JP2017008289A - 防曇膜形成用塗布液、防曇性物品、及びそれらの製法 - Google Patents

防曇膜形成用塗布液、防曇性物品、及びそれらの製法 Download PDF

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敏裕 平野
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千晴 瀧本
貴陽 照井
Takaaki Terui
貴陽 照井
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Abstract

【課題】本発明は、表面硬度と耐熱性の両立する防曇性物品を得るための防曇膜形成用塗布液、防曇性物品、及びそれらの製法を提供することを課題とする。
【解決手段】一般式[1]で表される、重量平均分子量が1,000〜5,000,000の共重合体と、触媒と、溶媒とを含んでなる防曇膜形成用塗布液。(式[1]で、R及びRは、水素又はメチル基。Rは、水素又は炭素数が1〜5のアルキル基。Xは、−C(=O)−N(R)2、水酸基等の有機基。Yは、アルコキシシリル基、又は、−C(=O)−OR−Si(−OR)3で表される基。Rは、2価の脂肪族炭化水素基、又は、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された2価の有機基。Rは水素又は炭素数が20以下の直鎖または分岐アルキル基。)
【選択図】図1

Description

本発明は、車両用、建築用等の防曇窓ガラスや防曇鏡、レンズ、ディスプレー等の防曇性物品において、優れた、防曇性と表面硬度を併せ持つ防曇膜を形成するための防曇膜形成用塗布液、防曇性物品、及びそれらの製法に関する。
ガラスやプラスチック等の透明基材は、基材を挟んで内面と外面の温湿度の差により、一方の表面が露点以下になった場合、又は、基材に対して急激な温湿度変化が起こった場合(例えば、沸騰水蒸気が基材に接触した場合や、低温部から高温多湿の環境に移った場合等)に雰囲気中の水分が水滴として付着し、基材表面は結露する。その結果、結露した水滴により光の散乱が起こる、いわゆる「曇り」が発生することで、視界が妨げられる。このような「曇り」により、一般的な窓ガラス、ショーケース用ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、反射鏡、眼鏡、サングラス等では、安全性や視認性が著しく損なわれる。
これらの基材に防曇性を付与する方法として、特許文献1には、特定の共重合体と、多官能エポキシ化合物とを、四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩の存在下で反応させることにより得られる防曇膜形成材料が開示されている。
特開2014−114430号公報
防曇性物品は、曇りを生じさせるような環境においても視認性を確保できるような優れた防曇性と、実使用に耐えうる程度の表面硬度や耐熱性を持つことが望まれている。しかし、防曇性能を高めた防曇膜は、該十分な防曇性とともに表面硬度や耐熱性を持たせることが極めて難しい。特許文献1に記載の防曇膜は、優れた耐熱性を有するものの、表面硬度を改善する余地があった(後述の比較例7参照)。
そこで、本発明は、表面硬度と耐熱性を両立する防曇性物品を得るための防曇膜形成用塗布液、防曇性物品、及びそれらの製法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、種々検討した結果、下記一般式[1]で表される特定の共重合と、触媒と、溶媒とを含む防曇膜形成用塗布液を用いることで、上記課題を解決できる防曇性物品を形成出来ることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の各発明を含む。
[発明1]
下記一般式[1]で表される、重量平均分子量が1,000〜5,000,000の共重合体と、触媒と、溶媒とを含んでなる防曇膜形成用塗布液。
Figure 2017008289
(式[1]で、R及びRは、水素又はメチル基であり、Rは、水素又は炭素数が1〜5のアルキル基であり、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)、アミノ基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基、又は、アミド基、アミノ基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された1価の有機基であり、Yは、アルコキシシリル基、又は、−C(=O)−OR−Si(−ORで表される基であり、Rは、2価の脂肪族炭化水素基、又は、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数が20以下の直鎖または分岐アルキル基である。aとbはa:b=1.0:0.05〜2.0である数である。なお、式[1]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
[発明2]
前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2]で表される共重合体である発明1に記載の防曇膜形成用塗布液。
Figure 2017008289
(式[2]で、X、a及びbは式[1]と同様であり、sは1〜6、tは1〜6の整数である。なお、式[2]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
[発明3]
前記一般式[2]で表される共重合体が、下記一般式[2−A]で表される共重合体である発明2に記載の防曇膜形成用塗布液。
Figure 2017008289
(式[2−A]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−A]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
[発明4]
前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2−B]で表される共重合体である発明2に記載の防曇膜形成用塗布液。
Figure 2017008289
(式[2−B]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−B]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
[発明5]
さらに、下記一般式[3]で表される化合物及び下記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、発明3または発明4に記載の防曇膜形成用塗布液。
(RM(Zj−i [3]
(式[3]中、Rは1価の有機基、Zはそれぞれ独立にアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン元素、酸素元素、ハロゲン化物イオン、NO 及びCHCOOからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。iは0〜3の整数であり、jは3又は4であり、j−iは1〜4の整数である。
(RM(Zp−k [4]
(式[4]中、Rはアセチルアセトナート基及びエチルアセトアセテート基から選ばれる少なくとも1つの基、Zはアルコキシ基又はハロゲン元素であり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。kは0〜4の整数であり、pは3又は4であり、p−kは0〜4の整数である。)
[発明6]
前記重量平均分子量が10,000〜200,000であることを特徴とする発明1〜5のいずれかに記載の防曇膜形成用塗布液。
[発明7]
前記一般式[1]で表される共重合体を含む溶液に、触媒を混合し溶解させる、混合工程を有する発明1に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法。
[発明8]
前記混合工程中の溶液又は混合工程後に得られた溶液に対して、
濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調整する操作、
さらに前記一般式[3]で表される化合物及び前記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを添加する操作からなる群から選ばれる少なくとも1つの操作を行う、発明7に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法。
[発明9]
少なくとも以下の工程を経て作製する防曇性物品の作製方法。
発明7又は8に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法によって防曇膜形成用塗布液を準備する、防曇膜形成用塗布液準備工程、
基材表面に前記防曇膜形成用塗布液を塗布する、防曇膜形成用塗布液塗布工程、
前記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する、硬化工程。
[発明10]
前記硬化工程が、50〜250℃で前記塗膜を加熱することにより前記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する工程である、発明9に記載の防曇性物品の作製方法。
[発明11]
前記防曇膜形成用塗布液塗布工程が、
防曇膜形成用塗布液を微滴化する工程、及び、
微滴化された該防曇性被膜形成用塗布液を基材に滴下して基材表面に該防曇性被膜形成用塗布液を塗着させる工程である、発明9又は10に記載の防曇性物品の作製方法。
[発明12]
前記基材が、ガラス、鏡、セラミックス、樹脂フィルム及び樹脂板からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、発明9又は10に記載の防曇性物品の作製方法。
本発明により、表面硬度と耐熱性を両立する防曇性物品を得るための防曇膜形成用塗布液、該防曇性物品、及びそれらの製法を提供することができる。
本発明に用いられる共重合体の一般式である。
1.一般式[1]で表される共重合体
一般式[1]で表される共重合体は、Xで表される基を有する繰り返し構造単位と、Yで表される基を有する繰り返し構造単位とからなる共重合体である(以降、一般式[1]で表される共重合体を単に「共重合体」と記載する場合がある)。該共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、交互共重合体であってもよい。
上記の共重合体は、共重合可能な基を有するモノマー同士を共重合させて得られるものであってもよいし、共重合可能な基を有するオリゴマー同士を共重合させて得られるものであってもよいし、上記のモノマーとオリゴマーを共重合させて得られるものであってもよい。
Xで表される基を有する繰り返し構造単位を形成するモノマーとしては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソ−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、1−(メタ)アクリロイルピペリジン−2−オン、1−ビニル−2−ピロリドン、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、N−アリルカルバミン酸t−ブチル、N−(2−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられる。
また、Yで表される基を有する繰り返し構造単位を形成するモノマーとしては、ビニルトリス(3−メトキシエトキシ)シラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メトクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
なお、共重合可能な基を有するオリゴマーを用いて上記共重合体を得る場合、該オリゴマーは上記の共重合可能な基を有するモノマーから作製されたものが好ましい。共重合体の合成は一般的な重合によって行われる。
上記共重合体において、Xで表される基は、防曇膜を形成した際に該膜に吸水性を付与する基であり、防曇性発現に寄与する基である。また、上記共重合体において、Yで表される基は、架橋を形成する基であり、防曇膜を形成した際に該膜に優れた表面硬度、耐熱性、耐薬品性や耐摩耗性を付与する基である。Yで表される基は、入手性の面から、アルコキシシリル基、又は、−C(=O)−O−R−Si(−OR(ここで、Rは、2価の脂肪族炭化水素基、又は、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数が20以下の直鎖または分岐アルキル基である。)で表される基が好ましく、中でも、−C(=O)−O−C−Si(OCH、−C(=O)−O−C−Si(OC、−C(=O)−O−C−Si(OCが特に好ましい。
反応性、耐久性の観点から、前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2]で表される共重合体であることが好ましい。
Figure 2017008289
(式[2]で、X、a及びbは式[1]と同様であり、sは1〜6、tは1〜6の整数である。なお、式[2]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
特に反応性の観点から−C(=O)−O−C−Si(OCHが好ましい。
耐熱性の観点から、前記一般式[2]で表される共重合体が、下記一般式[2−A]で表される共重合体であることが好ましい。
Figure 2017008289
(式[2−A]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−A]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2−B]で表される共重合体であることは、原料の保存安定性が優れるために好ましい。
Figure 2017008289
(式[2−B]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−B]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
上記共重合体[1]、[2]、[2−A]および[2−B]において、Xで表される基を有する繰り返し構造単位と、Yで表される基を有する繰り返し構造単位の存在比率である、上記一般式[1]中のaとbは、a:b=1.0:0.05〜2.0である数である。aに対しbが0.05倍未満の場合、架橋が少なくなるため、防曇膜を形成した際に表面硬度が低くなり、aに対しbが2.0倍超の場合、十分な防曇性を有する膜が得られない。実用的な防曇性と表面硬度を両立させるため、a:b=1.0:0.1〜1.0が好ましい。より好ましくはa:b=1.0:0.3〜0.7である。
上記一般式[1]、[2]、[2−A]および[2−B]で表される共重合体の重量平均分子量は、1,000〜5,000,000が好ましい。該重量平均分子量が、1,000未満であると、耐薬品性が弱くなる傾向があり好ましくない。また該重量平均分子量が、5,000,000超であると、防曇膜形成用塗布液の粘度が高くなり塗布作業等の作業性が悪くなる傾向があり好ましくない。上記重量平均分子量が5,000〜2,000,000であるとより好ましく、10,000〜200,000であるとさらに好ましい。
2.防曇膜形成用塗布液
本発明の防曇膜形成用塗布液は、上記の一般式[1]で表される共重合体を加水分解反応させること(防曇膜形成用塗布液の調整)によって得られる。該防曇膜形成用塗布液の調整は、溶媒中で行う。溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。相溶性、安全性の観点からエチルアルコールが好ましい。また、複数の溶媒を用いて混合溶媒としてもよい。
上記の一般式[1]で表される共重合体を加水分解反応させる際(防曇膜形成用塗布液の調整)の反応条件は特に限定されないが、該反応は溶媒の沸点以下で行われることが好ましく、密閉容器内で行う場合は、加圧状態となってもよく、その場合の反応温度の上限は溶媒の沸点+20℃であってもよい。なお上記の溶媒の沸点は、該溶媒が混合溶媒である場合は、混合溶媒の中で含有量が最も多い溶媒の沸点を意味する。また、上記架橋反応を安定的に進行させやすいことから、還流下で反応させることが好ましい。
本発明の防曇膜形成用塗布液は、前記一般式[1]で表される共重合体を含む溶液に、触媒を混合し溶解させる、混合工程を有する調整方法によって得られたものである。
本発明の防曇膜形成用塗布液は、前記混合工程中の溶液又は混合工程後に得られた溶液に対して、濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調製する操作、
さらに下記一般式[3]で表される化合物及び下記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを添加する操作を行って得られたものであることが好ましい。
(RM(Zj−i [3]
(式[3]中、Rは1価の有機基、Zはそれぞれ独立にアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン元素、酸素元素、ハロゲン化物イオン、NO 及びCHCOOからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、iは0〜3の整数であり、jは3又は4であり、j−iは1〜4の整数である。なお、Zが2種以上の場合、j−iで表される数字の内訳は任意に選択することができる。また、Zが前記イオンを含む場合、Si、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の、オキシハロゲン化合物、オキシ硝酸化合物及びオキシ酢酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造となる。)
(RM(Zp−k [4]
(式[4]中、Rはアセチルアセトナート基及びエチルアセトアセテート基から選ばれる少なくとも1つの基、Zはアルコキシ基又はハロゲン元素であり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、kは0〜4の整数であり、pは3又は4であり、p−kは0〜4の整数である。)
従って、本発明の防曇膜形成用塗布液は、
上記一般式[1]で表される、重量平均分子量が1,000〜5,000,000の共重合体と、
上記一般式[3]で表される化合物及び上記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つと、
触媒と、溶媒とを含むことが好ましい。
上記の、一般式[3]で表される化合物及び一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つは、上記一般式[1]で表される共重合体と反応し、それ自身も得られる防曇膜の一部となるものであり、該膜に優れた表面硬度、耐熱性、耐汚染性や密着性を付与するものである。
上記一般式[3]において、MがSiである場合、jは4である。iが0の場合の化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラクロロシラン等が挙げられ、iが1の場合の化合物としては、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリクロロシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられ、iが2の場合の化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン等が挙げられる。これらのなかでは、特に、一般式Si(Zで表わされるアルコキシシランを用いると、被膜の硬度が良好となるので好ましい。
上記一般式[3]において、MがZrである場合、jは3である。iが0の場合の化合物としては、一般式[5]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジルコニウム酸化物前駆体が挙げられる。
ZrO(Z [5]
(式[5]中、ZはCl、NO 又はCHCOOである。)
一般式[5]で表されるジルコニウム酸化物前駆体としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム等が挙げられる。
上記一般式[4]において、MがZrである場合、pは4であり、kは0〜4である。該酸化物前駆体としては、一般式[6]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジルコニウム酸化物前駆体が挙げられる。
(RZr(Z4−r [6]
(式[6]中、Rはアセチルアセトナート基、Zは炭素数2〜4のアルコキシル基又はハロゲン、rは0〜4の整数である。)
一般式[6]で表されるジルコニウム酸化物前駆体において、rが0の場合の化合物としては、例えば、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム等が挙げられる。これらはいずれも上記一般式[4]のpが4で、kが0の化合物に相当する。また、rが4の化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等が挙げられる。これらはいずれも上記一般式[4]のpが4で、kが4の化合物に相当する。
上記一般式[4]において、MがAlである場合、pは3であり、kは0〜3である。kが0の場合の化合物としては、アルミニウムアルコキシドが挙げられ、具体的には、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、アルミニウム−tert−ブトキシドが挙げられる。kが1の場合の化合物としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムジノルマルブトキシモノエチルアセトアセテート等が挙げられる。kが3の場合の化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート等が挙げられる。これらのなかでは、R13Al(Zで表されるアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムジノルマルブトキシモノエチルアセトアセテート等が好ましい。
上記一般式[3]において、MがTiである場合、jは4である。iが0の場合の化合物としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等が挙げられる。iが2の場合の化合物としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等が挙げられる。
また、上記で例示した金属酸化物前駆体の加水分解物としてはそれらの一部又は全部が加水分解したものが挙げられる。また、上記で例示した金属酸化物前駆体の縮合物としてはそれらの一部が縮合したものが挙げられる。
上記の触媒は、一般式[1]、[2]、[2−A]、[2−B]、[3]、[4]、[5]及び[6]で表される化合物の加水分解、及び重縮合反応を促進させるものであり、それ自身も防曇膜形成用塗布液の一部となるものであってもよい。触媒としては、酸、塩基、各種有機金属系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、複数の触媒を添加してもよい。
酸としては、有機酸もしくは無機酸等が挙げられ、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、スルホン酸、マレイン酸等が挙げられ、それらの中でも塩酸、硝酸、酢酸がより好ましい。
塩基としては、アンモニア、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンが挙げられ、それらの中でもアンモニア、ピリジンが好ましい。
有機金属系化合物としては、リン酸系触媒(例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−40−2309A」等)やアルミ系触媒(例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−12−2229」、「DX−9740」、「CAT−AC」等)やチタン系触媒(例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−20」、「X−25」等)、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(マレイン酸モノブチルエステル)、ジオクチルスズビス(マレイン酸モノブチルエステル)、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトネート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等が挙げられる。
また、上記触媒の添加量は、上記の加水分解、及び重縮合反応を促進させるのに有効な量であればよく、特に限定されるものではないが、加水分解性基1モル量に対して0.0001〜10モル量であることが好ましい。添加量が0.0001モル量未満の場合、加水分解、及び重縮合反応が不十分な場合があるため好ましくない。一方、10モル量を超える場合、得られる被膜にクラックが生じる場合や得られる被膜の耐加水分解性が悪い場合があるため好ましくない。上記触媒の添加量は、加水分解性基1モル量に対して0.001〜5モル量であることがより好ましい。
また、本発明の防曇膜形成用塗布液は、さらに、微粒子を含んでもよい。無機微粒子や有機物微粒子等の微粒子成分を含有させると、得られる防曇膜中に該微粒子成分が存在することにより、仮に、防曇膜表面の一部に付着した液体の汚染物質が、該膜中に吸収されて取り込まれた状態となったとしても、汚染物質が付着した部分の膜膨張が抑制されるため、付着しなかった部分との間で膜厚差が大きくなりにくいので、結果として視覚的なひずみを生じにくくなるため好ましい。また、該微粒子を用いることにより、得られる被膜の表面硬度が向上される場合がある。
上記微粒子は、液中に均一分散されたコロイド状のものが好ましく、例えば、日産化学社製の「メタノールシリカゾル」、「MA−ST−MS」、「IPA−ST」、「IPA−ST−MS」、「IPA−ST−L」、「IPA−ST−ZL」、「IPA−ST−UP」、「EG−ST」、「NPC−ST−30」、「MEK−ST」、「MEK−ST−MS」、「MIBK−ST」、「XBA−ST」、「PMA−ST」、「DMAC−ST」、「ST−20」、「ST−30」、「ST−40」、「ST−C」、「ST−N」、「ST−O」、「ST−S」、「ST−50」、「ST−20L」、「ST−OL」、「ST−XS」、「ST−XL」、「ST−YL」、「ST−ZL」、「QAS−40」、「LSS−35」、「LSS−45」、「ST−UP」、「ST−OUP」、「ST−AK」、ADEKA社製の「AT−20」、「AT−30」、「AT−40」、「AT−50」、「AT−20N」、「AT−20A」、「AT−30A」、「AT−20Q」、「AT−300」、「AT−300S」、扶桑化学工業製の「PL−1」、「PL−3」、「PL−70」、「PL−20」、「PL−1−PA」、「PL−1−MA」等が挙げられる。
上記微粒子はBET法により、粒子径を測定することで得られる平均粒径が、5〜100nmであることが好ましい。5nm未満では膜膨張の低減効果が小さくなる傾向があるため好ましくない。100nm超では光の散乱中心として働き、膜のヘイズが増大する傾向があるため好ましくない。より好ましくは10〜80nmである。また、防曇膜中に含有させる微粒子は、防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で50質量部以下となるように含有させることが好ましい。50質量部超であると得られる防曇膜の吸水量が低下する傾向があるため好ましくない。微粒子のより好ましい含有量は、防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で3〜30質量部である。
また、本発明の防曇膜形成用塗布液は、さらに、レベリング剤を含んでもよい。レベリング剤を含有させると、防曇膜形成用塗布液を基材に塗布した際に塗膜の表面平滑性が向上するため、その結果得られる被膜の表面も平滑なものとしやすい。このように、表面が平滑な被膜であると、表面硬度を評価する際に膜表面に引っ掛かりが少ないため、より優れた表面硬度を達成できる場合がある。上記レベリング剤としては、シリコン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤等が挙げられるが、例えば、ビックケミー・ジャパン製のBYK302、BYK306、BYK307、BYK333、BYK337、BYK345、BYK346、BYK347等が挙げられ、それらの中でもBYK302、BYK306,BYK307,BYK333等のシリコン系表面調整剤が好ましい。
上記の混合工程の条件は特に限定されないが、混合液の液温は溶媒の沸点以下で行われることが好ましく、密閉容器内で行う場合は、加圧状態となってもよく、その場合の液温の上限は溶媒の沸点+20℃であってもよい。なお上記の溶媒の沸点は、該溶媒が混合溶媒である場合は、混合溶媒の中で含有量が最も多い溶媒の沸点を意味する。上記の混合時間は特に限定されないが、1分間〜24時間程度行うのが好ましい。
また、本発明の防曇膜形成用塗布液は、上記混合工程中の溶液又は混合工程後に得られた溶液に対して、
濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調整する操作、
さらに前記一般式[3]で表される化合物及び前記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを添加する操作からなる群から選ばれる少なくとも1つの操作を行って得られたものであってもよい。
また、本発明の防曇膜形成用塗布液は、上記混合工程中の溶液又は混合工程後に得られた溶液に対して、
濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調整する操作、
さらに硬化剤を添加する操作、
さらに微粒子を添加する操作、及び、
さらにレベリング剤を添加する操作
からなる群から選ばれる少なくとも1つの操作を行って得られたものであってもよい。
上記の混合工程後の操作で、固形分濃度及び粘度が調整された防曇膜形成用塗布液が得られる。防曇膜形成用塗布液の固形分濃度は5〜60質量%であることが好ましい。該固形分濃度範囲内であると、防曇膜を形成した際に、該防曇膜の膜厚を制御しやすい。また、防曇膜形成用塗布液の粘度は、例えばJIS Z 8803に準拠した測定方法において、25℃での粘度が10〜200mPa・sであることが好ましい。該粘度範囲内であると、後述する防曇膜形成用塗布液塗布工程の際に、塗膜のレベリング性が良好で、その結果、成膜性が良好である。なお、上記の混合工程後の操作で行われることのある濃縮としては、加熱濃縮、脱気濃縮等の公知の方法が挙げられる。なお、上記の混合工程で、上述のような固形分濃度及び粘度の防曇膜形成用塗布液が得られる場合は、その後の、濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調整する操作を省略しても構わない。
また、本発明の防曇膜形成用塗布液には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤、酸化物微粒子などの無機微粒子、有機物微粒子等の成分が含有されていてもよい。上記の成分は、元々、原料である、一般式[1]で表される化合物や、一般式[3]で表される化合物及び一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つに含まれるものであってもよいし、混合工程やその後の操作において添加されたものであってもよいが、反応に影響を及ぼさないように混合工程やその後の操作において添加されたものであることが好ましい。
3.防曇性物品
本発明の防曇性物品は、基材と、該基材の表面に形成された防曇膜を有する防曇性物品であり、少なくとも、基材表面に上記防曇膜形成用塗布液を塗布する、防曇膜形成用塗布液塗布工程、上記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する、硬化工程を経て得られたものである。本発明の防曇膜は基材との密着性が良好であるため、予め基材にプライマー層を設ける必要は無いため、構成を簡略化できるという利点がある。ただし、上記の防曇性物品は、基材とその表面に形成されたプライマー層、及び該プライマー層表面に形成された防曇膜を有する防曇性物品であってもよく、少なくとも、基材表面にシランカップリング剤からなるプライマー層を形成する、プライマー層形成工程、上記防曇膜形成用塗布液を上記プライマー層上に塗布する、防曇膜形成用塗布液塗布工程、上記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する、硬化工程を経て得られたものであってもよい。
上記基材としては、光透過性、光反射性又は光沢性を有し、曇りにより著しく視認性、外観、意匠性が損なわれるものが挙げられる。
光透過性を有する代表的な基材としてはガラスが挙げられる。該ガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラスであり、フロート法、デュープレックス法、ロールアウト法等による板ガラスであって、製法は特に問わない。ガラス種としては、クリアをはじめグリーン、ブロンズ等の各種着色ガラスやUV、IRカットガラス、電磁遮蔽ガラス等の各種機能性ガラス、網入りガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス等防火ガラスに供し得るガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合わせガラスのほか複層ガラス等が挙げられる。また、上記板ガラス以外に、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリカーボネート、アクリル等の樹脂板等を挙げることもできる。
また、光反射性を有する代表的な基材としては、鏡、金属、金属メッキされた物品等が挙げられる。
また、光沢性を有する代表的な基材としては、金属、金属メッキされた物品、セラミックス等が挙げられる。
上記の基材には、平板、曲げ板等各種の成形体を使用できる。板厚は特に制限されないが、1.0mm以上10mm以下が好ましく、例えば車両用の窓材としては1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。また、上記の基材は予め洗浄し、乾燥することにより表面を清浄な状態にしたものが好ましい。
上記プライマー層を形成する化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
上記防曇膜形成用塗布液塗布工程で、上記基材上に上記防曇膜形成用塗布液を塗布する方法としては、ディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、ノズルコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、手塗り法、ディスペンサ法等の公知の方法が挙げられる。これらの中では、ディスペンサ法が塗布液の塗着効率の点から好ましい。
上記防曇膜形成用塗布液塗布工程で、ディスペンサ法を用いる場合、本発明の防曇性物品の作製方法における前記防曇膜形成用塗布液塗布工程は、防曇膜形成用塗布液を微滴化する工程、及び、
微滴化された該防曇性被膜形成用塗布液を基材に滴下して基材表面に該防曇性被膜形成用塗布液を塗着させる工程を含む。塗布液を微滴化する方法としては、ディスペンサ法では、塗布液に圧力を加えた状態で、ピストンを上下させることで塗布液を微滴化して吐出する。
上記防曇性物品の上記防曇膜形成用塗布液塗布工程で、ディスペンサ法を用いる場合、塗布液には、沸点が50〜120℃の有機溶媒を含有させることが好ましく、60〜120℃がさらに好ましい。50℃以下の場合、有機溶媒の揮発が早いためにレベリング性が悪く、表面が平滑になりにくく、スジが見えることがあるため好ましくない。120℃以上の場合、有機溶媒の揮発が遅いため、タックフリーになるまでの時間が遅く、特に曲面基材においては基材表面の膜厚差が大きくなりやすいため好ましくない。また、塗布液の粘度は20mPa・s〜200mPa・s、表面張力は1mN/m〜40mN/mであることが好ましい。粘度20mPa・s以下の場合、曲面基材においては、基材表面の膜厚差が大きくなりやすいため好ましくない。粘度200mPa・s以上の場合、レベリング性が低下し、表面が平滑になりにくく、スジが見えることがあるため好ましくない。塗布液の表面張力が40mN/m以上の場合、塗布液が基材表面に濡れ拡がりにくくなり、基材表面の全体を成膜するのに必要な液量が多くなるため、好ましくない。
前記沸点が50〜120℃の有機溶媒としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、窒素化合物類の沸点が50〜120℃以上のものが使用できる。その例としては、アルコール類として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、エーテル類として、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、エステル類として、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、窒素化合物類として、アセトニトリル、トリエチルアミン、ジプロピルアミンなどがある。
また、基材に滴下される微滴化された塗布液量に制限はないが、0.1nl〜500nl、好ましくは0.5nl〜100nlとすることが好ましい。0.1nl未満では、液滴が小さいため基材に塗布する液滴数を多くする必要があり、タクトが長くなる傾向があるため好ましくない。500nl以上では、液滴が大きいため、平坦にレベリングするのが困難であり好ましくない。液滴が塗布液を当該量に調整しやすくするために、塗布液の吐出口の大きさ、すなわちノズル径は、50〜1000μm、好ましくは100〜500μmとしてもよい。
上記硬化工程で塗膜を硬化する方法としては、熱硬化、湿気硬化、光硬化等が挙げられる。熱硬化の場合、加熱温度は50〜250℃が好ましい。50℃未満では硬化速度が遅く、硬化に時間が掛かる傾向があるため好ましくない。一方、250℃超では上記防曇膜を形成する材料自体が劣化する場合があるため好ましくない。加熱方法は特に限定されず、公知の加熱方法を採用でき、例えば、赤外線ヒーター、熱風循環炉、電気炉、マイクロ波加熱、オーブンや過熱蒸気を用いる方法等が挙げられる。また、熱硬化の場合は、基材の耐熱温度未満の温度で硬化を行う必要がある。光硬化させる場合は、一般的なラジカル重合開始剤、もしくはカチオン性重合開始剤を上記塗布液に添加して用い、光照射の方法は特に限定されず、高圧水銀灯やキセノンランプ等を用いることができる。
上記硬化工程で加熱により塗膜を硬化する場合、50〜250℃で加熱することが好ましい。250℃を超える温度では、被膜を構成する成分の熱分解が生じる場合があり好ましくない。より好ましくは50〜200℃である。防曇膜形成用塗布液に低温硬化樹脂成分等を添加することで、硬化温度を下げてもよい。
本発明の防曇性物品の防曇膜の厚さは5〜100μmであることが好ましい。5μm未満であると、上記防曇膜に十分な吸水性能が付与されない傾向があり、好ましくない。一方、100μmを超えると、防曇膜に光学的な歪が生じ易くなることや、生産性が低下することがあるため、好ましくない。
本発明の防曇膜表面におけるJIS K 5600に基づく鉛筆硬度が3H以上であることが好ましい。3H以上であると防曇膜が実使用に耐えうる表面硬度を有しているといえる。より好ましくは4H以上である。
本発明の防曇性物品の防曇膜の吸水飽和時の単位面積の吸水量が0.1〜5mg/cmであることが好ましい。該吸水量が上記範囲内であると、防曇膜が十分な吸水性能を有するため、該防曇膜を有する防曇性物品が十分な防曇性を発揮しやすい。また、防曇膜が良好な表面硬度を有しやすい。より好ましくは該吸水量が0.1〜3mg/cmである。
防曇性物品には、長期間に亘り防曇性及び視認性が維持できることが望まれており、例えば日射などの熱に長期間に亘って晒される用途においては防曇膜に耐熱性が要求される。本発明の防曇性物品において、耐熱性が良好であるとは、具体的には、100℃で保持された恒温槽で1000時間防曇性物品を保持したあとでも、外観上の不具合が生じず、かつ、防曇性低下率が40%以下であることをいう。なお、外観上の不具合とは黄変や膜表面にブツブツなどの凹凸が発生することである。また、防曇性低下率とは、耐熱性試験前後で、35℃水蒸気防曇性試験における防曇性保持時間が減少した割合をいう。防曇性低下率が40%以下であれば、熱に対して防曇膜の品質を長期間維持しやすいため好ましく、該防曇性低下率が小さいほど耐熱性がより優れているといえる。
本発明の防曇膜は、例えば車両用の窓ガラス、特に自動車のフロントガラスに好適に用いることが出来る。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例で得られた防曇性物品(以下、「サンプル」と記載する場合がある)は、以下に示す方法により品質評価を行った。
[外観]
防曇性物品の外観を目視により評価し、クラックや、透視で像の歪みが無いものを○、クラックや、透視で像の歪みやクラックは無いが、膜面にスジが見えるものを△、クラックや、透視で像の歪みがあったものを×とした。
[防曇膜の膜厚]
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、サーフコーダーET−4000A)を用いて、基材上に形成した防曇膜の膜厚を測定した。
[鉛筆硬度]
JIS K 5600に準じて、防曇膜の鉛筆硬度を測定した。なお、鉛筆硬度は、最も軟らかい(低硬度)「6B」から、「6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、・・・」という順番でより硬い(より高硬度)のレベルが設定されており、該鉛筆硬度がより高いほど(より高硬度であるほど)表面硬度がより優れているといえる。特に、防曇膜の鉛筆硬度が3H以上であると、実使用に耐えうる表面硬度を有しているといえる。
[35℃水蒸気防曇性]
35℃飽和水蒸気で満たされた槽の上部に、防曇膜面を前記槽に向けてサンプルを設置し、曇りが生じるまでの時間(防曇性保持時間)を測定した。防曇膜の防曇性と表面硬度をバランスよく両立する観点から、該試験において、曇りが生じるまでの時間が10〜40秒間であることが好ましい。
[防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量]
温度80℃の乾燥炉で2時間保持した後の防曇性物品の質量(a)を測定し、防曇膜に35℃飽和水蒸気を60分間接触させ、蒸気が暴露する全面に曇りを生じさせ、防曇膜を吸水飽和させた。その後、防曇膜表面の水滴を払拭した後に防曇性物品の質量(b)を測定した。「(b−a)/蒸気暴露面積」の計算式で得られた値を防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量とした。尚、ここでの(a)値は、防曇膜が吸水していない状態のものに相当する。該単位面積の吸水量が0.1〜5mg/cmであれば、防曇性物品が十分な防曇性を発揮しやすく、防曇膜が良好な表面硬度を有しやすい。
[耐熱性]
100℃で保持された恒温槽で1000時間サンプルを保持し、外観の不具合の有無を目視で確認し、不具合がなかったものを外観上合格とし(表中で○と表記)、不具合があったものを外観上不合格とした(表中で×と表記)。なお、外観上の不具合とは黄変や膜表面にブツブツなどの凹凸が発生することである。また、防曇性低下率を以下のように算出した。
防曇性低下率=(耐熱性試験前後の、35℃水蒸気防曇性試験における防曇性保持時間差)×100/(耐熱性試験前の35℃水蒸気防曇性試験における防曇性保持時間)
該防曇性低下率が40%以下であれば、熱に対して防曇膜の品質を長期間維持しやすいため好ましく、該防曇性低下率が小さいほど耐熱性がより優れているといえる。
[実施例1]
(基材の準備)
基材として、厚さ3mm、100mm角のフロートガラスを使用した。該基材表面をセリア微粒子で研磨し、ブラッシング洗浄を行い乾燥した。
(一般式[1]で表される共重合体の合成)
まず、上記一般式[1]で表される共重合体を合成した。N,N−ジメチルアクリルアミド(以降、「DMAA」と記載する場合がある)と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以降、「AcPTMS」)を原料として用い、モル比でDMAA/AcPTMS=1.0/0.4の割合で反応させ、重量平均分子量が90,000の共重合体(上記一般式[1]で表される共重合体)を得た。該共重合体において、一般式[1]のXで表される基は−C(=O)N(CH基に相当し、Yで表される基は−C(=O)OCSi(OCHに相当する。一般式[1]中のaとbは、−C(=O)N(CH基を有する繰り返し構造単位と−C(=O)OCSi(OCH基を有する繰り返し構造単位の存在比率であり、原料として用いた−C(=O)N(CH基を有するDMAAと−C(=O)OCSi(OCH基を有するAcPTMSのモル比によって算出することができ、a:b=1.0/0.4である。
(防曇膜形成用塗布液の調製)
上記で合成した共重合体に、1N酢酸0.5g、溶媒としてエタノール(以降、「EtOH」と記載することがある)を7.50g加えて、密閉容器内で4時間、40℃で攪拌した(混合工程)。さらに、レベリング剤としてBYK306を0.04g加え、防曇膜形成用塗布液を調液した。得られた防曇膜形成用塗布液の固形分濃度は19質量%であり、25℃での粘度は、JISZ 8803に準拠した測定方法において、80mPa・sであった。
(防曇膜形成用塗布液の塗布工程〜硬化工程)
上記で調製した防曇膜形成用塗布液を、上記基材上にスピンコーティング法により塗布した。該基材を180℃に保持された電気炉に15分入れ、塗膜を硬化させることにより防曇膜を形成させて防曇性物品を得た。
各実施例及び比較例について、防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2に示す。
Figure 2017008289
Figure 2017008289
Figure 2017008289
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[実施例2〜14、16]
表1のように、一般式[1]で表される共重合体(該化合物のX基、Y基、a:b比、重量平均分子量)や、防曇膜作成用塗布液の作製においては触媒、溶媒、金属酸化物前駆体等、及び、防曇膜の硬化工程の温度を実施例1とは変更し、それ以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。
なお、表中で、X基が「−C(=O)N(C」で表される繰り返し構造は原料としてN,N−ジエチルアクリルアミドを用いて形成された構造であり、Y基が「−C(=O)OCSi(OCH」かつR基が「−H」で表される繰り返し構造は原料として3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシランを用いて形成された構造である。Y基が「−C(=O)OCSi(OCH」かつR基が「−CH」で表される繰り返し構造は原料として3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランを用いて形成された構造である。「TEOS」はテトラエトキシシランを、「IPA」はイソプロピルアルコールを意味する。
実施例8ではTEOSを固形分換算で防曇膜形成用塗布液中に10wt%、実施例9ではZrO(CHCOO)を固形分換算で防曇膜形成用塗布液体中に10wt%、実施例13では「X−40−2309A(リン酸系触媒、信越化学株式会社製)」を固形分換算で防曇膜形成用塗布液中に10wt%、実施例14と後述の実施例17では「X−12−2229(アルミ系触媒、信越化学株式会社製)」を固形分換算で防曇膜形成用塗布液中に20wt%含まれるように添加している。実施例16と後述の実施例24では「ZC−700(マツモトファインケミカル株式会社製、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートを20wt%含有する)」を固形分換算で防曇膜形成用塗布液中に10wt%含まれるように添加している。
[実施例15]
実施例1の(防曇膜形成用塗布液の調整)で、レベリング剤の添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。なお、得られた防曇膜形成用塗布液の固形分濃度は33質量%であり、25℃での粘度は、JIS Z 8803に準拠した測定方法において、150mPa・sであった。
[比較例1]
実施例1の(一般式[1]で表される共重合体の合成)で、a:bの比が0:1の化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試み、評価を行った。得られた防曇性物品は、外観にクラックが生じており、また、防曇性が不十分であった。
[比較例2]
実施例1の(一般式[1]で表される共重合体の合成)で、a:bの比が1:0の化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試みたが、被膜が硬化せず、評価不能であった。
[比較例3]
実施例1の(一般式[1]で表される共重合体の合成)で、a:bの比が1.0:4.0の化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試み、評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、防曇性が不十分であった。
[比較例4]
実施例1の(一般式[1]で表される共重合体の合成)で、重量平均分子量が8,000,000の共重合体を合成した以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試みたが、該化合物の一部がエタノールに不溶であり、均一な防曇膜形成用塗布液を調整できず、成膜することが出来なかった。
[比較例5]
実施例1の(防曇膜形成用塗布液の調整)で、酸を用いなかった以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試みたが、上記一般式[1]で表される共重合体の一部がエタノールに不溶であり、均一な防曇膜形成用塗布液を調整できず、成膜することが出来なかった。
[比較例6]
実施例1の(一般式[1]で表される共重合体の合成)で、DMAAの代わりにアクリルアミドを用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試み、評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐熱性試験後、外観が黄変し、耐熱性が不十分であった。
[比較例7]
先行特許文献1に記載の方法に従い、防曇性物品の作製を試みた。DMAAとアクリル酸(以降、「AA」と記載する場合がある)を原料として用い、モル比でDMAA/AA=1.3/1.0の割合で、65℃で3時間反応させ、重量平均分子量が60,000の共重合体を得た。次いで、前記共重合体0.52gに対し、多官能エポキシ化合物としてポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコールEX−421」、25℃の水に対する溶解率は88質量%、平均官能基数は3.0)を0.42g加え、四級ホスホニウム塩としてトリフェニルブチルホスホニウムブロミド(以降、「TPBPB」と記載することがある)を0.0052g加え、溶媒としてメタノールを2.07g加えて、80℃のオイルバス浴をさせた密閉容器内で5時間リフラックス撹拌し、重量平均分子量が300,000の防曇膜形成用塗布液を得た。なお、前記多官能エポキシ化合物は、前記共重合体のカルボキシル基1モル量に対し、該多官能エポキシ化合物のエポキシ基が1.4モル量となるように添加された。前期防曇膜形成用塗布液を塗布して得られた防曇性物品の防曇膜は、鉛筆硬度がHと低く、不十分であった。
表1及び表2から明らかなように、上記で説明した組成の防曇膜形成用塗布液を用いた実施例1〜16では、得られる防曇性物品の防曇膜の防曇性及び表面硬度が優れていることがわかった。
また、一般式[1]で表される共重合体の合成において、N,N−ジメチルアクリルアミドを用いた実施例1のほうが、DEAAを用いた実施例2より優れた防曇性を有していることが分かった。
また、一般式[1]で表される共重合体の合成において、a:bの比が1.0:0.7の実施例4は、a:bの比が1.0:0.4の実施例1より優れた表面硬度を有していることが分かった。
また、防曇膜形成用塗布液にTEOSやZrO(CHCOO)を添加した実施例8や9のほうが、添加しなかった実施例1より優れた表面硬度を有していることが分かった。
また、硬化工程温度が140℃である実施例10のほうが、硬化工程温度が180℃である実施例1より優れた防曇性を有していることが分かった。
また、防曇膜形成用塗布液にリン酸系触媒を添加した実施例13や、アルミ系触媒を添加した実施例14は、硬化工程温度が80℃と低温であっても、実施例1と同等の表面硬度を有していることが分かった。
実施例12では、硬化工程後の防曇性物品の外観は、少し黄色みを帯びていたが、防曇膜の表面硬度や防曇性は良好であった。
一方、上記で説明した組成から外れた塗布液を調製し、該塗布液を用いて防曇性物品の作製を試みた比較例1〜7では、得られる被膜の防曇性や表面硬度が不十分であったり、塗布液自体が調製
できなかったり、膜化しなかったりといった点があった。
[実施例17]
(基材の準備)
実車のウィンドシールドサイズ(約1500mm×1000mm)のフロートガラス表面を研磨液で研磨し、その後水洗及び乾燥を行った。なお、研磨液には、ガラス用研磨剤ミレークA(T)(三井金属鉱業製)を水道水に分散させた懸濁液(1重量%)を用いた。
(一般式[1]で表される共重合体の合成)
実施例4(一般式[1]で表される共重合体の合成)と同様にして、重量平均分子量が40,000の共重合体を合成した。
(防曇膜形成用塗布液の調製)
触媒としてアルミ系触媒X−12−2229(信越化学株式会社製)を用いた以外は、実施例14と同様の作業で塗布液を調整した。得られた防曇膜形成用塗布液の固形分濃度は35質量%であり、25℃での粘度は、JIS Z 8803に準拠した測定方法において、45mPa・sであった。
(防曇膜形成用塗布液の塗布工程〜硬化工程)
上記で調製した防曇膜形成用塗布液を、上記基材上にディスペンサ法により塗布した。該基材を赤外線ヒーターで80℃、15分間加熱し、塗膜を硬化させることにより防曇膜を形成させて防曇性物品を得た。
[実施例18〜24]
表1のように、有機溶媒の種類、固形分濃度等を実施例17とは変更し、それ以外は実施例17と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。有機溶媒の沸点が低い実施例21や粘度が大きい実施例22では、外観にスジが少し見られた一方、実施例17〜20、23、24の外観は良好だった。

Claims (12)

  1. 下記一般式[1]で表される、重量平均分子量が1,000〜5,000,000の共重合体と、触媒と、溶媒とを含んでなる防曇膜形成用塗布液。
    Figure 2017008289
    (式[1]で、R及びRは、水素又はメチル基であり、Rは、水素又は炭素数が1〜5のアルキル基であり、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)、アミノ基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基、又は、アミド基、アミノ基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された1価の有機基であり、Yは、アルコキシシリル基、又は、−C(=O)−OR−Si(−ORで表される基であり、Rは、2価の脂肪族炭化水素基、又は、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と脂肪族炭化水素基とから構成された2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数が20以下の直鎖または分岐アルキル基である。aとbはa:b=1.0:0.05〜2.0である数である。なお、式[1]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
  2. 前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2]で表される共重合体である請求項1に記載の防曇膜形成用塗布液。
    Figure 2017008289
    (式[2]で、X、a及びbは式[1]と同様であり、sは1〜6、tは1〜6の整数である。なお、式[2]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
  3. 前記一般式[2]で表される共重合体が、下記一般式[2−A]で表される共重合体である請求項2に記載の防曇膜形成用塗布液。
    Figure 2017008289
    (式[2−A]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−A]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
  4. 前記一般式[1]で表される共重合体が、下記一般式[2−B]で表される共重合体である請求項2に記載の防曇膜形成用塗布液。
    Figure 2017008289
    (式[2−B]で、Xは、−C(=O)−N(R(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル基)であり、sは2〜4、tは1〜3の整数であり、aとbはa:b=1.0:0.1〜1.0である数である。なお、式[2−B]中の繰り返し構造単位の順序は特に限定されない。)
  5. さらに、下記一般式[3]で表される化合物及び下記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項3または請求項4に記載の防曇膜形成用塗布液。
    (RM(Zj−i [3]
    (式[3]中、Rは1価の有機基、Zはそれぞれ独立にアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン元素、酸素元素、ハロゲン化物イオン、NO 及びCHCOOからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。iは0〜3の整数であり、jは3又は4であり、j−iは1〜4の整数である。
    (RM(Zp−k [4]
    (式[4]中、Rはアセチルアセトナート基及びエチルアセトアセテート基から選ばれる少なくとも1つの基、Zはアルコキシ基又はハロゲン元素であり、MはSi、Zr、Al及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。kは0〜4の整数であり、pは3又は4であり、p−kは0〜4の整数である。)
  6. 前記重量平均分子量が10,000〜200,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防曇膜形成用塗布液。
  7. 前記一般式[1]で表される共重合体を含む溶液に、触媒を混合し溶解させる、混合工程を有する請求項1に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法。
  8. 前記混合工程中の溶液又は混合工程後に得られた溶液に対して、
    濃縮すること、又は、さらに溶媒を添加することにより固形分濃度及び粘度を調整する操作、
    さらに前記一般式[3]で表される化合物及び前記一般式[4]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物前駆体、該金属酸化物前駆体の加水分解物、及び該金属酸化物前駆体の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを添加する操作からなる群から選ばれる少なくとも1つの操作を行う、請求項7に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法。
  9. 少なくとも以下の工程を経て作製する防曇性物品の作製方法。
    請求項7又は8に記載の防曇膜形成用塗布液の調製方法によって防曇膜形成用塗布液を準備する、防曇膜形成用塗布液準備工程、
    基材表面に前記防曇膜形成用塗布液を塗布する、防曇膜形成用塗布液塗布工程、
    前記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する、硬化工程。
  10. 前記硬化工程が、50〜250℃で前記塗膜を加熱することにより前記防曇膜形成用塗布液塗布工程後の塗膜を硬化する工程である、請求項9に記載の防曇性物品の作製方法。
  11. 前記防曇膜形成用塗布液塗布工程が、
    防曇膜形成用塗布液を微滴化する工程、及び、
    微滴化された該防曇性被膜形成用塗布液を基材に滴下して基材表面に該防曇性被膜形成用塗布液を塗着させる工程である、請求項9又は10に記載の防曇性物品の作製方法。
  12. 前記基材が、ガラス、鏡、セラミックス、樹脂フィルム及び樹脂板からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項9又は10に記載の防曇性物品の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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