JP7100451B2 - 麺類の食感改良剤の製造方法、食感が改良された麺類の製造方法及び麺類の食感改良方法 - Google Patents
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麺類の食感の改良を目的とし、従来、加工澱粉(特許文献1)や増粘多糖類(特許文献2及び特許文献3)などの食品添加物やバイタルグルテン(特許文献4及び特許文献5)を食感改良剤として使用できることが知られている。
しかし、昨今の天然物志向や食品添加物使用量低減の社会的要請などから、従来用いられてきた加工澱粉や増粘多糖類等の添加物を使用しないチルド調理麺の食感改良剤や食感が改良されたチルド調理麺の製造方法、チルド調理麺の食感改良方法が求められている。
一方、各種食品原料として野菜ペーストが使用されている。これまでに野菜ペーストの製造方法は各種知られており、例えば特許文献6では野菜原料を過熱水蒸気処理し、ペースト化したものを酵素処理することにより、色合いや柔らかさを維持し、味や風味、食感の良好な野菜ペーストの製造方法を提供することが開示されている。また、特許文献7ではセルラーゼやプロテアーゼ等の細胞成分の分解酵素で酵素処理した野菜ペーストを含む即溶性を有するフリーズドライ製品を開示している。しかしながら、野菜ペーストを食品に使用する場合、その目的は主に素材としての使用や色づけ、風味付けであり、野菜ペーストをチルド調理麺の食感改良を目的として使用した例はない。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]野菜原料を過熱水蒸気により加熱処理する工程、前記加熱処理した野菜原料をペースト化する工程、及び前記ペーストに細胞成分の分解酵素を少なくとも1種添加し、20℃未満で反応させる工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の食感改良剤の製造方法。
[2]過熱水蒸気温度が100℃を超え、且つ200℃未満である、前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記細胞成分の分解酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼからなる群から選択される、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記[1]~[3]の何れか1項に記載の製造方法に従って製造した麺類の食感改良剤を、穀粉100質量部に対して0.9~12質量部使用して製麺する工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の製造方法。
[5]前記[1]~[3]の何れか1項に記載の製造方法に従って製造した麺類の食感改良剤を、穀粉100質量部に対して0.9~12質量部使用して製麺する工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の食感改良方法。
[6]野菜原料を過熱水蒸気により加熱処理してペースト化し、前記ペーストに細胞成分の分解酵素を添加し、20℃未満の温度で反応させることにより得られる、麺類(冷凍調理麺を除く)の食感改良剤。
[7]前記[6]に記載の麺類の食感改良剤を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)。
過熱水蒸気温度は、好ましくは100℃超200℃未満であり、より好ましくは、102℃~180℃であり、さらに好ましくは105℃~160℃であり、さらにより好ましく120℃~150℃である。
100℃以下では湿り蒸気であるため、過熱水蒸気処理の効果が得られない。また200℃以上では、野菜片表面のコゲや乾燥が生じる傾向にある。
過熱水蒸気処理時間は、処理する野菜片の大きさや形状により適宜設定することができる。例えば、皮を剥き、2~3等分にカットしたニンジンであれば100~170℃で10分~1時間処理する事が出来る。
過熱水蒸気処理の為の装置としては、バッチ式、コンベア式等何れの型式の過熱水蒸気噴射装置を使用してもよい。
好ましくは、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上を使用することが出来、より好ましくはセルラーゼ及びアミラーゼから選ばれる1種以上である。用いる細胞成分の分解酵素の種類及び量は、野菜の種別によって最適な組合せを適宜選択することができる。例えばセルラーゼ酵素の場合は野菜ペーストの質量に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~0.2質量%、ヘミセルラーゼ酵素の場合は野菜ペーストの質量に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~0.2質量%、アミラーゼ酵素の場合は野菜ペーストの質量に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~0.2質量%、プロテアーゼ酵素の場合は野菜ペーストの質量に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~0.2質量%、リパーゼ酵素の場合は野菜ペーストの質量に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~0.2%添加する。具体的には、ニンジンであれば、そのペーストに対してセルラーゼAアマノ3(天野エンザイム社製、セルラーゼ)及びビオザイムA(天野エンザイム社製、αアミラーゼ)を選択し、各々0.01~0.8質量%添加することができる。
[製造例1 食感改良剤の製造]
(1)ニンジンを洗浄し、皮を剥き、2~3等分にカットする。
(2)過熱水蒸気コンベヤーオーブン(東研工業社製)を用いて、ニンジンを過熱水蒸気処理(135℃、0.5時間)した。
(3)冷却後、カッターミキサー(AC-50S、愛工舎製作所製)を用いて1500rpmで2分30秒間処理してペースト化した。
(4)ニンジンペースト100質量部に対してセルラーゼAアマノ3(天野エンザイム社製)を0.04質量部及びビオザイムA(天野エンザイム社製)を0.02質量部添加し、十分に混合攪拌した。
(5)混合物を5℃で17時間酵素反応させた。
(6)反応物を樹脂製の包装袋に1kgずつ充填して密封した。
(7)密封した包装袋を90~100℃で10~30分加熱し、殺菌・酵素失活を行い、食感改良剤Aを得た。
(2)デュラムセモリナ粉100質量部と(1)で作った仕込み水の全量をミキサーに投入した。
(3)低速3分間、高速10分間混合し、そぼろ状生地を得た。
(4)(3)で作ったそぼろ状生地を製麺機に投入して粗複合し、粗麺帯を得、さらに複合、圧延を行い厚さ1.45mmの麺帯に調整した。
(5)得られた麺帯を#5の切刃にて切出して麺線とし、210mmの長さに切断し、生パスタを得た。
(6)得られた生パスタを沸騰水で3分茹で、流水で30秒冷却し、ついで氷水で2分30秒冷却し茹でパスタを製造した。
(7)製造した茹でパスタ200gにソースを100g上掛けし、調理パスタを得た。
調理パスタを5℃で24時間冷蔵保存後、電子レンジで2分30秒加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、下記表1に示す官能評価基準で評価した。
なお、製造例2において食感改良剤を使用せずに生パスタを調製し茹で調理したのち冷蔵し、5℃で24時間冷蔵保存後に加熱調理した直後の食感を評点3点とした。
表2記載の酵素反応条件とした以外は、製造例1に従って食感改良剤を製造し、得られた食感改良剤を使用して製造例2に従ってチルド調理パスタを製造した。なお、実施例2の食感改良剤は、製造例1に従って製造した食感改良剤Aに相当する。得られた調理パスタを5℃で24時間冷蔵保管し、電子レンジで2分30秒間加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、上記表1に示す官能評価基準で評価した。
なお、55℃で酵素反応を行った場合、ペースト化ニンジンの性状変化は2時間でプラトーに達し、それ以上反応させても変化しない。この反応条件(55℃、2時間、比較例3)を基準とし、セルラーゼの各反応温度における相対活性から各温度における反応がプラトーとなる反応時間を設定した。なお、比較例4(反応温度70℃)ではビオザイムA(αアミラーゼ主成分、プロテアーゼ副成分)が熱失活するため、酵素反応が不十分な例として示している。
表3記載の過熱水蒸気処理温度とした以外は製造例1に従って食感改良剤を製造し、得られた食感改良剤を使用して製造例2に従って調理パスタを製造した。得られた調理パスタを5℃で24時間冷蔵保管し、電子レンジで2分30秒間加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、上記表1に示す官能評価基準で評価した。
なお、比較例5では、過熱水蒸気処理を行わなかった。また比較例6の100℃の蒸気は湿り蒸気であって過熱水蒸気(乾き蒸気)ではない。
過熱水蒸気処理温度が100℃を超え、200℃未満である実施例2、6~9はいずれも生パスタを調理したものと同様な良好な食感を示し、十分な食感改良効果が示された。過熱水蒸気処理を行わなかった比較例5および6、過熱水蒸気処理温度が200℃以上である比較例7では食感改善効果は得られず低い評価であった。特に比較例7ではカットニンジンの乾燥が進行し過ぎたことが評価の低い原因であると考えられた。
次に食感改良剤の配合量を評価した。
デュラムセモリナ粉(穀粉)100質量部に対する食感改良剤配合量を表4に示すように変更し、食感改良剤と水の合計が33質量部になるように水の量を調整した以外は製造例2に従って調理パスタを製造した(製造例1で得た食感改良剤を使用)。得られた調理パスタを5℃で24時間冷蔵保管し、電子レンジで2分30秒間加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、上記表1に示す官能評価基準で評価した。
次に、食感改良剤の原料野菜としてニンジン以外の野菜を使用した場合の効果を評価した。
表8に示すようにニンジンの代わりにカボチャまたはジャガイモを使用した以外は製造例1の方法に従って食感改良剤を製造し、得られた食感改良剤を使用して製造例2の方法にて調理パスタを製造した。得られた調理パスタを5℃で24時間冷蔵保管し、電子レンジで2分30秒間加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、上記表1に示す官能評価基準で評価した。なお、製造例2において食感改良剤を使用せずに生パスタを調製し茹で調理し冷蔵保管した後、加熱調理した直後の食感を評点3点とした。結果を表5に示す。
実施例2のニンジンを原料とした食感改良剤を使った場合が最も良好な食感改良効果を示したが、カボチャやジャガイモのように他の原料野菜から調製した食感改良剤でも良好な評価となり、野菜の種類に係わらず食感改良効果を示すことが示された。
続いて調理パスタ以外の調理麺での食感改良剤の適性を評価した。
(2)中力小麦粉100質量部と(1)で作った仕込み水をミキサーに投入し、5分間混合しそぼろ状生地とした。
(3)(2)で作ったそぼろ状生地を製麺機に投入し成型して粗麺帯とし、さらに複合、圧延し厚さ2.5mmの麺帯に調整した。
(4)得られた麺帯を#10の切刃にて麺線とし、250mmの長さに切断し生うどんを得た。
(5)沸騰水(pHを5.5~6.0に調整)で20分茹で、流水で30秒冷却し、次いで氷水で2分30秒冷却し、茹でうどん(調理うどん)を得た。
(2)そば粉40質量部と強力小麦粉60質量部を混合した。
(3)(2)で作った混合粉と(1)で作った仕込み水をミキサーに投入し、5分間混合しそぼろ状生地とした。
(4)(3)で作ったそぼろ状生地を製麺機に投入し成型して粗麺帯とし、さらに複合、圧延し厚さ1.4mmの麺帯に調整した。
(5)得られた麺帯を#20の切刃にて麺線とし、250mmの長さに切断し生そばを得た。
(6)沸騰水中で2.5分茹で、流水で30秒冷却し、次いで氷水で2分30秒冷却し、茹でそば(調理そば)を得た。
(2)中華麺用小麦粉100質量部と(1)で作った仕込み水をミキサーに投入し、5分間混合しそぼろとした。
(3)(2)で作ったそぼろを製麺機に投入し成型して粗麺帯とし、さらに複合、圧延し厚さ1.5mmの麺帯に調整した。
(4)得られた麺帯を#20の切刃にて麺線とし、250mmの長さに切断し生中華麺を得た。
(5)沸騰水中で2分茹で、流水で30秒冷却し、次いで氷水で2分30秒冷却し、茹で中華麺(調理中華麺)を得た。
各種調理麺を冷蔵庫で24時間保管した後、調理麺100gに各種めんつゆを300g上掛けし、電子レンジで2分30秒間加熱したものの食感を熟練のパネラー10名により、表1に示す官能評価基準で評価した。結果を表6に記す。なお、各麺類についてそれぞれ食感改良剤を使用せずに調製し、茹で調理して冷蔵保管した後、めんつゆを上掛けして加熱調理した直後の食感を評点3点とした。
うどんを用いてLL麺での食感改良剤の適性を評価した。
A.LL半生うどん
(1)麺線を500mmに切断した以外は試験例5のA.調理うどんの製造方法(1)~(4)と同様の方法で生うどんを得た。
(2)500mmに切断した生うどんを等分になるように竿掛けし、温度30℃、相対湿度80%で4時間調湿乾燥した後、半分に切断して水分含量24%の半生うどんを得た。
(3)半生うどん100gを脱酸素剤と共に脱気包装してLL半生うどんを得た。
(1)試験例5のA.調理うどんの製造方法(1)~(4)に従って生うどんを得た。
(2)250mmに切断した生うどんを沸騰水中20分茹で、流水で30秒冷却し、次いで、pH4.5の緩衝乳酸溶液に60秒間浸漬し、水切りの後、密封包装してLL茹でうどんを得た。
各LL麺を3ヶ月間室温で保存した後、LL半生うどんは20分間、LL茹でうどんは1分30秒間沸騰湯浴中で茹で、湯きり後、めんつゆを300g上掛けし、熟練のパネラー10名により、表1に示す官能評価基準で食感を評価した。結果を表7に示す。なお、各LL麺についてそれぞれ食感改良剤を使用せずにLLうどんを調製し、同様に保存の後茹で調理してめんつゆを上掛けしたものの食感を評点3点とした。
Claims (3)
- 野菜原料を過熱水蒸気により加熱処理する工程、
前記加熱処理した野菜原料をペースト化する工程、及び
前記ペーストに細胞成分の分解酵素を添加し、20℃未満で反応させる工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の食感改良剤の製造方法であって、
前記過熱水蒸気の温度が102℃~180℃であり、
前記細胞成分の分解酵素が、セルラーゼAアマノ3(商標)及びビオザイムA(商標)である、前記製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法に従って製造した麺類の食感改良剤を、穀粉100質量部に対して0.9~12質量部使用して製麺する工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法に従って製造した麺類の食感改良剤を、穀粉100質量部に対して0.9~12質量部使用して製麺する工程を含む、麺類(冷凍調理麺を除く)の食感改良方法
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