JP2006051464A - 耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法 - Google Patents

耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 親水性処理剤を塗布することによって、粉体塗膜上に親水性膜が形成された耐汚染性に優れる複層粉体塗膜を提供する。
【解決手段】 粉体塗料により形成された粉体塗膜の表面に親水化処理剤を塗布することにより行われるものであって、
上記粉体塗料が有機シリケートを含むものであり、
上記親水化処理剤が、シリケート化合物の加水分解体、HLBが10〜15であるアルキレンオキサイドユニットを有するノニオン系界面活性剤、水および親水性有機溶剤を含むことを特徴とする耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法。

Description

本発明は、耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法およびこれから得られた耐汚染性に優れた複層粉体塗膜に関する。
粉体塗料は溶剤を含有しないため、環境保護に対応した塗料として、最近、様々な分野で利用されてきている。粉体塗装の対象としては、屋外に設置される物品や屋外で稼働する機械などがある。このような物品や機械の表面には、大気中の汚れが付着しやすく、付着した汚れ物質は降雨により雨筋汚れとなり、その結果、これらの外観が損なわれることがよくある。これに対して表面を親水化することにより、このような雨筋汚れを防止できることが知られており、このような性質は耐汚染性と呼ばれている。
物品の表面を親水化する方法はいくつか存在するが、その1つとして、シリケート化合物を加水分解したものを塗布することにより、簡単に表面を親水化することができる親水化処理剤が知られており、粉体塗膜上にも塗布可能なことが開示されている(特許文献1参照)。しかし、実際にこの親水性処理剤を粉体塗膜上に塗布してみると、塗装時のハジキや乾きムラなどにより均一な膜を得ることは困難である。この問題は、粉体塗料に含まれている、表面で機能するシリコーン系やワックスのような疎水性材料が、粉体塗膜表面に存在することにより生じているものと考えられる。これらの表面調整剤は粉体塗料から除くことができないため、親水性処理剤を塗布することによって、粉体塗膜上に親水性膜が形成された複層粉体塗膜を得ることはこれまで困難であった。
特開2002−265924号公報
本発明の形成方法は、親水性処理剤を塗布することによって、粉体塗膜上に親水性膜が形成された耐汚染性に優れる複層粉体塗膜を得ることを目的とするものである。
本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法は、粉体塗料により形成された粉体塗膜の表面に親水化処理剤を塗布することにより行われるものであって、上記粉体塗料が有機シリケートを含むものであり、上記親水化処理剤が、シリケート化合物の加水分解体、HLBが10〜15であるアルキレンオキサイドユニットを有するノニオン系界面活性剤、水および親水性有機溶剤を含むことを特徴としている。ここで、上記ノニオン系界面活性剤の含有量は、上記水に対して0.001〜5質量%であってよく、上記親水化処理剤はさらにシラノール基と相互作用可能な金属化合物および酸性コロイダルシリカを含んでいてもよい。
本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜は、先の形成方法により得られるものである。
また、本発明の別の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜は、粉体塗膜の上にシリケート化合物の加水分解体を含む層が接して存在する構造を有する。
本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法は、粉体塗料により形成された粉体塗膜の表面に親水化処理剤を塗布することにより、耐汚染性に優れた複層粉体塗膜を形成する方法である。
<親水化処理剤>
上記親水化処理剤は、シリケート化合物の加水分解体、ノニオン系界面活性剤、水および親水性有機溶剤を含んでいる。
シリケート化合物の加水分解体
上記シリケート化合物の加水分解体は、シリケート化合物を加水分解して得られる。ここで用いられるシリケート化合物としては、平均縮合度が1〜30であるアルコキシシランの縮合物が好ましい。30を超えると、シリケート化合物の粒子性が高くなり、塗膜が白濁するなど外観に不具合が生じる。なお、平均縮合度が1であるものはアルコキシシランそのものである。
上記シリケート化合物を加水分解して得られる加水分解体を適度な粘度とする観点から、上記平均縮合度は1〜25が好ましく、5〜25がより好ましい。上記シリケート化合物が有するアルコキシシリル基のアルキル基は、同一であっても異なっていてもよいが、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。炭素数が8を上回ると、加水分解性が低下するため好ましくない。炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が特に好ましい。最も好ましいものはメチル基である。
上記置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、ネオアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のものが挙げられる。これらの中で、加水分解性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が好ましい。より好ましくは、メチル基及びエチル基であり、特に好ましいのはメチル基である。上記アルキル基の置換基としては限定されず、例えば、クロロ、ブロモ等のハロゲン;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基等を挙げることができる。上記置換基を有する場合であっても、アルキル基の炭素数は1〜8であることが好ましい。
上記アルコキシシリル基のアルキル基が置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基であるシリケート化合物の具体例としては、メチルシリケートとも呼ばれるテトラメトキシシラン、エチルシリケートとも呼ばれるテトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−n−ペントキシシラン、テトラ−iso−ペントキシシラン、テトラネオペントキシシラン等;それらの1種又は2種以上の縮合物等が挙げられる。好ましくは、メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/又はその縮合物であり、最も好ましいのがメチルシリケートの縮合物である。
上記メチルシリケートの縮合物としては、例えば、MKCシリケートMS51、MKCシリケートMS56、MKCシリケートMS60(いずれも三菱化学社製)等の市販品が挙げられる。上記エチルシリケートの縮合物としては、例えば、エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(いずれもコルコート社製)等の市販品が挙げられる。なお、上記シリケート化合物は、混合物であってもよい。
上記加水分解は、上記シリケート化合物が有するアルコキシシリル基に対して当量以上の水と上記シリケート化合物とを反応させることにより得られる。反応は室温で進行し、触媒の存在する大過剰量の水中にシリケート化合物を添加して放置しておくことにより、上記シリケート化合物の加水分解体を得ることができる。また、必要に応じて加熱することにより、加水分解反応の進行を早めることも可能である。また、加水分解反応を確実に行わせるために、さらに数日〜10日程度放置しておくこともできる。
上記触媒としては、一般的に加水分解反応に用いられるものが使用できる。例えば、塩酸、酢酸、硝酸、ギ酸、硫酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸などの有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等のアルカリ触媒;有機金属;金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムモノブトキシイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物、ホウ素ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等を挙げることができる。上記触媒の量は特に限定されないが、通常、上記シリケート化合物に対して、0.1〜5質量%とすることができる。加水分解で生成したシラノール基は、塩基性条件下で縮合反応が進行しやすいため、酸性のものを用いることが好ましい。
また、上記シリケート化合物は、水に対する溶解性が充分でないため、効率的に加水分解反応を進行させるためには親水性有機溶剤を加えて、系を均一化して行うことが好ましい。このような親水性有機溶剤としては、水に自由に混和するものが好ましく、例えば、アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等;またグリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシプロパノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、テトラエチレングリコール等;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。上記親水性有機溶剤の添加量は、上記シリケート化合物が溶解する量以上であれば特に限定されない。上記親水性有機溶剤を用いる場合には、シリケート化合物を親水性有機溶剤に溶解させ、ここに加水分解触媒を加えた後、大過剰量の水を徐々に加えていく方法を取ることができる。
上記加水分解体の生成は、IRスペクトルを測定して、アルコキシシリル基に基づくピークが消失していることにより確認することができる。すなわち、上記シリケート化合物の加水分解体は、上記シリケート化合物が有するアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解された構造を有していると考えられる。このシラノール基を有していることにより、塗布することによって親水性が発現するものと考えられる。ただし、上記加水分解体において、上記シリケート化合物が有する全てのアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解されていなくてもよい。
このようにして得られる加水分解体は、単離する際に、加水分解体間での縮合反応が進行してしまうおそれがあるため、加水分解を行って得られた溶液をそのまま使用することが好ましい。上記シリケート化合物の加水分解体の親水化処理剤中における含有量は、上記加水分解前のシリケート化合物に換算して、0.05〜10質量%に相当する量が好ましい。0.05質量%未満であると、充分な親水性を付与することができず、10質量%を超えると得られる膜の外観が低下する恐れがある。更に好ましくは、0.1〜5質量%であり、特に好ましくは0.1〜3質量%である。なお、本明細書において、成分の含有量とは、その成分が固形分と溶剤とからなる場合、固形分のみを対象とする。
ノニオン系界面活性剤
本発明の親水化処理剤に含まれる上記ノニオン系界面活性剤は、水の表面張力を低下させることにより、親水化処理剤の均一な塗布を可能にする。一方、カチオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤では、親水化処理剤の安定性が低下したり、均一な塗布ができなかったりする場合がある。
上記ノニオン系界面活性剤としては、親水性基としてアルキレンオキサイドユニットを有しているものが用いられる。このようなものとしてはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル又はポリアルキレングリコールモノアルキルエステルが好ましい。上記ノニオン系界面活性剤の親水性と疎水性とのバランスの指標であるHLBは、10〜15である。これらの範囲外では均一に塗布することができない恐れがある。なお上記HLBは、アルキレンオキサイドユニット部の分子量をノニオン系界面活性剤全体の分子量で割った値を20倍して得られる値である。この値およびその求め方は、グリフィンの式として、当業者によく知られている。
上記アルキレンオキサイドユニットの種類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドが挙げられ、この中でエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが好ましい。また、上記アルキレンオキサイドユニットの繰返し数は7〜10であることが好ましい。また、アルキルエーテルのアルキル基の炭素数は8〜18であることが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤の具体例として、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイエート、ポリエチレングリコールモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンモノデシルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンモノオレイルエーテルなどを挙げることができる。
上記ノニオン系界面活性剤の親水化処理剤中における含有量は、親水化処理剤中に含まれる水に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。0.001質量%未満だと目的とする効果が得られず、5質量%を超えても、それに見合う効果が得られず、かえって親水性膜に不具合が生じるおそれがある。さらに好ましい含有量は、0.01〜0.5質量%である。
溶剤
上記親水化処理剤は溶剤として、水および親水性有機溶剤を含んでいる。親水性有機溶剤としては、先に挙げたものが使用できるが、早い揮発性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールを用いることが好ましく、揮発性を制御するためには、ブチルセロソルブやメトキシプロパノールなどの使用が好ましい。また、上記親水性有機溶剤成分は2種以上の混合物であってもよい。
上記親水化処理剤中における、上記親水性有機溶剤の含有量は、特に規定されるものではないが。親水化処理剤中に含まれる水との質量比が、例えば、5/95〜95/5となる量であることが好ましい。
シラノール基と相互作用可能な金属化合物および酸性コロイダルシリカ
上記親水化処理剤は、さらにシラノール基と相互作用可能な金属化合物および酸性コロイダルシリカを含むことができる。この2成分を含有することで、親水化処理剤の貯蔵安定性を向上させることができる。
上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物が有する金属としては、アルミニウム、チタニウム、またはジルコニウムなどを挙げることができる。また、上記相互作用としては、キレート結合やイオン結合などが挙げられる。
具体的な化合物として、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムモノブトキシイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)などの金属キレート化合物が挙げられる。これらの中で入手が容易なことからアルミニウム化合物が好ましい。
これらの化合物は、先のシリケート化合物の加水分解体についての説明で述べた加水分解触媒に含まれる。このため、上記加水分解体を得るために上記化合物を使用し、得られた溶液をそのまま親水化処理剤として利用する場合には、上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物が親水化処理剤に含まれることになる。
上記親水化処理剤中における、上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物の含有量は、上記シリケート化合物の加水分解体に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。0.5質量%未満だと目的とする効果が得られず、5質量%を超えると膜の形成が均一に行われないおそれがある。上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物を加水分解触媒として使用しなかった場合や加水分解触媒として使用したが含有量が少ないと判断される場合には、加水分解反応終了後に必要量を加えることが可能である。
一方、上記酸性コロイダルシリカは、通常のコロイダルシリカがナトリウム塩部分やアンモニウム塩部分を有しているために塩基性を示すのに対し、これらの部分をシラノール基化することにより、酸性を示すことを特徴としている。また、塩基性コロイダルシリカでは貯蔵安定性が悪化する。
上記酸性コロイダルシリカの平均粒子径は10〜20nmのものが一般的であり、これを好適に使用できるが、特に限定されるものではなく、上記範囲以外の、数nmのものや100nm程度のものも使用することができる。
上記酸性コロイダルシリカとしては、水分散体および水を有機溶剤に置換したものがある。日産化学工業社から市販されている水分散体として、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスO、スノーテックスO−40、スノーテックスOL、スノーテックスOUP、スノーテックスPS−SO、スノーテックスPS−MOなどを挙げることができる。一方、水分散体の水を有機溶剤に置換したものは、オルガノシリカゾルシリーズとして市販されているが、この中でアルコールなどの親水性有機溶剤で置換したものが利用できる。
上記親水化処理剤における、上記酸性コロイダルシリカの含有量は、シリケート化合物の加水分解体100部に対し、固形分で0.05〜300部であることが好ましい。0.05部未満だと目的とする効果が得られず、300部を超えても、それに見合う効果が得られず、かえって得られる膜に不具合が生じるおそれがある。なお、上記酸性コロイダルシリカの含有量は、先に示したシリケート化合物の加水分解体の含有量以下(固形分)であることがさらに好ましい。
製造方法
上記親水化処理剤の製造は、水および親水性有機溶剤の存在下で、上記シリケート化合物を加水分解反応することによって加水分解体を得るとともに、上記それ以外の成分を加えることによって行われる。ここで、「得るとともに加える」との表記は、上記加水分解反応の際に共存させること、上記加水分解反応終了後に加えること、およびそれらの両方を意味するものとする。
上記ノニオン系界面活性剤については、先に規定した所定量の全部を上記加水分解反応の際に共存させてもよいし、又は、上記加水分解反応終了後に加えてもよい。或いは、所定量を上記加水分解反応の前後に分けて加えることもできる。又、水および親水性有機溶剤についても、これらを加水分解反応終了後に加えることにより、親水化処理剤を所定の濃度に調整することができる。
一方、上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物は、先に述べたように、加水分解触媒として機能するものである。よって、上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物は、上記シリケート化合物の加水分解体を得るための触媒として使用することにより、上記加水分解反応の際に共存させることができる。ただし、その量が多すぎるとかえって加水分解反応の進行に時間がかかるおそれがある。また、上記シラノール基と相互作用可能な金属化合物を加水分解触媒として使用しなかった場合や加水分解触媒として使用したものの、その含有量として少ないと判断した場合には、加水分解反応終了後に必要量を加えることが可能である。
また、上記酸性コロイダルシリカについては、これが上記加水分解反応の際に関与することを避けるため、加水分解反応終了後に加えることが好ましい。なお、上記酸性コロイダルシリカが共存しても加水分解反応に影響を及ぼさないことが明確である場合には、上記酸性コロイダルシリカを加水分解反応の際に共存させても構わない。
すなわち、上記親水化処理剤の製造は、水および親水性有機溶剤の存在下で、上記シリケート化合物について、必要に応じ他の成分を共存させた状態で、まず加水分解反応を行う。こうして得られたものが、先の水性親水化処理剤における各成分を含むものであれば、これにより親水化処理剤が得られたと言える。また、上記加水分解により得られたものが、先に説明した親水化処理剤における各成分を含んでいない場合、または各成分を含んでいるものの、さらに好ましい量として規定された範囲の中で含有量の増加を希望する場合には、上記シリケート化合物の加水分解体以外の、水および親水性有機溶剤を含めた各成分を適宜量加えて各成分の量を調整することにより、親水化処理剤を得ることができる。
<粉体塗料>
本発明の形成方法において用いられる粉体塗膜は、有機シリケートを含む粉体塗料により形成されたものであり、上記粉体塗料は、上記有機シリケート以外に、通常、バインダー樹脂および硬化剤のバインダー成分、顔料、硬化触媒、添加剤などを含んでいる。
バインダー樹脂および硬化剤
上記バインダー成分であるバインダー樹脂および硬化剤としては、粉体塗料用として通常用いられるものを挙げることができる。上記バインダー樹脂としては、硬化剤と反応しうる官能基を有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が通常用いられる。また、これらを適宜ブレンドしてポリエステル・エポキシ樹脂、アクリル・エポキシ樹脂、アクリル・ポリエステル樹脂として使用することもできる。
上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを原料として、通常の方法を用いて縮重合することにより得ることができる。上記酸成分としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸およびこれらの無水物、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類およびこれらの無水物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類およびこれらの無水物、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、p−オキシエトキシ安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸類、これらに対応するヒドロキシカルボン酸等を例示することができる。
また、上記アルコール成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール等の側鎖を有する脂肪族グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等を例示することができる。
上記酸成分およびアルコール成分にそれぞれ含まれる化合物の種類および量を制御することで、硬化剤と反応しうる官能基を所定量有するポリエステル樹脂を得ることができる。なお、上記酸成分にイソフタル酸が50質量%以上、好ましくは80質量%以上含まれることで、耐候性が高いポリエステル樹脂を得ることができる。
また、上記アクリル樹脂は、エチレン性不飽和基含有モノマーを配合し、これを通常の方法を用いて共重合することにより得ることができる。上記エチレン性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、プラクセルFMおよびFAシリーズ(商品名、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業社製)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類などの水酸基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メチルグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸基含有モノマーなどの硬化官能基含有モノマー、および、アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、スチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレンなどのその他の中性モノマーを例示することができる。これらのエチレン性不飽和基含有モノマーを適宜配合することで、硬化剤と反応しうる官能基を所定量有するアクリル樹脂が得られる。
さらに、上記エポキシ樹脂としては、1分子内に2個以上の硬化剤と反応しうる官能基としてのエポキシ基を有する化合物であって、例えば、グリシジルエステル樹脂、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物や、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物などのグリシジルエーテル型樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを例示することができる。
一方、上記硬化剤は、上記バインダー樹脂の官能基が水酸基である場合、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族酸無水物、アミノ樹脂、ポリエポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、グリコールウリル硬化剤などが用いられる。また、上記バインダー樹脂の官能基がカルボキシル基である場合、上記硬化剤としては、ポリエポキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物などを挙げることができる。さらにバインダー樹脂の官能基がエポキシ基である場合、上記硬化剤としては、デカンジカルボン酸やセバチン酸などの脂肪族多価カルボン酸、多価カルボン酸酸無水物、ジシアンジアミド、ブロックイソシアネート化合物、アミン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、フェノール樹脂、イミダゾール類およびイミダゾリン類等を挙げることができる。
上記バインダー樹脂と硬化剤との比率は、硬化に関与する官能基が化学量論的に等しい量比から著しく外れない割合であることが好ましい。
顔料
一方、上記顔料としては、一般的に使用されているものを用いることができる。具体的には、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料などの着色顔料、メタリック顔料、パール顔料、金属粉末およびそれに表面処理を施したもの、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料などを挙げることができる。上記顔料の上記粉体塗料原料成分中の含有量は、特に限定されないが、一般的には上記バインダー樹脂と硬化剤との合計量に対して、30〜100質量%の量であることが好ましい。もちろん、クリア塗膜が必要とされる場合、上記顔料は含まれなくてよい。
硬化触媒および添加剤
また、上記硬化触媒としては、ジブチルスズラウレートやジブチルスズオキサイドのような有機スズ化合物を挙げることができる。さらに、上記添加剤としては、表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤、帯電制御剤、流動性付与剤など種々の機能を期待されるものがあり、これらの中にはシリコーン系やワックスのような疎水性材料が含まれる。これらの成分は、その機能が発現でき、それ以外の性能を阻害しない範囲の量が使用される。
有機シリケート
上記有機シリケートは、先の親水化処理剤に含まれる加水分解体の原料であるシリケート化合物と重なるものが多い。しかし、本明細書においては、粉体塗料に含まれるものを有機シリケート、親水化処理剤に加水分解体として用いられるものをシリケート化合物として、それぞれを区別することにする。
上記有機シリケートは、炭素数1〜8のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランおよびその縮合物、ならびにこの縮合物を変性したものである。
上記炭素数1〜8のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、テトラオクチルオキシシランなどを挙げることができる。また、これらの縮合物の中では、テトラメトキシシランの縮合物およびテトラエトキシシランの縮合物が、それぞれ、三菱化学からMKCシリケートMSシリーズとして、およびコルコート社からエチルシリケートシリーズとして市販されている。上記テトラアルコキシシランおよびその縮合物が有するアルコキシ基の種類としては、反応性の観点から、炭素数1〜4のものが好ましく、炭素数1または2のものが特に好ましい。なお、縮合物の好ましい縮合度は、5〜50である。
一方、上記縮合物を変性したものとしては、縮合物のアルコキシ基をアルコールで置換したものおよびポリマー変性したものが挙げられる。上記縮合物のアルコキシ基のアルコールによる置換は、用いるアルコールがモノアルコールかジオールかによって、変性の目的が異なる。すなわち、モノアルコールである場合には、上記縮合物が有するアルコキシ基を上記モノアルコールが有するアルコキシ基に置換することにより、有機シリケート化合物の加水分解性や塗料および/または塗膜中での相溶性をそれぞれ制御することを変性の目的とする。
これに対し、用いるアルコールがジオールである場合には、ジオール1分子と上記縮合物2分子との間で、縮合物のアルコキシ基とジオールの水酸基とが反応することで、上記縮合物2分子がジオールによって繋がれた変性物が得られる。このように、また、さらにこの反応を繰りかえすことで、調整が困難である縮合を行わずに、また、反応性が低く、かさ高いアルコキシ基を用いたりしなくても、有機シリケート化合物の分子量を増加させることができる。
上記縮合物のアルコキシ基のモノアルコールによる置換を行う場合、上記縮合物1モルに対して、モノアルコールを1モル以上用いて交換反応を行うことにより得ることができる。なお、反応性の観点から、上記縮合物はテトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランの縮合物であることが好ましい。上記モノアルコールの量は目的とする置換基の数に合わせて、適宜増量することができる。上記反応は、例えば約150℃までの加熱条件下で行われることが好ましい。また、反応を進行させるため、系を減圧にして、生成したメタノールまたはエタノールを系外に留去することが好ましい。反応はアルコールによる置換が所定量行われた時点で終了される。反応終了後、必要に応じて分離・精製を行って目的とするシリケート化合物を得ることができる。このようにして得られるシリケート化合物は、一般に無色〜薄黄色の油状物質である。なお、上記アルコールによる置換量の決定は、生成したメタノールまたはエタノールの量のチェックや分析機器を用いることにより行われる。
上記モノアルコールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、2−エチルヘキサノール、オクタノールなどを用いることができる。
一方、上記縮合物のアルコキシ基のジオールによる置換を行う場合、上記縮合物1モルに対して、ジオールを0.6モル倍量以下用いて交換反応を行うことにより得ることができる。0.6モル倍量を上回ると、ゲル化してしまうおそれがある。反応は、モノアルコールと同様にして行うことができるが、得られた生成物に対して、さらに0.5モル倍量以下のジオールを加えてさらに反応することもできる。このようにして得られた変性物は、上記ジオールが有する2つの水酸基からそれぞれ水素原子を除いたジオールユニットの両末端の酸素原子に、テトラアルコキシシランの縮合物からアルコキシ基を1つ除いたシリケートユニットがそれぞれ結合した構造を有しているが、さらにシリケートユニットの少なくとも1つは、別の上記ジオールユニットを介して別の上記シリケートユニットが結合していてもよい。
なお、上記縮合物のアルコキシ基のアルコールによる置換では、溶剤は特に使用しなくてもいいが、用いる場合には、上記縮合物とモノアルコールとの合計質量に対して10倍以下であることが好ましい。溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THFおよびジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルカーボネート、アセトニトリルなどが挙げられる。
上記交換反応においては触媒として、必要に応じて酸または塩基を用いることができる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸などのブレンステッド酸や有機スズ化合物などのルイス酸が挙げられる。また塩基としては、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデセン−7などの3級アミンなどを使用することができる。
もうひとつの上記縮合物のポリマー変性は、上記縮合物のアルコキシ基とポリオールの水酸基とを反応させることにより、有機シリケート化合物に樹脂部分を導入するものである。この変性は、通常、塗料または塗膜成分との相溶性を調節するために行われるものである。なお、ここで変性される縮合物としては、先の縮合物だけでなく、これをアルコールで置換したものも含むものとする。
上記ポリオールとしては、水酸基価が5〜300、数平均分子量が500〜20000であるアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる。上記ポリマー変性における上記縮合物(アルコール置換物含む)/上記ポリオールの固形分質量比は0.1/1〜10/1とすることができる。反応自体は、先のモノアルコール置換の方法に基づき行うことができる。
上記粉体塗料に含まれる有機シリケートの質量は、上記粉体塗料の質量に対し、0.1〜10%であることが好ましい。0.1%未満だと耐汚染性が十分でなく、10%を超えると粉体塗料の安定性が低下する。
粉体塗料の製造
上記粉体塗料の製造は、上述の各成分をスーパーミキサーやヘンシェルミキサーなどを使用して予備的に混合を行った後、ニーダーやエクストルーダーなどの混練機に投入して溶融混練を行い、その後冷却して粗粉砕し、さらに微粉砕して所望の粒径に粉砕・分級を行うことによって行われる。溶融混練の条件は、用いる原料成分によって適宜選択することができる。また、その粒径は、体積平均粒子径で5〜50μmであることが好ましい。これらの調整は、巨大粒子や微小粒子を除去し、粒度分布を調整するための分級により行うことができる。
上記粉体塗料の製造において、上記有機シリケートは他の成分と同時に混合および溶融混練を行うことにより、粉体塗料内に含有させることが可能である。また、有機シリケートが失活してしまう成分との接触を避けようとする場合には、上記バインダー樹脂と上記有機シリケートとからなる原料成分を溶融混練して得られた成分に、上記有機シリケートが失活する成分を含有する原料成分を加えて溶融混練を行う方法などを取ることができる。
上記有機シリケート成分を添加する方法としては、上記有機シリケートを溶剤に溶解させたものを添加する方法の他に、上記有機シリケートを固体物質と混合しておいたものを添加する方法を取り得る。後者において、上記固体物質としては、固体樹脂、硬化剤、つや消し剤、アンチブロッキング剤などを用いることができる。
<粉体塗膜>
上記粉体塗料を基材上に塗装し、これを焼き付けることにより粉体塗膜が得られる。上記基材としては、塗装後の焼き付けにより変形などの不具合が生じないものであれば特に限定されず、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板等およびそれらを表面処理したもの等を挙げることができる。最終的に得られる本発明の複層粉体塗膜が耐汚染性に優れていることから、上記基材は屋外に設置されている自動販売機、ガードレール、配電盤、建築外装材、鋼構造物などに適用されるものが好ましい。なお、上記基材には、プライマーなどの下塗り塗料から得られる下塗り塗膜または別の粉体塗料による着色塗膜が形成されていてもよい。
上記塗装方法は特に限定されず、静電塗装法や流動浸漬法などの当業者によってよく知られた方法を用いることができるが、塗着効率の点から静電塗装法が好ましい。上記静電塗装法における帯電方法としては、コロナ帯電方式や摩擦帯電方式を挙げることができる。これらの方法は組み合わせて用いることも可能である。塗装膜厚は特に限定されないが、例えば20〜200μmとすることができる。塗装後の焼き付けは、用いたバインダー樹脂および硬化剤の種類に基づき、140〜220℃で5〜40分行うことができる。このようにして粉体塗膜を得ることができる。このようにして得られた粉体塗膜は有機シリケートを含有しているが、これが加水分解されるまで表面は親水性化されにくいため、耐汚染性が発現するまでには一定期間を要することが多い。
<複層粉体塗膜>
上記有機シリケートを含む粉体塗料により形成された粉体塗膜の表面に親水化処理剤を塗布することにより、耐汚染性に優れた複層粉体塗膜が得られる。上記親水化処理剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、刷毛塗り、浸漬塗装、ワイプ塗装、シャワーカーテン塗装など当業者によく知られた方法を利用することができる。上記親水性膜の形成方法に使用される親水化処理剤は通常の塗料に比べるとその固形分率が低いため、それに応じた塗布方法の選択およびその条件設定を行うことが好ましい。
上記塗布後の乾燥方法としては、乾燥するまで室温で放置する方法や、40〜100℃で1〜30分程度加熱する方法などが挙げられる。上記形成方法で得られる親水性膜の乾燥膜厚は特に規定されるものではない。ただし、あまり厚くなると、塗膜の透明性に劣ったり、ワレなどの塗膜欠陥が生じたりするおそれがある。
本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜は、先の形成方法により得られるものである。また、本発明の別の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜は、粉体塗膜の上にシリケート化合物の加水分解体を含む層が接して存在する構造を有している。上記複層粉体塗膜の表面の水接触角は40°以下であることが好ましく、このような親水性を有することにより、耐汚染性が優れている。
本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法は、有機シリケートを含む粉体塗料から形成された粉体塗膜上に親水化処理剤を塗布するので、塗装時のハジキや乾きムラなどが発生せず、均一な塗布を行うことができ、その結果、耐汚染性に優れる複層粉体塗膜を得ることができる。これは、粉体塗膜表面に有機シリケートが存在し、その一部が加水分解することにより、表面のぬれ性が高まり、疎水性材料が存在していても親水化処理剤の均一な塗布が可能となっているためであるものと考えられる。
また、本発明の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法では、塗布直後から塗膜表面が親水性化されるので、すぐに耐汚染性を発現させることが可能となる。
実施例1
<親水化剤の製造>
MKCシリケートMS51(三菱化学社製、平均縮合度5のテトラメトキシシラン縮合物)153部にアルミキレートD(川研ファインケミカル社製、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)の76質量%イソプロピルアルコール溶液)0.62部、エタノール4100部を混合して溶液化した。これを30℃に加温した後、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイドユニットの繰り返し数10、HLB14.1)2.8部を溶解させた水5740部を徐々に加え、40℃で2時間攪拌したのち、室温で7日間放置することにより、加水分解を進行させた。このようにして得られた溶液のIRスペクトルを測定したところ、メトキシシリル基に基づくピークは認められなかった。
ここにエタノール4100部、水5740部およびポリエチレングリコールモノラウレート2.8部を混合したものを加えて、約50%に希釈した。
ここにアルミキレートD5.58部およびスノーテックスO(日産化学工業社製、酸性コロイダルシリカ、平均粒子径10〜20nm、20質量%水分散液)1400部を加え、攪拌することにより、親水化処理剤を得た。
<有機シリケートの製造>
MKCシリケート56(三菱化学社製、テトラメトキシシランの縮合物、平均縮合度10)735部にエタノール161部およびトリエチルアミン5部を加えて、約80℃で6時間加熱還流した。次いで、生成したメタノールを系外に留出させながら加熱撹拌した。放冷後、残存するメタノールを減圧下で留去し、メチルエチルシリケート731部を得た。H−NMRスペクトルから求めたメチル基とエチル基との比は約4/1であった。
<有機シリケートを含有する粉体塗料の製造>
クリルコート690(ダイセルUCB社製、ポリエステルポリオール)600部、B−1530(ヒュルスジャパン社製、ブロックイソシアネート硬化剤)100部、TEPIC−G(日産化学工業社製、トリスグリシダルイソシアヌレート)5部、ベンゾイン10部、CR−95(石原産業社製、二酸化チタン)300部、YF−3919(東芝シリコーン社製、シリコーン系表面調整剤)10部、先に得られたメチルエチルシリケート18部をヘンシェルミキサーで混合したのち、ニーダーで混練、粉砕、分級して有機シリケートを含有する白色粉体塗料を得た。
<粉体塗膜の形成>
上記白色粉体塗料を、リン酸亜鉛処理鋼板に対して、膜厚が約60μmになるようにコロナ帯電型塗装ガンにより静電塗装し、180℃×20分の条件で焼き付けて有機シリケートを含有する粉体塗膜を得た。焼き付け後、塗板の温度が室温になった時点での粉体塗膜の水接触角は85°であった。また、この塗膜を20℃、湿度50%の環境に1ヶ月間おいた後の水接触角は45°まで低下していた。
<複層粉体塗膜の形成>
先に得られた親水化処理剤を満たした槽に、焼き付けした後、室温で数時間放置した塗板をこの槽に浸漬し、約20秒後にこれを引き上げた。そのまま1時間乾燥することにより、複層粉体塗膜を得た。この表面の水接触角を測定したところ、20°であった。
比較例
実施例1の有機シリケートを含有する粉体塗料の製造において、メチルエチルシリケートを用いない以外は同様にして、有機シリケートを含有しない白色粉体塗料を製造した。この粉体塗料を用いて、実施例1と同様にして粉体塗膜を形成した後、親水化処理剤を満たした槽に浸漬し引き上げたところ、塗膜表面にはハジキが発生しており、均一な膜を得ることはできなかった。
参考例
実施例1の有機シリケートを含有する粉体塗料の製造において、メチルエチルシリケートおよびYF−3919を使用せずに白色粉体塗料を製造した。この粉体塗料を用いて、実施例1と同様にして、粉体塗膜を形成したところ、全面にハジキの発生が確認され、粉体塗膜自体を得ることができなかった。このことから、粉体塗膜の形成には表面調整剤が必須であることが確認された。
本発明の実施例では、形成直後から高い親水性を有する複層粉体塗膜を容易に得ることができたのに対し、粉体塗料に有機シリケートを含まない場合には、均一な膜は得られなかった。
本発明の複層粉体塗膜の形成方法は、屋外に設置される物品や屋外で稼働する機械の表面に適用することで、耐汚染性に優れた複層粉体塗膜を付与することができ、その美観を維持することができる。

Claims (5)

  1. 粉体塗料により形成された粉体塗膜の表面に親水化処理剤を塗布することにより、複層粉体塗膜を形成する方法において、
    前記粉体塗料が有機シリケートを含むものであり、
    前記親水化処理剤が、シリケート化合物の加水分解体、HLBが10〜15であるアルキレンオキサイドユニットを有するノニオン系界面活性剤、水および親水性有機溶剤を含むことを特徴とする、
    耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法。
  2. 前記ノニオン系界面活性剤の含有量が、前記水に対して0.001〜5質量%である請求項1記載の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法。
  3. 前記親水化処理剤がさらにシラノール基と相互作用可能な金属化合物および酸性コロイダルシリカを含んでいる請求項1または2記載の耐汚染性に優れた複層粉体塗膜の形成方法。
  4. 請求項1、2または3記載の形成方法により得られる耐汚染性に優れた複層粉体塗膜。
  5. 粉体塗膜の上にシリケート化合物の加水分解体を含む層が接して存在する構造を有する耐汚染性に優れた複層粉体塗膜。
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