JP7091770B2 - 大動脈内バルーンカテーテル - Google Patents

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Description

本発明は、大動脈内バルーンカテーテルに関し、さらに詳しくは、腕の動脈から挿入して好適に用いることができる大動脈内バルーンカテーテルに関する。
心機能低下時の治療として、大動脈内にバルーンカテーテルを挿入し、心臓の拍動に合わせてバルーンを拡張および収縮させて心機能の補助を行う大動脈内バルーンポンピング法(IABP法)が知られている。
このIABP法に用いられる大動脈内バルーンカテーテルとしては、バルーンカテーテルの遠位端部に光を利用して圧力を検出するセンサを取り付け、検出された血圧の信号を光ファイバを介してバルーンカテーテルの近位端に伝達するようにしたセンサ付きのバルーンカテーテルが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
IABP法に用いられる大動脈内バルーンカテーテルは、患者の大腿動脈から挿入して下行大動脈に留置するのが一般的な使用方法であるが、近年では患者の苦痛や術者の手間を軽減する観点などから、上腕動脈や橈骨動脈などの腕の動脈から挿入して用いることが検討されている。
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来のセンサ付きバルーンカテーテルを腕の動脈から挿入すると、大腿動脈から挿入した場合と比べて、大動脈内の血圧変動を高精度で応答性良く計測することができないという問題が生じることが明らかとなっている。大動脈内の血圧変動の測定の精度が低かったり、測定の時間遅れなどが生じたりすると、心臓の拍動にあわせたバルーンの拡張および収縮が困難になると共に、心機能補助効果の確認を行うことが困難となる。
特開2010-233883号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、大動脈内の血圧変動を高精度に応答性良く計測することが可能な大動脈内バルーンカテーテルを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、従来では大動脈内バルーンカテーテルの遠位端に設けられていたセンサ部の感圧部を、バルーン部の近位端よりも近位側に配置することにより、上腕動脈などの腕の血管から挿入して、大動脈内の血圧変動を高精度に応答性良く計測することが可能な大動脈内バルーンカテーテルが得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係る大動脈内バルーンカテーテルは、
カテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブの遠位端に接続してあり、前記カテーテルチューブを介して供給される流体により拡張可能なバルーン部と、
感圧部を備え、該感圧部における圧力の圧力値を信号として出力し、前記カテーテルチューブの内部に設けられるセンサ部とを有し、
前記感圧部は、前記バルーン部の近位端よりも近位側に配置されていることを特徴とする。
本発明に係る大動脈内バルーンカテーテルでは、センサ部の感圧部がバルーン部の近位端よりも近位側に配置されている。そのため、腕の動脈などの上肢側から大動脈内バルーンカテーテルを挿入し、バルーン部をたとえば下行大動脈内の所定位置に位置させると、感圧部が、下行大動脈内上方、あるいは大動脈弓部内や左鎖骨下動脈内などの心臓近傍の血管内に位置する。したがって、心臓の拍動により生じる血圧変動を高精度で応答性良く計測することができる。
好ましくは、前記カテーテルチューブに沿って延在し、前記カテーテルチューブの内周面に固定される筒状のセンサ収納管をさらに有し、前記センサ部は、前記センサ収納管の内部に設けられる。このような構成とすることにより、センサ収納管の内部空間をセンサ部を設置するための空間として利用することが可能となり、簡素な構成でバルーン部の近位端よりも近位側にセンサ部を配置することができる。
好ましくは、前記センサ収納管は金属製である。このような構成とすることにより、熱等により感圧部に悪影響が及ぶことが抑制される。
前記センサ部は、前記センサ収納管の軸方向の一部である第1部分を閉塞する第1閉塞材と、前記第1部分よりも遠位側の第2部分を閉塞する第2閉塞材とをさらに有し、前記第1閉塞材と前記第2閉塞材の間に形成される感圧部設置空間には、前記感圧部が設けられ、前記感圧部設置空間は、前記カテーテルチューブおよび前記センサ収納管の各々を径方向に貫通する貫通孔を介して、圧力を測定すべき外部と連通していてもよい。
好ましくは、前記センサ収納管は、前記カテーテルチューブの遠位端から突出し、前記バルーン部の内部を貫通している。このような構成とすることにより、センサ収納管を介してバルーン部の遠位端部と近位端部とを支持することが可能となり、バルーン部の拡張および収縮が安定する。
前記センサ収納管の遠位端に接続される先端チップをさらに有し、前記先端チップには、ガイドワイヤが挿通するワイヤ挿通路が形成され、前記ワイヤ挿通路の遠位側の開口部は前記先端チップの先端面に形成され、前記ワイヤ挿通路の近位側の開口部は前記先端チップの近位側の外周面に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、先端チップの内部にガイドワイヤを挿通させることが可能となり、モノレール方式の大動脈内バルーンカテーテルとして、ガイドワイヤを容易に挿抜することができる。また、カテーテルチューブの内部にガイドワイヤルーメンを設置する必要がなく、カテーテルチューブ内の流路断面積を十分に確保することが可能となり、流体がカテーテルチューブの内部を流れやすくなる。
前記バルーン部の近位端よりも近位側に位置する前記センサ収納管の外周面の一部には、ガイドワイヤを挿通させるためのワイヤ挿通口が形成されていてもよい。このような構成とすることにより、ワイヤ挿通口を通じて、センサ収納管の遠位側に向けて、ガイドワイヤを挿通させることが可能となり、モノレール方式のバルーンカテーテルとして、上述した効果を得ることができる。
本発明の第一実施形態に係る大動脈内バルーンカテーテルの概略断面図である。 図1Aに示す大動脈内バルーンカテーテルのセンサ部の周辺の概略断面図である。 本発明の第二実施形態に係る大動脈内バルーンカテーテルの概略断面図である。 図2Aに示す大動脈内バルーンカテーテルのセンサ部の周辺の概略断面図である。 図3は図1Aに示す大動脈内バルーンカテーテルを左上腕動脈から挿入して使用した状態を示す概略図である。 図4は従来構造の大動脈内バルーンカテーテルを左上腕動脈から挿入して使用した状態を示す概略図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1Aに示すように、本発明の第1実施形態に係るバルーンカテーテル1は、IABP法に用いられるものであり、特に腕の動脈から挿入して好適に用いられる上腕挿入用の大動脈内バルーンカテーテルである。この大動脈内バルーンカテーテル1は、カテーテルチューブ2と、カテーテルチューブ2の遠位端に接続してあるバルーン部3と、カテーテルチューブ2の内部に設けられたセンサ収納管4と、センサ収納管4の遠位端(バルーン部3の遠位端部7a)に接続される先端チップ5と、を備えている。
バルーン部3は、カテーテルチューブ2の内部に形成されたバルーン拡張用の流体流路6を介して供給される流体により拡張するように構成されている。
バルーン部3の遠位端側には、遠位端部7aが形成してあるとともに、バルーン部3の近位側には、近位端部7bが形成してある。近位端部7bは、バルーン部3をカテーテルチューブ2の遠位端に取り付けるための接合代として用いられ、バルーン部3の内部に流体が供給されても拡張しない部分である。
近位端部7bの内周面は、カテーテルチューブ2の遠位端の外周面に接合され、遠位端部7aの内周面は、先端チップ5の近位端の外周面に接合される。これによって、バルーン部3がカテーテルチューブ2および先端チップ5に取り付けられている。これらの接合方法としては、熱融着や接着などを挙げることができる。この接合によって、バルーン部3の内部は、カテーテルチューブ2の遠位端開口以外に対して、気密状態となっている。
バルーン部3には、遠位端部7aに向かって先細のテーパ状に伸びる遠位側テーパ部31と、近位端部7bに向かって先細のテーパ状に伸びる近位側テーパ部32と、遠位側テーパ部31と近位側テーパ部32との間に配された胴体部33とが設けられている。
バルーン部3の外径および長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン部3の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定される。バルーン部3の内容積は、特に限定されないが、20~50ccであり、バルーン部3の外径は、拡張時で10~25mmであることが好ましく、長さは、110~300mmであることが好ましい。
また、バルーン部3を構成するバルーン膜の厚みは、20~200μmであることが好ましい。バルーン部3の遠位端部7aおよび近位端部7bの内径は、それぞれが接合されるカテーテルチューブ2の外径とほぼ等しくされることが好ましく、通常、0.5~3.5mmの範囲である。また、遠位端部7aおよび近位端部7bの長さは、2~20mmであることが好ましい。
バルーン膜の材質は、特に限定されないが、抗血栓性および耐屈曲疲労特性に優れた材質であることが好ましく、例えばポリウレタン、シリコーン、軟質ポリエチレン、軟質ポリアミド、軟質ポリエステル、ポリアミドエラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリウレタンとシリコーンの共重合体などの材質により構成され、特にポリウレタンで形成されたものが血栓の発生抑止能が高く、耐摩耗性も高いので好適である。バルーン部3を成形する手法は特に限定されないが、ディッピング成形法やブロー成形法が好適に用いられる。
カテーテルチューブ2は、管状体からなり、その内部に軸方向に沿って流体流路6が形成されている。この流体流路6を通じて、バルーン部3の内部に対して、ヘリウムガス等の流体が供給または排出され、バルーン部3を拡張または収縮させることが可能となっている。カテーテルチューブ2の内径および肉厚は、上腕動脈などの腕の動脈からの挿入を可能にし、かつ、流体流路6の十分な流路断面積を確保するように決定され、内径が0.5~3.5mmであり、肉厚が0.05~0.4mmであることが好ましく、内径が1.0~2.3mmであり、肉厚が0.05~0.2mmであることがさらに好ましい。
また、カテーテルチューブ2の軸方向長さは、その遠位端を大動脈内に挿入したとき、近位端が体外に位置するように設定され、通常、300~800mmである。カテーテルチューブ2を構成する材質としては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコーンゴム、天然ゴムなどが使用でき、好ましくは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミドで構成される。
コネクタ8は、3箇所で開口する内腔を備えた成形体である。すなわち、このコネクタ8は、バルーン拡張用の流体流路6の近位端開口となる一次ポート81と、センサ収納管4の近位端開口となる二次ポート82と、カテーテルチューブ2との接続口となる接続ポート83とを有する。
コネクタ8の長さは、通常、10~150mmである。また、コネクタ8を構成する材質としては、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアクリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
図1Aに示す大動脈内バルーンカテーテル1では、接続ポート83には、カテーテルチューブ2の近位端が挿入され、熱融着ないし接着などの手段で接続されている。また、二次ポート82には、センサ収納管4の近位端が挿入され、熱融着ないし接着などの手段で接続されている。一次ポート81には、大動脈内バルーンカテーテル1を使用する際において、たとえばチューブを介して、バルーン部3内にヘリウムガス等の流体を供給または排出するためのポンプ装置が接続される。
コネクタ8の接続ポート83と一次ポート81は、図1Aに示すように、直線状の管路によって連通することが好ましい。接続ポート83と一次ポート81が、直線状の管路によって連通すれば、該管路が屈曲している場合に比べて、コネクタ8内におけるバルーン拡張用の流体に対する流路抵抗が小さくなるので、バルーン部3の拡張および収縮を速やかに行うことができる。
先端チップ5の内部には、ガイドワイヤ(図示略)が挿通するワイヤ挿通路50が形成されている。ワイヤ挿通路50は、バルーン部3を都合良く動脈内に差し込むために用いるガイドワイヤを挿通する管腔として用いられる。ワイヤ挿通路50は、近位側から遠位側に向かって屈曲しつつ延びており、ワイヤ挿通路50の両端は、遠位側開口部51と近位側開口部52とを通じて外部空間と連通している。
遠位側開口部51は、ワイヤ挿通路50の遠位端側の開口部であり、先端チップ5の先端面(遠位端の外周面)に形成されている。近位側開口部52は、ワイヤ挿通路50の近位端側の開口部であり、先端チップ5の近位側の外周面(先端チップ5の側面)に形成されている。なお、近位側開口部52の位置は図示の位置に限定されるものではなく、図示の例よりも遠位側または近位側に形成されていてもよい。
先端チップ5の遠位端は、半球状であることが好ましい。また、先端チップ5の軸方向の長さは5~25mmであることが好ましく、その外径は1.0~3.5mmであることが好ましい。
先端チップ5は、比較的柔軟な材質で構成されている。この先端チップ5を構成する材質としては、軟質ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、天然ゴム等を用いることができるが、抗血栓性の観点から、ポリウレタンを用いることが好ましい。
また、先端チップ5を構成する材質の硬度としては、ショアA硬度50~100が好ましく、ショアA硬度65~95がより好ましい。ショアA硬度が100超であると、硬すぎて、血管壁を穿孔するおそれが生じ、ショアA硬度が50未満であると、柔らかすぎて、センサ収納管4の遠位端が先端チップ5を突き破り、血管壁を穿孔するおそれがある。なお、ここでいうショア硬度とは、JIS規格K-7215に従って計測される物性値を指す。
また、この先端チップ5を構成する材質にエックス線造影剤を配合することにより、大動脈内バルーンカテーテル1を血管内に挿入する際に、当該先端チップ5を体外からエックス線透視で観察できる。このエックス線造影剤としては、金、白金、タングステン、鉛等の金属、または、酸化チタン、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等の金属化合物が挙げられる。
センサ収納管4は、高剛性な材質からなる円筒状(管状)の長尺体で構成され、カテーテルチューブ2およびバルーン部3の内部を軸方向に延在している。センサ収納管4は、主として、後述するセンサ部9を設置したり、光ファイバ13を引き出したりするために用いられる。図示の例では、センサ収納管4は、カテーテルチューブ2の近位端から遠位端にわたって延在するとともに、カテーテルチューブ2の遠位端から突出し、バルーン部3の内部を近位端から遠位端に向かって貫通している。
センサ収納管4の近位端は、コネクタ8の二次ポート82に接着などの手段で接続されている。センサ収納管4の遠位端は、先端チップ5の近位端に入り込み、接着などの手段で接続(固定)されている。センサ収納管4の外周面(側壁面)の一部は、カテーテルチューブ2の内周面に軸方向に沿って当接しており、接着などの手段により接合されている。このようにセンサ収納管4の外周面をカテーテルチューブ2の内周面に接合することで、センサ収納管4がカテーテルチューブ2に固定され、カテーテルチューブ2内の流体流路6を流れる流体に対する流路抵抗が小さくなり、バルーン部3の拡張および収縮を速やかに行うことができる。
流体流路6の気密を保つ観点から、カテーテルチューブ2の内周面およびセンサ収納管4の外周面は、少なくとも後述する貫通孔10の周辺部において、平らであることが好ましい。
カテーテルチューブ2の内周面とセンサ収納管4の外周面とは、少なくとも貫通孔10の周辺部で接合されていればよいが、少なくともカテーテルチューブ2の全長の60%の長さにわたって接合されていることが好ましく、カテーテルチューブ2の全長にわたって接合されていることがより好ましい。カテーテルチューブ2の内周面とセンサ収納管4の外周面を、少なくともカテーテルチューブ2の全長の60%の長さにわたって接合すれば、流体流路6におけるバルーン拡張用の流体に対する流路抵抗が小さくなるので、バルーン部3の拡張および収縮を速やかに行うことができる。
センサ収納管4の側方(図1Aおよび図1Bにおいて上側)には、貫通孔10が形成されている。本実施形態では、貫通孔10は、バルーン部3の近位端よりも近位側に位置するカテーテルチューブ2およびセンサ収納管4の各々の外周面(側壁)を径方向に貫通している。
なお、貫通孔10を形成するための方法としては、特に限定されないが、たとえば、予めそれぞれの側壁に開口を設けたカテーテルチューブ2とセンサ収納管4とを、それぞれの開口縁の位置が一致するように接合する方法が例示される。あるいは、カテーテルチューブ2とセンサ収納管4とを接合してから、当該接合部において双方の側壁を貫く開口を設けることで、貫通孔10を形成してもよい。
センサ収納管4の外径は、特に限定されないが、好ましくは0.2~0.7mmである。なお、センサ収納管4の外径は、軸方向に沿って略同一であることが好ましい。センサ収納管4の肉厚は、特に限定されないが、好ましくは0.02~0.15mmである。センサ収納管4の長さは、コネクタ8、カテーテルチューブ2およびバルーン部3の各々の長さの和に応じた長さとなっている。
センサ収納管4は、たとえば金属あるいはセラミックスなどのような高剛性材料で構成することができる。高剛性材料としては、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、ニッケルチタン、ガラスなどが例示される。熱等が後述するセンサ部9の感圧部90に伝導することによる感圧部90への悪影響を抑制する観点等からは、センサ収納管4は、金属製であることが好ましく、特にステンレス鋼製であることが好ましい。用いられるステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS440などが例示される。なお、後述する隔壁材91および封止材92についても同様の材料または、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。
図1Bに示すように、センサ収納管4の内部には、センサ部9が設けられている。センサ部9は、感圧部90と、隔壁材(第1閉塞材)91と、封止材(第2閉塞材)92とを有する。
隔壁材91は、センサ収納管4の軸方向の一部である第1部分11を閉塞する。第1部分11は、バルーン部3の近位端よりも近位側、かつ、貫通孔10よりも近位側に位置する。なお、バルーン部3の近位端は、バルーン部3と近位端部7bとの境界付近(近位側テーパ部32と近位端部7bとの境界付近)に対応する。
隔壁材91は、センサ収納管4の内部に、接着または融着などの手段で固定してある。隔壁材91の中央部には通孔91aが形成してあり、その通孔91aを通して、光ファイバ13がセンサ収納管4の近位側(二次ポート82)に引き出されている。
封止材92は、第1部分11よりも遠位側の第2部分12を閉塞する。図示の例では、第2部分12は、バルーン部3の近位端よりも近位側、かつ、貫通孔10よりも遠位側に位置し、カテーテルチューブ2の遠位端に配置されている。封止材92は、センサ収納管4の内部に、接着または融着などの手段で固定してある。
隔壁材91と封止材92の間には、感圧部設置空間Sが形成されている。感圧部設置空間Sは、貫通孔10を介して、感圧部9によって圧力を測定すべき外部と連通している。
感圧部設置空間Sに設置された感圧部90は、感圧部設置空間S内の感圧部90に接する流体の圧力を感知するセンサ部9の構成要素であり、センサ部9はこの感圧部90が感知した圧力の圧力値を信号として出力する。本実施形態では、センサ部9として光学式圧力センサを用いており、感圧部90は金属製のダイアフラムによって構成されている。感圧部90が接する流体の圧力が変動することにより、感圧部90(ダイアフラム)のたわみ量が変動し、そのたわみ量の変動が光ファイバ13を通して伝達して感圧部90で反射される光の干渉の変動に反映されて、その光の干渉の変動が圧力値を示す光信号として利用される。なお、センサ部9としては、たとえば特表2008-524606号公報や特開2000-35369号公報などに記載された光学式圧力センサを用いることができるが、他の光学式圧力センサを用いることもできるし、光学式圧力センサ以外の圧力センサを用いることもできる。
なお、センサ収納管4内において感圧部90の周囲に画成された感圧部設置空間S内は、中空であってもよいが、たとえばシリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲルなどのゲル状物質、シリコーンオイルなどのオイル状物質などの圧力伝達充填物質を充填してもよい。
感圧部90は、センサ収納管4内に存在する光ファイバ13の遠位端に接続してあり、光ファイバ13の遠位側の一部は、熱融着、接着、かしめなどの手段で、隔壁材91に固定してある。
貫通孔10を介して、血圧を測定すべき外部と感圧部設置空間Sが連通された状態となり、感圧部設置空間S内の圧力が感圧部90により検出される。なお、感圧部設置空間S内に圧力伝達充填物質が充填されている場合には、該圧力伝達充填物質を介して、血圧を測定すべき外部の圧力が伝達され、これが感圧部90により検出される。
本実施形態では、センサ部9の感圧部90は、バルーン部3の近位端よりも近位側に配置されている。図示の例では、感圧部90が、バルーン部3の近位端よりも近位側、さらに詳しくは近位端部7bの近位端よりも近位側で、かつ、カテーテルチューブ2の遠位端よりも近位側に配置されている。
センサ部9における感圧部90の設置位置(感圧部90の遠位端)からバルーン部3の近位端までの距離L1は、好ましくは10~70mmであり、さらに好ましくは12~25mmである。
図1Aに示すように、光ファイバ13の近位端には、光コネクタ14が接続してある。光コネクタ14には、図示省略してある血圧測定装置が接続される。この血圧測定装置で測定した血圧の変動に基づき、心臓の拍動に応じてポンプ装置を制御し、0.4~1秒の短周期でバルーン部3を拡張および収縮させるようになっている。
次に、大動脈内バルーンカテーテル1を左上腕動脈から挿入して使用する場合を例として、本発明の大動脈内バルーンカテーテル1の使用方法を図面を参照しながら説明する。
まず、図1Aに示すバルーン部3を構成するバルーン膜をセンサ収納管4に巻きつけておき、ワイヤ挿通路50内にガイドワイヤを挿通しておく。そして、セルジンガー法によりカテーテルイントロデューサー16を図3に示す左上腕動脈20に穿刺し、該カテーテルイントロデューサー16を介して、ガイドワイヤ17を挿通した大動脈内バルーンカテーテル1を左上腕動脈20に挿入する。なお、カテーテルイントロデューサー16は必ずしも使用する必要は無く、ガイドワイヤ17および大動脈内バルーンカテーテル1を左上腕動脈20に設けた穿孔に直接挿入することもできる。
次に、バルーン部3が左鎖骨下動脈21を通って、下行大動脈22内に位置するように、ガイドワイヤ17を先行させながら、大動脈内バルーンカテーテル1を押し進める。図3に示すように、バルーン部3全体が下行大動脈22内に位置したら、ガイドワイヤ17を抜き取り、コネクタ8の一次ポート81に、たとえばチューブを介してポンプ装置(図示せず)を接続し、二次ポート82から引き出された光ファイバ13の近位端に接続してある光コネクタ14に血圧測定装置(図示略)を接続する。その後、血圧測定装置により、光ファイバ13を介して伝達される感圧部90(図1B参照)からの光信号に基づいて血圧変動を計測し、この計測結果をもとにして、ポンプ装置の駆動を行い、流体流路6を介してバルーン部3内にヘリウムガス等の流体を供給および排出する。このような操作により、心臓の拍動にあわせたバルーン部3の拡張および収縮が行われ、このバルーン部3の拡張および収縮により心機能の補助が行われる。
図4に示すように、従来では大動脈内バルーンカテーテル100の遠位端にセンサ部19が設けられており、この種の大動脈内バルーンカテーテル100では、腕の血管から挿入するとセンサ部19が下行大動脈22の下方に位置してしまう。そのため、心臓の拍動により生じる血圧変動が、センサ部19に及ぶまでに、バルーン部3が挿入された下行大動脈22内における圧力損失によって減衰するために、心臓の拍動により生じる血圧変動を十分に計測することができなくなる。
これに対して、本発明の大動脈内バルーンカテーテル1では、図1Bに示すように、センサ部9の感圧部90が、バルーン部3の近位端よりも近位側に配置されている。そのため、図3に示すように、上腕動脈から大動脈内バルーンカテーテル1を挿入し、バルーン部3を下行大動脈22内の所定位置に位置させると、感圧部90を、下行大動脈内22上方、あるいは大動脈弓部内や左鎖骨下動脈内などの心臓近傍の血管内に位置させることが可能である。その結果、圧力損失による減衰がほとんど生じないので、心臓の拍動により生じる血圧変動を高精度で応答性良く計測することができる。
また、本実施形態では、センサ部9がセンサ収納管4の内部に設けられている。このような構成とすることにより、センサ収納管4の内部空間をセンサ部9を設置するための空間として利用することが可能となり、簡素な構成でバルーン部3の近位端よりも近位側に感圧部90を配置することができる。
また、本実施形態では、センサ収納管4は、カテーテルチューブ2の遠位端から突出し、バルーン部3の内部を貫通している。このような構成とすることにより、センサ収納管4を介してバルーン部3の遠位端部と近位端部とを支持することが可能となり、バルーン部3の拡張および収縮が安定する。
また、本実施形態では、先端チップ5には、ガイドワイヤが挿通するワイヤ挿通路50が形成され、ワイヤ挿通路50の遠位側開口部51は先端チップ5の先端面に形成され、ワイヤ挿通路50の近位側開口部52は先端チップ5の近位側の外周面に形成されている。このような構成とすることにより、先端チップ5の内部にガイドワイヤを挿通させることが可能となり、モノレール方式の大動脈内バルーンカテーテル1として、ガイドワイヤを容易に挿抜することができる。また、カテーテルチューブ2の内部にガイドワイヤルーメンを設置する必要がなく、流体流路6の流路断面積を十分に確保することが可能となり、流体が流体流路6を流れやすくなる。
第2実施形態
図2Aに示す本実施形態の大動脈内バルーンカテーテル1Aは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する符号を付してある。図2Aに示すように、大動脈内バルーンカテーテル1Aは、カテーテルチューブ2Aと、センサ収納管4Aと、先端チップ5Aとを有する。
本実施形態では、センサ収納管4Aの側方(図2Aおよび図2Bにおいて上側)には、ガイドワイヤを挿通させるためのワイヤ挿通口15が形成されている。ワイヤ挿通口15は、バルーン部3の近位端よりも近位側に位置するカテーテルチューブ2Aおよびセンサ収納管4Aの各々の外周面(側壁)を径方向に貫通している。これにより、図2Bに示すように、センサ部9の遠位側に位置するセンサ収納管4Aの内部空間は、ワイヤ挿通口15を通じて外部空間と連通している。
図2Bに示すように、ワイヤ挿通口15の周縁からバルーン部3の近位端までの距離L2は、好ましくは10~30mmである。
図2Aに示すように、先端チップ5Aの内部には、ガイドワイヤ(図示略)が挿通するワイヤ挿通路50Aが形成されている。ワイヤ挿通路50Aは、近位側から遠位側に向かって、先端チップ5Aの軸方向に沿って延びている。ワイヤ挿通路50Aの遠位端は遠位側開口部51Aを通じて外部空間と連通しており、ワイヤ挿通路50Aの近位端は近位側開口部52Aを通じてセンサ収納管4Aの遠位側開口部41と連通している。
本実施形態では、ワイヤ挿通口15よりも遠位側に位置するセンサ収納管4Aの内部空間を利用してガイドワイヤを挿通させることが可能である。センサ収納管4Aの内部を挿通するガイドワイヤは、バルーン部3の内部を軸方向に通過した後、ワイヤ挿通路50Aの内部を軸方向に通過する。
本実施形態では、バルーン部3の近位端よりも近位側に位置するセンサ収納管4Aの外周面の一部に、ガイドワイヤを挿通させるためのワイヤ挿通口15が形成されている。このような構成とすることにより、ワイヤ挿通口15を通じて、センサ収納管4Aの内部にガイドワイヤを挿通させることが可能となり、モノレール方式の大動脈内バルーンカテーテル1Aとして、ガイドワイヤを容易に挿抜することができる。また、カテーテルチューブ2Aの内部にガイドワイヤルーメンを設置する必要がなく、流体がカテーテルチューブ2Aの内部を流れやすくなる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、上述した実施形態では、図1Bに示すように、センサ部9の全部がバルーン部3の近位端よりも近位側に配置されていたが、感圧部90がバルーン部3の近位端よりも近位側に配置されていれば、センサ部9の一部(たとえば、遠位側の一部)がバルーン部3の近位端よりも遠位側にはみ出していてもよい。すなわち、センサ部9を配置する位置は、バルーン部3を大動脈内に位置させると、感圧部90が心臓近傍の血管内に位置する位置であれば特に限定されない。このような構成とした場合も、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
また、図2Bにおいて、ワイヤ挿通口15を、図示の位置よりも遠位側または近位側に配置してもよい。ワイヤ挿通口15を、図示の位置よりも遠位側に配置する場合、センサ収納管4A、カテーテルチューブ2Aおよび近位端部7bの各々の外周面(側壁)を径方向に貫通するように、ワイヤ挿通口15を形成してもよい。
また、センサ部9を、センサ収納管4の感圧部設置空間Sに加えて、たとえば先端チップ5の内部に設置してもよい。
1,1A,100…大動脈内バルーンカテーテル
2,2A…カテーテルチューブ
3…バルーン部
31…遠位側テーパ部
32…近位側テーパ部
33…胴体部
4,4A…センサ収納管
41…遠位側開口部
5,5A…先端チップ
50,50A…ワイヤ挿通路
51,51A…遠位側開口部
52,52A…近位側開口部
6…流体流路
7a…遠位端部
7b…近位端部
8…コネクタ
81…一次ポート
82…二次ポート
83…接続ポート
9,19…センサ部
90…感圧部
91…隔壁材
92…封止材
10…貫通孔
11…第1部分
12…第2部分
13…光ファイバ
14…光コネクタ
15…ワイヤ挿通口
16…カテーテルイントロデューサー
17…ガイドワイヤ
S…感圧部設置空間

Claims (5)

  1. カテーテルチューブと、
    前記カテーテルチューブの遠位端に接続してあり、前記カテーテルチューブを介して供給される流体により拡張可能なバルーン部と、
    感圧部を備え、該感圧部における圧力の圧力値を信号として出力し、前記カテーテルチューブの内部に設けられるセンサ部とを有し、
    前記感圧部は、前記バルーン部の近位端よりも近位側に配置され
    前記カテーテルチューブに沿って延在し、前記カテーテルチューブの内周面に固定される筒状のセンサ収納管をさらに有し、
    前記センサ部は、前記センサ収納管の内部に設けられ、
    前記センサ部は、前記センサ収納管の軸方向の一部である第1部分を閉塞する第1閉塞材と、前記第1部分よりも遠位側の第2部分を閉塞する第2閉塞材とをさらに有し、
    前記第1閉塞材と前記第2閉塞材の間に形成される感圧部設置空間には、前記感圧部が設けられ、
    前記感圧部設置空間は、前記カテーテルチューブおよび前記センサ収納管の各々を径方向に貫通する貫通孔を介して、圧力を測定すべき外部と連通していることを特徴とする大動脈内バルーンカテーテル。
  2. 前記センサ収納管は金属製であることを特徴とする請求項に記載の大動脈内バルーンカテーテル。
  3. 前記センサ収納管は、前記カテーテルチューブの遠位端から突出し、前記バルーン部の内部を貫通していることを特徴とする請求項1または2に記載の大動脈内バルーンカテーテル。
  4. 前記センサ収納管の遠位端に接続される先端チップをさらに有し、
    前記先端チップには、ガイドワイヤが挿通するワイヤ挿通路が形成され、
    前記ワイヤ挿通路の遠位側の開口部は前記先端チップの先端面に形成され、前記ワイヤ挿通路の近位側の開口部は前記先端チップの近位側の外周面に形成されていることを特徴とする請求項に記載の大動脈内バルーンカテーテル。
  5. 前記バルーン部の近位端よりも近位側に位置する前記センサ収納管の外周面の一部には、ガイドワイヤを挿通させるためのワイヤ挿通口が形成されていることを特徴とする請求項に記載の大動脈内バルーンカテーテル。
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