JP2009084476A - コーティング用組成物及びその製造方法、並びに該コーティング用組成物からなる塗膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】下地基材に塗布した際にレベリング性が良く、膜欠陥を生じにくく、下地基材との密着性が高い透明塗膜を容易に形成可能な常温硬化型のコーティング用組成物を提供する。
【解決手段】アルコキシシラン加水分解物と、前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、アミノアルキルアルコキシシランと、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃の有機溶媒から選ばれる1種以上の溶媒と、を含むコーティング用組成物。
【選択図】なし
【解決手段】アルコキシシラン加水分解物と、前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、アミノアルキルアルコキシシランと、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃の有機溶媒から選ばれる1種以上の溶媒と、を含むコーティング用組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、建築物や自動車の窓ガラスや透明プラスチック板等の透明な下地基材の表面に形成する常温硬化型のコーティング用組成物及びその製造方法、並びに該コーティング用組成物からなる塗膜に関する。
下地基材の表面保護や透過する光量の制御を目的として、採光用ガラスや透明プラスチック等の透明な下地基材の表面に無色あるいは着色透明な塗膜を形成させることが行われている。特に太陽光や外気にさらされる屋外の窓ガラスなどの下地基材に形成される場合、耐久性の高い非晶質シリカ(SiO2)を主成分とする透明塗膜(以下、単に透明塗膜、あるいは塗膜ともいう。)が特に好適に用いられる。また、このような透明塗膜に特に赤外線・紫外線吸収剤を含有させることで室内温度の上昇の原因となる赤外線や人体に有害な紫外線の透過を抑制することができるため実用的である。
このような塗膜は可視光が十分に透過し、通常の清掃などで傷が入らない程度の硬度があり、平坦で均一厚みであることが必要である。さらにこのような塗膜に赤外線吸収剤や紫外線吸収剤を含有させた場合においても、赤外線・紫外線吸収性だけでなく、塗膜の均一性、可視光透過性を有することが必要である。
このような非晶質シリカを主成分とする塗膜は、アルコキシシラン化合物を含むコーティング用組成物(以下、単にコーティング用組成物ともいう。)を、下地基材の上に塗布し、塗布したコーティング用組成物が乾燥し、硬化することで形成される。
ところで、屋外の窓ガラスなどに非晶質シリカを主成分とする透明塗膜を形成する場合、常温硬化型のコーティング用組成物を使用することが望ましい。このような常温硬化型のコーティング用組成物について、例えば下記の特許文献1、2に記載されている。
非晶質シリカを主成分とする透明塗膜は、常温硬化型のコーティング用組成物に含有されるアルコキシシラン化合物を触媒で加水分解することで生成したシラノール(−Si−OH)が、脱水縮合し連結することで硬化する。以下にその反応を簡単に説明する。
アルコキシシラン化合物(Si−(OR)4、R:アルコキシル基)の加水分解は以下のように進行する。
Si−(OR)4+H2O → HO−Si−(OR)3+R−OH
HO−Si−(OR)3+H2O → (HO)2−Si−(OR)2+R−OH
(HO)2−Si−(OR)2+H2O → (HO)3−Si−OR+R−OH
(HO)3−Si−OR+H2O → Si−(OH)4+R−OH
Si−(OR)4+H2O → HO−Si−(OR)3+R−OH
HO−Si−(OR)3+H2O → (HO)2−Si−(OR)2+R−OH
(HO)2−Si−(OR)2+H2O → (HO)3−Si−OR+R−OH
(HO)3−Si−OR+H2O → Si−(OH)4+R−OH
すなわち、加水分解により、アルコキシシラン化合物に含まれるアルコキシル基がヒドロキシル基に置換され、アルコール(R−OH)が副生する。上記の反応は使用する水の量により、加水分解の程度は適宜調節することができるが、均一な組成にするためには加水分解が完全に進んだ方が望ましい。
さらに、加水分解することでシラノール(−Si−OH)を生成し、次に2つの分子間のシラノール基を脱水縮合反応することで、2つの分子が連結しシロキサン結合(Si−O−Si)を形成し、さらにシロキサン結合により連結した分子のシラノール基と他の分子のシラノール基が脱水縮合反応により連結することで非晶質シリカが形成される。
このようなアルコキシシラン化合物を含む常温硬化型のコーティング用組成物から塗膜を形成する場合、加水分解を十分に進行させるためにコーティング用組成物に十分量の水を含ませると、アルコキシシラン化合物が成分分離するという問題が生じる。さらに形成された塗膜の硬度、下地基材との密着性の低下が起こりやすい。また、コーティング用組成物に水分を含ませると保存の時に一定の品質にすることが困難である。そのため、コーティング用組成物に含まれる水分量は必要最低にとどめることが望ましく、主溶媒として有機溶媒を使用することが望ましい。
しかしながら、特許文献1、2に記載されているコーティング用組成物のように、コーティング用組成物の主溶媒にアルコールを使用すると蒸発が早すぎるため、アルコキシシランの加水分解、非晶質シリカのシラノール基の脱水縮合反応による連結が十分に進行しないまま乾燥し、膜質が不均一に成りやすいという問題がある。さらに常温で空気中の湿気等によって加水分解が進行し、その結果未反応のアルコキシル基が脱離する。乾燥後の塗膜内部から体積の大きいアルコキシル基が脱離する結果、塗膜中に内部応力が生じる。このことはひび割れ、白濁などの膜欠陥の原因となり、特に厚い膜を作製する場合において問題となる。逆に蒸発が遅い溶媒を使用した場合には、シラノールの脱水縮合反応は十分に進行するが、コーティング用組成物の液だれや、乾燥前に傷が付きやすいという問題がある。
また、屋外でコーティング用組成物を塗布する場合では、コーティング用組成物が常温硬化性であることに加えて、塗布作業自体が簡単であることが望まれている。ここで、塗布作業とは洗浄などの前処理を行った下地基材に、刷毛塗り、スポンジによる塗布、スプレーガンによる塗布(以下、スプレー塗布という。)などの塗布方法でコーティング用組成物を塗布することを指す。特に広い塗装面積に塗布むらなく均一に塗布するためにはスプレー塗布ができることが望ましい。しかしながら、従来のコーティング用組成物は、下地基材との親和性が低いため、スプレー塗布すると液滴になりやすく、均一な連続膜を形成することが困難である。厚い塗膜を形成する場合にはスプレー塗布では難しいことが多い。
そこで、本発明は上記課題の解決のため、保存安定性、塗布した際のレベリング性が高く、良好な透明性、下地基材との密着性、耐候性を兼ね備えた常温硬化型の透明塗膜を形成することができるコーティング用組成物を提供することを目的とする。
本発明のコーティング用組成物は、アルコキシシラン加水分解物と、前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、アミノアルキルアルコキシシランと、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性があり、沸点が120〜200℃の有機溶媒から選ばれる1種類以上の溶媒と、を含むことを特徴とする。
このような構成とすれば、塗膜のバインダー成分となる非晶質シリカの原料であるアルコキシシラン加水分解物と脱水縮合触媒である有機スズ化合物は両者ともアミノアルキルアルコキシシランとの親和性が高いため、アミノアルキルアルコキシシランを介して溶媒中に均一に混合することができる。
また、このコーティング用組成物の溶媒は、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃の有機溶媒の混合物であり、常温近傍では沸点が120℃未満である低級アルコール、沸点120〜200℃の有機溶媒の順番で蒸発する。そのため、コーティング用組成物を下地基材に塗布した場合において、短時間で指触乾燥し、適度な流動性を保ちつつ、常温で徐々に硬化する。そのため、塗膜のレベリング性がよく、塗布むらが生じにくい。なお、上記有機溶媒の沸点が、120℃未満で場合は、低級アルコールとの蒸発速度の差が大きくないため好ましくなく、200℃より高い場合は常温での蒸発速度が遅すぎて指触乾燥に長時間を要するため好ましくない。
また、このコーティング用組成物の溶媒は、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃の有機溶媒の混合物であり、常温近傍では沸点が120℃未満である低級アルコール、沸点120〜200℃の有機溶媒の順番で蒸発する。そのため、コーティング用組成物を下地基材に塗布した場合において、短時間で指触乾燥し、適度な流動性を保ちつつ、常温で徐々に硬化する。そのため、塗膜のレベリング性がよく、塗布むらが生じにくい。なお、上記有機溶媒の沸点が、120℃未満で場合は、低級アルコールとの蒸発速度の差が大きくないため好ましくなく、200℃より高い場合は常温での蒸発速度が遅すぎて指触乾燥に長時間を要するため好ましくない。
さらに、上記の構成において、塗膜の主成分となる非晶質シリカの原料として、ほとんどのアルコキシル基が加水分解しヒドロキシル基に置換されているアルコキシシラン加水分解物を使用しているため、下地基材に塗布したコーティング用組成物が硬化する際に、未反応のアルコキシル基の成分が脱離することはない。そのため、アルコキシシラン加水分解物が徐々に脱水縮合反応によって、塗膜が硬化する際に生じる内部応力が小さく、ひび割れ、白濁などの膜欠陥が生じにくい。
また、アミノアルキルアルコキシシランは、上述のように有機スズ化合物とアルコキシシラン加水分解物とを均一に混合できるという機能を有することに加えて、アミノアルキルアルコキシシラン自体も加水分解することができる。加水分解したアミノアルキルアルコキシシランは脱水縮合反応によりアルコキシシラン加水分解物を架橋することができるため、塗膜の強度を向上させることができる。また、理由は明らかではないが、アミノアルキルアルコキシシランを含有することで、硬化した塗膜と下地基材との接着性が向上する効果がある。
また、本発明のコーティング用組成物において、アルコキシシラン加水分解物は平均分子量400〜1400の縮重合物であることが望ましい。アルコキシシラン加水分解物の平均分子量400より小さいと脱水縮合反応に時間がかかるため、塗膜の硬度不足、白濁などの膜欠陥の原因となる。一方、アルコキシシラン加水分解物の平均分子量が1400より大きいと、レベリング性の低下、下地との接着性の低下の原因となる。
さらに、本発明のコーティング用組成物において、前記低級アルコールと相溶性があり、沸点120〜200℃の有機溶媒は、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテルであることが望ましい。この有機溶媒がエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルであれば、コーティング用組成物を構成するすべての物質との親和性が特に高いことに加え、コーティング用組成物を塗布した後に指触乾燥するまでの時間を制御しやすいため、特に塗工性に優れるコーティング用組成物を作製することができる。
さらに、本発明のコーティング用組成物は、赤外線吸収剤と紫外線吸収剤のいずれかまたは両方を加えることができる。このような構成のコーティング用組成物から形成される塗膜は赤外線と紫外線のいずれかまたは両方を吸収することができる。
本発明のコーティング用組成物を硬化させた塗膜は、可視光透過率が70%以上であり、下地基材と密着性が高く、十分な硬度を有する。なお、可視光透過率が70%であれば、目視では透明であるため採光用のガラス等へ適用することができる。一方、可視光透過率が70%未満であると、塗膜は可視光を室内に十分に取り込むことができない。また、本発明のコーティング用組成物を硬化させた塗膜は赤外線透過率が40%以下であることが望ましい。赤外線透過率が40%以下であると、塗膜が熱線である赤外線を十分に吸収するため、採光用のガラス等に適用した場合に室内温度が上昇することを抑制することができる。赤外線透過率が40%より大きいと赤外線の遮断効果が小さく、室内温度上昇を抑制することができない。さらに、本発明のコーティング用組成物を硬化させた塗膜は、紫外線透過率が5%以下であることが望ましい。紫外線透過率が5%以下であれば、透過する紫外線は人体に悪影響を与える量以下であるため、塗膜は紫外線遮断膜として、採光用のガラス等に好適に使用できる。紫外線透過率が5%より大きいと紫外線の吸収が不十分であり、紫外線遮断膜として使用できない。
さらに、本発明のコーティング用組成物の製造方法は、アルコキシシラン加水分解物と、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性があり、前記沸点が120〜200℃の有機溶媒から選ばれる1種以上の溶媒とを含む第1溶液と、前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、アミノアルキルアルコキシシランと、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールとを含む第2溶液と、を混合することを特徴とする。
このような製造方法とすれば、第1溶液及び第2溶液を構成する原材料の親和性が高いため、両溶液を短時間で均一に混合することができる。そのため、第1溶液と第2溶液の混合条件を同じにすることで、常に粘度、密度などの溶液性質が一定であるコーティング用組成物を得ることができ、コーティング用組成物が硬化して形成する塗膜に高い均質性が得られる。
また、上記の製造方法であれば、第1溶液に塗膜のバインダー成分となる非晶質シリカの原料であるアルコキシシラン加水分解物が含まれ、第2溶液に脱水縮合触媒である有機スズ化合物が含まれており、これらの溶液を分離した状態で保管することができる。そのため、保存中の劣化の主原因であるアルコキシシラン加水分解物の脱水縮合の進行を防止することができることから、溶液性質を一定に保ったまま長期間保存できる。
本発明のコーティング用組成物を使用すると、下地基材に塗布した際にレベリング性が良く、乾燥過程及び硬化過程においてひび割れ、白濁などの膜欠陥を生じにくく、下地基材との密着性が高い常温硬化型の透明塗膜を形成することができる。さらに本発明のコーティング用組成物には赤外線吸収剤や紫外線吸収剤を均一に含有させることが可能であり、高い赤外線吸収性や紫外線吸収性を有する塗膜を形成することができる。また、本発明のコーティング用組成物は、長期安定性に優れ、溶液性質を一定にすることができることから、スプレー塗布用コーティング用組成物として特に好適に使用できる。
本発明の実施の形態におけるコーティング用組成物は、塗膜のバインダー成分となる非晶質シリカの原料であるアルコキシシラン加水分解物が含まれた第1溶液と脱水縮合触媒である有機スズ化合物が含まれた第2溶液とを混合したものである。
以下、本発明の実施の形態におけるコーティング用組成物の第1溶液及び第2溶液の各構成成分について説明する。
第1溶液は、アルコキシシラン加水分解物、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコール、前記低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃の有機溶媒から選ばれる1種以上の溶媒とを含む。また、これらの構成成分以外にも、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤などを必要に応じて入れることができる。なお、「アルコキシシラン加水分解物」は、アルコキシル基が完全に加水分解し、側鎖がヒドロキシル基のみであるアルコキシシランの加水分解縮合物であることが望ましいが、本発明の実施の形態においては、「アルコキシル基の加水分解が80%以上進み、側鎖のほとんどがヒドロキシル基であるアルコキシシランの加水分解縮合物」を使用する。
アルコキシシラン加水分解物の原料となるアルコキシシランとして、テトラアルコキシシランやトリアルコキシシランが好ましく用いられる。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられ、トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシランなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のアルコキシシランを加水分解し、脱水縮合反応を行うことでアルコキシシラン加水分解物を得ることができる。このアルコキシシランの加水分解及び脱水縮合反応は、従来公知に用いられている方法で行うことができる。
本発明の実施の形態における第1溶液に含まれるアルコキシシラン加水分解物の平均分子量は400〜1400とする。このような平均分子量であれば、特に塗工性及び形成された塗膜の均一性に優れる。
本発明の実施の形態における第1溶液に含まれるアルコキシシラン加水分解物の平均分子量は400〜1400とする。このような平均分子量であれば、特に塗工性及び形成された塗膜の均一性に優れる。
第1溶液に含まれる溶媒は、炭素数1〜4の低級アルコールとこの低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃以上の有機溶媒(以下、アルコール相溶性高沸点溶媒ともいう。)の混合物であり、極性の高いアルコキシシラン加水分解物を容易に溶解させることができる。前記低級アルコール及びアルコール相溶性高沸点溶媒はそれぞれ1種類ずつを使用してもよいし、それぞれ2種以上を組み合わせて用いることもできる。
炭素数1〜4の低級アルコールとして、メタノール(沸点64.5℃)、エタノール(沸点78.3℃)、イソプロパノール(沸点82.4℃)、ノルマルプロパノール(沸点97.2℃)、t−ブタノール(沸点82.4℃)、s−ブタノール(沸点99.5℃)、イソブタノール(沸点108℃)ノルマルブタノール(沸点117.7℃)がある。この中でも、特に沸点が75〜100℃である炭素数2〜3の低級アルコール(エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール)が特に好ましい。
前記低級アルコールは沸点が120℃未満であり、蒸気圧が高いため、常温でも容易に蒸発する。そのため、低級アルコールと相溶性がある沸点120〜200℃以上の有機溶媒(アルコール相溶性高沸点溶媒)と混合させることで、コーティング用組成物を塗布した後の乾燥時間を制御することができる。例えば、塗布後の乾燥時間を長くしたい場合は、沸点が低い低級アルコールを少なくし、アルコール相溶性高沸点溶媒を多くすればよく、反対に塗布後の乾燥時間を短くしたい場合は、沸点が低い低級アルコールを多くし、アルコール相溶性高沸点溶媒を少なくすればよい。このようなアルコール相溶性高沸点溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点136℃)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(沸点141℃)、プロピレングリコールプロピルエーテル(沸点150℃)、エチレングリコールt−ブチルエーテル(沸点152℃)、3-メトキシブタノール(沸点160℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル(沸点171.2℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)が挙げられる。このようなアルコール相溶性高沸点溶媒は、コーティング用組成物に含まれるアルコキシシラン加水分解物、低級アルコールとの親和性が高く、アルコール相溶性高沸点溶媒と低級アルコールの混合割合を適切にコントロールすることで、乾燥時間だけでなく第1溶液における固形成分の溶解度を制御することができる。このようなアルコール相溶性高沸点溶媒のなかでも、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテルは、低級アルコールとの相溶性が極めて良く、アルコキシシラン加水分解物などコーティング用組成物構成成分の溶解性が高いため、適量の低級アルコールと混合することで、乾燥時間を数十分程度に制御することができることから特に好適に使用できる。
第1溶液において、アルコキシシラン加水分解物(固形物換算)の濃度は、20〜60質量%にすることが好ましく、30〜50質量%にすることが特に好ましい。20質量%より小さいと、連続塗膜が形成できないという問題があり、60質量%より大きいと塗布むら、白濁などの膜欠陥の原因となる。
上述の第1溶液には、光吸収剤、光触媒、消臭剤など機能性材料を添加することができる。特に実用的な観点から赤外線吸収剤、紫外線吸収剤を含有させることが好適である。以下、第1溶液に含有させることができる赤外線吸収剤、紫外線吸収剤について説明する。
第1溶液に含有させる赤外線吸収剤は有機系、無機系のいずれでもよい。無機系の赤外線吸収剤としては、例えば、アンチモン−スズ酸化物(Antimony Tin Oxide、ATO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)などがある。有機系の赤外線吸収剤としては、例えばシアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物などがある。これらのうち、無機系の赤外線吸収剤は耐久性が高いため好ましく、特にATOは赤外線吸収性が高く、安価であるため好ましく使用することができる。なお、これらの赤外線吸収剤は分子レベルで分散していてもいいし、微粒子として分散していてもいいし、凝集していてもいい。無機系の赤外線吸収剤のうち、微粒子で用いる場合には、可視光透明性を有するために、粒子径が10〜200nm程度であることが望ましい。さらには、第1溶液に添加した際の分散性を高めるために、無機系の赤外線吸収剤微粒子のアルコール分散体を使用することが好ましい。赤外線吸収剤の添加量は特に規定しないが、実用的な観点からみて20質量%以下であることが望ましい。
第1溶液に含有させる紫外線吸収剤は無機系、有機系のいずれでもよい。無機系の紫外線吸収剤としては酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などがある。有機系の紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系が一般的であるが、それ以外でもよい。ベンゾフェノン系の具体的には2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。一般的に有機系の紫外線吸収剤は、無機系の紫外線吸収剤と比較して、少量の添加で十分に紫外線遮断することができるため好ましく用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤は分子レベルで分散していてもいいし、微粒子として分散していてもいいし、凝集していてもいい。紫外線吸収剤の添加量は特に規定しないが、実用的な観点からみて10質量%以下が望ましい。
上記の各成分で構成される第1溶液は公知の方法で作製できる。以下に好適な一例を示す。なお、第1溶液の溶媒の蒸発を防止するため、使用する容器は密閉できるものが望ましい。
密閉性の容器に低級アルコールに溶解させた所定量のアルコキシシラン加水分解物を入れ、振とう攪拌機に設置する。次に、少量の溶媒に分散させた赤外線吸収剤、紫外線吸収剤を順次添加し、均一になるまで攪拌する。さらにこの溶液を攪拌しながら、炭素数1〜4の低級アルコールからなる溶媒、アルコール相溶性高沸点溶媒を順次添加し、均一になるまで攪拌する。十分に攪拌を行った溶液を所定のフィルターを通し、密閉性の容器に保管する。
以下、第2溶液の各構成成分について説明する。
第2溶液は、アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物、アミノアルキルアルコキシシラン、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールを含む溶液であるが、これらの構成成分以外にも、界面活性剤、増粘剤などを必要に応じて入れることができる。
第2溶液は、アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物、アミノアルキルアルコキシシラン、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールを含む溶液であるが、これらの構成成分以外にも、界面活性剤、増粘剤などを必要に応じて入れることができる。
第2溶液に含まれる有機スズ化合物は、アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合を促進する脱水縮合触媒としての機能を有する。アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒に有機スズ化合物を使用すると、塗膜の乾燥後にも触媒機能が残るため、アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合反応が進行して塗膜がさらに硬化するという性質を有する。このような有機スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートなどがある。
第2溶液において、アミノアルキルアルコキシシランは、有機スズ化合物の溶媒として機能するほか、下記の低級アルコールとの相溶性が高く、第1溶液と混合させた際にアルコキシシラン加水分解物と有機スズ化合物とを均一に混合できる。さらに、アミノアルキルアルコキシシラン自体も加水分解し、加水分解したアミノアルキルアルコキシシランが脱水縮合反応によりアルコキシシラン加水分解物を架橋し、複数のアルコキシシラン加水分解物を連結することができる。また、アミノアルキルアルコキシシランは、塗膜と下地基材との接着性を向上させる効果という性質も有する。アミノアルキルアルコキシシランとしては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
第2溶液は、上記の有機スズ化合物及びアミノアルキルアルコキシシラン以外に希釈用溶媒として、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールを含有する。この希釈用溶媒がない場合、第1溶液と第2溶液を混合させた際に脱水縮合触媒である有機スズ化合物の濃度が高すぎるため、脱水縮合触媒を素早く分散させることが困難である。一方、希釈用の溶媒を加えることで、第2溶液中の脱水縮合触媒の濃度が低くすることができ、第1溶液と第2溶液を混合させた際に有機スズ化合物を素早く均一に分散させることができる。希釈用の溶媒には、脱水縮合触媒及びアミノアルキルアルコキシシランを均一に溶解あるいは分散でき、第1溶液との混合性が高いものである必要があるため、第1溶液と同種類の低級アルコールであることが望ましい。
第2溶液に含まれる有機スズ化合物の濃度は特に限定されないが、上記のように濃度が高すぎると第1溶液と混合させたときに、有機スズ化合物が均一に分散しづらいという問題が生じる。好適な各構成物濃度を例示すると、低級アルコール混合溶媒をバランスとして、有機スズ化合物を0.1〜5%、アミノアルキルアルコキシシラン5〜20%である。このような濃度範囲であれば、低級アルコール混合溶媒中に均一に溶解でき、さらに第1溶液と短時間で均一に混合することが可能である。
上記の各成分で構成される第2溶液は公知の方法で作製できる。以下に、好適な一例を示す。なお、第2溶液の溶媒の蒸発を防止するため、容器は密閉できるものが望ましい。
密閉性の容器に炭素数1〜4の低級アルコールからなる希釈用溶媒を入れ、振とう攪拌機に設置する。次に、アミノアルキルアルコキシシランに溶解した有機スズ化合物を滴下し、均一になるまで攪拌する。十分に攪拌を行った溶液を所定のフィルターを通し、密閉性の容器に保管する。
以下、本発明の実施の形態におけるコーティング用組成物の製造方法及び塗布方法を説明する。
上記第1溶液と第2溶液の混合割合により、塗膜の乾燥時間及び硬化時間を制御できる。第1溶液と第2溶液の混合割合は、目的及び用途に合わせて適宜決定すればよいが、塗膜の主成分である非晶質シリカの原料を含む第1溶液に、その硬化剤として機能する第2溶液を少量添加して混合する場合が多い。
第1溶液と第2溶液の混合方法は、両溶液を短時間に均等に混合できれば良い。本発明のコーティング用組成物は密閉性容器中で攪拌、混合する場合が多いため、特に振とう攪拌法による混合が好ましく適用される。
コーティング用組成物を塗布する、下地基材としては、ガラスをはじめとした無機系基材、プラスチックをはじめとした有機系基材のいずれにも使用できる。特に透明ガラス、プラスチック板などは望ましい。本発明のコーティング用組成物は下地基材の特別な洗浄や表面改質処理を行わなくても、均等に塗布可能である。すなわち、希釈した弗化水素水、アルコールなどを使用し、下地基材の汚れを取り除くのみよい。
本発明のコーティング用組成物の下地基材への塗布方法は特に限定されず、従来公知の塗布方法で行うことができる。すなわち、刷毛塗り塗装、バーコーター塗装、スポンジ塗装、スプレー塗装などが挙げられる。この中でも、広い面積に均一に塗布が可能なスプレー塗装が好ましく、特に低圧温風ガンを使用したスプレー塗布が好ましい。
本発明のコーティング用組成物を下地基材に塗布した後の塗膜の乾燥時間は、コーティング用組成物における第1溶液と第2溶液の混合割合及び塗布量で変化するが、少なくとも塗布後20分以上60分以下にすることが可能である。乾燥時間を20分以上にすることで、塗膜の流動性が十分な時間保たれ、特別なレベリング処理をしなくとも平坦で均一な膜厚の連続膜を形成できる。乾燥時間を60分以下にすることで、液だれなどの問題を防ぐことができる。
塗膜の硬化時間は、コーティング用組成物における第1溶液と第2溶液の混合割合及び塗布量で変化するが、通常、常温下においては3〜4日で4Hの硬度までコーティング用組成物を硬化させることができる。そのため、硬化した塗膜は、清掃などの際に磨いても傷つくことはない。
塗膜の膜厚は任意に調節することができるが、膜欠陥のない連続膜とするためには1〜20μmにすることが望ましい。膜厚を1〜20μmとすることで70%以上の可視光透過率を確実に有することができる。また、可視光透過率を70%以上、赤外線透過率を40%以下にする場合には、塗膜の場合には膜厚を3〜15μmにすることが好ましく、可視光透過率を70%以上、紫外線透過率を5%以下にする場合には、膜厚を3〜15μmにすることが好ましい。
本発明の実施の形態における塗膜は、従来公知の剥離剤を用いて簡単に剥離することができる。そのため、何からの理由で施工が失敗し、塗膜にひび割れ、白濁などが生じた場合、塗膜を剥離し、再施工することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
塗膜の主成分となる非晶質シリカの原料である、アルコキシシラン加水分解物を含むコーティング用組成物の第1溶液は以下の各成分を混合することで作製した。
A液:アルコキシシラン加水分解物(平均分子量約1200)のエタノールとイソプロパノールの混合液に溶解した溶液(固形分濃度25質量%)
B液:アンチモンドープ酸化スズ(ATO)をエタノールに分散した溶液(固形分濃度30質量%)
C液:2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン粉末20gを、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%、ノルマルプロパノール10質量%からなる低級アルコールの混合物80gに分散した溶液
D液:エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル
E液:エタノール(85質量%)、イソプロパノール(5質量%)、ノルマルプロパノール(10質量%)の混合液
B液:アンチモンドープ酸化スズ(ATO)をエタノールに分散した溶液(固形分濃度30質量%)
C液:2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン粉末20gを、エタノール85質量%、イソプロパノール5質量%、ノルマルプロパノール10質量%からなる低級アルコールの混合物80gに分散した溶液
D液:エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル
E液:エタノール(85質量%)、イソプロパノール(5質量%)、ノルマルプロパノール(10質量%)の混合液
1000ml容量のポリ容器にA液200gを入れ、テフロン(登録商標)製の攪拌羽根を装備した攪拌器で攪拌しながらB液135gを加え、約15分攪拌混合後、C液30gを攪拌しながら加えた。約5分攪拌混合後、D液100gを攪拌しながら加えた。さらに約5分間攪拌混合後、E液35gを加えて十分攪拌、混合することで第1溶液を得た。この第1溶液には、ATOが8.1質量%、有機系紫外線吸収剤が1.2質量%、高沸点溶剤であるエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルが20質量%含まれる。なお、第1溶液をポリ容器内に常温で約3ヶ月密栓保存して、粘度をイワタ粘度カップNK−2で測定したところ、粘度の変化率が3%以内であり、高い保存安定性を示した。
第2溶液は以下の各成分を混合することで作製した。
F液:有機スズ化合物(10質量%)及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン(90質量%)の混合液
G液:エタノール(85質量%)、イソプロパノール(5質量%)、ノルマルプロパノール(10質量%)の混合液
G液:エタノール(85質量%)、イソプロパノール(5質量%)、ノルマルプロパノール(10質量%)の混合液
50ml容量の蓋付きポリ容器に、F液2.5gとG液22.5gを入れ密栓をした。このポリ容器を振とう攪拌機能を有する装置に装着し、約15分攪拌、混合することで第2溶液を得た。
第1溶液と第2溶液の混合物である、コーティング用組成物は以下の手順で作製した
250ml容量の蓋付きポリ容器に、上記第1溶液200gと上記第2溶液10gを入れ密栓をした。この250mlポリ容器を振とう攪拌機能を有する装置に装着し、約15分攪拌混合しコーティング用組成物(実施例)を作製した。このコーティング用組成物の粘度をイワタ粘度カップNK−2で測定したところ、25℃で7.6秒であった。
250ml容量の蓋付きポリ容器に、上記第1溶液200gと上記第2溶液10gを入れ密栓をした。この250mlポリ容器を振とう攪拌機能を有する装置に装着し、約15分攪拌混合しコーティング用組成物(実施例)を作製した。このコーティング用組成物の粘度をイワタ粘度カップNK−2で測定したところ、25℃で7.6秒であった。
厚み3mm、大きさ450mm×450mmのフロートガラスの塗布面を脱脂後、親水処理し、上記コーティング用組成物を低圧温風ガンで塗布量約30〜40g/m2になるようにスプレー塗布し、そのまま常温(約25℃)で硬化させることで塗膜を得た。
また、比較のため、以下のコーティング用組成物を作製し、上記実施例と同様の作製方法で塗膜を形成した。なお、比較例において特記している以外の成分は実施例と同一である。
比較例1:第1溶液のみからなる(第2溶液未混合)のコーティング用組成物
比較例2:エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル未配合の第1溶液を使用したコーティング用組成物
比較例3:非晶質シリカの原材料にアルコキシシラン加水分解物(平均分子量約350)を使用したコーティング用組成物
また、比較のため、以下のコーティング用組成物を作製し、上記実施例と同様の作製方法で塗膜を形成した。なお、比較例において特記している以外の成分は実施例と同一である。
比較例1:第1溶液のみからなる(第2溶液未混合)のコーティング用組成物
比較例2:エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル未配合の第1溶液を使用したコーティング用組成物
比較例3:非晶質シリカの原材料にアルコキシシラン加水分解物(平均分子量約350)を使用したコーティング用組成物
実施例及び比較例1から3について、塗布後のレベリング性(表面平滑性)、塗布3日後の塗膜硬度及びクラックの有無を評価した結果を表1に示す。なお、膜厚は塗布3日後の値であり、塗膜硬度は鉛筆強度で表示し、クラックの有無は目視で判断した。
実施例及び比較例1〜3のコーティング用組成物から形成した塗膜(塗布3日後)の透過率を、分光光度計(日本分光株式会社製V570)を用いて測定した結果を表2に示す。なお、可視光線透過率を波長500nm、赤外線透過率を波長1600nm、紫外線透過率を360nmでの透過率で表した。また、ブランクテストとして、3mm厚みのフロートガラスの各透過率の測定を行った。
実施例のコーティング用組成物を使用した場合、スプレー塗布直後の塗膜はやや凹凸が見られたが、時間が経つにつれレベリングし、10〜20分後には、凹凸の無い平滑な塗膜が得られ、約40分程度で指触乾燥した。また、塗膜硬度は塗布18時間後には2H程度であったが、時間の経過と共に硬化し、塗布3日後は5Hとなり、爪や布で擦ってもスリ傷が入ることは無かった。また、目視ではクラックは発見できなかった。また、ブランクテストとの比較で明らかなように、この塗膜を形成することで、可視光透過率をほとんど減少させることなく、赤外線及び紫外線の透過率が大きく減少していることがわかる。
一方、比較例1のコーティング用組成物を使用した場合においても、実施例と同様にスプレー塗布後10〜20分後で平坦な透明塗膜を得られ、約40分程度で指触乾燥した。しかしながら、塗膜は時間が経過しても硬化の進行が遅く、塗布3日後においても2H程度であり、それ以上日数が経過しても3H以上まで硬化することはなかった。なお、比較例1のコーティング用組成物から形成した塗膜の透過率は、実施例と同様に可視光透過率をほとんど減少させることなく、赤外線及び紫外線の透過率が大きく減少していた。
比較例2のコーティング用組成物を使用した場合では、スプレー塗布後の指触乾燥時間が約15分と実施例と比較して明らかに短く、指触乾燥時間の塗膜の表面平滑性が悪かった。また、硬化後(塗布3日後)には塗膜に明らかな凹凸が確認された。比較例2のコーティング用組成物から形成した塗膜の透過率は、赤外線透過率及び紫外線透過率は実施例と同程度であったが、可視光透過率は実施例と比較して低く、目視でも塗膜の透明性が低いことが確認された。
また、比較例3のコーティング用組成物を使用した場合、実施例と同様にスプレー塗布後10〜20分後で平坦な透明塗膜を得られ、約40分程度で指触乾燥した。しかしながら、塗布3日後には小さなクラックが多数確認された。なお、比較例3のコーティング用組成物から形成した塗膜はクラックが多すぎて透過率を測定することができなかった。
本発明のコーティング用組成物は簡易な方法で下地基材に塗布可能であり、常温で硬化することから、建築物及び自動車の窓ガラスや透明プラスチック板等の表面に透明保護膜を形成することができる。さらに赤外線・紫外線吸収剤を含有させることで、可視光透過型紫外線・赤外線遮断膜として使用することができる。
Claims (8)
- アルコキシシラン加水分解物と、
前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、
アミノアルキルアルコキシシランと、
1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、
前記低級アルコールと相溶性があり、沸点が120〜200℃の有機溶媒(以下、「アルコール相溶性高沸点溶媒」と称す。)から選ばれる1種類以上の溶媒と、
を含むコーティング用組成物。 - 前記アルコキシシラン加水分解物は、平均分子量400〜1400の縮重合物である請求項1記載のコーティング用組成物。
- 前記アルコール相溶性高沸点溶媒は、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテルである請求項1または2に記載のコーティング用組成物。
- 赤外線吸収剤または紫外線吸収剤のいずれかまたは両方を含む請求項1から3のいずれかの項に記載のコーティング用組成物。
- 請求項1から4のいずれかの項に記載のコーティング用組成物を下地基材に塗布し、硬化させることで形成された可視光透過率が70%以上の塗膜。
- 赤外線透過率が40%以下である請求項5記載の塗膜。
- 紫外線透過率が5%以下である請求項5または6に記載の塗膜。
- アルコキシシラン加水分解物と、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールと、前記低級アルコールと相溶性があり、沸点が120〜200℃の有機溶媒有機溶媒から選ばれる1種以上の溶媒とを含む第1溶液と、
前記アルコキシシラン加水分解物の脱水縮合触媒である有機スズ化合物と、アミノアルキルアルコキシシランと、1種類以上の炭素数1〜4の低級アルコールとを含む第2溶液と、
を混合すること特徴とするコーティング用組成物の製造方法。
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