以下、本発明の実施の形態1に係るクレーン用監視カメラ及び移動式クレーンについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。また、本明細書において、前後とは、多段伸縮ブーム(以下、単にブームという)の伸長方向を前としたときの前後のことをいい、上下とは、ブームに対する上下のことをいう。また、側方(サイド方向ともいう)とは、ブームが備えるブームヘッドに対する側方のことをいう。
(実施の形態1)
実施の形態1に係るクレーン用監視カメラは、移動式クレーンが備えるブームに取り付けられたクレーン用監視カメラである。このクレーン用監視カメラは、1台のカメラ本体を、クレーン作業時の吊荷監視と走行時のサイド方向の監視に使用するため、先端ボックスブームの伸縮に応じてカメラ本体を回動させるカム機構を備えている。
まず、図1Aを参照して、クレーン用監視カメラが取り付けられた移動式クレーンのブームの構成について説明する。次に、図1A-図1C、図2及び図3を参照して、クレーン用監視カメラの構成について説明する。続いて、図4A-図4C、図5A-図5C、図6A-図6C、図7A-図7C及び図8A-図8Cを参照して、クレーン用監視カメラの動作について説明する。
図1Aは、本発明の実施の形態1に係るクレーン用監視カメラ1が設けられた、移動式クレーンのブーム100先端部の斜視図である。図1Bは、クレーン用監視カメラ1の上面図である。図1Cは、クレーン用監視カメラ1の斜視図である。図2及び図3は、クレーン用監視カメラ1が備える回動部材20A及びカメラ本体90の拡大上面図である。なお、図1Aでは、ブーム100が備える複数の基端側ボックスブーム110のうち、最も先端側になる基端側ボックスブーム110だけを示している。また、図1Aでは、回動部材20Aに設けられた第2誘導部40の大きさを変えてその大きさ、形状を強調している。図1B、図1C、図2及び図3では、理解を容易にするため、先端ボックスブーム120と基端側ボックスブーム110を省略している。また、図2及び図3では、当接部材50を省略している。さらに、図2では、クレーン用監視カメラ1が備える当接部材50によって回動部材20Aが回動されずに、図示しないレンズを下方Uに向けた状態のカメラ本体90を示している。また、図3では、当接部材50によって回動部材20Aが回動されて、レンズ92を側方Sに向けた状態のカメラ本体90を示している。
図1Aに示すように、ブーム100は、基端側ボックスブーム110と、基端側ボックスブーム110に伸縮可能に設けられた先端ボックスブーム120と、で構成されている。
基端側ボックスブーム110は、図示しないが、移動式クレーンが備える旋回体に起伏可能に支持されている。また、ブーム100は、内外径が異なる複数の基端側ボックスブーム110を備えている。そして、複数の基端側ボックスブーム110は伸縮可能に組み合わされ、図示しないブーム伸縮装置によって伸縮する。
これに対して、先端ボックスブーム120は、上述したブーム伸縮装置によって、基端側ボックスブーム110の先端方向に伸長、又は基端方向に縮小する。先端ボックスブーム120の先端には、ブームヘッド130が設けられている。ブームヘッド130には、図示しないが、ワイヤーロープが掛け回されたシーブが設けられ、シーブからワイヤーロープが垂下する。垂下したワイヤーロープには、吊荷を吊り下げるためのフックが連結されている。
また、ブームヘッド130の左側壁には、クレーン用監視カメラ1が設けられている。図示しないが、ブームヘッド130の右側壁にも、クレーン用監視カメラ1が設けられている。これらのクレーン用監視カメラ1は、左右対称であることを除いて、その構成は同じである。このため、以下、左側壁のクレーン用監視カメラ1の構成を説明して、右側壁のクレーン用監視カメラ1の説明を省略する。次に、図1A-図1C、図2及び図3を参照して、クレーン用監視カメラ1の構成について説明する。
図1Aに示すように、クレーン用監視カメラ1は、先端ボックスブーム120に連動して動作するカム機構10と、カム機構10に保持されたカメラ本体90と、を備えている。
カム機構10は、先端ボックスブーム120の伸縮の運動方向を変換してカメラ本体90を回動運動させる機構である。カム機構10は、先端ボックスブーム120に設けられ、カメラ本体90を回動させる回動部材20Aと、基端側ボックスブーム110に設けられ、先端ボックスブーム120の側にある回動部材20Aに当接することにより、先端ボックスブーム120の伸縮運動を回動部材20Aに伝動する当接部材50と、で構成されている。
回動部材20Aは、設置されたカメラ本体90を上下方向と、先端ボックスブーム120の伸縮方向、すなわち前後方向と、に回動させる部材である。回動部材20Aは、図1Cに示すように、ブームヘッド130に前後方向に回動可能に保持された第1回動体21と、第1回動体21に上下方向に回動可能に保持され、カメラ本体90を収容する第2回動体22と、で構成されている。
第1回動体21は、四角柱状の棒の形状に形成されている。第1回動体21の長手方向の基端部、すなわち、ブームヘッド130側の端部は、垂直軸25に回動可能に保持されている。垂直軸25は、ブーム100の伸縮方向と側面方向に対して垂直に延在している。これにより、第1回動体21は、垂直軸25を中心にブームヘッド130の側方Sで前後方向に回動する。
また、第1回動体21は、図2及び図3に示すように、第2回動体22を保持するため、後方側面の側に設けられた保持板23A、23Bと、保持板23Aに設けられ、第1回動体21の回動の停止位置を決めて吊荷の監視位置を決めるストッパー24と、その吊荷の監視位置に第1回動体21がある状態を保つため、上面側に設けられたねじりコイルばね27と、を備えている。なお、ねじりコイルばね27は、本明細書では弾性部材ともいう。
保持板23A、23Bは、図1B及び図1Cに示すように、第2回動体22の幅と同じ距離だけ離れている。そして、互いに平行に配設されている。保持板23A、23Bには、水平方向に貫通する貫通孔が形成され、その貫通孔には、第2回動体22に挿通された水平軸26が通されている。これにより、保持板23A、23Bは、第2回動体22を上下方向へ回動可能に支持している。保持板23A、23Bのうち、ブームヘッド130側の保持板23Aには、ストッパー24が設けられている。
ストッパー24は、円柱軸が保持板23Aに対して垂直な円柱の形状に形成されている。そして、ストッパー24は、第1回動体21の長手方向がブームヘッド130の側面に対して垂直なときの、保持板23Aからブームヘッド130までの距離と同じ長さに形成されている。これにより、ストッパー24は、図2に示すように、第1回動体21の長手方向がブームヘッド130の側面に対して垂直なとき、すなわち、側方Sに向いたとき、ブームヘッド130に当接する。その結果、第1回動体21の後方への回動が制限され、それ以上に後方B側へ傾斜することが防止されている。この位置を吊荷の監視位置とすることにより、ストッパー24は、その監視位置を決めている。一方、第1回動体21には、この吊荷の監視位置にある状態を保つため、ねじりコイルばね27が設けられている。
ねじりコイルばね27は、素線が巻回されたコイルと、素線の一端側の腕部及び他端側の腕部と、を有している。ねじりコイルばね27のコイルは、図2に示すように、第1回動体21の回動軸である垂直軸25に巻回されている。ねじりコイルばね27の一端側の腕部は、ブームヘッド130に固定されている。また、他端側の腕部は、第1回動体21の上面側に設けられたピン28に固定されている。そして、一端側の腕部と他端側の腕部とは、弾性変形せずに、図2に示すストッパー24がブームヘッド130に当接した状態を維持する角度を形成している。
一方、第1回動体21が回動して、図2に示す、第1回動体21の長手方向が側方Sを向いた状態から、図3に示す、第1回動体21の長手方向が前方Fに向いた状態へ変化すると、ブームヘッド130とピン28との位置関係が変化する。ねじりコイルばね27では、この位置関係の変化から、一端側の腕部と他端側の腕部とがねじれて弾性変形する。このとき、ねじりコイルばね27には、第1回動体21を図2に示す状態に戻す弾性力が発生する。この弾性力は、第1回動体21が図2に示す状態からやや回動した場合でも発生する。その結果、ねじりコイルばね27は、第1回動体21が回動した場合に、その第1回動体21を図2に示す状態に戻す方向へ付勢する。これにより、ねじりコイルばね27は、第1回動体21を図2に示す状態に維持する。その結果、ねじりコイルばね27は、第1回動体21の長手方向を側方Sに向け、第1回動体21を吊荷の監視位置にとどめている。
第2回動体22は、図1A-図1Cに示すように、直方体の形状に形成されている。図示しないが、第2回動体22は、中空である。そして、図1A-図1Cに示すように、長手方向の上端側には、上述した水平軸26が緩挿されている。長手方向の下端側の内部には、レンズ92を下に向けた状態でカメラ本体90が収容されている。このため、カメラ本体90を含めた第2回動体22全体の重心は、図1A-図1Cに示す状態で、水平軸26よりも下方Uに位置している。その結果、第2回動体22は、長手方向を上下方向に向けている。そして、カメラ本体90のレンズ92を下に向けている。
このように、回動部材20Aでは、吊荷を監視するため、第1回動体21の長手方向の向きが、ストッパー24とねじりコイルばね27によって、ブームヘッド130の側方Sに向けられている。また、第2回動体22の長手方向の向きが、その重心の位置によって上下方向に向けられている。カム機構10には、この第1回動体21と第2回動体22の向きを、先端ボックスブーム120の伸縮運動に連動させて変更させて、カメラ本体90でサイド方向の監視を可能にするため、当接部材50に誘導されて第1回動体21を回動させる第1誘導部30と、第2回動体22を回動させる第2誘導部40と、が設けられている。
第1誘導部30は、当接部材50が相対的に移動したときの、その運動を受ける、いわゆる従動節として機能する部分である。第1誘導部30は、図1Aに示すように、第1回動体21の上面側に設けられている。そして、円柱状に形成され、当接部材50の上面と同じ高さまで延在している。また、第1誘導部30は、第1回動体21の長手方向の向きがブームヘッド130の側方Sに向いた状態、かつ、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して後述する長さL1よりも長く伸長した状態で、当接部材50の前方Fに位置している。これにより、その状態から先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して縮小することにより、第1誘導部30は当接部材50と当接する。さらに、第1誘導部30は、図1Cに示すように、第1回動体21の回動軸である垂直軸25よりも、第1回動体21の先端側の側方Sの側に位置している。このため、第1誘導部30は、当接部材50が当接すると、当接部材50に従って移動する。そして、第1回動体21の回動を誘導する。その結果、第1誘導部30は、第1回動体21を前方Fへ回動させる。
これに対して、第2誘導部40は、第2回動体22側で、当接部材50の相対運動を受ける従動節として機能する部分である。第2誘導部40は、図1Aに示すように、第2回動体22の上面側に設けられている。そして、四角柱状に形成されている。第2誘導部40は、当接部材50の下面よりも高い位置まで延在している。また、第2誘導部40は、図1A-図1Cに示すように、第1回動体21の長手方向がブームヘッド130の側方Sに向いた状態、かつ、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して後述する長さL1よりも長く伸長した状態で、当接部材50の前方Fに位置している。このため、第2誘導部40は、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して縮小することにより、当接部材50と当接する。また、第2誘導部40は、第2回動体22の上面側に設けられているため、水平軸26よりも上に位置している。このため、第2誘導部40は、当接部材50が当接して、当接部材50に従って前方Fに移動することにより、第2回動体22の回動を誘導させる。その結果、第2誘導部40は、第2回動体22を後方Bへ回動させる。また、第2誘導部40の後方B側の側面は、第2回動体22の後方Bの側面と連続した平面を形成している。このため、第2回動体22の後方Bの側面は、当接部材50の障害物とならない。これにより、第2誘導部40の後方B側の側面は、当接部材50によって、前後方向を向くまで倒される。
当接部材50は、図1Aに示すように、基端側ボックスブーム110に設けられている。このため、当接部材50は、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して伸縮することで、先端ボックスブーム120の側に直線的に相対移動する。その結果、当接部材50は、上述した第1誘導部30と第2誘導部40の側に相対移動して第1誘導部30と第2誘導部40に当接する。
また、当接部材50は、図1Aに示すように、基端側ボックスブーム110から前方Fに延在する四角柱の形状に形成されている。その長さは、図示しないが、先端ボックスブーム120が最縮小長さまで縮小した状態で、当接部材50の先端が回動部材20Aの第1誘導部30よりも前方Fに位置する長さである。また、その位置は、当接部材50の下面が、後述する図6Cに示す、カメラ本体90のレンズ92が後方Bを向けた状態で、第2誘導部40の上面よりもやや上である。これにより、当接部材50は、先端ボックスブーム120が最縮小長さまで縮小したときに、第2誘導部40を前方Fに押して、第2回動体22を回動させる。そして、第2誘導部40と第2回動体22の側面が前後方向に向くまで回動させる。これにより、当接部材50は、第2回動体22に収容されたカメラ本体90のレンズ92を後方Bに向ける。また、第2誘導部40の前方Fには、第1誘導部30が位置している。このため、当接部材50は、第2誘導部40を回動させた後、第1誘導部30を押して、第1回動体21を、垂直軸25を中心にして前方Fへ回動させる。これにより、第1回動体21を前方Fに傾かせる。
また、当接部材50の、前方F側かつブームヘッド130側のコーナー部は、図1B及び図1Cに示すように、面取りされている。これにより、そのコーナー部には曲面部51が形成されている。当接部材50は、第1誘導部30に当接したときに、第1誘導部30を前方Fに押すと共に、第1誘導部30を曲面部51に沿って移動させる。これにより、当接部材50は、第1誘導部30を、図1Cに示す先端面P1からブームヘッド130側の側面P2に移動させる。その結果、当接部材50は、第1回動体21を回動させて、後述する図8Cに示すように、回動部材20Aの第1回動体21の長手方向をブームヘッド130の前方Fに向ける。これにより、回動部材20Aの水平軸26の向き、すなわち、第2回動体22の回動軸の向きが前方Fに向き、第2回動体22に収容されたカメラ本体90のレンズ92が側方Sを向く。その結果、当接部材50は、カメラ本体90でサイド方向の監視を可能にする。
カメラ本体90は、図1A及び図3に示すように、物体の像を撮像素子に結像させるレンズ92を備えている。カメラ本体90は、レンズ92が向けられた物体を撮像して、その出力を図示しないクレーンの運転席のモニターに表示する。クレーンのオペレーターは、モニターが表示する画像を監視することで、レンズ92が向けられた方向を監視する。
次に、図4A-図4C、図5A-図5C、図6A-図6C、図7A-図7C及び図8A-図8Cを参照して、クレーン用監視カメラ1の動作について説明する。以下の説明では、ブーム100が伸長した状態にあり、その状態から先端ボックスブーム120を縮小させてブーム100を格納状態にするときのクレーン用監視カメラ1の動作について説明する。
図4A-図4Cは、ブーム100が備える先端側ボックスブーム120が一定の長さまで縮小したときのクレーン用監視カメラ1の側面図、上面図及び斜視図である。図5A-図5Cは、図4Aに示す状態から先端側ボックスブーム120が縮小したときのクレーン用監視カメラ1の側面図、上面図及び斜視図である。図6A-図6Cは、図5Aに示す状態から先端側ボックスブーム120がさらに縮小して、当接部材50が第2誘導部40を前方Fに押したときのクレーン用監視カメラ1の側面図、上面図及び斜視図である。図7A-図7Cは、図6Aに示す状態から先端側ボックスブーム120がさらに縮小して、当接部材50が第1誘導部30に当接したときのクレーン用監視カメラ1の側面図、上面図及び斜視図である。図8A-図8Cは、図7Aに示す状態から先端側ボックスブーム120がさらに縮小して、当接部材50が第1誘導部30を前方に押したときのクレーン用監視カメラ1の側面図、上面図及び斜視図である。なお、図4B、図5B、図6B、図7B及び図8Bでは、理解を容易にするため、基端側ボックスブーム110を省略している。また、図4C、図5C、図6C、図7C及び図8Cでは、先端ボックスブーム120と基端側ボックスブーム110を省略している。
まず、先端ボックスブーム120を長さL1よりも伸長させた状態から説明する。この状態では、図1A-図1Cに示すように、当接部材50は、第2誘導部40よりも後方Bに位置する。このため、当接部材50は、第2誘導部40に接触しない。このとき、カメラ本体90が水平軸26よりも下方Uに位置するので、第2回動体22の重心は、水平軸26よりも下方Uに位置する。その結果、第2回動体22は、レンズ92を下方Uに向けている。このため、先端ボックスブーム120を長さL1よりも伸長させた状態では、カメラ本体90は、下方Uにある物体を撮像できる状態にある。このため、クレーン用監視カメラ1は吊荷監視カメラとして機能することができる。オペレーターは、クレーン用監視カメラ1を使用して、ブームヘッド130の下方Uにある吊荷を監視することができる。なお、長さL1とは、上述した一定の長さのことであり、後述する第2回動体22の回動開始点となる長さのことである。また、長さL1は、本明細書では第1長さともいう。
次に、先端ボックスブーム120を縮小させると、当接部材50が相対的に移動して、基端側ボックスブーム110の第2誘導部40に近づく。このとき、図2に示すように、回動部材20Aのストッパー24は、ねじりコイルばね27によって、ブームヘッド130の側面に当接している。このため、回動部材20Aの水平軸26が側方Sに向いている。そして、図示しないが、当接部材50の前方Fに第2誘導部40が位置する。
続いて、先端ボックスブーム120を長さL1まで縮小させると、図4A-図4Cに示すように、当接部材50の先端が第2誘導部40に当接する。さらに、先端ボックスブーム120を縮小させると、図5A-図5Cに示すように、当接部材50が第2誘導部40を前方Fに押して、回動部材20Aの第2回動体22を、水平軸26を中心にして回動させる。これにより、第2回動体22の回動が誘導され、第2回動体22が後方Bへ傾斜する。
次に、先端ボックスブーム120をさらに縮小させて長さL1よりも短い長さL2まで縮小させると、図6A-図6Cに示すように、第2回動体22の長手方向が前後方向に向く。これにより、カメラ本体90のレンズ92が後方Bを向く。また、当接部材50の先端が第1誘導部30に当接する。さらに、先端ボックスブーム120を縮小させて、長さL2よりも縮小させると、当接部材50が前方Fに第1誘導部30を押す力によって、ねじりコイルばね27が弾性変形する。これにより、ストッパー24がブームヘッド130の側面から離れる。そして、図7A-図7Cに示すように、第1誘導部30が前方Fに移動する。その結果、回動部材20Aの第1回動体21が、垂直軸25を中心にして前方Fに回動して第1回動体21の回動が誘導される。そして、第1誘導部30が当接部材50の曲面部51に沿って、ブームヘッド130の側へ移動する。
続いて、先端ボックスブーム120を最短の長さ(第1回動体21の回動終了点となる長さであり、本明細書では第2長さ以下の長さに相当する)に縮小されると、図8A-図8Cに示すように、第1誘導部30が曲面部51に沿って相対的に移動することにより、第1誘導部30が当接部材50の、ブームヘッド130の側にある側面P2に当接する。これにより、第1回動体21の長手方向が前方Fに向く。その結果、第1回動体21が保持する水平軸26が前方Fを向き、水平軸26に保持された第2回動体22の長手方向が側方Sに向く。これにより、第2回動体22に収容されたカメラ本体90のレンズ92が側方Sを向く。このため、先端ボックスブーム120を最短の長さに縮小された状態では、カメラ本体90は、側方Sにある物体を撮像できる状態にある。このため、クレーン用監視カメラ1はサイドカメラとして機能することができる。例えば、オペレーターが、クレーン用監視カメラ1を使用して、移動式クレーンの側方Sに干渉物がないか等の安全確認をすることができる。また、クレーンの走行時に、クレーンのサイド方向を監視できる。
なお、クレーンを走行させる状態から、すなわち、ブーム100の格納状態からクレーン作業をする状態にする場合、先端ボックスブーム120を最短の長さから伸長させる。この場合、回動部材20Aの第1回動体21には、ねじりコイルばね27の弾性力が加えられるため、上述した動作が逆に行われて、カメラ本体90で、ブームヘッド130の側方Sを監視できる状態から、ブームヘッド130の下方Uを監視できる状態に戻る。
以上のように、本発明の実施の形態1に係るクレーン用監視カメラ1では、カム機構10がカメラ本体90を回動させることによって、カメラ本体90の向きが、レンズ92を下方Uに向けた状態と、レンズ92を側方Sに向けた状態と、に切り替わる。このため、クレーン用監視カメラ1では、1つのカメラ本体90で、ブームヘッド130の下方Uにある吊荷の監視と、そのサイド方向の監視をすることができる。
カム機構10は、先端ボックスブーム120に設けられた回動部材20Aと、基端側ボックスブーム110に設けられた当接部材50と、を備えている。そして、回動部材20Aは、垂直軸25を中心にして前後方向に回動可能な第1回動体21と、第1回動体に設けられた水平軸26を中心にして上下方向に回動可能な第2回動体22と、を有している。当接部材50は、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して伸縮することで、第1回動体21に設けられた第1誘導部30と、第2回動体22に設けられた第2誘導部40と、を前方Fに押して、回動部材20Aを前後方向と上下方向に回動させ、カメラ本体90を回動させる。このように、カム機構10では、先端ボックスブーム120の伸縮運動を、回動部材20Aの回動運動に変換して、カメラ本体90の向きを変えることができる。これにより、カム機構10は、1つのカメラ本体90を、複数の方向の監視に兼用させることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1に係るクレーン用監視カメラ1では、回動部材20Aとして、2つの回動体が設けられ、それらの回動体が、先端ボックスブーム120の伸縮に応じてカメラ本体90の向きを変更している。これに対して、実施の形態2に係るクレーン用監視カメラでは、回動部材として、1つの回動体が設けられ、その1つの回動体が先端ボックスブーム120の伸縮に応じてカメラ本体90の向きを変更する。以下、図9-図15を参照して、実施の形態2に係るクレーン用監視カメラの構成を説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成について説明する。
図9Aは、本発明の実施の形態2に係るクレーン用監視カメラ2Lが設けられた、移動式クレーンに備えられるブーム100の先端部の斜視図である。図9Bは、図9Aに示すブーム100先端部の上面図である。図9Cは、同ブーム100先端部の側面図である。図9Dは、同ブーム100先端部の正面図である。図10Aは、ブーム100が備える先端ボックスブーム120が最短の長さまで縮小したときのクレーン用監視カメラ2の上面図である。図10Bは、図10Aに示す状態から先端ボックスブーム120が伸長したときのクレーン用監視カメラ2の上面図である。図11Aは、図10Aに示す状態のクレーン用監視カメラ2の斜視図である。図11Bは、図10Bに示す状態のクレーン用監視カメラ2の斜視図である。図12は、クレーン用監視カメラ2が備える円筒カム80のサポート部材91を示す斜視図である。なお、図9A-図9Cでは、ブーム100が備える複数の基端側ボックスブーム110のうち、最も先端側になる基端側ボックスブーム110だけを示している。また、図9Aでは、理解を容易にするため、カメラ本体を省略したクレーン用監視カメラ2Lを示している。図9B-図9Dでは、最短の長さまで縮小した状態のブーム100を示している。図11A、図11B及び図12では、理解を容易にするため、円筒カム80の溝82を省略し、カメラ本体90、保持部材64等の部材を省略している。また、図9B-図9Dでは、位置関係を示すため、ブーム先端部の左右それぞれに設けられたクレーン用監視カメラに別々の符号2R、2Lを付している。これに対して、図10A、図10B、図11A及び図11Bでは、クレーン用監視カメラに符号2を付している。以下の説明では、クレーン用監視カメラを総称する場合、符号2を用いて説明し、クレーン用監視カメラの位置関係を説明する場合、符号2R、2Lを用いて説明する。
図9A及び図9Bに示すように、クレーン用監視カメラ2は、ブームヘッド130の側壁に設けられた回動部材20Bを備えている。そして、回動部材20Bは、ブームヘッド130にスライド可能に保持されたスライド部材60と、スライド部材60に接続されたコイルばね70と、スライド部材60のスライド動作によって回動して、回動体として機能する円筒カム80と、で構成されている。なお、コイルばね70は、本明細書では弾性部材ともいう。
スライド部材60は、先端ボックスブーム120の伸縮に伴ってその伸縮の方向にスライドする部材である。スライド部材60は、図10A及び図10Bに示すように、ブーム100の伸長方向及び縮小方向に、すなわち、前方F又は後方Bの方向(以下、単に前後方向ともいう)に直線状に延在するロッド部61と、ロッド部61のロッド軸RA方向の基端側に配設されたストッパー62と、ロッド軸RA方向の先端側に配設された突起63と、で構成されている。
ロッド部61は、ブームヘッド130の側壁に設けられた保持部材64に保持されている。保持部材64は、ブームヘッド130から側方Sに延在する板状に形成され、その中央部とその端部に軸受部64A、64Bを有している。これらの軸受部64A、64Bのうち、ロッド部61は、軸受部64Aに挿通されている。そして、軸受部64Aによってスライド可能に保持されている。ロッド部61は、軸受部64Aによって前後方向に向けられると共に、円筒カム80の側方Sに配置されている。ロッド部61は、軸受部64Aに保持されているため、前後方向にスライド可能である。
ロッド部61は、先端ボックスブーム120が縮小してブームヘッド130が後方Bへ移動したときに、基端側ボックスブーム110の当接部材55に当接して押圧される位置に配置されている。これにより、ロッド部61は、当接部材55に押圧され前方Fにスライドする。詳細には、基端側ボックスブーム110には、直方体状又は板状の当接部材55が設けられている。図9B及び図9Cに示すように、当接部材55は、長手方向を側方Sに向けた状態で、基端側ボックスブーム110の側壁から突出している。ロッド部61は、この当接部材55の前方Fに位置している。すなわち、ロッド部61の基端は、ブームヘッド130よりも後方B、かつ基端側ボックスブーム110側の、当接部材55の前方Fまで延在している。ロッド部61は、ブームヘッド130側に設けられているため、ロッド部61の基端は、先端ボックスブーム120が一定の長さまで縮小した場合に、図10Aに示すように、基端側ボックスブーム110側の当接部材55に当接する。そして、ロッド部61の基端は、先端ボックスブーム120が一定の長さよりも縮小した場合に、当接部材55によって前方Fへ押される。これにより、ロッド部61は、前方Fへスライドする。ロッド部61のロッド軸RA方向の中間部には、ストッパー62と突起63が、後方Bからこの順序で配設されている。
ストッパー62は、図10A、図10B、図11A及び図11Bに示すように、ロッド部61から側方Sに延在した後、前方Fに折れ曲がったL字状に形成されている。円筒カム80の円筒部には、後述するようにサポート部材91が揺動可能に設けられている。ストッパー62の先端は、図10A及び図11Aに示すように、ロッド部61が前方Fにスライドしたときに、サポート部材91の側面板91Bに当接可能な位置まで延在している。そして、ストッパー62の先端は、側方Sに平行な端面を有している。これにより、ストッパー62は、側面板91Bに当接して側面板91Bを側方Sに向ける。また、ストッパー62は、側面板91Bを側方Sに向けてサポート部材91の揺動を静止させる。
突起63は、図10A及び図10Bに示すように、ロッド部61からストッパー62と反対側に突出している。そして、円筒カム80の後述する溝82に摺動可能に係合している。溝82は、後述するように、円筒カム80の回動軸81の周りに螺旋状に形成されている。突起63は、ロッド部61のスライドと共に、溝82に沿って前方Fへスライドする。これにより、突起63は、円筒カム80を矢印Aの方向に回動させる。
一方、ロッド部61は、突起63を溝82全体にわたってスライド可能にさせるため、突起63から溝82の前後方向の長さL3よりも長く後方Bまで延在している。また、突起63から溝82の前後方向の長さL3よりも長い長さL4だけ、前方Fに延在している。その先端には、図10A、図10B、図11A及び図11Bに示すように、ロッド部61に対して垂直な板で形成された鈎状部65が設けられている。鈎状部65と保持部材64との間には、コイルばね70が配置されている。
コイルばね70は、鋼線がコイル形に巻回されている。そして、コイルばね70の一端は、上述したロッド部61の鈎状部65に固定されている。コイルばね70の他端は、保持部材64の前方壁に固定されている。また、コイルばね70が有するコイル部の軸は、ロッド部61のロッド軸RAと平行に配置されている。コイルばね70は、図10A及び図11Aに示すように、ロッド部61が前方Fにスライドした場合に、ロッド部61の鈎状部65に引っ張られて弾性変形する。これにより、コイルばね70は、ロッド部61に、後方Bへ付勢する付勢力を与える。
一方、コイルばね70は、ロッド部61が当接部材55に当接せず離れているときに、その付勢力でロッド部61を後方Bへ押し戻す。詳細には、上述したように、当接部材55が基端側ボックスブーム110側に設けられ、ロッド部61が、先端ボックスブーム120側に設けられている。このため、ロッド部61は、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して、上述した一定の長さよりも伸長することで、図10B及び図11Bに示すように、当接部材55から離れて、その基端が当接部材55に押されなくなる。このとき、コイルばね70は、上述した付勢力によってロッド部61を後方Bにスライドさせる。そして、コイルばね70は自然長に戻る。これにより、コイルばね70は、突起63を後方Bにスライドさせて、円筒カム80を矢印Aと反対の方向に回動させる。
円筒カム80は、図10A、図10B、図11A及び図11Bに示すように、円筒軸と同軸の回動軸81を有している。また、円筒外壁部(すなわち、円周面)には、図10Aに示す溝82と、図11A及び図12に示す切り欠き部83と、が形成されている。
回動軸81は、図10A及び図10Bに示すように、保持部材64の上述した軸受部64Bによって前後方向に向けられている。これにより、円筒カム80は、前後方向に向いた回動軸81を中心にして回動可能である。
一方、溝82は、円筒外壁部に沿った螺旋状の溝形状に形成されている。溝82は、図9Dに示すように、回動軸81の周りの角度90°の範囲Rにわたって形成されている。そして、溝82には、上述したように、突起63が摺動可能に係合している。これにより、突起63が前方F又は後方Bにスライドすることで、円筒カム80が回動軸81の周りに90°回動する。
これに対して、切り欠き部83は、カメラ本体90を支持するサポート部材91を設置するために設けられている。切り欠き部83は、図12に示すように、中心軸Cに平行な平面の形状に形成されている。切り欠き部83は、図9Dに示すように、円筒カム80の溝82の一端に突起63が位置する状態で、切り欠き部83の平面が側方Sに向く位置に形成されている。この位置は、図示しないが、溝82のもう一方の他端に突起63が位置する状態で切り欠き部83の平面が下方Uを向く位置である。図12に戻って、切り欠き部83には、サポート部材91が揺動可能に設けられている。
サポート部材91は、カメラ本体90の背面部を支持する背面板91Aと、背面板91Aに対して板面が垂直な方向に向けられ、カメラ本体90の側面部を支持する側面板91Bと、がL字状に接合された形状に形成されている。ここで、カメラ本体90の背面部とは、正面にレンズ92に位置させたときの背面側の部分のことである。そして、背面板91Aと側面板91Bとの接合部分は、切り欠き部83に固定され、かつ円筒カム80の円周上の接線T方向に向けられた揺動軸91Cに揺動可能に保持されている。円筒カム80の径方向は、前後方向に垂直な方向であるため、サポート部材91は、揺動軸91Cによって前後方向に揺動可能である。これにより、カメラ本体90は、前後方向に揺動可能である。
カメラ本体90は、図10Aに示すように、物体の像を撮像素子に結像させるレンズ92を備えている。カメラ本体90は、サポート部材91よりも軽く、このため、カメラ本体90とサポート部材91をあわせた全体の重心93はサポート部材91の側面板91B近傍に位置する。レンズ92は、その重心93と揺動軸91Cの中心とを結ぶ直線Lと平行な方向に向けられている。このため、カメラ本体90が揺動して重心93が下に移動し、その結果、直線Lが傾くと、レンズ92は、直線Lが延在する方向に向く。その結果、カメラ本体90は、その直線Lが延在する方向、すなわち下方の物体を撮像する。
次に、図9B-図9Dに加えて、図13A-図13C、図14A-図14C及び図15を参照して、クレーン用監視カメラ2の動作について説明する。以下の説明では、移動式クレーンの走行が停止された後、かつクレーン作業が開始される前の状態にあることを前提とする。
図13Aは、先端ボックスブーム120が最短の長さから伸長したときのクレーン用監視カメラ2R、2Lの上面図である。図13Bは、図13Aに示すクレーン用監視カメラ2Rの側面図である。図13Cは、図13Aに示すクレーン用監視カメラ2R、2Lの正面図である。図14Aは、クレーン用監視カメラ2が備えるサポート部材91が円筒カム80の側方Sに位置するときのサポート部材91の姿勢を示す斜視図である。図14Bは、クレーン用監視カメラ2が備えるサポート部材91が円筒カム80の下方Uに位置するときのサポート部材91の姿勢を示す斜視図である。図14Cは、クレーン用監視カメラ2が備える円筒カム80が傾斜したときのサポート部材91の姿勢を示す斜視図である。図15は、ブーム100を起こしたときのクレーン用監視カメラ2の状態を示す側面図である。なお、図14A-図14Cでは、理解を容易にするため、図12と同様に、円筒カム80の溝82を省略し、回動軸81、カメラ本体90等の部材を省略している。
移動式クレーンの走行が停止された後、かつクレーン作業が開始される前の状態では、ブーム100は、倒伏され、ブーム100の先端ボックスブーム120が最短の長さ(本明細書では第2長さ以下の長さに相当する)まで縮小している。このため、移動式クレーンのブーム100先端部は、図9B-図9Dに示す状態にある。
この状態では、図9B及び図9Cに示すように、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110から伸長していない。このため、先端ボックスブーム120のブームヘッド130側に設けられたロッド部61の基端が、基端側ボックスブーム110に設けられた当接部材55に当接し、かつ当接部材55によってロッド部61が前方Fにスライドされている。これにより、コイルばね70が引っ張られて弾性変形している。そして、ロッド部61を後方Bへ付勢している。また、ロッド部61に設けられた突起63が円筒カム80の溝82に沿って溝82の一端まで摺動され、その結果、円筒カム80が矢印Aの方向へ回動されている。そして、円筒カム80の矢印Aの方向の回動によって、図14Aに示すように、サポート部材91が円筒カム80の側方Sに位置している。
また、ロッド部61の前方Fへのスライドによって、ストッパー62がサポート部材91の側面板91Bに当接している。これにより、サポート部材91の背面板91Aが円筒カム80の切り欠き部83に押し付けられている。その結果、サポート部材91の揺動が規制され、図9B-図9D及び図14Aに示すように、レンズ92が側方Sに向いている。このため、移動式クレーンの走行が停止された後、かつクレーン作業が開始される前の状態では、カメラ本体90は、側方Sにある物体を撮像できる状態にある。このため、クレーン用監視カメラ2はサイドカメラとして機能することができる。オペレーターは、クレーン用監視カメラ2を使用して、サイド方向を監視することができる。
移動式クレーンの走行を停止させた後に、クレーン作業を行う場合、オペレーターは、まず、アウトリガーの張り出し等のクレーンの設置作業を行う。続いて、安全確認後、ブーム100を伸長させる。このとき、基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120を伸長させる。
基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120が伸長させていくと、先端ボックスブーム120のブームヘッド130が基端側ボックスブーム110側の当接部材55から離れはじめる。
基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120がやや伸長した段階では、上述したように、コイルばね70の弾性変形によってロッド部61が後方Bへ付勢されている。このため、コイルばね70の付勢力によってロッド部61の基端が当接部材55に押し付けられ、ブームヘッド130に対してロッド部61が後方Bへ相対移動する。その結果、ロッド部61の突起63が、円筒カム80に対して後方Bへ相対移動する。突起63は、円筒カム80の溝82に沿って摺動され、円筒カム80が矢印Aと反対の方向へ回動する。そして、上述したように、ロッド部61の、突起63から鈎状部65までの長さL4が、円筒カム80の溝82の、円筒軸方向の長さL3よりも長いため、突起63は、コイルばね70に付勢されて、円筒カム80の溝82の後方B側にあるもう一方の他端までスライドする。これにより、円筒カム80は、円筒カム80の溝82が設けられた範囲Rの90°の角度だけ、回動する。その結果、図14Bに示すように、サポート部材91が円筒カム80の下方Uに移動する。なお、本明細書では、このときの先端ボックスブーム120が伸長した、その長さを第1長さという。先端ボックスブーム120が第1長さよりも伸長したときに、ロッド部61の基端が当接部材55から離れ、サポート部材91が円筒カム80の下方Uに移動したままとなる。
サポート部材91が円筒カム80の下方Uに移動している状態で、ブーム100が倒伏している場合には、カメラ本体90とサポート部材91の重心93が、揺動軸91Cの鉛直方向にある。このため、サポート部材91は揺動しない。その結果、サポート部材91の背面板91Aが水平方向に向き、サポート部材91の側面板91Bが鉛直方向に向いた状態となる。そして、図13A-図13Cに示すように、レンズ92が下方Uに向いた状態となる。このため、基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120が伸長させ、かつブーム100を倒伏させた状態では、カメラ本体90で、下方Uにある物体を撮像できる状態となる。
次に、図示しないが、オペレーターはブーム100を起こす。ブーム100が徐々に傾斜し、ブームヘッド130に設けられた円筒カム80も徐々に傾斜する。このとき、カメラ本体90とサポート部材91の重心93が揺動軸91Cの鉛直方向に位置するように、サポート部材91が揺動軸91Cを中心にして揺動する。その結果、図14Cに示すように、サポート部材91の背面板91Aが水平方向に、サポート部材91の側面板91Bが鉛直方向に向いた状態が維持される。このとき、図15に示すように、レンズ92が鉛直方向に向いている。このため、ブーム100を起こした状態では、カメラ本体90で、鉛直方向かつ下方にある物体を撮像できる状態にある。このため、オペレーターは、クレーン用監視カメラ2で、移動式クレーンの吊荷を監視することができる。
なお、以上の説明では、クレーン用監視カメラ2の動作の理解を容易にするため,ブーム100を倒伏させたまま、基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120が伸長させているが、ブーム100を起こしながら、基端側ボックスブーム110から先端ボックスブーム120が伸長させてもよい。
以上のように、実施の形態2に係るクレーン用監視カメラ2では、回動部材20Bが備える円筒カム80が回動することにより、円筒カム80に設置されたカメラ本体90が回動する。その結果、カメラ本体90の向きは、レンズ92を下方Uに向けた状態と、側方Sに向けた状態とに、切り替わる。このため、クレーン用監視カメラ2では、1つのカメラ本体90で、ブームヘッド130の下方Uにある吊荷の監視と、そのサイド方向の監視をすることができる。
詳細には、クレーン用監視カメラ2では、円筒カム80の回動によって突起63が円筒カム80の溝82の一端にあるとき、カメラ本体90が円筒カム80の回動軸81に対して、旋回体の旋回方向、すなわち側方に位置する。また、円筒カム80の回動によって突起63が円筒カム80の溝82のもう一方の他端にあるとき、カメラ本体90が回動軸81に対してブーム100の倒伏方向、すなわち下方に位置する。このため、カメラ本体90を用いて、側方又は下方にある物体を撮像することができる。その結果、クレーン用監視カメラ2は、吊荷の監視に加えて、側方の監視をすることができる。
回動部材20Bは、先端ボックスブーム120が一定の長さよりも縮小することで先端ボックスブーム120の前方F(すなわち、伸長方向)にスライドするスライド部材60と、スライド部材60を先端ボックスブーム120の後方B(すなわち、縮小方向)にスライドさせる付勢力をスライド部材60に加えるコイルばね70と、を備えている。このため、先端ボックスブーム120が一定の長さよりも縮小することで、スライド部材60が有する突起63が円筒カム80に形成された溝82を摺動して円筒カム80を一方向に回動させることができる。また、先端ボックスブーム120が一定の長さ以上に伸長した状態では、スライド部材60が基端側ボックスブーム110の当接部材55に押されない。このため、コイルばね70がその付勢力によって円筒カム80を一方向と逆方向に回動させることができる。
カメラ本体90は、回動軸81に対して下方に位置するとき、サポート部材91が揺動可能であるため、揺動して揺動軸91Cから重心93へ向かう方向へ、すなわち揺動軸91Cの下方かつ鉛直方向へレンズ92を向ける。このため、カメラ本体90は、ブームヘッド130の下にある吊荷を確実に撮像して監視することができる。
(実施の形態3)
実施の形態2に係るクレーン用監視カメラ2は、円筒カム80の径方向かつ外側に、スライド部材60のロッド部61が配置された回動部材20Bを備えている。しかし、ロッド部61は、前後方向にスライド可能であればよく、ロッド部61の配置は、円筒カム80の径方向かつ外側に限られない。実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3は、装置を小型化するために、ロッド部61が円筒カム85の内側に挿通された回動部材20Cを備えている。以下に、図16-図23を参照して実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3の構成を説明する。実施の形態3では、実施の形態2と異なる構成について説明する。
図16は、本発明の実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3Lが設けられた、移動式クレーンに備えられるブーム100先端部の斜視図である。図17は、図16に示すクレーン用監視カメラ3Lの拡大斜視図である。図18は、他の方向から視たクレーン用監視カメラ3Lの拡大斜視図である。図19は、円筒カム85を取り外したときのクレーン用監視カメラ3の拡大斜視図である。図20は、コイルばね75が装着されたロッド部61の斜視図である。図21は、前方Fから視た円筒カム85の斜視図である。図22は、後方Bから視た円筒カム85の斜視図である。図23は、円筒カム85の後方面を示す平面図である。なお、クレーン用監視カメラ3Rは、図示しないが、クレーン用監視カメラ3Lと左右対称に構成されている。このため、以下の説明では、クレーン用監視カメラ3Lの説明を行い、クレーン用監視カメラ3Rの説明は省略する。
図16-図18に示すように、クレーン用監視カメラ3Lが有する回動部材20Cは、スライド部材60のロッド部61が挿通された円筒カム85を備えている。
円筒カム85は、図21及び図22に示すように、端面85Aの一部が開放されている。その端面85Aの開放された部分に、ロッド部61が挿通されている。ロッド部61は、保持部材64の図示しない軸受部64Aにスライド可能に支持されている。これにより、ロッド部61は、円筒軸と平行に配置されている。また、回動軸81とずれて配置され、回動軸81との干渉が防がれている。
円筒カム85の内部には、図19に示すように、コイルばね75が収容されている。コイルばね75の後方B側の端部は、図示しないが、保持部材64の板面に固定されている。これに対して、コイルばね75の前方F側の端部は、ロッド部61に取り付けられた、図20に示すバネ支持部材66に固定されている。これにより、コイルばね75は、ロッド部61が前方Fに移動することで引っ張られて弾性変形する。その結果、コイルばね75は、ロッド部61を後方Bにスライドさせる付勢力をロッド部61に加える。なお、コイルばね75は、本明細書では第2弾性部材ともいう。
図19に戻って、円筒カム85の内部には、ロッド部61に取り付けられた突起部材67が配置されている。突起部材67は、図20に示すように、ロッド部61の周面から径方向に突出している。
一方、円筒カム85の円筒壁には、図23に示すように、内壁面側に、90°の角度の範囲Rにわたって溝84が形成されている。溝84は、図示しないが、内壁面に沿った螺旋の形状に形成されている。溝84には、突起部材67が摺動可能に係合されている。これにより、スライド部材60、すなわち、ロッド部61が前後方向にスライドすることで、突起部材67が溝84に沿って摺動する。その結果、円筒カム85が回動する。
溝84は、図23に示すように、溝84の一端に突起部材67が係合するときに、切り欠き部83が側方Sに位置する、円筒壁の内壁面側の箇所に形成されている。また、図示しないが、溝84は、溝84の他端に突起部材67が係合するときに、切り欠き部83が下方Uに位置する、円筒壁の内壁面側の箇所に形成されている。このため、突起部材67が溝84に沿って摺動することで、円筒カム85が回動して切り欠き部83が側方Sから下方Uに、又はその逆に移動する。その結果、切り欠き部83に設けられたサポート部材91が移動して、サポート部材91に支持されたカメラ本体90が側方Sから下方Uに、又はその逆に移動する。これにより、クレーン用監視カメラ3Lは、実施の形態2と同様に、カメラ本体90の位置を変えて、吊荷の監視と側方Sの監視に利用することができる。
なお、円筒カム85の端面85Aは、図23に示すように、扇状の板で構成されている。円筒カム85は、端面85Aの板が回動軸81に支持され、溝84がロッド部61の突起部材67に支持されることで、保持部材64に支持されている。
実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3Lの構成は、上述した、ロッド部61のバネ支持部材66、突起部材67、円筒カム85の溝84、コイルばね75の配置を除いて、実施の形態2と同様である。このため、実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3Lの動作は、突起部材67が溝84を摺動すること、コイルばね75が保持部材64とバネ支持部材66によって引っ張られて弾性変形すること、を除いて、実施の形態2に係るクレーン用監視カメラ2Lと同じである。このため、実施の形態3では、クレーン用監視カメラ3Lの動作の説明を省略する。
以上のように、実施の形態3に係るクレーン用監視カメラ3Lでは、回動部材20Cが、円筒カム85の、円筒壁の内壁面側に形成された溝84と、ロッド部61に設けられ、溝84に摺動可能に係合する突起部材67と、を備えている。クレーン用監視カメラ3Lでは、溝84の一端に突起部材67が係合するときにサポート部材91に支持されたカメラ本体90が側方Sに位置する。また、溝84の他端に突起部材67が係合するときにカメラ本体90が下方Uに位置する。このため、溝84に沿って突起部材67が摺動することで、カメラ本体90の位置が変化する。これにより、カメラ本体90を吊荷の監視と側方Sの監視に兼用することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態1では、回動部材20Aが第1回動体21と第2回動体22とを備え、第1回動体21と第2回動体22がカメラ本体90の向きを変更している。また、実施の形態2及び3では、回動部材20B、20Cが回動体である円筒カム80、85を備え、円筒カム80、85がカメラ本体90の向きを変更している。しかし、本発明はこれらに限定されない。本発明では、クレーン用監視カメラ1-3が、先端ボックスブーム120の伸縮運動を回動運動に変換することにより、カメラ本体90を回動させてレンズ92の向きを変更するカム機構10を備えていればよい。この場合、カム機構10は、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して第1長さ以上に伸長した場合に、カメラ本体90を、レンズ92が下方Uに向く方向に向け、先端ボックスブーム120が基端側ボックスブーム110に対して第1長さよりも短い第2長さ以下に縮小した場合に、カメラ本体90を、レンズ92が側方Sに向く方向に向ければよい。このため、本発明では、カム機構10が備える具体的なカムの形状は任意である。
例えば、円筒カム80、85は、円錐カムであってもよい。この場合、先端ボックスブーム120の伸縮方向と円錐カムの軸を平行に配置する必要がなく、ブームヘッド130の形状にあわせてカメラ本体90を設置することができる。
また、実施の形態1では、当接部材50が四角柱の形状である。実施の形態2及び3では、当接部材50が直方体状又は板状である。しかし、本発明はこれらに限定されない。当接部材50、55は、基端側ボックスブーム110に設けられ、先端ボックスブーム120が縮小することにより回動部材20A-20Cに当接する限り、その形状は任意である。例えば、実施の形態1の当接部材50は、先端が二股に分かれた棒であってもよい。この場合、二股の一方の先端が、回動部材20Aの第1誘導部30に当接し、二股のもう一方の先端が、回動部材20Aの第2誘導部40に当接するものであるとよい。また、実施の形態1では、当接部材50が曲面部51を有しているが、曲面部51の有無は任意であり、先端が平面であってもよい。
また、実施の形態1では、第1誘導部30が円柱状であり、第2誘導部40が四角柱状である。しかし、本発明では、第1誘導部30は、当接部材50の当接により第1回動体21の回動を誘導させるものであれば、その形状は任意である。また、第2誘導部40は、カメラ本体90を保持するとともに、当接部材50の当接により第2回動体22の回動を誘導させるものであれば、その形状は任意である。例えば、第1誘導部30は、第1回動体21の図2に示す後方B側の側面と平行な板面を有する板の形状であってもよい。また、第2誘導部40は、カメラ本体90の後方B側の側面そのものであってもよいし、その側面とつながった面を有する板であってもよい。これらの場合、カメラ本体90の後方B側の側面又は板面は、水平軸26よりも上まで延在し、当接部材50が当接可能な面を有していればよい。このような側面であれば、当接部材50に押されて第2回動体22が回動するからである。
実施の形態1では、ストッパー24が第1回動体21に設けられている。しかし、ストッパー24は、回動部材20Aが備えていればよく、例えば、第2回動体22に設けられてもよい。
実施の形態1では、第1回動体21にねじりコイルばね27が設けられている。しかし、ねじりコイルばね27は、第1回動体21を先端ボックスブーム120の縮小方向に回動させる付勢力を加える弾性部材であればよい。例えば、例えば、ゴムで形成されもよい。
実施の形態2及び3では、切り欠き部83が平面を有する形状に形成されている。しかし、本発明では、切り欠き部83の形状は任意であり、その有無も任意である。例えば、切り欠き部83が円筒カム80、85の中心軸Cに平行な平面に切り欠かれた形状に加えて、さらに、円筒カム80、85の中心軸C側へ傾斜する面に切り欠かれた形状であってもよい。
実施の形態2及び3では、コイルばね70及び75が引張りコイルばねで構成されている。しかし、コイルばね70、75は、スライド部材60に先端ボックスブーム120の縮小方向の付勢力を加える弾性部材であればよい。例えば、コイルばね70、75は、先端ボックスブーム120の伸長によって圧縮される圧縮コイルばねであってもよい。また、円筒カム80、85に設けられ、先端ボックスブーム120の伸長によって円筒カム80、85が回動することで、ねじられる、ねじりコイルばねであってもよい。
実施の形態2及び3では、スライド部材60がロッド部61を有している。しかし、スライド部材60は、ブームヘッド130の側方Sに設けられ、先端ボックスブーム120の伸縮方向にスライド可能に支持されていればよい。例えば、ブームヘッド130の側方Sに設けられた案内部材、例えばレールによって支持され、先端ボックスブーム120の伸縮方向にスライド可能であってもよい。
実施の形態2及び3では、カメラ本体90がサポート部材91によって保持されている。しかし、本発明では、サポート部材91の有無は任意である。カメラ本体90が円筒カム80、85に直接揺動可能に支持されてもよい。例えば、カメラ本体90の筐体に貫通孔が形成され、その貫通孔に揺動軸91Cが差し込まれてもよい。
実施の形態2及び3では、円筒カム80及び85に溝82及び84が形成されている。また、スライド部材60が、溝82及び84に摺動可能に係合する突起63及び突起部材67を備えている。しかし、本発明はこれに限定されない。溝82及び84は、円筒カム80、85の円筒壁に形成された係合部であるとよい。また、突起63及び突起部材67は、スライド部材60に設けられ、その係合部に摺動可能に係合する係合部材であるとよい。例えば、円筒カム80、85の円筒壁に、螺旋状に延在する凸部が形成され、スライド部材60に、その凸部に係合する凹状部材が設けられるとよい。この場合、凹状部材の内壁が凸部に摺動可能に係合するとよい。このような形態であっても、スライド部材60のスライドによって円筒カム80、85を回動させてカメラ本体90の位置を変更することができる。
なお、実施の形態2及び3では、円筒カム80、85は中空、中実を問わない。例えば、実施の形態2で説明した円筒カム80は、中実の円柱であってもよく、その場合、円筒壁は、円周外壁部である。
本発明は、先端ボックスブーム120と基端側ボックスブーム110で構成されるブーム100、すなわち、多段伸縮ブームを備える移動式クレーン全般に適用可能である。例えば、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンに適用可能である。