JP7099698B2 - ハイドロタルサイト、その製造方法、農業用フィルム用保温剤および農業用フィルム - Google Patents
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Description
(M2+)1-x(M3+)x(OH)2(An-)x/n・mH2O (式1)
(ただし、式中M2+は2価金属の少なくとも1種以上、M3+は3価金属の少なくとも1種以上、An-はn価の縮合ケイ酸イオンを表し、0.17≦x≦0.36、0≦m≦10、nは1以上の整数である。)
(A)SiのM3+に対するモル比が1.3以上;
(B)SEM法による1次粒子の平均横幅が0.1μm以上0.7μm以下;
(C)下記式で表わされる単分散度が50%以上;
単分散度(%)=(SEM法による1次粒子の平均横幅/レーザー回折法による2次粒子の平均横幅)×100
(工程1)2価金属および3価金属を含む水溶性複合金属塩水溶液および、アルカリ金属水酸化物水溶液を調製する原料調製工程。
(工程2)(工程1)で調製した水溶性複合金属塩水溶液およびアルカリ金属水酸化物水溶液を、反応温度0℃以上40℃以下、反応pH8以上13以下で連続反応させ、ハイドロタルサイトを含む懸濁液を得る反応工程。
(工程3)(工程2)で得られた反応後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を脱水した後、炭酸イオン含有水溶液を用いてイオン交換を行い、さらに水洗浄を行うイオン交換工程。
(工程4)(工程3)で得られたイオン交換後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を、100℃以上250℃以下で1時間以上60時間以下、攪拌保持する熟成工程。
(工程5)(工程4)で得られた熟成後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス1次処理工程。
(工程6)(工程5)で得られた水ガラス処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、硝酸および/または塩酸を加える酸処理工程。
(工程7)(工程6)で得られた酸処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス2次処理工程。
<ハイドロタルサイト>
本発明のハイドロタルサイトの、化学式、金属の種類、xの範囲、mの範囲、層間アニオンの種類、Siの含有量、1次粒子の平均横幅、2次粒子の平均横幅、単分散度、BET法比表面積、(003)面の最大面間隔および表面処理は以下の通りである。
本発明のハイドロタルサイトは、以下の(式1)で表される。
(M2+)1-x(M3+)x(OH)2(An-)x/n・mH2O (式1)
(ただし、式中M2+は2価金属の少なくとも1種以上、M3+は3価金属の少なくとも1種以上、An-はn価の縮合ケイ酸イオンを表し、0.17≦x≦0.36、0≦m≦10、nは1以上の整数である。)
(式1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、M2+は2価金属の少なくとも1種以上、M3+は3価金属の少なくとも1種以上である。好ましい2価金属はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上であり、好ましい3価金属はAlである。これは、生体への安全性が高く、かつ粒子が白色であるためである。
(式1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、xの範囲は0.17≦x≦0.36であり、好ましくは0.21≦x≦0.36、より好ましくは0.25≦x≦0.36、さらに好ましくは0.29≦x≦0.36である。xの値が大きくなるほどイオン交換容量が増え、層間に含まれる縮合ケイ酸イオンの最大量が増えるため好ましい。ただしxが0.36を超えると、3価金属の酸化物等の不純物が発生し、フィルムに配合した際の透明性や分散性が悪化するため好ましくない。
(式1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、mの範囲は0≦m≦10であり、好ましくは0≦m≦6である。
(式1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、An-はn価の縮合ケイ酸イオンを示し、nは1以上の整数である。具体的な縮合ケイ酸イオンとしては、SiO3 2-、Si2O5 2-、Si3O7 2-、Si4O9 2-、(HSiO3)-、(HSi2O5)-等が挙げられるが、この限りではない。
(式1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、SiのM3+に対するモル比(Si/M3+)は1.3以上であり、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.9以上である。SiのM3+に対するモル比が高くなればなるほど、農業用フィルムに配合した際の赤外線吸収能が向上し、保温性が高くなる。
1次粒子とは、幾何学的にこれ以上分割できない明確な境界を持った粒子である。図1は、本発明で用いた1次粒子の横幅(W1)を説明する模式図である。図1に示すように、1次粒子の横幅W1を規定する。すなわち、1次粒子が六角板状の板面としたときの粒子の長径が「1次粒子の横幅W1」である。
2次粒子とは、1次粒子が複数個集まり、凝集体となった粒子である。図2は、本発明で用いた2次粒子の横幅(W2)を説明する模式図である。図2に示すように、2次粒子の横幅(W2)を規定する。すなわち、2次粒子が球体に包まれると考えたときの球体の直径が「2次粒子の横幅W2」である。
本発明のハイドロタルサイトにおいて、SEM法による1次粒子の平均横幅は0.1μm以上0.7μm以下である。1次粒子の平均横幅のより好ましい上限は0.6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。1次粒子の平均横幅のより好ましい下限は0.1μm、より好ましくは0.15μm、さらに好ましくは0.2μmである。1次粒子の平均横幅が0.7μm以下であれば、ハイドロタルサイトを農業フィルムに配合した場合の保温性と透明性を高めることができる。1次粒子の平均横幅が0.1μm未満の場合は、酸との反応性が強く、酸処理工程の際にハイドロタルサイトの一部が溶解し、1次粒子が凝集するため好ましくない。1次粒子の平均横幅は、SEM法によりSEM写真中の任意の100個の結晶の横幅の測定値の算術平均から求める。1次粒子の横幅は、原理上レーザー回折法では測定することができない。したがって、SEM法により目視で確認する。
本発明のハイドロタルサイトにおいて、レーザー回折法による2次粒子の平均横幅は0.1μm以上0.7μm以下である。2次粒子の平均横幅のより好ましい上限は0.6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。2次粒子の平均横幅のより好ましくは0.15μm、さらに好ましくは0.2μmである。2次粒子の平均横幅が0.7μm以下であれば、ハイドロタルサイトを農業フィルムに配合した場合の保温性と透明性を高めることができる。2次粒子の平均横幅は、レーザー回折法により測定する。SEM法では、2次粒子の平均横幅を正確に測定することが困難なためである。
本発明のハイドロタルサイトにおいて、下記式で表わされる単分散度は50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。単分散度が50%以上であれば、ハイドロタルサイトを農業用フィルムに配合した際の保温性と透明性を高めることができる。
単分散度(%)=(SEM法による1次粒子の平均横幅/レーザー回折法による2次粒子の平均横幅)×100
本発明のハイドロタルサイトにおいて、BET法比表面積は10~30m2/gである。BET法比表面積のより好ましい上限は28m2/gであり、より好ましい上限は26m2/gである。BET法比表面積の好ましい下限は12m2/gであり、より好ましい上限は14m2/g、さらに好ましい上限は16m2/gである。BET法比表面積が30m2/gより大きければ、ハイドロタルサイトを農業用フィルムに配合した際の分散性が低下するため好ましくない。BET法比表面積が10m2/g未満であれば、ハイドロタルサイトの1次粒子が凝集しているため好ましくない。
本発明のハイドロタルサイトにおいて、粉末X線回折法による(003)面の最大面間隔は10Å以上であり、より好ましくは10.5Å以上、さらに好ましくは11Å以上、さらに好ましくは11.5Å以上である。(003)面の最大面間隔(層間距離)が大きくなるほど、ケイ酸イオンを層間に導入しやすくなるため好ましい。
本発明のハイドロタルサイトにおいて、粒子を表面処理することで、農業用フィルムに混練した際、樹脂中での分散性を高めることができる。表面処理剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類処理剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シリコーン系処理剤、ケイ酸および水ガラス等を例示することができるが、この限りではない。特に好ましい表面処理剤は、ラウリン酸、オレイン酸およびステアリン酸からなる群より選ばれる1種以上である。表面処理剤の処理量は、ハイドロタルサイトの重量に対して、0.01~20重量%である。表面処理剤の添加量のより好ましい上限は、15重量%、さらに好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%である。表面処理剤の添加量のより好ましい下限は、0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、最も好ましくは0.5重量%である。
本発明の農業用フィルム用保温剤は、本発明のハイドロタルサイトを有効成分として含有する。ハイドロタルサイトの赤外線吸収能に影響しないものであれば、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。
(配合部数)
本発明の農業用フィルムは、熱可塑性樹脂50~99重量%および請求項1記載のハイドロタルサイト1~30重量%を含有する。ハイドロタルサイトの配合量の上限は、より好ましくは25重量%、さらに好ましくは20重量%、最も好ましくは15重量%である。ハイドロタルサイトの配合量の下限は、より好ましくは2重量%、さらに好ましくは3重量%である。配合量が1重量%未満では、ハイドロタルサイトによる赤外線吸収効果が十分に発揮されない。配合量が30重量%より多ければ、農業用フィルムの透明性および機械的強度が低下する。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、内部可塑化ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとアクリル酸エーテルとの共重合体、エチレンとアクリル酸メチルとの共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリスチレン、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体、エチレンとプロピレンジエンゴムとの共重合体、エチレンとブタジエンとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ABS、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられるが、この限りではない。
本発明の農業用フィルムは、ハイドロタルサイト以外に、他の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、紫外線吸収剤、防曇剤または染料等を適宜選択して配合することができる。
樹脂と本発明のハイドロタルサイトとの混合、混練方法には特別の制約はないが、両者を均一に混合できる方法が好ましい。例えば、1軸又は2軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等により混合、混練される。混練後の樹脂組成物を、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ加工等の方法により加工し、フィルム化することにより、本発明の農業用フィルムを得る。
本発明のハイドロタルサイトの製造方法は、以下の7つの工程を含む。
(工程2)(工程1)で調製した水溶性複合金属塩水溶液およびアルカリ金属水酸化物水溶液を、反応温度0℃以上40℃以下、反応pH8以上13以下で連続反応させ、ハイドロタルサイトを含む懸濁液を得る反応工程。
(工程3)(工程2)で得られた反応後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を脱水した後、炭酸イオン含有水溶液を用いてイオン交換を行い、さらに水洗浄を行うイオン交換工程。
(工程4)(工程3)で得られたイオン交換後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を、100℃以上250℃以下で1時間以上60時間以下、攪拌保持する熟成工程。
(工程5)(工程4)で得られた熟成後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス1次処理工程。
(工程6)(工程5)で得られた水ガラス処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、硝酸および/または塩酸を加える酸処理工程。
(工程7)(工程6)で得られた酸処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス2次処理工程。
本発明のハイドロタルサイトの原料は、2価金属塩、3価金属塩および、アルカリ金属水酸化物塩である。2価金属塩としては、水溶性の2価金属塩、例えば塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられるが、この限りではない。2種以上の2価の金属塩を組み合わせることもできる。好ましくは、塩化マグネシウム及び/又は塩化亜鉛が用いられる。3価金属塩としては、水溶性の3価金属塩、例えば塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムが挙げられるが、この限りではない。2種以上の3価の金属塩を組み合わせることもできる。好ましくは硫酸アルミニウムが用いられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられるが、この限りではない。好ましくは、水酸化ナトリウムが用いられる。
本発明のハイドロタルサイトは、連続反応を用いて作製する。連続反応は、溶液中でのイオン濃度とpHを均一に保つことできるため、1次粒子の凝集の少ないハイドロタルサイトを作製でき、かつバッチ反応に比べて生産性が良い。
反応工程で作製したハイドロタルサイトを含む懸濁液を脱水した後、炭酸イオン含有水溶液を用いてイオン交換を行う。イオン交換の方法は2つある。
イオン交換工程で作製したハイドロタルサイトを含んだ懸濁液を、100~250℃で1時間以上60時間以下、攪拌保持する。この工程を経ることにより、ハイドロタルサイトの1次粒子の凝集を緩和し、1次粒子が十分に分散した懸濁液を得ることができる。熟成温度のより好ましい上限は240℃、さらに好ましくは230℃である。熟成温度のより好ましい下限は110℃、さらに好ましくは120℃である。熟成温度が100℃より低い場合は、ハイドロタルサイトの1次粒子が0.1μmよりも小さくなってしまうため好ましくなく、250℃よりも高い場合はハイドロタルサイトの1次粒子が0.7μmよりも大きくなってしまうため好ましくない。
熟成工程で得られたハイドロタルサイトを含む懸濁液を攪拌し、ハイドロタルサイトの固形分に対しSiO2換算で0.1~5重量%の水ガラスを加える。水ガラスの添加量は、好ましくはハイドロタルサイトの固形分に対しSiO2換算で0.3~3重量%、さらに好ましくは0.5~2重量%である。水ガラスの濃度はNa2O換算で0.01~1mol/Lであり、好ましくは0.05~0.6mol/L、より好ましくは0.1~0.3mol/Lである。水ガラスとしては、1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス等が挙げられるが、この限りではない。処理温度は0~100℃であり、好ましくは10~90℃、より好ましくは20~80℃、さらに好ましくは30~70℃である。ハイドロタルサイトの粒子表面をケイ酸で被覆し、耐酸性を高めることで、工程6の酸処理の際の1次粒子の凝集を防ぐことができる。
水ガラス1次処理工程で得られたハイドロタルサイトを含む懸濁液を攪拌し、ハイドロタルサイトの3価金属1mol当量に対し、1~1.5mol当量の塩酸および/または硝酸を加える。塩酸および硝酸の濃度は0.1~3mol/Lであり、好ましくは0.2~2.5mol/L、より好ましくは0.3~2.2mol/Lである。処理温度は0~100℃であり、好ましくは10~90℃、より好ましくは20~80℃、さらに好ましくは30~70℃である。この工程により、ハイドロタルサイトの層間イオンを炭酸イオンから、硝酸イオンおよび/または塩素イオンに置き換えることができる。層間イオンを硝酸イオンおよび/または塩素イオンとすることにより、工程7の水ガラス2次処理工程の際に、ケイ酸イオンがハイドロタルサイトの層間に入りやすくなる。
酸処理工程で得られたハイドロタルサイトを含む懸濁液を攪拌し、ハイドロタルサイトの3価金属1mol当量に対し、SiO2換算で1~2.5mol当量の水ガラスを加える。水ガラスの添加量は、好ましくはハイドロタルサイトの3価金属1mol当量に対し、SiO2換算で1.1~2.4mol当量、より好ましくは1.2~2.3当量である。水ガラスの濃度はNa2O換算で0.01~1mol/Lであり、好ましくは0.05~0.6mol/L、より好ましくは0.1~0.3mol/Lである。水ガラスとしては、1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス等が挙げられるが、この限りではない。処理温度は0~100℃であり、好ましくは20~100℃、より好ましくは40~100℃、さらに好ましくは60~100℃、最も好ましくは80~100℃である。この工程でハイドロタルサイトの層間イオンをケイ酸イオンに置き換えることができる。
水ガラス2次処理後、ハイドロタルサイトを表面処理することで、農業用フィルムに配合した際のフィルム中での分散性が向上する。表面処理は、湿式法又は乾式法を用いることができる。処理の均一性を考慮した場合、湿式法が好適に用いられる。水ガラス2次処理および水洗浄後のハイドロタルサイトを水中に分散させ、撹拌下に溶解させた表面処理剤を添加する。表面処理時の温度は表面処理剤が溶解する温度に適宜調整する。
水ガラス2次処理または表面処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を脱水し、水洗浄した後、乾燥させ、本発明のハイドロタルサイトを得る。乾燥方法は、熱風乾燥、真空乾燥等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
粉末サンプル中のMg、ZnおよびAlの含量は、キレート滴定により測定した。サンプル中のSiの含量は、重量法により測定した。CO3はJIS R 9101に基づき、AGK式CO2簡易精密定量装置にて測定した。層間水についてはTG-DTAを用いて重量減少から算出した。
粉末サンプルをエタノールに加え、超音波処理を5分間行った後、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-7600F、日本電子製)を用い、任意の100個の結晶の1次粒子の横幅を測定し、その算術平均をもって1次粒子の平均横幅とした。
粉末サンプルをエタノールに加え、超音波処理を5分間行った後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(MT3300、マイクロトラック・ベル製)を用い、体積基準の累積50%粒子径(D50)を測定し、D50を2次粒子の平均横幅とした。
以下の式に基づいて、単分散度を算出した。
単分散度(%)=(1次粒子の平均横幅/2次粒子の平均横幅)×100
比表面積の測定装置(NOVA2000、ユアサアイオニクス製)を使用して、ガス吸着法により乾燥後の粉末サンプルのBET法比表面積を測定した。
X線回折装置(Empyrean、パナリティカル製)を使用して粉末X線回折を行い、得られたX線プロファイルから(003)面の最大面間隔d003を算出した。X線源としては45kV、40mAの条件で発生させたCu-Kα線を用いた。
粉末サンプルのステアリン酸処理量は、エーテル抽出法にて測定した。
フィルムの保温指数は、赤外線吸収スペクトル測定装置(FT/IR-4100、日本分光製)を用いて測定した。各波長における黒体放射エネルギー(Eλ・dλ)を下記(式2)により求め、400~2000cm-1までの黒体放射エネルギーを積分する(Σ(Eλ・dλ))ことにより、全黒体放射エネルギー密度とした。次にフィルムの各波長における赤外線吸収率を測定し、各波長における黒体放射エネルギー(Eλ・dλ)に各波長の赤外線吸収率をかけて、それらを積分することにより、フィルムの全吸収エネルギー密度とした。全黒体放射エネルギー密度とフィルムの全吸収エネルギー密度との比を下記(式3)により求め、保温指数とした。保温指数が高いほど、赤外線吸収能力が高いことを意味し、すなわち保温性が高いことを意味する。
Eλ・dλ=2πhC^2/[λ^5{e^(hC/λkT)-1}]・dλ (式2)
(式中、λは波長、hはプランク常数、Cは真空中の光速度、kはボルツマン常数、Tは絶対温度をそれぞれ表す。)
保温指数=(全吸収エネルギー密度/全黒体放射エネルギー密度)×100 (式3)
フィルムの全光線透過率およびヘーズ(曇り度)は、ヘーズメーター(NDH-1001DP、日本電色工業製)を用いて測定した。全光線透過率はJIS K 7361-1に、ヘーズはJIS K 7105の測定方法に従った。
ハイドロタルサイトの凝集体の有無を目視で確認し、フィルム中での分散性を評価した。凝集体がない場合は○、凝集体が存在する場合は×とした。
塩化マグネシウム6水和物(試薬1級、富士フイルム和光純薬製)および硫酸アルミニウム14~18水和物(試薬1級、富士フイルム和光純薬製)を脱イオン水に溶解させ、マグネシウム濃度0.43mol/L、アルミニウム濃度0.2mol/Lの複合金属塩水溶液を得た。一方、水酸化ナトリウム(試薬1級、富士フイルム和光純薬製)を脱イオン水に溶解させ、ナトリウム濃度0.8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を得た。
反応槽に複合金属塩水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を注加し、連続的に反応を行った。オーバーフローとして反応槽から溢れ出た懸濁液を採取し、pHが9.3~9.5となるよう、水酸化ナトリウム水溶液の流量を調整した。なお反応中は、反応温度が20℃となるよう原料と反応槽を温度調整した。また、反応中は直径2.5cmのスクリュープロペラを用い、回転速度1000rpmで撹拌を行った。反応濃度はハイドロタルサイトとして50g/Lであった。
円形ヌッチェと吸引濾過瓶を用い、懸濁液を吸引濾過にて脱水し、ケーキとした。次に、ケーキに含まれるハイドロタルサイトのアルミニウム1mol当量に対して2mol当量の炭酸ナトリウム水溶液をケーキに注加し、イオン交換を行った。次に、ハイドロタルサイトの20質量倍の脱イオン水を用い、塩類などの副生成物および残留炭酸ナトリウムの不純物を除去する目的で、水洗浄を行った。
ホモミキサーを用い、水洗浄後のハイドロタルサイトのケーキを脱イオン水に再懸濁させ、50g/Lの懸濁液を作製した。得られた懸濁液をオートクレーブに入れ、130℃で15時間攪拌保持し、熟成処理を行った。
3号水ガラス(SiO2/Na2O=3.1~3.3)(富士化学製)に脱イオン水を加え、Na2O濃度として0.2mol/Lに濃度調整し、水ガラス処理液とした。熟成後のハイドロタルサイトを含む懸濁液および水ガラス処理液を50℃に温度調整した。攪拌下、ハイドロタルサイトの固形分に対してSiO2として0.8重量%の水ガラス処理液を加え、10分間攪拌保持した。
硝酸(試薬特級、富士フイルム和光純薬製)に脱イオン水を加え、2mol/Lに濃度調整し、硝酸処理液とした。水ガラス1次処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液および硝酸処理液を50℃に温度調整した。攪拌下、ハイドロタルサイトのアルミニウム1mol当量に対して1.1mol当量の硝酸を加え、30分間攪拌保持した。
3号水ガラス(SiO2/Na2O=3.1~3.3)(富士化学製)に脱イオン水を加え、Na2O濃度として0.2mol/Lに濃度調整し、水ガラス処理液とした。酸処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液および水ガラス処理液を95℃に温度調整した。攪拌下、ハイドロタルサイトのアルミニウム1mol当量に対して、SiO2として2.25mol当量の水ガラス処理液を加え、30分間攪拌保持した。水ガラス2次処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を吸引濾過にて脱水し、ケーキとした。水ガラス1次処理および2次処理で加えた水ガラスの20質量倍の脱イオン水を用い、水洗浄を行った。
水洗浄後のケーキに脱イオン水を加え、ホモミキサーにて分散させ、ハイドロタルサイトを含む懸濁液を作製した。一方、ステアリン酸(試薬特級、富士フイルム和光純薬製)に対し、同mol当量の水酸化ナトリウム(試薬1級、富士フイルム和光純薬製)を加え、脱イオン水で希釈し、ステアリン酸処理液とした。ハイドロタルサイトを含む懸濁液とステアリン酸処理液を80℃に温度調整した。ハイドロタルサイトを含む懸濁液に、ハイドロタルサイトの固形分に対してステアリン酸として2wt%のステアリン酸処理液を加え、20分間攪拌保持した。
表面処理後の懸濁液を吸引濾過にて脱水し、ケーキとした。表面処理工程で加えたステアリン酸の固形分の20質量倍の脱イオン水を用い、水洗浄を行った。水洗浄後のケーキを熱風乾燥機に入れ、105℃で12時間乾燥させた。室温まで冷却後、粉砕分級を行い、本発明のハイドロタルサイトAを得た。ハイドロタルサイトAの合成条件を表1に、各分析値を表2に示す。
(比較例1)
(比較例2)
(比較例3)
(比較例4)
実施例1で得られたハイドロタルサイトAを、ポリエチレン樹脂に下記配合比で配合し、農業用フィルムを作製した。
(配合)
高圧法メタロセンポリエチレン(KF-282、日本ポリエチレン製):90重量%
ハイドロタルサイト:10重量%
(比較例5)
(比較例6)
(比較例7)
(比較例8)
(比較例9)
W2…2次粒子の横幅
Claims (9)
- 以下の(A)~(C)を満たす下記(式1)で表されるハイドロタルサイト。
(M2+)1-x(M3+)x(OH)2(An-)x/n・mH2O (式1)
(ただし、式中M2+はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3+はAl、An-はSiO 3 2- 、Si 2 O5 2- 、Si 3 O 7 2- 、Si 4 O 9 2- 、(HSiO 3 ) - 、(HSi 2 O 5 ) - からなる群より選ばれる1種以上を表し、0.17≦x≦0.36、0≦m≦10、nは1以上の整数である。)
(A)SiのM3+に対するモル比が1.3以上;
(B)SEM法による1次粒子の平均横幅が0.1μm以上0.7μm以下;
(C)下記式で表わされる単分散度が50%以上;
単分散度(%)=(SEM法による1次粒子の平均横幅/レーザー回折法による2次粒子の平均横幅)×100 - BET法比表面積が10m2/g以上30m2/g以下である、請求項1記載のハイドロタルサイト。
- 請求項1記載の(式1)においてmの範囲が0≦m≦0.05である、請求項1記載のハイドロタルサイト。
- レーザー回折法による2次粒子の平均横幅が0.1μm以上0.7μm以下である、請求項1記載のハイドロタルサイト。
- 粉末X線回折法による(003)面の最大面間隔が10Å以上である、請求項1記載のハイドロタルサイト。
- ハイドロタルサイトの表面が、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シリコーン系処理剤、ケイ酸および水ガラスからなる群より選ばれる1種以上で表面処理されている、請求項1記載のハイドロタルサイト。
- 請求項1記載のハイドロタルサイトを有効成分として含有することを特徴とする農業用フィルム用保温剤。
- 熱可塑性樹脂50~99重量%および請求項1記載のハイドロタルサイト1~30重量%を含有する農業用フィルム。
- 以下の7つの工程を含む、請求項1記載のハイドロタルサイトの製造方法。
(工程1)2価金属および3価金属を含む水溶性複合金属塩水溶液および、アルカリ金属水酸化物水溶液を調製する原料調製工程。
(工程2)(工程1)で調製した水溶性複合金属塩水溶液およびアルカリ金属水酸化物水溶液を、反応温度0℃以上40℃以下、反応pH8以上13以下で連続反応させ、ハイドロタルサイトを含む懸濁液を得る反応工程。
(工程3)(工程2)で得られた反応後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を脱水した後、炭酸イオン含有水溶液を用いてイオン交換を行い、さらに水洗浄を行うイオン交換工程。
(工程4)(工程3)で得られたイオン交換後のハイドロタルサイトを含む懸濁液を、100℃以上250℃以下で1時間以上60時間以下、攪拌保持する熟成工程。
(工程5)(工程4)で得られた熟成後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス1次処理工程。
(工程6)(工程5)で得られた水ガラス処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、硝酸および/または塩酸を加える酸処理工程。
(工程7)(工程6)で得られた酸処理後のハイドロタルサイトを含む懸濁液に対し、水ガラスを加える水ガラス2次処理工程。
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