化パラジウムが挙げられる。これらのうちでは二塩化白金、二塩化パラジウム、三塩化ルテニウム、三塩化ロジウム、三塩化イリジウムが好ましく、二塩化白金が最も好ましい。
[工程1]で用いるハロゲン化遷移金属は、通常、粉末状の固体であり、粒径は1000μm以下が好ましく、更には500μm以下が好ましい。粒径が大きくなると、遷移金属触媒組成物(C)の調製時間が長くなる。
[工程1]におけるケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属の使用量は、ケイ素含有化合物の量がハロゲン化遷移金属に対し1当量以上であれば特に制限されないが、好ましくは2当量以上である。ケイ素含有化合物の量が少ないと、遷移金属触媒組成物(C)の調製上必要な攪拌が困難になる。
[工程1]におけるケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属との混合攪拌は、これが可能であれば手段は問わないが、窒素気流下、攪拌機を備えた反応容器中にハロゲン化遷移金属を適当量仕込み、これにケイ素含有化合物を添加して攪拌を行う。少量の場合はサンプル管にスターラーチップを入れ、同様に仕込んで攪拌してもよい。
ケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属との混合攪拌時間は、通常10時間以上であり、好ましくは20時間以上であり、より好ましくは60時間以上であり、更に好ましくは80時間以上である。反応時間が短いと、次の[工程2]で得られるシリル化ポリオレフィン中の不純物である異性体のビニレン誘導体の生成割合が増大するため好ましくない。混合攪拌時間の上限は特にないが、経済的な観点から概ね1ヶ月以内である。
ケイ素含有化合物とハロゲン化遷移金属との混合攪拌の温度は、ケイ素含有化合物の沸点以下であれば特に制限はないが、通常0~50℃の範囲、好ましくは10~30℃の範囲である。また圧力は、通常は常圧で行うことができるが、必要に応じて加圧下又は減圧下で行うこともできる。
[工程1]においては、必要に応じて溶媒を使用することもできる。使用する溶媒は、原料のケイ素含有化合物及びハロゲン化遷移金属に対して不活性なものが使用できる。使用できる溶媒の具体例は、例えばn-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、パークロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらのうち、特にトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒を使用する場合は溶媒の使用量は原料の溶解性に作用するが、原料に対し100質量倍以下が好ましく、より好ましくは20質量倍以下である。本実施形態では、無溶媒で実施することが最も好ましい。
次に、反応で得られた懸濁溶液を濾過して固形分を除去し、濾液として遷移金属触媒組成物(C)を得る。濾過の方法としては特に制限はなく、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過等の一般的な方法を用いることができる。濾過で使用するフィルターとしては特に制限はなく、セルロース製ろ紙、ガラス繊維フィルター、フッ素樹脂製やセルロースアセテート製のメンブランフィルター等を適宜使用できる。これらの中でも、孔径の均一性、低吸湿性、化学的安定性等の点から、フッ素樹脂製メンブランフィルターを用いることが好ましい。また、濾過で使用するフィルターは10μmより小さな目のフィルターを使用することが好ましく、1μm以下の目のフィルターを使用することが更に好ましい。これより大きな目のフィルターを使用すると、未反応のハロゲン化遷移金属の固形分が触媒中に混入し、触媒が不均一化するため、合成目的物の不純物であるビニレン誘導体の生成量が増大する原因となる。また濾過の際、前記の溶媒を使用して固形分を洗浄することもできる。
濾過で除去される固形分、すなわち未反応のハロゲン化遷移金属の量は、使用したハロゲン化遷移金属の量に対して通常50質量%以下、好ましくは10質量%以下である。ハロゲン化遷移金属の反応率は、主に調製時間を変更することによって調節することができる。
このようにして調製した遷移金属触媒組成物(C)には、ナノコロイド状になった遷移金属化合物、ケイ素含有化合物、及び必要に応じて使用した溶媒が含まれる。この遷移金属触媒組成物(C)は、そのままで次の[工程2]に用いることができるが、必要に応じて、溶媒の除去や、濃縮、希釈を行ってから、[工程2]に用いることもできる。また、ケイ素含有化合物を更に追加して希釈し、触媒濃度を調整することもできる。
[工程1]を実施する代わりに市販の遷移金属触媒、例えば白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたもの等が挙げられるが、これを[工程2]に使用しても構わない。
[工程2]:ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる工程
[工程2]では、前記[工程1]で得られた遷移金属触媒組成物(C)中で、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させ(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)、シリル化ポリオレフィンを得る。
また、[工程2]で用いるケイ素含有化合物は、[工程1]で用いたケイ素含有化合物と異なるものを用いることもできるが、好ましくは[工程1]で用いたものと同一のものを用いる。
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる際の量比は、目的によって異なるが、ビニル基含有化合物中のビニル基とケイ素含有化合物中のSi-H結合との当量比として0.01~10当量倍の範囲であり、好ましくは0.1~2当量倍の範囲である。ここでケイ素含有化合物の量は、[工程1]で用い、遷移金属触媒組成物(C)中に含まれる部分と、[工程2]で新たに追加する部分との合算量である。[工程1]において必要なケイ素含有化合物の全量を用いた場合には、[工程2]ではケイ素含有化合物を追加することなく実施することもできる。
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応は、[工程1]で調製した遷移金属触媒組成物(C)の存在下で行う。遷移金属触媒組成物(C)とビニル基含有化合物との量比は、ビニル基含有化合物中のビニル基と遷移金属触媒組成物(C)中の遷移金属分との当量比として、10-10~10-1当量倍の範囲であり、好ましくは10-7~10-3当量倍の範囲である。
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応における反応方法としては、最終的に反応すればよく、その方法は限定されるものではないが、例えば以下のように行う。反応容器中にビニル基含有化合物を装入し、窒素雰囲気下、ケイ素含有化合物と遷移金属触媒組成物(C)を装入する。予め内温をビニル基含有化合物の融点以上に昇温しておいた油浴中に、前記反応器をセットし攪拌する。反応後油浴を除いて室温に冷却し、得られた反応混合物をメタノール又はアセトン等の貧溶媒中に取り出し2時間攪拌する。その後、得られた固体をろ取し、前記貧溶媒で洗浄し、60℃、2hPa以下の減圧下で乾燥させ、目的物を得ることができる。
[工程2]におけるビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応は、反応温度を100~200℃の範囲とすることが好ましく、反応させるビニル基含有化合物の融点より高い温度で行うことがより好ましい。反応温度が100℃より低いと、反応効率が低下することがあるので好ましくない。また圧力は、通常は常圧で行うことができるが、必要に応じて加圧下又は減圧下で行うこともできる。
[工程2]においては、必要に応じて溶媒を使用することもできる。使用する溶媒は、原料のケイ素含有化合物及びビニル基含有化合物に対して不活性なものが使用できる。常圧下で反応させる場合、反応させるビニル基含有化合物の融点以上の沸点を有するものを使用するのが好ましい。使用できる溶媒の具体例は、例えばn-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、パークロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらのうち、特にトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒を使用する場合は溶媒の使用量は原料の溶解性に作用するが、原料に対し100質量倍以下が好ましく、より好ましくは20質量倍以下である。本実施形態では、無溶媒で実施することが最も好ましい。
以上のように、遷移金属触媒組成物(C)の存在下、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させることにより、前記式(1)で表される構造単位を含むシリル化ポリオレフィンを含む反応混合物が得られる。
前記反応後のシリル化ポリオレフィンを含む反応混合物には、シリル化ポリオレフィンの他に、未反応のビニル基含有化合物、副生物であるビニレン誘導体が含まれている。また場合によって、未反応のケイ素含有化合物が含まれていることもある。
シリル化ポリオレフィン中における、前記式(1)で表される構造単位に由来する構造の割合は、シリル化ポリオレフィンの目的機能が発現されればよく、特に限定されないが、通常5~99質量%であり、好ましくは10~95質量%である。構成単位がこの範囲であれば、良好なオイル透過防止性を発現すると考えられる。
前記の方法においては、[工程1]で得られた非常に高活性で高選択性の遷移金属触媒組成物(C)を用いるため、[工程2]のビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応が効率よく進行する。このため、ビニル基含有化合物の二重結合の反応率は、通常90%以上、好ましくは95%以上であり、副生物であるビニレン誘導体の生成量は、シリル化ポリオレフィンに対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
シリル化ポリオレフィンは、前記反応混合物から、貧溶媒への再沈殿、又はスラッジングにより取り出すことができる。貧溶媒はシリル化ポリオレフィンの溶解度が小さいものであればよく、適宜選択することができ、好ましくは前記不純物が除けるものがよい。貧溶媒として具体的には、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、n-ヘキサン、n-ヘプタン等が挙げられ、これらのうちではアセトン、メタノールが好ましい。
前記のようにして得たシリル化ポリオレフィンを、本発明では、シリル化ポリオレフィンを含む反応生成物ということがある。シリル化ポリオレフィンを含む反応生成物は、前記工程を経た後、更に精製する工程を経たものであってもよい。
得られたシリル化ポリオレフィンの、JIS K7210の方法に従い、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.1g/10分以上であり、より好ましくは1.0g/10分以上である。上限は特にない。本指標は、シリル化ポリオレフィンが、樹脂の流動性を損なうほどの架橋等をしていないことを示す指標である。
本実施形態で用いられるビニル基含有化合物としては、前述したように具体的には、下記式(4)で表される化合物、又は、(Z)オレフィン・ポリエン共重合体が挙げられる。
A-CH=CH2 (4)
(前記式(4)中、Aは1種以上の炭素数2~50のα-オレフィン由来の構成単位を含む重合鎖である。)
ビニル基含有化合物が前記式(4)で表される化合物である場合、Aが炭素数2~20のα-オレフィンのみからなる構造(構造4-1)が好ましい。
更に好ましくは、ビニル基含有化合物は、-CH=CH2がポリマー主鎖の末端に存在する構造(構造4-2)を有する。
更に好ましくは、ビニル基含有化合物は、-CH=CH2がポリマー主鎖の末端のみに存在する構造(構造4-3)を有する。
なお更に好ましくは、ビニル基含有化合物は、Aが炭素数2~20のα-オレフィンのみからなり、-CH=CH2がポリマー主鎖の末端に存在する構造(構造4-4)(構造4-1と構造4-2との組み合わせ)を有する。
なお更に好ましくは、ビニル基含有化合物は、Aが炭素数2~20のα-オレフィンのみからなり、更にCH=CH2がポリマー主鎖の末端のみに存在する構造(構造4-5)(構造4-1と構造4-3との組み合わせ)を有する。
ビニル基含有化合物が(Z)オレフィン・ポリエン共重合体である場合、ポリエンとしてビニルノルボルネンを用いた構造がより好ましい。
本実施形態のケイ素含有化合物は、前述したように、具体的には前記式(2)の構造を有するものが好ましい。そのうちでもビニル基含有化合物が前記式(4)で表される場合と、(Z)オレフィン・ポリエン共重合体の構造である場合とにおける好ましいケイ素含有化合物はそれぞれ以下の通りである。
ビニル基含有化合物が前記式(4)で表される場合、ケイ素含有化合物としては、前記式(2)においてm=n=1である構造(構造2-1)が好ましく、更には前記式(2)中のZにおけるR41が全て炭化水素基及びハロゲンから選ばれるものである構造(構造2-2)がより好ましい(すなわちR41はいずれも水素原子ではないことが好ましい。)。
また、ビニル基含有化合物が(Z)オレフィン・ポリエン共重合体である場合であって、例えばビニル基が1分子に平均して2個以上ある場合は、ケイ素含有化合物としては、前記式(2)においてm=1、n=0であり、かつ前記式(2)中のZにおけるR41が全て炭化水素基及びハロゲンから選ばれる構造(構造2-3)であるか、又は、前記式(2)においてm=0,n=0であり、かつ前記式(2)中のZにおけるR41のうち1つだけが水素原子である構造(構造2-4)である化合物が好ましい。
また、ビニル基含有化合物が1分子に平均して2個未満のビニル基を有する場合は、ケイ素含有化合物としては、前記構造2-3、構造2-4のようなSiH基を1分子に1個有する化合物に加えて、Si-H結合が1分子に2個以上有する化合物を使用することも可能であり、例えば前述の構造2-1、構造2-2をとってもよい。
シリル化ポリオレフィンは、例えば、式(5)~(8)で表されるような構造を有していると推定される。もちろんそのケイ素含有化合物やビニル基含有化合物の組合せは、これらの例示になんら限定されるものではない。
(前記各式中のm,n,o,p,qは1以上の整数を表す。)
以下に、特に好ましい態様とその推定理由とを述べる。以下ではビニル基含有化合物由来の部分のことを、「ポリオレフィン鎖」、ケイ素含有化合物由来の部分のことを、「ケイ素含有化合物鎖」ということがある。ビニル基含有化合物が前記式(4)で表される構造、中でも構造(4-5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2-2)をとる場合、シリル化ポリオレフィンは、(ポリオレフィン鎖)-(ケイ素含有化合物鎖)-(ポリオレフィン鎖)の順に結合したブロック共重合体のような構造をとると考えられる。具体的には前記した式(5)のような推定構造を有する化合物が例示できる。
ビニル基含有化合物が構造(4-5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2-1)をとった場合であって、ケイ素含有化合物がSiH基を3個以上有する場合には、シリル化ポリオレフィンには、(ポリオレフィン鎖)-(ケイ素含有化合物鎖)-(ポリオレフィン鎖)の順に結合しているブロック構造において、更にケイ素含有化合物鎖からポリオレフィン鎖がグラフト的に結合したような構造が含まれ得ると考えられる。
またビニル基含有化合物が構造(4-5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2-3)、構造(2-4)である場合、シリル化ポリオレフィンは、具体的に例示すれば、前記式(6)、式(8)のような構造をとっているのではないかと考えられる。
またビニル基含有化合物が構造(4-5)をとり、ケイ素含有化合物が、式(2)においてm=0、n=0、Zが(-SiH(CH3)O-)6-Si(CH3)2O-Si(C6H5)2-である場合、式(7)のような形をとるのではないか考えられる。
またビニル基含有化合物が(Z)オレフィン・ポリエン共重合体であり、ケイ素含有化合物が構造(2-3)をとる場合、シリル化ポリオレフィンは、(ポリオレフィン鎖)に(ケイ素含有化合物鎖)がグラフトした、前記式(9)のような構造をとるのではないかと考えられる。
(ポリオレフィン鎖)-(ケイ素含有化合物鎖)-(ポリオレフィン鎖)のブロック共重合体の構造をとると推定されるような、例えば前記式(5)の構造をとると推定されるようなビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との組み合わせから得たシリル化ポリオレフィンが、ケイ素含有化合物鎖からグラフト鎖としてポリオレフィン鎖を有すると推測されるシリル化ポリオレフィンや、ポリオレフィン鎖がグラフト鎖としてケイ素含有化合物鎖を有すると推測されるシリル化ポリオレフィンよりも分子運動をしやすいと考えられる。ブロック共重合体の構造をとることにより、共重合体(A)や結晶性ポリオレフィン(B)への分散性に優れると考えられる。
なお、本発明においてはシリル化ポリオレフィンが誘導体の形をとっていてもよい。
シリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物(C)の配合量は、機械物性及びオイル透過防止性の点から、共重合体(A)100質量部に対して、10~50質量部、好ましくは10~40質量部である。
<架橋剤(E)>
本発明に用いる架橋剤としては、例えばフェノール樹脂系架橋剤、有機過酸化物が挙げられるが、組成物の、オイル透過防止性、更にはゴム弾性をはじめとする機械物性の点から、フェノール樹脂系架橋剤が好ましい。
フェノール樹脂系架橋剤(E)(本発明において架橋剤(E)とも称す)としては、レゾール樹脂でありアルキル置換フェノール又は非置換フェノールのアルカリ媒体中のアルデヒドでの縮合、好ましくはホルムアルデヒドでの縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造されることも好ましい。アルキル置換フェノールは1~10の炭素原子のアルキル基置換体が好ましい。更にはp-位において1~10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類又はフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂系硬化樹脂は、典型的には、熱架橋性樹脂であり、フェノール樹脂系架橋剤又はフェノール樹脂とも呼ばれる。
フェノール樹脂系硬化樹脂(フェノール樹脂系架橋剤)の例としては、下記一般式(IV)を挙げることができる。
(式中、Qは、-CH2-及び-CH2-O-CH2-から成る群から選ばれる二価の基であり、mは0又は1~20の正の整数であり、R'は有機基である)。
好ましくは、Qは、二価基-CH2-O-CH2-であり、mは0又は1~10の正の整数であり、R'は20未満の炭素原子を有する有機基である。より好ましくは、mは0又は1~5の正の整数であり、R'は4~12の炭素原子を有する有機基である。具体的にはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、ハロゲン化アルキルフェノール樹脂等が挙げられ、好ましくはハロゲン化アルキルフェノール樹脂であり、更に好ましくは、末端の水酸基を臭素化したものである。フェノール樹脂系硬化樹脂において、末端が臭素化されたものの一例を下記一般式(V)に示す。
(式中、nは0~10の整数、Rは炭素数1~15の飽和炭化水素基である。)
前記フェノール樹脂系硬化樹脂の製品例としては、タッキロール(登録商標)201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250-I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250-III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、PR-4507(群栄化学工業(株)社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社 製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen105E(Hoechst社製)、Vulkaresen130E(Hoechst社製)、Vulkaresol315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジン(登録商標)PR-22193(住友デュレズ(株)社製)、Symphorm-C-100(Anchor Chem.社製)、Symphorm-C-1001(Anchor Chem.社製)、タマノル(登録商標)531(荒川化学(株)社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(Schenectady Chem.社製)、CRR-0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055F(Schenectady Chem.社製、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM-0803(昭和ユニオン合成(株)社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられる。その中でも、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤が好ましく、タッキロール(登録商標)250-I、タッキロール(登録商標)250-III、Schenectady SP1055Fなどの臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂がより好ましく使用できる。
また、熱可塑性加硫ゴムのフェノール樹脂による架橋の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号及び米国特許第3,287,440号に記載され、これらの技術も本発明で用いることができる。
米国特許第4,311,628号には、フェノール系硬化性樹脂(phenolic curing resin)及び加硫活性剤(cure activator)からなるフェノール系加硫剤系(phenolic curative system)が開示されている。該系の基本成分は、アルカリ媒体中における置換フェノール(例えば、ハロゲン置換フェノール、C1-C2アルキル置換フェノール)又は非置換フェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合によるか、あるいは二官能性フェノールジアルコール類(好ましくは、パラ位がC5-C10アルキル基で置換されたジメチロールフェノール類)の縮合により製造されるフェノール樹脂系架橋剤である。アルキル置換フェノール樹脂系架橋剤のハロゲン化により製造されるハロゲン化されたアルキル置換フェノール樹脂系架橋剤が、特に適している。メチロールフェノール硬化性樹脂、ハロゲン供与体及び金属化合物からなるフェノール樹脂系架橋剤が特に推奨でき、その詳細は米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号各明細書に記載されている。非ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤は、ハロゲン供与体と同時に、好ましくはハロゲン化水素スカベンジャーとともに使用される。通常、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤、好ましくは、2~10質量%の臭素を含有している臭素化フェノール樹脂系架橋剤はハロゲン供与体を必要としないが、例えば酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素及び酸化亜鉛、好ましくは酸化亜鉛のような金属酸化物のごときハロゲン化水素スカベンジャーと同時に使用される。これら酸化亜鉛などのハロゲン化水素スカベンジャーは、フェノール樹脂系架橋剤100質量部に対して、通常1~20質量部用いられる。このようなスカベンジャーの存在はフェノール樹脂系架橋剤の架橋作用を促進するが、フェノール樹脂系架橋剤で容易に加硫されないゴムの場合には、ハロゲン供与体及び酸化亜鉛を共用することが望ましい。ハロゲン化フェノール系硬化性樹脂の製法及び酸化亜鉛を使用する加硫剤系におけるこれらの利用は米国特許第2,972,600号及び同第3,093,613号各明細書に記載されており、その開示は前記米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号各明細書の開示とともに参考として本明細書にとり入れるものとする。適当なハロゲン供与体の例としては、例えば、塩化第一錫、塩化第二鉄、又は塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン及びポリクロロブタジエン(ネオプレンゴム)のようなハロゲン供与性重合体が挙げられる。本明細書で使用されている「加硫促進剤」なる用語はフェノール樹脂系架橋剤の架橋効率を実質上増加させるあらゆる物質を意味し、そして金属酸化物及びハロゲン供与体を包含し、これらは単独で、又は組み合わせて使用される。フェノール系加硫剤系のより詳細に関しては、「Vulcanization and Vulcanizing Agents」(W. Hoffman, Palmerton Publishing Company)を参照されたい。適当なフェノール樹脂系架橋剤及び臭素化フェノール樹脂系架橋剤は商業的に入手することができ、例えばかかる架橋剤はSchenectady Chemicals, Inc.から商品名「SP-1045」、「CRJ-352」、「SP-1055F」及び「SP-1056」として購入されうる。同様の作用上等価のフェノール樹脂系架橋剤は、また他の供給者から得ることができる。
架橋剤(E)は、分解物の発生が少ないため、フォギング防止の観点から好適な加硫剤である。架橋剤(E)は、ゴムの本質的に完全な加硫を達成させるに充分な量で使用される。
<その他の成分>
本発明の組成物には、エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン(B)、シリル化ポリオレフィンもしくはシリル化ポリオレフィンを含む反応生成物(C)、及び架橋剤(E)の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、軟化剤(D)、充填剤、架橋助剤、臭素化ビスフェノール、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、トリフェニルホスフェート、ホスホン酸アミド及び赤燐等のような難燃剤、三酸化アンチモン及びアンチモン酸ナトリウム等のような難燃助剤、燐酸エステル及び亜燐酸エステル等のような熱安定剤、ヒンダードフェノール等のような酸化防止剤、耐熱剤、耐候剤、光安定剤、離型剤、流動改質剤、着色剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、結晶核剤及び発泡剤等を必要に応じてその有効発現量配合してもよい。
これら添加剤は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
軟化剤(D)としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。軟化剤(D)としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸又は脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジン又はその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。
これら軟化剤(D)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、柔軟性及びオイル透過防止性の点から、共重合体(A)由来の成分の合計100質量部に対して、好ましくは90~150質量部、更に好ましくは100~140質量部の量で用いられる。
架橋助剤としては、2価金属の酸化物又は水酸化物、例えばZnO、MgO、CaO、Mg(OH)2、Ca(OH)2、又はハイドロタルサイトMg6Al2(OH)16CO3・nH2Oが用いられる。これらの受酸剤は、共重合体(A)100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.1~5質量部の割合で用いられる。
充填剤としては、無機充填剤と、有機充填剤とを任意に用いることができるが、特に無機充填剤が好ましく用いられる。本用途に用いられる無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アスベスト、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、シラスバルーン、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等)、ケイソウ土、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム等)、金属の硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等)、金属の硫化物(二硫化モリブデン等)、及び各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、雲母粉、ガラスフレーク、ガラス球、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が挙げられる。これらの充填剤は単独又は2種以上の併用いずれでもよい。
また、本明細書において配合量を記載している添加剤以外の添加剤の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、共重合体(A)及び結晶性ポリオレフィン(B)の合計100質量部に対して、それぞれ通常5質量部以下、好ましくは0.01~5質量部、合計で、通常10質量部以下、好ましくは0.1~5質量部である。
[組成物の製造方法]
組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えばエチレン/α-オレフィン比が40/60~90/10(モル比)である1種以上のエチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、融点(Tm)が100℃以上である1種以上の結晶性ポリオレフィン(B)とを架橋剤の存在下に動的熱処理することを含む方法により製造すればよく、より具体的には例えば、以下の方法(1)及び方法(2)が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
[方法(1)]
未架橋の共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン(B)の少なくとも一部、架橋剤(E)、必要に応じて、軟化剤(D)、架橋助剤を動的熱処理することにより製造した組成物前駆体に、シリル化ポリオレフィン(C)、必要に応じて、残りの結晶性ポリオレフィン(B)、その他の成分を通常の条件で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法。
[方法(2)]
シリル化ポリオレフィン(C)、未架橋の共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン(B)の少なくとも一部、架橋剤(E)、必要に応じて、軟化剤(D)、架橋助剤を動的熱処理することにより製造した組成物前駆体に、必要に応じて、残りの結晶性ポリオレフィン(B)、その他の成分を通常の条件で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法。
方法(1)、(2)のいずれであっても、本発明の組成物を製造するに当たっては、低圧縮永久歪性及びオイル透過防止性の点から、フェノール樹脂系架橋剤(E)を、共重合体(A)100質量部に対して、通常0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部使用することが望ましい。
[組成物の物性]
得られた組成物の物性には特に制限はないが、高温下の形状回復性を維持するために、実施例の項で述べる方法で測定した圧縮永久歪(70℃×22h、25%圧縮)が50%以下であることが好ましい。
[成形体]
本発明の成形体は、前記の重合体組成物を、押出成形法、射出成形法、溶液流延法、インフレーション成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、注型成形法等といった公知の成形方法により成形することにより得られる。特に加熱する過程を有する成形法が好ましく、溶融成形法(押出成形法、射出成形法、インフレーション成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法等)により成形することが特に好ましい。
また加熱せずに成形した後、成形体をアニール等してもよい。溶融成形法の場合、通常は樹脂の融点以上であって成形に適した流動性を持つ程度の温度まで加熱して溶融させて成形することが通常である。アニール等の熱処理の場合は、成形体が溶融しない程度の温度まで加熱することが通常である。
本発明の成形体としては、自動車に用いるオイルと接触する部分に用いられる自動車部品が特に適しており、エンジン周辺の部材、つまり自動車のフロントのボンネット内の部品に用いられるものが好ましい。それらの部品の代表的なものとしては、エアクリーナーシール、マウントラバー、ホールプラグ、グロメット等のシール部材;エアクリーナーホース、ラジエーターホース等のホース;R&Pブーツ、ステアリングブーツ、ダストカバー等のブーツが挙げられる。
次に本発明について実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[測定方法]
[ビニル基含有化合物]
[分子量の測定方法]
数平均分子量Mn、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC-150を用い以下のようにして測定した。すなわち、分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmのものを使用した。カラム温度は140℃とし、移動相にはオルトジクロロベンゼン(和光純薬社製)及び酸化防止剤としてBHT(武田薬品社製)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとした。検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、常法に従ってポリエチレン換算の値に換算した。
なお、以下の合成例にて、原料ポリマーのモル数はすべてMnに基づいた値で表している。
[ビニル基含有化合物、シリル化ポリオレフィン]
[NMR解析による収率、転化率、異性化率、末端不飽和率の測定・計算方法]
シリル化ポリオレフィンの収率、転化率、異性化率、末端不飽和率は1H-NMRによって決定される。収率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対して得られたシリル化ポリオレフィンのモル数の割合、転化率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対する同消費モル数の割合、異性化率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対して生成したビニレン体のモル数の割合、末端不飽和率は原料であるビニル基含有化合物の主鎖末端ビニル基と末端メチル基の合計に対する主鎖末端ビニル基の割合と定義される。なお、末端不飽和率及び炭素千個あたりのビニル基数は一般的には原料であるビニル基含有化合物に対して適用するが、ヒドロシリル化が十分でない場合等には未反応原料の残存量の指標としてシリル化ポリオレフィンにも適用することがある。
例えば、エチレンのみからなる主鎖末端ビニル基含有化合物をトリエトキシシランでヒドロシリル化して得られたシリル化ポリオレフィンのエトキシ基メチレンの6プロトン分のピーク(C)が3.8ppm、異性化したビニレン基の2プロトン分のピーク(D)が5.4ppmに観測される。ヒドロシリル化が十分でない場合は、未反応ビニル基の2プロトン分のピーク(E)が4.8~5.1ppmに、1プロトン分のピーク(F)が5.6~5.8ppmに観測される。原料のビニル基含有化合物については、2プロトン分の主鎖メチレン(G)が1.0~1.5ppmに観測され、主鎖末端にビニル基を持たないものは3プロトン分の末端メチル(H)が0.8ppmに観測される。更に二重結合に隣接した炭素上の2プロトン分のピーク(I)が1.9ppmに観測される。
各ピーク(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)及び(I)のピーク面積を各々SC、SD、SE、SF、SG、SH及びSIとすれば、収率(YLD(%))、転化率(CVS(%))、異性化率(ISO(%))、末端不飽和率(VE(%))は下記式にて算出される。
YLD(%)=(SC/3)/(SC/3+SD+SE)×100
CVS(%)={1-SE/(SC/3+SD+SE)}×100
ISO(%)=SD/(SC/3+SD+SE)×100
VE(%)=SE/(SE/2+SH/3)×100
[シリル化ポリオレフィン]
[融点の測定方法]
融点(Tm)はDSCを用い測定して得られたピークトップ温度を採用した。装置は島津製作所製DSC-60Aを使用した。対照セルはアルミナを使用し、窒素流量は50ml/分の設定で行った。また10℃/分で30℃から300℃までの昇温条件で測定した。この昇温測定の前に、一旦、樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、20℃/分で常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが好ましい。
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体]
[各構造単位のモル量及び質量]
エチレン[A]に由来する構造単位、α-オレフィン[B]に由来する構造単位及び非共役ポリエン[C]に由来する構造単位のモル量及び質量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
[ムーニー粘度]
ムーニー粘度ML(1+4)(125℃)は、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
[ヨウ素価]
ヨウ素価は、JIS K0070に準じて測定した。
[熱可塑性エラストマー組成物及び成形体の物性]
下記実施例及び比較例における熱可塑性エラストマー組成物及び成形体の物性の評価方法は次の通りである。
[ショアーA硬度]
100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ3mmのプレスシートを作製した。該シートを用いて、JIS K6253に準拠して、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
[圧縮永久歪(CS)]
100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ2mmのプレスシートを作製した。
JIS K6250に準拠して、上述のようにして作製された厚さ2mmのプレスシートを積層し、JIS K6262に準拠して圧縮永久ひずみ試験を行った。
試験条件は、厚み12mm(厚み3mm片の4枚重ね)の積層されたシートを用い、25%圧縮、70℃、22時間の条件で圧縮を行い、歪み除去(圧縮)後30分経過後に測定した。
[引張特性]
JIS K6301の方法に従って測定した。
なお、試験片は、厚さ2mmのプレスシートから3号ダンベル片を打ち抜いて用いた。
測定温度:23℃
M100:100%伸び時の応力(MPa)
TB:引張破断強度(MPa)
EB:引張破断点伸び(%)
[耐油試験:重量変化率]
試験油として流動パラフィン(軟質)(ナカライテスク社製コード番号:26132-35)を使用し、2mmプレスシートを80℃×24時間浸漬した。その後サンプル表面をふき取り、n数=2にて重量変化率を測定した。
[オイル透過試験]
内径50mm、深さ50mmのアルミカップにエンジンオイル(ストロングセーブOW-20)を3g充填した。アルミカップ上部を厚さ2mmのプレスシートで覆い、はさみねじでアルミカップとプレスシートを固定した。前記のアルミカップを逆さにし、130℃×24時間オーブンにて加熱した。オーブンから取り出し直後に目視にてプレスシート表面のオイルのにじみ状態を観察した。
判定基準:○: オイル透過部分が試料の浸漬面の反対面の10%以下である
×: オイル透過部分が試料の浸漬面の反対面の60%以上である
[合成例1]エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体(EPDM)の合成
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて連続的に、エチレン、α-オレフィンとしてプロピレン、非共役ポリエンとして5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)からなる三元共重合体の重合反応を90℃にて行った。
重合溶媒としてはヘキサン(フィード量74L/h)を用いて、連続的に、エチレンフィード量が6.6Kg/h、プロピレンフィード量が3.2Kg/h、ENBフィード量が0.56Kg/h及び水素フィード量が10.9NL/hとなるように、各成分を重合器に連続供給した。
重合圧力を1.8MPa、重合温度を90℃に保ちながら、主触媒として、[N-(1,1-ジメチルエチル)-1,1-ジメチル-1-[(1,2,3,3A,8A-η)-1,5,6,7-テトラヒドロ-2-メチル-S-インダセン-1-イル]シランアミネート(2-)-κN][(1,2,3,4-η)-1,3-ペンタジエン]-チタニウムを用いて、主触媒をフィード量0.015mmol/hとなるよう連続的に供給した。また、共触媒として(C6H5)3CB(C6F5)4をフィード量0.075mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)をフィード量10mmol/hとなるように、それぞれ連続的に供給した。
このようにして、エチレン、プロピレン及びENBからなるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、9.1質量%の溶液状態で得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
以上の操作によって、エチレン、プロピレン及びENBから形成されるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が毎時5.3Kgの速度で得られた。
[調製例1]
実施例で用いたシリル化ポリオレフィンは、以下のように調製した。
[合成例2-1]
(片末端にビニル基を有するポリエチレンの合成)
充分に乾燥、窒素置換した100mlの反応器に、3-クミル-5-メチルサリチルアルデヒド3.89g(15.0mmol)、トルエン30ml、エチルアミン2.54g(40%水溶液、22.5mmol)を仕込み、室温で5時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、黄色のオイル状の化合物(L-1)を得た。
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、前記で得た化合物(L-1)1.12g(4.00mmol)とジエチルエーテル25mlを仕込み、-78℃に冷却し攪拌した。これにn-ブチルリチウム2.58ml(n-ヘキサン溶液、1.55M、4.00mmol)を5分かけて滴下し、そのままの温度で2時間攪拌した後、ゆっくりと室温まで昇温し、室温で更に3時間攪拌してリチウム塩を調製した。この溶液を、-78℃に冷却したZrCl4(THF)2錯体0.76g(2.00mol)を含むテトラヒドロフラン溶液25mlに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。更に室温で12時間攪拌した後、反応液を溶媒留去した。得られた固体を塩化メチレン50mlに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をn-ヘキサンで再沈し、減圧乾燥することにより黄色粉末の化合物(B-1)を得た。
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm2Gに加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで化合物B-1のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥した。
1H-NMR測定により、得られた重合物はホモポリエチレンで、なおかつ片末端のみ二重結合を含有することが明らかであった。この片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)(単体)の物性は以下の通りであった。
融点(Tm)123℃
Mw=4770、Mw/Mn=2.25(GPC)
末端不飽和率 97%
[合成例2-2]
(白金触媒組成物(C-1)の調製)
マグネットスターラーチップを入れた50mlサンプル管中、塩化白金(II)0.50gを、下記構造のヒドロシランA(HS(A)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番:XF40-C2195)(10ml)中に懸濁し、窒素気流下、室温で攪拌した。190時間攪拌した後、シリンジにて反応液を約0.4ml採取し、0.45μmPTFEフィルターを用いて濾過して10mlサンプル管中に濾液を採取し、白金濃度が3.8質量%の白金触媒組成物(C-1)を得た。
ヒドロシランA(HS(A)):
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)18-Si(CH3)2H
[合成例2-3]
(末端ビニル基を有するポリエチレンのヒドロシランへの導入-1)
300mlの2ツ口フラスコに、[合成例2-1]で得た片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)25.1g(11.8mmol)を装入し、窒素雰囲気下、ヒドロシランA(HS(A))8.7g(5.9mmol;Si-H基として11.8mmol相当)と、[合成例2-2]で調製した白金触媒組成物(C-1)をヒドロシランA(HS(A))で200倍希釈したもの(C-1a)150μl(Pt換算で1.4×10-6mmol)を装入した。予め内温130℃に昇温しておいた油浴中に、前記反応器をセットし、攪拌した。約3分後ポリマーは融解した。次いで6時間後に冷却し、メタノール約200mlを加え、300mlビーカーに内容物を取り出し2時間攪拌した。その後、固体をろ取しメタノールで洗浄し、60℃、2hPa以下の減圧下で乾燥させることにより、白色固体のシリル化ポリオレフィン(A-1)33.1gを得た。NMR解析の結果、得られたシリル化ポリオレフィン(A-1)は収率98%、オレフィン転化率100%、異性化率2%であった。メルトフローレートは測定上限値以上(メルトフローレート>100g/10min)であり、分子式より計算される(A-1)中のポリオルガノシロキサン含量は26質量%であった。
[調製例2]
実施例で用いたシリル化ポリオレフィン、比較例1で用いた三菱ケミカル(株)製のメタブレンA3000はポリプロピレンとマスターバッチ(MB)化を行い使用した。
・シリル化ポリオレフィンMB
合成例2-3で得られたシリル化ポリオレフィン(A-1)30質量部とメルトフローレート(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が10g/10分、密度が0.91g/cm3のプロピレン単独重合体(PP-2)70質量部を押出機(品番 KTX-30、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1:50℃、C2:90℃、C3:100℃、C4:120℃、C5:180℃、C6:200℃、C7~C14:200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:500rpm、押出量:10kg/h)で溶融混練してペレットを得た。
・メタブレンA3000MB
三菱ケミカル(株)製のメタブレンA3000(商品名)(アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン混合物)20質量部と、メルトフローレート(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が10g/10分、密度が0.91g/cm3のプロピレン単独重合体(PP-2)80質量部を押出機(品番 KTX-30、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1:50℃、C2:90℃、C3:100℃、C4:120℃、C5:180℃、C6:200℃、C7~C14:200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:500rpm、押出量:10kg/h)で溶融混練してペレットを得た。
[実施例1]熱可塑性エラストマー組成物及び成形体
合成例1で得られたエチレン/プロピレン比が63/37(モル比)、ヨウ素価が13g/100g、ムーニー粘度[ML(1+4)(125℃)]が116のエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)100質量部、メルトフローレート(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が3g/10分、密度が0.91g/cm3、融点が165℃のプロピレン単独重合体(PP-1)16質量部、メルトフローレート(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が10g/10分、密度が0.91g/cm3、融点が162℃のプロピレン単独重合体(PP-2)20質量部、軟化剤(商品名:ダイアナプロセスPW-100、パラフィンオイル、出光興産社製)130質量部、調製例2で得られたシリル化ポリオレフィンMB37質量部(プロピレン単独重合体(PP-2)26質量部を含有)、フェノール樹脂系架橋剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(商品名:SP-1055F、Schenectady社製)8質量部、酸化亜鉛(酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製)0.5質量部及びカーボンブラックマスターバッチ(商品名:PEONY BLACK F32387MM、DIC(株)製)3質量部を押出機(品番 KTX-30、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1:50℃、C2:90℃、C3:100℃、C4:120℃、C5:180℃、C6:200℃、C7~C14:200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:600rpm、押出量:40kg/h)にて、得られた混合物の動的熱処理を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。配合及び評価結果を表1に示す。
[実施例2及び3]
成分の配合量を表1に示すように変える以外は実施例1と同様に処理した。配合及び評価結果を表1に示す。
[比較例1]
成分の配合量を表1に示すように変え、シリル化ポリオレフィンMB37質量部の代わりに、メタブレンA3000MB55質量部を用いる以外は実施例1と同様に処理した。配合及び評価結果を表1に示す。
[比較例2]
成分の配合量を表1に示すように変え、シリル化ポリオレフィンMB37質量部の代わりに、タルク(商品名:ハイ・フィラー#5000PJ、松村産業社製)11質量部を用いる以外は実施例1と同様に処理した。配合及び評価結果を表1に示す。
[比較例3及び4]
成分の配合量を表1に示すように変える以外は実施例1と同様に処理した。配合及び評価結果を表1に示す。
表1から、シリル化ポリオレフィンをクレームの規定以上の量添加した実施例1,2はシリル化ポリオレフィンを添加しない比較例4と比べ、A硬度、機械物性、高温でのゴム弾性、重量変化率は同等で、オイル透過試験の結果が優れていることが分かる。また、実施例3で、硬度が高い配合とした場合にも、これに対し、シリル化ポリオレフィンの代わりにメタブレンA3000を添加した系(比較例1)や、シリル化ポリオレフィンの代わりにタルクを添加した系(比較例2)ではオイル透過試験の結果が劣り、オイルが透過しないような物質を添加した場合でも、オイル透過防止性が悪いことがわかる。このような効果を奏する理由は定かではないが、本発明においてはシリル化ポリオレフィンが、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体及び結晶性ポリオレフィンによく分散していると考えられ、このことがオイルの接触面と反対側にまではオイルを浸透させない、という性質に繋がっていると考えられる。
更に実施例においては、耐油試験の重量変化率の値からはオイルをある程度吸収していると推察され、オイルとの接触面側にオイルが残ること、接触面側からオイルが垂れることなどを防止できると見ることもできる。またある程度オイルを吸収することは、成形体の柔軟性の観点からも好ましい性質と考えられる。