JP2008090194A - 反射防止基材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】太陽電池、ディスプレイパネル、光学レンズに使用される反射防止基材の製造方法に関し、シリカ微粒子と金属アルコキシドバインダーからなる反射防止膜に対し、洗浄後のガラス基板の表面状態を明確化することによって、シリカ微粒子とガラス基板間に高い固着性を得ることができるシリカ微粒子用反射防止基材製造方法を提供する。
【解決手段】洗浄によって、ガラス基板表面の炭素元素濃度を9.5%以下にする工程を含むシリカ微粒子用反射防止基材の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】洗浄によって、ガラス基板表面の炭素元素濃度を9.5%以下にする工程を含むシリカ微粒子用反射防止基材の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は太陽電池、ディスプレイパネル、光学レンズに使用される反射防止基材の製造方法に関し、詳細には、本発明における製造方法によって、不良品の発生を抑制することができる反射防止基材の製造方法に関するものである。
ガラス、プラスチックなどの基板の表面には、それらの用途における機能改善を目的として、光をより多く透過させるために、光の反射を防止する反射防止膜が形成された反射防止基材がある。
このような反射防止基材の一つに、金属アルコキシドを用いたゾルゲル法により、シリカ微粒子と、ガラス基板を固着させて形成するものがある。
ところで、反射防止基材は屋外に長期間放置したり、また一度取り付けられると取り替えや交換が困難である構成の場合、反射防止膜に対して高い物理的耐久性、つまり反射防止膜の基板に対する高い固着性が要求される。
このような要求に対して、特許文献1では、微粒子とバインダー、バインダーと基材とを反応させ、500℃近くでの焼成処理をおこなうことによって、微粒子とバインダー、バインダーと基板の固着性を高めて、耐久性を獲得している。
また、特許文献2には、50体積%以下の内部孔隙を有したバインダー層に、微粒子の1/4〜1/2が埋没して固定されてなる反射防止膜が開示されている。この反射防止基材は、反射防止膜の材料を含む溶液を基板表面に塗布した後、500℃で2時間焼成することによって、当該溶液に含まれるシリカ微粒子、バインダー及び基材の固着性を高めて、物理的耐久性を得ている。
さらに特許文献3では、バインダー材料に金属アルコキシドのオリゴマーを用いることによって、従来よりも低温である焼成温度200℃において、シリカ微粒子、バインダー及び基板の固着性を高めて、物理的耐久性を得ている。
このように高い固着性を得るため、反射防止膜のバインダー材料を改良する試みはされている。
特開平9−249411
特開2002−182006
特願2006−116807(カネカB060193JP01)
このように高い固着性を得るため、反射防止膜のバインダー材料を改良する試みはされている。
しかしながらガラス基板表面が汚染されていたり、変質していると、汚染物や変質層がガラス基板とシリカ微粒子およびバインダーからなる反射防止膜の接着を阻害するため、高い固着性は得られない。
前述の特許文献1にはガラス基板表面洗浄に関する具体的な記述はなく、また特許文献2および3には、脱脂洗浄、アルカリもしくは酸による洗浄、研磨材による表面研磨、超音波洗浄、紫外線照射処理、紫外線オゾン処理またはプラズマ処理などの処理名を挙げているのみで、洗浄および洗浄後の処理によってガラス基板表面の汚染物や変質層を、どのような方法で、どこまで減ずればよいのか明確にされていない。
また本発明者は、特許文献3のシリカ微粒子用反射防止基材の製造において、特定のガラス基板の洗浄方法および洗浄後の処理によっては、また未洗浄ガラス基板を用いた場合においては、ガラス基板とシリカ微粒子およびバインダーからなる反射防止膜間に高い固着性を得られないことを発見した。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス基板の表面状態を明確化することによって、シリカ微粒子と金属アルコキシドバインダーからなる反射防止膜に対し、高い固着性を得ることができるシリカ微粒子用反射防止基材製造方法を提供することにある。
この課題を解決するため本発明者は、洗浄によってガラス基板表面の炭素元素濃度を9.5%以下にする工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子反射防止基材の製造方法を考案するに至った(請求項1)。
また洗浄によってガラス基板表面の炭素元素濃度を9.5%以下にした場合、ガラス基板表面の濡れ性が水接触角にて11.4°以下となることが判明した。従って、本発明におけるシリカ微粒子反射防止基材の製造方法は、洗浄によってガラス基板表面の濡れ性が水接触角にて11.4°以下にする工程を含むことを特徴とする(請求項2)。
また前述の炭素元素濃度9.5%以下、水接触角11.4°以下とするには、洗浄後の大気中での放置時間が2.5時間以内としなければならないことが判明した。従って、本発明におけるシリカ微粒子反射防止基材の製造方法は、洗浄後の大気中での放置時間が2.5時間以内とする工程を含むことを特徴とする(請求項3)。
また前述のシリカ微粒子反射防止基材の製造方法における洗浄方法は、セリコ洗浄、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄のうちからいずれか一つを採用することを特徴とする(請求項4)。
さらに、前述の製造方法によって得られる反射防止基材用ガラス表面が、ガラス基板表面の炭素元素濃度が9.5%以下になり、またシリカ微粒子反射防止膜との固着性が、JIS K7204に記載の摩耗輪による摩耗試験方法において、具体的にはCS10Fの回転ホイールを2.5Nで反射防止膜に押し付け、72rpm(60Hz)で反射防止膜を回転させ、シリカ微粒子反射防止膜が完全に剥がれるまでの回転数が800回転以上であることを特徴とする(請求項5)。
本発明における製造方法は、洗浄不良を原因とする、シリカ微粒子反射防止膜とガラス基板表面の固着力が不十分な反射防止基材の不良品発生の抑制を目的としている。つまりガラス基板表面の洗浄状態を炭素元素濃度で9.5%以下、あるいは水接触角で11.4°以下とし、またこれらの条件を満たすため洗浄後の大気中での放置時間が2.5時間以内と、明確に規定しているため本発明における製造方法によれば、固着力の高い反射防止基材を得ることができる。
本発明の実施の一形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲が、以下の実施形態および図面に限定されるものではない。
また、以下の説明において、反射防止膜用ガラスを太陽電池用パネルとして用いた構成について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラレンズなどの光学部材や光電変換装置にも適用できる。更には、反射防止基材は、ディスプレー装置の表示面、その表示カバー材料、タッチパネル、窓ガラス、ショーウインドー用ガラス、TVブラウン管の表示面、計器のカバーガラス、時計のカバーガラス、偏光用フィルム、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、陰極線管の前面影像面などにも適用することができる。
以下、本発明に係る反射防止膜用ガラスの一実施形態について詳述する。
まず本発明のガラス基材について説明する。
材料となるガラス基板には、安価に製造するため、市場に広く流通しているガラスを採用する。面積などにもよるが一般的に安価な順にこれらガラスを列記すると次のとおりである。
まず本発明のガラス基材について説明する。
材料となるガラス基板には、安価に製造するため、市場に広く流通しているガラスを採用する。面積などにもよるが一般的に安価な順にこれらガラスを列記すると次のとおりである。
・青板ガラス:鉄を含有するソーダライムガラス(Na2O−CaO−SiO2)。最も広く流通しているガラスであり、建築用に使用される。
・白板ガラス:鉄を含有しないソーダライムガラス(Na2O−CaO−SiO2)。太陽電池等に使用される。
なお、青板ガラスや白板ガラスにおける、「鉄を含有する、鉄を含有しない」という程度は、ガラス業界で一般的に工業的な意味で「鉄を含有する、鉄を含有しない」という程度の広い意味で用いられる。
・無アルカリガラス:ホウケイ酸ガラス(RO−Al2O3−B2O3−SiO2)。医理用、レンズ等に使用される。
反射防止ガラス基材には、これらの中でも透過率が高い白板ガラス、無アルカリガラスを選択するのが好ましい。
次にガラス基板表面の炭素成分について説明する。
青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガラスを基材とするガラス基板は通常大気中にて放置されているため、ガラス基板表面には大気中の炭素分が大量に付着している。また、炭素分と大気中の水分およびガラス成分である酸化ケイ素とナトリウムが反応することによって、ガラス基板表面にヤケといわれる炭素分を含んだ変質層(Na2CO3,NaHCO3)が生じる。従って大気中での放置時間が長くなるほど、ガラス基板表面に付着炭素分とヤケの量が増え、これらはシリカ微粒子反射防止膜とガラス基板表面の密着性を阻害する。
青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガラスを基材とするガラス基板は通常大気中にて放置されているため、ガラス基板表面には大気中の炭素分が大量に付着している。また、炭素分と大気中の水分およびガラス成分である酸化ケイ素とナトリウムが反応することによって、ガラス基板表面にヤケといわれる炭素分を含んだ変質層(Na2CO3,NaHCO3)が生じる。従って大気中での放置時間が長くなるほど、ガラス基板表面に付着炭素分とヤケの量が増え、これらはシリカ微粒子反射防止膜とガラス基板表面の密着性を阻害する。
ガラス基板表面の付着炭素分とヤケの量は、ガラス基板表面を元素定量分析すれば、炭素元素濃度として定量できる。反射防止膜との高い密着強度を発現するため、本発明における反射防止膜用ガラス基板表面の炭素元素濃度は9.5%以下であることが必要である。
次にガラス基板表面の濡れ性と接触角について説明する。
固体試料の表面に液体試料を滴下すると、液体試料は固体試料の表面で液滴を形成する。このときの液滴の固体試料に対する盛り上がり角度が接触角で、接触角の値が固体試料の濡れ性を表す。濡れ性は水との接触角で表すことによって、固体表面の清浄度評価にも用いられる。例えば洗浄後、固体表面に油分、脂質等が残っている場合、水をはじくため接触角は大きくなる。
固体試料の表面に液体試料を滴下すると、液体試料は固体試料の表面で液滴を形成する。このときの液滴の固体試料に対する盛り上がり角度が接触角で、接触角の値が固体試料の濡れ性を表す。濡れ性は水との接触角で表すことによって、固体表面の清浄度評価にも用いられる。例えば洗浄後、固体表面に油分、脂質等が残っている場合、水をはじくため接触角は大きくなる。
ガラス基板表面の場合、大気中に放置することによってガラス基板表面に炭素分が付着し、一般的には水の接触角で定義される清浄度が悪化してしまう。ガラス基板表面の炭素分はガラス基板表面とシリカ微粒子反射防止膜の密着性を阻害するため、洗浄にて炭素分を除去する必要がある。反射防止膜との高い密着強度を発現するため、本発明における反射防止膜用ガラス基板表面の濡れ性は水接触角にて11.4°以下であることを必要とする。
次にガラス基板表面の洗浄方法について説明する。
ガラス基板表面の付着炭素分とヤケを除去するには、ガラス基板表面を洗浄しなければならない。ガラス基板の洗浄方法としては、超音波洗浄、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄、セリコ洗浄などが挙げられる。ガラス基板表面の化学的に変化してしまった変質分であるヤケを除去するには、化学的に除去するか、研磨などで物理的に除去しなければならない。従って前述の洗浄方法の中では、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄、セリコ洗浄を選択できる。プラズマ洗浄の場合、四フッ化炭素プラズマを用いることによってガラス基板表面の炭素分、ヤケを除去できるが、ガラス基板表面にガラス成分であるMg、Na、Ca、Alが残留してしまう。またアルカリ洗浄の場合は、ガラス表面にケイ酸ソーダの膜(バリヤー)が形成され、そのバリヤーを通してアルカリが作用するため、その表面はポーラス状態になってしまう。一方セリコ洗浄は、洗浄後、ガラス基板表面に異物が残留する、表面形状が変化するなどの問題は生じないため、洗浄の制御は容易である。従って前述の洗浄方法の中でもセリコ洗浄を選択するのが好ましいが、洗浄後のガラス基板表面の炭素元素濃度が9.5%以下になるのであれば、どの洗浄方法を選択しても構わない。
ここでセリコ洗浄について説明する。セリコ洗浄は特許文献1、2、3にもあるようにガラスの研磨洗浄としては一般的な方法である。なおセリコ洗浄とは水と酸化セリウムを主成分とする研磨スラリーを用いて研磨洗浄する方法で、そのメカニズムは酸化セリウムと水が圧縮応力の作用でガラス表面の酸化ケイ素に接近し、化学反応にてSi(OH)4となり、液中に溶出されることによる。なお、酸化セリウム系研磨材成分の一例を表1に示す。
ガラス基板表面の付着炭素分とヤケを除去するには、ガラス基板表面を洗浄しなければならない。ガラス基板の洗浄方法としては、超音波洗浄、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄、セリコ洗浄などが挙げられる。ガラス基板表面の化学的に変化してしまった変質分であるヤケを除去するには、化学的に除去するか、研磨などで物理的に除去しなければならない。従って前述の洗浄方法の中では、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄、セリコ洗浄を選択できる。プラズマ洗浄の場合、四フッ化炭素プラズマを用いることによってガラス基板表面の炭素分、ヤケを除去できるが、ガラス基板表面にガラス成分であるMg、Na、Ca、Alが残留してしまう。またアルカリ洗浄の場合は、ガラス表面にケイ酸ソーダの膜(バリヤー)が形成され、そのバリヤーを通してアルカリが作用するため、その表面はポーラス状態になってしまう。一方セリコ洗浄は、洗浄後、ガラス基板表面に異物が残留する、表面形状が変化するなどの問題は生じないため、洗浄の制御は容易である。従って前述の洗浄方法の中でもセリコ洗浄を選択するのが好ましいが、洗浄後のガラス基板表面の炭素元素濃度が9.5%以下になるのであれば、どの洗浄方法を選択しても構わない。
ここでセリコ洗浄について説明する。セリコ洗浄は特許文献1、2、3にもあるようにガラスの研磨洗浄としては一般的な方法である。なおセリコ洗浄とは水と酸化セリウムを主成分とする研磨スラリーを用いて研磨洗浄する方法で、そのメカニズムは酸化セリウムと水が圧縮応力の作用でガラス表面の酸化ケイ素に接近し、化学反応にてSi(OH)4となり、液中に溶出されることによる。なお、酸化セリウム系研磨材成分の一例を表1に示す。
上述の方法にてガラス基板表面を洗浄しても、大気中にさらされることによってガラス基板表面に再度、炭素分が付着し、清浄度が悪化してしまう。炭素分の付着を阻止するには、窒素雰囲気中、真空中で放置する等の方法がある。しかし最も簡易な方法は大気中で放置し、反射防止膜形成までの放置時間を短くすることである。
反射防止膜との高い密着強度を発現するため、本発明における反射防止膜用ガラス基板表面のガラス基板表面洗浄後の大気中における放置時間が2.5時間以内であることが必要である。
反射防止膜との高い密着強度を発現するため、本発明における反射防止膜用ガラス基板表面のガラス基板表面洗浄後の大気中における放置時間が2.5時間以内であることが必要である。
[実施例、比較例の共通点]
下記実施例および比較例に記載した方法にてガラス基板表面を洗浄および乾燥後、シリカ微粒子反射防止膜を形成し、炭素元素濃度および濡れ性に対する密着強度を検証した。なお、ガラス基板表面の炭素元素濃度の制御は、ガラス基板表面を洗浄後、大気中に放置する時間(乾燥時間を含む)によっておこなった。
下記実施例および比較例に記載した方法にてガラス基板表面を洗浄および乾燥後、シリカ微粒子反射防止膜を形成し、炭素元素濃度および濡れ性に対する密着強度を検証した。なお、ガラス基板表面の炭素元素濃度の制御は、ガラス基板表面を洗浄後、大気中に放置する時間(乾燥時間を含む)によっておこなった。
またシリカ微粒子反射防止膜は以下の方法で、ガラス基板表面上に形成した。
水24.38g、i−プロパノール58.71g、35%塩酸1.14g、テトラエトキシシランのオリゴマー(n=4〜6)11.90g、および平均粒径90nmのシリカ微粒子分散液(水溶媒 固形分40%)24.38gを順次添加して、4時間、室温で攪拌混合する。その後、希釈溶媒として、i−プロパノール529.50gを添加し、よく攪拌して塗布液を作製する。この塗布液中にガラス基板を浸し、速度0.1m/分にて引き上げるディップコーティング法により塗布操作を行う。その後、80℃の熱風乾燥処理を30分間施した後、200℃で5分間の焼成処理をおこなうことによって、ガラス基板表面上にシリカ微粒子反射防止膜を形成する。
また密着強度、接触角、炭素元素濃度は以下の各方法で測定した。
水24.38g、i−プロパノール58.71g、35%塩酸1.14g、テトラエトキシシランのオリゴマー(n=4〜6)11.90g、および平均粒径90nmのシリカ微粒子分散液(水溶媒 固形分40%)24.38gを順次添加して、4時間、室温で攪拌混合する。その後、希釈溶媒として、i−プロパノール529.50gを添加し、よく攪拌して塗布液を作製する。この塗布液中にガラス基板を浸し、速度0.1m/分にて引き上げるディップコーティング法により塗布操作を行う。その後、80℃の熱風乾燥処理を30分間施した後、200℃で5分間の焼成処理をおこなうことによって、ガラス基板表面上にシリカ微粒子反射防止膜を形成する。
また密着強度、接触角、炭素元素濃度は以下の各方法で測定した。
〔密着強度〕
JIS K7204に記載の摩耗輪による摩耗試験方法に準じて評価した。具体的には、CS10Fの回転ホイールを2.5Nで反射防止膜に押し付け、72rpm(60Hz)で反射防止膜を回転させて、膜が完全に剥がれるまでの回転数を測定した。
JIS K7204に記載の摩耗輪による摩耗試験方法に準じて評価した。具体的には、CS10Fの回転ホイールを2.5Nで反射防止膜に押し付け、72rpm(60Hz)で反射防止膜を回転させて、膜が完全に剥がれるまでの回転数を測定した。
〔接触角〕
接触角とは固体試料に対する液滴の盛り上がり角度である。直径1mmの蒸留水をガラス基板表面に接触させることによって、ガラス基板上に水滴を付着させる。図1に示すように、付着した水滴の直径をAmm、高さをHmmとした場合、接触角θとの関係は次式で表される。
tan(θ/2)=H/(A/2)
本実施例ではHとAを測定することによって、接触角を求めた。
接触角とは固体試料に対する液滴の盛り上がり角度である。直径1mmの蒸留水をガラス基板表面に接触させることによって、ガラス基板上に水滴を付着させる。図1に示すように、付着した水滴の直径をAmm、高さをHmmとした場合、接触角θとの関係は次式で表される。
tan(θ/2)=H/(A/2)
本実施例ではHとAを測定することによって、接触角を求めた。
〔炭素元素濃度〕
X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した。分析元素はSi,Na,C,O,Ce,Mg,Ca,Alとし、これら元素の合計に対する各元素の比率を測定した。測定深さは約5nmである。なお、分析装置および条件は次の通り。
装置:ファイ社 Quantum2000
X線強度:AlKα/ 15kV・25W
X線ビーム径:100μmφ
パスエネルギー:187.85eV(ワイド)
58.70eV(ナロー)
X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した。分析元素はSi,Na,C,O,Ce,Mg,Ca,Alとし、これら元素の合計に対する各元素の比率を測定した。測定深さは約5nmである。なお、分析装置および条件は次の通り。
装置:ファイ社 Quantum2000
X線強度:AlKα/ 15kV・25W
X線ビーム径:100μmφ
パスエネルギー:187.85eV(ワイド)
58.70eV(ナロー)
〔実施例1〕
まず反射防止膜を形成するガラス基材として、100mm×100mm×4mmの白板ガラスを2枚準備する。次に酸化セリウムスラリーを含ませた市販の家庭用スポンジを用いてガラス基材の表面を研磨洗浄する。酸化セリウムスラリーは重量比で酸化セリウム系研磨材20%、水80%のものを用いた。なお、本発明で使用した酸化セリウム系研磨材の成分は表1に示したものである。
まず反射防止膜を形成するガラス基材として、100mm×100mm×4mmの白板ガラスを2枚準備する。次に酸化セリウムスラリーを含ませた市販の家庭用スポンジを用いてガラス基材の表面を研磨洗浄する。酸化セリウムスラリーは重量比で酸化セリウム系研磨材20%、水80%のものを用いた。なお、本発明で使用した酸化セリウム系研磨材の成分は表1に示したものである。
研磨洗浄後、スラリーを水洗にて除去し、直ちに80℃の熱風乾燥処理を30分間おこなう。乾燥後、大気中に1時間放置し冷却する。つまりこの場合の洗浄後の大気放置時間は1.5時間である。放置冷却完了後、2枚の内1枚は直ちにガラス基板表面の接触角を測定する。残る1枚は直ちにシリカ微粒子反射防止膜を形成した後、密着強度を測定する。
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法にて洗浄後、2時間、2.5時間放置したものを作製し、接触角測定とシリカ微粒子反射防止膜形成後、密着強度を測定する。
実施例1と同様の方法にて洗浄後、2時間、2.5時間放置したものを作製し、接触角測定とシリカ微粒子反射防止膜形成後、密着強度を測定する。
〔実施例3〕
実施例1と同様の方法にて洗浄後、0.5時間放置したものを作製し、ガラス基板表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
実施例1と同様の方法にて洗浄後、0.5時間放置したものを作製し、ガラス基板表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法にて洗浄後、3.5時間、4.5時間、7.5時間、13.5時間、25.5時間放置したものを作製し、接触角測定とシリカ微粒子反射防止膜形成後、密着強度を測定する。
実施例1と同様の方法にて洗浄後、3.5時間、4.5時間、7.5時間、13.5時間、25.5時間放置したものを作製し、接触角測定とシリカ微粒子反射防止膜形成後、密着強度を測定する。
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法にて乾燥後、98.5時間放置したものを作製し、ガラス基板表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
実施例1と同様の方法にて乾燥後、98.5時間放置したものを作製し、ガラス基板表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
〔比較例3〕
生産後19440時間経過した白板ガラス表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
生産後19440時間経過した白板ガラス表面の各元素存在比をX線光電子分光法で分析することによって炭素元素濃度を測定する。
〔測定結果〕
以上の方法によって得られた、ガラス基板表面洗浄および乾燥後の大気中における放置時間と、接触角および密着強度の関係を表2に示す。
以上の方法によって得られた、ガラス基板表面洗浄および乾燥後の大気中における放置時間と、接触角および密着強度の関係を表2に示す。
また0.5時間、98.5時間、19440時間の放置時間における元素存在比を表3に、このうち炭素元素濃度をグラフ化したものを図2に示す。
表2から放置時間の経過に従って、接触角が大きくなり、ガラス基板に対するシリカ微粒子反射防止膜の密着強度が低下していることが判る。放置時間が2.5時間以下の場合、接触角は11.4°以下、密着力は1000回転以上となり、充分な密着強度を有することが判る。
反射防止膜との高い密着強度を発現するため、このように本発明におけるガラス基板表面は、濡れ性が水接触角にて11.4°以下であって、その作製方法はガラス基板表面洗浄後の大気中における放置時間が2.5時間以内であることである。
また表3から放置時間の経過に従って、ガラス基板表面上に付着する炭素の元素濃度が増加する一方、相対的に他元素の比率が減じているのが判る。なおヤケの成分であるNaの比率も減じていることから、図3に示すように変質層の厚さは5nm未満であることが判る。
また表3から放置時間の経過に従って、ガラス基板表面上に付着する炭素の元素濃度が増加する一方、相対的に他元素の比率が減じているのが判る。なおヤケの成分であるNaの比率も減じていることから、図3に示すように変質層の厚さは5nm未満であることが判る。
図2中の直線は、表3の結果を最小二乗法にて対数関数で表したものである。充分な密着強度を有する、ガラス基板表面洗浄後の大気放置時間が2.5下の場合、ガラス基板表面における炭素元素濃度は、図2中の直線から9.5%以下であることがわかる。
反射防止膜との高い密着強度を発現するため、このように本発明におけるガラス基板表面の炭素元素濃度は9.5%以下であることを必要とする。
反射防止膜との高い密着強度を発現するため、このように本発明におけるガラス基板表面の炭素元素濃度は9.5%以下であることを必要とする。
従って、反射防止膜形成前におこなうガラス基板の洗浄等の前処理において、処理度合いの指標値が明確であるため、不良品の発生を抑制でき、且つ処理時間などの方法を制御することによって安価に反射防止膜が製造できる。
Claims (5)
- 洗浄によってガラス基板表面の炭素元素濃度を9.5%以下にする工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子反射防止基材の製造方法。
- 洗浄によってガラス基板表面の濡れ性が水接触角にて11.4°以下にする工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子反射防止基材の製造方法。
- 洗浄後の大気中での放置時間が2.5時間以内とする工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子反射防止基材の製造方法。
- 洗浄方法として、セリコ洗浄、プラズマ洗浄、アルカリ洗浄のうちからいずれか一つを採用することを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3に記載のシリカ微粒子反射防止基材の製造方法。
- 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4に記載の製造方法により、ガラス基板表面の炭素元素濃度が9.5%以下になり、またシリカ微粒子反射防止膜との固着性が、JIS K7204に記載の摩耗輪による摩耗試験方法において、具体的にはCS10Fの回転ホイールを2.5Nで反射防止膜に押し付け、72rpm(60Hz)で反射防止膜を回転させ、シリカ微粒子反射防止膜が完全に剥がれるまでの回転数が800回転以上であることを特徴とする反射防止基材用ガラス表面。
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---|---|---|---|---|
JP2012239997A (ja) * | 2011-05-20 | 2012-12-10 | Kaneka Corp | 反射防止膜付き光電変換装置の製造方法、及び、被膜形成用組成物の塗布特性診断方法 |
JP2016218169A (ja) * | 2015-05-18 | 2016-12-22 | 株式会社コゾフィルタース | 貼合減光フィルターレンズ及びその製造方法 |
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2006
- 2006-10-04 JP JP2006273439A patent/JP2008090194A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012239997A (ja) * | 2011-05-20 | 2012-12-10 | Kaneka Corp | 反射防止膜付き光電変換装置の製造方法、及び、被膜形成用組成物の塗布特性診断方法 |
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