JP7100238B2 - テーパエンドミルおよびリブ溝の壁面の加工方法 - Google Patents
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また、上述のテーパエンドミルには、軸方向の長さが2mm以上8mm以下の刃部と、刃部の軸方向の長さ以上の首部と、が設けられている。刃部を8mm以下とすることで、等高線加工によるリブ溝の壁面の加工において、深さ方向に沿う取り残し量の不均一さを解消することができる。反対に、刃部が長くなりすぎると、深さ方向において外周刃と被削材との接触回数の不均一さが顕著となる。より具体的には、刃部が長くなるに従い、加工領域の下端近傍における外周刃と被削材との接触回数が、上端近傍における接触回数と比較して顕著に少なくなる。被削材において外周刃との接触回数が減少すると、取り残し量が相対的に増加する。このため、刃部が長すぎると、仕上げ加工が施された加工面において、深さ方向に向かうに従い取り残し量が増加する虞がある。加えて、刃部を8mm以下とすることで、首下部において剛性が高い首部を相対的に長くすることができる。これにより、首下部の剛性を高めて首下部の撓みを抑止し、深さ方向における被削材の取り残し量の不均一さを抑制できる。
また、刃部を2mm以上とすることで、等高線加工によるリブ溝の壁面の加工において、取り残し量を十分に抑制することができる。特に仕上げ加工に適用すれば、荒加工により生じた段差を確実に除去することができる。なお、刃部が短すぎると、外周刃と被削材との接触回数が減少し、荒加工により生じた段差の除去が不十分となる虞がある。
また、首部を刃部より長くすることで、十分に深いリブ溝の加工が可能となる。上述したように、首部は、刃部と比較して高剛性であるため、首部を刃部より長くすることで首下部の剛性を高めて撓みを抑止、取り残し量を低減することができる。
一方、本発明の加工方法は荒加工に適用することもできる。リブ溝の荒加工に適用すれば、段差が無い一定の取り残し量の壁面を形成できるので、次工程の仕上げ加工の負荷が低減されるとともに、より高精度のリブ溝の壁面を達成することができる。また、本発明の加工方法を、荒加工、次いで、仕上げ加工のそれぞれに適用すれば、加工能率をより高めることができる。
上述の構成によれば、上述のテーパエンドミルを用いたことによって、軸方向の切り込み量を0.025mm以上とした場合であっても、仕上げ加工に用いる場合には荒加工により生じた段差を十分に除去することができる。したがって仕上げ加工に適用する場合、仕上げに要する加工時間を短縮することができる。なお、軸方向の切込み量は0.05mm以上であることがより好ましく、さらに、0.10mm以上であることがさらに好ましく、0.20mm以上であることがさらに好ましい。
本明細書において、エンドミル1の軸線Oと平行な方向を単に軸線方向という。また、軸線Oに直交する方向を径方向という。また、軸線O周りに周回する方向を周方向という。周方向のうち、切削加工時にエンドミル1が回転する方向を工具回転方向Tという。また、以下の説明において、特定部位に対して回転方向T側の領域を回転方向前方側とよび回転方向T側と反対側の領域を回転方向後方側と呼ぶ場合がある。
エンドミル1は、シャンク部3において工作機械9の主軸等に把持され、軸線O周りのうち工具回転方向Tに回転させられる。エンドミル1は、金属材料等の被削材の切削加工(転削加工)に使用される。また、エンドミル1は、軸線O周りの回転とともに、軸線Oに交差する方向に送りを与えられて、被削材Wの仕上げ加工を行う。
エンドミル1のシャンク部3は、エンドミル1の基端側に位置する。シャンク部3は、工作機械の主軸に把持される部分となるストレートの円柱状部3aと、この円柱状部3aの先端側にあって、漸次縮径する円錐台状部3bとからなっている。すなわち、シャンク部3は、円柱状部3aと円錐台状部3bを合わせた部分である。円錐台状部3bの先端側は、首下部2の基端側と同径となって首下部2につながっている。
なお、本明細書において、逃げ面の逃げ角は、軸線Oに直交する切断面において測定される。測定時には、まず外周刃の先端を結ぶ仮想円を求め、測定対象の外周刃の先端を通過する仮想円の接線に対して、逃げ面の角度を求める。
一方で、1段の逃げ面25Aで構成される第1の外周刃26は、1段の逃げ面25Aで構成されることで、先端の刃物角が十分に鋭利になるため、被削材に対する食いつきがよくなる。しかしながら、第1の外周刃26は、逃げ面25Aが加工面に接触し難くなるため、加工面を平滑にし難く、加工面精度が低下する。したがって、第1の外周刃26を用いた切削加工では、加工面の取り残し量が減少しやすくなる一方で、加工面精度が低下しやすくなる。
上述したように、第1の外周刃26は、1段の逃げ面25Aで構成されている。そして、底刃21bの逃げ面25Cと第1の外周刃26の逃げ面25Aは、連なっている。
なお、外周刃および底刃は、エキセントリック刃付けの逃げ面にすることで、逃げ面の仕上げ面荒さが向上するのと同時に、刃先強度を高めることができる。
比較例として、図8は、首下部902の略全体に亘って刃部920が設けられたエンドミル901の模式図を示す。比較例のエンドミル901は、首下部902の長さLが17mmであり、刃部920の長さNが16mmである。比較例のエンドミル901を用いて軸方向の切り込み量0.025mmの等高線加工によって、深さ16mmのリブ溝の壁面の仕上げを行うと、加工面の上端では、外周刃と被削材とが640回接触する。一方で、加工面の下端近傍(例えば下端から4mm上側)では、外周刃と被削材が160回しか接触しない。このため、比較例のエンドミル901を用いた仕上げ加工では、加工面の取り残し量が深さ方向に下側に向かうに従い増大する。
なお、本実施形態において、外周刃21aの先端の直径は、例えば1mmであり、首下部2の軸方向の長さLは、例えば17mmである。したがって、本実施形態のエンドミル1のL/Dは、例えば17である。
軸方向の任意の点として、外周刃21aの先端(すなわち外周刃21aと底刃21bとの境界部)から基端側に距離Xの点について考える。
距離Xの点における延長面VSの直径D20は、外周刃21aの先端の直径Dおよび外周刃21aのテーパ角θ20を用いて、以下の式により表される。
D20=D+2Xtanθ20
D20=1.174
D10≧1.056
本試験において2種類の被削材(第1の被削材および第2の被削材)に対してリブ溝の加工を行った。第1の被削材としては、プラスチック金型用鋼であるSTAVAX(登録商標)のロックウェル硬さHRC52のものを用いた。第2の被削材としては、プラスチック金型用鋼であるNAK80(登録商標)を用いた。
まず、リブ溝の壁面の荒加工について説明する。荒加工は、3種類の工具を用いて深さ方向を3段階に分けて加工を行った。なお、この試験において、荒加工では、最終的な加工面(仕上げ加工を行った後の加工面)に対して、仕上げ加工における取り代を30μm残した荒加工面を形成する。
次いで、深さ6mmの領域から深さ10mmまでの領域を首下長さ10mmのボールエンドミルを用いて加工する。ボールエンドミルとしては、三菱日立ツール社製のEPDBPE2010-10-04-ATHを用いた。
次いで、深さ10mmの領域から深さ16mmまでの領域を首下長さ15mmのボールエンドミルを用いて加工する。ボールエンドミルとしては、三菱日立ツール社製のEPDBPE2010-15-04-ATHを用いた。
荒加工面に対して、外周刃および底刃の構成が異なるサンプルNo.1~サンプルNo.4のエンドミルを用いて仕上げ加工を行い最終的な加工面(以下、仕上げ加工面と呼ぶ)を形成した。
サンプルNo.1~サンプルNo.4のエンドミルの外周刃および底刃の構成と、仕上げ面の評価結果について表1にまとめて示す。なお、サンプルNo.1~サンプルNo.4のエンドミルの先端の直径Dは、1mm、刃部の長さは、4mm、首下部の長さLは17mm、外周刃のテーパ角度は、0.5°、外周刃の捻れ角は、40°である。また、サンプルNo.1~サンプルNo.4のエンドミルによる仕上げ加工において、回転数は、10820[/min]、送り量は424[mm/min]、切り込み量は0.025[mm]、加工深さは16[mm]、取り代は0.03[mm]である。
また、図6、図7および表1に示すようにサンプルNo.1のエンドミルで形成された加工面は、上段および下段においても、比較的取り残し量が小さい。これは、サンプルNo.1のエンドミルの外周刃が、1段の逃げ面で構成されているために、深さ方向全域において加工面に対して食いつきがよいためであると考えられる。
また、図6、図7および表1に示すようにサンプルNo.4のエンドミルで形成された加工面は、上段における取り残し量と比較して、下段における取り残し量が大きい。これは、サンプルNo.4のエンドミルの外周刃が、2段の逃げ面で構成されているために、深さ方向全域において加工面に対して食いつきがよくなく、特に先端においてエンドミルに撓みが生じたためであると考えられる。
Claims (10)
- 工作機械に保持されるシャンク部と、前記シャンク部の先端側に位置し軸線方向に沿ってテーパ状に延びる首部と、前記首部の先端側に位置しテーパ状に延びる刃部と、を備え、
前記刃部は、
前記軸線に沿って先端側に向かうに従い細くなる先細りのテーパ状に形成される芯厚部と、
前記芯厚部の先端に位置する球状部と、
前記芯厚部の外周に位置し前記軸線に沿って螺旋状に延びる複数の外周刃と、
前記球状部の外周に位置する底刃と、を有し、
複数の前記外周刃は、
1段の逃げ面から構成される第1の外周刃と、
2段の逃げ面から構成される第2の外周刃と、を含み、
前記底刃は、前記第1の外周刃のみに連なり、
前記芯厚部は、前記球状部との境界において、外周に前記第2の外周刃を有さず、前記第1の外周刃のみが設けられた領域を有する、
テーパエンドミル。 - 前記芯厚部の先端における前記外周刃の直径に対する前記刃部および前記首部の軸線方向の合計の長さの比が、8以上20以下であり、
前記刃部は、軸方向の長さが2mm以上8mm以下である、請求項1に記載のテーパエンドミル。 - 前記第1の外周刃と前記第2の外周刃とが、周方向に交互に並ぶ、請求項1又は2に記載のテーパエンドミル。
- 前記刃部は、2つの前記第1の外周刃と、2つの前記第2の外周刃と、を含む、4つの前記外周刃を有する、
請求項1~3の何れか一項に記載のテーパエンドミル。 - 前記刃部は、軸方向の長さが2mm以上8mm以下であり、
前記首部は、軸方向の長さが前記刃部の軸方向の長さ以上であり、
前記刃部と前記首部との境界部において、前記首部の直径は、前記外周刃の直径より小さく、前記芯厚部の直径より大きい、
請求項1~4の何れか一項に記載のテーパエンドミル。 - 軸方向の任意の点において、テーパ状の前記首部の直径は、テーパ状の前記外周刃の延長面の直径に対して90%以上である、
請求項5に記載のテーパエンドミル。 - 前記外周刃の捻れ角が40°以上である、
請求項5又は6に記載のテーパエンドミル。 - 請求項1~7の何れか一項に記載のテーパエンドミルを用いたリブ溝の壁面の加工方法であって、
前記テーパエンドミルを用いて等高線加工を行う、
リブ溝の壁面の加工方法。 - 微小な段差を有するリブ溝の壁面の仕上げ加工を行う、請求項8に記載のリブ溝の壁面の加工方法。
- 軸方向の切り込み量を0.025mm以上とする、
請求項9に記載のリブ溝の壁面の加工方法。
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