JP7078896B2 - 撥水撥油構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、撥水撥油構造体に関する。さらに詳細には、本発明は、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する撥水撥油構造体に関する。
従来、優れた撥水性及び撥油性を有する撥水撥油性部材が提案されている。この撥水撥油性部材は、基材の少なくとも一方の面に、樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体を有している。隣接する微小突起間の距離の平均dAVGは50~500nmである。さらに、この撥水撥油性部材は、微小突起構造体の表面に、少なくとも1つの末端に炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜であって、表面に凹凸面を有する撥水撥油層を有する(特許文献1参照。)。
特開2015-44181号公報
しかしながら、特許文献1に記載された撥水撥油性部材は、フッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜を有するため、撥水性、撥油性などの耐久性が十分ではないという問題点があった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明は、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する撥水撥油構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。その結果、低表面自由エネルギー層と、低表面自由エネルギー層上に低表面自由エネルギー層と接した状態で配置された、所定の厚みのグラフェン層とを備え、低表面自由エネルギー層が、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が、凹部を閉塞している撥水撥油構造体とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する撥水撥油構造体を提供できる。
図1は、第1の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。 図2は、第2の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。 図3は、第3の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。 図4は、図3に示した表面改質層及びグラフェン層のIV線で囲んだ部分における表面改質層とグラフェン層との結合の形態を模式的に示す説明図である。 図5は、第3の形態に係る撥水撥油構造体の撥水性評価におけるグラフェン層のグラフェンの層数と接触角(deg.)との関係を示すグラフである。 図6は、第4の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。 図7は、第5の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の一形態に係る撥水撥油構造体について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1の形態>
まず、第1の形態に係る撥水撥油構造体について詳細に説明する。図1は、第1の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、第1の形態の撥水撥油構造体1は、低表面自由エネルギー層10と、グラフェン層20とを備える。そして、グラフェン層20は、低表面自由エネルギー層10上に低表面自由エネルギー層10と接した状態で配置されている。さらに、グラフェン層20の厚みは2nm以下である。
上述のように、第1の形態の撥水撥油構造体においては、グラフェン層は低表面自由エネルギー層上に低表面自由エネルギー層と接した状態で配置されている。そのため、低表面自由エネルギー層はグラフェン層によって保護される。例えば、グラフェン層は、低表面自由エネルギー層に油などの低表面自由エネルギー液体が浸潤することを抑制ないし防止し、撥水撥油構造体の撥水性及び撥油性の性能低下を抑制ないし防止する。
さらに、上述のように、第1の形態の撥水撥油構造体においては、グラフェン層の厚みは2nm以下である。厚みが2nm以下であるグラフェン層は、グラフェン層上における低表面自由エネルギー層による分散力の影響を阻害しない。言い換えれば、厚みが2nm以下であるグラフェン層は、グラフェン層上における低表面自由エネルギー層による撥水性の性能低下を抑制ないし防止できる。
その結果、第1の形態の撥水撥油構造体は、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する。
さらに、例えば、グラフェン層は、低表面自由エネルギー層の露出を抑制ないし防止できる。その結果、第1の形態の撥水撥油構造体は、耐摩耗性の向上という副次的な効果を奏し得る。
さらに、例えば、グラフェン層は、低表面自由エネルギー層に酸、アルカリなどの薬品が浸潤することを抑制ないし防止する。その結果、第1の形態の撥水撥油構造体は、耐薬品性の向上という副次的な効果を奏し得る。
さらに、例えば、グラフェン層は、低表面自由エネルギー層の極性による表面自由エネルギーの影響を小さくすることないし無くすことができる。その結果、第1の形態の撥水撥油構造体は、帯電防止という副次的な効果を奏し得る。
ここで、本発明において「低表面自由エネルギー層」とは、グラフェン層側表面における表面自由エネルギーの値が20mJ/m以下である層をいう。
なお、低表面自由エネルギー層(基材層、表面改質層)の表面自由エネルギーは、例えば、簡易表面自由エネルギー接触角計(協和界面科学株式会社製、DMe-211FE)を用いて測定できる。
さらに、本発明において「グラフェン層」とは、グラフェンからなる層をいう。
なお、グラフェン層の厚み及びグラフェンの層数は、X線結晶構造解析によって測定、算出できる。また、グラフェンの層数は、グラフェン層の光透過率を測定し、各層数のグラフェン層の光透過率のリファレンスと比較することによって決定できる。
さらに、本発明において「初期」とは、撥水撥油構造体が作製された後であって、詳しくは後述する耐摩耗試験前をいう。
さらに、本発明において「優れた撥水性」とは、固体表面であるグラフェン層における水滴の接触角が130(deg.)以上であることをいう。水滴の接触角は140(deg.)以上であることが好ましく、150(deg.)以上であることがより好ましい。なお、「超撥水性」とは、水滴の接触角が150(deg.)以上であることをいう。
さらに、本発明において「優れた撥油性」とは、固体表面であるグラフェン層における油(オレイン酸)滴の接触角が60(deg.)以上であることをいう。油(オレイン酸)滴の接触角は70(deg.)以上であることが好ましく、73(deg.)以上であることがより好ましい。
さらに、本発明において「優れた耐久性」とは、固体表面であるグラフェン層上でキャンバス布を面圧100gf/cmで押し付けて、100回摺動させた後におけるグラフェン層における油(オレイン酸)滴の接触角が60(deg.)以上であることをいう。なお、キャンパス布の1回摺動とは、ストローク100mmを1往復させることをいう。
ここで、各構成要素について詳細に説明する。
(低表面自由エネルギー層)
上記低表面自由エネルギー層10としては、グラフェン層側表面における表面自由エネルギーの値が20mJ/m以下であれば、無機物であってもよく、有機物でもってもよく、特に限定されるものではない。特に限定されるものではないが、撥水撥油構造体の更なる撥水性向上の観点からは、低表面自由エネルギー層のグラフェン層側表面における表面自由エネルギーの値が0mJ/m超15mJ/m未満であることが好ましい。
(グラフェン層)
上記グラフェン層20としては、グラフェン層の厚みが2nm以下であれば、特に限定されるものではない。グラフェン層上における低表面自由エネルギー層による分散力の影響を阻害しない、言い換えれば、撥水性の性能低下をより抑制できるという観点からは、グラフェン層は、単層グラフェン又は4層以下の積層グラフェンからなることが好ましい。なお、単層グラフェンの厚みは0.2nm程度であるため、グラフェン層の厚みは0.2nm以上であることが好ましい。
<第2の形態>
次に、第2の形態に係る撥水撥油構造体について詳細に説明する。図2は、第2の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。なお、上述の形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、第2の形態の撥水撥油構造体1Aの低表面自由エネルギー層10の構造と、上述した第1の形態の撥水撥油構造体1の低表面自由エネルギー層10の構造とが相違する。すなわち、図2に示すように、第2の形態の撥水撥油構造体1Aにおいては、低表面自由エネルギー層10が、グラフェン層20側に少なくとも凹部10aを有する構造を有し、グラフェン層20が、凹部10aを閉塞している。言い換えれば、凹部10aとグラフェン層20とで、閉気孔30を形成している。なお、凹部10aは円錐状の凸部を形成することによって形成されている。
上述のように、第2の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が、凹部を閉塞している。そのため、凹部とグラフェン層とで形成された閉気孔に、撥水撥油構造体の撥水性の向上に寄与する空気などの気体を留めることができる。
その結果、第2の形態の撥水撥油構造体は、初期においてより優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する。
ここで、上記凹部10aについて詳細に説明する。このような凹部は、低表面自由エネルギー層のグラフェン層側の表面に、錐形状の凸部を形成することによって形成できる。なお、錐形状の凸部の例としては、三角錐、四角錐などの多角錐、円錐を挙げられる。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、このような凹部は、低表面自由エネルギー層のグラフェン層側の表面に、柱形状、フラクタル形状の凸部を形成することによって形成できる。なお、柱形状の凸部の例としては、三角柱、四角柱などの多角柱、円柱を挙げられる。また、例えば、このような凹部は、低表面自由エネルギー層のグラフェン層側の表面に、柱形状、複数の空孔が互いに連通して三次元にランダム配置された多孔質状の凹部を形成することによっても形成できる。なお、柱形状の凹部の例としては、円柱、四角柱を挙げることができる。このような構造は、特に限定されるものではないが、従来公知のゾルゲル法、ナノインプリント法によって形成できる。
<第3の形態>
次に、第3の形態に係る撥水撥油構造体について詳細に説明する。図3は、第3の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。なお、上述の形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、第3の形態の撥水撥油構造体1Bの低表面自由エネルギー層10の構造と、上述した第2の形態の撥水撥油構造体1Aの低表面自由エネルギー層10の構造とが相違する。すなわち、図3に示すように、第3の形態の撥水撥油構造体1Bにおいては、低表面自由エネルギー層10が、基材層11と、表面改質層13とを有する。そして、表面改質層13は、基材層11上に基材層11と接した状態で配置されている。さらに、表面改質層13の表面自由エネルギーは、基材層11の表面自由エネルギーよりも小さい。
上述のように、第3の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が、凹部を閉塞している。そのため、凹部とグラフェン層とで形成された閉気孔に、撥水撥油構造体の撥水性の向上に寄与する空気などの気体を留めることができる。なお、凹部は円錐状の凸部を形成することによって形成されている。
さらに、上述のように、第3の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、基材層上に基材層と接した状態で基材層の表面自由エネルギーよりも小さい表面自由エネルギーを有する表面改質層を有している。
その結果、第3の形態の撥水撥油構造体は、初期においてより優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する。
ここで、各構成要素について詳細に説明する。
上記基材層11としては、無機物であってもよく、有機物であってもよく、特に限定されるものではない。特に限定されるものではないが、基材層は、例えば、光透過性に優れることが好ましい。例えば、酸化ケイ素を主成分とする無機物からなるものを使用することができる。このような無機物としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラスなど、酸化ケイ素(SiO)を60質量%以上含むものを挙げることができる。
上記表面改質層13としては、上記基材層に含まれる材料と結合可能なフッ化物官能基を有する化合物を含む改質剤によって形成された単分子膜を挙げることができる。上記フッ化物官能基を有する化合物としては、例えば、フッ化物官能基を有するアルコキシオリゴマーなど、従来公知のフッ素系シランカップリング剤を挙げることができる。
特に限定されるものではないが、撥水撥油構造体の更なる撥水性向上の観点からは、表面改質層の厚みが2nm以上であることが好ましい。また、特に限定されるものではないが、撥水撥油構造体の光透過性の観点からは、表面改質層の厚みが20nm以下であることが好ましい。
図4は、図3に示した表面改質層及びグラフェン層のIV線で囲んだ部分における表面改質層とグラフェン層との結合の形態を模式的に示す説明図である。図4に示すように、表面改質層13とグラフェン層20とが物理的な相互作用により強固に結合していると考えられる。つまり、表面改質層13のCFにおけるσ電子とグラフェン層20のπ電子とが相互作用し、分子間力により強固に結合していると考えられる。その結果、第3の形態の撥水撥油構造体は、機械的耐久性の向上という副次的な効果を奏し得る。なお、CFの他に、CHやNH、OH、芳香族環を有するものは、π-π相互作用により強固に結合していると考えられる。
図5は、第3の形態に係る撥水撥油構造体の撥水性評価におけるグラフェン層のグラフェンの層数と接触角(deg.)との関係を示すグラフである。図5に示すように、グラフェンの層数が4層以下であると水滴の接触角(deg.)が著しく大きく、撥水撥油構造体の撥水性が著しく優れることが分かる。
<第4の形態>
次に、第4の形態に係る撥水撥油構造体について詳細に説明する。図6は、第4の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。なお、上述の形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、第4の形態の撥水撥油構造体1Cの低表面自由エネルギー層10の構造と、上述した第3の形態の撥水撥油構造体1Bの低表面自由エネルギー層10の構造とが相違する。すなわち、図6に示すように、第4の形態の撥水撥油構造体1Cにおいては、凹部10aは円柱状の凸部を形成することによって形成されている。
上述のように、第4の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が、凹部を閉塞している。そのため、凹部とグラフェン層とで形成された閉気孔に、撥水撥油構造体の撥水性の向上に寄与する空気などの気体を留めることができる。なお、凹部は円柱状の凸部を形成することによって形成されている。
さらに、上述のように、第4の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、基材層上に基材層と接した状態で基材層の表面自由エネルギーよりも小さい表面自由エネルギーを有する表面改質層を有している。
その結果、第4の形態の撥水撥油構造体は、初期においてより優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する。
<第5の形態>
次に、第5の形態に係る撥水撥油構造体について詳細に説明する。図7は、第5の形態に係る撥水撥油構造体を模式的に示す断面図である。なお、上述の形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、第5の形態の撥水撥油構造体1Dの低表面自由エネルギー層10の構造と、上述した第3又は第4の形態の撥水撥油構造体1B、1Cの低表面自由エネルギー層10の構造とが相違する。すなわち、図6に示すように、第5の形態の撥水撥油構造体1Dにおいては、凹部10aは複数の空孔が互いに連通して三次元にランダム配置された多孔質状の凹部を形成することによって形成されている。
上述のように、第5の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が、凹部を閉塞している。そのため、凹部とグラフェン層とで形成された閉気孔に、撥水撥油構造体の撥水性の向上に寄与する空気などの気体を留めることができる。なお、凹部は円柱状の凸部を形成することによって形成されている。
さらに、上述のように、第5の形態の撥水撥油構造体においては、低表面自由エネルギー層が、基材層上に基材層と接した状態で基材層の表面自由エネルギーよりも小さい表面自由エネルギーを有する表面改質層を有している。
その結果、第5の形態の撥水撥油構造体は、初期においてより優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有する。
上述した撥水撥油構造体の製造方法について一例を挙げて説明する。なお、本発明の撥水撥油構造体は、下記の製造方法によって得られたものに限定されるものではない。
まず、従来公知のプラズマ化学蒸着法などによって銅箔基材上にグラフェン層を形成する。なお、グラフェン層の厚み、グラフェンの層数は、例えば、プラズマ化学蒸着法における成膜時間で調整することができる。
また、従来公知のゾルゲル法、ナノインプリント法などによって低表面自由エネルギー層を形成する。なお、低表面自由エネルギー層は、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有する低表面自由エネルギー層であってもよく、グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、かつ、基材層上に基材層と接した状態で基材層の表面自由エネルギーよりも小さい表面自由エネルギーを有する表面改質層を有する低表面自由エネルギー層であってもよい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、低表面自由エネルギー層は、基材層上に基材層と接した状態で基材層の表面自由エネルギーよりも小さい表面自由エネルギーを有する表面改質層を有する低表面自由エネルギー層であってもよい。
しかる後、低表面自由エネルギー層の表面側に銅箔基材上のグラフェン層を転写することによって、撥水撥油構造体を得る。なお、転写に際しては、例えば、塩化第二鉄5質量%溶液中で銅箔を溶解除去すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
テトラエトキシシラン(エチルシリケート40:コルコート社製)9g、純水0.1g、硝酸0.1gを室温で完全に均一に溶解するまで混合した。この溶液をプラズマ発生装置を用いて、1cm/秒の速さでプラズマ処理したソーダライムガラス(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製)にバーコーターを用いて10μmの厚みで塗布し、80℃のオーブンで10分間加熱した。この加熱した基材にピッチ200nm、高さ250nmの円錐のホールが空いたナノインプリント金型を押し当てた状態で、150℃で1時間加熱し、金型剥離後に、さらに、500℃で1時間加熱し、最終的にピッチ200nm、高さ200nmのゾルゲルナノインプリントによる構造体(基材層)を作製した。
しかる後、銅箔基材上に形成されたグラフェン層(厚み:0.2nm、グラフェンの層数:1層)を得られた基材層に転写して、図2に示すような本例の撥水撥油構造体を得た。
(実施例2)
(低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)の作製)
フッ素系改質剤(フロロサーフ:FG-5020:株式会社フロロテクノロジー製)を60℃の温度で1時間還流させて、実施例1で用いた基材層に表面改質層を形成して、図3に示すような本例で用いる低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)(凸部形状:円錐形状、ピッチ:200nm、高さ:200nm、表面改質層の厚み:2nm、表面自由エネルギー:12mJ/m)を作製した。
しかる後、銅箔基材上に形成されたグラフェン層(厚み:0.4nm、グラフェンの層数:2層)を得られた低表面自由エネルギー層に転写して、図3に示すような本例の撥水撥油構造体を得た。
(実施例3)
(低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)の作製)
実施例1からナノインプリント金型をピッチ200nm、ホール径70nm、高さ300nmの円筒ホール状に変更して基材層を作製し、実施例2と同様の操作を繰り返して、図6に示すような本例で用いる低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)(凸部形状:円柱形状、ピッチ:200nm、高さ:200nm、円柱直径:70nm、表面改質層の厚み:2nm、表面自由エネルギー:12mJ/m)を作製した。
しかる後、銅箔基材上に形成されたグラフェン層(厚み:0.8nm、グラフェンの層数:4層)を得られた低表面自由エネルギー層に転写して、図6に示すような本例の撥水撥油構造体を得た。
(実施例4)
(低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)の作製)
プラズマ発生装置を用いて、ソーダライムガラス(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製)を1cm/秒の速さでプラズマ処理した。
純水0.64g、トリエチレングリコール1.5g、イソプロピルアルコール0.78g、硫酸0.3gを入れたスクリュー管Aと、テトラエトキシシラン(エチルシリケート40:コルコート社製)8.04g、イソプロピルアルコール0.78gを入れたスクリュー管Bとを、それぞれ25℃に調節したウォーターバスに入れ昇温した。
上記スクリュー管Aにスクリュー管Bの中身を入れ、1500rpmで撹拌し、スクリュー管A内の温度が30℃(ピーク温度)になってから、さらに30分間撹拌した。
撹拌終了後、上記スクリュー管A内の溶液5.0gをスクリュー管Cに取り出し、イソプロピルアルコール20gを加えて、1500rpmで1分間撹拌した。
温度25℃、湿度60%に調節された空気中で、上記スクリュー管Cで撹拌混合した溶液1.5mlを、回転数100rpmで3秒間、500rpmで5秒間、1000rpmで15秒間の条件で、上記プラズマ処理されたソーダライムガラス上(□100mm)にスピンコーター(K359D-1 SPINNER:KYOWARIEN社製)を用いてスピンコートした。
スピンコートしたソーダライムガラスを平面に静置して2分間風乾し、150℃のドライオーブン内で1時間乾燥した後、ドライオーブン内に放置し室温まで冷却した。その後、500℃のマッフル炉(Muffle Furnace FP410:ヤマト科学社製)で1時間焼成し、マッフル炉内に放置し室温まで冷却して基材層を作製し、実施例2と同様の操作を繰り返して、図7に示すような本例で用いる低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)(凹部形状:多孔質状、開口径:50nm、開口率:50%、表面改質層の厚み:2nm、表面自由エネルギー:12mJ/m)を作製した。
しかる後、銅箔基材上に形成されたグラフェン層(厚み:0.2nm、グラフェンの層数:1層)を得られた低表面自由エネルギー層に転写して、図7に示すような本例の撥水撥油構造体を得た。
(比較例1)
実施例2で用いた低表面自由エネルギー層(基材層+表面改質層)を本例の撥水撥油構造体として用いた。
(比較例2)
実施例1で用いた低表面自由エネルギー層(基材層)を本例の撥水撥油構造体として用いた。各例の撥水撥油構造体の仕様の一部を表1に示す。
Figure 0007078896000001
表1中の「全光線透過率(%)」は、撥水撥油構造体の全光透過率を意味する。表1中の「全光線透過率(%)」は、JIS K7136に規定された積分球を備えた測定装置に試料フィルムを装着し、前方から光を当て、撥水撥油構造体を透過した光を積分球で捕捉して測定した。
表1中の「ヘイズ(%)」は、撥水撥油構造体のヘイズを意味する。表1中の「ヘイズ(%)」は、JIS K7136に準拠し、ヘイズ・透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
表1中の「水接触角(deg.)」及び「オレイン酸接触角(deg.)」は、撥水撥油構造体の水滴の接触角(deg.)及び油(オレイン酸)滴の接触角(deg.)を意味する。表1中の「水接触角(deg.)」及び「オレイン酸接触角(deg.)」は、簡易表面自由エネルギー接触角計(協和界面科学株式会社製、DMe-211FE)を用いて測定した。
表1中の「耐摩耗性試験」とは撥水撥油構造体の耐久性を評価する試験を意味する。表1中の「耐摩耗性試験」は、固体表面であるグラフェン層上でキャンバス布を面圧100gf/cmで押し付けて、100回摺動させた後におけるグラフェン層における油(オレイン酸)滴の接触角を測定した評価した。なお、キャンパス布の1回摺動とは、ストローク100mmを1往復させることをいう。摺動後において、オレイン酸接触角(deg.)が70(deg.)以上を「◎」とし、60(deg.)以上70(deg.)未満を「○」とし、60(deg.)未満を「×」とした。
表1より、本発明の範囲に属する実施例1~4は、本発明外の比較例1及び2と比較して、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、低表面自由エネルギー層と低表面自由エネルギー層上に低表面自由エネルギー層と接した状態で配置されたグラフェン層とを備え、グラフェン層の厚みが2nm以下であるためと考えられる。
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1~4は、本発明外の比較例1及び2と比較して、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、低表面自由エネルギー層がグラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、グラフェン層が凹部を閉塞しているためとも考えられる。
さらに、表1より、本発明の範囲に属する実施例2~4は、本発明の範囲に属する実施例1と比較して、より優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、低表面自由エネルギー層が、基材層と、基材層上に基材層と接した状態で配置された表面改質層と、を有し、表面改質層の表面自由エネルギーが、基材層の表面自由エネルギーよりも小さいためと考えられる。
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1~4は、本発明外の比較例1及び2と比較して、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、表面改質層の厚みが、2nm以上であるためとも考えられる。
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1~4は、本発明外の比較例1及び2と比較して、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、グラフェン層が、単層グラフェン又は4層以下の積層グラフェンからなるためとも考えられる。
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1~4は、本発明外の比較例1及び2と比較して、初期において優れた撥水性及び撥油性を有するとともに、優れた耐久性を有することが分かる。
上述のような効果が得られたのは、低表面自由エネルギー層の表面自由エネルギーが、15mJ/m未満であるためとも考えられる。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、本発明の撥水撥油構造体は、防汚構造体として適用することができる。この防汚構造体を自動車部品が備えることで、長期に亘り防汚性能に優れたものとすることができ、洗車や清掃の回数を減らすことや、雨天や悪路において良好な視界を確保することができる。
上記自動車部品としては、カメラレンズ、ミラー、ガラスウィンドウ、ボディ等の塗装面、各種ライトのカバー、ドアノブ、メーターパネル、ウィンドウパネル、ラジエターフィン、エバポレーター等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
1,1A,1B,1C,1D 撥水撥油構造体
10 低表面自由エネルギー層
10a 凹部
11 基材層
13 表面改質層
20 グラフェン層
30 閉気孔

Claims (5)

  1. 低表面自由エネルギー層と、
    前記低表面自由エネルギー層上に前記低表面自由エネルギー層と接した状態で配置されたグラフェン層と、を備え、
    前記グラフェン層の厚みが、2nm以下であり、
    前記低表面自由エネルギー層が、前記グラフェン層側に少なくとも凹部を有する構造を有し、
    前記グラフェン層が、前記凹部を閉塞している
    ことを特徴とする撥水撥油構造体。
  2. 前記低表面自由エネルギー層が、基材層と、前記基材層上に前記基材層と接した状態で配置された表面改質層と、を有し、
    前記表面改質層の表面自由エネルギーが、前記基材層の表面自由エネルギーよりも小さい
    ことを特徴とする請求項1に記載の撥水撥油構造体。
  3. 前記表面改質層の厚みが、2nm以上であることを特徴とする請求項2に記載の撥水撥油構造体。
  4. 前記グラフェン層が、単層グラフェン又は4層以下の積層グラフェンからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載の撥水撥油構造体。
  5. 前記低表面自由エネルギー層の表面自由エネルギーが、15mJ/m未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の撥水撥油構造体。
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