以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器10の斜視図である。図1に示すように、電子機器10は、第1筐体11と、第2筐体12と、第3筐体13とを備える。第2筐体12及び第3筐体13は、それぞれ第1筐体11と相対的に回動可能に連結されている。電子機器10は、第1筐体11と第2筐体12とが一般的なクラムシェル型のノート型PCの外観を構成し、第3筐体13がこのノート型PCのデバイス収容部兼スタンドとして機能する。
図2は、第1筐体11と第2筐体12とを閉じて0度姿勢とした状態での斜視図である。以下では、特に説明する場合を除き、電子機器10について、図2に示す0度姿勢における各筐体11~13の奥行き方向を前後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。これらの方向は説明の便宜上のものであり、実際の方向は電子機器10の使用時や収納時の姿勢によって変化し、或いは視認する方向によっても変化する。
先ず、各筐体11~13の全体構成を説明する。
図3A、図3B及び図3Cは、それぞれ0度姿勢、135度姿勢、及び180度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面図である。第1筐体11と第2筐体12とは、互いに面方向で重なるように配置される0度姿勢(図2及び図3A参照)から、互いの面方向が直交する90度姿勢を越えて、互いに面方向と垂直する方向に並んで平板状に配置される180度姿勢(図3C参照)まで相対的に回動可能である。第3筐体13は、第1筐体11に対して回動する第2筐体12によって押され、或いは引き寄せられることで第1筐体11に対して相対的に回動する。図1及び図3Bは、第1筐体11と第2筐体12との間を135度姿勢とした状態を示している。この場合、第2筐体12と第3筐体13との間は、例えば105度となり、第1筐体11と第3筐体13との間は、例えば120度となる。
第1筐体11は、薄い箱状の筐体である。第1筐体11の表面11a(0度姿勢時には上面)には、キーボード装置14やタッチパッド16が露出している。第1筐体11は、表面11aにタッチパネル式のディスプレイを設置し、これにソフトウェア式のキーボード装置を表示してもよい。第1筐体11の内部には、CPUやメモリを実装したマザーボード17(図4A参照)やバッテリ装置等が収容されている。
第1筐体11の内部には、さらに、CPU等の発熱体の冷却用の送風ファン18及び冷却フィン19が搭載されている。送風ファン18は、例えばモータでインペラを回転させる遠心ファンであり、上下面の吸込口から吸い込んだ空気を側面の吐出口から送り出す。冷却フィン19は、例えばアルミニウム等で形成されたプレートを等間隔に並べた構成であり、送風ファン18の吐出口に面して配置されている。冷却フィン19は、ヒートパイプ等の熱輸送装置を用いてCPU等と熱的に接続されている。冷却フィン19は、送風ファン18から送られた空気が各プレート間の隙間を通過する際、熱輸送装置で輸送された熱を放熱する。
第2筐体12は、第1筐体11よりもさらに薄い箱状の筐体である。第2筐体12の表面12a(0度姿勢時には下面)には、ディスプレイ20が露出している。ディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。ディスプレイ20の周囲は枠状のベゼル21で囲まれている。ベゼル21の四辺のうち、図1に示す角度姿勢時に上側に位置する部分(上ベゼル21a)には、カメラやマイク等のサブデバイス22が設置されている。ベゼル21は、第2筐体12の表面12aを覆うカバーガラスで兼用されてもよい。
第3筐体13は、筐体11,12よりも厚く、前後方向寸法が短い箱状の筐体である。第3筐体13の板厚は、例えば筐体11,12の板厚の合計値と略同一である(図3A参照)。第3筐体13は、0度姿勢時に各筐体11,12の後端部11b,12bから後方に突出した姿勢となる。第3筐体13は、主に2つの機能を有する。第1の機能は、ディスプレイ20の制御基板20b(図4A参照)、スピーカー23、及びアンテナ等を収容するデバイス収容部としての機能である。第2の機能は、第2筐体12を第1筐体11から開いて当該電子機器10を使用する際のスタンドとしての機能である。
次に、各筐体11~13の連結部分及びその周辺部の具体的な構成を説明する。
図4A、図4Bは、それぞれ0度姿勢、135度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。図4A及び図4Bは、ヒンジ24,25と交差する位置で筐体11~13を切断した構造を模式的に示す。図5は、0度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を前斜め下方から見た斜視図であり、第1筐体11の下面を構成するカバー部材を取り外して第1筐体11の内部構造を模式的に図示したものである。
図4A~図5に示すように、第1筐体11及び第2筐体12は、互いの後端部11b,12b同士が第1ヒンジ24を用いて相対的に回動可能に連結されている。第1筐体11及び第3筐体13は、互いの後端部11bと前端部13aとが第2ヒンジ25を用いて相対的に回動可能に連結されている。なお、第2筐体12及び第3筐体13は、ヒンジによる直接的な連結はされていないが、相互間に配線や牽引部材26等が亘っている。
図4A~図5に示すように、第1ヒンジ24は、第1ヒンジ軸24aと、第1ブラケット24bと、トルク機構部24cと、ヒンジ筐体30とを有する。本実施形態の第1ヒンジ24は、左右一対で設置され、互いに左右対称構造である。
第1ヒンジ軸24aは、筐体11,12間の回動軸となる金属シャフトである。第1ブラケット24bは、第1ヒンジ24の第1筐体11に対する取付用の金属プレートであり、第1筐体11に固定される。トルク機構部24cは、第1ヒンジ24による筐体11,12間の回動に所定の回転トルクを付与する機構である。
第1ヒンジ軸24aは、一端部が第2筐体12の軸受に回転不能に嵌合され、他端部が第1ブラケット24bの軸受に相対回転可能に挿通される。さらに第1ヒンジ軸24aの他端部は、トルク機構部24cに挿通される。トルク機構部24cは、例えば第1ヒンジ軸24aが貫通する複数枚の金属ディスクを第1ヒンジ軸24aの軸方向に積層し、各ディスク間の摺動抵抗によって第1ヒンジ軸24aと第1ブラケット24bとの間に所定の回転トルクを付与するものである。これによりトルク機構部24cは、第1ヒンジ軸24aと第1ブラケット24bとの間の相対回転、つまり筐体11,12間の相対的な回動動にトルク機構部24cによる所定の回転トルクを付与する。
図3A~図3C及び図5に示すように、第1筐体11の後端部11bの左右両端には、それぞれ半円柱形状の突出部11cが設けられている(図1も参照)。各突出部11cは、後端部11bの中央部よりも後方に張り出した部分である。左右の突出部11c,11c間の隙間には、第2筐体12の後端部12bに設けられた顎状のヒンジ筐体30が相対移動可能な状態で挿入されている。
図4A及び図4Bに示すように、ヒンジ筐体30は、第2筐体12の後端部12bから直交するように略L字状に突出している。つまりヒンジ筐体30は、第2筐体12の表面12aから略垂直に突出しているとも言える。ヒンジ筐体30は、ベース部材30aにキャップ部材30bを装着した構成である。
ベース部材30aは、第2筐体12の背面を形成する背面カバー部材31に一体に形成され、背面カバー部材31の縁部から舌状に突出している。第1ヒンジ軸24aの軸受は、ベース部材30aに固定される。キャップ部材30bは、ベース部材30aに装着され、ベース部材30aの表面12a側の面を覆っている。キャップ部材30bは、第1ヒンジ軸24aや筐体12,13間に亘るFPC(Flexible printed circuits)等の配線を覆い隠している。
図5に示すように、各第1ヒンジ24は、第1ヒンジ軸24a及びトルク機構部24cが各突出部11cに設置される。第1ヒンジ軸24aは、突出部11cの内向きの側端面を通過してヒンジ筐体30に挿入され、固定される。これにより第1ヒンジ24は、第1筐体11と第2筐体12との間を連結している。
図4A~図5に示すように、第2ヒンジ25は、第2ヒンジ軸25aと、第2ブラケット25bとを有する。第2ヒンジ25は、左右一対で設置され、互いに左右対称構造である。
第2ヒンジ軸25aは、筐体11,13間の回動軸となる金属シャフトである。第2ブラケット25bは、第2ヒンジ25の第1筐体11に対する取付用の金属プレートであり、第1筐体11に固定される。
第2ヒンジ25は、第2ヒンジ軸25aと第2ブラケット25bとが一体に形成されている。第2ヒンジ軸25aの一端部は、第3筐体13の軸受13bに相対回転可能に挿入される(図5参照)。第2ヒンジ軸25aの他端部は、第2ブラケット25bと一体である。
第2ヒンジ25は、第1ヒンジ24のように、筐体11,13間の回動に回転トルクを発生させるための意図的なトルク機構部、つまり機械的或いは構造的なトルク発生のための機構を有していない。このため、第2ヒンジ軸25aと第3筐体13の軸受13bとの間は、実質的に回転トルクがない状態で相対回転する。その結果、図5からも明らかな通り、第2ヒンジ25は、トルク機構部24cを持つ第1ヒンジ24に比べて、構造の簡素化及び小型化が図られている。
但し、第2筐体12を開き、後述するように牽引部材26が撓みを生じた場合(図6B及び図6C参照)、第3筐体13はこの撓み分だけがたつきを生じ得る。このため、電子機器10は、第2筐体12をある程度以上に開いた状態で持ち上げると、第3筐体13ががたつき分だけ動いてしまう。この点につき、実際の製品では、第2ヒンジ軸25aと軸受13bとの間には、部材間の摺動抵抗に起因した回転トルクは当然生じ得る。この摺動抵抗による回転トルクは第1ヒンジ24のトルク機構部24cが発生するトルクに比べて微小である。しかしながら、この摺動抵抗による回転トルク、さらには第3筐体13と筐体11,12との間に通されている配線による抵抗等の効果もあり、第3筐体13が製品品質を損なうほどの自由ながたつきを生じることは抑えられている。さらに、第2ヒンジ軸25aの外周面にダンパーグリス等の潤滑剤を塗布し、第2ヒンジ軸25aの回転に微小な回転トルクを付与する構成としてもよい。そうすると、第3筐体13のがたつきを一層抑制することができる。勿論、グリスが第2ヒンジ25の構造の簡素化及び小型化に悪影響を及ぼすことはない。
図3A~図5に示すように、第3筐体13の前端部13aには、前方に突出した側面視略ブーメラン形状のアーム部13cが設けられている。軸受13b(第2ヒンジ軸25a)は、アーム部13cの先端部に配置されている。アーム部13cは、第3筐体13の第1筐体11に対する連結アームとして機能し、さらには第2ヒンジ25のヒンジ筐体としても機能する。アーム部13cは、第2筐体12のヒンジ筐体30と上下にオーバーラップする位置に設けられており、前端部13aの左右両端部よりも前方に突出している。アーム部13cは、第1筐体11の左右の突出部11c,11c間の隙間に相対移動可能な状態で挿入されている(図5参照)。
各第2ヒンジ25は、第2ヒンジ軸25aが各突出部11cの近傍に設置される。第2ヒンジ軸25aは、突出部11cの内向きの側端面を通過してアーム部13cに挿入され、軸受13bで支持される。これにより第2ヒンジ25は、第1筐体11と第3筐体13との間を相対的に回動可能に連結している。
このように第3筐体13のアーム部13cは、第2筐体12のヒンジ筐体30と上下にオーバーラップしている。ここで、図4Aに示すように、第2ヒンジ軸25aの軸中心は、第1ヒンジ軸24aの軸中心に対して、第1筐体11の前後方向で前方であって、且つ第1筐体11の上下方向で下方となる位置に配置されている。
上記の通り、第2ヒンジ25はトルク機構部を持たない。このため、第3筐体13は、第1筐体11に対しては回転トルクなしに回動し、第2筐体12に対しては回転トルクなしに旋回するように相対移動する。そこで、当該電子機器10は、第2筐体12と第3筐体13との間に、牽引部材26と、ロック部28とを備える。
図4A及び図4Bに示すように、牽引部材26は、第2筐体12と第3筐体13との間に亘って延在したシート状或いはワイヤ状の部材である。本実施形態の牽引部材26は、ステンレス等の金属で形成された薄く可撓性を有するシート状部材である。牽引部材26は、実質的に伸縮性がない部材である。牽引部材26は、伸縮性を持った部材でもよい。但し、このような牽引部材26は、第2筐体12が第1筐体11に対して135度姿勢から0度姿勢に向かう方向に回動された際、いずれかの角度(例えば40度姿勢)では伸び切った状態となることが好ましい。これにより伸縮性を持った牽引部材26でも第3筐体13を第2筐体12によって円滑に牽引することができる。また伸縮性を持った牽引部材26が0度よりも大きな角度(例えば上記した40度姿勢)で伸び切った状態となることで、40度を通過して0度に向かう際、牽引部材26が収縮する反力が筐体12,13間に作用する。このため、40度を過ぎた後、0度までの第3筐体13の回動が一層円滑となる。さらに、牽引部材26が0度姿勢時に第3筐体13を第2筐体12側に引き寄せる効果も得られ、第3筐体13の姿勢が安定する。
牽引部材26の一端部は、第2筐体12の後端部12b(ヒンジ筐体30)に形成された後向きの開口部を通して第2筐体12内に挿入され、例えば第2筐体12の背面カバー部材31に固定されている。牽引部材26の他端部は、第3筐体13の前端部13aに形成された前向きの開口部13dを通して第3筐体13内に挿入され、例えばスピーカー23に固定されている。なお、ディスプレイ20から制御基板20bへの配線や牽引部材26はこの開口部13dを通過して筐体12,13間に延在している。また、制御基板20bやスピーカー23からマザーボード17への配線もこの開口部13dを通過して筐体11,13間に延在している。
図4Aに示す0度姿勢において、牽引部材26は、僅かに緩んだ状態にある。0度姿勢と90度姿勢との間にある角度姿勢(例えば40度姿勢)において、牽引部材26は、筐体12,13間で突っ張り、弛みのない引張状態となる。図4Bに示す135度姿勢において、牽引部材26は、筐体12,13間で弛んで撓んだ状態となる。なお、180度姿勢(図6C参照)においても、牽引部材26は、筐体12,13間で135度姿勢時と同程度に撓んだ状態、或いは135度姿勢時よりも多少引っ張られてはいるがある程度は撓んだ状態となる。これにより牽引部材26は、筐体11,12間が180度姿勢から0度姿勢に向かって閉じ動作する際、第3筐体13を第2筐体12側に引き寄せることができる。
図4A及び図4Bに示すように、ロック部28は、第1係合部となる凹部28aと、凹部28aと係脱可能に形成され、第2係合部となる凸部28bとで構成されている。凹部28aは、第2筐体12の後端部12bのうち、ヒンジ筐体30(ベース部材30a)の一部を前方に凹ませたものである。凸部28bは、第3筐体13の前端部13aに形成されており、例えば開口部13dの上縁部に設けられている。ロック部28は、凹部28aを第3筐体13に設け、凸部28bを第2筐体12に設けてもよい。
図4Aに示す0度姿勢において、ロック部28は、凸部28bが凹部28aに係合した状態となり、筐体11,12に対する第3筐体13の相対移動をロックする。具体的には、ロック部28が係合状態にあることで、第3筐体13が第2筐体12に対して固定され、これにより第2ヒンジ25による第3筐体13の第1筐体11に対する回動が規制される。図4Bに示す135度や180度姿勢において、ロック部28は、凸部28bが凹部28aから離脱した非係合状態となっており、筐体11,12に対する第3筐体13の相対移動を許容する。すなわち当該電子機器10は、第2ヒンジ25がトルク機構部を持たない。そこで当該電子機器10では、0度姿勢時にロック部28を介して第3筐体13を第2筐体12に対して係止し、これにより第3筐体13ががたつきを生じ、或いは意図しない回動をすることを規制している。
上記の通り、第1筐体11には送風ファン18及び冷却フィン19が搭載されている。送風ファン18から送られる空気は、冷却フィン19を通過して高温になるため、第1筐体11の外部に排出する必要がある。高温の排気は、第1筐体11の前面や側面から排出すると、ユーザに不快感を与えることになる。そこで、高温の排気は、第1筐体11の後端部11bから後方に排出することが好ましい。ところが、本実施形態の電子機器10は、図4Bに示すように、第2筐体12を所定角度姿勢(例えば135度姿勢)まで開いた際、第1筐体11の後端部11bが第2筐体12のヒンジ筐体30と第3筐体13とで覆われる。このため、仮に後端部11bに排気口(後述する第1排気口32参照)を設けた場合は、何らかの対策を取らない限りは十分な排気量の確保、つまりは十分な冷却性能の確保が困難となる。
そこで、次に、電子機器10の排気構造を説明する。
本実施形態の電子機器10は、第1筐体11の後端部11bに第1排気口32を備え、さらに第2筐体12の後端部12b(ヒンジ筐体30)に第2排気口33を備えることで、十分な排気量を確保することを可能としている。
図6A、図6B、及び図6Cは、それぞれ0度姿勢、135度姿勢、及び180度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。図6A~図6Cは、排気口32,33と交差する位置で筐体11~13を切断した構造を模式的に示す。図7は、135度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を後斜め上方から見た斜視図である。
図6A~図6Cに示すように、第1排気口32は、第1筐体11の後端部(後側面)11bに開口している。第1排気口32は、送風ファン18の送風方向(前後方向)で下流側(後方)に設けられている(図1も参照)。第1排気口32は、左右方向の幅が冷却フィン19の左右方向の幅と同程度に形成され、左右方向で冷却フィン19とオーバーラップしている。これにより送風ファン18から冷却フィン19を通過した高温の排気は、第1排気口32を通して第1筐体11の外部に排出される。
図6A~図7に示すように、第2排気口33は、第2筐体12の後端部12bに形成されている。具体的には第2排気口33は、後端部12bを形成するヒンジ筐体30を第2筐体12の面方向(表面12a)に沿って貫通している。第2排気口33は、トンネル状貫通孔の出入口を形成する第1開口部33a及び第2開口部33bを有する。第1開口部33aは、第2筐体12の後端部12bを臨んで開口しており、図6Aに示す0度姿勢時に後向きになる。第2開口部33bは、ディスプレイ20の表示面20aを臨んで開口しており、図6Aに示す0度姿勢時に前向きになる。
第2排気口33は、全体として矩形状の開口であり、例えば左右方向に並んだ複数のスリットの集合体である(図7参照)。なお、第1排気口32も第2排気口33と同様な形状でよい。第2排気口33は、左右方向の幅が第1排気口32の左右方向の幅と同程度に形成され、左右方向で第1排気口32とオーバーラップしている。
図6B及び図6Cに示すように、第2筐体12が90度姿勢を越えた所定角度姿勢(例えば135度姿勢や180度姿勢)に設定された電子機器10の使用形態時、第2排気口33は、第1開口部33aが第1排気口32と対向する位置に配置され、第2開口部33bが外観上に露出する。これにより第2排気口33が第1排気口32と連通し、両排気口32,33が1本の排気トンネルを形成する。この状態において、第2排気口33の第2開口部33bは、ヒンジ筐体30の突出方向の先端部(突出端30c)に対して、第1筐体11の厚み方向で下方であって、且つ第1筐体11の面方向で後方となる位置に配置される。
図6Aに示すように、第2筐体12が0度姿勢とされた電子機器10の収納形態時、第2排気口33は、第1開口部33aが第3筐体13によって覆われ、第2開口部33bが第1筐体11によって覆われる。これにより第2排気口33が電子機器10の外観上に露出せず、隠された状態となる。
次に、電子機器10の動作及び作用効果を説明する。
先ず、図4A及び図6Aに示すように、筐体11,12間が0度姿勢にある状態を説明する。この状態では、筐体11,12Bは、表面11a,12a同士、つまりキーボード装置14とディスプレイ20が対面している。第3筐体13は、筐体11,12の後端部11b,12bから後方に突出した姿勢にある。図3A及び図4Aに示すように、第3筐体13の厚みは、第1筐体11の厚みと第2筐体12の厚みを足した合計値と同一又は略同一に設定されている。
従って、当該電子機器10は、0度姿勢では、一般的なノート型PCと同様に薄型化され、略一枚板状となる(図2も参照)。第3筐体13は、他の筐体11,12よりも大きな厚みを利用して、制御基板20bと共に、スピーカー23、特にウーファーのような容積の大きな部品も容易に収容できる。その結果、第1筐体11は、スピーカー23等の収容が不要となり、或いは少なくともウーファーのような厚みのある部品の設置スペースが不要となり、その分薄型化できる。特にスピーカー部品のうち、ウーファーは薄型化が難しく、第1筐体11の厚さを決めるボトルネックにもなり得るため、第3筐体13に搭載できることで第1筐体11の厚みの低減がし易くなる。また、第2筐体12は、従来はディスプレイ20の裏側に配置していた制御基板20bが不要となり、その分薄型化できる。
0度姿勢は、電子機器10を搬送する際の姿勢でもある。本実施形態の電子機器10は、第3筐体13を第1筐体11に連結する第2ヒンジ25がトルク機構部を備えていない。しかしながら電子機器10はロック部28を備え、0度姿勢時に第3筐体13を筐体11,12に対してロックする。これにより当該電子機器10は、各筐体11~13の角度が安定して維持され、筐体11,12又は13が意図せずに回動し、或いはがたつくことを抑制できる。また、0度姿勢では、第2排気口33が筐体11,13によって覆われる。このため、第2排気口33が電子機器10の外観上に露出せず、外観品質が損なわれることもない。
次に、0度姿勢から180度姿勢に向かって筐体11,12間を開く動作を説明する。この開き動作は、一般的なクラムシェル型のノート型PCと同様に、例えば電子機器10を机の上等に載置した状態で第2筐体12の前部を第1筐体11から持ち上げる。そうすると、図4A及び図4Bに示すように、第2筐体12は、第1筐体11に対して第1ヒンジ軸24aを回動軸として回動する。この回動動作は、トルク機構部24cのトルク付与下に行われるため、第2筐体12は第1筐体11に対して所望の角度姿勢に維持することができる。なお、第2ヒンジ25はトルクフリー構造であるが、第1筐体11と第2筐体12との間の角度維持には関与しない。
ここで、第2筐体12の後端部12bには、ヒンジ筐体30が突出しており、第1ヒンジ軸24aはこのヒンジ筐体30の先端部にある。つまり第1ヒンジ24は、いわゆるドロップダウン式のヒンジである。このため、図4Bに示すように、一般的なクラムシェル型のノート型PCと同様な使用態様が想定される135度姿勢及びその周辺角度において、第2筐体12は、後端部12bが第1筐体11の後方に隠される位置に移動する。より具体的には、第2筐体12は、ディスプレイ20の後側(図4Bでは下側)にあるベゼル21(下ベゼル21b)が第1筐体11の表面14aよりも下方に移動する。その結果、電子機器10は、使用時に下ベゼル21bが第1筐体11で隠されて目立たず、高い外観品質が得られる。
この際、第2ヒンジ軸25aの軸中心は、第1ヒンジ軸24aの軸中心に対して、前方且つ下方となる位置に配置されている。このため、図4A及び図4Bに示すように、開き動作時にヒンジ筐体30が回動すると、先ず、凹部28aが凸部28bを押し下げつつ、第2ヒンジ軸25aを回動軸として第3筐体13を図中で時計方向に回動させる。次いで、回動する第2筐体12の後端部12bが、曲面に形成された第3筐体13の前端部13aを押圧しながら摺動する。本実施形態の場合、第2ヒンジ軸25aはトルクフリーである。このため、図4Bに示すように、第3筐体13は、第2筐体12の後端部12bからの押圧力を受けて容易に回動し、第1筐体11の下面から下方に垂れ下がるように移動する。なお、ロック部28は、例えば第2筐体12が第1筐体11に対して40~45度程度まで開かれた際に凸部28bが凹部28aから外れ始め、係合状態が解除される。
また、135度前後の角度姿勢において、第2排気口33は、第1排気口32と対向して連通し、両者が1本の排気トンネルを形成する(図6B参照)。このため、送風ファン18から冷却フィン19を通過した高温の排気は、第1排気口32及び第2排気口33を円滑に流通する。この排気は、最終的には第2筐体12の表面12a(表示面20a)に沿って後斜め上方へと排出される。その結果、当該電子機器10は、送風ファン18の送風量の低下が抑制され、高い冷却性能が確保される。さらに当該電子機器10は、ユーザが高温の排気によって不快感を受けることも抑制される。
この際、第2排気口33は、図6Bに示す135度姿勢時、外観に露出する第2開口部33bが、第1筐体11の厚み方向を基準としてヒンジ筐体30の突出方向の先端部(突出端30c)よりも下方であって、且つ第1筐体11の前後方向を基準として突出端30cよりも後方となる位置に配置される。また135度姿勢時、第2開口部33bは、第1筐体11の厚み方向を基準として第1筐体11の表面11aよりも下方に配置される。なお、このような第2開口部33bの配置は、135度姿勢だけでなく、その付近の角度姿勢においても同様である。このため、第2排気口33の第2開口部33bは、前斜め上方からディスプレイ20を視認するユーザの視線から隠された配置となる。その結果、電子機器10は、使用形態時に第2排気口33が目立たず、外観品質の低下はほとんどない。
しかも135度姿勢において、第3筐体13は、第1筐体11に対して120度程度、第2筐体12に対して105度程度の角度姿勢となる。このため、当該電子機器10は、机の上等で第1筐体11の後端部11bが第3筐体13によって多少上方に持ち上げられた姿勢となる(図3B参照)。その結果、第3筐体13が電子機器10のスタンドとして機能し、第1筐体11が前下がりの適度な角度姿勢となる。これにより第2排気口33がヒンジ筐体30の突出端30cの後方でユーザからは一層見えにくい位置に角度に設定され、電子機器10の外観品質の低下が一層抑制される。
第2排気口33内では、ベース部30aが第2筐体12の表面12aから突出するように起立した突出片を構成している。このため、135度姿勢や180度姿勢において第2筐体12の外観に露出する第2排気口33は、その内部を第2開口部33bから覗いた場合に、ベース部30aが遮蔽材となって排気口内部が外部から完全に見えてしまうことを防止でき、外観品質が一層向上する。特に本実施形態では、図6Bに示す135度姿勢時、第1筐体11の側面視においてその厚み方向に沿って延びた仮想直線VLは、第2開口部33bの縁部の突出端30cに最も近い位置を通過する位置において、第2排気口33内の突出片(ベース部30a)と交差する。このため、通常のノート型PCとしての使用が想定される135度姿勢及びその付近の角度姿勢において、例えば第2開口部33bを上から覗き込んだとしても、第2排気口33の内部が一層見え難くなっている。
当該電子機器10は、第3筐体13が電子機器10のスタンドとして機能することで、キーボード装置14の操作性も向上する。同時に、第3筐体13のスタンド機能により第2筐体12がリフトアップされ、ディスプレイ20の位置が上昇するため、ユーザの視点も高くなり、首等への負担軽減も期待できる。
135度姿勢から180度姿勢までの開き動作は、0度姿勢から135度姿勢までの開き動作と同様である。すなわち回動する第2筐体12の後端部12bが、第3筐体13の前端部13aをさらに押圧しながら摺動する。その結果、図6Cに示す180度姿勢では、第1筐体11及び第2筐体12の表面11a,12aが略平行し、第3筐体13は135度姿勢よりも時計方向に回動した位置で停止する。なお、第3筐体13は、牽引部材26が突っ張ることにより、或いは第1筐体11との間にストッパを有することにより、図6Cに示す姿勢からさらに時計方向には回動しない。この180度姿勢においても、電子機器10は、排気口32,33のトンネル状態は維持され、高い冷却性能が維持される。また、第2排気口33は、ユーザからはほとんど見えない位置に維持されている。
次に、180度姿勢から0度姿勢への閉じ動作は、図6Cに示す状態から第2筐体12の前部を把持して持ち上げて回動させる。そうすると、第2筐体12は、開き動作時とは逆方向に回動し、後端部12bは第3筐体13の前端部13aから離間するように移動する。このため、一端部が第2筐体12に固定されている牽引部材26は、180度姿勢や135度姿勢では撓んで弛緩した状態であるが、0度姿勢に近づくにつれ、その撓み量が小さくなる。
そして、例えば90度姿勢を過ぎたときに牽引部材26が引張状態となる。そうすると、第2筐体12の閉じ動作に伴い、牽引部材26が第3筐体13を0度姿勢時の位置に向けて引き上げる。ここで、ロック部28は、例えば第2筐体12が第1筐体11に対して45~40度程度になり、第3筐体13が第1筐体11に対して18度程度になった際に凸部28bが凹部28aに係合し始める。その結果、0度姿勢では、第3筐体13が再び筐体11,12と平行する姿勢に戻り、ロック部28も係合状態に戻る。この際、第2ヒンジ25がトルクフリーであるため、牽引部材26による第3筐体13の引き上げ力は最低限の大きさで済む。また、電子機器10が机の上等に載置された状態では、閉じ動作時、電子機器10の自重で次第に第3筐体13も0度姿勢方向に回動するため、第3筐体13の引き上げ力は一層小さくなる。
以上のように、本実施形態に係る電子機器10は、通常の使用形態(例えば135度姿勢)において、第1筐体11の後端部11bに開口する第1排気口32が第2筐体12のヒンジ筐体30や第3筐体13で覆われた状態となる。そこで、当該電子機器10は、この状態で第1排気口32と連通する第2排気口33をヒンジ筐体30に備える。このため、当該電子機器10は、第3筐体13を備えた構成でありながらも、送風ファン18のからの十分な排気量を確保できる。
当該電子機器10は、キーボード装置14を備えた第1筐体11に対して、トルク機構部24cを有する第1ヒンジ24を用いて第2筐体12が連結され、第2ヒンジ25を用いて第3筐体13が連結されている。そして、第3筐体13は、筐体11,12間が0度姿勢時に筐体11,12の後端部11b,12bから後方に突出する姿勢となる。このため、当該電子機器10は、第2筐体12を開き動作させると、その後端部12bで押されて第3筐体13が自動的に回動する。その結果、当該電子機器10は、一般的なクラムシェル型のノート型PCと同様に使用できる。
ここで、第3筐体13は、実質的にトルクフリーに構成された第2ヒンジ25で第1筐体11に連結されている。そして、第3筐体13は、第2筐体12の後端部12bで押圧されることで回動する構成となっている。このため、第3筐体13は第2筐体12と共に常に第1筐体11の後端部11b、つまり第1排気口32を塞ぐように配置されることになる。このため、当該電子機器10は、第1排気口32を外部に連通させるための第2排気口33が一層重要な要素となる。
当該電子機器10は、第2ヒンジ軸25aは、第1ヒンジ軸24aに対して前方且つ下方にある。このため、第1筐体11は、2つのヒンジ軸24a,25aが設置されるが、最小限の厚みに抑えることができる。しかも第2ヒンジ25は、トルク機構部24cを持つ第1ヒンジ24に比べて、構造の簡素化及び小型化が図られている。このため、第1筐体11の厚みを一層抑制できる。このように当該電子機器10は、第3筐体13を備えることに起因した開閉時の複雑な動作を、通常のノート型PCと同様のトルクヒンジ(第1ヒンジ24)と、トルクフリーヒンジ(第2ヒンジ25)とを組み合わせることで実現している。その結果、当該電子機器10は、部品点数の多い複雑な構造のヒンジを用いる必要がなく、信頼性やコストの面でも有利である。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
上記では、第1筐体11と第2筐体12との間は、0度姿勢と180度姿勢との間で回動可能である構成を例示した。しかしながら、第2筐体12は、第1筐体11に対して90度姿勢を越えた所定角度姿勢、例えば135度姿勢程度まで回動可能であれば一般的なクラムシェル型のノート型PCと同様な使用態様が確保できる。