JP7100245B2 - エンドミル - Google Patents

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Description

本発明は、エンドミルに関する。
金型加工において、深い立壁(90°の壁)を切削加工する際に、刃長の長いエンドミルを用いると、エンドミルの剛性が不足して加工精度が低下する。このため、立壁の加工には、刃長の短いエンドミルを用いて軸方向へ段階的に移動しながら軸心と直角方向へ切削加工を用い、何段も繋ぎ合わせて切削加工する等高線加工が提案されている(例えば特許文献1)。
特開2000-334615号公報
立壁の等高線加工では、切削時の振動によって加工精度が低下し易い。そのため、高精度な仕上げ面品位を得るためには、何回もゼロカットを繰り返す必要が生じ、結果的に加工コストが高くなってしまう。また、深さ方向の切り込み量を小さくした場合には、エンドミルを軸方向に何度も移動させながら加工するため、加工時間が長くなり、やはり加工コストが高くなってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、等高線加工に用いるエンドミルであって、仕上げ加工におけるゼロカットを低減でき、かつ、加工精度を高めることができるエンドミルの提供を目的とする。
本発明の一態様のエンドミルは、中心軸に沿って延びる円柱形状の軸部と、前記軸部の先端側に位置する刃部と、を備え、前記刃部には、前記軸部よりも大きい外径寸法の8つの外周刃が周方向に沿って設けられ、前記外周刃は、前記中心軸まわりに螺旋状に延びるねじれ刃であり、8つの前記外周刃は、等リードであり、前記外周刃は、2段の逃げ面を有し、前記2段の逃げ面のうち前記外周刃の刃先側に位置する1段目の逃げ面は、逃げ角が4°±1°であり、幅が0.03±0.01mmであり、2段目の逃げ面の逃げ角は1段目の逃げ面の逃げ角よりも大きく、8つの前記外周刃のうち1つの外周刃に着目し、当該外周刃の軸方向に沿う刃長をL、当該外周刃のねじれ角をθ、当該外周刃の下端において当該外周刃と当該外周刃の工具回転方向後方に隣接する他の前記外周刃との周方向距離をaとした時、以下の式で表されるnが、8つの外周刃について全て略1であり、前記ねじれ角が、35°以上40°以下である、エンドミル。
n=(L×tanθ)/a
上述の式で表されるnは、エンドミルによる被削材の切削中に被削材に常に接触する外周刃の数を表す。上述の構成によれば、外周刃の上端が、工具回転方向後方に隣接する他の外周刃の下端と周方向の位置が略一致するため、切削加工中に、常に略1つの外周刃が被削材に接触することとなる(同時接触刃数が常に略1)。エンドミルによる被削材の切削中に、同時接触刃数が増減すると、エンドミルが被削材から受ける切削抵抗が増減する。これにより、エンドミルが振動して加工精度が低下するという問題がある。また、同時接触刃数が常に2以上の自然数である場合であっても、同時接触刃数が常に略1である場合と比較して、加工精度が低下する。上述の構成によれば、同時接触刃数を常に略1とすることで、加工面の加工精度を高めることができる。結果的に、仕上げ加工におけるゼロカットを低減することができる。
また、上述の構成を満たす範囲で、外周刃の刃長を軸方向に長く確保することができ、等高線加工を行う際の1ステップでより広範囲を加工でき、結果的に加工コストを低減できる。
加えて、上述の構成によれば、8つの外周刃が設けられる。同時接触刃数を常に略1としつつ、外周刃の数を増加させることで、被削材に接触する外周刃が切り替わる際の切削抵抗の増減幅を抑制できる。外周刃を8つ設けることで、切削抵抗の増減幅をして、切削中のエンドミルの振動を抑制し、結果的に加工精度を高めることができる。
また、上述のエンドミルにおいて、前記nが、0.9以上、1.1以下である、構成としてもよい。
上述したように、同時接触刃数が、常に略1である場合(すなわちn≒1)に、加工面の加工精度を高めることができる。一方で、nが1.1を超える場合、又はnが0.9未満の場合、加工中のエンドミルの振動が加工精度に影響を与えて、十分な加工精度の加工面を形成することが困難となる。すなわち、上述の構成によれば、加工面の加工精度を十分に高めることができる。更に好ましくは、nが、0.95以上、1.05以下である。
また、上述のエンドミルにおいて、前記外周刃の外径寸法Dが、4mm以上である、構成としてもよい。
外周刃の外径寸法が小さくなると8枚刃を形成することが困難となる。そのため、8枚刃を前提としている本発明のエンドミルは、外周刃の外形寸法は4mm以上であることが好ましい。更には、外周刃の外形寸法は5mm以上が好ましい。また、外形寸法が大きくなり過ぎるとソリッドエンドミルとして製造が困難となる。そのため、外周刃の外形寸法は30mm以下が好ましい。
上述のエンドミルにおいて、前記ねじれ角が、35°以上、40°以下である、構成としてもよい。
上述の構成によれば、外周刃のねじれ角を35°以上、40°以下とすることで、外周刃の同時接触刃が常に略1になる8つの外周刃を有するエンドミルにおいて、刃長が長くなり過ぎない外周刃の構成になるため、工具の剛性が高まり加工中に工具のたわみが発生し難くなる。これにより、ゼロカット無しに加工面の加工精度を十分に高めることができる。更には、外周刃のねじれ角を37°以上、39°以下とすることが好ましい。
上述のエンドミルにおいて、前記外周刃は、ポジティブタイプのすくい面を有する、構成としてもよい。
上述の構成によれば、外周刃がポジティブタイプのすくい面を有するため、ネガタイプのすくい面を有する場合と比較して外周刃の切れ味が良くなる。これにより、ゼロカット無しに加工面の加工精度を十分に高めることができる。
上述のエンドミルにおいて、前記外周刃が、2段の逃げ面を有する、構成としてもよい。
上述の構成によれば、逃げ面が1段である場合と比較して、エンドミルの送り量を大きくした場合であっても、加工面の精度を向上できる。これにより、ゼロカット無しに加工面の加工精度を十分に高めることができる。
また、上述のエンドミルにおいて、前記刃部には、8つの前記外周刃に加えて、先端に設けられ前記中心軸側から径方向外側に延びる8つの底刃と、前記外周刃と前記底刃との間を滑らかに繋ぐ8つのラジアス刃と、が設けられ、前記刃部の最先端点は、前記ラジアス刃と前記外周刃の境界と前記ラジアス刃と前記底刃の境界との間において、前記ラジアス刃に位置する、構成としてもよい。
上述の構成によれば、底刃を用いて被削材の底面を加工する際に、ラジアス刃と底刃の境界に起因する筋状の傷が生じることを抑制できる。
また、上述のエンドミルにおいて、8つの前記外周刃は、第1の外周刃と、第2の外周刃と、を含み、前記第1の外周刃の前記ねじれ角と前記第2の外周刃の前記ねじれ角とが異なる角度である、構成としてもよい。
上述の構成のエンドミルは、ねじれ角が異なる外周刃を含むいわゆる不等リードエンドミルである。同時接触刃数を常に略1としつつ外周刃を不等リードとすることで、外周刃が等リードである場合と比較して、エンドミルの送り量を大きくした場合であっても、加工面の精度を向上できる。
また、上述のエンドミルにおいて、8つの前記外周刃は、4つの前記第1の外周刃と、前記第1の外周刃の前記ねじれ角より大きいねじれ角の2つの前記第2の外周刃と、前記第1の外周刃の前記ねじれ角より小さいねじれ角の2つの第3の外周刃と、を含み、4つの前記第1の外周刃は、周方向に沿って略等間隔に配置され、前記第2の外周刃および前記第3の外周刃は、それぞれ異なる一対の第1の外周刃同士の間に、周方向に沿って交互に配置される、構成としてもよい。
上述の構成によれば、8つの外周刃を第1の外周刃、前記第2の外周刃および前記第3の外周刃として、互いにねじれ角を異ならせることで、加工面の精度を向上させる効果がさらに高まる。
本発明によれば、等高線加工に用いるエンドミルであって、刃長をできるだけ長く設定して加工コストを低減しつつ加工精度を高めることができるエンドミルを提供できる。
図1は、第1実施形態のエンドミルの模式図である。 図2は、第1実施形態のエンドミルの刃部の正面図である。 図3は、第1実施形態のエンドミルの刃部の平面図である。 図4は、第1実施形態のエンドミルの外周刃の拡大断面図である。 図5は、第1実施形態の外周刃を周方向に沿って展開した展開模式図である。 図6は、第1実施形態のエンドミルのラジアス刃による被削材の加工の様子を示す模式図である。 図7は、第1実施形態のエンドミルの底刃を模式的に表す模式図である。 図8は、第2実施形態のエンドミルの外周刃を周方向に沿って展開した展開模式図である。 図9は、サンプルNo.1-1、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。 図10Aは、サンプルNo.2-1のエンドミルを用いた切削加工を行った際の切削抵抗の経時変化を示すグラフである。 図10Bは、サンプルNo.2-2のエンドミルを用いた切削加工を行った際の切削抵抗の経時変化を示すグラフである。 図11は、サンプルNo.3-1およびサンプルNo.3-2のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。 図12は、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。 図13は、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。 図14Aは、サンプルNo.4-1のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。 図14Bは、サンプルNo.4-2のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分をわかりやすくするために、特徴とならない部分を便宜上省略して図示している場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のエンドミル1の模式図である。図2は、エンドミル1の刃部20の正面図である。図3は、エンドミル1の刃部20の平面図である。
図1に示すように、エンドミル1は、軸線(中心軸)Oを中心として軸線方向に沿って延びる概略円柱の棒体である。エンドミル1は、超硬合金等の硬質材料から構成される。
本明細書において、エンドミル1の軸線Oと平行な方向を単に軸線方向という。また、軸線Oに直交する方向を径方向という。また、軸線O周りに周回する方向を周方向という。周方向のうち、切削加工時にエンドミル1が回転する方向を工具回転方向Tという。また、以下の説明において、特定部位に対して工具回転方向T側の領域を回転方向前方側とよび工具回転方向T側と反対側の領域を回転方向後方側と呼ぶ場合がある。
本実施形態のエンドミル1は、ラジアスエンドミルである。エンドミル1は、等高線加工によって立壁の加工を行う。エンドミル1によって加工される被削材は、例えば樹脂成型用の金型の入れ子である。
エンドミル1は、シャンク部12と、首部(軸部)11と、刃部20と、を有する。シャンク部12、首部11および刃部20は、基端側から先端側に向かって軸線Oに沿ってこの順で並ぶ。
シャンク部12は、軸線Oに沿って延びる円柱状である。シャンク部12は、工作機械9に把持される。エンドミル1は、シャンク部12において工作機械9に把持され軸線O周りのうち工具回転方向Tに回転させられる。エンドミル1は、金属材料等の被削材の切削加工(転削加工)に使用される。また、エンドミル1は、工作機械9によって、軸線O周りの回転とともに、軸線Oに交差する方向に送りを与えられて被削材の加工を行う。
首部11は、軸線Oに沿って延びる円柱状である。首部11は、シャンク部12の先端側に位置する。本実施形態において、首部11の外径は、シャンク部12の外径より小さい。首部11は、エンドミル1を用いた等高線加工により形成された加工面に対向する領域である。
図2および図3に示すように、刃部20は、首部11の先端側に位置する。刃部20には、8つの外周刃21と、外周刃21の先端側においてそれぞれ外周刃21と連続する8つのラジアス刃23と、ラジアス刃23の先端側においてそれぞれラジアス刃23と連続する8つの底刃22と、が設けられる。
8つの外周刃21は、刃部20の外周において周方向に沿って等間隔に配置される。8つのラジアス刃23は、外周刃21と底刃22の間において周方向に沿って等間隔に配置される。また、8つの底刃22は、刃部20の先端において周方向に沿って等間隔に配置される。
図2に示すように、外周刃21は、軸線Oまわりに螺旋状に延びるねじれ刃である。外周刃21は、エンドミル1の基端側から先端側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって一定のねじれ角θで螺旋状にねじれている。本実施形態において、8つの外周刃21のねじれ角は、同角度である。すなわち、本実施形態の外周刃21は、等リードである。
外周刃21の外径寸法Dは、首部11の外径寸法dより小さい。これにより、首部11が、等高線加工により形成された加工面に干渉することが抑制される。
外周刃21同士の間には、切屑排出溝24が構成される。複数の切屑排出溝24は、周方向に等間隔に形成されている。切屑排出溝24は、軸方向に沿って一定のねじれ角で螺旋状にねじれている。切屑排出溝24のねじれ角は、外周刃21のねじれ角θと一致する。切屑排出溝24は、刃部20の基端側の端部において、エンドミル1の外周に切り上がっている。
切屑排出溝24の回転方向後方側の端縁には、外周刃21が形成されている。すなわち、切屑排出溝24は、外周刃21の回転方向前方側に位置する。切屑排出溝24の壁面は、底面24aとすくい面24bとを含む。底面24aは、切屑排出溝24において軸線Oに対し径方向外側を向く面である。また、すくい面24bは、切屑排出溝24において工具回転方向Tを向く壁面である。
外周刃21は、刃部20の外周面において、すくい面24bと逃げ面25との交差稜線に形成されている。逃げ面25は、切屑排出溝24に対し回転方向後方側に隣接する面である。逃げ面25は、外周刃21の回転方向後方側において外周刃21から切屑排出溝24に向かって周方向に1連なりに延びる。
図4は、外周刃21の軸線Oに直交する断面を拡大して模式的に示す断面模式図である。なお、図4において、外周刃21によって切削される被削材を図示する。
本実施形態の外周刃21は、2段の逃げ面を有する。すなわち、外周刃21の逃げ面25は、周方向に沿って並ぶ第1領域25aおよび第2領域25bを有する。第1領域25aは、外周刃21側に位置する。また、第2領域25bは、切屑排出溝24側に位置する。第1領域25aおよび第2領域25bは、それぞれエンドミル1の横断面において、軸線Oを中心とする仮想円に対して偏心する円形状に構成されている。第1領域25aと第2領域25bとは、それぞれ互いに異なる偏心する円形状に構成されている。外周刃21の逃げ面25において、第1領域25aの逃げ角βは、例えば4°であり、第2領域25bの逃げ角γは、例えば11°である。すなわち、第2領域25bの逃げ角γは、第1領域25aの逃げ角βより大きい。
本実施形態によれば、外周刃21が、2段の逃げ面で構成されるため、外周刃21は、切削加工時に微小な1段目の逃げ面(第1領域25a)において加工面に接触して被削材の加工面を擦る。これにより、加工面に形成された傷や凹凸を平滑にでき、加工面精度を向上させることができる。結果的に、仕上げ加工におけるゼロカットを低減することができる。
1段目の逃げ面(第1領域25a)の逃げ角βは、1°以上10°以下とすることが好ましく、4°±1°の範囲とすることがより好ましい。1段目の逃げ面(第1領域25a)の角度を小さくしすぎると、切削抵抗が高まり、加工面が粗くなる虞がある。一方で、1段目の逃げ面(第1領域25a)の角度を大きくしすぎると、切削抵抗を抑制できるが、1段目の逃げ面において加工面を擦り凹凸を平滑にする効果が小さくなる。1段目の逃げ面(第1領域25a)の逃げ角βを上述の範囲とすることで、切削抵抗を抑制しつつ加工面を平滑にすることができ、また加工面の寸法精度を高めることができる。
なお、本明細書において、逃げ面の逃げ角は、軸線Oに直交する切断面において測定される。測定時には、まず外周刃の先端を結ぶ仮想円を求め、測定対象の外周刃の先端を通過する仮想円の接線に対して、逃げ面の角度を求める。
また、1段目の逃げ面(第1領域25a)の幅wは、0.01mm以上0.15mm以下とすることが好ましく、0.03±0.01の範囲とすることがより好ましい。1段目の逃げ面(第1領域25a)の幅wを上述の範囲とすることで、逃げ面25の被削材に対する接触面積を小さくすることができ、切削抵抗を抑制しつつ加工面を平滑にすることができ、また加工面の寸法精度を高めることができる。
なお、本明細書において、1段目の逃げ面(第1領域25a)の幅wは、軸線Oに直交する切断面において測定される。測定時には、まず外周刃の先端を結ぶ仮想円を求め、測定対象の外周刃の先端を通過する仮想円の接線方向における第1領域25aの長さ寸法を幅wとする。
図4に示すように、本実施形態の外周刃21は、ポジティブタイプのすくい面24bを有する。すなわち、軸方向から見て、すくい面24bは、外周刃21の刃先から、刃先と軸線Oとを結ぶ直線に対して、工具回転方向Tの反対側に向かって延びる。本実施形態によれば、外周刃21がポジティブタイプのすくい面24bを有するため、ネガタイプのすくい面を有する場合と比較して外周刃21の切れ味が良くなる。このため、加工面の加工精度を十分に高めることができる。結果的に、仕上げ加工におけるゼロカットを低減することができる。
図5は、刃部20の外周刃21を周方向に沿って展開した展開模式図である。
ここで、8つの外周刃21のうち1つの外周刃に着目し、当該外周刃21の軸方向に沿う刃長をL、当該外周刃21のねじれ角をθ、当該外周刃21の下端21bにおいて当該外周刃21と当該外周刃21の工具回転方向後方に隣接する他の外周刃21との周方向距離をaとする。なお、ここで周方向距離とは、軸線Oを中心として周方向に延びる円弧長を意味する。
外周刃21の軸方向に沿う刃長Lとは、実質的に被削材の切削を行う外周刃21の有効刃長である。すなわち、刃長Lとは、軸方向に沿って螺旋状に延びる外周刃21のうち、外径寸法Dが首部11より大径となる領域の軸方向に沿う長さを意味する。
本実施形態において、全ての外周刃21について、その工具回転方向後方に隣接する他の外周刃21との周方向距離aは等しく、a=Dπ/8である。同様に、本実施形態において、全ての外周刃21について、軸方向に沿う刃長Lおよび外周刃21のねじれ角θは、等しい。
本実施形態のエンドミル1は、以下の(式1)で表されるnが8つの外周刃21について全て略1である。
n=(L×tanθ)/a …(式1)
ここで、周方向において互いに隣り合う一対の外周刃21に着目する。(式1)においてn=1となるエンドミル1は、工具回転方向前方の一方の外周刃21の上端21aと、工具回転方向T後方に隣接する他方の外周刃21の下端21bとの周方向の位置が、略一致する。(式1)において、n=1となるエンドミル1は、軸線O周りに回転させて刃部20において被削材の切削加工をすることで、刃部20の位相に関わらず、8つの外周刃21のうち何れか1つの外周刃21が常に被削材と接触する。
なお、外周刃21の上端21aは、外周刃21において外径寸法Dを維持する領域の上端を意味する。同様に、外周刃21の下端21bとは、外周刃21において外径寸法Dを維持する領域の下端を意味する。
上述の式で表されるnは、エンドミル1による被削材の切削中に被削材に常に接触する外周刃21の数を表す。本実施形態によれば、切削加工中に、常に略1つの外周刃21が被削材に接触することとなる(同時接触刃数が常に略1)。
エンドミル1による被削材の切削中に、同時接触刃数が増減すると、エンドミル1が被削材から受ける切削抵抗が増減する。より具体的には、外周刃21が被削材から離れた際に切削抵抗が急激に減少し、外周刃21が被削材に接触し始める際に切削抵抗が急激に増加する。これにより、エンドミルが振動して加工精度が低下するという問題がある。また、同時接触刃数が常に2以上の自然数である場合であっても、同時接触刃数が常に略1である場合と比較して、加工精度が低下する。
本実施形態によれば、同時接触刃数を常に略1とすることで、1つの外周刃21が被削材から離れると略同時に、他の外周刃21が被削材と接触し始めるため、加工中のエンドミル1の振動を抑制し、加工面の加工精度を高めることができる。結果的に、仕上げ加工におけるゼロカットを低減することができる。
また、上述の構成を満たす範囲で、外周刃21の刃長を軸方向に長く確保することができ、等高線加工を行う際の1ステップでより広範囲を加工でき、結果的に加工コストを低減できる。
本実施形態のエンドミル1において、上記(式1)で表されるnは、0.9以上、1.1以下とすることが好ましい。上述したように、同時接触刃数が、常に略1である場合(すなわちn≒1)に、加工面の加工精度を最も高めることができる。一方で、nが1.1を超える場合、又はnが0.9未満の場合、加工中のエンドミルの振動が加工精度に影響を与えて、十分な加工精度の加工面を形成することが困難となる。すなわち、nを0.9以上、1.1以下とすることで、加工面の加工精度を十分に高めることができる。
また、本実施形態によれば、刃部20には8つの外周刃21が設けられる。同時接触刃数を常に略1としつつ、外周刃21の数を増加させることで、被削材に接触する外周刃21が切り替わる際の切削抵抗の増減幅を抑制できる。外周刃21を8つ設けることで、切削抵抗の増減幅をして、切削中のエンドミルの振動を抑制し、結果的に加工精度を高めることができる。
エンドミル1において、外周刃21の外径寸法Dは、4mm以上とすることが好ましい。外周刃21の外径寸法Dが小さくなると8枚刃を形成することが困難となる。そのため、8枚刃を前提としている本実施形態のエンドミル1は、外周刃21の外形寸法Dは4mm以上であることが好ましい。更には、外周刃21の外形寸法Dは5mm以上が好ましい。また、外形寸法Dが大きくなり過ぎるとソリッドエンドミルとして製造が困難となる。そのため、外周刃21の外形寸法Dは、30mm以下が好ましい。
エンドミル1において、ねじれ角θが、35°以上、40°以下とすることが好ましい。外周刃21のねじれ角θを35°以上、40°以下とすることで、同時接触刃が常に略1になる8つの外周刃21を有するエンドミル1において、刃長Lが長くなり過ぎない外周刃21の構成になるため、エンドミル1の剛性が高まり加工中にエンドミル1のたわみが発生し難くなる。これにより、ゼロカット無しに加工面の加工精度を十分に高めることができる。同様の理由から、外周刃21のねじれ角を37°以上、39°以下とすることがより好ましい。
図2に示すように、刃部20には、8つの外周刃21に加えて、刃部20の先端に設けられた8つの底刃22と、外周刃21と底刃22とを滑らかに繋ぐ8つのラジアス刃23と、が設けられる。底刃22は、軸線O側から径方向外側に延びる。
図6は、ラジアス刃23による被削材の加工の様子を示す模式図である。
ラジアス刃23は、曲率中心O1を中心とする一様な曲率半径Rの円弧状である。刃部20は、軸方向の先端に位置する最先端点TPをラジアス刃23に位置する。最先端点TPは、ラジアス刃23と外周刃21の境界P1とラジアス刃23と底刃22の境界P2との間に位置する。すなわち、ラジアス刃23は、外周刃21および底刃22より軸方向先端側に突出している。
最先端点TPが、ラジアス刃23に設けられることで、被削材の底面加工において、底刃22とラジアス刃23との境界P2を被削材に接触させることを回避できる。ラジアス刃23と底刃22の境界P2は、切刃上において不連続な点となり得る。本実施形態によれば、切刃上の不連続点が被削材に接触することを回避することで、筋状の傷(切削傷)が加工面に形成されることを抑制できる。また、不連続点による切削傷を被削材に与えることが回避されるため、加工能率向上の目的で切削速度を増大させた場合にも、エンドミル1のびびり振動が抑制され、被削材に高精度の加工面粗さを得ることができる。
また、ラジアス刃23の曲率半径Rは、ラジアス刃23と外周刃21の境界P1からラジアス刃23と底刃22の境界P2にかけて一様であることが好ましい。ラジアス刃23の曲率半径Rが一定であれば、境界P1から境界P2までの区間において、曲率中心O1からラジアス刃23までの距離が常に一定となる。このため、被削材の底面に対するエンドミル1の軸線Oの傾斜角度が変化してラジアス刃23において被削材と接触する領域が変化しても、切刃上において不連続な点となり得るラジアス刃23と底刃22の境界P2が被削材に接触することを抑制できる。このため、被削材に筋状の傷(切削傷)が加工面に形成されることを抑制できるとともに、エンドミル1のびびり振動が抑制され、被削材に高精度の加工面粗さを得ることができる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のエンドミル101の底刃122A、122B、122Cを模式的に表す模式図である。また、図8は、第2実施形態のエンドミル101の刃部120の外周刃121A、121B、121Cを周方向に沿って展開した展開模式図である。
第2実施形態のエンドミル101は、上述の実施形態と比較して、外周刃121A、121B、121Cが不等リードである点が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態のエンドミル101は、先端側に位置する刃部120を有する。刃部120には、8つの外周刃121A、121B、121Cと、8つのラジアス刃(図示略)と、8つの底刃122A、122B、122Cと、が設けられる。
図7に示すように、8つの底刃122A、122B、122Cは、4つの第1の底刃122Aと、2つの第2の底刃122Bと、2つの第3の底刃122Cと、を含む。第1の底刃122A、第2の底刃122Bおよび第3の底刃122Cは、軸方向から見て軸線Oから径方向外側に直線状に延びる。
4つの第1の底刃122A、2つの第2の底刃122Bおよび2つの第3の底刃122Cは、工具回転方向Tに沿って、第1の底刃122A、第2の底刃122B、第1の底刃122A、第3の底刃122C、第1の底刃122A、第2の底刃122B、第1の底刃122A、第3の底刃122Cの順で並ぶ。4つの第1の底刃122Aは、周方向に沿って略等間隔に配置される。また、第2の底刃122Bおよび第3の底刃122Cは、それぞれ異なる一対の第1の底刃122A同士の間に、周方向に沿って交互に配置される。
第1の底刃122Aは、工具回転方向T後方の底刃(第2の底刃122Bまたは第3の底刃122C)と第1の境界角φ1で、周方向に隣接する。第2の底刃122Bは、工具回転方向T後方の第1の底刃122Aと第2の境界角φ2で、周方向に隣接する。第3の底刃122Cは、工具回転方向T後方の第1の底刃122Aと第3の境界角φ3で、周方向に隣接する。第2の境界角φ2は、第1の境界角φ1より大きい。第3の境界角φ3は、第1の境界角φ1より小さい。すなわち、第1の境界角φ1、第2の境界角φ2および第3の境界角φ3の大小関係は、以下の通りである。
φ2>φ1>φ3
本実施形態において、4つの第1の境界角φ1は、例えば、全て44.8°である。2つの第2の境界角φ2は、例えば、共に48.1°である。2つの第3の境界角φ3のうち一方は、42.2°であり、他方は、例えば42.4°である。なお、本実施形態では、2つの第3の境界角φ3同士は、若干角度が異なる。しかしながら、2つの第3の境界角φ3同士は同じであってもよい。
図8に示すように、8つの外周刃121A、121B、121Cは、4つの第1の外周刃121Aと、2つの第2の外周刃121Bと、2つの第3の外周刃121Cと、を含む。第1の外周刃121A、第2の外周刃121Bおよび第3の外周刃121Cは、軸線Oまわりに螺旋状に延びるねじれ刃である。
第1の外周刃121Aは、図示略のラジアル刃を介して第1の底刃122Aと繋がる。第2の外周刃121Bは、ラジアル刃を介して第2の底刃122Bと繋がる。第3の外周刃121Cは、ラジアル刃を介して第3の底刃122Cと繋がる。
4つの第1の外周刃121A、2つの第2の外周刃121Bおよび2つの第3の外周刃121Cは、工具回転方向Tに沿って、第1の外周刃121A、第2の外周刃121B、第1の外周刃121A、第3の外周刃121C、第1の外周刃121A、第2の外周刃121B、第1の外周刃121A、第3の外周刃121Cの順で並ぶ。4つの第1の外周刃121Aは、周方向に沿って略等間隔に配置される。また、第2の外周刃121Bおよび第3の外周刃121Cは、それぞれ異なる一対の第1の外周刃121A同士の間に、周方向に沿って交互に配置される。
第1の外周刃121Aは、エンドミル101の基端側から先端側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって一定のねじれ角である第1のねじれ角θ1で螺旋状にねじれている。第2の外周刃121Bは、エンドミル101の基端側から先端側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって一定のねじれ角である第2のねじれ角θ2で螺旋状にねじれている。第3の外周刃121Cは、エンドミル101の基端側から先端側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって一定のねじれ角である第3のねじれ角θ3で螺旋状にねじれている。第1の外周刃121Aのねじれ角(第1のねじれ角θ1)と、第2の外周刃121Bのねじれ角(第2のねじれ角θ2)と、第3の外周刃121Cのねじれ角(第3のねじれ角θ3)と、が異なる角度である。すなわち、すなわち、本実施形態の外周刃121A、121B、121Cは、不等リードである。
第2の外周刃121Bのねじれ角(第2のねじれ角θ2)は、第1の外周刃121Aのねじれ角(第1のねじれ角θ1)より大きい。また、第3の外周刃121Cのねじれ角(第3のねじれ角θ3)は、第1の外周刃121Aのねじれ角(第1のねじれ角θ1)より小さい。すなわち、第1のねじれ角θ1、第2のねじれ角θ2および第3のねじれ角θ3は、以下の大小関係である。
θ2>θ1>θ3
本実施形態において、4つの第1のねじれ角θ1は、例えば、全て38°である。2つの第2のねじれ角θ2は、例えば、共に40°である。2つの第3のねじれ角θ3のうち一方は、36°であり、他方は、例えば36.5°である。なお、本実施形態では、2つの第3のねじれ角θ3同士は、若干角度が異なる。しかしながら、2つの第3のねじれ角θ3同士は同じであってもよい。
本実施形態の外周刃121A、121B、121Cは、上述の実施形態と同様に、同時接触刃数が常に1つなるように設定されている。すなわち、1つの外周刃の上端は、工具回転方向後方に隣接する他の外周刃の下端と周方向の位置が略一致する。このため、加工面の加工精度を高めることができる。
本実施形態の構成における、同時接触刃数を常に略1とする構成について、より具体的に説明する。図8に示すように、8つの外周刃121A、121B、121Cのうち、1つの外周刃(図8における外周刃121X)に着目する。当該外周刃121Xの軸方向に沿う刃長をL、当該外周刃121Xのねじれ角をθ、当該外周刃121Xの下端121Xbにおいて当該外周刃121Xと当該外周刃121Xの工具回転方向後方に隣接する他の外周刃121Yとの周方向距離をaとする。
このとき、以下の(式2)で表されるnが8つの外周刃121A、121B、121Cについて全て略1である。
n=(L×tanθ2)/a …(式2)
なお、上述の実施形態と同様に、nを0.9以上、1.1以下とすることで、加工面の加工精度を十分に高めることができる。
本実施形態のエンドミル101は、ねじれ角が異なる外周刃121A、121B、121Cを含むいわゆる不等リードエンドミルである。同時接触刃数を常に略1としつつ外周刃121A、121B、121Cを不等リードとすることで、周方向に沿って並ぶ外周刃が被削材と接触し始めてから離間するまでのタイミングが異なる。このため、エンドミル101の振動が増幅され難い。本実施形態によれば、外周刃121A、121B、121Cを不等リードとすることで、外周刃が等リードである場合と比較して、エンドミル101の送り量を大きくした場合であっても、エンドミル101の振動の増幅を抑制し、加工面の精度を向上できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験1)
まず、同時接触刃数が1枚であることの優位性を示す試験1について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.1-1、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:MAKINO V33(HSK-F63)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー加工
サンプルNo.1-1、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルは、ともに等リードの8つの外周刃を有する。サンプルNo.1-1、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。
サンプルNo.1-1のエンドミルは、同時接触刃数が1(すなわち、上述の(式1)のn=1)となるように設定されている。サンプルNo.1-2のエンドミルは、同時接触刃数が1未満(すなわち、上述の(式1)のn<1)の0.17となるように設定されている。サンプルNo.1-3のエンドミルは、同時接触刃数が2(すなわち、上述の(式1)のn=2)となるように設定されている。
図9は、サンプルNo.1-1、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。図9に示すように、同時接触刃数を1とするサンプルNo.1-1のエンドミルは、サンプルNo.1-2およびサンプルNo.1-3のエンドミルと比較して倒れ量が十分に少ないことが確認できる。
(試験2)
次に、外周刃の刃数を8とすることの優位性を示す試験2について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.2-1およびサンプルNo.2-2のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:MAKINO V33(HSK-F63)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー加工
サンプルNo.2-1およびサンプルNo.2-2のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。サンプルNo.2-1およびサンプルNo.2-2は、ともに同時接触刃数が1となるように設定されている。
サンプルNo.2-1は、等リードの8つの外周刃を有し、外周刃のねじれ角は、38°である。一方で、サンプルNo.2-2は、等リードの2つの外周刃を有し、外周刃のねじれ角は、72°である。
図10Aは、サンプルNo.2-1のエンドミルを用いた切削加工を行った際の切削抵抗の経時変化を示すグラフである。図10Bは、サンプルNo.2-2のエンドミルを用いた切削加工を行った際の切削抵抗の経時変化を示すグラフである。すなわち、図10Aおよび図10Bの横軸は、時間である。また、図10Aおよび図10Bにおいて、横軸のスケールは一致している。なお、図10Aおよび図10Bのグラフ中において、周方向に並ぶ外周刃がそれぞれ接触し始めたポイントに数字を記載した。
図10Aおよび図10Bに示すように、サンプルNo.2-1およびサンプルNo.2-2のエンドミルを用いた切削加工において、1つの外周刃が被削材から離間するとともに他の外周刃が被削材に接触し始める瞬間に切削抵抗が高まる。切削抵抗の絶対値に着目すると、サンプルNo.2-1のエンドミルの切削抵抗は、サンプルNo.2-2のエンドミルの切削抵抗より大きい。これは、サンプルNo.2-1のエンドミルは、サンプルNo.2-2のエンドミルと比較して、ねじれ角が小さいことに起因すると考えられる。しかしながら、切削抵抗の増減の幅に着目すると、サンプルNo.2-1のエンドミルの切削抵抗の増減幅は、サンプルNo.2-2のエンドミルの切削抵抗の増減幅と比較して小さい。切削抵抗の増減幅が大きくなると、切削抵抗の増減に起因してエンドミルが振動し加工精度が低下する。すなわち、サンプルNo.2-1のエンドミルを用いることで、サンプルNo.2-2のエンドミルを用いる場合と比較して、加工面の精度を高めることができる。
(試験3)
次に、ポジティブタイプのすくい面を有することの優位性を示す試験3について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.3-1およびサンプルNo.3-2のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:MAKINO V33(HSK-F63)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー
サンプルNo.3-1およびサンプルNo.3-2のエンドミルは、ともに等リードの8つの外周刃を有する。また、サンプルNo.3-1およびサンプルNo.3-2は、ともに同時接触刃数が1となるように設定されている。
サンプルNo.3-1のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。一方で、サンプルNo.3-2のエンドミルの外周刃は、ネガティブタイプのすくい面を有する。
図11は、サンプルNo.3-1およびサンプルNo.3-2のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。図11に示すように、ポジティブタイプのすく面を有する外周刃が設けられたサンプルNo.3-1のエンドミルは、ネガティブタイプのすく面を有する外周刃が設けられたサンプルNo.3-2のエンドミルと比較して倒れ量が十分に少ないことが確認できる。
(試験4)
次に、2段の逃げ面を有する外周刃において、最適な1段面の逃げ面の幅(図4における幅w)を確認する試験4について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:YASDA YBM640V(BT40)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー加工
サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルは、ともに8つの外周刃を有する。サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3は、ともに同時接触刃数が1となるように設定されている。また、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-32のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。
サンプルNo.4-1の1段目の逃げ面の幅wは、0.03mmである。サンプルNo.4-2の1段目の逃げ面の幅wは、0.06mmである。サンプルNo.4-3の1段目の逃げ面の幅wは、0.1mmである。
なお、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3の1段面の逃げ面の逃げ角(図4における逃げ角β)は、ともに4°である。また、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3の2段面の逃げ面の逃げ角(図4における逃げ角γ)は、ともに15°である。
図12は、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。
また、サンプルNo.4-1、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルを用いた加工による加工面の評価結果を以下、表1に示す。
表1および後段の表2において、「Ra」は加工面の算術平均粗さであり、「Rz」は加工面の最大高さである。また、「粗さ・外観」は、加工面の目視による評価結果である。「倒れ精度」は、グラフを基にした評価結果である。切削抵抗は、切削抵抗の測定結果を基に、評価した評価結果である。なお、各項目において、Aが最も良く、Bが次に良く、Cがさらに次に良く、Dが好ましくない状態であったことを示す。
Figure 0007100245000001
図12および表1に示すように、1段目の逃げ面の幅wが0.03mmであるサンプルNo.4-1のエンドミルは、サンプルNo.4-2およびサンプルNo.4-3のエンドミルと比較して、形成した加工面が優れていることが確認できる。
(試験5)
次に、2段の逃げ面を有する外周刃において、最適な1段面の逃げ面の逃げ角(図4における逃げ角β)を確認する試験5について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:YASDA YBM640V(BT40)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー加工
サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3のエンドミルは、ともに8つの外周刃を有する。サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3は、ともに同時接触刃数が1となるように設定されている。また、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-32のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。
サンプルNo.5-1の1段目の逃げ面の逃げ角βは、0°である。サンプルNo.5-2の1段目の逃げ面の逃げ角βは、4°である。サンプルNo.5-3の1段目の逃げ面の逃げ角βは、8°である。
なお、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3の1段面の逃げ面の幅(図4における幅w)は、0.06mmである。また、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3の2段面の逃げ面の逃げ角(図4における逃げ角γ)は、ともに15°である。
図13は、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。
また、サンプルNo.5-1、サンプルNo.5-2およびサンプルNo.5-3のエンドミルを用いた加工による加工面の評価結果を以下、表2に示す。
Figure 0007100245000002
図13および表2に示すように、1段目の逃げ面の逃げ角βが4°であるサンプルNo.5-2のエンドミルは、サンプルNo.5-1およびサンプルNo.5-3のエンドミルと比較して、形成した加工面が優れていることが確認できる。
(試験6)
次に、不等リードの外周刃を有するエンドミルの優位性を示す試験6について説明する。
以下の条件において、サンプルNo.6-1およびサンプルNo.6-2のエンドミルによって被削材を切削する。
・被削材:DAC(H)48HRC
・エンドミル:外周刃の外径寸法Φ6mm
・機械:MAKINO V33(HSK-F63)
・切削条件:回転数n=2650回転/分
送り速度Vf=636mm/分
取りしろ0.1mm
ダウンカット
ドライ-エアブロー加工
サンプルNo.6-1およびサンプルNo.6-2のエンドミルは、ともに8つの外周刃を有する。サンプルNo.6-1およびサンプルNo.6-2は、ともに同時接触刃数が1となるように設定されている。また、サンプルNo.6-1およびサンプルNo.6-2のエンドミルの外周刃は、ポジティブタイプのすく面を有する。
サンプルNo.6-1のエンドミルの外周刃は、等リードである。サンプルNo.6-1のエンドミルの外周刃のねじれ角は、38°である。一方で、サンプルNo.6-2のエンドミルの外周刃は、不等リードである。サンプルNo.6-2のエンドミルは、38°、40°、38°、36°、38°、40°、38°、36.5°のねじれ角の外周刃が工具回転方向に沿って並ぶ。
図14Aは、サンプルNo.6-1のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。図14Bは、サンプルNo.6-2のエンドミルを用いた加工において、加工面の深さと加工面の倒れ量の測定結果の関係を示すグラフである。なお、サンプルNo.6-1およびサンプルNo.6-2のエンドミルを用いた加工において、エンドミルの送り速度を50m/分、70m/分および100m/分とした場合について、それぞれ測定した。
図14Aおよび図14Bに示すように、サンプルNo.6-1のエンドミルによる加工では、エンドミルの送り速度を50m/分、70m/分とした場合に良好な加工面を形成できるが、エンドミルの送り速度を100m/分とした場合において、倒れ量が大きくなる。一方で、サンプルNo.6-2のエンドミルによる加工では、エンドミルの送り速度を変えた場合であっても、一定の倒れ量を維持できる。すなわち、外周刃を不等リードとすることで、エンドミルの送り量を大きくした場合であっても、加工面の精度を向上できることが確認された。
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
1,101…エンドミル、11…首部(軸部)、20,120…刃部、21,121A…外周刃、21a…上端、21b…下端、22,122A…底刃、23…ラジアス刃、24b…すくい面、25…逃げ面、121A…第1の外周刃、121B…第2の外周刃、121C…第3の外周刃、d,D…外径寸法、L…刃長、O…軸線(中心軸)、P1,P2…境界、T…工具回転方向、TP…最先端点、θ,θ1,θ2,θ3…ねじれ角

Claims (5)

  1. 中心軸に沿って延びる円柱形状の軸部と、
    前記軸部の先端側に位置する刃部と、を備え、
    前記刃部には、前記軸部よりも大きい外径寸法の8つの外周刃が周方向に沿って設けられ、
    前記外周刃は、前記中心軸まわりに螺旋状に延びるねじれ刃であり、
    8つの前記外周刃は、等リードであり、
    前記外周刃は、2段の逃げ面を有し、
    前記2段の逃げ面のうち前記外周刃の刃先側に位置する1段目の逃げ面は、逃げ角が4°±1°であり、幅が0.03±0.01mmであり、2段目の逃げ面の逃げ角は1段目の逃げ面の逃げ角よりも大きく、
    8つの前記外周刃のうち1つの外周刃に着目し、当該外周刃の軸方向に沿う刃長をL、当該外周刃のねじれ角をθ、当該外周刃の下端において当該外周刃と当該外周刃の工具回転方向後方に隣接する他の前記外周刃との周方向距離をaとした時、以下の式で表されるnが、8つの外周刃について全て略1であり、
    前記ねじれ角が、35°以上40°以下である、
    エンドミル。
    n=(L×tanθ)/a
  2. 前記nが、0.9以上、1.1以下である、
    請求項1に記載のエンドミル。
  3. 前記外径寸法が、4mm以上である。
    請求項1又は2に記載のエンドミル。
  4. 前記外周刃は、ポジティブタイプのすくい面を有する、請求項1~3の何れか一項に記載のエンドミル。
  5. 前記刃部には、8つの前記外周刃に加えて、先端に設けられ前記中心軸側から径方向外側に延びる8つの底刃と、前記外周刃と前記底刃との間を滑らかに繋ぐ8つのラジアス刃と、が設けられ、
    前記刃部の最先端点は、前記ラジアス刃と前記外周刃の境界と前記ラジアス刃と前記底刃の境界との間において、前記ラジアス刃に位置する、
    請求項1~の何れか一項に記載のエンドミル。
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