JP2023177176A - 低反射部材、及び低反射膜用の塗工液 - Google Patents

低反射部材、及び低反射膜用の塗工液 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性能を有する低反射部材、及び低反射膜用の塗工液を提供する。【解決手段】本発明に係る低反射部材は、第1面及び第2面を有するガラス板と、前記第1面に形成され、前記ガラス板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低反射膜と、を備え、前記低反射膜は、中空微粒子と、バインダと、を備え、前記低反射膜に対し、綿棒を10g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない。【選択図】図1

Description

本発明は、低反射部材、及び低反射膜用の塗工液に関する。
パソコン、スマートフォン等のディスプレイのガラス板には、室内灯、太陽光などの外光が映り込み、視認性が低下するという問題がある。これを解決するため、ディスプレイに低反射膜を形成することが行われている(特許文献1)。
特開2020-118992号公報
このような低反射膜が形成されるガラス板は、屋外などの環境で用いられることがあるため、近年は、耐摩耗性能が要望されている。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、耐摩耗性能を有する低反射部材、及び低反射膜用の塗工液を提供することを目的とする。
項1.第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記第1面に形成され、前記ガラス板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低反射膜と、
を備え、
前記低反射膜は、
中空微粒子と、
バインダと、
を備え、
綿棒を10g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、
低反射部材。
項2.第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記第1面に形成され、前記ガラス板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低反射膜と、
を備え、
前記低反射膜は、
中空微粒子と、
バインダと、
を備え、
100gの荷重で織布を前記低反射膜に押しつけ、3cmの距離を10回往復したときに、動摩擦係数の変化が0.2以下である、
低反射部材。
項3.前記低反射膜において、
前記中空微粒子と前記バインダとの質量比が、50:50~99:1である、項1または2に記載の低反射部材。
項4.前記低反射膜において、
前記中空微粒子と前記バインダとの質量比が、75:25~95:5である、項1または2に記載の低反射部材。
項5.前記バインダは、
シリカと
ポリシルセスキオキサンと、を含む
項1から4のいずれかに記載の低反射部材。
項6.屈折率が、1.20未満である、項1から5のいずれかに記載の低反射部材。
項7.屈折率が、1.18以下である、項1から5のいずれかに記載の低反射部材。
項8.前記中空微粒子の間に1000nm2以上の断面積をもつ空隙が形成されている、を有する、項1から7のいずれかに記載の低反射部材。
項9.前記バインダ中にさらに700nm2以下の断面積をもつ空孔を有する、項1から8のいずれかに記載の低反射部材。
項10.綿棒を50g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、項1から9のいずれかに記載の低反射部材。
項11.綿棒を100g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、項1から9のいずれかに記載の低反射部材。
項12.鉛筆硬度が2Bより高い、項1から11のいずれかに記載の低反射部材。
項13.筐体の内部に収容される光学要素として使用可能な、項1から12のいずれかに記載の低反射部材。
項14.前記光学要素はレンズである、項13に記載の低反射部材。
項15.前記光学要素はカバー部材であり、
前記低反射膜は前記筐体の内部を向くように配置される、項13に記載の低反射部材。
項16.ガラス板上に塗布される低反射膜用の塗工液であって、
中空微粒子と、
バインダと、
200℃以上の沸点の溶媒と、
を含む、低反射膜用の塗工液。
本発明によれば、耐摩耗性能を有する低反射部材を提供することができる。
本発明に係る低反射部材の一実施形態を示す断面図である。 図1の拡大断面図である。 耐久試験に用いる治具を示す図である。 実施例1の断面図を示すSEM写真である。 比較例の断面図を示すSEM写真である。 実施例2の断面図を示すSEM写真である。 実施例1,2及び比較例における動摩擦係数の変化を示すグラフである。 動摩擦係数の変化を測定する試験の前後における比較例の表面を示すSEM写真である。
以下、本発明に係る低反射部材の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る低反射部材は、パソコン、モバイルPC、タブレットPC、スマートフォンなどのディスプレイ、そのようなディスプレイのカバー部材、光学フィルター、筐体の内部に収容される光学要素(例えば、レンズ、レンズを覆うカバー部材)として用いることができる。また、車載カメラ、車載用センサー、あるいは、防犯カメラ等の光学要素についても用いることが出来る。
図1は低反射部材の断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る低反射部材100は、第1面11及び第2面12を有するガラス板1と、このガラス板1の第1面11に積層される低反射膜2と、を備えている。そして、この低反射部材100は、上述したディスプレイなどの被保護部材200を覆うように配置される。このとき、ガラス板1の第2面12が被保護部材200と向き合うように配置され、低反射膜2が外部を向くように配置される。以下、詳細に説明する。
<1.ガラス板>
ガラス板1は、例えば、汎用のソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等その他のガラスにより形成することができる。また、ガラス板1は、フロート法により成形することができる。この製法によると平滑な表面を有するガラス板1を得ることができる。但し、ガラス板1は、主面に凹凸を有していてもよく、例えば型板ガラスであってもよい。型板ガラスは、ロールアウト法と呼ばれる製法により成形することができる。この製法による型板ガラスは、通常、ガラス板の主面に沿った一方向について周期的な凹凸を有する。
フロート法は、溶融スズなどの溶融金属の上に溶融ガラスを連続的に供給し、供給した溶融ガラスを溶融金属の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボンと称する。
ガラスリボンは、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属からローラにより引き上げられる。そして、ローラによって徐冷炉へと搬送され、徐冷された後、切断される。こうして、フロートガラス板が得られる。
ガラス板1の厚さは、特に制限されないが、軽量化のためには薄いほうがよい。例えば、0.1~5mmであることが好ましく、0.1~2.5mmである事がさらに好ましい。これは、ガラス板1が薄すぎると、強度が低下するからであり、厚すぎると、ガラス部材10を介して視認される被保護部材200に歪みが生じるおそれがある。
ガラス板1は、通常、平板であってよいが、曲板であってもよい。特に、保護すべき被保護部材200の表面形状が曲面等の非平面である場合、ガラス板1はそれに適合する非平面形状の主面を有することが好ましい。この場合、ガラス板1は、その全体が一定の曲率を有するように曲げられていてもよく、局部的に曲げられていてもよい。ガラス板1の主面は、例えば複数の平面が曲面で互いに接続されて構成されていてもよい。ガラス板1の曲率半径は、例えば5000mm以下とすることができる。この曲率半径の下限値は、例えば、10mm以上とすることができるが、特に局部的に曲げられている部位ではさらに小さくてもよく、例えば1mm以上とすることができる。
次のような組成のガラス板を用いることもできる。以下では、ガラス板1の成分を示す%表示は特に断らない限り、すべてmol%を意味する。また、本明細書において、「実質的に構成される」とは、列挙された成分の含有率の合計が99.5質量%以上、好ましくは99.9質量%以上、より好ましくは99.95質量%以上を占めることを意味する。「実質的に含有しない」とは、当該成分の含有質が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下であることを意味する。
ガラス板1に使用できるガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩ガラス」には、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含むものとする。
ガラス板1に使用できるガラスとしては、高屈折率ガラス組成であり、例えば、酸化物基準のモル%表示で、高屈折率成分であるTiO2、Ta25、WO3、Nb25、ZrO2およびLn23(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)からなる群から選ばれる少なくとも1種を30%~80%、ガラス骨格成分であるSiO2とB23の合量が20%~70%、アルカリ土類金属成分(MgO、CaO、SrO、BaO)を含む場合にはアルカリ金属成分のうちBaOを含む割合が0.5以下である。
さらに、このガラス板1は、溶融したガラスをフロート法、フュージョン法、ロールアウト法といった成型方法によって板状に成形することで得ることができる。また、溶融したガラスを一旦ブロック状に成形したのち、リドロー法等でガラス板1を得ることができる。また、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等の手段を用いて、ガラス板1を作製できる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のレンズプリフォームを作製し、このレンズプリフォームに対してリヒートプレス成形した後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、例えば研磨加工を行って作製したレンズプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりできる。なお、ガラス板1を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
本発明者は、フロート法によるガラス板の製造に適したガラス組成として広く用いられているフロート板ガラスの組成(以下、「狭義のSL」、または単に「SL」と呼ぶことがある)を元に、当業者がフロート法に適したソーダライムシリケートガラス(以下、「広義のSL」と呼ぶことがある)と見做している組成範囲、具体的には、以下のような質量%の範囲内で、T2、T4等の特性をできるだけ狭義のSLに近似させながら、狭義のSLの化学強化特性を向上させることのできる組成物を検討した。
SiO2 65~80%
Al23 0~16%
MgO 0~20%
CaO 0~20%
Na2O 10~20%
2O 0~5%
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ガラスは、好ましくは、次の組成(質量%):である
SiO2 63~84%
Al23 0~8%
23 5~18%
(Li2O+Na2O+K2O) 3~14%
(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 0~12%
ZrO2 0~4%
25 0~2%
(密度(比重):d)
上記組成より、本実施形態では、ガラス板1の密度を2.53g・cm-3以下、さらには2.51g・cm-3以下、場合によっては2.50g・cm-3以下にまで減少させることができる。
フロート法などでは、ガラス品種間の密度の相違が大きいと、製造するガラス品種を切り換える際に溶融窯の底部に密度が高い方の溶融ガラスが滞留し、品種の切り換えに支障が生じる場合がある。現在、フロート法で量産されているソーダライムガラスの密度は約2.50g・cm-3である。したがって、フロート法による量産を考慮すると、ガラス板1の密度は、上記の値に近いこと、具体的には、2.45~2.55g・cm-3、特に2.47~2.53g・cm-3が好ましく、2.47~2.50g・cm-3がさらに好ましい。
(弾性率:E)
イオン交換を伴う化学強化を行うと、ガラス基板に反りが生じることがある。この反りを抑制するためには、ガラス板1の弾性率は高いことが好ましい。本発明によれば、ガラス板1の弾性率(ヤング率:E)を70GPa以上、さらには72GPa以上にまで増加させることができる。
以下、ガラス板1の化学強化について説明する。
(化学強化の条件と圧縮応力層)
ナトリウムを含むガラス板1を、ナトリウムイオンよりもイオン半径の大きい一価の陽イオン、好ましくはカリウムイオン、を含む溶融塩に接触させ、ガラス板1中のナトリウムイオンを上記の一価の陽イオンによって置換するイオン交換処理を行うことにより、本発明によるガラス板1の化学強化を実施することができる。これによって、表面に圧縮応力が付与された圧縮応力層が形成される。
溶融塩としては、典型的には硝酸カリウムを挙げることができる。硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混合溶融塩を用いることもできるが、混合溶融塩は濃度管理が難しいため、硝酸カリウム単独の溶融塩が好ましい。
強化ガラス部材における表面圧縮応力と圧縮応力層深さとは、該物品のガラス組成だけではなく、イオン交換処理における溶融塩の温度と処理時間によって制御することができる。
以上のガラス板1は、硝酸カリウム溶融塩と接触させることによって、表面圧縮応力が非常に高く、かつ、圧縮応力層の深さが非常に深い強化ガラス部材を得ることができる。具体的には、表面圧縮応力が700MPa以上かつ圧縮応力層の深さが20μm以上である強化ガラス部材を得ることができ、さらに圧縮応力層の深さが20μm以上かつ表面圧縮応力が750MPa以上である強化ガラス部材を得ることもできる。
なお、厚みが3mm以上のガラス板1を用いる場合には、化学強化ではなく、風例強化を一般的な強化方法として用いることができる。強化処理は、カバー部材としては一般的に実施されるが、用途や要求される特性によっては必須ではない。また、強化処理は、(後述の)機能膜形成に先立って実施されることが多いが、機能膜の機能発現に阻害がない限り、機能膜形成後に実施されても構わない。
<2.低反射膜>
<2-1.低反射膜の組成>
次に、図2を参照しつつ、低反射膜について説明する。図2は低反射膜の断面図である。図2に示すように、低反射膜2は、中空微粒子21と、バインダー22とを備えている。バインダー22は、主としてシリカとポリシルセスキオキサンによって形成され、中空微粒子21を結着する。
<2-1-1.バインダ>
バインダ22におけるポリシルセスキオキサンの含有率は、例えば、30~70質量%であり、好ましくは40~70質量%であり、より好ましくは50~60質量%である。バインダ22におけるポリシルセスキオキサンの含有率は、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)及びSi-NMR等の分光学的手法、元素分析による化学的手法、又は熱重量測定(TG)等の熱分析手法により求めることができる。
バインダ22を形成しているシリカは、例えば、四官能性アルコキシシランを加水分解及び脱水縮合することにより形成されている。また、バインダ22を形成しているポリシルセスキオキサンは、例えば、三官能性アルコキシシランを加水分解及び脱水縮合することにより形成されている。このように、バインダ22は、例えばゾルゲル法を利用して形成される。これにより、バインダ22が緻密な構造を有しやすい。
バインダ22を形成しているポリシルセスキオキサンは、例えば、炭素数が16以下、好ましくは1~5のアルキル基がケイ素原子に結合しているポリシルセスキオキサンである。この場合、バインダ22が緻密になりやすく、バインダ22が適切な撥水作用を発揮できる。これにより、酸化亜鉛含有複合粒子1は、より確実に、高い耐酸性を有し、かつ、水に接触しても長期の安定性を有する。加えて、酸化亜鉛含有複合粒子1は、より確実に、水中で良好に分散できる。アルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
バインダ22を形成しているポリシルセスキオキサンは、望ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、及びポリプロピルシルセスキオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリシルセスキオキサンを含む。ポリメチルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つのメチル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。ポリエチルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つのエチル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。ポリプロピルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つの1-プロピル基又は1つの2-プロピル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。また、ポリシルセスキオキサンとしては、例えば、メチルトリエトキシシランを用いることができる。
また、バインダ22には、断面面積が700nm2以下のボイド23および断面面積が1000nm2以上の複数のボイド23の少なくとも一方が含有されていてもよい。また、断面面積が1000nm2以上のボイド23の個数は、バインダ22の断面面積1μm2に対して10個/μm2以下とすることができる。
<2-1-2.中空微粒子>
中空微粒子21は、中空構造を有する限り特に制限されないが、例えば、球状、筒状、シート状の形状を有する。中空微粒子21は、例えば、10~150nmの平均粒子径(一次粒子径)を有する。これにより、低反射膜2において中空微粒子21が均一に分散しやすい。中空微粒子21の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された50個以上の中空微粒子21の粒子径を算術平均することにより決定できる。なお、各粒子の粒子径は最大径を意味する
中空微粒子21は、望ましくは20~100nmの平均粒子径を有し、より望ましくは30~70nmの平均粒子径を有する。なお、中空微粒子21における内部空間の最大寸法は、例えば5~100nmであり、望ましくは10~70nmであり、より望ましくは20~50nmである。中空微粒子21は、望ましくは、0.1以下の変動係数を有する単分散粒子である。
中空微粒子21の材料は、例えば、1.15~2.70の屈折率を有する材料であれば、無機材料又は有機材料であってもよい。中空微粒子21の材料は、望ましくは1.20~2.00の屈折率を有する材料であり、より望ましくは1.18~1.40の屈折率を有する材料であり、さらに望ましくは1.20~1.35の屈折率を有する材料である。外力に対する変形のしにくさの観点から、中空微粒子21は、望ましくは、無機材料でできている。この場合、中空微粒子21は、例えば、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1つでできている。
なかでも、低反射膜2を用いた低屈折率コーティングによって高い反射防止性能を有する反射防止構造を提供するために、中空微粒子21は、望ましくはシリカ又はフッ化マグネシウムでできている。なお、シリカの屈折率は1.46であり、フッ化マグネシウムの屈折率は1.38である。
中空微粒子21の構造及び材料は、中空微粒子21が所望の屈折率を有するように定められている。例えば、中空微粒子21が所望の屈折率を有するように、中空微粒子21の材料及び中空微粒子21の全体の体積に対し内部空間が占める割合が定まっている。
中空微粒子21の屈折率は、例えば、液浸法(ベッケ線法)によって測定できる。例えば、中空微粒子21がシリカでできている場合、以下の手順に従って中空微粒子21の屈折率を測定できる。(i)中空微粒子21の分散液の分散媒を蒸発及び乾燥させて粉末を得る。(ii)(i)で得た粉末をGARGILL社製のシリーズA及びシリーズAA等の異なる屈折率を 有する様々な標準屈折率液と混合する。(iii)(ii)で得た混合液が透明になったときに用いた標準屈折率液の屈折率を中空微粒子21の屈折率と決定する。
中空微粒子21は、市販されているものであってもよいし、所定の方法で作製されたものであってもよい。例えば、中空微粒子21は、コアの周囲にシェルを形成して、コアを除去して作製してもよい。例えば、数十ナノメートルの粒子径を有するポリマーコアの周囲にシリカでできたシェル又はフッ化マグネシウムでできたシェルを形成する。その後、ポリマーコアを溶媒への溶解又は燃焼により除去して、中空シリカ粒子又は中空フッ化マグネシウム粒子である中空微粒子21を得ることができる。また、シリカでできたコアのまわり にフッ化マグネシウムでできたシェルを形成し、シリカでできたコアをアルカリで溶解することによっても、中空フッ化マグネシウム粒子である中空微粒子21を得ることができる。
<2-1-3.中空微粒子とバインダーとの質量比>
低反射膜2において、中空微粒子21の質量Whとバインダー22の質量Wbとの比(Wb:Wh)は、例えば、50:50~99:1であることが好ましく、75:25~98:2であることがさらに好ましく、75:25~95:5であることが特に好ましい。
例えば、バインダー22の質量比が小さいと、成膜後の低反射膜2から中空微粒子21の多くが露出する可能性があるため、屈折率が下が低反射眩機能が向上するが、中空微粒子21を結着する機能が低下するため、耐摩耗性が低下するおそれがある。一方、バインダー22の質量比が大きいと、中空微粒子21を結着する機能は向上するため、耐摩耗性能は向上するが、中空微粒子21が低反射膜2内に埋没するため、屈折率が向上し低反射機能が低下するおそれがある。この観点から、バインダー22の質量比を上記のようにすることが好ましい。
低反射膜2の厚みは、特に限定されないが、上記のような中空微粒子21とバインダー22の質量比である限り、例えば、50~100nmとすることができる。
なお、本発明の低反射膜2はガラス板1に直接積層されるものに限らない。例えば、ガラス板1と低反射膜2との間にSiO2、TiO2、MgO2等からなる下地層があってもよい。下地層は、例えば、蒸着法、スパッタ法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法等で積層することができるが、これらの積層方法に限定されるものではない。
<2-2.低反射膜の製造方法>
低反射膜2は、例えば、所定の液状組成物(塗工液)を硬化させて得られた硬化物である。この液状組成物は、主として、中空微粒子21と、シリカと、ポリシルセスキオキサンと、溶媒とを含有している。
低反射膜用の塗工液は、スピンコート、ロールコート、スプレイコートなど種々の方法で塗工することができる。そして、塗工後、200℃以上で熱処理を行うことで、低反射膜2を生成する。そのため、溶媒には、沸点が200℃以上の溶媒を含有することができる。
このような沸点が200℃以上としては、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール等を用いることができ、塗工液中に、例えば、30~80重量%含有することが好ましいが、高沸点の溶媒に加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン等が混合されていてもよい。
<3.低反射膜の性能>
<3-1.低反射膜の光学性能>
十分な低反射性能を奏するために、低反射膜2の屈折率は、例えば1.20未満であることが好ましく、1.16以下であることがさらに好ましい。このような低屈折率のためには、上述したバインダー22中のボイドが寄与する。なお、屈折率の測定には、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製、製品名:U-4000)を用いた。後述する各実施例及び比較例において反射率を測定し、反射率分光法に従って各実施例及び比較例に係る低屈折率膜の屈折率を決定した。
<3-2.低反射膜の耐摩耗性能>
耐摩耗試験として、以下に示す綿棒手拭き法を用いた。図3に示すように、先端に綿棒が取り付けられた棒状の治具を低反射膜に対して垂直に設置した。そして、治具を低反射膜に対して所定の荷重で押しつけ、所定回数往復させた。そして、動摩擦係数を測定するとともに、低反射膜の表面性状を観察した。なお、綿棒は、日本綿棒製 工業用綿棒(P3D-100)を用いた。
<3-2-1.綿棒手拭き法;「一回摩耗試験」手拭き後の剥離の観察>
この綿棒手拭き法においては、一定の荷重、つまり、おもりなし、1g、6g、20g、50g、100g、150g、200g、300gで綿棒を低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した。このときに、低反射膜が剥離しなかった場合はOKとする。また、前記荷重で綿棒を低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1掃引したときに、低反射膜が剥離した場合には、その剥離が生じたときの荷重よりも一つ軽い荷重を測定し、その荷重を「耐摩耗荷重」とする。
<3-2-2.綿棒手拭き法;手拭き前後での動摩擦係数の変化>
また、この綿棒手拭き法において、100gの荷重で綿棒を低反射膜に押しつけ3cmの距離を10往復した場合に、1回目の往復時の動摩擦係数と10回目の往復時の動摩擦係数の変化が0.2以下であり、0.1以下であることが好ましい。また、動摩擦係数の変化率(上記変化/1回目の往復時の動摩擦係数)は、40%以下であることが好ましい。
<4.特徴>
本実施形態に係る低反射部材100は、以下の効果を奏することができる。
(1)低反射膜2に中空微粒子21が含有されているため、低屈折率を実現し、これによって低反射性能を向上することができる。
(2)中空微粒子21の質量Whとバインダー22の質量Wbとの比(Wb:Wh)を上記のように調整しているため、低反射性能と耐摩耗性能とを両立することができる。
(3)塗工液に高沸点の溶媒が含有されているため、低反射膜2が生成される際のゾルゲルの縮重合反応が進んだ後で、高沸点の溶媒が蒸発する。そのため、低反射膜2の耐摩耗性が向上する。また、ゾルゲルの縮重合反応が進んだ後での溶媒の蒸発により、上述したボイドが形成される。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例には限定されない。
(1)実施例及び比較例の準備
厚みが0.21mm、76mmx76mmのガラス板(ショット社製D263)上に、低反射膜を積層することで、実施例、比較例1,2に係る低反射部材を形成した。
表1の組成を有する塗工液を調製した(単位は質量%)。塗工液の全量は、1.0gとした。
・シリカ(バインダ):正珪酸エチル(多摩化学工業社製)
・メチルトリエトキシシラン(MTES)(バインダ):KBE-13(信越シリコーン社製)
・シリカ中空微粒子:THRULYA(日揮触媒化成社製)
・レベリング剤:KP341(信越シリコーン社製)
・PGME(溶媒):1-メトキシ-2-プロパノール(東京化成工業社製)
・グリセリン(溶媒):グリセリン(林純薬工業社製)
次に、このコーティング液をフローコーティングによりガラス板上に、厚みが100nm程度となるように塗布し、10分間の自然乾燥の後、200℃に設定したオーブン内で10分加熱し、低反射膜を形成した。こうして、実施例1,2、比較例に係る低反射部材が完成した。
(2) 評価
実施例1,2及び比較例における低反射膜の断面をSEMにより撮影した。図4は実施例1であり、図5は実施例2であり、図6は比較例である。実施例1,2では、中空微粒子間の隙間がバインダーにより埋められており、中空微粒子が十分に結着されることがよく分かる。一方、比較例は、中空微粒子間の隙間が多く見られ、中空微粒子がバインダによって十分に結着されていないことが分かる。
また、実施例1,2及び比較例の低反射部材に対し、以下の試験を行った。結果は、表2に示すとおりである。
(2-1) 光学特性
上述した方法で、屈折率を測定した。
(2-2) 耐摩耗試験
耐摩耗試験として、上述した綿棒手拭き法を採用し、耐摩耗荷重と動摩擦係数の変化を計測した。結果は以下の通りである。
表1に示すように、実施例1では溶媒にグリセリンが含有されているものの、実施例1,2の固形成分の組成は同じである。表2に示すように、実施例1は溶媒にグリセリンが含有されているため、高温での処理が可能であり、実施例2に比べ屈折率が下がっている。しかし、耐摩耗荷重は実施例2に比べて低くなっている。一方、比較例は、中空微粒子間が素になっているため、屈折率は低いものの、耐摩耗性は低く、1gの荷重でも低反射膜が剥離した(したがって、結果は0gである)。実施例1,2は、いずれも耐摩耗荷重が100g以上になっている。すなわち、綿棒を100g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも低反射膜が剥離しない。したがって、高い耐摩耗性能を有していることが分かった。
動摩擦係数の変化の推移については、図7に示している。図7に示すように、実施例2は、綿棒を10往復しても動摩擦係数にはほとんど変化がなかった。一方、実施例1,比較例は綿棒の往復回数が増えるにつれ、動摩擦係数が大きくなっているが、実施例1は往復回数が5回を過ぎると、動摩擦係数の増加の程度が低くなっており、10回往復後の変化は0.20より低くなっている。比較例は動摩擦係数が増加を続け、10回往復後の変化は0.28となっている。動摩擦係数が大きくなるにつれ、低反射膜に傷が生じ剥がれるおそれがある。特に、動摩擦係数の変化が0.20を上回ると、以下のように低反射膜が剥がれることを確認している。
図8は動摩擦係数の変化を測定した際の、比較例における摩耗前と摩耗後の低反射膜の拡大図である。図8に示す白色の多い領域Bは、多少傷が生じているものの低反射膜が残存していることを示している。一方、濃い色の多い領域Aは、低反射膜ではなくガラス板が映り込んでいる。すなわち、低反射膜がガラス板から剥がれ、残存していないことを示している。一方、図示を省略するが、実施例1,2は低反射膜が残存していた。したがって、動摩擦係数の変化は0.20以下であることが好ましいことが分かった。
1 ガラス板
2 低反射膜
21 中空微粒子
22 バインダー
100 低反射部材
200 被保護部材

Claims (16)

  1. 第1面及び第2面を有するガラス板と、
    前記第1面に形成され、前記ガラス板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低反射膜と、
    を備え、
    前記低反射膜は、
    中空微粒子と、
    バインダと、
    を備え、
    前記低反射膜に対し、綿棒を10g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、
    低反射部材。
  2. 第1面及び第2面を有するガラス板と、
    前記第1面に形成され、前記ガラス板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低反射膜と、
    を備え、
    前記低反射膜は、
    中空微粒子と、
    バインダと、
    を備え、
    100gの荷重で織布を前記低反射膜に押しつけ、3cmの距離を10回往復したときに、1回目の往復時の動摩擦係数と10回目の往復時の動摩擦係数の変化が0.2以下である、
    低反射部材。
  3. 前記低反射膜において、
    前記中空微粒子と前記バインダとの質量比が、50:50~99:1である、請求項1または2に記載の低反射部材。
  4. 前記低反射膜において、
    前記中空微粒子と前記バインダとの質量比が、70:30~95:5である、請求項1または2に記載の低反射部材。
  5. 前記バインダは、
    シリカと
    ポリシルセスキオキサンと、を含む
    請求項1または2に記載の低反射部材。
  6. 屈折率が、1.20未満である、請求項1または2に記載の低反射部材。
  7. 屈折率が、1.18以下である、請求項1または2に記載の低反射部材。
  8. 前記中空微粒子の間に1000nm2以上の断面積をもつ空隙が形成されている、を有する、請求項1または2に記載の低反射部材。
  9. 前記バインダ中にさらに700nm2以下の断面積をもつ空孔を有する、請求項1または2に記載の低反射部材。
  10. 前記低反射膜に対し、綿棒を50g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、請求項1または2に記載の低反射部材。
  11. 前記低反射膜に対し、綿棒を100g以上の荷重で低反射膜に押しつけ、3cmの距離を1回掃引した後でも前記低反射膜が剥離しない、請求項1または2に記載の低反射部材。
  12. 鉛筆硬度が2Bより高い、請求項1または2に記載の低反射部材。
  13. 筐体の内部に収容される光学要素として使用可能な、請求項1または2に記載の低反射部材。
  14. 前記光学要素はレンズである、請求項13に記載の低反射部材。
  15. 前記光学要素はカバー部材であり、
    前記低反射膜は前記筐体の内部を向くように配置される、請求項13に記載の低反射部材。
  16. ガラス板上に塗布される低反射膜用の塗工液であって、
    中空微粒子と、
    バインダと、
    200℃以上の沸点の溶媒と、
    を含む、低反射膜用の塗工液。
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