いくつかの実施形態の詳細な説明
タモキシフェンは以前に、有害な網膜の変化の低頻度の発生と臨床的に関連付けられたが、進行中の光受容体の変性を有する患者において広範な神経保護効果を実際に呈することが本明細書に開示される。タモキシフェンおよびラロキシフェンなどのSERMの経口投与は、様々な投与量で網膜変性を処置または予防するために使用できることが実証された。
被験体における網膜変性を処置または予防する方法が本明細書に開示される。これらの方法は、治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)を被験体に投与して、被験体における網膜変性を処置することを含み、SERMは、タモキシフェン、アフィモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、またはこれらの塩もしくは誘導体の1つまたは複数である。一部の実施形態では、SERMは、a)タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはb)ラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体である。追加の実施形態では、被験体はヒトである。さらなる実施形態では、被験体は、網膜色素変性症、急性網膜変性症、萎縮型黄斑変性症、または糖尿病網膜症を有する。他の実施形態では、SERMは経口投与される。一部の実施形態では、被験体は、乳がんなどのがんを有さない。
特定の非限定的な例では、SERMはタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、被験体はヒトであり、タモキシフェンは、毎日約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で投与される(約10mg/kg/日、成人のヒトで約0.81mg/kg/日の用量に相当する)。他の非限定的な例では、SERMはタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、被験体はヒトであり、タモキシフェンは、毎日約3.2mg/kg~約6.5mg/kgの用量で経口投与される。さらに他の実施形態では、SERMは最低3ヶ月間にわたり投与される。さらなる実施形態では、SERMは、光受容体の喪失を遅らせ、光受容体の機能の減少を低減させ、視覚機能の喪失を低減させ、網膜ミクログリアの活性化を抑制し、および/または炎症促進性サイトカインの発現を抑制する。
一部の実施形態では、方法は、被験体の視覚を評価することを含む。1つの特定の非限定的な例では、方法は、被験体に対して網膜電図検査を行うことを含む。
用語
用語および方法の以下の説明は、本開示をよりよく記述するためおよび本開示の実施において当業者を導くために提供される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、1つまたは1つより多くを指す。例えば、「細胞を含む」という用語は、単一または複数の細胞を含み、「少なくとも1つの細胞を含む」という語句と同等であると考えられる。「または」という用語は、文脈が明確にそうでないと指し示さない限り、述べられた選択的な要素の単一の要素または2つもしくはそれより多くの要素の組み合わせを指す。本明細書で使用される場合、「含む」(comprises)は「含む」(includes)を意味する。したがって、「AまたはBを含む」は、追加の要素を除外することなく、「A、B、またはAおよびBを含む」を意味する。本明細書において言及されるGENBANK(登録商標)受託番号の日付は、少なくとも2016年8月19日以降に利用可能であった配列である。本明細書で引用される全ての参照文献、特許出願および公開、ならびにGENBANK(登録商標)受託番号は、参照することにより組み込まれる。本開示の様々な実施形態の検討を促進するために、特定の用語の以下の説明を提供する。
加齢性黄斑変性症(AMD):米国および他の先進国において失明の主要な原因である疾患である。(Evans J、Wormald R.、British Journal Ophthalmology 80巻:9~14頁、1996年;Klein R、Klein B E K、Linton K L P、Ophthalmology 99巻:933~943頁、1992年;Vingerling J R、Ophthalmology 102巻:205~210頁、1995年)。初期のAMDはドルーゼンによって臨床的に特徴付けられ、ドルーゼンは、タンパク質、脂質、および細胞破片の細胞外での堆積であり(Hageman G S、Mullins R F、Mol Vis 5巻:28頁、1999年)、網膜色素上皮(RPE)の下に位置する。RPEは、重層する光受容体のために栄養機能、代謝機能、および貪食機能を提供する。重大な視力喪失は、AMDの後期段階(網膜色素上皮細胞の地図状萎縮および網膜下の血管新生)と関連する斑における光受容体の機能障害または死に起因する。
動物:生きている多細胞脊椎動物生物であり、例えば哺乳動物および鳥を含むカテゴリーである。哺乳動物という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「被験体」という用語は、ヒトおよび獣医学の被験体の両方を含む。
乳がん:乳房組織の腫瘍性状態であり、これは良性または悪性であり得る。最もよく見られる種類の乳がんは、腺管癌である。原位置の腺管癌は、管の非浸潤性の腫瘍性状態である。小葉癌は侵襲性疾患ではないが、癌腫が発症する可能性があることの指標である。乳房の浸潤性(悪性)癌腫は、ステージ(I、IIA、IIB、IIIA、IIIB、およびIV)に分けることができる。
乳癌は、健常乳腺の典型的な組織学および構成を喪失する。一般に、癌腫細胞は、正常細胞をしのいで増殖し、腺様構造に分化する能力を失う。一般に分化の喪失の程度は、腫瘍の攻撃性に関係する。例えば、「原位置」(in situ)の癌腫は、定義により、基底膜はインタクトなままだが、それが「侵襲性」に進行するにつれて、腫瘍は基底膜の脱出を示す。したがって、健常乳房組織に見られるような基底細胞の離散した層の染色を乳癌内で見ることは予期されない。健常な乳房および乳癌の生理学および組織学の議論については、Ronnov-Jessen, L.、Petersen, O. W.およびBissell, M. J. Cellular changes involved in conversion of normal to malignant breast: importance of the stromal reaction(例えば、Physiol Rev 76巻、69~125頁、1996年を参照)を参照されたい。
乳がんは、発現プロファイルに基づいてグループに分けることができる。基底細胞型の癌腫は、通常、エストロゲン受容体(ER)の発現について陰性であり、HER2(erbB2)およびプロゲステロン受容体(PR)の発現について陰性であり、したがって「トリプルネガティブ乳がん」または「TNBC」と称される。この種類の乳がんはER-/HER2-/PR-とも表示され、全ての乳がんの約15~20%であり、一般にHer2標的化またはエストロゲン標的化療法を使用して処置することができない。このがんの攻撃的な性質は、CD44+CD24-/lo表現型を有するがん幹細胞(CSC)の富化と相関すると考えられている。一部の実施形態では、基底癌は、プロゲステロン受容体(PR)の発現について陰性であり、上皮成長因子受容体(EGFR)の発現について陽性であり、サイトケラチン5(CK5)の発現について陽性である。この表現型は以下の通りに表示される:ER-/PR-/HER2-/CK5+/EGFR+。
細胞培養物:制御された条件下で生育された細胞である。初代細胞培養物は、生物から直接的に採取された細胞、組織または器官の培養物であって最初の継代培養の前のものである。細胞は、細胞の成長および/または分裂を促進する条件下で増殖培地中に置かれた時に培養物中で拡大増殖(expand)し、細胞のより大きい集団を結果としてもたらす。細胞が培養物中で拡大増殖される時に、細胞増殖の速度は、典型的に、細胞の数が2倍になるために必要とされる時間の量によって測定され、あるいはこれは倍加時間として公知である。
レーバー先天性黒内障(LCA):出生時または生後最初の数ヶ月のうちに現れ、主に網膜に影響する希少な遺伝性眼疾患である。それは複数の遺伝子に関連するので、徴候(presentation)は様々であり得る。しかしながら、それは、眼振、羞明、緩慢なまたは欠如した瞳孔反応、および重篤な視力喪失または失明によって特徴付けられる。
目に入る光の量に反応して通常拡大および収縮する瞳孔が、正常に光に反応しない。代わりに、瞳孔は、通常よりもゆっくりと拡大および収縮し、または光に全く反応しないこともある。さらに、目の透明な前部覆い(角膜)が円錐形で異常に薄く、円錐角膜として公知の状態になることがある。
フランセスケッティの眼指徴候と呼ばれる特定の挙動がレーバー先天性黒内障に特徴的である。この徴候は、中手指節関節または指での目の突き、圧迫およびこすりからなる。
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体は従来通りのものである。E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975年)には、本明細書に開示されるSERMの薬学的送達のために好適な組成物および処方物が記載されている。
一般に、担体の性質は、用いられる具体的な投与方式に依存する。例えば、非経口処方物は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、またはグリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートといった、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含有し得る。
医薬物質:被験体または細胞に適切に投与された時に所望の治療または防止効果を誘導できる化合物または組成物である。「インキュベートすること」は、薬物が細胞と相互作用するための充分な量の時間を含む。「接触させること」は、固体または液体形態の薬物を細胞とインキュベートすることを含む。
光網膜症(photic retinopathy):太陽放射線、または例えばレーザーもしくは溶接機などの他の明るい光への長期の曝露からの、斑などの網膜への傷害である。この用語は、太陽、レーザー、および溶接工の網膜症を含む。一部の実施形態では、光網膜症は、強い人工光または太陽光によって引き起こされる。光は、紫外光(UV-B、295~320nm;UV-A、320~400nm)または可視光(400~700nm)であり得る。光毒性傷害は、網膜色素上皮細胞、脈絡膜、および桿体外節において起こり得る。光網膜症は、長期間の低減された視力、および中心暗点または傍中心暗点を結果としてもたらす。眼底の変化は通常(常にではないが)両側である。
光毒性:光によって誘導された、網膜の細胞への傷害などの、細胞への傷害である。
疾患の予防または処置:疾患を「予防すること」は、例えば、加齢性黄斑変性症などの疾患の素因を有することが既知である人において、疾患の完全な発症を阻害することを指す。既知の素因を有する人の例は、家族に疾患の病歴を有する者、または被験体に状態への素因を与える因子に曝露された者である。「処置」は、疾患または病的な状態が発症し始めた後に、その徴候または症状を改善する治療的介入を指す。
網膜:光のための光受容体(錐体および桿体)を含有する、目の光(光子)感受性部分である。桿体および錐体は、光感受性色素の使用を通じて光知覚を行う。光感受性色素は、オプシンと呼ばれるタンパク質およびレチネン(ビタミンAのバリアント)と呼ばれる発色団から作られている。桿体はロドプシンを含有する一方で、錐体はヨードプシンを含有する。桿体および錐体は、網膜の出力細胞および神経節細胞において神経放電を誘発する連続的なニューロンを通じて信号を伝える。視覚信号は視神経によって外側膝状体に運ばれ、そこから視覚信号は視覚皮質(後頭葉)に渡され、視覚刺激として登録される。「桿体細胞」または「桿体」は、目の網膜にある光受容体細胞であり、他の種類の視覚的光受容体である錐体細胞よりも弱い光で機能することができる。桿体は網膜の外縁部に集まっており、周辺視覚において使用される。桿体は、錐体よりも少し長く細いが、同じ構造的基礎を有する。オプシンまたは色素は外側の、網膜色素上皮上にあり、細胞のホメオスタシスを遂行している。この上皮端部は、多くの積み重なったディスクを含有する。桿体は視覚色素のための大きい面積を有し、したがって光吸収のかなりの効率を有する。錐体と同様に、桿体細胞は、シナプス終末、内節、および外節を有する。シナプス終末は、別のニューロン、例えば双極細胞とシナプスを形成する。内節および外節は、遠位の節に沿った線毛によって接続される。内節は細胞小器官および細胞の核を含有する一方で、目の背部に向いた桿体外節は、光吸収物質を含有する。光による光色素の活性化は、桿体細胞を過分極にすることによって信号を送信し、桿体細胞がその神経伝達物質を送信しないことに繋がり、次いでそれが、双極細胞が双極-神経節のシナプスでその伝達物質を放出し、シナプスを活性化させることに繋がる。「錐体細胞」または「錐体」は色覚に関与し、比較的明るい光において最もよく機能する。錐体細胞は中心窩に密に詰め込まれており、中心窩は、非常に薄い密に詰め込まれた錐体を有する直径0.3mmの桿体を含まない区画であって、錐体は網膜の辺縁に向かってその数を迅速に低減させる。ヒトの目には約600~700万の錐体があり、斑に向かって最も集まっている。錐体は網膜中の桿体細胞(低い光レベルでの視覚をサポートする)よりも光に対する感受性が低いが、色の知覚を可能とする。錐体はまた、より緻密な細部を知覚でき、また刺激に対する反応時間が桿体よりも速いので、より迅速な像の変化を知覚することができる。ヒトにおいて、錐体は通常、それぞれ異なる色素を有する3種類、すなわちS錐体、M錐体およびL錐体の1つである。したがって、各錐体は、短波長、中間波長および長波長の光に対応する光の可視波長に対して感受性である。この3種類は、個体に応じて、それぞれ420~440nm、534~545nmおよび564~580nmの近くのピーク波長を有する。
網膜色素上皮:根底にある脈絡膜に接着した神経感覚網膜のすぐ外側の、哺乳動物中にin vivoで存在する六角形の細胞の色素層である。これらの細胞は色素顆粒と共に密に詰め込まれており、入射光から網膜を守る。網膜色素上皮はまた、アミノ酸、アスコルビン酸およびD-グルコースなどの小分子を供給すると共に脈絡膜の血液で運ばれる物質への緊密な障壁を維持することによって網膜の環境を維持する制限輸送因子としても働く。
網膜色素変性症(RP):網膜中の桿体光受容体細胞の進行性の変性により重篤な視覚障害を引き起こす遺伝性の変性性眼疾患である。この形態の網膜ジストロフィーは、年齢と無関係に初期症状を表す。網膜色素変性症の初期網膜変性症状は、夜間視力の減少(夜盲症)および中間周辺視野の喪失によって特徴付けられる。低光量視覚に関与し、網膜周縁部で配向された桿体光受容体細胞は、この疾患の非症候性形態の間に最初に影響を被る網膜プロセスである。視覚減退は、遠周辺視野に比較的迅速に進行し、トンネル視の増加につれてやがて中心視野に広がる。視力および色覚は、色覚、視力、および中心視野における視覚に関与する錐体光受容体細胞に付随する異常によって損なわれることがある。疾患症状の進行は対称的な様式で起こり、左目および右目の両方が類似の速度で症状を経験する。変異した時に網膜色素変性症の表現型を引き起こし得る複数の遺伝子がある。RPの遺伝パターンは、常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖性、および母親から(ミトコンドリアにより)獲得されると特定されており、親世代に存在する特定のRP遺伝子変異に依存する。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):エストロゲン受容体に作用する薬剤のクラスである。エストロゲン受容体アゴニストおよびアンタゴニストからこれらの物質を区別する特徴は、それらの作用は様々な組織において異なり、それによって様々な組織においてエストロゲン様の作用を選択的に阻害または刺激する可能性を付与するということである。一般に、SERMは、ERの競合的な部分アゴニストである。異なる組織は、異なる程度の内因性エストロゲンへの感受性およびその活性を有するため、問題とする特定の組織の他にSERMの固有の活性(IA)のパーセンテージに応じてSERMはエストロゲン効果または抗エストロゲン効果を生じる。高いIAを有し、したがってたいていエストロゲン効果を有するSERMの例はクロロトリアニセンである一方で、低いIAを有し、したがってたいてい抗エストロゲン効果を有するSERMの例はエタモキシトリフェトールである。クロミフェンおよびタモキシフェンのようなSERMはそれらのIAにおいてより中等度であり、それらのエストロゲン作用および抗エストロゲン作用は比較的均衡状態にある。ラロキシフェンはタモキシフェンよりも抗エストロゲン性のSERMであり、両方とも骨においてエストロゲン性であるが、子宮においてラロキシフェンは抗エストロゲン性である一方でタモキシフェンはエストロゲン性である。
被験体:ヒトおよび非ヒト動物であり、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの、哺乳動物および非哺乳動物などの、全ての脊椎動物が含まれる。記載される方法の多くの実施形態では、被験体はヒトである。
治療剤:一般的な意味において使用され、処置剤、予防剤、および置換剤(replacement agent)を含む。SERMは治療剤の一形態である。
治療有効量:処置されている被験体において所望の効果を達成するために充分な薬剤の量である。例えば、これは、被験体における網膜変性を処置または予防するためのSERMの量、または進行を予防するため、もしくは網膜変性を処置するために充分な用量であり得る。一例では、この量は、進行を予防するため、または疾患の退縮を引き起こすために充分なものである。別の例では、この量は、網膜変性の進行を阻害する。網膜の変性を低減または阻害するためなどの、生物学的プロセスに対する特定の所望の効果を達成するために使用される、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体などのSERMの治療有効量は、がん細胞の殺傷などの異なる生物学的プロセスに対する効果を結果としてもたらす同じ化合物の用量とは異なることがある。
治療有効量のSERMは、全身投与または局所投与され得る(下記を参照)。加えて、有効量のSERMは、処置過程の間に、単回用量で、または例えば毎日複数回用量で、投与され得る。しかしながら、SERMの有効量は、適用される調製物、処置されている被験体、病気の重篤度および種類、ならびに化合物の投与の様式に依存する。
処置すること、処置、および治療:症状の緩和、寛解、減少または状態を患者にとってより耐容できるものとすること、変性または減退の速度を遅くすること、変性の最終地点をより悪化していないものにすること、被験体の身体的または精神的健康を改善すること、または視覚を改善することなどの任意の客観的または主観的なパラメーターなどの、損傷、病理または状態の減弱または改善における任意の成功または成功の指標である。処置は、身体検査、神経学的検査、または精神医学的評価の結果などの、客観的または主観的なパラメーターによって評価することができる。
腫瘍およびがん:腫瘍は、細胞の異常な増殖であり、良性または悪性であり得る。がんは悪性の腫瘍であり、異常なまたは制御されない細胞増殖によって特徴付けられる。しばしば悪性に関連する他の特徴としては、転移、近接する細胞の正常な機能への干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出および炎症反応または免疫反応の抑制または悪化、リンパ節などの周囲または遠位の組織または器官の浸潤などが挙げられる。「転移性疾患」は、元々の腫瘍部位を離れて、例えば血流またはリンパ系を介して、身体の他の部分へと移動したがん細胞を指す。
個体における腫瘍の量は「腫瘍負荷(tumor burden)」であり、これは腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる。転移しない腫瘍は「良性」と称される。周囲組織に浸潤および/または転移できる腫瘍は「悪性」と称される。血液腫瘍の例としては、急性白血病(11q23陽性急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)などの白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性および高悪性度の形態)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリーセル白血病および骨髄形成異常が挙げられる。
肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓がん、乳がん(基底乳癌、腺管癌および小葉乳癌など)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭状癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、およびCNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyrgioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫および網膜芽腫など)が挙げられる。
ぶどう膜炎(Uveitus):虹彩炎、毛様体炎、汎ぶどう膜炎(panuveits)、後部ぶどう膜炎および前部ぶどう膜炎を含む眼内炎症性疾患である。虹彩炎は虹彩の炎症である。毛様体炎は毛様体の炎症である。汎ぶどう膜炎は、目のぶどう膜(血管)層全体の炎症を指す。周辺性ぶどう膜炎とも呼ばれる中間部ぶどう膜炎は、毛様体および毛様体扁平部の領域における虹彩および水晶体のすぐ後ろの区画を中心とし、「毛様体炎」および「毛様体扁平部炎」とも呼ばれる。
「後部」ぶどう膜炎は、一般に、脈絡網膜炎(脈絡膜および網膜の炎症)を指す。後部ぶどう膜炎は多様な症状を生じさせることがあるが、最も頻繁には浮遊物および中間部ぶどう膜炎と類似の視覚低下を引き起こす。徴候としては、硝子体液中の細胞、網膜および/または根底にある脈絡膜における白色または黄白色病変、滲出性網膜剥離、網膜血管炎、および視神経浮腫が挙げられる。
前部ぶどう膜炎は、虹彩毛様体炎(虹彩および毛様体の炎症)および/または虹彩炎を指す。前部ぶどう膜炎は最も症候性の傾向があり、典型的に、疼痛、発赤、羞明、および視覚低下を示す。前部ぶどう膜炎の徴候としては、瞳孔縮小および角膜に隣接する結膜の充血、いわゆる傍角膜縁フラッシュ(perilimbal flush)が挙げられる。生体顕微鏡検査または細隙灯の知見としては、房水中の細胞およびフレアの他に、角膜内皮に付着した細胞およびタンパク質性材料の塊である角膜後面沈着物が挙げられる。「びまん性」ぶどう膜炎は、前部、中間部、および後部構造を含む目の全ての部分を伴う炎症を含意する。
「急性」ぶどう膜炎は、徴候および症状が突然起こり、最長約6週間続くぶどう膜炎の形態である。「慢性」ぶどう膜炎は、発症が段階的で、約6週間より長く続く形態である。
眼炎症の炎症産物(すなわち、細胞、フィブリン、過剰タンパク質)は、通常、目の流体空間、すなわち、前房、後房および硝子体空間において見られる他に、炎症反応に危急的に関与する組織に浸潤する。
被験体はぶどう膜炎を有し得る。ぶどう膜炎は、自己免疫障害(関節リウマチ、ベーチェット病、強直性脊椎炎、サルコイドーシスなど)の構成成分として、孤立した免疫媒介性の眼障害(毛様体扁平部炎または虹彩毛様体炎など)として、既知の病因に関連しない疾患として、目の外科損傷または外傷後に、およびぶどう膜組織中に抗体-抗原複合体を沈着させるある特定の全身性疾患後に起こり得る。ぶどう膜炎としては、ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト-小柳-原田症候群、バードショット網脈絡膜症(birdshot chorioretinopathy)および交感性眼炎に関連する眼炎症が挙げられる。したがって、非感染性ぶどう膜炎は、感染性因子なしで起こる。
多様な感染性因子もまた、ぶどう膜炎を引き起こすことがある。感染性病因が診断されている場合、適切な抗菌薬を与えて疾患を治癒することができる。しかしながら、ぶどう膜炎の病因は大部分の場合に解明されないままである。
別段の説明をしなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似または相当する方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および例は例示的なものに過ぎず、限定を意図するものではない。
SERMおよび医薬組成物
タモキシフェンは、米国特許第4,536,516号(参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示される、1-(p-ベータ-ジメチルアミノエトキシフェニル(dimethyaminoetho- xyphenyl))-1,2-ジフェニルブタ-1-エンのトランス異性体である。代替的な名称は、(Z)-2-[p-(1,2-ジフェニルブタ-1-エニル)フェノキシ]エチルジメチルアミンである。タモキシフェンの構造を以下に示す。
タモキシフェン、ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物は、女性における乳がんの処置などの、ホルモン依存性腫瘍の処置において有用であることが公知である(米国特許出願公開第2003/0158160号を参照)。その臨床使用の総説が、利用可能であり、例えば、FurrおよびJordanによる「Pharmacology and Therapeutics」、1984年、25巻、127~205頁において利用可能である。タモキシフェンの薬学的に許容される塩は公知である。好適な薬学的に許容される酸付加塩(acid-addition salt)は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩またはD-グルコン酸塩である。タモキシフェンは、NOLVADEX(登録商標)という商標名の下で販売されている。
タモキシフェン、またはその塩(「薬学的に許容される塩」とも呼ばれる)もしくは誘導体は、「抗エストロゲン」の、選択的エストロゲン受容体モジュレーターである。タモキシフェンなどの抗エストロゲンは、乳がん(Powles, T. J.、Nat Rev Cancer、2巻:787~794頁、2002年)および乳がんの再発(Jordan, V. C.、Nat Rev Drug Discov、2巻:205~213頁、2003年)のリスクを劇的に低減させることが示されている。タモキシフェンは部分アゴニストであり、アゴニスト応答またはアンタゴニスト応答のいずれかの誘導について種および組織の両方に特異性を呈する。ラットおよびヒトの両方において、タモキシフェンは部分的なアゴニズムを呈し、例えば、乳房においてアンタゴニスト効果を生じるが、膣および子宮内膜においてアゴニスト効果を生じる。長期間のタモキシフェンの使用は、対側乳がんの発生の減少(アンタゴニスト)、高リスクの女性における原発性乳がんの発生の低減(アンタゴニスト)、骨密度の維持(アゴニスト)、および子宮内膜癌のリスクの増加(アゴニスト)に関連付けられている。乳がんの処置に使用される用量で、タモキシフェンは網膜症に関連付けられている。本開示は、網膜変性の処置または予防のためのタモキシフェン、ならびにその塩および誘導体の使用に関する。
タモキシフェンの誘導体は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2016/0075726号、米国特許出願公開第2006/0105041号および米国特許出願公開第2004/0138314号(これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。米国特許第5,219,549号(参照することにより本明細書に組み込まれる)には、フルオロタモキシフェンなどの、分子のアルキル鎖がフッ素またはヨウ素で置換されたタモキシフェン誘導体が開示されている。化合物4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)、または1-[4-(2-N-ジメチルアミノエトキシ)-フェニル]-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルブタ-1-(Z)-エンは、よく特徴付けられた抗エストロゲン化合物タモキシフェンの活性代謝物を構成する。cis異性体およびトランス異性体の両方が存在し、それらのいずれも、単独でまたは組み合わせで、有用である。4-ヒドロキシタモキシフェンを調製する方法は周知である。例えば、米国特許第4,919,937号(参照することにより本明細書に組み込まれる)には、いくつかの段階で起こる合成由来の方法が開示されている:段階1- 4-(β-ジメチルアミノエトキシ)-α-エチルデオキシベンゾインと臭化p-(2-テトラヒドロピラニルオキシ)フェニルマグネシウムとの反応;段階2--段階1とは別に、1,2-ジフェニル-1-ブタノンのヒドロキシル化による1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニル-1-ブタノンの形成;段階3--段階1の製造物と段階2の製造物との反応による1-(4-ジメチルアミノエトキシフェニル)-1-[p-2-テトラヒドロピラニルオキシ)フェニル]-2-フェニルブタン-1-オールの形成;段階4--メタノール/塩酸での脱水による、1-[p-(β-ジメチルアミノエトキシ)フェニル]-トランス-1-(p-ヒドロキシフェニル-1)-2-フェニル-1-ブタ-1-エン=4-OH-タモキシフェンのシス異性体およびトランス異性体の混合物の製造;段階5--クロマトグラフィーおよび結晶化による一定の比活性へのシス異性体およびトランス異性体の分離。好適な用量は、例えば米国特許第7,485,623号(参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
以下に示すラロキシフェン([6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチオフェン-3-イル]-[4-[2-(1-ピペリジル)エトキシ]フェニル]-メタノン)もまた、本明細書に開示される方法において有用である。ラロキシフェンの構造を以下に示す:
バゼドキシフェン(1-{4-[2-(アゼパン-1-イル)エトキシ]ベンジル}-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-1H-インドール-5-オール)は、Pfizerによって開発された第三世代のSERMであり、その構造を以下に示す:
バゼドキシフェンは、閉経後骨粗しょう症における使用のために認可されており、性交疼痛、乳がん(breast cncer)、および膵臓がんの処置のために使用されている。バゼドキシフェンもまた、本明細書に開示される方法において有用である。
アルゾキシフェン(2-(4-メトキシフェニル)-3-[4-(2-ピペリジン-1-イルエトキシ)フェノキシ]-1-ベンゾチオフェン-6-オール)は、乳房および子宮組織において強力なエストロゲンアンタゴニストであると同時に、エストロゲンアゴニストとして作用して骨密度および低血清コレステロールを維持するSERMである。アルゾキシフェンもまた、本明細書に開示される方法において有用である。アルゾキシフェンの構造を以下に示す:
デスメチルアルゾキシフェン(2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[4-(2-ピペリジン-1-イルエトキシ)フェノキシ]-1-ベンゾチオフェン-6-オール)もまたSERMであり、本明細書に開示される方法において有用である。デスメチルアルゾキシフェンは、ヒト乳房上皮細胞株のエストロゲン誘導性の悪性転換を遮断する(Kastratiら、PLOS One 6巻(11号):e27876頁、2011年)。デスメチルアルゾキシフェンの構造を以下に示す:
したがって、一部の実施形態では、方法は、治療有効量のラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体を投与することを含む。
したがって、局所的使用(例えば、外用または目の移植片内)のためおよび全身的使用のための両方の医薬組成物が提供される。被験体は、哺乳動物被験体などの任意の被験体であってよい。したがって、本開示は、ヒトまたは獣医学用薬剤における使用のために処方された、SERM、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む医薬組成物をその範囲内に含む。一実施形態では、SERM、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、経口投与のために処方される。
ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMを含む医薬組成物は、選択された具体的な投与方式に応じて、適切な固体または液体担体と共に処方することができる。経口投与の場合、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、任意の具体的な投与経路のために処方することができる。経口投与の場合、矯味矯臭薬、着色料(color)および甘味剤を加えることができる。経口処方物は、液体(例えば、シロップ、溶液、または懸濁物)、または固体(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル)であり得る。固体組成物の場合、従来の非毒性固体担体は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかであろう。
本開示において有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は従来のものである。例えば、非経口処方物は、通常、水、生理食塩水、他の平衡塩溶液、水性デキストロース、またはグリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体ビヒクルである注射可能な流体を含む。所望の場合、投与される医薬組成物は、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートといった、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質も含有し得る。
医薬組成物は、SERMおよび薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。そのような賦形剤は、組成物を与えられる個体にとって有害な抗体の産生をそれ自体では誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬物質を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩といった薬学的に許容される塩が、その中に含まれ得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質がそのようなビヒクル中に存在してもよい。薬学的に許容される賦形剤の綿密な議論はREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub. Co.、N.J.、1991年)において入手できる。
開示される組成物のいずれかに存在する様々な賦形剤の量は様々であり、当業者によって容易に決定される。例えば、BSAなどのタンパク質賦形剤が存在する場合、それは、1.0重量(wt.)%~約20重量%、例えば10重量%などの濃度で存在することができる。グリシンなどのアミノ酸が処方物において使用される場合、それは約1重量%~約5重量%の濃度で存在することができる。ソルビトールなどの炭水化物が存在する場合、それは約0.1重量%~約10重量%、例えば約0.5重量%~約15重量%、または約1重量%~約5重量%の濃度で存在することができる。ポリエチレングリコールが存在する場合、それは一般に、約2重量%~約40重量%程度、例えば約10重量%から約25重量%で存在することができる。プロピレングリコールが対象処方物において使用される場合、それは、典型的に、約2重量%~約60重量%、例えば約5重量%~約30重量%の濃度で存在する。ソルビタンエステル(TWEEN(登録商標))などの界面活性剤が存在する場合、それは約0.05重量%~約5重量%、例えば約0.1重量%~約1重量%の濃度で存在することができる。米国特許出願公開第2012/0219528号(参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。
医薬組成物の剤形は、選択された投与方式によって決定される。例えば、外用および経口処方物を用いることができる。
ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMを含む医薬組成物は、一部の実施形態では、正確な投与量の個々の投与のために好適な単位剤形に処方することができる。投与される活性化合物(複数可)の量は、処置されている被験体、病気の重篤度、および投与の様式に依存し、処方する医師の判断に任せることができる。これらの制約内で、投与される処方物は、網膜変性の処置または予防などの、処置されている被験体において所望の効果を達成するために有効な量で活性成分(複数可)の量を含有することになる。効果はまた、ミクログリア、または特定の目の運動反応に対するものであり得る。SERMは、追加の治療剤と共に処方することができる。
一部の実施形態では、SERMは、目への送達のために処方される。外用調製物としては、点眼剤、軟膏、噴霧剤などを挙げることができる。点眼剤または噴霧剤は、単位用量ディスペンサー(ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMを単独で、または他の治療剤と組み合わせて含有する定量単位用量を分注する点眼剤ボトルなど)として提供することができる。
SERMは、硝子体内投与などの目への外用適用または注射のいずれかのための不活性マトリクス中に含まれてよい。不活性マトリクスの一例として、卵ホスファチジルコリン(PC)などのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)からリポソームを調製することができる。陽イオン性および陰イオン性リポソームなどのリポソームは、当業者に公知の標準的な手順を使用して作ることができる。SERMを含むリポソームは、液滴の形態または水ベースのクリーム剤のいずれかとして外用で適用することができ、または眼内に注射することができる。外用適用のための処方物において、リポソームカプセルが摩耗および眼表面からの涙により分解するにつれて、SERMが時間をかけてゆっくりと放出される。眼内注射のための処方物において、リポソームカプセルは細胞による消化により分解する。これらの処方物の両方は、緩徐放出薬物送達システムの利点を提供し、SERMが時間をかけて実質的に一定の濃度で被験体に曝露されることを可能とする。一例では、SERMは、以前に記載したようなDMSOまたはアルコールなどの有機溶媒中に溶解させることができ、またポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはポリカプロラクトンポリマーを含有し得る。
ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、インプラントまたは注射の大きさ、形状および処方に応じて、目の中またはその周りの様々な部位に植込みまたは注射できる送達システム中に含まれてよい。SERMは単独で使用することができる。しかしながら、別の実施形態では、上記の少なくとも1つの薬剤などの少なくとも1つの追加の薬剤が、インプラントなどの送達システム中にSERMと共に含まれてよい。次いで、送達システムが目に導入される。好適な部位としては、前房、前眼部、後房、後眼部、硝子体腔、脈絡膜上腔、結膜下、上強膜、角膜内、角膜上および強膜が挙げられるがこれらに限定されない。一例では、SERM送達システムは、目の前房中に配置される。別の例では、SERM送達システムは、硝子体腔中に配置される。
鉗子による、または強膜(例えば、2~3mmの切開)または他の好適な部位に切開を作った後のトロカールによる配置などの様々な方法によってインプラントを目に挿入することができる。一部の場合には、別に切開を作ることなく、代わりにトロカールで目に直接的に穴を形成することによって、トロカールによってインプラントを配置することができる。配置の方法は、放出動態に影響することがある。例えば、トロカールでの硝子体または後房へのデバイスの植込みは、鉗子による配置よりもデバイスが硝子体内に深く配置される結果をもたらすことがあり、これは、インプラントが硝子体の端部により近くなることを結果としてもたらし得る。植込まれたデバイスの場所は、デバイス周囲のSERMの濃度勾配に影響を及ぼすことがあり、したがって放出速度に影響を及ぼし得る(例えば、硝子体の端部により近く配置されたデバイスは、より遅い放出速度を結果としてもたらし得る。米国特許第5,869,079号および米国特許第6,699,493号を参照)。
SERMは、所望の効果を達成するために充分な期間にわたり目に送達される。したがって、一実施形態では、SERMは、少なくとも約2日、例えば、約5日、7日、10日、14または21日にわたり送達される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、少なくとも約1週、少なくとも約2週、少なくとも約3週、少なくとも約4週、少なくとも約5週、少なくとも約6週、少なくとも約7週、少なくとも約8週、少なくとも約9週、少なくとも約10週、および少なくとも約12週にわたり送達される。一実施形態では、インプラントの使用により長期の送達期間が達成される。SERMの使用の継続時間は、患者の病歴および他の寄与因子(他の薬剤の使用など)であり得る。長期の投与期間が必要とされる場合、SERMは、最大6ヶ月、または最大1年、2年、3年、またはより長くにわたり投与され得る。一実施形態では、長期放出のためにインプラントが利用される。1つより多くのインプラントを利用することもできる。例えば、いっそう長い期間にわたり濃度を維持するためにインプラントを硝子体に逐次的に植込むことができる。一実施形態では、より長い期間にわたり治療薬濃度を維持するために1つより多くのインプラントを目に逐次的に植込むことができる。
インプラントの使用は当該技術分野において周知である(米国特許第6,699,493号および米国特許第5,869,079号を参照)。一実施形態では、インプラントは、生体内分解性ポリマーマトリクスと会合させたSERMを用いて処方される。
一般に、インプラントが使用される場合、SERMは、ポリマーマトリクスを通じて均一に分布され、それにより、SERMは、ポリマーマトリクス中の薬剤の一様でない分布による放出速度における有害な変動が起こらないように充分に一様に分布される。用いられるポリマー組成物の選択は、所望の放出動態、インプラントの場所、患者の耐容性、および植込み手順の性質により様々である。ポリマーは、インプラントの少なくとも約10重量パーセントで含まれ得る。一例では、ポリマーは、インプラントの少なくとも約20重量パーセントで含まれる。別の実施形態では、インプラントは、1つより多くのポリマーを含む。これらの因子は、米国特許第6,699,493号に詳細に記載されている。ポリマーの特徴としては、一般に、植込みの部位における生分解性、目的の薬剤との適合性、カプセル化の容易さ、および水不溶性が特に挙げられる。一般に、薬物量(drug load)が放出されるまでポリマーマトリクスは完全には分解されない。好適なポリマーの化学組成は当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第6,699,493号を参照)。
目への送達のために、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、他の担体および溶媒と共に植込み可能な形態に処方され得る。例えば、緩衝剤および防腐剤を用いることができる。水溶性防腐剤としては、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ポリビニルアルコールおよびフェニルエチルアルコールが挙げられる。これらの薬剤は、約0.001~約5重量%、例えば約0.01~約2%の個々の量で存在し得る。用いられ得る好適な水溶性緩衝剤は、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムである。これらの薬剤は、システムのpHを約2~約9、例えば約4~約8、または約6~約7に維持するために充分な量で存在し得る。一例では、システムのpHは約7に維持される。そのため、緩衝剤は、組成物全体の重量対重量に基づいて5%程度であり得る。塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの電解質も処方物中に含めることができる。SERM、ポリマー、および任意の他の修飾剤の比率は、異なる比率でいくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定することができる。溶解または放出試験のためのUSPで承認された方法を使用して放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995年)1790~1798頁)。インプラントの大きさおよび形状もまた、目の特定の領域における使用のために様々であり得る(米国特許第5,869,079号を参照)。
SERMは、追加の治療剤と共に処方することができる。例示的な薬剤としては、シクロスポリン、FK506、ヒドロコルチゾンなどのステロイド、抗体(抗CD4またはIL-2受容体に特異的に結合する抗体など)、サイトカイン(ベータ-インターフェロンなど)、または非ステロイド性抗炎症剤が挙げられる。追加の薬剤としては、アミノグリコシド(minoglycoside)(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、ホルチミシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン)、アンフェニコール(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール)、アンサマイシン(例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシンsv、リファペンチン、リファキシミン)、β-ラクタム(例えば、カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム(例えば、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフクリジン(cefclidin)、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリンナトリウム、セフラジン、ピブセファレキシン(pivcefalexin))、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフィニノクス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム)、オキサセフェム、フロモキセフ、モキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタメートヨウ化水素酸塩(penethamate hydriodide)、ペニシリンGベネタミン、ペニシリンgベンザチン、ペニシリンgベンズヒドリルアミン、ペニシリンGカルシウム、ペニシリンGヒドラバミン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、チカルシリン)、その他(例えば、リチペネム)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシングルコヘプトネート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンプロピオネート、エリスロマイシンステアレート、ジョサマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン)、ポリペプチド(例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、フサファンギン、グラミシジンs、グラミシジン、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジン、チロスリシン、バンコマイシン、ビオマイシン、バージニアマイシン、亜鉛バシトラシン)、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、テトラサイクリン)、およびその他(例えば、シクロセリン、ムピロシン、ツベリン)などの抗菌性抗生物質が挙げられる。有用な薬剤としてはまた、2,4-ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム、テトロキソプリム、トリメトプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、塩化フラゾリウム、ニフラデン、ニフラテル、ニフルホリン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフルトイノール、ニトロフラントイン)、キノロンおよびアナログ(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキソリン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、クロラミン-b、クロラミン-t、ジクロラミンt、マフェニド、4’-(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン、スクシニルスルファチアゾール、スルファベンザミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファレン、スルファロクス酸(sulfaloxic acid)、スルファメラジン、スルファメテル、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン(sulfamidocchrysoidine)、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファニリル尿素、n-スルファニリル-3,4-キシルアミド、スルファニトラン、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール、スルファシマジン、スルファチアゾール、スルファチオ尿素、スルファトラミド、スルフィソミジン、スルフィソキサゾール)スルホン(例えば、アセダプソン、アセジアスルホン、アセトスルホンナトリウム、ダプソン、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン、スクシスルホン、スルファニル酸、p-スルファニリルベンジルアミン、スルホキソンナトリウム、チアゾールスルホン)、およびその他(例えば、クロフォクトール、ヘキセジン、メテナミン、メテナミン無水メチレンクエン酸塩、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、スルホサリチル酸メテナミン、ニトロキソリン、タウロリジン、キシボルノール)などの合成抗菌剤が挙げられる。
有用な追加の薬剤としては、ポリエン(例えば、アムホテリシンB、カンディシジン、デンノスタチン(dennostatin)、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペシロシン、ペリマイシン)、その他(例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ツベルシジン、ビリジン)アリルアミン(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン)、イミダゾール(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾール(chlormiidazole)、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、チオカルバメート(例えば、トルシクレート、トリンデート、トルナフテート)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール)、その他(例えば、アクリソルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロルアニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロクス、クロキシキン、コパラフィネート、ジアムタゾールジヒドロクロリド、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウジョチオン(ujothion)、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛)などの抗真菌性抗生物質が挙げられる。(1)抗生物質およびアナログ(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシン)、(2)葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、エダトレキセート、メトトレキセート、ピリトレキシム、プテロプテリン、Tomudex.RTM.、トリメトレキセート)などの代謝拮抗物質、(3)プリンアナログ(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン)、(4)ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール(tagafur))などの抗腫瘍剤もまた有用であり得る。
21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、シクロスポリン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタール、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-アセテート、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサセトニドなどのステロイド性抗炎症剤もまた含まれ得る。加えて、非ステロイド性抗炎症剤を使用することができる。これらとしては、アミノアリールカルボン酸誘導体(例えば、エンフェナム酸(enfenamic acid)、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート、トルフェナム酸)、アリール酢酸誘導体(例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、アムフェナク、アムトルメチングアシル、ブロムフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロジン酸(fenclozic acid)、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナク、インドメタシン、イソフェゾラク、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン、ピラゾラク、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン、ゾメピラク)、アリール酪酸誘導体(例えば、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、キセンブシン)、アリールカルボン酸(例えば、クリダナク、ケトロラク、チノリジン)、アリールプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ブクロキシ酸(bucloxic acid)、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロレン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、チアプロフェン酸、キシモプロフェン、ザルトプロフェン)、ピラゾール(例えば、ジフェナミゾール、エピリゾール)、ピラゾロン(例えば、アパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、スキシブゾン、チアゾリノブタゾン)、サリチル酸誘導体(例えば、アセトアミノサロール(acetaminosalol)、アスピリン、ベノリレート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニサル、エテルサレート、フェンドサル、ゲンチジン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1-ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリチルアミドo-酢酸、サリチル硫酸、サルサレート、スルファサラジン)、チアジンカルボキサミド(例えば、アンピロキシカム、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、ε-アセトアミドカプロン酸、s-アデノシルメチオニン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、α-ビサボロール、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、フェプラジノール、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オキサセプロール、パラニリン、ペリソキサール、プロクアゾン、スーパーオキシドディスムターゼ、テニダプ、およびジロートンが挙げられる。
処置方法
被験体における網膜変性を処置および/または予防する方法が本明細書に開示される。方法は、網膜変性を有する被験体、または網膜変性のリスクがある被験体を選択することを含み得る。一般に、治療有効量のSERM、例えば、以下に限定されないが、タモキシフェン、アフィモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、またはこれらの塩もしくは誘導体の1つまたは複数は、網膜変性を処置、阻害および/または予防するために充分である。一部の実施形態では、被験体は、進行中の光受容体の変性を有する。
一部の実施形態では、被験体における網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症またはレーバー先天性黒内障(LCA)を処置する方法が開示される。これらの方法は、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、またはLCAを有する被験体を選択すること、および有効量のSERM、例えば、タモキシフェン、アフィモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、またはこれらの塩もしくは誘導体の1つまたは複数を被験体に投与して、被験体における網膜変性を処置および/または予防することを含む。方法は、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症またはLCAなどの網膜変性を有する被験体を選択することを含み得る。
一部の実施形態では、被験体は、がんなどの腫瘍を有さない。一部の非限定的な例では、被験体は乳がんを有さない。被験体は、男性(雄)または女性(雌)であり得る。開示された方法を使用してヒトおよび獣医学的被験体が処置され得る。
被験体は、目の光毒性、特に、光線黄斑症とも呼ばれる光網膜症を有し得る。一部の実施形態では、光網膜症は、太陽への曝露によって引き起こされる。他の実施形態では、光網膜症は、人工光への曝露によって引き起こされる。被験体は、光線黄斑症としても公知の光網膜症のリスクを有し得る。例えば、被験体は、目へのレーザー処置を受けている者であり得るか、または溶接工であり得る。
方法は、以下に限定されないが網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症またはLCAなどの網膜変性のリスクを有する被験体を選択することを含み得る。
追加の実施形態では、被験体は、糖尿病網膜症を有し得る。方法は、糖尿病網膜症を有する被験体、または糖尿病の被験体などの糖尿病網膜症のリスクを有する被験体を選択することを含み得る。
一部の実施形態では、被験体は、光受容体の変性の特徴を有する疾患を有する。これらとしては、萎縮型および滲出型の加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、病的近視変性、網膜への光損傷が挙げられる。網膜色素変性症、シュタルガルト病、LCA、またはベスト病などの疾患は、遺伝子変異から生じ得る。他の実施形態では、被験体は、活性化されたミクログリアが網膜における神経炎症の増加に寄与する疾患を有する。これらとしては、後部ぶどう膜炎、眼内手術および網膜のレーザー処置への反応、遺伝子療法のためのウイルスベクターへの反応、および細胞ベースの(例えば、幹細胞)療法への反応が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる実施形態では、被験体は、ニューロン(すなわち、非光受容体)の変性が起こる疾患を有する。これらとしては、緑内障、網膜動脈閉塞症、および網膜静脈閉塞症が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の例では、被験体は後部ぶどう膜炎を有する。したがって、トキソプラスマ網脈絡膜炎(toxoplasma retinochroiditis)、網膜血管炎、特発性後部ぶどう膜炎、眼ヒストプラズマ症、トキソカラ症、サイトメガロウイルス網膜炎、特発性網膜炎、蛇行性脈絡膜症(serpinous choroidopathy)、急性多発性斑状色素上皮症、急性網膜壊死、バードショット脈絡膜症(bird shot choroidopathy)、白血病またはリンパ腫に関連するぶどう膜炎、細網肉腫、眼カンジダ症、結核性ぶどう膜炎、および狼瘡網膜炎(lupus retinitis)に罹患した被験体が処置され得る。
診断は、目の眼底を調べるおよび/または視野を評価する試験を利用することができる。これらとしては、網膜電図、蛍光血管造影、および視力検査が挙げられる。目の眼底の検査は、網膜の状態を評価することおよび網膜表面上の特徴的な色素斑の存在を評価することを目的とする。視野の検査は、光刺激に対する網膜の様々な部分の感受性を評価することを可能とする。網膜電図(ERG)を使用することができ、これは、特定の光刺激に反応した網膜の電気的活性を記録し、2つの異なる種類の光受容体(すなわち、錐体細胞および桿体細胞)の機能の別々の評価を可能とする。
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、任意の種類の網膜色素変性症を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、網膜色素変性症は、ロドプシン遺伝子、ペリフェリン遺伝子、および/または桿体において発現される他の遺伝子における変異によって引き起こされる。網膜色素変性症は、常染色体優性、常染色体劣性またはX連鎖性の様式で遺伝する遺伝的状態の結果であり得る。X連鎖性網膜色素変性症は、劣性であって男性(雄)に影響し得るか、または優性であって男性(雄)および女性(雌)に影響し得る。網膜色素変性症は、中心性黄斑色素変化(標的黄斑症)と共に存在する桿体-錐体網膜変性に関連し得る。網膜色素変性症は、X連鎖性劣性網膜変性疾患であるコロイデレミアであり得る。一般に、網膜色素変性症(RP)は、光受容体細胞の進行性の喪失によって特徴付けられる。
追加の実施形態では、本開示の方法は、加齢性黄斑変性症(AMD)を予防または処置するために使用することができる。一部の実施形態では、被験体は、(「乾性」AMDとも呼ばれる)萎縮型AMDを有し、網膜萎縮による症候性の中心視の喪失を有する。他の実施形態では、被験体は滲出型AMDを有する。
さらなる実施形態では、開示される方法は、LCAを有する被験体を処置するために有用である。
一部の実施形態では、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、全身投与される。全身性の投与の方式としては、経口経路および非経口経路が挙げられる。非経口経路の例としては、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、鼻腔内および腹腔内の経路が挙げられる。全身投与される成分は、目に成分を標的化するために改変または処方され得る(上記を参照)。特定の非限定的な例では、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、経口投与される。
ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、繰り返し投与され得る。一部の実施形態では、SERMは、10、15、20、25、または30日にわたり投与される。さらなる実施形態では、SERMは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり投与される。追加の実施形態では、SERMは、最長6ヶ月、または1年、2年、3年、またはより長くにわたり投与され得る。一部の例では、SERMは、特定の期間にわたり毎日、2日毎、3日毎、または週毎に投与され得る。SERM放出薬物デポまたは持続放出インプラントもしくはデバイスなどの持続放出処方物を使用することもできる。
SERMの好適な経口処方物は、例えば、錠剤またはカプセルであり、好ましくは、例えば、約10、20、30または40mg/kgの治療剤を含有する錠剤である。一部の実施形態では、SERMは、1日当たり約20mg/kg~約160mg、例えば約20mg/kg~約80mg/kg(例えば、約20mg/kg~約40mg/kg)の範囲内の用量で、単回用量または分割用量として、投与され得る。特定の非限定的な例では、用量は毎日投与される。
他の実施形態では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、約10mg/kg~約80mg/kgの用量で経口投与される。他の実施形態では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、約40mg/kg~約80mg/kgの用量で経口投与される。一部の例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、約40、45、50、55、60、65、70、75または80mg/kgの用量で経口投与される。特定の非限定的な例では、この用量は毎日投与される。
ヒトのためのさらなる実施形態では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、毎日約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で経口投与される(約10mg/kg/日、成人のヒトで約0.81mg/kg/日の用量に相当する)。一部の非限定的な例では、タモキシフェンは、毎日約3.2mg/kg~約6.5mg/kgの用量で経口投与される。好適な用量としては、約0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、4.9mg/kg、6.0mg/kg、6.1mg/kg、6.2mg/kg、6.3mg/kg、6.4mg/kgおよび6.5mg/kgが挙げられるがこれらに限定されない。タモキシフェンは、固体または液体処方物などの任意の経口処方物における投与のために処方され得る。タモキシフェンは毎日投与され得る。
一部の実施形態では、タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体は、10、15、20、25、または30日にわたり投与される。さらなる実施形態では、タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはラロキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり投与される。追加の実施形態では、タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体は、最長6ヶ月、または1年、2年、3年、またはより長くにわたり投与され得る。一部の例では、タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体は、特定の期間にわたり毎日、2日毎、3日毎、または週毎に投与され得る。一部の例では、タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体は毎日投与される。
非限定的な一例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、最低1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり、毎日約40mg/kg~約80mg/kgの用量で経口投与される。他の非限定的な例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、最低1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり、毎日約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で経口投与される。追加の実施形態では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、最長6ヶ月、または1年、2年、3年、またはより長くにわたり経口投与され得る。一部の例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、特定の期間にわたり毎日、2日毎、3日毎、または週毎に経口投与され得る。一部の例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、毎日経口投与される。一部の非限定的な例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、少なくとも3ヶ月、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり、毎日約40mg/kg~約80mg/kgの用量で経口投与される。さらなる非限定的な例では、タモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体は、少なくとも3ヶ月、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月にわたり約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で毎日経口投与される。
投薬処置は、単回用量スケジュールであってもよいし、または上記で特定される量を最終的に送達する複数回用量スケジュールであってもよい。用量は間欠的であってもよい。さらに、被験体は、適宜複数回の用量が投与されてもよい。一部の実施形態では、被験体は、状態の発症前にSERMが投与される。
理論に縛られることはないが、SERMは網膜において炎症反応の下方調節を誘導し、ミクログリアの活性化を減少させ、光受容体および網膜ニューロンに対して保護を提供する。SERMの前処置投与は、網膜の神経炎症および/または光受容体損傷の切迫したまたは起こり得る事象に対して保護を提供し得る。これらとしては以下が挙げられるがこれらに限定されない:網膜の直接的な光照射を伴う眼内手術または眼処置、熱または機械的な傷害が持続し得る網膜へのレーザーまたは外科処置、網膜デバイス、眼内薬物放出デバイス、または眼内インプラントの植込み、網膜細胞の植込み、ウイルスベクターの眼内送達、網膜における病的事象への高リスクの進行、例えば、切迫した網膜動脈/静脈閉塞、硝子体または網膜の出血。
個々の用量は、典型的に、被験体に対して測定可能な効果を生じさせるために必要とされる量以上であり、対象組成物またはその副生成物の吸収、分布、代謝、および排泄(「ADME」)の薬物動態および薬理学に基づいて、したがって被験体内での組成物の処分に基づいて、決定することができる。これは、投与経路の他に投与量の検討を含み、これらは局所および全身(例えば、経口)適用のために調整することができる。用量の有効量および/または用量レジメンは、前臨床アッセイから、安全性および漸増および用量範囲の試験、個々の医師と患者間の関係の他に、in vitroおよびin vivoのアッセイから、経験的に容易に決定することができる。一般に、これらのアッセイは、網膜変性、または網膜変性に影響する生物学的成分(サイトカイン、特定の炎症細胞、ミクログリアなど)の発現を評価する。
投与の局所的な方式の例としては、眼内、眼窩内、結膜下、テノン下、網膜下または経強膜の経路が挙げられる。一実施形態では、全身投与(例えば、静脈内)された時と比べて局所的(例えば、硝子体内)に投与された時に、(全身性のアプローチと比べて)有意により少量の成分が効果を呈し得る。一実施形態では、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、タモキシフェンおよび/またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体などのSERMは、例えば網膜下注射によって、網膜下に送達される。網膜下注射は、例えば黄斑下注射によって、直接的に黄斑中に行われ得る。例示的な方法としては、眼内注射(例えば、眼球後、網膜下、黄斑下、硝子体内および脈絡膜内(intrachoridal))、イオン導入、点眼剤、および眼内植込み(例えば、硝子体内、テノン下および結膜下)が挙げられる。
一実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、硝子体内注射によって送達される。硝子体内注射は、網膜剥離のリスクが比較的低い。目への薬剤の投与のための方法は医療分野で公知であり、本明細書に記載される成分を投与するために使用することができる。
投与は、単回投与、周期ボーラスまたは連続注入として提供することができる。一部の実施形態では、投与は、内部リザーバーから(例えば、眼内または眼外の場所に配置されたインプラントから(米国特許第5,443,505号および同5,766,242号を参照))または外部リザーバーから(例えば、点滴静注バッグ(intravenous bag)から)為される。成分は、目の内壁に固定された持続放出薬物送達デバイスからまたは脈絡膜中への標的化された経強膜制御放出(例えば、PCT/US00/00207、PCT/US02/14279、Ambatiら、Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 41巻:1181~1185頁、2000年、およびAmbatiら、Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 41巻:1186~1191頁、2000年を参照)を介して特定の期間にわたり連続放出により投与され得る。目の内側に局所的に成分を投与するための好適な様々なデバイスが当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,251,090号、米国特許第6,299,895号、米国特許第6,416,777号、米国特許第6,413,540号、およびPCT国際公開第PCT/US00/28187号を参照。
一部の実施形態では、対象方法は、網膜変性の発症の予防、網膜変性の進行の停止、および/または網膜変性の進行の反転などの治療的利益を結果としてもたらす。被験体は、以下に限定されないが網膜色素変性(retinitis pigmenosa)、加齢性黄斑変性症またはLCAなどの、任意の形態の網膜変性を有し得る。
一部の実施形態では、方法は、治療的利益が達成されたことを検出するステップを含む。治療効能の尺度は、改変させた特定の疾患に適用することができ、治療効能を測定するために使用するための適切な検出方法を認識するであろう。好適な試験が以下に開示され、これはミクログリアおよび眼運動反応に対する効果を含む。一部の非限定的な例では、SERMが網膜ミクログリアの活性化および炎症促進性サイトカインの発現を低減させるかどうかが決定される。
一部の実施形態では、治療効能は、眼底写真撮影またはERG反応の評価によって観察され得る。方法は、対象組成物の投与後の試験結果を対象組成物の投与前の試験結果に対して比較することを含み得る。
別の例として、進行性錐体機能障害の処置における治療効能は、錐体機能障害の進行速度の低減として、錐体機能障害の進行の停止として、または錐体機能の改善として観察することができ、これらの効果は、網膜電図検査(ERG)および/またはcERG;色覚試験;機能的な順応光学;および/または視力検査などによって、例えば、対象組成物の投与後の試験結果を対象組成物の投与前の試験結果に対して比較すること、および錐体の生存度および/または機能における変化を検出することによって、観察され得る。一部の実施形態では、SERMは、光受容体の喪失を遅らせ、光受容体の機能の減少を低減させ、および/または視覚機能の喪失を低減させる。
別の例では、視覚不全の処置における治療効能は、個体の視覚、例えば、赤色波長の知覚、緑色波長の知覚、青色波長の知覚における変化としてであってよく、これらの効果は、cERGおよび色覚試験によって、例えば、対象組成物の投与後の試験結果を対象組成物の投与前の試験結果に対して比較すること、ならびに錐体および桿体の生存度および/または機能における変化を検出することによって、観察され得る。一部の実施形態では、方法は、形態および構造の保存の評価および/またはERGを含む。
以下の非限定的な例により本開示を例証する。
光受容体の変性は、現状では処置が存在しない網膜色素変性症および萎縮型加齢性黄斑変性症などの多数の失明性の網膜疾患における非可逆的な視力喪失の原因である。光受容体の変性の2つの別々のマウスモデルを使用して、選択的エストロゲン受容体モジュレーターであり、網膜毒性と以前に結び付けられた薬物であるタモキシフェンが網膜において強力な神経保護効果を呈することを実証した。光誘導性の光受容体の変性のモデルにおいて、タモキシフェン処置は、光受容体のアポトーシスの発症および萎縮を予防し、網膜電図反応の正常に近いレベルを維持した。このレスキューは、in vivoでの網膜におけるミクログリアの活性化および炎症性サイトカイン産生の低減、およびin vitroでの光受容体に対するミクログリア媒介性の毒性の低減に相関し、これは、タモキシフェンが、調節不良の網膜ミクログリアの活性化の抑制を介して神経保護を付与し得ることを指し示す。タモキシフェンの保護効果はまた、網膜色素変性症のrd10遺伝モデルにおいても観察され、網膜構造、電気生理学的反応、および視覚挙動における有意な改善を付与した。タモキシフェンは、網膜変化の低頻度の発生と以前に臨床的に関連付けられたが、進行中の光受容体の変性を有する患者において広範な神経保護効果を実際に呈することを結果は実証する。
(実施例1)
材料および方法
実験動物:若年成体野生型(WT)C57BL/6JマウスおよびPde6brd10(rd10)変異についてホモ接合のマウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得た。両方の性別の生後rd10マウス(21~50日齢)および若年成体WTマウス(2~3月齢)を米国国立衛生研究所の動物施設において周期的な光(約100ルクス、12:12時間)の下で育てた。全ての実験は、当地の動物実験委員会によって承認され、眼科および視覚研究におけるAssociation for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)の動物使用に関する声明に準拠したプロトコールにしたがって実行した。タモキシフェン処置群について、実験の継続時間にわたり標準飼料の代わりにタモキシフェン添加マウス飼料(500mg/kg、Envigo、Indianapolis、IN)をマウスに与えた。
網膜の光損傷のマウスモデル:実験動物を暗室中で7日間暗順応させた後、外用のトロピカミド(1%、Alcon、Fort Worth、TX)およびフェニレフリン(10%、Alcon、Fort Worth、TX)による瞳孔散大に供した。充分な散大後に、2×104ルクスの拡散白色蛍光(Sunlite Manufacturing、Brooklyn、NY)に動物を2時間曝露した。光曝露後に、環境の周期的な光(約100ルクス、12:12時間)の典型的な条件にマウスを維持し、その条件下で動物を飼育した。タモキシフェン処置群について、動物に光損傷の7日前から開始してタモキシフェン添加飼料を与え、その後に同じ食餌を維持した。タモキシフェンを投与しない対照群には全ての時点において別のケージ中で標準的なマウス飼料を与えた。
in vivoでの光干渉断層法(OCT)イメージングおよび眼底自発蛍光イメージング:腹腔内ケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(8mg/kg)でマウスを麻酔し、瞳孔を散大させた。光干渉断層法(OCT)イメージングシステム(Bioptigen、Durham、NC)を使用して網膜の構造を評価した。光損傷モデルにおける網膜の変化を記録するために、暗順応の前およびその後の光曝露後の異なる時点で動物をイメージングした。視神経を中心とする1.4mm×1.4mmのボリュームスキャン(1000のAスキャン/水平Bスキャン、33の水平Bスキャン、平均3フレーム/Bスキャン、各0.0424mmの間隔)を捕捉した。直径1.2mmの円形グリッドの各四分円における網膜の厚さの測定値を製造者のソフトウェアを使用して算出した。網膜全体の厚さ(硝子体表面からRPE層まで測定した)および外側網膜の厚さ(外網状層の硝子体表面からRPE層の硝子体表面まで測定した)を、自動化された網膜の分割後にOCT像から記録した。rd10マウスにおける網膜の変化を記録するために、追加の水平および垂直リニアスキャン(1.4mm幅、1000のAスキャン/Bスキャン、平均20フレーム/Bスキャン)を視神経乳頭を中心とするスキャンにより得た。これらの垂直および水平Bスキャンにおいて、スキャン中のONLの面積を線で取り囲み、手動で測定した。外側網膜の面積を、測定された網膜の長さで割ることによって平均の外側網膜の厚さを算出した。488nmの波長励起で共焦点走査型レーザー検眼鏡検査(cSLO、Heidelberg Engineering、Heidelberg、Germany)を使用して眼底自発蛍光イメージングを行った。視神経乳頭を中心とする視野を用いて中心の30°にわたって眼底像を得た。
網膜電図解析:Espion E2システム(Diagnosys、Littleton、MA)を使用して網膜電図(ERG)を記録した。終夜の暗順応後に上記の通りにマウスを麻酔した。瞳孔を散大させ、塩酸プロパラカイン(0.5%、Alcon)の液滴を表面麻酔のために角膜に適用した。参照電極を口腔内に、接地した皮下電極を尾に置いて、金ワイヤループ電極を用いて両目から同時にフラッシュERG記録を得た。暗順応条件下で1×10-4~10cd・s/m2、および桿体機能を飽和させるバックグラウンド光下で0.3~100cd・s/m2の範囲にわたって光強度を増加させてERG反応を得た。フラッシュ間の刺激間隔は、最も低い刺激強度での5秒から最も高い刺激強度での60秒まで変化させた。フラッシュ強度に応じて2~10の反応を平均化した。ERGシグナルを1kHzでサンプリングし、0.3Hzの低周波数および300Hzの高周波数カットオフで記録した。高周波数の振動する潜在的な小波をデジタルでフィルター除去するカスタマイズしたEspion ERG Data Analyzerソフトウェア(v2.2)を使用してa波振幅およびb波振幅の解析を行った。a波振幅はベースラインから負のピークまでで測定し、b波はa波の谷から最大の正のピークまでで測定した。光損傷モデルについて、光曝露の1週間後にERGを記録した。rd10マウスについて、P29およびP50にERGを記録した。二元配置分散分析を使用して非処置対照とタモキシフェン処置マウスとの間の統計的有意性を解析した。
視運動性反応(OKR)の測定:移動する格子の形態の視覚刺激に対して挙動する覚醒したマウスの視運動性反応(OKR)をカスタム設計の装置を使用して測定した(Kretschmerら、Journal of Neuroscience Methods、2015年)。視運動性反応は、以前に記載された通りに(Wangら、2016年)、タモキシフェン処置(P21に処置を開始)を伴うrd10マウスおよび非処置対照においてP49に測定した(対照群にn=7匹の動物、タモキシフェン処置群にn=9匹の動物)。簡潔に述べれば、マウスをプラットフォーム上に位置付け、試験動物を取り囲む4つのLCDスクリーン上に12度/秒の刺激速度で0.025、0.05、0.1、015、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.425、および0.45周期/度の空間周波数の最大コントラストで正弦格子を提示した。格子と装置の中心に位置する試験動物の水平視野との間の一定距離を維持する仮想円柱を作り出すオープンソースのソフトウェアプログラムを使用して刺激の提示を制御した。
誘発された視運動反射(OMR)を測定するために、動物の上に置いたカメラによって、制約されていない試験動物の頭の動きをビデオ録画し、マウスの頭の位置を追跡するアルゴリズムによって解析した。このデータを使用して、頭の位置を変化させる刺激の提示を自動的に再調整して、格子の大きさを一定に保った(使用した解析ソフトウェアOmrArenaは、以前に公開されたバージョンから改変した)(Kretschmerら、2013年)。オフライン解析の間の自動化されたアプローチを使用してOMR測定値を客観的に得、これは主観的なグレード付けまたは人間観察者からの入力を伴わない。動物の頭が刺激方向に動いた全時間量の、頭が刺激方向に逆らって動いた時間量に対する比(T正/T誤)としてOMR追跡挙動を定量化した。各動物を各条件下で1分間、5回測定した。明所視(9×1010Q・s/cm2)の光条件下でOMRを記録した。最大視運動反応の25%に対応する空間周波数として定義される視覚閾値の推定値も算出した。対応のないt検定を使用して非処置対照とタモキシフェン処置マウスとの間の統計的有意性を解析した。
網膜組織の免疫組織化学およびTUNEL標識:マウスをCO2吸入により安楽死させ、目を取り出した。摘出した目を解剖して後眼部の眼杯を形成し、次いでそれをリン酸緩衝食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)中4℃で2~4時間固定した。眼杯を、ビブラトーム用切片作製(厚さ100μmの切片、VT1000、Leica)のために加工するか、または解剖して網膜のフラットマウントを形成した。フラットマウントの網膜または網膜切片を、PBS中の6%正常ロバ血清(NDS)および0.5% Triton X-100を含有するブロッキング緩衝液中、室温で終夜ブロッキングした。一次抗体(Iba1、1:500、Wako、Richmond、VA;CD68、1:500、Bio-Rad、Raleigh、NC)をブロッキング緩衝液で希釈し、シェーカー中4℃で切片およびフラットマウントに終夜適用した。0.5% Triton X-100を含む1×PBSでの洗浄後、二次抗体(Alexa Fluor-488(または568)をコンジュゲート化したそれぞれロバ抗ウサギまたはラットIgG)および細胞核を標識するDAPI(1:500;Sigma)と共に切片を終夜インキュベートした。末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイ(Roche、Indianapolis、IN)を製造者の仕様書にしたがって使用して網膜細胞のアポトーシスを評価した。染色した網膜切片を共焦点顕微鏡法(FluoView 1000、Olympus)によりイメージングした。20×対物レンズを使用して多平面zシリーズを収集し、各zシリーズは20μmの深さに及び、各切片は1μmの間隔であった。FV100 Viewer Software(Olympus)およびImage J(NIH)を用いて共焦点画像のスタックを表示し、解析した。ONLの平均厚さの測定値および細胞密度(TUNEL+、Iba1+およびCD68+細胞)を、上方耳側四分円中の中間周辺網膜において得られた20×のイメージング視野にわたって算出した。
細胞培養および細胞生存度アッセイ:網膜ミクログリアを以前に記載された通りに1~2月齢C57BL/6J野生型マウスから単離した(Maら、Neurobiology of aging 34巻:943~960頁、2013年)。簡潔に述べれば、網膜細胞を2%パパインでの消化により解離させた後、粉砕および遠心分離を行った。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM):10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、Carlsbad、CA、USA)および非必須アミノ酸溶液(Sigma、St. Louis、MO、USA)を含むNutrientMixture F-12培地を含有する75cm2のフラスコ中に、再懸濁した細胞を移した。終夜培養後、培地およびあらゆる浮遊細胞を捨て、新鮮な培地と交換した。細胞がコンフルエンスまで増殖した時に、培養フラスコを穏やかに振とうしてミクログリア細胞を剥がし、それを6ウェルプレート中で継代培養した。継代培養したミクログリア(6ウェルプレート中2.5×105細胞/ウェル)をタモキシフェン(0、1、5、および10μg/ml)に2時間、次いで1μg/mlのLPSに16時間曝露した後、炎症性サイトカインのタンパク質発現について評価した。
マウスミクログリア細胞株(BV-2)細胞および光受容体様細胞株(661W)をこの研究において使用した。BV-2細胞を4×105/ウェルの密度で6ウェルプレートに蒔き、5% CO2の湿潤雰囲気中37℃で5%熱不活化FBS(Life Technologies Corporation、Grand Island、NY)を含有するDMEM培地(Life Technologies Corporation、Grand Island、NY)中で24時間培養した。BV-2細胞をタモキシフェン(1、5または10μg/ml、Sigma-Aldrich、St Louis、MO)またはビヒクル対照として0.5%エタノールと24時間プレインキュベートした。プロテアソーム阻害剤ALLN(100μg/ml、Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)との30分間のプレインキュベーション後、50ng/mlのリポ多糖(LPS、Sigma-Aldrich、St Louis、MO)で6時間BV-2細胞を刺激した後、馴化培地を回収した。ミクログリア媒介性の神経毒性を減少させるタモキシフェンの能力を調べるために、661W細胞を4×104/ウェルで96ウェルプレート中に6時間置いた後、対照、5μg/mlタモキシフェン、50ng/ml LPS、1μg/mlタモキシフェン+50ng/ml LPS、5μg/mlタモキシフェン+50ng/ml LPS、または10μg/mlタモキシフェン+50ng/ml LPSで処置したBV-2ミクログリアからの培養上清と48時間インキュベートした。MTT細胞増殖アッセイキット(ATCC、Manassas、VA)を製造者の仕様書にしたがって使用して661W光受容体の細胞生存度を評価した。
サイトカインレベルの測定:培養した細胞または網膜を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem、Gibbstown、NJ)を含むタンパク質溶解緩衝液(Complete Ultra、Roche)中4℃で粉砕することによって溶解した。超音波処理および遠心分離の後、タンパク質濃度を測定した(BCAprotein assay kit、Pierce)。MilliplexVRアッセイキット(Milliplex MAPマウスサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル、#MCYTOMAG-70K、Millipore Corp)を使用し、xPONENT 4.2ソフトウェア(Luminex Corporation)を使用するデータ解析と共にLuminex MAPIXシステムを使用してサイトカインレベルを決定した。
統計解析:統計解析は、統計ソフトウェア(Graphpad、San Diego、CA、USA)を使用して行った。2つのデータカラムを伴う比較について、データが正規性検定によって決定されるようにガウス分布に従うかどうかに応じて、t検定(対応のあるまたは対応のない)またはノンパラメトリック検定(マン・ホイットニー)を使用した。3つまたはそれより多くのデータカラムを伴う比較について、データがガウス分布に従っていれば一元配置分散分析(ダネットの多重比較検定を伴う)を使用し、そうでなければノンパラメトリックなクラスカル・ウォリス検定(ダンの多重比較検定を伴う)を使用した。二元配置分散分析を使用して、対照食餌処置動物に対してタモキシフェン処置動物からのデータセットを比較した。カイ二乗統計量を使用して、対照食餌処置動物に対してタモキシフェン処置動物における網膜剥離の有病率を比較した。0.05未満のP値を帰無仮説を拒絶するための根拠として設定した。グラフ中のエラーバーは標準誤差(SE)を指し示す。
(実施例2)
光誘導性損傷のモデルは光受容体のアポトーシスおよび光受容体機能の喪失を結果としてもたらす
野生型成体(2~3月齢)C57Bl6/Jマウスを光損傷(LI)に供し、in vivo OCTイメージングおよび組織学を使用してLIの効果を解析した。中心網膜におけるOCTイメージングは、LIの7日後の広範な網膜全体の薄厚化を明らかにし、これは網膜の上方耳側四分円において最も著明であった(図5A)。上方耳側四分円において得られたOCT Bスキャンは、LI後の最初の7日間にわたる外顆粒層(ONL)の進行性の薄厚化を実証し、これはその後に安定化された(図5B)。同等の網膜位置において得られた網膜切片における組織学的解析は、LIの1日後および3日後のTUNEL陽性光受容体の目立った出現を示し、これは7日後に減少した(図5C、図5D)。網膜切片の組織学的解析におけるONLの厚さの定量化は、in vivo OCTイメージングで観察された網膜の薄厚化の時間的パターンを裏付けた(図5E)。LIはまた、LIの7日後に暗順応および明順応のERGのa波振幅およびb波振幅の有意な減少を誘導し(図5F、図5G)、桿体および錐体の光受容体機能の同時の喪失を指し示した。以上を合わせると、成体C57Bl6/Jマウスにおける光誘導性損傷のこの現行モデルは、アポトーシス性光受容体の喪失として構造的におよび光刺激への反応の減少として機能的に明らかな、急性かつ時限的な損傷を光受容体に特異的に有効に誘導する。
(実施例3)
タモキシフェン投与は光損傷のモデルにおいて完全な構造的および機能的な光受容体のレスキューを提供する
LIの1週間前から開始して標準マウス飼料中の添加物としてタモキシフェンを実験動物に投与し(1日当たり80mg/kgのタモキシフェン摂取が推定される)、これをLI後に続けた。年齢を適合させた対照動物に標準飼料(タモキシフェンを加えていない)を与え、タモキシフェン処置動物の隣の別のケージ中で類似の光環境下で飼育した。LIの7日後に、OCTイメージングで対照動物において観察された上方耳側四分円を中心とする網膜の典型的な薄厚化は、全てのタモキシフェン処置動物においては存在しなかった(図1A)。同様に、対照動物において個々のOCT Bスキャンで観察されたONL層の薄厚化および浅い網膜剥離の存在もまた、タモキシフェン処置動物において概ね存在しなかった(図1B)。8つの別個の網膜位置(視神経の周りの上方、下方、耳側、および鼻側の四分円のそれぞれにおいて100~300μmおよび300~600μm)における自動化された分割後のOCT像からの網膜全体の厚さおよび外側網膜の厚さの定量化は、全ての網膜位置における網膜の厚さが対照に対してタモキシフェン処置動物において7日目に有意により大きいことを実証した(図1C)。タモキシフェン処置動物において、LIの7日後での網膜の積層した外見および網膜の厚さは、ベースラインで得られたものとほぼ同一であった。上記の結果は、両方の性別の動物からのデータをプールすることによって得られ、雌(n=17匹の対照、17匹のタモキシフェン処置)動物および雄(n=10匹の対照、10匹のタモキシフェン処置)動物についてデータを別々に解析した時に、両方の性別の動物において網膜構造に対する類似の保護効果が見られた(図6)。以上を合わせると、タモキシフェン投与は、動物の性別とは独立した様式で光誘導性光受容体損傷のモデルにおいて完全に近い構造的レスキューを提供した。
RPEからの神経網膜の浅い分離(すなわち、網膜剥離)の有病率をOCTを使用してこれらの実験群において評価した。網膜剥離は、遺伝性の光受容体の変性のマウスモデルにおいても観察される外側網膜変性の特徴である(Pennesiら、Invest Ophthalmol Vis Sci 53巻:4644~4656頁、2012年)。3つの別々の実験の反復における網膜剥離の有病率は全て、対照動物に対してタモキシフェン処置動物において有意により低く(図1D)、全体的な有病率は、対照動物での13/27に対してタモキシフェン処置動物において1/27であった(カイ二乗統計量=13.9、p=0.0002)。
LIの7日後のタモキシフェン処置動物および対照動物の他に、非損傷の年齢を適合させた対照に対してERG評価を行った。LI後に、タモキシフェン処置動物は、暗順応および明順応の両方のERGについて対照動物に対して有意により大きいa波振幅およびb波振幅を実証した(図1E)。LI後のタモキシフェン処置動物におけるERG振幅は年齢を適合させた非損傷対照におけるものに接近しており、これは、完全に近い機能的レスキュー効果がタモキシフェン処置によって誘導されたことを指し示し、OCTで観察された著明な構造的保護に相関した。
(実施例4)
タモキシフェン処置は光損傷によって誘導されたミクログリアの浸潤および活性化を低減させる
LIの前およびLI後の異なる時点にタモキシフェン処置動物および対照動物においてin vivo眼底自発蛍光イメージングを行った。LIの前に、最小の自発蛍光が眼底イメージングで観察された。対照食餌を与えた動物において、LIの3日後に行ったイメージングは、視神経の近くの孤立した自発蛍光の斑点の出現を実証した。これらの斑点は、その後、特にLIの7日後に上方耳側四分円において数および強度を増加させた後、LIの14日後に強度および数を減少させた(図2A)。モニターした全ての時点で、タモキシフェン処置動物において、観察された眼底の自発蛍光シグナルは最小であるか、または観察されなかった。これらの自発蛍光の斑点の原因を発見するために、フラットマウントの網膜組織をLIの14日後の対照動物から調製した。共焦点のイメージングで、in vivo眼底自発蛍光イメージングで観察されたものと大きさおよび分布が合致する自発蛍光の斑点が外側網膜のレベルで観察された(図2B)。これらの自発蛍光の斑点はIba1免疫陽性とよく共局在し、これは、網膜下ミクログリア蓄積の他のモデル(Maら、Neurobiology of aging 34巻:943~960頁、2013年)において観察されたLI後に外側網膜に浸潤した自発蛍光性網膜ミクログリアからこれらの斑点が生じたことを指し示した。
LI後の網膜ミクログリアの分布および活性化、ならびにこれらの特徴に対するタモキシフェン投与の効果を特徴付けるために、Iba1免疫組織化学を使用してLI後の異なる時点で網膜ミクログリアを網膜切片中で調べた。対照動物において、LIの1日後には既に、内側網膜中のミクログリアがそれらの突起をONL中に伸ばして、ONL中のTUNEL陽性の出現と同時に光受容体層への浸潤を開始したことが観察された(図2C)。対照動物におけるミクログリアの浸潤はLIの14日後までONL(図2G)および網膜下空間(図3H)において存続し続けた。活性化CD68免疫陽性ミクログリアの数もまた、LIの3日後から網膜下空間において増加した(図2D、図2I)。これらの観察は、光受容体層中への活性化されたミクログリアの浸潤はLI誘導性の変性の早期に起こり、光受容体のアポトーシスおよび変性の期間中に同時に存在したことを指し示す。タモキシフェン処置群において、ONLの厚さの最小の減少がLI後に観察され、OCTでの観察を裏付けた(図2E)。最小のTUNEL標識も観察された(図2F)。(CD68標識によって明らかにされた)形態、分布、および活性化状態もまた、LI後の全ての時点において非損傷対照からの変化が最小であった(図2G~図2I)。このデータは、ミクログリアの活性化および浸潤はLIモデルにおける早期の目立った特徴であったが、これらのミクログリアの変化はタモキシフェン処置により大きく阻害されたことを実証する。
(実施例5)
タモキシフェン投与はミクログリアの活性化および炎症性サイトカイン産生を抑制し、光受容体に対するミクログリアの毒性を低減させる
ミクログリアに対するタモキシフェンの効果を直接的に評価するために、培養した網膜ミクログリアをタモキシフェンに曝露し、鍵となる炎症性サイトカインのリポ多糖(LPS)誘導性のミクログリア上方調節に対するタモキシフェン前処置の効果を評価した。LPS刺激なしのタモキシフェン投与単独では、サイトカイン発現に対する最小の効果を有することが見出された(図3A)。しかしながら、ミクログリアのタモキシフェン前処置は、LPSに応答してサイトカイン発現の上方調節を有意に阻害した。これらのタモキシフェン効果は用量依存的であり、より多くの用量は1~10μgの範囲内でのLPS刺激に対してより大きな阻害を誘導し、これは、タモキシフェンがミクログリア細胞に直接的に作用して、損傷関連刺激に対するそれらの炎症促進性反応を低減できることを指し示す。LIの前のタモキシフェン処置もin vivoで網膜における炎症促進性サイトカイン産生を減少させるかどうかも評価した。対照食餌処置動物に対してタモキシフェン処置動物からの網膜全体におけるサイトカインレベルのタンパク質評価は、統計的に有意な程度までは減少しなかったが、非損傷網膜でのベースラインレベルに向かう全般的な減少傾向を実証し(図3B)、これは、タモキシフェン前処置がin vivoでLIへの反応におけるサイトカインのミクログリアによる上方調節を阻害し得ることを指し示す。
ミクログリアの活性化の阻害を光受容体の変性に関係付けるために、in vitroでのミクログリア-光受容体相互作用アッセイを行い、該アッセイでは、光受容体細胞株からの661W細胞をLPS刺激BV2ミクログリアからの馴化培地に曝露した。LPS刺激ミクログリアからの対照培地は光受容体の生存度の減少を誘導できるが、この負の効果はタモキシフェンでのBV2細胞の前処置によって低減され(図3C)、より多くの用量(5~10μg)は661Wの生存度のより大きなレスキューを与えた。タモキシフェン(5μg)それ自体では661W光受容体の生存度にいかなる効果も呈しなかった。以上を合わせて、これらの結果は、タモキシフェン処置は損傷シグナルに対するミクログリアの活性化を制限でき、したがって光受容体に対する結果的な炎症促進性の神経毒性効果を低減できることを指し示す。
(実施例6)
タモキシフェン投与は網膜色素変性症のrd10マウスモデルにおいて光受容体の変性の構造的および機能的レスキューを提供する
タモキシフェン処置が、網膜色素変性症(RP)などの光受容体の変性の他の病因において光受容体保護を提供できるかどうかを評価するために、ヒトRPの原因遺伝子(McLaughlinら、Nature Genetics 4巻:130~134頁、1993年)である光受容体特異的Pde6b遺伝子の変異により誘導されるRPのマウスモデルであるrd10マウス(Changら、Vision Research 47巻:624~633頁、2007年)においてタモキシフェン添加の効果を調べた。以前の研究では、rd10の網膜中の光受容体層に浸潤した活性化されたミクログリアが、貪食および炎症促進性の機序を介して光受容体の崩壊速度に非細胞自律的(non-cell autonomously)に寄与することが見出された(Zhaoら、上掲、2015年;Zabelら、上掲、2016年)。タモキシフェンによるミクログリアの活性化の阻害はRPにおける光受容体の変性を遅らせる助けになるという仮説を立てた。したがって、P21の離乳後のrd10マウスにタモキシフェン添加飼料を与え、標準飼料を与えた同腹子を対照として用いた。P42およびP49でのOCT測定値は、タモキシフェン処置動物における外側網膜の厚さが同腹子対照のものより有意に大きいことを実証した(図4A、図4B)。P49での浅い網膜剥離の有病率も、対照動物(14/14)に対してタモキシフェン処置動物(2/18)においてより低かった(カイ二乗統計量=24.9、p=0.00001)。P29およびP50でのERG評価は、同腹子対照に対してタモキシフェン処置動物において暗順応および明順応のERGにおける有意により大きいb波振幅を実証した(図4C)。
これらのレスキュー効果が処置動物の視覚能力の改善に関係するかどうかを評価するために、実験動物に視覚刺激を提示して視運動反応を評価した。P49でのタモキシフェン処置動物は、同腹子対照と比べて広範な空間周波数にわたって明所視の視運動反応が改善することを実証したことが見出された(図4D)。視運動反応を誘発するために充分な視覚刺激格子における最大空間周波数を近似する平均視覚閾値もまた、タモキシフェン処置動物において有意により大きかった。以上を合わせると、タモキシフェン処置はrd10マウスにおいて進行性の構造的および機能的な悪化を完全には予防しなかったが、対照に対して光受容体の厚さおよびERG反応において統計的に有意な改善があり、これはまた、機能的視覚作業における視覚能力の改善と解釈される。したがって、タモキシフェンはこれらの動物の処置において有効であった。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるタモキシフェンが、光誘導性の損傷のよく確立されたモデルにおいて網膜の光受容体の目立った構造的および機能的レスキューを誘導することが本明細書に開示される。光受容体の保護はミクログリアの浸潤および活性化の抑制、および炎症促進性サイトカインの上方調節と相関することが観察された。in vitroの研究は、タモキシフェンがLPS刺激後の培養された網膜ミクログリアにおいて炎症促進性サイトカイン産生を直接的に阻害し、661W光受容体細胞の喪失を誘導するBV2ミクログリアの能力を低減させることを示した。光受容体の変性に対するタモキシフェンの保護は網膜色素変性症(RP)などの網膜疾患の他のモデルに拡張でき、タモキシフェン処置は、RPのよく使用されるマウスモデルにおいて光受容体の喪失、光受容体機能の減少、および視覚機能の喪失を遅らせることができることがさらに見出された。
転移性乳がんの処置のために認可された薬物であるタモキシフェンは、標的組織および細胞種に応じてエストロゲン受容体(ER)に混在したアゴニスト作用およびアンタゴニスト作用を呈する(RiggsおよびHartmann、The New England Journal of Medicine 348巻:618~629頁、2003年)。中枢神経系(CNS)内で、タモキシフェンおよび他のSERMは、異なる細胞種に対して複合効果を呈し、それらが一緒になって最終的に、脊髄損傷(Ismailogluら、Official Journal of the Neurosurgical Society of Australasia 17巻:1306~1310頁、2010年;de la Torre Valdovinosら、Journal of Veterinary Medicine 2016:9561968、2016年)、穿通性脳損傷(Arevaloら、Journal of Neuroendocrinology 24巻:183~190頁、2012年;Franco Rodriguezら、Brain Research Bulletin 98巻:64~75頁、2013年;Barretoら、Frontiers in Aging nNeuroscience 6巻:132頁、2014年)、および照射(Liuら、Brain Research 1316巻:101~111頁、2010年)などの損傷の様々なモデルにおける神経保護効果に達することが報告されている。
タモキシフェンと網膜との間の文献で報告された関連性は全て、網膜内に現れる結晶性沈着物、浮腫、または嚢胞性空洞形成として明白なタモキシフェン関連の網膜毒性の発生を中心としてきた(NayfieldおよびGorin、Journal of Clinical Oncology: Official Journal of the American Society of Clinical Oncology 14巻:1018~1026頁、1996年;Gualinoら、American journal of Ophthalmology 140巻:757~758頁、2005年;Bourlaら、American Journal of Ophthalmology 144巻:126~128頁、2007年)。これらの特徴は、タモキシフェンを与えられた患者の低いパーセンテージにおいて見られ、不定の視覚症状および生理学的変化と関連する(Gorinら、American Journal of Ophthalmology 125巻:493~501頁、1998年;Salomaoら、Current Eye Research 32巻:345~352頁、2007年;Watanabeら、Documenta Ophthalmologica Advances in Ophthalmology 120巻:137~143頁、2010年)。しかしながら、タモキシフェンがin vitroで網膜細胞の傷害を誘導するという報告(Choら、Invest Ophthalmol Vis Sci 53巻:5344~5353頁、2012年;Kimら、Invest Ophthalmol Vis Sci 55巻:4747~4758頁、2014年)と共にこれらの臨床観察の結果として、光受容体の変性を予防または減速できるというタモキシフェンの本開示の保護効果は予測されるものではなかった。
ヒト患者における網膜毒性の報告とは対照的に、タモキシフェンのin vivo投与が目の毒性を結果としてもたらすという証拠はマウスモデルにおいて見出されていない。本明細書に開示される実験において、LI後にタモキシフェンを投与(80mg/kgで7日間毎日)された動物は、タモキシフェンを投与されなかった非損傷の年齢を適合させた対照におけるものとほぼ同一の網膜構造およびERG機能を実証した。より高用量のタモキシフェンがより長い期間にわたり投与された時に(500mg/kg、30日間にわたり5日毎の経口用量)、網膜の結晶または他の網膜の病理の出現は検出されず、ERG振幅の著明な変化も検出されなかった(Wangら、The Journal of Neuroscience: The Official Journal of the Society for Neuroscience 36巻:2827~2842頁、2016年)。Cre-ERTシステム(HayashiおよびMcMahon、Developmental Biology 244巻:305~318頁、2002年)を介してCreの組換えを誘導するために充分に高い用量の点眼剤としてのタモキシフェンの直接的な目への投与(5mg/mlの点眼剤を5日間にわたり毎日3回、単一の10μlの液滴として送達した)もまた、検出可能な網膜の構造的または機能的な変化を誘導しなかった(Bonevaら、Neuroscience 325巻:188~201頁、2016年)。結果として、網膜毒性の低いリスクにもかかわらず、タモキシフェンは、網膜疾患において危険にさらされた光受容体に対して広範に明白な臨床的神経保護を呈する可能性を有する。
理論に縛られることはないが、タモキシフェン媒介性の光受容体の神経保護の基礎となる細胞機構は、網膜ミクログリアの活性化のモジュレーションを伴うようである。ミクログリアの食作用および活性化の特定のモジュレーションはRPのマウスモデルにおいて光受容体の変性の構造的および機能的な改善を結果としてもたらすことが研究により実証されている(Pengら、The Journal of Neuroscience: The Official Journal of the Society for Neuroscience 34巻:8139~8150頁、2014年;Zhaoら、上掲、2015年;Zabelら、上掲、2016年)。タモキシフェンは、活性化された網膜ミクログリアにおいて炎症促進性サイトカイン産生を直接的に抑制し、661W光受容体細胞に対するミクログリアの毒性を減少させたことが本明細書に開示される。RPのマウスモデルにおけるIL1βシグナル伝達の阻害は、光受容体のアポトーシスを減少させ、網膜の機能をレスキューするが(Zhaoら、上掲、2015年)、IL1βなどの炎症性サイトカインのミクログリアによる産生の低減においてタモキシフェンはこの機序を通じて光受容体のレスキューに寄与する可能性がある。
理論に縛られることはないが、エストロゲン受容体(ER)は非ミクログリアのCNS細胞種によって追加的に発現されるので、タモキシフェンの神経保護効果はまた、ER依存性経路(Elzerら、Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism: Official Journal of the International Society of Cerebral Blood Flow and Metabolism 30巻:935~942頁、2010年)およびER非依存性経路(Zhangら、Experimental Neurology 204巻:819~827頁、2007年)を介してニューロンおよびマクログリア細胞を伴う機序も必然的に伴う可能性がある。齧歯類およびヒトの網膜において、エストロゲン受容体は複数の神経細胞種および網膜色素上皮において見出されている(Oguetaら、Invest Ophthalmol Vis Sci 40巻:1906~1911頁、1999年;Cascioら、Exp Eye Res 85巻:166~172頁、2007年)。そのため、タモキシフェンによる光受容体の神経保護の効果は、光損傷モデルにおいて有意な保護が実証された視サイクルの動態のモジュレーション(Liら、Human Molecular Genetics 24巻:4417~4428頁、2015年)などを介して、光受容体内およびそれらを支持するRPE細胞内の機序を伴う可能性がある。別の実験において、タモキシフェン投与は中等度の視覚色素ブリーチ後のERGでの桿体光受容体のa波回復の動態を変化させなかったことが見出されたので、タモキシフェンはこの特定の機序を通じて神経保護を呈する可能性は低い。
タモキシフェンはまた、タモキシフェン投与により活性化されてDNA組換えを可能とするタモキシフェン依存性Creリコンビナーゼ(CreER(T))を発現するトランスジェニックマウスにおいて遺伝子発現を操作するための手段としても実験室においてよく使用されている(Feilら、Biochemical and Biophysical Research Communications 237巻:752~757頁、1997年)。開発されたトランスジェニックマウスとしては、脳(Goldmannら、Nature Neuroscience 16巻:1618~1626頁、2013年;Parkhurstら、Cell 155巻:1596~1609頁、2013年;Yonaら、Immunity 38巻:79~91頁、2013年)および網膜(Zhaoら、上掲、2015年;Wangら、The Journal of Neuroscience: The Official Journal of the Society for Neuroscience 36巻:2827~2842頁、2016年)においてタモキシフェン投与によりミクログリア中のCreER(T)発現および遺伝子組換えを駆動するミクログリア特異的プロモーターを有するものが挙げられる。タモキシフェン投与は、ミクログリアの活性化を著しく抑制し、損傷モデルにおいて神経保護効果を呈することが本明細書に開示され、これは、CreER(T)システムで得られた結果の解釈における潜在的な困惑させる効果、ならびに実験的防御措置および対照を設ける必要性を指し示す。
したがって、網膜毒性と以前に関連付けられた薬物であるタモキシフェンが、光受容体の変性の急性モデルおよび遺伝モデルの両方において光受容体に対して有意な構造的および機能的保護を付与することが本明細書に開示される。網膜ミクログリアの活性化および炎症促進性サイトカインの発現の抑制におけるタモキシフェンの作用は、光受容体の崩壊の加速におけるミクログリアの関与を報告する最近の研究によって支持されるように(Scholzら、上掲、2015年;Zhaoら、上掲、2015年;Zabelら、上掲、2016年)、この保護に寄与するようである。タモキシフェン、および同じ活性を有する他のSERMは、RPなどの光受容体の変性疾患の処置のための治療剤を構成する。
(実施例7)
光損傷モデルにおける光受容体の変性のタモキシフェン媒介性のレスキューに対する用量効果
若年成体10~15週齢野生型129/SVEマウスを24時間の暗順応後に光損傷(2×104ルクスの拡散白色光、1時間)に供した。実験動物を3つの処置群に分けた:(1)標準食餌(対照)(n=26個の目、13匹の動物、6匹の雌、7匹の雄)、(2)高用量タモキシフェン添加食餌(約80mg/kg/日)(n=23個の目、12匹の動物、6匹の雌、6匹の雄)、および(3)低用量タモキシフェン添加食餌(約10mg/kg/日、成人のヒトで約0.81mg/kg/日の用量に相当する)(n=30個の目、15匹の動物、8匹の雌、7匹の雄)。投与量に関して、「Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」、米国保健福祉省、食品医薬品局、医薬品評価研究センター(CDER)、2005年7月(参照することにより本明細書に組み込まれる;FDAのウェブサイト(fda.gov)においてオンラインで利用可能;fda.gov_downloads_Drugs/.../Guidances/UCM078932.pdfを参照)の表1を使用して同等のヒト用量を決定した。
光損傷(LI)の7日前およびLIの7日後に動物にタモキシフェンを投与した。LIの前(ベースライン)および7日後に網膜の厚さのin vivo光干渉断層(OCT)測定値を得、7日目のベースラインからの網膜の厚さの減少パーセンテージを、中心網膜中の水平および垂直の経線において視神経から150μmおよび450μmの距離について算出した。図8Aは、外顆粒層(ONL)の有意な変性を伴う対照動物における著明な外側網膜の破壊および萎縮を示す代表的なOCT像を提供する(上の段)。高用量(中段)または低用量(下)のタモキシフェンの食餌を与えた動物においてONLの変性の有意なレスキューが観察された。OCTの定量化(図8B)は、高用量および低用量の両方の処置群において光損傷後に網膜の薄厚化の有意なレスキューを示した(対照群対高用量群、対照群対低用量群の比較、p<0.0001、二元配置分散分析、チューキーの多重比較検定)。高用量群と比べて低用量群において網膜の厚さのレスキューはわずかに小さく(p=0.034~0.044)、これは、タモキシフェン媒介性の神経保護における用量依存的な反応を指し示す。
(実施例8)
SERM化合物のクラスのメンバーであるタモキシフェンおよびラロキシフェンは活性化されたミクログリアに作用して光受容体に対するそれらの神経毒性を低減させる
96ウェルプレート(4×104細胞/ウェル)中で培養した661W光受容体をLPS刺激(50ng/ml)BV2ミクログリア(4×105細胞/ウェルの細胞密度で6ウェルプレート中で培養)からの馴化培地に24時間曝露した。LPS刺激の前に、BV2ミクログリアをタモキシフェン(TMX、3および5μg/ml)、ラロキシフェン(用量範囲0.3~3μM)、選択的GPR30アゴニストG-1(1μM)、および選択的GPR30受容体アンタゴニスト(100nM)で前処置した。MTTアッセイを使用して661W光受容体の細胞生存度を評価した。タモキシフェン、ラロキシフェン、およびGPR30アゴニストG-1での前処置はミクログリア馴化培地の神経毒性を有意に低減させたが、GPR30アンタゴニストG-15は低減させなかった(p値はLPS単独の対照との比較のためである、ダンの多重比較検定を伴うクラスカル・ウォリス検定、各群についてn=14~33の独立した反復)。結果は、試験したSERM化合物であるタモキシフェンおよびラロキシフェンの両方は、光毒性に対するミクログリアの神経毒性の抑制を与えたことを指し示す。この効果は、GPR30受容体のアゴニズムによって表現型模写された。理論に縛られることはないが、この結果は、SERMがこのシグナル伝達経路を通じてこれらの効果を呈している可能性を示唆する。
本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例証した実施形態は本発明の単なる例であり、本発明の範囲を限定するものと考えてはならないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲および精神に入る全てを本発明者らの発明として主張する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体における網膜変性を処置または予防する方法であって、前記被験体における前記網膜変性を処置するための治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)を前記被験体に投与し、それによって前記網膜変性を処置または予防することを含み、前記SERMが、タモキシフェン、アフィモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、またはこれらの塩もしくは誘導体の1つまたは複数である、方法。
(項目2)
前記SERMが、a)タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはb)ラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被験体が、網膜色素変性症、急性網膜変性症、萎縮型黄斑変性症、または糖尿病網膜症を有する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記SERMが経口投与される、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記被験体がヒトであり、前記タモキシフェンが、毎日約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で投与される(約10mg/kg/日、成人のヒトで約0.81mg/kg/日の用量に相当する)、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記被験体がヒトであり、前記タモキシフェンが、毎日約3.24mg/kg~約6.48mg/kgの用量で経口投与される、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記タモキシフェンが、毎日10mg/kg~80mg/kgの用量で投与される、項目3に記載の方法。
(項目8)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記タモキシフェンが、毎日40mg/kg~80mg/kgの用量で経口投与される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記SERMが最低3ヶ月間にわたり投与される、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記被験体がヒトである、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記SERMが、光受容体の喪失を遅らせ、光受容体の機能の減少を低減させ、視覚機能の喪失を低減させ、および/または網膜ミクログリアの活性化を抑制し、および/または炎症促進性サイトカインの発現を抑制する、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記被験体の視覚を評価することをさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記被験体に対して網膜電図検査を行うことを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記被験体ががんを有さない、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記被験体が乳がんを有さない、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記SERMがタモキシフェンである、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
被験体における網膜変性を処置または予防するための選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)を含む治療有効量の組成物の使用であって、前記SERMが、タモキシフェン、アフィモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、デスメチルアルゾキシフェン、またはこれらの塩もしくは誘導体の1つまたは複数である、使用。
(項目18)
前記SERMが、a)タモキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体、またはb)ラロキシフェンもしくはその塩もしくは誘導体である、項目17に記載の使用。
(項目19)
前記被験体が、網膜色素変性症、急性網膜変性症、萎縮型黄斑変性症、または糖尿病網膜症を有する、項目17または18に記載の使用。
(項目20)
前記組成物が経口投与のために処方されている、項目17~19のいずれか1項に記載の使用。
(項目21)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記被験体がヒトであり、前記タモキシフェンが、毎日約0.8mg/kg~約6.5mg/kgの用量で投与される(約10mg/kg/日、成人のヒトで約0.81mg/kg/日の用量に相当する)、項目20に記載の使用。
(項目22)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記被験体がヒトであり、前記タモキシフェンが、毎日約3.24mg/kg~約6.48mg/kgの用量で経口投与される、項目20に記載の使用。
(項目23)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記タモキシフェンが、毎日10mg/kg~80mg/kgの用量で投与される、項目20に記載の使用。
(項目24)
前記SERMがタモキシフェンまたはその塩もしくは誘導体であり、前記タモキシフェンが、毎日40mg/kg~80mg/kgの用量で経口投与される、項目20に記載の使用。
(項目25)
前記SERMが最低3ヶ月間にわたり前記被験体に投与される、項目17~25のいずれか1項に記載の使用。
(項目26)
前記被験体がヒトである、項目17~25のいずれか1項に記載の使用。
(項目27)
前記SERMが、光受容体の喪失を遅らせ、光受容体の機能の減少を低減させ、視覚機能の喪失を低減させ、および/または網膜ミクログリアの活性化を抑制し、および/または炎症促進性サイトカインの発現を抑制する、項目17~26のいずれか1項に記載の使用。
(項目28)
前記被験体の視覚を評価することをさらに含む、項目17~27のいずれか1項に記載の使用。
(項目29)
前記被験体に対して網膜電図検査を行うことを含む、項目28に記載の使用。
(項目30)
前記被験体ががんを有さない、項目17~29のいずれか1項に記載の使用。
(項目31)
前記被験体が乳がんを有さない、項目17~29のいずれか1項に記載の使用。
(項目32)
前記SERMがタモキシフェンである、項目17~31のいずれか1項に記載の使用。