JP2024005298A - 液状防曇コート剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた防曇性とともに、良好な外観を呈する塗膜を形成できるコート剤を提供する。【解決手段】液状のコート剤であって、(A)長尺状コロイダルシリカ、(B)球状コロイダルシリカ、(C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物、(D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(但し、前記(C)のシラン誘導体化合物を除く。)、ならびに(E)(E1)水、(E2)表面張力が35mN/m以上の第1有機溶剤及び(E3)表面張力が35mN/m未満の第2有機溶剤を含む溶媒を含むことを特徴とする液状防曇コート剤に係る。【選択図】なし

Description

本発明は、液状防曇コート剤に関する。
防曇コート剤は、物品の表面にコーティングし、防曇性の皮膜を形成することによって、その表面の曇りを防止できる塗工液であり、例えば自動車ヘッドランプ、カメラレンズ、フェイスシールド、眼鏡等をはじめとして各種の製品に適用されている。
特に、自動車ヘッドランプのカバー(レンズ)の内側等に用いられる防曇塗膜においては、外部の環境に影響されない長期的な耐久性が求められる。この場合、結露時の塗膜からの成分溶出により発生する水垂れ跡の抑制のほか、長期環境試験後でも防曇性を持続することが重要である。
このような防曇コート剤は、これまで種々のものが提案されている。例えば、コーティング組成物を塗布する表面を有する基材に反射防止特性及び防曇特性を付与するコーティング組成物であって、多孔質無機金属酸化物と、少なくとも1つの疎水性基及び少なくとも1つの親水性アニオン基を含む界面活性剤とを含むコーティング組成物が知られている(特許文献1)。
また、特定の共重合体(A)と多官能ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とからなる防曇剤組成物が提案されている(特許文献2)。
さらに、 酸性長尺状コロイダルシリカとpH調整用長尺状コロイダルシリカとを含有するコロイダルシリカ混合物を含む防曇塗料組成物が知られている(特許文献3)。
その他にも、長尺状コロイダルシリカと、球状コロイダルシリカとを含有する防曇塗料組成物(特許文献4)、長尺状コロイダルシリカと、分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物と分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物とを少なくとも含むシラン誘導体化合物混合物と、を含有する防曇塗料組成物(特許文献5)等が知られている。
特開2010-131651 特開2016-169287 特開2019-19253 国際公開WO2021/140931 国際公開WO2021/141044
本願の出願人は、特に特許文献4,5のように、コロイダルシリカを主成分とした高親水性塗膜を新規に考案し、水垂れ跡が発生せず、防曇耐久性に優れた防曇剤を開発している。
しかし、これら従来技術においては、防曇性という点では満足できる性能を発揮することができるものの、塗膜の外観においてはさらなる改善の余地がある。
これらのコロイダルシリカ等の無機微粒子を用いた防曇塗膜においては、粒子どうしが互いに電子反発することで一次粒径が保たれるところ、用いる分散媒によっては粒子の凝集が発生しやすくなり、透明膜の外観を損ねる原因になる。特に、スプレーにて塗工する場合においては、塗工対象となる基材に対して塗着した段階で粒子凝集が発生し易くなるという問題がある。その結果、いわゆる「ゆず肌」と呼ばれる凹凸が顕著な塗膜になったり、局所的に凝集物が生成することがあり、これらが外観不良の原因となっている。このため、たとえ所望の防曇性が得られたとしても、そのような外観不良によって防曇製品の商品価値を低下させることにもなりかねない。
従って、本発明は、優れた防曇性とともに、良好な外観を呈する塗膜を形成できるコート剤を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を含む組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の液状防曇コート剤に係る。
1. 液状のコート剤であって、
(A)長尺状コロイダルシリカ、
(B)球状コロイダルシリカ、
(C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物、
(D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(但し、前記(C)のシラン誘導体化合物を除く。)、ならびに
(E)(E1)水、(E2)表面張力が35mN/m以上の第1有機溶剤及び(E3)表面張力が35mN/m未満の第2有機溶剤を含む溶媒
を含むことを特徴とする液状防曇コート剤。
2. 第1有機溶剤の表面張力が35~72mN/mであり、第2有機溶剤の表面張力が20~30mN/mである、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
3. 第1有機溶剤の沸点が120℃以上であり、第2有機溶剤の沸点が120℃以上である、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
4. 前記溶媒の合計100重量%中において、水が85~97重量%であり、第1有機溶剤が2~10重量%であり、第2有機溶剤が1~5重量%である、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
5. 長尺状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカとの合計100重量部のうち、球状コロイダルシリカの含有量が20~50重量部である、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
6. 固形分含量として、
(A)長尺状コロイダルシリカ:45~75重量%、
(B)球状コロイダルシリカ:20~45重量%、
(C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物:0.1~5重量%、
(D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物:0.1~5重量%
を含む前記項1に記載の液状防曇コート剤。
7. 界面活性剤をさらに含む、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
8. スプレーによって塗布するために用いられる、前記項1に記載の液状防曇コート剤。
9. 液体収容部と、前記液体収容部に液体を噴霧するスプレーノズルとを含むスプレー装置において、前記液体収容部に前記項1~7のいずれか1項に記載の液状防曇コート剤が充填されているスプレー製品。
10. 前記項1~7のいずれか1項に記載の液状防曇コート剤の塗膜からなる防曇性塗膜。
11. 前記項10に記載の防曇性塗膜が基材表面に積層されている物品。
本発明によれば、優れた防曇性とともに、良好な外観を呈する塗膜を形成できるコート剤を提供することができる。
特に、本発明の液状防曇コート剤では、親水性の高い無機微粒子(球状シリカ、長尺状シリカ)を主成分としたうえで、互いに異なる表面張力を有する2種の有機溶剤を含む水系溶媒を用いているので、塗膜形成時(コート液の硬化時又は固化時)において、外観に影響を及ぼすような凝集を抑制しつつ、無機微粒子間に適当に隙間を保持することができる。
すなわち、そのような凝集を抑制できる結果として、良好な外観をもつ塗膜を形成することができる。また、無機微粒子間に適当な隙間を保持することで、その隙間による吸水性が維持され、これにより無機微粒子の高い親水性を効果的に発揮できる結果、優れた防曇性、ひいては高い防曇耐久性を得ることができる。
実施例及び比較例の塗膜の外観を観察した結果(20倍)を示す図である。
1.防曇コート剤
本発明の液状防曇コート剤(本発明コート剤)は、
(A)長尺状コロイダルシリカ(A成分)、
(B)球状コロイダルシリカ(B成分)、
(C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物(C成分)、
(D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(但し、前記(C)のシラン誘導体化合物を除く。)(D成分)、ならびに
(E)(E1)水、(E2)表面張力が35mN/m以上の第1有機溶剤及び(E3)表面張力が35mN/m未満の第2有機溶剤を含む溶媒(E成分)
を含むことを特徴とする。
(1)各成分について
(1-1)A成分
A成分の長尺状コロイダルシリカは、シリカの一次粒子どうしが共有結合し、長い紐状を形成した長尺状シリカ(SiO又はその水和物)を水に分散させたコロイド溶液である。前記シリカの一次粒子の直径(平均一次粒径)は、限定的ではないが、通常は5~300nm程度である。本発明において、長尺状コロイダルシリカは、基材の表面上に広がって吸着し、被膜を形成することができるため、本発明コート剤の有効成分として好適に使用することができる。
長尺状コロイダルシリカとしては、例えば鎖状コロイダルシリカ、パールネックレス状コロイダルシリカ等を挙げることができる。長尺状コロイダルシリカのアスペクト比は、例えば4以上であれば良いが、これに限定されない。
なお、水を分散媒としたコロイダルシリカとしては、酸性、中性又は塩基性の各種がある。本発明では、いずれも使用することができるが、特に、水に分散してpH1~3の強酸性を示す酸性長尺状コロイダルシリカ、pH4~9の弱酸性~中性~弱塩基性を示す中性長尺状コロイダルシリカ、pH10~14を示す塩基性長尺状コロイダルシリカが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることもできる。
この場合、複数のコロイダルシリカを混合して用いる場合は、本発明コート剤が適用される基材に影響を及ぼさない範囲(通常は弱酸性~弱塩基性の範囲、特にpH7~10程度の範囲)となるように、組み合わせて使用することが好ましい。例えば、酸性長尺状コロイダルシリカと塩基性長尺状コロイダルシリカとの組み合わせ、塩基性長尺状コロイダルシリカと酸性長尺状コロイダルシリカとの組み合わせのほか、中性長尺状コロイダルシリカを単独で用いることもできる。
このような長尺状コロイダルシリカ自体は、公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば製品名「ST-OUP」、「ST-UP」、「ST-PS-S」、「ST-PS-M」、「ST-PS-SO」、「ST-PS-MO」(いずれも日産化学工業(株))等を用いることができる。
本発明コート剤中におけるA成分の固形分含有量は、限定的でなく、例えば所望の性能、用途、適用部位等に応じて適宜設定できるが、通常は45~75重量%程度とし、特に50~70重量%とすることが好ましい。これによって、優れた防曇性とともに良好な外観をより確実に得ることができる。
(1-2)B成分
B成分である球状コロイダルシリカは、球状シリカ(SiO又はその水和物)を水に分散させたコロイド溶液である。
上記球状コロイダルシリカは、水中で概ね球形の粒子形状を有している。このため、球状コロイダルシリカのアスペクト比は、例えば1.5以下程度であれば良いが、これに限定されない。前記シリカの一次粒子の直径(平均粒径)は、限定的ではないが、通常は5~300nm程度である。本発明では、互いに平均粒径が異なる2種以上の球状コロイダルシリカを用いることもできる。これによって、より緻密な塗膜を形成できる結果、塗膜成分の溶出を阻止し、後記の試験例1に示すような「水垂れ跡」の発生を効果的に抑制ないしは防止することができる。
一般に、球状コロイダルシリカには、酸性、中性又は塩基性のものが存在するが、本発明では、上記のようにアンモニウムイオンを有するものであり、pH10~14を示す塩基性球状コロイダルシリカである。これらは、単独又は混合して用いることができる。
このような球状コロイダルシリカは、公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば塩基性球状コロイダルシリカとしては、製品名「ST-N」、「ST-NS」、「ST-N-40」(いずれも日産化学工業(株))等を用いることができる。また酸性球状コロイダルシリカとしては、製品名「ST-O」、「ST-OS」、「ST-O-40」(いずれも日産化学工業(株))等を用いることができる。
本発明コート剤中におけるB成分の固形分含有量は、限定的でなく、例えば所望の性能、用途、適用部位等に応じて適宜設定できるが、通常は20~45重量%程度とし、特に25~40重量%とすることが好ましい。上記範囲内に設定するによって、優れた防曇性とともに良好な外観をより確実に得ることができる。
また、A成分とB成分の比率は、限定的ではないが、両者の合計を100重量部として、B成分の比率を20~50重量部とすることが好ましく、特に25~40重量部とすることがより好ましい。これによって、より優れた造膜性、防曇耐久性(水垂れ跡性)、より良好な外観等を得ることができる。
(1-3)C成分
C成分として、分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物を用いる。具体的には、下記の一般式(1-1)~(1-3)で示される化合物の少なくとも1種を挙げることができる。
一般式(1-1)で示される化合物として、
(式中、R、R及びRは、互いに同一又は異なって、炭素数1~3のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、nは1~5の整数であり、mは1~20、好ましくは4~20、より好ましくは4~15の整数である。)で表される化合物を用いることができる。
一般式(1-1)で表されるシラン誘導体化合物は、長尺状シリカ及び球状シリカと反応することができるアルコキシ基(すなわち-OR、-OR及び-ORの基)と、水との親和性が高いポリエチレングリコール鎖を含む親水基(-OCHCH-)とを有している。一般式(1-1)で表されるシラン誘導体化合物が長尺状シリカと反応することができる置換基と親水基とを有していることで、当該シラン誘導体化合物が長尺状シリカ及び球状シリカに結合し、かつ、本発明コート剤による塗膜に親水性を付与することが可能となる。
一般式(1-1)で表されるシラン誘導体化合物の具体例として、メトキシPEG-10プロピルトリメトキシシラン、エトキシPEG-10プロピルトリメトキシシラン等のポリエチレングリコール変性アルコキシシランが挙げられる。その他にも、例えば2-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリメトキシシラン、3-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、4-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)ブチル]トリメトキシシラン、2-[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリメトキシシラン、3-[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、4-[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)ブチル]トリメトキシシラン等も用いることができる。
一般式(1-1)で表されるシラン誘導体化合物自体は、市販品も使用することができる。市販品としては、例えば製品名「Dynasylan4148」、「Dynasylan4150」(いずれもエボニックジャパン(株))、「メトキシPEG-10プロピルトリメトキシシラン」(PGシリーズ)(アヅマックス(株))等を用いることもできる。
また、一般式(1-2)で示される化合物として、
(式中、R11、R12、R13及びR14は、互いに同一又は異なって、炭素数1~3のアルキル基であり、Aは、-O-、-NHCOO-、-OCO-、-COO-、-OCHCH(OH)CHO-、-OCHCHCH(OH)O-、-S-、-SCO-及び-COS-からなる群より選択され、n1は1~5の整数であり、m1は1~20、好ましくは4~20、より好ましくは4~15の整数である。)で表される化合物を用いることができる。一般式(1-2)で表されるシラン誘導体化合物のうち、式中Aの最も好ましい基は-O-である。
一般式(1-2)で表されるシラン誘導体化合物は、長尺状シリカと反応することができるアルコキシ基(すなわち-OR11、-OR12及びOR13の基)と、水との親和性が高いポリエチレングリコール鎖を含む親水基(-CHCHO-)とを有するものである。
一般式(1-2)で表されるシラン誘導体化合物が長尺状シリカと反応することができる置換基と親水基とを有していることで、当該シラン誘導体化合物が長尺状シリカに結合し、かつ本発明コート剤による塗膜に親水性を付与することが可能となる。
一般式(1-2)で表されるシラン誘導体化合物の具体例として、3-[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン、2-[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリメトキシシラン、3-[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、4-[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)ブチル]トリメトキシシラン等が挙げられる。
一般式(1-2)で表されるシラン誘導体化合物自体は、公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、分子内にポリエチレングリコール鎖とアシル基とを有するシラン誘導体化合物である3-[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン(Gelest Inc.)等を用いることもできる。
一般式(1-3)で示される化合物として、
(式中、R21、R22及びR23は、互いに同一又は異なって炭素数1~3のアルキル基であり、R24は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、Bは、-NHCOO-、-OCO-、-COO-、-OCHCH(OH)CHO-、-OCHCHCH(OH)O-、-S-、-SCO-及び-COS-からなる群より選択され、n2は1~5の整数であり、m2は1~20、好ましくは4~20、さらに好ましくは4~15の整数である。)で表される化合物を用いることができる。一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物のうち、式中Bの最も好ましい基は-NHCOO-(ウレタン基)である。
一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物は、長尺状シリカと反応することができるアルコキシ基(すなわち-OR21、-OR22及び-OR23の基)と、水との親和性が高いポリエチレングリコール鎖を含む親水基(-CHCHO-)とを有している。
一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物が長尺状シリカと反応することができる置換基と親水基とを有していることで、当該シラン誘導体化合物が長尺状シリカに結合し、かつ本発明コート剤による塗膜に親水性を付与することが可能となる。
一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物の具体例として、2-ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)エチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート、2-ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)エチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]カルバメート、2-アルコキシ(ポリエチレンオキシ)エチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート、2-アルコキシ(ポリエチレンオキシ)エチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]カルバメート、2-アルコキシ(ポリエチレンオキシ)エチル[4-(トリメトキシシリル)ブタン酸]エステル等が挙げられる。
また、一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物のうち、分子内にポリエチレングリコール鎖とウレタン基とを有するシラン誘導体化合物が最も好ましい。分子内にポリエチレングリコール鎖とウレタン基とを有するシラン誘導体化合物は、イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等の、イソシアナト基を有するアルコキシシラン化合物と、ポリエチレングリコールとを反応させることにより合成することができる。
なお、本明細書では、一般式(1-3)で表されるシラン誘導体化合物のうち、実施形態において特に好適に使用できる、分子内にポリエチレングリコール鎖とウレタン基とを有するシラン誘導体化合物を「ウレタンシラン」と呼ぶことがある。また、一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)でそれぞれ表されるシラン誘導体化合物を、まとめて「分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物」と呼ぶことがある。
本発明コート剤中におけるC成分の固形分含有量は、限定的でなく、例えば所望の性能、用途、適用部位等に応じて適宜設定できるが、通常は0.1~5重量%程度とし、特に1~4重量%とすることが好ましい。上記範囲内に設定するによって、優れた防曇性とともに良好な外観をより確実に得ることができる。
(1-4)D成分
D成分として、分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(但し、前記(C)のシラン誘導体化合物を除く。)を用いる。D成分としては、一般式(2)で表されるシラン誘導体化合物を用いることができる。
(式中、R、R及びRは、互いに同一又は異なって、炭素数1~3のアルキル基であり、pは1~5の整数であり、Xはエポキシ基を含む有機基である。)
これは、長尺状シリカと反応することができるアルコキシ基(すなわち、-OR、-OR及びORの基)と、X(Xはエポキシ基を含む有機基である。)とを有している。ここに、エポキシ基を含む有機基としては、例えばグリシジル基等が挙げられるが、これに限定されない。
一般式(2)で表されるシラン誘導体化合物が長尺状シリカと反応することができる置換基を有していることで、当該シラン誘導体化合物が、長尺状シリカの間を架橋することが可能となる。
一般式(2)で表されるシラン誘導体化合物の具体例として、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン誘導体化合物が挙げられる。
分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物として、例えば製品名「DynasylanGLYEO」(エボニックジャパン(株))、「KBM402」、「KBM403」、「KBE402」、「KBE403」(いずれも信越化学工業(株))等の市販品を用いることもできる。このようなシラン誘導体化合物は、特に、長尺状シリカと反応して結合し、長尺状シリカの間を架橋し、塗膜の強度を高め、かつ、塗膜に親水性を付与することができる。
本発明コート剤中におけるD成分の固形分含有量は、限定的でなく、例えば所望の性能、用途、適用部位等に応じて適宜設定できるが、通常は0.1~5重量%程度とし、特に1~4重量%とすることが好ましい。上記範囲内に設定するによって、優れた防曇性、良好な外観等をより確実に得ることができる。
(1-6)E成分
E成分は、(E1)水、(E2)表面張力が35mN/m以上の第1有機溶剤及び(E3)表面張力が35mN/m未満の第2有機溶剤を含む溶媒(水系溶媒)である。このような特定の水系溶媒を用いることによって、特に本発明コート剤をスプレーで塗布した場合であっても、外観に優れた塗膜(とりわけ、塗膜レベリング性に優れ、ゆず肌、凝集物等の生成が効果的に抑制された塗膜)を形成することが可能となる。
本発明において、高い防曇性とともに優れた外観をもつ塗膜が形成される作用機序は定かではないが、第1有機溶剤だけを用いた場合は無機微粒子が一次粒径を維持したまま乾燥(硬化)し、隙間のない緻密な塗膜が形成されるため、所望の吸水力が発揮されずに、満足できる防曇性が得られない。他方、第2有機溶剤だけを用いた場合は無機微粒子が二次粒径を形成しながら乾燥(硬化)し、凝集粒子の多い塗膜が形成される結果、塗膜に外観不良を引き起こす。これらの知見から、第1有機溶剤と第2有機溶剤を併用することによって、適度な隙間を維持しつつ、外観不良をもたらすような凝集を抑制することによって、優れた防曇性とともに、良好な外観を有する塗膜が形成されるものと推察される。このように、本発明では、第1有機溶剤又は第2有機溶剤の単独では得られない効果を、両社の併用によってはじめて得ることができることから、2種の有機溶剤による相乗的な効果を達成したものといえる。
水は、例えば純水、超純水、水道水等の各種の水を用いることができる。E成分100重量%中における水の含有量は、限定的ではないが、通常は85~97重量%程度とし、特に90~96重量%とすることが好ましい。水が少なすぎると、無機微粒子の分散安定性が低くなることがある。また、水が多すぎると、塗液の表面張力が低下し、塗膜レベリング性が低下するおそれがある。
第1有機溶剤は、表面張力が通常は35mN/m以上であり、35~72mN/mであることが好ましく、特に50~72mN/mであることがより好ましい。このような表面張力を有する第1有機溶剤は、本発明コート剤において粒子凝集を抑制する機能等を有する。
第1有機溶剤の具体例としては、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール等の少なくとも1種を挙げることができる。
E成分100重量%中における第1有機溶剤の含有量は、限定的ではないが、通常は2~10重量%程度とし、特に3~9重量%とすることが好ましい。第1有機溶剤が少なすぎると、粒子の凝集が起こりやすくなり、塗膜外観を低下させるおそれがある。また、第1有機溶剤が多すぎると、塗膜が緻密になりすぎて所望の防曇効果が得られなくなることがある。
第2有機溶剤は、表面張力が通常は35mN/m未満であり、特に20~30mN/mであることが好ましい。このような表面張力を有する第2有機溶剤は、本発明コート剤において塗膜の空隙率を高める機能等を有する。
第2有機溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の少なくとも1種を挙げることができる。
E成分100重量%中における第2有機溶剤の含有量は、限定的ではないが、通常は1~5重量%程度とし、特に1~3重量%とすることが好ましい。第2有機溶剤が少なすぎると、塗膜の空隙率が低くなりすぎる結果、吸水による防曇効果が得られなくなるおそれがある。また、第2有機溶剤が多すぎると、粒子の凝集が起こりやすくなる結果、塗膜外観を低下させることがある。
本発明コート剤では、第1有機溶剤と第2有機溶剤との比率(重量比)は、例えば第1有機溶剤:第2有機溶剤=(1.5~3.5):1程度の範囲で設定することができるが、これに限定されない。
また、本発明では、第1有機溶剤と第2有機溶剤ともに高沸点溶剤であることが好ましい。より具体的には、いずれも沸点が120℃以上(特に150~250℃)であることが好ましい。このような高沸点溶剤を使用することにより、適度な揮発時間が確保される結果、良好な外観を呈する塗膜を形成することができる。
なお、第1有機溶剤及び第2有機溶剤における上記の表面張力は、測定温度25℃でWilhelmyプレート法によって測定することができる。
本発明では、E成分である溶媒は、水に第1有機溶剤及び第2有機溶剤が溶解した溶液(混合溶液)であることが好ましいが、本発明の効果を妨げない限り、全てが完全に溶解していなくても良い。
本発明コート剤中におけるE成分の含有量は、例えば本発明コート剤の塗工性、造膜性等に応じて適宜設定すれば良く、例えば本発明コート剤の固形分濃度が5~90重量%程度となるように設定することができ、好ましくは5~50%の範囲内となるように設定することもできるが、これに限定されない。
(1-7)その他の成分
本発明コート剤では、本発明の効果を妨げない範囲内において、塗料組成物に通常含まれている添加剤(界面活性剤、染料、顔料、可塑剤、分散剤、防腐剤、つや消し剤、帯電防止剤、難燃剤等)を適宜配合することができる。界面活性剤はアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでも良い。界面活性剤を添加することによって、本発明コート剤をより平滑に基材に塗工することができる。界面活性剤を用いる場合は、例えば本発明コート剤中0.01~0.3重量%程度と設定することが可能であるが、これに限定されない。
(2)本発明コート剤の性状等
本発明コート剤は、通常は液体の形態で使用することができる。この場合、前記の通り、溶媒としてE成分を用いる。本発明コート剤の粘度等は用途、基材の種類等に応じて適宜設定することができる。
特に、本発明コート剤をスプレー法により塗布する場合は、粘度(25℃)を1~100mPa・s程度とすることが好ましいが、スプレー装置の仕様等に応じて適宜設定することができる。
2.本発明コート剤の製造
本発明コート剤は、前記の各成分を均一に混合することによって製造することができる。混合する順序も、特に限定されず、各成分を同時に混合しても良いし、あるいは順次に混合しても良い。
また、混合に際しては、例えばミキサー、ニーダー等の公知又は市販の装置を使用して実施することもできる。
3.本発明コート剤の使用
本発明コート剤は、公知又は市販の防曇コート剤と同様に、基材表面に塗布することによって、基材表面に本発明コート剤による塗膜(防曇性塗膜)を硬化膜として形成することができる。本発明は、このような本発明コート剤による防曇性塗膜も包含する。
基材の材質としては、特に限定されず、例えばプラスチックス、ガラス、金属、セラミックス、ゴム等のいずれであっても良い。また、基材としては、例えば原材料、一次製品、最終製品等のいずれを構成する材料であっても良い。前記の最終製品としては、例えば照明装置、前照灯(カバー、レンズ等)、窓、レンズ、レンズカバー、モニター、モニターカバー、眼鏡・サングラス、ゴーグル、フェイスシールド、フェイスガード、ヘルメット等が挙げられる。このように、物品を構成する基材表面に本発明コート剤による防曇性塗膜が積層されている物品も、本発明に包含される。
防曇性塗膜を含む本発明の物品は、その塗膜による優れた防曇性を有する。しかも、物品が予想外の高温条件下に曝された場合であっても、水垂れ跡の形成等を効果的に抑制し、良好な外観を維持することができる。また、本発明コート剤による塗膜は、プラスチック等の基材に強固に接着し、密着性が高いので、高温下での耐久性が高く、長期にわたって防曇性を発揮することができる。それだけでなく、前記塗膜においては、従来のコート剤で発生しやすいゆず肌、凝集物等の生成を抑止することができるので、良好な外観も併せて得ることができる。
本発明コート剤を基材に塗布する方法は、限定的でなく、例えばドクターブレード法、バーコート法、ディッピング法、スプレー法(エアスプレー法)、ローラーブラシ法、ローラーコーター法等の各種のコーティング方法を採用することができる。
特に、本発明コート剤は、スプレーによる塗布に好適に用いることができる。通常のコート剤では塗膜外観が低下する傾向にあるが、本発明コート剤はスプレーにより塗布しても、ゆず肌が抑制され、また凝集物の生成も抑制された塗膜をより確実に形成することができる。従って、本発明は、液体収容部と、前記液体収容部に液体を噴霧するスプレーノズルとを含むスプレー装置において、前記液体収容部に本発明コート剤が充填されているスプレー製品も包含する。
スプレー装置自体は、限定的でなく、公知又は市販の装置を採用することもできる。また、スプレー装置は、手動又は電動のいずれであっても良い。このため、例えば市販のスプレー装置の液体収容部に本発明コート剤を充填することによって通常の条件下で使用(噴霧)することも可能である。
塗布厚みは、特に限定されないが、最終的に形成される防曇性塗膜の厚みが0.1~10μm程度の範囲内となるように調整すれば良いが、これに限定されない。
塗布後は、ウェットな塗膜を乾燥することによって防曇性塗膜を形成することができる。乾燥は、自然乾燥であっても良いが、好ましくは加熱乾燥する。加熱乾燥の際の温度は、シリカとシラン誘導体が反応し、かつ、溶媒が蒸発するのに十分な温度とすれば良い。加熱温度は、例えば80~150℃程度とし、特に100~140℃とすることができる。これにより、反応をスムーズに進行させ、かつ、溶媒を蒸発させることができる。
加熱手段は、特に制限されず、例えばバーナー、オーブン等の加熱装置による加熱のほか、ドライヤー等の温風による加熱方法により行うことができる。このようにして、本発明コート剤による塗膜が乾燥すると、基材表面上に広がった長尺状コロイダルシリカ(及び場合により球状コロイダルシリカ)は長尺状シリカ(場合により球状シリカ)となって、所定の硬化膜を形成する。一方、シラン誘導体化合物はこれらのシリカ粒子と結合し、シリカ粒子どうしの間を架橋して、強固な高次構造を形成する。
こうして、本発明コート剤を物品に適用することにより防曇性塗膜を形成できる結果、そのような塗膜で被覆された物品を得ることができる。また同時に、本発明のE成分である特定の溶媒により蒸発時に無機微粒子であるシリカ粒子が適度な隙間を維持しながら配列するので、比較的滑らかな均質な表面をもつ塗膜を形成できることから、前記塗膜に良好な外観を与えることもできる。
本発明に係る物品は、その塗膜による優れた防曇性を有する。しかも、前記のように、特定の溶媒の存在下で2種のコロイダルシリカを併用して塗膜を形成することで、物品が予想外の高温条件下に曝された場合であっても、凝集物、ゆず肌、水垂れ跡等の形成のような目立った外観変化をもたらす現象を効果的に抑制することができる。また、本発明コート剤による塗膜は、プラスチック等の基材に強固に接着し、密着性が高いので、高温下での耐久性が高く、長期にわたって防曇性を維持することができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
実施例1~4
表1に示す各成分を均一に混合することによって、液状コート剤を調製した。なお、各成分の含有量の単位は「重量%」である。
比較例1~4
表1に示す組成に変更したほかは、実施例1と同様にして液状コート剤を調製した。
なお、表1中の略称の意味は、以下の通りである。
・「ST-OUP」:スノーテックスOUP、日産化学工業(株)、酸性長尺状コロイダルシリカ(固形分15重量%、水分散液)
・「ST-UP」:スノーテックスUP、日産化学工業(株)、Na含有塩基性長尺状コロイダルシリカ(固形分20重量%、水分散液)
・「ST-N」:スノーテックスN、日産化学工業(株)、粒径12nmのNH 含有球状塩基性コロイダルシリカ(固形分20重量%、水分散液)
・「ST-NXS」:スノーテックスNXS、日産化学工業(株)、粒径5nmのNH 含有塩基性球状コロイダルシリカ(固形分15重量%、水分散液)
・「FT-150」:フタージェント150、(株)ネオス、アニオン系界面活性剤(固形分100重量%)
・「D-4148」:ダイナシラン4148、エボニックジャパン(株)、分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物(固形分100重量%)
・「KBM-403」:信越化学工業(株)、分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(固形分100重量%)
・「DPG」:ジプロピレングリコール(沸点230℃、表面張力71.4mN/m)
・「1,3-BD」:1,3ブタンジオール(沸点208℃、表面張力37.8mN/m)
・「BDG」:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃、表面張力29.1mN/m)
・「PGM」:1-メトキシ-2-プロパノール(沸点120℃、表面張力27.7mN/m)
試験例1
各実施例及び比較例で調製されたコート剤を用いて基材上に塗膜を形成し、サンプルを作製した。
厚さ1mmのポリカーボネート基材上にコート剤を塗布した。塗布は、スプレー塗工で行い、コート剤が硬化した後の塗膜(硬化膜)の厚さが1μmとなるように塗工量を調整した。コート剤により塗布された基材を110℃のオーブンに入れ、15分間加熱することにより硬化膜を形成し、サンプルを得た。得られたサンプルを用いて以下に示す方法で各性能評価を行った。
(1)ゼータ電位
コート剤のゼータ電位を大塚電子製「ELSZ-1000」を用いて測定した。ゼータ電位は、電気二重層中の滑り面と界面から充分に離れた部分との間の電位差のことであり、粒子どうしの静電反発特性(≒凝集性)を評価できるため、塗膜中の粒子凝集状態の制御において重要なパラメータとなる。
(2)空隙率
電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)により硬化膜の表面観察を行い、得られた画像を用いて塗膜表面における隙間の割合を計算した。より具体的には、グレースケールの当該画像を二値化し、空隙に該当する部分の輝度範囲を設定した後、画像全体に対する当該部分の面積比をソフト上で読み取ることによって算出した。
(3)塗膜外観
硬化膜の外観を目視及びマイクロスコープを用いて、レベリング状態及び膜の平滑性を観察した。その結果、特に異常は見られない場合を「○」とし、レべリング性又は粒子の凝集物による粒状の外観が認められた場合を「×」とした。
参考のため、実施例1の観察結果、比較例3の観察結果(20倍)を図1に示す。図1Aは、実施例1の観察結果である。図1Bは、比較例2の観察結果である。図1Aでは、粒状の外観となっておらず、良好な外観となっている。図1Aにおける粒状のものは、粒子(コロイダルシリカ成分等)の二次凝集物等と考えられるが、塗膜外観を損なわない程度の微小な凝集物であり、本発明の効果に影響を及ぼすものではなく、実用上問題ないものである。図1Bでは、全面にわたって粒状(島状)の外観を呈しており、凝集が顕著になっている。
(4)ヘーズ
日本産業規格JIS K7136に従って、ヘーズメーターを用いて測定した。ヘーズ値が0.7未満の場合は「○」とし、ヘーズ値が0.7以上の場合は「×」と表記した。
(5)防曇性
40℃の温水浴の水面から高さ1cmの位置に、塗膜が下向きになるようにサンプルを配置し、塗膜に温水浴からの蒸気を10秒間あてた。その間、塗膜上に曇りが形成されているか否かを目視により確認した。塗膜上に曇りが確認できない場合を「○」とし、曇りが認められた場合を「×」とした。
(6)水垂れ性
前記(2)の防曇性評価を行ったサンプルを垂直に立てかけた状態で30分間維持して乾燥させ、サンプル表面上に水垂れ跡が形成されているか否かを目視により確認した。水垂れ跡が認められない場合を「○」とし、水垂れ跡が確認できた場合を「×」とした。
(7)耐久性試験後防曇性
サンプルを温度50℃及び湿度95%の環境下に240時間静置した後、上記(5)の防曇性評価を行った。
表1の結果からも明らかなように、実施例1~4は、本発明の溶剤を含み、ゼータ電位が-27~-33mVの範囲内であり、外観及び防曇耐久性が良好だった。
比較例1は、高沸点溶剤が配合されておらず、ポリカーボネート基材に均一に塗布できなかった。
比較例2は、表面張力35mN/m未満の高沸点溶媒が配合されていないため、空隙率が低く、防曇耐久性が不足した。
比較例3は、表面張力35mN/m以上の高沸点溶媒は十分量配合されているが、表面張力35mN/m未満の高沸点配合が多すぎるため、表面が粒状(外観不良)となった。
比較例4は、表面張力35mN/m以上の高沸点溶媒が配合されていないため、表面が粒状(外観不良)となった。
本発明コート剤は、基材表面に塗布することで防曇性塗膜を好適に形成することができる。これによって、防曇性を備えた各種の物品(照明装置、前照灯、窓、レンズ、レンズカバー、モニター、モニターカバー、眼鏡・サングラス、ゴーグル、フェイスシールド、フェイスガード、ヘルメット等)を提供することが可能となる。

Claims (11)

  1. 液状のコート剤であって、
    (A)長尺状コロイダルシリカ、
    (B)球状コロイダルシリカ、
    (C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物、
    (D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物(但し、前記(C)のシラン誘導体化合物を除く。)、ならびに
    (E)(E1)水、(E2)表面張力が35mN/m以上の第1有機溶剤及び(E3)表面張力が35mN/m未満の第2有機溶剤を含む溶媒
    を含むことを特徴とする液状防曇コート剤。
  2. 第1有機溶剤の表面張力が35~72mN/mであり、第2有機溶剤の表面張力が20~30mN/mである、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  3. 第1有機溶剤の沸点が120℃以上であり、第2有機溶剤の沸点が120℃以上である、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  4. 前記溶媒の合計100重量%中において、水が85~97重量%であり、第1有機溶剤が2~10重量%であり、第2有機溶剤が1~5重量%である、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  5. 長尺状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカとの合計100重量部のうち、球状コロイダルシリカの含有量が20~50重量部である、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  6. 固形分含量として、
    (A)長尺状コロイダルシリカ:45~75重量%、
    (B)球状コロイダルシリカ:20~45重量%、
    (C)分子内にポリエチレングリコール鎖を有するシラン誘導体化合物:0.1~5重量%、
    (D)分子内にエポキシ基を有するシラン誘導体化合物:0.1~5重量%
    を含む請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  7. 界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  8. スプレーによって塗布するために用いられる、請求項1に記載の液状防曇コート剤。
  9. 液体収容部と、前記液体収容部に液体を噴霧するスプレーノズルとを含むスプレー装置において、前記液体収容部に請求項1~7のいずれか1項に記載の液状防曇コート剤が充填されているスプレー製品。
  10. 請求項1~7のいずれか1項に記載の液状防曇コート剤の塗膜からなる防曇性塗膜。
  11. 請求項10に記載の防曇性塗膜が基材表面に積層されている物品。
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