JP7093971B2 - 担持触媒および炭素ナノ構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、担持触媒の製造方法および炭素ナノ構造体の製造方法に関するものである。
近年、導電性、熱伝導性、機械的特性などの種々の特性に優れる材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の、炭素原子から構成されるナノサイズの物質(炭素ナノ構造体)が注目されている。
そして、炭素ナノ構造体を製造する方法の一つとして、例えば、支持体と、支持体上に担持された触媒成分とを有する担持触媒を用いて、当該触媒成分上に、所望の性状および特性を有する炭素ナノ構造体を生成させる方法が知られている。また、担持触媒を用いて炭素ナノ構造体を生成するに際しては、支持体上に触媒成分を良好に担持するために、通常、支持体と触媒成分との間に触媒担体成分を更に設けている。
ここで、支持体上に触媒成分が担持されてなる担持触媒を用いて炭素ナノ構造体を製造する従来の方法では、一般に、支持体自体のコストが製造コスト全体に占める割合が大きい。従って、炭素ナノ構造体の製造コストを低減するためには、支持体を効率的に利用することが求められている。
例えば、特許文献1には、一旦CNTの製造に使用したCNT生成用基材上に繰り返し下地層(触媒担体成分)及び触媒層を設けることにより、CNT生成用基材を再利用する技術が開示されている。具体的には、特許文献1では、CNT生成用基材として、板状のFe-Ni-Cr合金からなる支持体の一方の面に酸化ケイ素膜(厚み:100nm)/アルミナ下地膜(厚み:10nm)/Fe触媒膜(厚み:1nm)がスパッタ形成されてなる構造体を用いている。そして、特許文献1では、上記CNT生成用基材上に化学気相成長(CVD)法で生成、成長させたCNTを、基材からヘラでそぎ取り、基材の触媒成分表面に形成された炭素不純物を酸素プラズマ処理で除去して基材を初期化し、更に、初期化した基材上に上記と同様の下地膜/触媒膜を形成することにより、CNT生成用基材を複数回再利用している。
このようにCNT生成用基材を複数回再利用している特許文献1では、再利用の回数にかかわらず、同品質のCNTを得ている。
特許第5574257号
しかしながら、特許文献1に記載の乾式プロセスでは、装置が大掛かりであり真空制御が必要であった。このため、支持体上に触媒成分を繰り返し担持できる簡便な方法が求められる。
一方、触媒成分の担持を簡便に行う方法として、ゾルゲル法、溶液浸漬法、金属有機化合物分解法などの湿式プロセスを用いることができる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、例えば、湿式プロセスを用いて支持体上に触媒担体成分を形成し、更に触媒成分を担持した場合は下地層の緻密性が不十分であることが多く、一旦CNT等の合成に使用された触媒成分が新たに形成された触媒成分の触媒性能を低下させ得ることが考えられた。従って、湿式プロセスにより支持体上に触媒成分を繰り返し担持する場合であっても、触媒成分に高い触媒性能を発揮させ、高品質な炭素ナノ構造体を繰り返し製造する点において更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を製造可能な、担持触媒の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造可能な、炭素ナノ構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らによれば、湿式プロセスにより支持体上に触媒成分を繰り返し担持するにあたり、触媒成分と触媒担体成分とを緻密で均一な膜厚で形成することが困難であることが分かった。また、本発明者らは、支持体上に触媒成分を繰り返し担持するにあたり、最表面に触媒成分(現触媒成分)を担持している最中に、既に担持された触媒成分(前触媒成分)が、前触媒成分と現触媒成分との間に存在する触媒担体成分の上部にまで移行及び拡散して、現触媒成分の触媒性能を劣化させる虞がある点に着目した。
そして、本発明者らは更に鋭意検討を行い、表面に既に担持された前触媒成分を含む層(触媒層)を有する支持体に対して、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を接触させて、触媒成分と触媒担体成分とを有する混合層を形成すれば、触媒性能に優れた担持触媒を効率的に得られることを見出した。また、上記所定の混合層が形成されてなる担持触媒を用いれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の担持触媒の製造方法は、表面に触媒層を有する支持体に対して、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を接触させることにより、前記支持体のうち前記触媒層を有する表面の少なくとも一部上に、触媒成分と触媒担体成分とを有する混合層を形成する工程Aを含むことを特徴とする。このように、表面に触媒層を有する支持体に対して所定の混合溶液を接触させれば、高い触媒性能を発揮する所定の混合層が形成された担持触媒を得ることができる。そして、当該担持触媒を用いれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造することができる。
ここで、本発明の担持触媒の製造方法は、前記工程Aの後に、前記触媒成分を前記混合層の表層部に偏析させる工程Bを更に含むことが好ましい。担持触媒において、触媒成分を混合層の表層部に偏析させれば、混合層が形成されてなる担持触媒の触媒性能をより高め、より高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造することができるからである。
また、本発明の担持触媒の製造方法は、前記工程Bにおいて、前記混合層に対して還元剤を付与することが好ましい。混合層に対して還元剤を付与すれば、触媒成分を混合層の表層部により良好に偏析させることができる。従って、混合層が形成されてなる担持触媒の触媒性能を更に高め、更に高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造することができるからである。
また、本発明の担持触媒の製造方法は、前記混合溶液中の前記触媒原料の過飽和比と前記触媒担体原料の過飽和比との差の絶対値が0.5以下であることが好ましい。混合溶液中の触媒原料と触媒担体原料との過飽和比の差が上記上限以下であれば、例えば、混合溶液の乾燥時における触媒原料と触媒担体原料との析出のタイミングを近づけて、触媒成分と触媒担体成分との比を均一にし得る。従って、組成が均一でより触媒性能に優れた混合層を形成でき、より高品質な炭素ナノ構造体をより効率的に繰り返し製造することができるからである。
なお、本発明において、「過飽和比」とは、温度25℃下における、溶液中のある溶質の溶解度に対する実際の濃度(過飽和比=濃度/溶解度、単位なし)で求められる値であり、過飽和比が1.0である溶液は飽和状態であることを示す。
また、本発明の担持触媒の製造方法は、前記混合溶液中の前記触媒原料の過飽和比および/または前記触媒担体原料の過飽和比が0.3以上1.0以下であることが好ましい。触媒原料と触媒担体原料との過飽和比の差の絶対値が0.5以下である混合溶液において、触媒原料および/または触媒担体原料の過飽和比が更に上記所定範囲内であれば、例えば、混合溶液を接触付与、乾燥して混合層を形成する際に、触媒成分および/または触媒担体成分がより均一に析出する。また、触媒原料および/または触媒担体原料の過飽和比が上記所定範囲内であれば、例えば、混合溶液の乾燥開始から短時間で、触媒成分および/または触媒担体成分を支持体上に均一に析出させ、混合層をより均一に形成できる。従って、混合層の触媒性能を更に高め、更に高品質な炭素ナノ構造体を更に効率的に繰り返し調製できるからである。
また、本発明の担持触媒の製造方法は、前記支持体がセラミック粒子であることが好ましい。支持体がセラミック粒子であれば、炭素ナノ構造体の製造工程において、高品質な炭素ナノ構造体を更に効率的に繰り返し調製し得るからである。
また、本発明の担持触媒の製造方法は、前記セラミック粒子の見かけ密度が2.0g/cm以上であることが好ましい。セラミック粒子の見かけ密度が上記下限以上であれば、高品質な炭素ナノ構造体を一層効率的に繰り返し製造し得るからである。
なお、本発明において、「見かけ密度」は、JIS R 1620に従って測定することができる。
そして、本発明の担持触媒の製造方法は、前記触媒原料が、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。触媒原料の組成が上記の通りであれば、混合層の触媒性能を一層高め、一層高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造することができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いて、炭素ナノ構造体を合成する工程Cを含むことを特徴とする。このように、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し得ることができる。
ここで、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブ(CNT)であることが好ましい。上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いてCNTを合成すれば、高品質なCNTを効率的に繰り返し得ることができるからである。
本発明によれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を製造可能な、担持触媒の製造方法が得られる。
また、本発明によれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造可能な、炭素ナノ構造体の製造方法が得られる。
実施例1に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 実施例2に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 実施例3に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例1に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例2に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例3に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例4に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例5に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例6の1回目に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例6の2回目に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 実施例4-1に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 実施例4-2に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。 比較例7に従った、CNTの合成処理を行った後の担持触媒のSEM画像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の担持触媒の製造方法は、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を得るために用いることができる。より具体的には、本発明の担持触媒の製造方法は、例えば、一旦、炭素ナノ構造体が合成され、且つ、剥離された状態の、いわゆる「使用済み担持触媒」を用いて、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を得るために好適に用いることができる。
このように、本発明の担持触媒の製造方法は、「使用済み担持触媒」に含まれている一般に高価な支持体をリサイクルしてコスト低減を図りつつ、高い触媒性能を有する担持触媒を効率的に繰り返し得るために特に好適に用いることができる。同様に、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、「使用済み担持触媒」に含まれている一般に高価な支持体をリサイクルしてコスト低減を図りつつ、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し得るために特に好適に用いることができる。
なお、本発明の製造方法で得られる担持触媒は、例えば、流動床、固定床、輸送床、回転炉などの、炭素ナノ構造体の合成に一般に使用され得る種々の反応器と共に良好に使用することができる。
(担持触媒の製造方法)
本発明の担持触媒の製造方法は、表面に触媒層を有する支持体に対して所定の混合溶液を接触させることにより、触媒成分と触媒担体成分とを有する所定の混合層を形成する工程Aを含むことが必要である。また、本発明の担持触媒の製造方法は、任意に、上記工程Aに先立ち、表面に触媒層を有する支持体を準備する工程A1、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を準備する工程A2を更に含んでもよい。また、本発明の担持触媒の製造方法は、任意に、上記工程Aの後に、触媒成分を混合層の表層部に偏析させる工程Bを更に含んでもよい。中でも、担持触媒の触媒性能をより高める観点からは、本発明の担持触媒の製造方法は、工程Aに加えて少なくとも上記工程Bを更に含むことが好ましい。
<工程A1>
工程Aの前に任意に行うことができる工程A1では、表面に触媒層を有する支持体を準備する。ここで、表面に触媒層を有する支持体としては、市販のものを使用してもよいし、例えば、以下に詳述する方法で作製したものを使用してもよい。そして、工程A1で得られた、表面に触媒層を有する支持体は、後述する工程Aにおいて使用することができる。
<<支持体>>
支持体としては、特に限定されることなく、表面に触媒層を有することが可能な既知の支持体を使用することができる。
ここで、支持体の形状としては、例えば、粉末状(通常、体積平均粒子径で50μm未満);ビーズなどの粒子状(通常、体積平均粒子径で50μm以上);ハニカム状;多孔質状;ファイバー状、チューブ状、ワイヤー状等の繊維状;網状、格子状などの絡合状;スポンジ状;板状;フィルム状;層状;等が挙げられる。例えば、工程Aで流動床の反応器を用いる場合は、流動容易性、大きな比表面積による反応効率性などの観点から、支持体が粉末状又は粒子状であることが好ましく、更にハンドリング性の観点から粒子状であることがより好ましい。また、工程Aで固定床の反応器を用いる場合は、固定容易性の観点から、支持体が、絡合状、板状、又はフィルム状であることが好ましく、更に大きな反応面積による反応効率性およびハンドリング性などの観点から板状であることがより好ましい。
また、支持体の材質としては、特に限定されることなく、ガラス;石英;アルミナ(Al)、SiO、ZrO、ZnOなどの酸化物;ムライト(xMO・yAl・zSiO・nHO〔Mは金属原子であり、x~z、nは各成分のモル数(0以上)を表す〕)、ゼオライトなどのアルミノケイ酸塩;SiCなどの炭化物;Siなどの窒化物;のセラミック材料、
Fe、Ni、Cr、Mo、W、Ti、Al、Mn、Co、Cu、Ag、Au、Pt、Nb、Ta、Pb、Zn、Ga、Ge、As、In、Sbなどの元素単体;Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Ni-Crなどの合金;等の金属材料、
Si、P、マイカ、グラファイト、ダイヤモンド等の非金属材料、などが挙げられる。
より具体的には、流動床の反応器を用いる場合は、支持体としては、セラミック粒子を好適に用いることができる。支持体がセラミック粒子であれば、触媒成分および触媒担体成分と支持体との反応を抑えて担持触媒の触媒性能を効果的に引き出しつつ、例えば、湿式プロセスにおいて支持体および担持触媒を装置内に三次元的に充填して、担持触媒および炭素ナノ構造体の製造効率を更に高め得るからである。また、支持体がセラミック粒子であれば、支持体および担持触媒が破損することなく流動床の反応器中で良好に流動し易いため、担持触媒および高品質な炭素ナノ構造体を更に効率的に繰り返し調製し得るからである。また、固定床の反応器を用いる場合は、支持体としては、例えば、Fe-Ni-Cr合金板などの金属板を好適に用いることができる。
なお、本発明において、「粒子」は、通常、アスペクト比(長径/短径)が1以上10未満であり、好ましくは1以上5未満である。また、本発明において、「アスペクト比」は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した任意の50個の粒子について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
[セラミック粒子]
-見かけ密度-
ここで、支持体としてのセラミック粒子は、見かけ密度が2.0g/cm以上であることが好ましい。セラミック粒子の見かけ密度が上記下限以上、即ち、多孔質の程度が低ければ、例えば、流動床法により担持触媒を製造する場合に、支持体の流動性がより良好になる。そして、混合層をより効率的に形成し、担持触媒の製造効率をより高め得るからである。なお、セラミック粒子の見かけ密度は、例えば、7.0g/cm以下であり得る。
-粒子径-
また、支持体としてのセラミック粒子は、体積平均粒子径が2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、通常、50μm以上であり、80μm以上であることが好ましい。セラミック粒子の粒子径が上記上限以下であれば、十分に大きい外部表面積を確保できる。更に、セラミック粒子の粒子径が500μm以下であれば、例えば、流動床法により担持触媒を製造する場合に、反応器中で支持体が沈んだり下方に停滞したりすることなくより良好に流動される。一方、セラミック粒子の粒子径が上記下限以上であれば、例えば、反応ガスを流通しても支持体を流出させずに反応器内に保持することができる。その結果、触媒性能に優れた混合層をより効率的に形成し、高品質な炭素ナノ構造体をより効率的に繰り返し製造することができるからである。加えて、セラミック粒子の粒子径が上記上限以下であれば、一般に、支持体自体のコストをより低減し得るからである。
なお、本発明において、「体積平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)として求めることができる。
<<触媒層>>
支持体が表面に有する触媒層としては、支持体の表面に任意の触媒層が単独で形成されてなる層であってもよく;支持体の表面に任意の触媒担体層、更に触媒担体層上に任意の触媒層が形成されてなる積層または当該積層の繰り返しであってもよく;支持体の表面に任意の触媒成分と触媒担体成分とを有する混合層が形成されてなる層であってもよい。また、触媒層、触媒担体層、混合層は、それぞれ、単層であってもよく、複数層よりなる多層であってもよい。
また、触媒層は、(I)支持体の表面に形成されたまま(未使用担持触媒)の状態であってもよく;(II)支持体の表面に形成された後に、例えば炭素ナノ構造体の製造に使用され、且つ、製造された炭素ナノ構造体が剥離された後(使用済み担持触媒)の状態であってもよい。
そして、上記「使用済み担持触媒」には、上記炭素ナノ構造体の製造および剥離が2回以上行われた後の使用済み担持触媒の状態も含まれる。より具体的には、上記「使用済み担持触媒」には、上記炭素ナノ構造体の製造および剥離が連続して2回以上行われた後の状態も含まれるし、上記炭素ナノ構造体の製造および剥離が、更なる任意の触媒層の形成を経て2回以上行われた後の状態も含まれる。
中でも、一般に高価な支持体をリサイクルしてコスト低減を図りつつ、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し得る観点からは、触媒層が(II)使用済み担持触媒の状態である場合に、本発明の担持触媒の製造方法の効果がより発揮される。
そして、触媒層が(II)使用済み担持触媒の状態である場合には、工程A1において、使用済み担持触媒の表面に存在し得る、炭素ナノ構造体の残物および炭素ナノ構造体の合成時に生じた炭素被膜等の炭素不純物を、更に除去することが好ましい。
以下、触媒層が、炭素ナノ構造体の合成に使用された上記(II)使用済み担持触媒の状態である場合について一例として説明するが、本発明はこれに限られない。
また、以下、便宜上、炭素ナノ構造体の合成に使用される前の触媒層を「未使用触媒層」と称し;炭素ナノ構造体が合成された状態の触媒層を「合成済み触媒層」と称し;合成された炭素ナノ構造体を剥離した後の状態の触媒層を「使用済み触媒層」と称し;表面に残る炭素不純物を更に除去した後の触媒層を「炭素除去済み触媒層」と称することがある。
[前触媒成分]
触媒層を構成し得る組成(「前触媒成分」と称する場合がある。)としては、特に制限されることなく、例えば、「混合層」の項で後述する触媒成分と同様の組成を挙げることができる。
ここで、本発明者らの推察によれば、Fe、Co、Ni等の前触媒成分は、後述する混合層の形成において、当該混合層の表面まで移行、拡散し易い。そして、混合層の表面まで移行、拡散した前触媒成分は、混合層が有する触媒成分(現触媒成分)に付加して現触媒成分の触媒性能を低下させる虞がある。しかしながら、本発明の担持触媒の製造方法では、触媒層上に所定の混合層を、好ましくは、後述の好適な厚みの下限値以上で形成しているため、混合層の形成時に前触媒成分が混合層の表面まで移行、拡散することを抑制し、現触媒成分に優れた触媒性能を発揮させることができる。
[前触媒担体成分]
触媒層を構成し得る更なる組成(「前触媒担体成分」と称する場合がある。)としては、特に制限されることなく、例えば、「混合層」の項で後述する触媒担体成分と同様の組成を挙げることができる。
[未使用触媒層の形成方法]
そして、支持体の表面への未使用触媒層の形成方法は、乾式法、湿式法などの一般の層形成方法に従うことができる。
<<炭素ナノ構造体の合成>>
また、未使用触媒層上への炭素ナノ構造体の合成方法も、例えば、「炭素ナノ構造体の製造方法」の工程Cの項で後述する合成方法などに従うことができる。
このようにして、支持体は表面に合成済み触媒層を有する。
<<炭素ナノ構造体の剥離>>
合成済み触媒層からの炭素ナノ構造体の剥離は、特に制限されることなく、例えば、合成済み触媒層を有する支持体全体を任意の溶液中に投入し、必要に応じて超音波処理などの撹拌を行い、炭素ナノ構造体を溶液中に分散させることにより剥離してもよい。また、ヘラ、カッター等により炭素ナノ構造体を合成済み触媒層からそぎ取ってもよい。更に、例えば、表面に合成済み触媒層を有する支持体全体を振とうして、又は、任意の気流中に、表面に合成済み触媒層を有する支持体全体を配置して、炭素ナノ構造体を合成済み触媒層から振り落としてもよい。
このようにして、支持体は表面に使用済み触媒層を有し、上述の「使用済み担持触媒」を構成し得る。
<<炭素不純物の除去>>
上述のように得られた使用済み触媒層上に存在し得る炭素不純物の除去は、特に制限されることなく、例えば、空気を流通しながら加熱処理を施して行ってもよいし、プラズマ処理により行ってもよい。
このようにして、支持体は表面に炭素除去済み触媒層を有し、上述の「使用済み担持触媒」を構成し得る。
<工程A2>
工程Aの前に任意に行われ得る工程A2では、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を準備する。ここで、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液としては、市販のものを使用してもよいし、例えば、以下に詳述する方法で調製したものを使用してもよい。また、混合溶液は、上記触媒原料および触媒担体原料に加え、任意のその他の添加剤を更に含有することができる。そして、工程A2で得られた混合溶液は、後述する工程Aにおいて使用することができる。
<<触媒原料>>
触媒原料は、炭素ナノ構造体の合成の仲介、促進、効率化などの働きを担う触媒成分を構成する原料である。そして、触媒原料は、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含有することが好ましく、少なくともFeを含有することがより好ましい。触媒原料は、例えば、上記元素の酢酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、錯体、塩化物などでありうる。
好適に用い得る触媒原料の具体例としては、例えば、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))、硝酸鉄(III)(Fe(NO)、ビス(シクロペンタジエニル)鉄(II)(フェロセン、Fe(C)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄カルボニル等のFe含有触媒原料;トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、硝酸コバルト(II)六水和物等のCo含有触媒原料;ビス(2,4-ペンタンジオナト)ニッケル(II)水和物、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)等のNi含有触媒材料;等が挙げられる。中でも、溶解性および触媒成分の析出容易性の観点からは、触媒原料としては、酢酸鉄(II)および硝酸鉄(III)を用いることが特に好ましい。
[過飽和比]
また、混合溶液中の触媒原料の過飽和比は、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以下であることが好ましい。混合溶液中の触媒原料の過飽和比が上記下限以上であれば、混合層中に触媒成分がより効率的に高い被覆率で析出、形成され、触媒成分の厚みをより大きくし得る。加えて、例えば、混合溶液の乾燥開始から時間が経って付与した混合溶液がはじく前に触媒成分を析出させることができるため、混合層をより均一に形成し得る。その結果、混合層により高い触媒性能を発揮させ得るからである。また、混合溶液中の触媒原料の過飽和比が上記上限以下であれば、混合溶液を支持体に接触させる前に、混合溶液から触媒成分が析出することを防ぐことができる。そして、より均一な混合層では、例えば、後に詳述する工程Bにおける触媒成分の偏析がより良好になり、より高い触媒性能を発揮し得るからである。
なお、本発明において、「過飽和比」は、例えば、混合溶液中の触媒原料および/または触媒担体原料の濃度を変更することで適宜設定することができる。
<<触媒担体原料>>
触媒担体原料は、触媒成分を支持体上に良好に担持させる助触媒としての働きを担う触媒担体成分を構成する原料である。そして、触媒担体原料としては、例えば、Al、Si、Mg、Fe、Co、Ni、O、N、C等の元素を含有することが好ましく、Al、Si、Mg等の元素を含有することがより好ましく、少なくともAlを含有することが更に好ましい。
好適に用い得る触媒担体原料の具体例としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OCH(CH)等のアルミニウムアルコキシド、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO))、硝酸アルミニウム(Al(NO)等が挙げられる。中でも、触媒成分を支持体上に良好に担持できる観点から、触媒担体原料としては、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましく、アルミニウムイソプロポキシドを用いることがより好ましい。
[過飽和比]
また、混合溶液中の触媒担体原料の過飽和比は、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましい。混合溶液中の触媒担体原料の過飽和比が上記下限以上であれば、支持体上に混合層がより効率的に高い被覆率で析出、形成され得る。その結果、混合層により高い触媒性能を発揮させ得るからである。また、混合溶液中の触媒担体原料の過飽和比が上記上限以下であれば、混合溶液を支持体に接触させる前に、混合溶液から触媒担体成分が析出することを防ぐことができる。そして、より均一な混合層では、触媒成分が支持体上により良好に担持されるため、より高い触媒性能を発揮し得るからである。
更に、混合溶液中の触媒原料の過飽和比と触媒担体原料の過飽和比との差の絶対値は、0.5以下であることが好ましい。混合溶液中の触媒原料の過飽和比と触媒担体原料の過飽和比との差の絶対値が上記上限以下であれば、例えば、混合溶液を接触付与、乾燥させて混合層を形成する場合に、触媒成分および触媒担体成分が分離して析出することを抑制し、触媒成分および触媒担体成分がより均一に存在する混合層を形成し得る。そして、触媒成分および触媒担体成分がより均一に存在する混合層は、例えば、後に詳述する工程Bにおける触媒成分の偏析が更に良好になり、更に高い触媒性能を発揮し得るからである。
[濃度比]
また、混合溶液中の触媒原料と触媒担体原料との濃度比(触媒原料/触媒担体原料)は、モル濃度比で0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが更に好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。混合溶液中の触媒原料の濃度が触媒担体原料の濃度に対して上記下限以上であれば、混合層中に触媒成分がより効率的に高い被覆率で析出、形成される。加えて、混合溶液中の触媒原料の濃度が触媒担体原料の濃度に対して上記下限以上であれば、後に詳述する工程Bにおいて、より多くの触媒成分がより効率的に混合層の表層部に偏析し得るため、更に高い触媒性能を発揮させることができるからである。また、混合溶液中の触媒原料の濃度が触媒担体原料の濃度に対して上記上限以下であれば、混合層中に触媒担体成分がより効率的に高い被覆率で析出、形成され、触媒成分をより良好に担持し得るため、更に高い触媒性能を発揮させることができるとともに、触媒成分の過剰な表面偏析による触媒粒子の粗大化を抑制できるからである。
<<添加剤>>
混合溶液が更に含有し得る添加剤としては、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、及びギ酸などの還元剤等が挙げられる。クエン酸などの還元剤は、混合溶液の安定性を向上し得る。
そして、混合溶液中の添加剤の濃度は特に限定されないが、例えば、上述した触媒原料の濃度の1倍以上10倍以下とすることができる。
<<溶媒>>
混合溶液の溶媒としては、上述した触媒原料および触媒担体原料を良好に溶解できれば特に制限されず、例えば、水、並びに、アルコール系溶媒、エーテル、アセトン、トルエンなどの各種有機溶媒等が挙げられる。中でも、溶解性、および、例えば、接触付与させた混合溶液を乾燥して混合層を形成する場合の乾燥性に優れる点から、溶媒としては、アルコール系溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、2-プロパノールがより好ましく、エタノールが更に好ましい。
<<調製方法>>
そして、混合溶液は、例えば、上述した触媒原料と、触媒担体原料と、通常、溶媒と、必要に応じて更に添加物とを、任意の方法で撹拌、混合して調製することができる。撹拌、混合方法としては、特に制限されることなく、例えば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラーなどの一般的な撹拌装置を用いることができる。また、撹拌温度は、室温(23℃程度)とすることができ、撹拌時間は、30秒~1時間程度とすることができる。
<工程A>
本発明の担持触媒の製造方法が含む工程Aでは、表面に触媒層を有する支持体に対して、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を接触させることにより、支持体のうち触媒層を有する表面の少なくとも一部上に、触媒成分と触媒担体成分とを有する混合層を形成する。つまり、混合層は、触媒原料由来の触媒成分と、触媒担体原料由来の触媒担体成分とが共存してなる層である。そして、混合層では、触媒成分の支持体への担持が強固であるため、担持触媒に優れた触媒性能を発揮させることができる。
このように、本発明の担持触媒の製造方法では、触媒担体成分の形成と触媒成分の担持とを別途行うことなく、所定の混合溶液を用いて、高い触媒性能を有し且つ良好に担持された触媒成分を含む混合層を一度に形成することが可能である。換言すれば、本発明の担持触媒の製造方法が上記所定の混合層を形成する工程Aを含まなければ、繰り返し触媒を担持させた場合であっても触媒性能に優れ、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を得ることができない。
更には、一般に、湿式プロセスにより、触媒成分と触媒担体成分とを均一な膜厚で形成することは困難であるところ、本発明の製造方法に従って混合層を形成すれば、混合層に膜厚分布がある場合であっても、触媒成分と触媒担体成分との組成の均一性により、触媒性能に優れた担持触媒を効率的に製造し得る。
ここで、工程Aでは、表面に触媒層を有する支持体として、上述の「工程A1」の項に従って準備し得る、表面に触媒層を有する支持体と同様の支持体を使用することができる。
また、工程Aでは、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液として、上述の「工程A2」の項に従って準備し得る、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液と同様の混合溶液を使用することができる。
また、工程Aでは、混合層を形成するにあたり、混合溶液の接触処理のみを行って自然乾燥により混合層を形成してもよいし、上記接触処理に加え、乾燥処理などのその他の処理を、任意の順番で更に行って混合層を形成してもよい。更に、工程Aでは、混合溶液の接触処理を少なくとも1回行うこと以外は特に限定されず、上記各処理を任意の回数連続的に又は非連続的に行って混合層を形成してもよい。
<<接触処理>>
表面に触媒層を有する支持体に対して、所定の混合溶液を接触させる方法としては、少なくとも上記触媒層に上記混合溶液が接触付与される方法であれば特に限定されない。混合溶液を接触させる方法としては、例えば、
1)混合溶液を、支持体が表面に有する触媒層上に塗布する方法;
2)混合溶液に、表面に触媒層を有する支持体を浸漬させる方法;
3)容器内に配置された、表面に触媒層を有する支持体に対して、混合溶液を供給する方法;が挙げられる。
中でも、混合溶液を効率的に接触させる観点からは、上記2)および3)の方法が好ましい。これらの接触条件は、所望の混合層の性状に合わせて適宜調節することができる。
<<乾燥処理>>
表面に触媒層を有する支持体に接触付与された混合溶液は、通常、任意の方法で乾燥される。ここで、乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、風乾燥、高温乾燥、低湿乾燥、蒸発乾固法、噴霧乾燥機による乾燥、ドラムドライヤーによる乾燥が挙げられる。乾燥温度としては、例えば、15℃以上200℃以下とすることができる。また、乾燥時間は、使用する方法に応じて適宜選択すればよい。そして、乾燥は、大気中で行ってもよく;アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス(非酸化性)雰囲気下で行ってもよい。乾燥処理を経ることにより、混合層を触媒層上により均一に、且つ、より効率良く形成し、触媒成分をより良好に担持することができる。
<<混合層>>
工程Aで形成される混合層は、触媒成分と触媒担体成分とを有する。当該混合層が、支持体のうち触媒層を有する表面の少なくとも一部上に、好ましくは、全面上に形成されることにより、触媒性能に優れた担持触媒が繰り返し効率的に得られる。従って、得られた担持触媒を用いれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製することができる。なお、本発明は、混合層が、支持体のうち触媒層を有さない表面上に形成されることを排除するものではない。
また、上述の「使用済み担持触媒」の触媒層では、通常、炭素ナノ構造体を合成した際の高温環境により触媒成分が支持体内部の方向に移行したり、炭素ナノ構造体の合成に用いられる炭素原料に由来する炭素被膜が触媒成分表面を覆い、触媒成分が炭化失活したりして、触媒性能が著しく低下する。しかしながら、本発明の担持触媒の製造方法では、所定の混合溶液を用いて所定の混合層を形成しているため、「使用済み担持触媒」を用いた場合であっても、混合層が形成されてなる担持触媒に高い触媒性能を発揮させ、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造することができる。
[触媒成分]
触媒成分は、炭素ナノ構造体の合成の仲介、促進、効率化などの働きを担う。そして、触媒成分は、例えば、炭素ナノ構造体の原料である炭素原料を取り込み、CNT等の炭素ナノ構造体を吐き出して、混合層上、具体的には触媒成分上に炭素ナノ構造体を生成、成長させる。
より具体的には、例えば、触媒成分が微細な粒子状の形状を有する触媒粒子である場合は、触媒粒子それぞれが、当該触媒粒子のサイズに応じた径を有するチューブ状などの構造を作りながら炭素を生成し続けることにより、CNTなどの炭素ナノ構造体が合成、成長される。
-組成-
また、触媒成分は、通常、混合溶液に含有される触媒原料が乾燥されてなる、触媒原料の乾燥物として混合層中に形成される。従って、触媒成分は、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含有することが好ましく、少なくともFeを含有することがより好ましく、Feであることが更に好ましく、Fe粒子であることが一層好ましい。
-存在箇所-
また、上述の炭素ナノ構造体の生成、成長過程によれば、触媒成分は、支持体および触媒層を覆うように混合層中の面内方向に均一に存在していることが好ましい。また、触媒成分は、混合層の面直方向(厚み方向)に分布を有し、少なくともその一部が混合層の表層部に存在していることが好ましく、その多くが混合層の最表面に存在していることがより好ましい。更に、触媒成分は、高い数密度でナノ粒子構造を形成していることが好ましい。
なお、混合層が多層である場合は、当該多層全体の表層部に触媒成分が存在していることが好ましい。
[触媒担体成分]
触媒担体成分は、触媒成分を支持体上に良好に担持させる助触媒としての働きを担う。
-組成-
触媒担体成分は、通常、混合溶液に含有される触媒担体原料が乾燥されてなる、触媒担体原料の乾燥物として混合層中に形成される。従って、触媒担体成分は、Al、Si、Mg、Fe、Co、Ni、O、N、C等の元素を含有することが好ましく、Al、Si、Mg等の元素を含有することがより好ましく、少なくともAlを含有することが更に好ましい。また、触媒担体成分は、Alの酸化物であることが好ましく、Alであることがより好ましい。
-存在箇所-
また、触媒成分を支持体上により良好に担持する観点からは、触媒担体成分は、支持体および触媒層を覆うように混合層中の面内方向に均一に存在していることが好ましい。
なお、混合層が多層である場合は、当該多層全体に触媒担体成分が略均一に存在していることが好ましい。
[混合層の厚み]
そして、形成された混合層の厚みは、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、20nm以上であることが一層好ましく、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。混合層の形成時および/または後述する工程Bでの触媒成分の偏析時には、触媒層に含まれる前触媒成分が混合層の上部にまで移行及び拡散して混合層表面の現触媒成分に付加し、例えば、現触媒成分の粒子径を増大させて触媒性能を劣化し易いところ、混合層の厚みが上記下限以上であれば、上記前触媒成分の拡散をより抑制できるからである。また、混合層の厚みが上記上限以下であれば、触媒成分の担持および炭素ナノ構造体の合成に寄与しない余分な混合層部分を形成することを抑制し、製造効率をより向上できるからである。上記余分な混合層部分は、合成された炭素ナノ構造体中に不純物として混入する虞があるため、形成しないことが好ましい。
なお、混合層が多層である場合は、当該多層全体の厚みが上記好適範囲の上下限値をそれぞれ層数倍することで定義されうる範囲内であることが好ましい。
ここで、本発明において、「混合層の厚み」は、
混合層の厚み(nm)=形成された混合層の体積(nm)/支持体の表面積(nm
で算出される平均厚みとして近似することができる。混合層が多層である場合は、形成された多層全体の体積を上記の式に当てはめて求めることができる。
また、「混合層の厚み」は、例えば、触媒原料および触媒担体原料の濃度、混合溶液の接触時間、接触温度、混合層の形成回数などの条件を変更することにより適宜調節することができる。
<工程B>
本発明の担持触媒の製造方法が好適に更に含み得る工程Bは、上述した工程Aの後に行われる。そして、工程Bでは、工程Aで形成された混合層が有する触媒成分を混合層の表層部に偏析させる。換言すれば、工程Bでは、担持触媒の表層部に触媒成分を偏析させる。このように、触媒成分を混合層の表層部に偏析させることにより、繰り返し触媒を担持した場合であっても、担持触媒の触媒能力を一層高めることができる。
更には、一般に、湿式プロセスにより、触媒成分と触媒担体成分とを均一な膜厚で形成することは困難であるところ、工程Bを経れば、混合層に膜厚分布がある場合であっても、混合層の表面より一定の深さから触媒成分が混合層の表層部に偏析するため、実効的な触媒成分量(混合層表面に存在する触媒成分の膜厚)を均一にすることができ、担持触媒の触媒性能をより高め得る。
また、混合層中では、例えば、Feを含有する触媒原料に由来するFeO、Fe、FeなどのFe(II)やFe(III)が混合層中に存在することがある。従って、工程Bを経れば、混合層中に存在し得るFe(II)、Fe(III)を0価のFeに還元しつつ、当該0価のFeを混合層の表層部に偏析させてFeナノ粒子を形成させることにより、繰り返し触媒を担持した場合であっても、担持触媒の触媒能力をより一層高めることができる。
ここで、混合層の表層部に偏析された触媒成分を上記ナノ粒子とすることは、例えば、触媒成分の微細な径に応じた径にてCNT等の炭素ナノ構造体を生成させることができるため、好適である。
そして、触媒成分を混合層の表層部に良好に偏析させる観点、および、混合層の表層部に偏析された触媒成分をナノ粒子とする観点からは、工程Bは、混合層に対して還元剤を付与して行うことが好ましい。
なお、担持触媒の触媒性能を向上させる観点からは、触媒成分は、混合層中の触媒成分全体の10%以上の量が表面に露出して存在していることが好ましく、20%以上の量が表面に露出して存在していることがより好ましい。
なお、担持触媒の構造は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて担持触媒の断面を観察することにより、確認することができる。また、担持触媒の構造は、X線光電子分光にArイオンエッチングを併用することで、触媒成分の深さ分布を確認することもできる。
<<還元>>
還元剤としては、特に制限されることなく、水素やアンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。また、還元性ガスは、窒素やアルゴンなどの任意の不活性ガスと共に使用してもよい。
ここで、還元剤の付与は、例えば、形成された混合層に対して上記還元性ガスを供給することにより行うことができる。還元温度は、400℃~1000℃とすることができ、還元時間は担持触媒の大きさ、混合層の厚みなどに応じて適宜調節することができる。
<<偏析された触媒成分>>
-厚み-
混合層の表層部に偏析された触媒成分の厚みは、0.1nm以上であることが好ましく、0.3nm以上であることがより好ましく、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが更に好ましい。上記下限以上の厚みを有する触媒成分が混合層の表層部に偏析されていれば、担持触媒の表面の触媒性能がより高まり、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できるからである。また、表層部に偏析された触媒成分の厚みが上記上限以下であれば、触媒成分が過度に大きな粒子を形成することなく直径の小さい炭素ナノ構造体の製造効率をより高め得るからである。
なお、本発明において、「偏析された触媒成分の厚み」は、X線光電子分光や二次イオン質量分析(SIMS)を用いて触媒成分量を測定し、膜厚に換算して求めることができる。
また、「偏析された触媒成分の厚み」は、例えば、触媒原料の種類、触媒原料濃度、混合溶液の接触温度および接触時間、還元温度および還元時間等の条件を変更することにより調節することができる。
-粒子径-
また、混合層の表層部に偏析された触媒成分がナノ粒子である場合は、触媒成分の粒子径は、数平均粒子径で1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましく、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。表層部に偏析された触媒成分の粒子径が上記上限以下であれば、より微細な触媒成分の径に応じて、より微細な径を有するCNTなどの、より高品質な炭素ナノ構造体を繰り返し生成できるからである。加えて、表層部に偏析された触媒成分の粒子径が上記上限以下であれば、担持触媒表面の触媒成分の数密度が高まるため、CNTなどの高品質な炭素ナノ構造体をより密に繰り返し調製できるからである。また、表層部に偏析された触媒成分の粒子径が上記下限以上であれば、触媒成分の高い触媒性能を確保して、高品質な炭素ナノ構造体をより効率的に繰り返し調製できるからである。
なお、触媒成分の「数平均粒子径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した100個の触媒成分(触媒粒子)について、その触媒成分の観察範囲(X nm)と平均膜厚(Y nm)とを用いて算出した触媒粒子の平均体積(Z=XY/100 nm)から、πd/6=Zの関係式を用いd nmを計算することで求めることができる。また、触媒成分の「数平均粒子径」は、例えば、触媒原料の種類、触媒原料濃度、混合溶液の接触温度および接触時間、還元温度および還元時間等の条件を変更することにより調節することができる。
(炭素ナノ構造体の製造方法)
本発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いて、炭素ナノ構造体を生成する工程Cを含むことを特徴とする。また、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法では、通常、上記担持触媒が有する混合層上に、好ましくは、混合層の表層部に偏析された触媒成分上に炭素ナノ構造体が生成される。そして、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法では、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いているため、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる。
ここで、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、繊維状の炭素ナノ構造体の製造方法に好適に用いることができ、CNTの製造に特に好適に用いることができる。
<工程C>
本発明の炭素ナノ構造体の製造方法が含む工程Cでは、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を用いて、炭素ナノ構造体を合成する。
ここで、工程Cにて合成し得る炭素ナノ構造体としては、例えば、グラフェン;炭素繊維がコイル型に巻かれたカーボンナノコイル、グラフェンが筒状を成すCNT、CNTが捩れを有したカーボンナノツイストなどの繊維状の炭素ナノ構造体;等が挙げられる。中でも、炭素ナノ構造体としては、繊維状の炭素ナノ構造体が好ましく、CNTがより好ましい。
<<合成方法>>
炭素ナノ構造体の好適な合成方法としては、一般のCVD法が挙げられる。そして、合成条件は、炭素ナノ構造体の所望の種類、粒子径、長さ等に応じて適宜設定すればよい。
中でも、炭素ナノ構造体の合成方法としては、例えば、支持体が粉末状および粒子状である場合は、流動床法によるCVD法を好適に用いることができ;例えば、支持体が絡合状、板状、フィルム状である場合は、固定床法によるCVD法、とりわけスーパーグロース法を好適に用いることができる。
なお、以下、流動床法によるCVD法を用いた炭素ナノ構造体の合成方法の一例について説明するが、本発明はこれに限られない。
[流動床法によるCVD法]
-触媒成分の触媒活性化-
任意の流動床装置内に、上述した製造方法のいずれかに従って得られた担持触媒を充填する。次に、流動床装置内を還元性ガス及び任意の添加ガス雰囲気として、還元反応温度まで昇温して加熱雰囲気とし、担持触媒の触媒成分を還元する。このようにして、担持触媒の触媒成分を触媒活性化することができる。
ここで、還元性ガスとしては水素、添加ガスとしては窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。また、還元温度は、400℃~1000℃とすることができ、還元時間は10秒~60分とすることができる。
ここで、本発明の製造方法に従って得られた担持触媒は触媒性能に優れるため、触媒活性化処理を行わなくとも高品質な炭素ナノ構造体を製造することができる。しかしながら、担持触媒は、担持触媒が有する混合層、特には触媒成分が大気に触れることにより表面が酸化され、触媒活性が低下することがある。従って、本発明の炭素ナノ構造体の製造方法では、担持触媒の触媒成分を触媒活性化して、担持触媒に、担持触媒が有する高い触媒性能を確実に発揮させることが好ましい。
-炭素原料の供給-
続いて、触媒活性化された担持触媒が存在している流動床装置内に、炭素ナノ構造体を構成する炭素の原料(炭素原料)を含む炭素原料ガスを供給する。ここで、炭素原料ガスには、必要に応じて、不活性ガス、還元ガス、酸素元素含有ガスが更に含まれていてもよい。不活性ガスおよび還元ガスとしては上述の不活性ガスおよび還元ガスを用いることができる。また、酸素元素含有ガスとしては、空気、酸素、水蒸気、および/または、二酸化炭素等を挙げることができる。特に、二酸化炭素は、炭素ナノ構造体の合成において、触媒成分が炭化失活することを抑制して炭素原料を高濃度に供給することを可能とし、炭素ナノ構造体の製造効率を更に高め得る。
=炭素原料=
また、炭素原料ガスが含む炭素原料としては、特に限定されることなく、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのアルカン(パラフィン系炭化水素);エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルケン(オレフィン系炭化水素);アセチレン、メチルアセチレン、1-ブチン、2-ブチンなどのアルキン(アセチレン系炭化水素);アルコール;エーテル;アルデヒド;ケトン;芳香族;一酸化炭素;等が挙げられる。中でも、反応活性に優れたアルケンおよびアルキンが好ましく、エチレンおよびアセチレンがより好ましい。これらの炭素原料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
ここで、炭素原料は、全てが気体状態で供給されることが好ましいが、常温常圧で液体又は常温常圧で固体の炭素原料を流動床装置内に供給して、流動床装置内の加熱雰囲気の熱によって炭素原料を蒸発させてもよい。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは1atmを指す。
-合成条件-
炭素原料ガスの供給の圧力は、特に限定されることなく、例えば、0.001MPa以上1.500MPa以下とすることができる。また、炭素ナノ構造体の合成時の流動床装置内温度は、600℃以上900℃以下とすることができる。
そして、炭素ナノ構造体の合成に要する時間、供給する炭素原料ガスの流量、供給する炭素原料ガス中の炭素原料の濃度等は、所望の炭素ナノ構造体の性状および反応器のサイズに応じて、適宜設定することができる。例えば、合成時間を長くすることで炭素ナノ構造体の長さを長くすることができる。また、炭素原料ガス中の炭素原料の濃度を高めることで、炭素ナノ構造体の製造効率を向上させ得る。
<<炭素ナノ構造体の性状>>
そして、得られた炭素ナノ構造体が例えばCNTである場合は、CNTは、支持体が粒子状である場合は担持触媒の表面から放射状に、支持体が板状である場合は担持触媒の表面から垂直方向に、長尺で合成されていることが好ましい。
また、得られた炭素ナノ構造体としてのCNTは、直径が0.4nm以上20nm以下であることが好ましい。また、得られた炭素ナノ構造体としてのCNTは、合成時における構造体の長さが50μm以上5000μm以下であることが好ましい。更に、得られた炭素ナノ構造体としてのCNTは、比表面積が300m/g以上であることが好ましい。
なお、本発明において、CNTの「直径」および「長さ」は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。また、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。そして、実施例および比較例において、CNT合成の成否はそれぞれ以下の通りに測定/評価した。
<CNT合成の成否>
実施例および比較例に従ってCNT合成処理を行った後の担持触媒の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。そして、観察視野内に確認された担持触媒の中からランダムに選定した5個について、以下の2つの基準に従って、CNT合成の成否を評価した。CNT被覆面積の評価が良好である程、得られた担持触媒の触媒性能が高いことを示す。CNT被覆面積の評価が良好であることに加えて、得られたCNTの長さが長い程、触媒性能に一層優れることを示す。そして、触媒性能が高ければ、得られるCNTの品質が高いことを示唆する。
[CNT被覆面積]
A:5個全てについて表面の80%以上がCNTにより被覆されている。
B:5個全てについて表面の30%以上がCNTにより被覆されているものの、1個以上について表面の30%以上80%未満がCNTにより被覆されている。
C:5個のうち、CNTにより被覆されている表面が30%未満である担持触媒が1個以上ある。
[CNT長さ]
A:5個のうちいずれかにおいて長さが50μm以上のCNTが認められた。
B:50μm以上のCNTが認められないが、5個のうちいずれかにおいて長さが30μm以上50μm未満のCNTが認められた。
C:5個のうちいずれにおいても長さが30μm以上のCNTが認められなかった。
(実施例1)
<表面に触媒層を有する支持体の準備>
[支持体の充填]
下部に多孔板を有する管内径2.2cmの石英管よりなる容器内に、支持体としてのアルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.1mm)10gを充填した。
[1回目の混合溶液の接触付与]
次に、容器内に、別途調製した、30mmol/Lの酢酸鉄(II)と36mmol/Lのアルミニウムイソプロポキシドとを含有するエタノール混合溶液を供給し、容器内に充填させたアルミナビーズを浸漬させた。続いて、石英管の上部に接続された上部管から窒素ガスを流し、石英管内から混合溶液の余剰液を除去するとともに、混合溶液が接触付与されたアルミナビーズを常温(23℃)程度の環境下で乾燥し、混合溶液の乾燥物が付着したアルミナビーズを得た。
[混合溶液の乾燥物の分解]
続いて、石英管を振動させることで上記混合溶液の乾燥物が形成されたアルミナビーズの充填層を撹拌した。また、撹拌後の充填層に対して、0.1mol/Lのアンモニア水を供給して、アルミナビーズ上に形成された混合溶液の乾燥物を分解した。更に、石英管の上部に接続された上部管から、加温した窒素ガスを流し、石英管内からアンモニア水を除去するとともに、アルミナビーズの充填層を、温度100℃~150℃程度の環境下で乾燥し、混合溶液の分解乾燥物が形成されたアルミナビーズを得た。
[2回目の混合溶液の接触付与]
更に、混合溶液の分解乾燥物が形成されたアルミナビーズに対して、上述した「混合溶液の接触付与」と同様の工程を繰り返した。このようにして、表面に未使用触媒層を有するアルミナビーズを得た。
[CNTの合成]
更に、表面に未使用触媒層を有するアルミナビーズを用いて、焼成を行った後に、CNTの合成を行った。なお、焼成およびCNTの合成は、後述する、「触媒成分の偏析処理」および「CNTの合成処理」と同様の方法に従った。このようにして、合成済み触媒層を有するアルミナビーズを得た。
[CNTの剥離]
更に、得られた合成済み触媒層を有するアルミナビーズを、エタノール溶液中で超音波処理し、合成されたCNTをエタノール溶液中に分散させることにより、合成済み触媒層を有するアルミナビーズから、CNTを剥離した。このようにして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズを得た。
<担持触媒の製造>
[混合溶液の準備]
触媒原料としての30mmol/Lの酢酸鉄(II)と、触媒担体原料としての36mmol/Lのアルミニウムイソプロポキシドとを、溶媒としてのエタノールに混合、溶解して、触媒原料と触媒担体原料とを含有するエタノール混合溶液を調製した。このとき、混合溶液中の触媒原料の過飽和比は0.75~1.0、混合溶液中の触媒担体原料の過飽和比は0.5であった。
なお、過飽和比の算出にあたっては、実験により求めた酢酸鉄(II)の溶解度:30×10-3mol/L~40×10-3mol/L、および、アルミニウムイソプロポキシドの溶解度:72×10-3mol/Lを使用した。
[混合層の形成]
上述した「表面に触媒層を有する支持体の準備」にて使用した容器と同じ容器内に、上述で得られた、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズ約3gを充填した。
次に、容器内に上述で得られた混合溶液を供給し、容器内に充填させた、表面に触媒層を有する支持体を混合溶液に浸漬(接触)させた。続いて、石英管の上部に接続された上部管から窒素ガスを流し、石英管内から混合溶液の余剰液を除去するとともに、接触付与された混合溶液を常温(23℃)程度の環境下で乾燥させた。このようにして、支持体が表面に有する触媒層上に混合層を形成して、偏析前担持触媒を得た。
[触媒成分の偏析処理]
上述で得られた、偏析前担持触媒を収容した石英ボートを、横置き円筒型CVD装置内に配置し、還元剤としての、水素50sccm、二酸化炭素5sccm、アルゴン420sccmの混合ガスを、合計475sccm、常圧で流通しながら800℃に昇温し、5分間維持して、担持触媒の表面に形成された混合層を還元した。このようにして、触媒成分が混合層の表層部に偏析された、担持触媒を得た。
<CNTの合成処理>
そして、CNT合成装置内で、上述で得られた担持触媒を用いて、炭素原料としてのアセチレン(C)を5sccm、水素50sccm、二酸化炭素5sccm、及びアルゴン440sccmの混合ガスを、合計500sccm、常圧で10分間供給して、CNTの合成処理を行った。
そして、CNTの合成処理を行った担持触媒について、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Aに示す。
(実施例2)
表面に触媒層を有する支持体として、表面に未使用触媒層を有するアルミナビーズを準備した。そして、担持触媒の製造において、上記表面に未使用触媒層を有するアルミナビーズを使用した。上記以外は実施例1と同様にして、表面に触媒層を有する支持体の準備、担持触媒の製造およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Bに示す。
(実施例3)
表面に触媒層を有する支持体の準備において、支持体として、実施例1とは異なる粒子径を有するアルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.3mm)を使用し、混合溶液の乾燥物の分解および2回目の混合溶液の接触付与を行わずに、1回目の混合溶液の接触付与のみを行った。上記以外は実施例1と同様にして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズの準備、担持触媒の製造およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Cに示す。
(実施例4-1~実施例4-2)
<表面に触媒層を有する支持体の準備>
[支持体の充填]
下部に多孔板を有する管内径2.2cmの石英管よりなる容器内に、支持体としてのジルコニアビーズ(見かけ密度:6.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.2mm)約30gを充填した。
[混合溶液の接触付与]
次に、容器内に、別途調製した、30mmol/Lの酢酸鉄(II)と36mmol/Lのアルミニウムイソプロポキシドとを含有するエタノール混合溶液を供給し、容器内に充填させたジルコニアビーズを浸漬させた。続いて、石英管の上部に接続された上部管から窒素ガスを流し、石英管内から混合溶液の余剰液を除去するとともに、混合溶液が接触付与されたジルコニアビーズを常温(23℃)程度の環境下で乾燥し、混合溶液の乾燥物が付着したジルコニアビーズを得た。このようにして、表面に未使用触媒層を有するジルコニアビーズを得た。
[CNTの合成]
更に、表面に未使用触媒層を有するジルコニアビーズを用いて、焼成を行った後に、CNTの合成を行った。なお、焼成およびCNTの合成は、後述する、「触媒成分の偏析処理」および「CNTの合成処理」と同様の方法に従った(本合成結果は、比較例7として表1、及び図3に示す。)。このようにして、合成済み触媒層を有するジルコニアビーズを得た。
[CNTの剥離]
更に、得られた合成済み触媒層を有するジルコニアビーズを、イソプロピルアルコール溶液中で超音波処理し、合成されたCNTをイソプロピルアルコール溶液中に分散させることにより、合成済み触媒層を有するジルコニアビーズから、CNTを剥離した。このようにして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するジルコニアビーズを得た。
<担持触媒の製造>
[混合溶液の準備]
実施例1と同様にしてエタノール混合溶液を調製した。
[混合層の形成]
上述した「表面に触媒層を有する支持体の準備」にて使用した容器と同じ容器内に、上述で得られた、表面に使用済み触媒層を有するジルコニアビーズ約30gを充填した。
次に、容器内に上述で得られた混合溶液を供給し、容器内に充填させた、表面に触媒層を有する支持体を混合溶液に浸漬(接触)させた。続いて、石英管の上部に接続された上部管から窒素ガスを流し、石英管内から混合溶液の余剰液を除去するとともに、接触付与された混合溶液を常温(23℃)程度の環境下で乾燥させた。このようにして、支持体が表面に有する触媒層上に混合層を形成して、偏析前担持触媒を得た。
[触媒成分の偏析処理]
上述で得られた、偏析前担持触媒を、縦置き分散板付き円筒型CVD装置内に配置し、還元剤としての、水素200sccm、二酸化炭素10sccm、窒素1790sccmの混合ガスを、合計2000sccm、常圧で流通して担持触媒を流動化しながら800℃に昇温し、5分間維持して、担持触媒の表面に形成された混合層を還元した。このようにして、触媒成分が混合層の表層部に偏析された、担持触媒を得た。
<CNTの合成処理>
そして、CNT合成装置内で、上述で得られた担持触媒を用いて、炭素原料としてのアセチレン(C)を20sccm、水素200sccm、二酸化炭素10sccm、アルゴン80sccm、及び窒素1690sccmの混合ガスを、合計2000sccm、常圧で20分間供給して、CNTの合成処理を行った。すなわち、使用済み触媒層を1層有すビーズ上に、触媒成分と担体成分の混合層を担持して触媒成分を還元・偏析した触媒によるCNT合成を行った。
そして、本実施例にて上述した、[CNTの剥離][混合層の形成][触媒成分の偏析処理] <CNTの合成処理>を同様に繰り返して、使用済み触媒層を2層有すビーズ上に、触媒成分と担体成分の混合層を担持して触媒成分を還元・偏析した触媒によりCNTを合成した(実施例4-1)。同様の操作をさらに2回繰り返し、使用済み触媒層を4層有すビーズ上に、触媒成分と担体成分の混合層を担持して触媒成分を還元・偏析した触媒によりCNTを合成した(実施例4-2)。
そして、CNTの合成処理を行った担持触媒について、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1、図2A(実施例4-1)、図2B(実施例4-2)に示す。
(比較例1)
表面に触媒層を有する支持体の準備を行わなかった。そして、担持触媒の製造において、アルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.1mm)をそのまま使用した。上記以外は実施例1と同様にして、担持触媒の製造およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Dに示す。
(比較例2)
担持触媒を製造せずに、表面に触媒層を有する支持体である、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズをそのまま用いてCNTの合成処理を行った以外は実施例1と同様にして、表面に触媒層を有する支持体の準備およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Eに示す。
(比較例3)
担持触媒の製造において、混合溶液を準備せずに、触媒原料としての30mmol/Lの酢酸鉄(II)を溶媒としてのエタノールに混合、溶解してなる、酢酸鉄(II)のエタノール溶液を準備した。このとき、エタノール溶液中の触媒原料の過飽和比は0.75~1.0であった。上記以外は実施例1と同様にして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズの準備、触媒成分のみが表面に形成されてなる担持触媒の製造、および、CNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Fに示す。
(比較例4)
比較例1とは異なる粒子径を有するアルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.3mm)を使用した以外は比較例1と同様にして、担持触媒の製造およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Gに示す。
(比較例5)
表面に触媒層を有する支持体の準備において、支持体として、実施例1とは異なる粒子径を有するアルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.3mm)を使用し、混合溶液の乾燥物の分解および2回目の混合溶液の接触付与を行わずに、1回目の混合溶液の接触付与のみを行った。上記以外は比較例2と同様にして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズの準備およびCNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1Hに示す。
(比較例6)
表面に触媒層を有する支持体の準備において、支持体として、実施例1とは異なる粒子径を有するアルミナビーズ(見かけ密度:3.9~4.0g/cm、体積平均粒子径D50:0.3mm)を使用し、混合溶液の乾燥物の分解および2回目の混合溶液の接触付与を行わずに、1回目の混合溶液の接触付与のみを行った。そして、担持触媒の製造において、上記以外は比較例3と同様にして、表面に触媒層を有する支持体としての、表面に使用済み触媒層を有するアルミナビーズの準備、触媒成分のみが表面に形成されてなる担持触媒の製造、および、CNTの合成処理を行った。
そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図1I~図1Jに示す。
比較例6では、安定してCNTを合成処理することができず、CNTの合成の成否を一義的に評価することができなかった。
(比較例7)
実施例4の<表面に触媒層を有する支持体の準備>[支持体の充填]、[混合溶液の接触付与]、及び[CNTの合成]の項目で詳述した操作と同じ操作を行って、CNTを合成した。そして、実施例1と同様に、上述の方法に従い、CNTの合成の成否を評価した。結果を表1および図3に示す。
なお、以下に示す表1中、
「AliP」はアルミニウムイソプロポキシドを示し、
「CNT」はカーボンナノチューブを示す。
Figure 0007093971000001
表1より、表面に触媒層を有する支持体に対して、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を接触させて所定の混合層を形成した実施例1~4の担持触媒では、CNT被覆面積の評価結果が良好であり、高品質なCNTを効率的に繰り返し調製できることがわかる。一方、所定の混合層を形成しなかった比較例2~3、5~6の担持触媒では、CNT被覆面積の評価結果が実施例1~4(4-1及び4-2)よりも劣っており、高品質なCNTを安定的に合成することができなかった。また、表面に触媒層を有さない支持体上に所定の混合層を形成した比較例1、4、および7でも、高品質なCNTを合成することができなかった。
本発明によれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し調製できる担持触媒を製造可能な、担持触媒の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高品質な炭素ナノ構造体を効率的に繰り返し製造可能な、炭素ナノ構造体の製造方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 表面に触媒層を有する支持体に対して、触媒原料と触媒担体原料とを含有する混合溶液を接触させることにより、前記支持体のうち前記触媒層を有する表面の少なくとも一部上に、触媒成分としての鉄と触媒担体成分とを有する混合層を形成する工程Aを含み、
    前記支持体がセラミック粒子であることを特徴とする、担持触媒の製造方法。
  2. 前記工程Aの後に、前記触媒成分を前記混合層の表層部に偏析させる工程Bを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の担持触媒の製造方法。
  3. 前記工程Bにおいて、前記混合層に対して還元剤を付与することを特徴とする、請求項2に記載の担持触媒の製造方法。
  4. 前記混合溶液中の前記触媒原料の過飽和比と前記触媒担体原料の過飽和比との差の絶対値が0.5以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の担持触媒の製造方法。
  5. 前記混合溶液中の前記触媒原料の過飽和比および/または前記触媒担体原料の過飽和比が0.3以上1.0以下であることを特徴とする、請求項4に記載の担持触媒の製造方法。
  6. 前記セラミック粒子の見かけ密度が2.0g/cm以上であることを特徴とする、請求項1~5の何れかに記載の担持触媒の製造方法。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法に従って得られた担持触媒を用いて、炭素ナノ構造体を合成する工程Cを含むことを特徴とする、炭素ナノ構造体の製造方法。
  8. 前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
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